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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ソレノイド装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/126 20060101AFI20220817BHJP
   H01F 7/16 20060101ALI20220817BHJP
   H01F 7/127 20060101ALI20220817BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01F7/16 K
H01F7/16 Q
F16K31/06 305A
F16K31/06 305D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018122956
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020004847
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】倉持 健太
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉明
(72)【発明者】
【氏名】安田 智宏
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-082473(JP,U)
【文献】実開昭63-184280(JP,U)
【文献】特開平10-037726(JP,A)
【文献】特開2006-038153(JP,A)
【文献】特開2013-108534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/126
H01F 7/127
H01F 7/16
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの励磁により発生する磁力で軸部を軸方向に移動させるソレノイド装置であって、
軸方向に延びる第1円筒部を有するヨークと、
前記ヨークに対して軸方向他方側に位置し、軸方向に延びる第2円筒部を有するコアと、
前記第2円筒部内を軸方向に移動する前記軸部と、
前記第1円筒部及び前記第2円筒部の径方向外側に配置されたボビンと、
前記ボビンに巻かれた前記コイルと、
前記第1円筒部内を軸方向に移動するプランジャと、
前記ヨーク及び前記プランジャに対して軸方向一方側に位置する蓋体と、
前記軸部、前記ヨーク、前記コア、前記ボビン、前記コイル、前記プランジャ及び前記蓋体を収容するハウジングと、
を有し、
前記ハウジングは、筒状のハウジング本体部を有し、
前記ハウジング本体部は、
軸方向一方側端部に開口する第1開口部と、
前記第1開口部から軸方向他方側に繋がる前記ハウジング本体部の内壁に、径方向外側へ延びる円環状の第1段部を有して軸方向に円筒状に広がる第1内壁部と、
前記第1内壁部の軸方向他方側に繋がる前記ハウジング本体部の内壁に、径方向外側へ延びる円環状の第2段部を有して軸方向に円筒状に広がる第2内壁部と、
を有し、
前記ヨークの前記第1円筒部は、前記第1円筒部の軸方向一方側に径方向外側に突出する環状の第1フランジ部を有し、
前記第1フランジ部の外径は、前記第1内壁部の内径よりも大きく、且つ前記第2内壁部の内径よりも小さく、
前記第1フランジの軸方向一方側端面は、前記第2段部に接触し、
前記蓋体は、非磁性材料製であり、
前記蓋体は、前記蓋体の径方向外側の周縁部の軸方向一方側の面が前記第1段部に接触するとともに、前記周縁部の軸方向他方側の面が前記第1フランジ部の軸方向一方側端面に接触して、前記周縁部が前記第1段部及び前記第1フランジ部の前記軸方向一方側端面とで挟まれた状態で前記ハウジングに固定される
ソレノイド装置。
【請求項2】
前記ボビンは、円筒状であり、
前記ヨークの前記第1フランジ部は、前記ボビンの軸方向一方側の端面と、前記第2段部とで挟まれた状態で前記ハウジングに固定される
請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項3】
前記蓋体は、前記ハウジングに固定された状態で前記第1開口部を塞ぐ
請求項1又は2に記載のソレノイド装置。
【請求項4】
前記ヨークの前記第1円筒部と前記第1フランジ部とは、一体的になる
