(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20220817BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20220817BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H04N1/00 127B
H04N1/04 101
H04N1/10
(21)【出願番号】P 2018105042
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177334
【氏名又は名称】河内 浩
(72)【発明者】
【氏名】奥田 純孝
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001534(JP,A)
【文献】特開2005-025403(JP,A)
【文献】特開2010-283492(JP,A)
【文献】特開2014-116907(JP,A)
【文献】特開2011-076540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続可能なモバイル端末のディスプレイと、シート状の記録媒体と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面と、
前記読取り面に載置された前記読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部と、
前記読取り面に前記記録媒体と前記モバイル端末との双方が載置されている場合に、前記スキャナー部から出力された前記スキャンデータ
のうち、前記ディスプレイをスキャンした第1のスキャンデータを解析すると共に、スキャン結果を前記モバイル端末へ送信すべき旨を示すコマンド情報が前記
第1のスキャンデータに含まれる場合、前記スキャンデータのうち、前記記録媒体をスキャンした
第2のスキャンデータを前記モバイル端末へ送信する制御装置と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記コマンド情報は、
前記モバイル端末の前記ディスプレイに2次元コードとして表示可能であり、
前記モバイル端末のユーザーに対応した宛先と、前記宛先に対して前記
第2のスキャンデータを送信することを指示する指示フラグと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記読取り面に前記記録媒体と前記モバイル端末との双方が載置されている場合に、
前記制御装置は、
前記モバイル端末の載置箇所に相当する
前記第1のスキャンデータに前記2次元コードが含まれることを検知すると、前記2次元コードを解析して前記コマンド情報を取得し、
前記コマンド情報に前記指示フラグが含まれることを検知すると、前記記録媒体の載置箇所に相当する
前記第2のスキャンデータを取得して、前記2次元コードに含まれる前記宛先に送信する、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記スキャナー部と共に移動し、前記読取り対象に対して光を照射する光源と、
前記スキャナー部と共に移動し、前記読取り対象から光が放射されているか否かを検出する光センサーと、を備え、
前記制御装置は、
前記光センサーが光の放射を検出している場合、前記光源を稼働させずに前記スキャナー部が前記読取り対象のスキャンを実行するように制御する一方で、前記光センサーが光の放射を検出していない場合、前記光源を稼働させながら前記スキャナー部が前記読取り対象のスキャンを実行するように制御する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記光センサーが光の放射を検出していない時に前記スキャナー部がスキャンして出力したスキャンデータを前記モバイル端末へ送信する、ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
ネットワークに接続可能なモバイル端末のディスプレイと、シート状の記録媒体と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面と、
前記読取り面に載置された前記読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部と、を備えた画像処理装置の制御に用いる画像処理プログラムであって、
前記読取り面に前記記録媒体と前記モバイル端末との双方が載置されている場合に、前記スキャナー部から出力された前記スキャンデータ
のうち、前記ディスプレイをスキャンした第1のスキャンデータを解析すると共に、スキャン結果を前記モバイル端末へ送信すべき旨を示すコマンド情報が前記
第1のスキャンデータに含まれる場合、前記スキャンデータのうち、前記記録媒体をスキャンした
第2のスキャンデータを前記モバイル端末へ送信するように、前記画像処理装置が備えたコンピューターを機能させる、ことを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャンしたデータをモバイル端末に取り込ませることが可能な画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレット端末等に代表される様々な用途を有したモバイル端末が広く活用されている。モバイル端末のユーザーは、モバイル端末のカメラを用いて撮影した画像をモバイル端末内に記録したり、記録された画像データをモバイル端末のディスプレイを用いて閲覧したりすることが可能である。
【0003】
モバイル端末の利用に関し、文字や画像等がプリントされた印刷物の情報をデータとしてモバイル端末に取り込みたい、というユーザーからの要望がある。従来、上記のような要望を実現するには、モバイル端末のカメラを使用して印刷物を撮影することによって印刷物の情報をデータ化する手法を取ることが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラを用いて印刷物を撮影してデータ化する手法には、種々の問題が存在する。シワが生じている印刷物を撮影して得られたデータや、印刷物にピントが合わない状態で撮影して得られたデータにおいては、印刷物の原本が有する情報と比較して、情報の劣化が生じている場合がある。また、カメラの撮影によって生成されたデータはサイズ(容量)が比較的大きいので、モバイル端末のメモリーをより多く消費してしまう。
【0006】
以上の事情を考慮して、本発明は、画像処理装置でスキャンしたデータを簡便かつ適切にモバイル端末に取り込ませることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、ネットワークに接続可能なモバイル端末のディスプレイと、シート状の記録媒体と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面と、前記読取り面に載置された前記読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部と、前記スキャナー部から出力された前記スキャンデータを解析すると共に、スキャン結果を前記モバイル端末へ送信すべき旨を示すコマンド情報が前記スキャンデータに含まれる場合、前記スキャンデータの少なくとも一部を前記モバイル端末へ送信する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
好適には、上記した画像処理装置において、前記コマンド情報は、前記モバイル端末の前記ディスプレイに2次元コードとして表示可能であり、前記モバイル端末のユーザーに対応した宛先と、前記宛先に対して前記スキャンデータを送信することを指示する指示フラグと、を含む。
【0009】
好適には、上記した画像処理装置において、前記読取り面に前記記録媒体と前記モバイル端末との双方が載置されている場合に、前記制御装置は、前記モバイル端末の載置箇所に相当するスキャンデータに前記2次元コードが含まれることを検知すると、前記2次元コードを解析して前記コマンド情報を取得し、前記コマンド情報に前記指示フラグが含まれることを検知すると、前記記録媒体の載置箇所に相当するスキャンデータを取得して、前記2次元コードに含まれる前記宛先に送信する。
【0010】
好適には、上記した画像処理装置が、前記スキャナー部と共に移動し、前記読取り対象に対して光を照射する光源と、前記スキャナー部と共に移動し、前記読取り対象から光が放射されているか否かを検出する光センサーと、を備え、前記制御装置は、前記光センサーが光の放射を検出している場合、前記光源を稼働させずに前記スキャナー部が前記読取り対象のスキャンを実行するように制御する一方で、前記光センサーが光の放射を検出していない場合、前記光源を稼働させながら前記スキャナー部が前記読取り対象のスキャンを実行するように制御する。
【0011】
好適には、前記制御装置は、前記光センサーが光の放射を検出していない時に前記スキャナー部がスキャンして出力したスキャンデータを前記モバイル端末へ送信する。
【0012】
また、本発明の画像処理プログラムは、ネットワークに接続可能なモバイル端末のディスプレイと、シート状の記録媒体と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面と、前記読取り面に載置された前記読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部と、を備えた画像処理装置の制御に用いる画像処理プログラムであって、前記スキャナー部から出力された前記スキャンデータを解析すると共に、スキャン結果を前記モバイル端末へ送信すべき旨を示すコマンド情報が前記スキャンデータに含まれる場合、前記スキャンデータの少なくとも一部を前記モバイル端末へ送信するように、前記画像処理装置が備えたコンピューターを機能させる、ことを特徴とする。
【0013】