請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項5】
前記蓋体は、
前記プランジャの軸方向一方側のプランジャ端面に対向して配置される蓋体本体部と、
前記蓋体本体部の径方向外側端部から軸方向他方側へ進むに従って径方向外側へ延びる環状の傾斜部と、
前記傾斜部の径方向外側端部から径方向外側に突出する環状の前記周縁部と、
を有する
請求項1に記載のソレノイド装置。
【請求項6】
前記周縁部の軸方向厚さは、前記第1内壁部の軸方向長さよりも大きい
請求項5に記載のソレノイド装置。
【請求項7】
前記蓋体本体部は、前記蓋体本体部の径方向内側に前記プランジャ側に突出する突出部を有する
請求項5に記載のソレノイド装置。
【請求項8】
前記蓋体本体部は、前記第1開口部の軸方向の領域内に配置される
請求項5又は7に記載のソレノイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイド装置の一例として、軸部を有するソレノイドにスプールバルブを設けたソレノイドバルブが知られている。特許文献1に記載されたソレノイドバルブのソレノイドは、軸方向に延びる円筒状のヨークと、ヨークに対して軸方向他方側に位置し、軸方向に延びる円筒状のコアと、コア内を軸方向に移動する軸部と、ヨーク及びコアの径方向外側に配置されたボビンと、ボビンに巻かれたコイルと、ヨーク内を軸方向に移動するプランジャと、これらを収容するハウジングと、を有する。スプールバルブは、ハウジングの軸方向他方側の端部に設けられたカシメ部を介してハウジングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-102150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のソレノイドのハウジングは、磁性材料製であり、軸方向他方側が開口して軸方向一方側が底部を有した有底筒状である。このため、コイルが通電されると、コイルに発生する磁力によってプランジャがコア側に引き寄せられる。この際に、コアからプランジャを通る磁力線はヨークを介してコイル側に戻るが、複数の磁力線の一部はハウジングの底部を通ってヨークを介してコイル側に導かれる。したがって、磁気回路が分散する虞がある。
【0005】
また、複数の磁力線の一部がハウジングの底部を通り、ハウジングは磁性材料であるので、ハウジングの底部は磁化されて、プランジャを吸着する。この吸着力を抑えるため、ハウジングの底部には、プランジャ側へ突出する突出部が設けられる。しかしながら、突出部によってプランジャがハウジングの軸方向一方側に停止する位置がハウジングの底部の内側底面よりも軸方向他方側にずれる。このため、プランジャのストロークを一定値に確保するには、ハウジングの軸方向長さを長くする必要がある。
【0006】
本発明の目的は、ハウジングの大型化及び磁気回路の分散化を抑制できるソレノイド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、コイルの励磁により発生する磁力で軸部を軸方向に移動させるソレノイド装置であって、軸方向に延びる第1円筒部を有するヨークと、前記ヨークに対して軸方向他方側に位置し、軸方向に延びる第2円筒部を有するコアと、前記第2円筒部内を軸方向に移動する前記軸部と、前記第1円筒部及び前記第2円筒部の径方向外側に配置されたボビンと、前記ボビンに巻かれた前記コイルと、前記第1円筒部内を軸方向に移動するプランジャと、前記ヨーク及び前記プランジャに対して軸方向一方側に位置する蓋体と、前記軸部、前記ヨーク、前記コア、前記ボビン、前記コイル、前記プランジャ及び前記蓋体を収容するハウジングと、を有し、前記ハウジングは、筒状のハウジング本体部を有し、前記ハウジング本体部は、軸方向一方側端部に開口する第1開口部と、前記第1開口部から軸方向他方側に繋がる前記ハウジング本体部の内壁に、径方向外側へ延びる円環状の第1段部を有して軸方向に円筒状に広がる第1内壁部と、前記第1内壁部の軸方向他方側に繋がる前記ハウジング本体部の内壁に、径方向外側へ延びる円環状の第2段部を有して軸方向に円筒状に広がる第2内壁部と、を有し、前記ヨークの前記第1円筒部は、前記第1円筒部の軸方向一方側に径方向外側に突出する環状の第1フランジ部を有し、前記第1フランジ部の外径は、前記第1内壁部の内径よりも大きく、且つ前記第2内壁部の内径よりも小さく、前記第1フランジの軸方向一方側端面は、前記第2段部に接触し、前記蓋体は、非磁性材料製であり、前記蓋体は、前記蓋体の径方向外側の周縁部の軸方向一方側の面が前記第1段部に接触するとともに、前記周縁部の軸方向他方側の面が前記第1フランジ部の軸方向一方側端面に接触して、前記周縁部が前記第1段部及び前記フランジ部の前記軸方向一方側端面とで挟まれた状態で前記ハウジングに固定されるソレノイド装置である。