なお、本発明は、上記した画像処理プログラムを記録したコンピューター読取り可能な非一過性の記録媒体(non-transitory computer readable medium)に係る発明としても特定され得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成で、画像処理装置を用いてスキャンした記録媒体上の情報が自動的にモバイル端末へ送信されるので、モバイル端末や画像処理装置の操作に不慣れなユーザーにとっての利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合機を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る複合機におけるスキャン動作の説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る複合機におけるスキャン動作の説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る複合機の制御装置の電気的構造を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るネットワーク構成図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るスキャン処理のシーケンス図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る2次元コードを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る画像処理装置の構成を、プリント機能、コピー機能、ファックス機能、データ送受信機能等を複合的に備えた複合機1(Multifunction Peripheral,MFP)に適用する場合について説明する。以下では、便宜上、
図1の紙面手前側を、複合機1の正面側(前側)として説明する。
【0017】
1.複合機(画像処理装置)の全体構成
図1に示されるように、複合機1は、略箱型形状の装置本体2を備える。装置本体2の下部には、複合機1の内側に用紙を収納する給紙部として給紙カセット3が着脱可能に収容される。装置本体2の右側部には、複合機1の外側に用紙を収納する(用紙が載置される)給紙部として手差しトレイ4が開閉可能に設けられる。装置本体2の上部の排紙空間には排紙トレイが設けられる。給紙カセット3、手差しトレイ4及び排紙トレイは、装置本体2内の後述の画像形成部12で画像が形成される用紙を搬送するために用いられる。
【0018】
装置本体2の上部には、原稿等の読取り対象を読み取ってスキャンデータ(例えば、画像データ)を出力する画像読取り装置5が設けられる。画像読取り装置5は、略箱型形状の読取り台5aと、読取り台5aの上面にプラテンガラスで構成される読取り面5bと、画像読取り装置5の下方にそれぞれ配置されたスキャナー部5c、用紙センサー5d、光センサー5e、および光源5fと、を備える。
【0019】
画像読取り装置5の上方には、画像読取り装置5へと原稿を供給する自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder,ADF)等を備えた原稿搬送部6が設けられる。また、原稿搬送部6は、画像読取り装置5のプラテンガラスを覆うカバー部材として、開閉可能に取り付けられる。
【0020】
スキャナー部5cは、読取り面5bに載置された読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するように構成される。スキャナー部5cによる読取り対象は、原稿等のシート状の記録媒体に限定されず、例えば、スマートフォンやタブレット等のモバイル端末40のディスプレイも含まれる。
【0021】
用紙センサー5dは、読取り面5bに載置された読取り対象のサイズを検出する。光センサー5eは、スキャナー部5cと共に移動し、読取り対象から光が放射されているか否かを検出する。光源5fは、スキャナー部5cと共に移動し、読取り対象に対して光を照射する。
【0022】
更に、装置本体2の上部では、操作表示ユニット7(表示部)が正面側に取り付けられる。操作表示ユニット7は、例えば、テンキーやスタートキー、システムメニューキー、送信キー、コピーキー、確認キー等の操作キーと、タッチパネル等の表示器とを備えて、プリント枚数やプリント濃度等の設定についてユーザーからの設定入力を受け付ける。
【0023】
装置本体2の中央部には、中間転写ベルト10が複数のローラー間に架設される。中間転写ベルト10の下方には、レーザー・スキャニング・ユニット(LSU)からなる露光装置11が設けられる。中間転写ベルト10の下側面に沿って、4個の画像形成部12がトナーの色(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色)毎に設けられる。
【0024】
各画像形成部12は、回転可能な感光体ドラムを備え、更に、感光体ドラムの周囲には、帯電器と、現像器と、一次転写部と、クリーニング装置と、除電器とが、一次転写のプロセス順に配置される。中間転写ベルト10の右端には、二次転写部13が設けられ、二次転写部13は、中間転写ベルト10の右端側の一部と二次転写ローラーとで構成される。また、中間転写ベルト10の左端には、中間転写ベルト10を清掃するためのクリーニング装置が設けられる。各画像形成部12は、スキャナー部5cが取得した画像データに基づいて、用紙等の記録媒体に対する画像形成を実行する要素である。
【0025】
装置本体2の右部には、用紙の搬送経路15が設けられる。搬送経路15の上流部には、給紙ローラー等からなる給紙機構16が給紙カセット3に対応して設けられる。搬送経路15の中流部には、上記した二次転写部13が設けられる。また、搬送経路15は、給紙カセット3よりも下流側、かつ二次転写部13よりも上流側で手差しトレイ4と連絡されている。手差しトレイ4の近傍には、給紙ローラー等からなる給紙機構17が設けられる。搬送経路15の下流部には、定着装置が設けられ、搬送経路15の下流端には排紙口が設けられる。また、装置本体2は、複合機1の各部を制御する制御装置20を備える。
【0026】
2.画像形成動作の概略
次に、上記した複合機1の画像形成動作について説明する。複合機1に電源が投入されると、制御装置20は、各種パラメーターの初期化等を実行する。複合機1では、画像読取り装置5や外部のコンピューター等からプリント用のデータが入力され、プリント開始の指示がなされると、制御装置20による制御の下、以下のように画像形成動作が実行される。
【0027】
まず、制御装置20が、プリント用のデータおよび各種プリント設定に基づいて、画像形成処理の対象となる出力画像データを作成する。そして、制御装置20の制御の下、各画像形成部12では、感光体ドラムが、帯電器によって帯電された後、露光装置11によって出力画像データに基づいて露光されることで、感光体ドラム上に静電潜像が形成される。
【0028】
感光体ドラム上の静電潜像は、現像器によって各色のトナー像に現像される。感光体ドラム上のトナー像は、一次転写部によって中間転写ベルト10の表面に一次転写される。以上の動作を4つの画像形成部12が順次繰り返すことによって、中間転写ベルト10上にフルカラーのトナー像(カラートナー像)が形成される。カラートナー像は、中間転写ベルト10の回転によって、所定の二次転写タイミングで二次転写部13へ供給される。
【0029】
他方、給紙カセット3または手差しトレイ4に収納された用紙は、給紙機構16または給紙機構17によって取り出されて搬送経路15上を搬送される。そして、搬送経路15上の用紙は、上記の所定の二次転写タイミングで二次転写部13へと搬送される。二次転写部13では、中間転写ベルト10上のカラートナー像が用紙に二次転写される。カラートナー像を二次転写された用紙は、搬送経路15を下流側へと搬送されて、定着装置によってカラートナー像が用紙に定着された後、排紙口から排紙トレイへと排出される。
【0030】
3.スキャン動作
次に、上記した複合機1のスキャン動作について説明する。スキャナー部5cは、制御装置20の制御の下、原稿搬送部6の自動原稿搬送装置から供給された読取り対象、または読取り面5bに直接的に載置された読取り対象をスキャンすることによって、読取り対象に対応したスキャンデータを出力する。
【0031】
本実施形態において、以下のように、スキャナー部5cに対向している読取り対象から光が放射されているか否かに基づいて、スキャン動作の際の光源5fの稼働が制御されると好適である。光センサー5eおよび光源5fは、スキャナー部5cと一体として構成されており、スキャナー部5cの移動に伴って移動する。
【0032】
図2は、光を放射しない読取り対象であるプリント済み原稿30が読取り面5bに載置されている様子を示す図である。
図3は、光を放射している読取り対象であるモバイル端末40のディスプレイとプリント済み原稿30との双方が読取り面5bに載置されている様子を示す図である。なお、モバイル端末40は、インターネットINに接続可能な無線通信装置である。
【0033】
まず、
図2のケースを説明する。読取り対象であるプリント済み原稿30は光を放射しないから、スキャナー部5cによるスキャン動作が実行されている間に亘り、光センサー5eは光の放射を検出しないことを示す信号を制御装置20へ出力し続ける。以上の光センサー5eからの出力を受けて、制御装置20は、光源5fを稼働させながら(すなわち、光源5fからの光をプリント済み原稿30に照射しながら)、スキャナー部5cが読取り対象のスキャンを実行するように制御する。スキャナー部5cは、矢印A方向に移動しながら、プリント済み原稿30を読み取ってスキャンデータを出力する。
【0034】
次いで、
図3のケースを説明する。本ケースでは、スキャナー部5cの移動方向である読取り方向(矢印A,副走査方向)の上流側にモバイル端末40のディスプレイが載置され、読取り方向の下流側にプリント済み原稿30が載置されている。
【0035】