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、ハウジングの大型化及び磁気回路の分散を抑えることができるソレノイド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るソレノイド装置の断面図である。
図2】ソレノイドの断面図である。
図3図2のA矢視に相当する部分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るソレノイド装置について説明する。本実施形態では、調圧されたオイルを出力するスプールバルブをソレノイドに設けたソレノイド装置について説明する。また、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。X軸方向は、図1に示すソレノイド装置の短手方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。
【0012】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「リア側」と記し、Z軸方向の負の側(-Z側)を「フロント側」と記述する。なお、リア側及びフロント側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係や方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と記述し、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と記し、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と記述する。
【0013】
なお、本明細書において、軸方向に延びる、とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、径方向に延びる、とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0014】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、第1実施形態に係るソレノイド装置の断面図である。本実施形態のソレノイド装置1は、図1に示すように、ソレノイド10と、スプールバルブ50と、を有する。ソレノイド10とスプールバルブ50は、軸方向に沿って配置される。ソレノイド10は、コイル29の励磁によって発生する磁力で軸部11を軸方向に移動する。スプールバルブ50は、ソレノイド10の軸方向他方側(フロント側)に位置し、軸部11の移動とともに軸方向に移動可能なスプール弁52を有する。スプール弁52は、バルブボディ51内に移動可能に収容される。以下、構成部材毎に詳細に説明する。なお、コイル29に電流が流れて磁束が発生することを、「コイル29の励磁」とする。
【0015】
<ソレノイド10>
図2は、ソレノイドの断面図である。図3は、図2のA矢視に相当する部分の部分拡大図である。ソレノイド10は、図2及び図3に示すように、ヨーク21と、コア17と、軸部11と、ボビン25と、コイル29と、プランジャ13、蓋体33、ハウジング30と、を有する。
【0016】
(ハウジング30)
ハウジング30は、磁性金属材料製であり、軸部11、ヨーク21、コア17、ボビン25、コイル29、プランジャ13及び蓋体33を収容する。ハウジング30は、筒状のハウジング本体部31を有する。本実施形態では、ハウジング本体部31は円筒状である。ハウジング本体部31は、第1開口部31aと第1内壁部31cと第2内壁部31dとを有する。第1開口部31aは、軸方向一方側端部に開口する。第1内壁部31cは、第1開口部31aから軸方向他方側に繋がるハウジング本体部31の内壁31bに、径方向外側へ延びる円環状の第1段部31mを有して軸方向に円筒状に広がる。第2内壁部31dは、第1内壁部31cの軸方向他方側に繋がるハウジング本体部31の内壁31bに、径方向外側へ延びる円環状の第2段部31jを有して軸方向に円筒状に広がる。