まず、ユーザーからのスキャン動作の開始指示に従ってスキャナー部5cが移動し、第1の読取り対象であるモバイル端末40のディスプレイに光センサー5eが対向する。第1の読取り対象であるディスプレイは光を放射しているから、スキャナー部5c(光センサー5e)がディスプレイに対向している間に亘って、光センサー5eは、光の放射を検出していることを示す信号を制御装置20へ出力する。
【0036】
以上の光センサー5eからの出力を受けて、制御装置20は、光源5fを稼働させずに、スキャナー部5cが第1の読取り対象のスキャンを実行するように制御する。スキャナー部5cは、矢印A方向に移動しながら第1の読取り対象であるディスプレイを読み取ってスキャンデータを出力する。光源5fが稼働しないことによって、光源5fからの光とモバイル端末40のディスプレイからの光との干渉等によるフレアの発生が抑制される。
【0037】
次いで、スキャナー部5cは移動を継続し、第2の読取り対象であるプリント済み原稿30に光センサー5eが対向する。第2の読取り対象であるプリント済み原稿30は光を放射しないから、スキャナー部5c(光センサー5e)がプリント済み原稿30に対向している間に亘って、光センサー5eは、光の放射を検出しないことを示す信号を制御装置20へ出力する。
【0038】
以上の光センサー5eからの出力を受けて、制御装置20は、光源5fを稼働させながらスキャナー部5cが第2の読取り対象のスキャンを実行するように制御する。スキャナー部5cは、矢印A方向に移動しながら、第2の読取り対象であるプリント済み原稿30を読み取ってスキャンデータを出力する。
【0039】
4.制御装置
図4を参照して、複合機1が備える制御装置20について説明する。
図4は、制御装置20とその関連要素との電気的構造を示すブロック図である。概略的には、制御装置20は、複合機1の各部と電気的に接続し、複合機1の機能、例えば、画像読取り装置5における読取り動作および画像形成部12等による画像形成動作を制御する。また、制御装置20は、スキャナー部5cから出力されたスキャンデータを解析する。
【0040】
図4に示すように、制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)21と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリー等の記憶装置で構成されたメモリー22と、要素間の信号伝送に用いられるバス23と、複合機1の各部との接点となるインターフェイス24と、通信ネットワークCNとの接点となるネットワーク(N/W)アダプター25と、を含む。
【0041】
CPU21は、メモリー22に記憶された制御プログラムおよび制御用データに基づいて演算処理を実行する。メモリー22は、CPU21による演算処理(画像形成制御)に用いる制御プログラムや制御データ等を記憶する。また、メモリー22は、CPU21の演算結果等を一時的に記憶する。
【0042】
バス23は、CPU21、メモリー22、インターフェイス24、およびN/Wアダプター25を相互に接続している。インターフェイス24には、複合機1の各部(例えば、画像読取り装置5、原稿搬送部6、露光装置11、画像形成部12等)が電気的に接続されている。N/Wアダプター25は通信ネットワークCNに接続されている。本実施形態のネットワーク構成については後述する。
【0043】
5.ネットワーク構成
図5を参照して、本実施形態のネットワーク構成について説明する。本実施形態の画像形成システムSは、複合機1と、通信ネットワークCNと、管理サーバーMSと、を備える。
【0044】
複合機1は、例えば、コンビニエンスストアに設置され、ユーザーが有償で使用するプリント端末機である。管理サーバーMSは、複合機1への情報提示や課金等を管理するサーバー装置であり、例えば、コンビニエンスストア本部によって運用されている。通信ネットワークCNは、例えば、広域をカバーする閉じたネットワーク(企業内ネットワーク)であり、例えば、WAN(Wide Area Network)やVPN(Virtual Private Network)によって構築されている。
【0045】
通信ネットワークCNは、不図示のゲートウェイサーバーを介してインターネットINに接続されており、インターネットINには、電子メールの送受信を実行する電子メールサーバーESが接続されている。
【0046】
上記した通信ネットワークCNおよびインターネットINは、所定の通信規約、例えばTCP/IPプロトコルスイートに準拠しており、各ノード(複合機1、管理サーバーMS、電子メールサーバーES等)にはIPアドレス等の識別子が割り当てられている。複合機1は、通信ネットワークCNを介してインターネットINに接続することが可能である。なお、モバイル端末40は、基地局や交換局等を含むセルラーネットワークや公衆無線LAN(いずれも不図示)等を介して、インターネットINに接続可能である。
【0047】
電子メールサーバーESは、所定のプロトコル、例えば送信プロトコルであるSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)および受信プロトコルであるPOP3(Post Office Protocol version 3)に従って動作する。なお、POP3に代えてまたは加えて、受信プロトコルであるIMAP4(Internet Message Access Protocol version 4)を採用することも可能である。