【0017】
本実施形態では、ハウジング本体部31の軸方向一方側端部には、径方向内側へ突出する環状のハウジング突出部31eを有する。第1内壁部31cは、ハウジング突出部31eの軸方向他方側(フロント側)に設けられる。第1内壁部31cは、ハウジング突出部31eの径方向内側端面31fから径方向外側で軸方向に広がって円筒状をなす。第1内壁部31cのうち第1開口部31aのフロント側端から径方向外側へ延びる面が第1段部31mとなる。このため、第1段部31mは、軸方向に対して直交する面となる。第1内壁部31cの内径は、ハウジング本体部31の内壁31bの内径よりも小さい。
【0018】
第2内壁部31dのうち第2内壁部31dのリア側端から径方向外側へ延びる面が第2段部31jとなる。このため、第2段部31jは、軸方向に対して直交する面となり、第1段部31mと平行をなす。第2内壁部31dの内径は、ハウジング本体部31の内壁31bの内径と同一である。このため、本実施形態では、第2内壁部31dの内面は、ハウジング本体部31の内壁31bの軸方向他方側(フロント側)の内面と同一面上にある。ハウジング突出部31eの径方向内側端面31fで囲まれる空間は、第1開口部31aをなす。第2内壁部31dの内面にはヨーク21の第1フランジ部21bが対向して配置される。
【0019】
ハウジング本体部31のフロント側の内壁31bには、図1及び図2に示すように、径方向外側へ延びる円環状の第3段部31kを有して軸方向に円筒状に広がる第3内壁部31gが設けられる。第3内壁部31gの内径は、ハウジング本体部31の内壁31bの内径よりも大きい。このため、第3内壁部31gの径方向厚さは、ハウジング本体部31の内壁31bの径方向厚さよりも薄い。
【0020】
ハウジング本体部31は、第3内壁部31gのフロント側の端部からフロント側へ延びるカシメ部31hを有する。カシメ部31hの径方向の厚さは、第3内壁部31gの径方向の厚さと同じである。なお、カシメ部31hの径方向の厚さを、第3内壁部31gの厚さよりも薄くしてもよい。カシメ部31hの厚さ薄くすることで、カシメ部31hの塑性変形が容易になり、カシメ作業の作業性を向上することができる。なお、カシメ部31hによってスプールバルブ50のバルブボディ51がハウジング30に固定される。
【0021】
ハウジング本体部31のフロント側のX軸方向プラス側端部には、ターミナル切欠き部31iが設けられる。コイル29に電気的に接続されたターミナル38を保持するターミナル本体部37は、ターミナル切欠き部31iの径方向内側から外側へ向かって突出する。ターミナル本体部37と、コイル29が巻かれたボビン25とは、一体成型品である。
【0022】
(ヨーク21)
ヨーク21は、ハウジング本体部31内の軸方向一方側(リア側)に位置し、軸方向に延びる第1円筒部21aを有する。本実施形態では、第1円筒部21aは、軸方向に貫通する第1貫通孔21hを有する。第1貫通孔21h内にプランジャ13が挿入される。
【0023】
第1円筒部21aの軸方向一方側(リア側)には、径方向外側に突出する環状の第1フランジ部21bが設けられる。第1フランジ部21bの外径は、第1内壁部31cの内径よりも大きく、第2内壁部31dの内径よりも小さい。このため、第1フランジ部21bは、第2内壁部31d内に容易に挿入可能である。
【0024】
本実施形態では、第1フランジ部21bは円環状であり、第1フランジ部21bの軸方向厚さは、ハウジング本体部31の内壁31bの肉厚と同程度の厚さ有する。このため、第1フランジ部21bの周端部21cは、第2内壁部31dの内面に沿って配置される。よって、ヨーク21は中心軸Jに沿って姿勢でハウジング本体部31内に配置することができる。
【0025】
ヨーク21の第1フランジ部21bは、図3に示すように、ボビン25の軸方向一方側の端面25cと、第1段部31mとで挟まれた状態でハウジング30に固定される。また、第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1には、第2段部31jの他に蓋体33の周縁部33cが接触する。
【0026】
第1円筒部21aの軸方向長さは、図2に示すように、プランジャ13の軸方向長さと略同じ長さを有する。第1円筒部21aの第1貫通孔21hの内径は、プランジャ13の外径よりも僅かに大きい。このため、第1円筒部21aは、プランジャ13を支持するすべり軸受として機能するとともに、プランジャ13の軸方向への移動を可能にする。