【0048】
電子メールサーバーESは、ユーザーがモバイル端末40のメールクライアントを使用して作成した他のユーザー宛の電子メールを受領して、その電子メールの宛先メールアドレスが示す他の電子メールサーバー(例えば、モバイル端末40が加入する無線通信キャリアが提供するサーバー)に送信する。他の電子メールサーバーは、上記の電子メールを受信すると、宛先メールアドレスが示すメールボックスにその電子メールを格納する。他のユーザーは、自身のメールクライアントを利用して他の電子メールサーバーにアクセスし、メールボックス内の自分宛ての電子メールを受領する。
【0049】
上記では、モバイル端末40のユーザーが他のユーザーに電子メールを送信するケースを説明したが、任意の2ユーザーに関して上記のようにして電子メールを送受信することが可能であることは当然である。
【0050】
6.モバイル端末へのスキャンデータの取込み(送信)処理
次いで、本実施形態のスキャンデータの取込み処理(送信処理)について説明する。概略的には、複合機1において、読取り面5bに載置された読取り対象をスキャンしている際に、後述のコマンド情報がスキャンデータに含まれることが検知された場合、制御装置20がスキャンデータをモバイル端末40へ送信する。詳細には以下の通りである。
【0051】
図6は、本実施形態の処理シーケンス図である。ユーザーは、モバイル端末40を操作してコマンド情報をディスプレイに表示する(ステップS100)。コマンド情報は、スキャン結果をモバイル端末40へ送信すべき旨を示す情報である。本実施形態では、2次元コード(QRコード(登録商標))によってコマンド情報が表現されている。
図7に、本実施形態の2次元コードの例を示す。この2次元コードには、以下の文字列がコードされている。
import=on&email=user@thisisadummy.com
【0052】
すなわち、本実施形態の2次元コードは、モバイル端末40のユーザーに対応した宛先であるメールアドレス(email=user@thisisadummy.com)と、スキャンデータを、複合機1自体に取り込むのではなく、複合機1に載置されているモバイル端末40のユーザーの宛先に送信して取り込ませることを指示する指示フラグ(import=on)とを含んでいる。
【0053】
なお、コマンド情報は、例えば、モバイル端末40にインストールされた情報生成アプリケーションによって生成される。ユーザーがモバイル端末40のディスプレイをタップしてこの情報生成アプリケーションを起動したときに、メモリー22に記憶されているユーザーの宛先メールアドレスに基づいて2次元コードが生成されると好適である。なお、コマンド情報として、2次元コードではなく、以上の文字列が直接ディスプレイに表示されてもよい。
【0054】
次いで、ユーザーは、モバイル端末40のディスプレイに表示されたコマンド情報を複合機1にスキャンさせるために、ディスプレイ側を下にして(すなわち、表示画面を読取り面5bに向けて)、モバイル端末40を画像読取り装置5に載置する。ユーザーは、併せて、モバイル端末40に取り込みたいプリント済み原稿30(記録媒体)を画像読取り装置5に載置する(ステップS102)。
【0055】
載置後の様子は前述した
図3と同様であり、読取り面5b上に、プリント済み原稿30とモバイル端末40との双方が載置されている。読取り方向上流にモバイル端末40が位置し、読取り方向下流にプリント済み原稿30が位置している。
【0056】
ユーザーが、複合機1の操作表示ユニット7を操作してスキャン処理を開始すると(ステップS104)、
図3を参照して前述したように、スキャナー部5cが読取り方向への移動を開始する。そして、スキャナー部5cはモバイル端末40の載置箇所に対向する。
【0057】
ステップS106のスキャン動作は以下のように実行される。光センサー5eがモバイル端末40の載置箇所(ディスプレイ)に対向すると、制御装置20は、光源5fを稼働させずに、スキャナー部5cがディスプレイのスキャンを実行するように制御する。スキャナー部5cはスキャン動作を実行し、モバイル端末40の載置箇所(ディスプレイ)に相当するスキャンデータを制御装置20へ出力する。
【0058】
ステップS106にて、制御装置20は、スキャナー部5cから出力されたスキャンデータを解析する。モバイル端末40の載置箇所に相当するスキャンデータに2次元コードが含まれることを検知すると(ステップS108:YES)、制御装置20は2次元コードを解析してコマンド情報(指示フラグおよび宛先)を取得する(ステップS110)。なお、コマンド情報が文字列として表示される構成においては、制御装置20がOCRによって文字列を取得して解析を実行してもよい。
【0059】