【0027】
第1円筒部21aの壁部21eの軸方向他方側(フロント側)の端部は、軸方向他方側へ進むに従って径方向内側へ斜めに傾斜する傾斜面部21fを有する。また、第1円筒部21aの軸方向他方側の壁部21eには、壁部21eよりも小径で円筒状の第1嵌合部21gが設けられる。この第1嵌合部21gには、後述するカラー41が装着される。
【0028】
ヨーク21の第1円筒部21aと第1フランジ部21bとは、一体的になる。即ち、第1円筒部21aと第1フランジ部21bとは、単一部材からなる。このヨーク21は、型成型又は切削加工で得られる。なお、ヨーク21は、第1円筒部21aと第1フランジ部21bとが別体であってもよい。
【0029】
(プランジャ13)
プランジャ13は、第1円筒部21a内を軸方向に移動する。本実施形態では、プランジャ13は、磁性材料製であり、円柱状である。プランジャ13の外径は、第1円筒部21aの第1貫通孔21hの内径よりも僅かに小さい。
【0030】
プランジャ13は、軸方向に貫通する第2貫通孔13aを有する。本実施形態では、第2貫通孔13aは、フロント側がプランジャ13のフロント側のプランジャ端面13bに開口し、リア側がプランジャ13のリア側のプランジャ端面13cに開口する。第2貫通孔13aは、軸方向視において、軸部11よりも径方向外側に位置する。
【0031】
(コア17)
コア17は、ヨーク21に対して軸方向他方側(フロント側)に位置し、軸方向に延びる第2円筒部17aを有する。第2円筒部17aは、軸方向に延びて軸部11が挿入される第3貫通孔17fを有する。本実施形態では、コア17は、磁性材料製であり、ハウジング30のフロント側に配置されてハウジング30内に固定される。コア17は、カラー41を介してヨーク21に結合されるとともに、ボビン25の内面に接触した状態でハウジング30に固定される。コア17の第2円筒部17aのフロント側には、径方向に突出する環状の第2フランジ部17bが設けられる。第2フランジ部17bの外径は、第3内壁部31gの内径よりも僅かに小さい。
【0032】
第2フランジ部17bの軸方向一方側端面17nは、第3段部31kに接触する。このため、コア17は、ハウジング30に対して軸方向一方側(リア側)に位置決めされる。
【0033】
第2円筒部17aのリア側には、リア側が開口してフロント側へ窪む第1空間部17dが設けられる。本実施形態では、第1空間部17dは、中心軸Jに対して同軸上に設けられて、軸方向視において円形状である。第1空間部17dの内径はプランジャ13の外径よりも僅かに大きい。このため、プランジャ13は第1空間部17d内に軸方向に移動可能である。
【0034】
第1空間部17dには、第1空間部17dのフロント側端部からフロント側へ延びる延長空間部17eが設けられる。延長空間部17eは、リア側が開口してフロント側へ延びる。延長空間部17eの内径は第1空間部17dの内径よりも小さい。延長空間部17eのフロント側の底面には軸部11が通る第3貫通孔17fのリア側の開口部17gが開口する。
【0035】
第3貫通孔17fは、リア側が延長空間部17eに開口し、フロント側が第2円筒部17aのフロント側の端面17hに開口する。第3貫通孔17fに軸部11が移動自在に通される。第3貫通孔17fは、軸部11を支持するすべり軸受として機能するとともに、軸部11の軸方向への移動を可能にする。
【0036】
第2円筒部17aのリア側には、第2円筒部17aのフロント側よりも小径で円筒状の第2嵌合部17iが設けられる。第2嵌合部17iにはカラー41のフロント側が嵌合する。カラー41のフロント側はヨーク21の第1嵌合部21gに嵌合する。このため、ヨーク21とコア17はカラー41を介して結合される。
【0037】
第2円筒部17aの第1空間部17dの径方向外側には、リア側へ延びる円筒状の薄肉部17jが設けられ。薄肉部17jは、軸方向一方側へ進むに従って径方向内側に傾く傾斜面部17kを有する。傾斜面部17kを有した薄肉部17jは、コイル29の通電時に、薄肉部17jからプランジャ13側に延びる磁力線を集中させて、プランジャ13をフロント側へ引っ張る力を増大する。
【0038】
(軸部11)