制御装置20は、取得したコマンド情報に指示フラグ(import=on)が含まれることを検知すると(ステップS112:YES)、光源5fを稼働させながら、スキャナー部5cがプリント済み原稿30のスキャンを実行するように制御する。スキャナー部5cはスキャン動作を継続し、プリント済み原稿30(記録媒体)の載置箇所に相当するスキャンデータを制御装置20へ出力する(ステップS114)。
【0060】
ステップS104からステップS114までの動作を総括すると、制御装置20は、光センサー5eが光の放射を検出している時にスキャナー部5cがスキャンして出力したスキャンデータ(すなわち、モバイル端末40のディスプレイをスキャンしたスキャンデータ)はモバイル端末40へ送信しない一方で、光センサー5eが光の放射を検出していない時にスキャナー部5cがスキャンして出力したスキャンデータ(すなわち、プリント済み原稿30をスキャンしたスキャンデータ)をモバイル端末40へ送信する。
【0061】
次いで、制御装置20は、先に取得したプリント済み原稿30のスキャンデータを、コマンド情報が示す宛先電子メールアドレスへ送信する(ステップS116)。スキャンデータは、例えば、PDF形式に変換されて、データ送付のための電子メールに添付されて送信されると好適である。JPEG形式等の画像用の形式と比較してファイルサイズが小さいからである。電子メールサーバーESを介して送信されたプリント済み原稿30のスキャンデータは、モバイル端末40へと送信される(ステップS118)。スキャンデータを受信すると、モバイル端末40は、ディスプレイに「受信完了」の通知メッセージを表示する。
【0062】
制御装置20は、ステップS106で解析したスキャンデータに2次元コードが含まれないことを検知する(ステップS108:NO)か、ステップS110で取得したコマンド情報に指示フラグが含まれないことを検知すると(ステップS112:NO)、ステップS114と同様にプリント済み原稿30のスキャンを実行した後、取得されたスキャンデータを複合機1のメモリー22に記憶する(ステップS120)。
【0063】
7.本実施形態の技術的効果
上記したように、本実施形態の複合機1(画像処理装置)は、インターネットINに接続可能なモバイル端末40のディスプレイと、シート状の記録媒体であるプリント済み原稿30と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面5bと、読取り面5bに載置された読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部5cと、スキャナー部5cから出力されたスキャンデータを解析すると共に、スキャン結果をモバイル端末40へ送信すべき旨を示すコマンド情報がスキャンデータに含まれる場合、スキャンデータの少なくとも一部をモバイル端末40へ送信する制御装置20と、を備える。
【0064】
以上の構成によれば、簡易な構成で、複合機1を用いてスキャンした記録媒体上の情報が自動的にモバイル端末40へ送信されるので、モバイル端末40や複合機1の操作に不慣れなユーザーにとっての利便性が向上する。つまり、ユーザーは、スキャンしたいプリント済み原稿30の横にモバイル端末40を載置してスキャンするという直感的な操作により、結果として(すなわち、ユーザーが意識せずとも)、記録媒体上の情報をモバイル端末40に取り込むことが可能となる。
【0065】
また、コマンド情報が、モバイル端末40のディスプレイに2次元コードとして表示可能であり、かつ、モバイル端末40のユーザーに対応した宛先(例えば、電子メールアドレス)と、宛先に対してスキャンデータを送信することを指示する指示フラグと、を含む構成によれば、省スペースな2次元コードを用いることによって、狭隘なモバイル端末40のディスプレイにも確実にコマンド情報を含めることが可能となる。
【0066】
また、複合機1において、読取り面5bにプリント済み原稿30とモバイル端末40との双方が載置されている場合に、制御装置20が、モバイル端末40の載置箇所に相当するスキャンデータに2次元コードが含まれることを検知すると、2次元コードを解析してコマンド情報を取得し、コマンド情報に指示フラグが含まれることを検知すると、記録媒体の載置箇所に相当するスキャンデータを取得して、2次元コードに含まれる宛先に送信する構成によれば、コマンド情報に指示フラグが含まれるときに限って上述したモバイル端末40へのデータ取込みを実行するので、一般的な2次元コードが画像データに含まれている場合の誤動作を防止することが可能である。
【0067】
また、複合機1が、スキャナー部5cと共に移動し、読取り対象に対して光を照射する光源5fと、スキャナー部5cと共に移動し、読取り対象から光が放射されているか否かを検出する光センサー5eと、を備え、制御装置20が、光センサー5eが光の放射を検出している場合、光源5fを稼働させずにスキャナー部5cが読取り対象のスキャンを実行するように制御する一方で、光センサー5eが光の放射を検出していない場合、光源5fを稼働させながらスキャナー部5cが読取り対象のスキャンを実行するように制御する構成によれば、光を放射するモバイル端末40のディスプレイをスキャンする際には光源5fの稼働が抑止されるので、フレア等の発生無く精度良くディスプレイを読み取ることが可能となる。また、光センサー5eの出力に応じて即座に光源5fが制御されるので、光源5fを稼働させずに実行するスキャンと光源5fを稼働させたスキャンとの双方を実行する必要性が排除される。
【0068】
また、制御装置20が、光センサー5eが光の放射を検出していない時にスキャナー部5cがスキャンして出力したスキャンデータをモバイル端末40へ送信する構成によれば、光が放射されている位置によって、すなわち、光を放射するモバイル端末40のディスプレイの載置位置によって、モバイル端末40へ送信すべきスキャンデータのためのスキャンエリアを制御することが可能である。
【0069】
本実施形態の画像処理プログラムは、インターネットINに接続可能なモバイル端末40のディスプレイと、シート状の記録媒体であるプリント済み原稿30と、を含む読取り対象を載置可能な読取り面5bと、読取り面5bに載置された読取り対象をスキャンすることによってスキャンデータを出力するスキャナー部5cと、を備えた複合機1の制御に用いる画像処理プログラムであって、スキャナー部5cから出力されたスキャンデータを解析すると共に、スキャン結果をモバイル端末40へ送信すべき旨を示すコマンド情報がスキャンデータに含まれる場合、スキャンデータの少なくとも一部をモバイル端末40へ送信するように、複合機1が備えたCPU21(コンピューター)を機能させる。上記した機能が画像処理プログラムとして提供されることによって、当初は上記の機能を有さない複合機1に対して機能を追加することが可能となる。
【0070】
8.変形例
上記した実施形態は多様に変形される。以下に実施形態の変形例を示す。実施形態および変形例から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない限り適宜に併合することが可能である。
【0071】
(1)上記した実施形態では、複合機1が通信ネットワークCNおよびインターネットINを介して電子メールサーバーESにアクセスしている。この形態の変形例として、複合機1が、管理サーバーMSの管理の下、管理サーバーMS経由で電子メールサーバーESにアクセスする構成も採用可能である。本変形例において、以上の構成によれば、複数の複合機1によるスキャンデータの送信を管理サーバーMSによって統合的に管理することが可能となる。
【0072】
(2)上記した実施形態では、制御装置20が、第2の読取り対象であるプリント済み原稿30の載置箇所に相当するスキャンデータのみをモバイル端末40へ送信している。すなわち、制御装置20は、スキャンデータの一部をモバイル端末40へ送信している。しかしながら、制御装置20が、第1の読取り対象であるモバイル端末40の載置箇所に相当するスキャンデータと、第2の読取り対象であるプリント済み原稿30の載置箇所に相当するスキャンデータとを含むスキャンデータの全てをモバイル端末40へ送信する構成も採用可能である。以上の構成においては、スキャンデータの分割処理が削減される。
【0073】
(3)上記した実施形態では、読取り方向(副走査方向)に読取り対象が並べて載置されているが、主走査方向(読取り方向に垂直な方向)に読取り対象が並べて載置される構成も採用可能である。この場合、光センサー5eは、主走査方向に配列され、各々が光の放射を検出可能な複数のセンサー素子を備え、光源5fは、主走査方向に配列され、各々が独立してオン/オフ可能な複数の発光素子を備える。複数のセンサー素子と複数の発光素子とは、位置的に互いに関連付けて構成されている。例えば、センサー素子と発光素子とが位置的に1対1に対応付けられている。
【0074】
制御装置20は、スキャン動作の実行時において、光の放射を検出しているセンサー素子に対応した発光素子を稼働させない一方で、光の放射を検出していないセンサー素子に対応した発光素子を稼働させる。以上のように構成することで、光を放射している読取り対象については光源5fからの光を当てずにスキャンがなされる一方で、光を放射していない読取り対象については光源5fからの光を当ててスキャンがなされる。
【0075】
(4)上記した実施形態では、画像処理装置の一例である複合機1や複合機1を含む画像処理システムSに本発明の構成を適用する場合について説明したが、他の異なる実施形態では、プリンター、複写機、ファクシミリ等の他の画像処理装置や、このような他の画像処理装置を備える他の画像処理システムに本発明の構成を適用してもよい。
【0076】
(5)上記した実施形態の説明は、本発明に係る複合機1における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術的範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0077】
1 複合機(画像処理装置)
5 画像読取り装置
5b 読取り面
5c スキャナー部
5e 光センサー
5f 光源
12 画像形成部
20 制御装置
21 CPU
40 モバイル端末
IN インターネット