軸部11は、図2に示すように、第2円筒部17aに対して軸方向に移動する。本実施形態では、軸部11は、非磁性の金属材料製であり、軸部11の外径は第3貫通孔17fの内径よりも僅かに小さい。軸部11のリア側の端部は第1空間部17d内に突出し、軸部11のフロント側の端部はコア17のフロント側の端面17hから突出する。軸部11のリア側には止め輪12が装着される。
【0039】
プランジャ13が軸部11をフロント側に移動させる際に、プランジャ13のフロント側のプランジャ端面13bが第1空間部17dの底面に接触する前に、止め輪12が延長空間部17eの底面に接触する位置に配置される。このため、軸部11がフロント側へ移動する際に、プランジャ13が第1空間部17dの底面に当接する虞を防止することができる。
【0040】
(ボビン25)
ボビン25は、円筒状であり、第1円筒部21a及び第2円筒部17aの径方向外側に配置される。本実施形態では、ボビン25は、樹脂製であり、第1円筒部21aの径方向外側の側面21iと、第2円筒部17aの径方向外側の側面17mを覆う。ボビン25は、円筒部25aと、円筒部25aの軸方向両側に設けられて径方向外側へ突出する第3フランジ部25bと、を有する。円筒部25aにコイル29が巻かれる。
【0041】
X軸方向プラス側の第3フランジ部25bは、径方向外側へ延びるターミナル本体部37に繋がる。コイル29が巻かれたボビン25は、ターミナル本体部37とともに樹脂によって一体成型される。
【0042】
(コイル29)
コイル29は、ボビン25に巻かれる。本実施形態では、コイル29は、ボビン25の円筒部25aの径方向外側の外周面に沿って周方向に巻かれる。コイル29の両端部はターミナル本体部37に設けられたターミナル38に電気的に接続される。
【0043】
(蓋体33)
蓋体33は、図2に示すように、非磁性材料製あり、ヨーク21及びプランジャ13に対して軸方向一方側(リア側)に位置する。蓋体33は、プランジャ13の軸方向一方側のプランジャ端面13cに対向して配置される蓋体本体部33aと、蓋体本体部33aの径方向外側端部から軸方向他方側へ進むに従って径方向外側へ延びる環状の傾斜部33bと、傾斜部33bの径方向外側端部から径方向外側に突出する環状の周縁部33cと、を有する。
【0044】
蓋体33は、図2及び図3に示すように、蓋体33の径方向外側の周縁部33cの軸方向一方側の面33d2が第1段部31mに接触するとともに、周縁部33cの軸方向他方側の面33d1が第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1に接触して、周縁部33cが第1段部31m及び第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1とで挟まれた状態でハウジング30に固定される。蓋体33は、ハウジング30に固定された状態で第1開口部31aを塞ぐ。本実施形態では、蓋体33の蓋体本体部33a及び傾斜部33bによって第1開口部31aが覆われる。
【0045】
蓋体33の周縁部33cの軸方向厚さは、第1内壁部31cの軸方向長さよりも大きい。このため、周縁部33cが第1段部31mに接触した状態で、周縁部33cのフロント側の面33d1を第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1に接触させることができる。
【0046】
蓋体本体部33aは、第1開口部31aの軸方向の領域内に配置される。このため、蓋体本体部33aは、軸方向においてハウジング本体部31のリア側の端部から突出しない。
【0047】
蓋体本体部33aは、蓋体本体部33aの径方向内側にプランジャ側に突出する突出部33eを有する。本実施形態では、突出部33eは、プランジャ13のリア側のプランジャ端面13cの中央部に接触するとともに、第2貫通孔13aのリア側の開口部13dよりも中心軸J側にずれた位置に配置される。
【0048】
<スプールバルブ50>
(バルブボディ51)
バルブボディ51は、図1に示すように、円筒状であり、オイルを流入・流出させる複数のポート55を有する。バルブボディ51は、軸方向に延びてスプール弁52が挿入されたスプール孔部53を有する。スプール孔部53は、バルブボディ51を軸方向に貫通する。スプール孔部53には、複数のポート55が繋がる。バルブボディ51のリア側端部には、径方向に突出するフランジ部54が設けられる。このフランジ部54は、ソレノイド10のハウジング本体部31に設けられカシメ部31hによって加締められてハウジング本体部31に固定される。
【0049】
(スプール弁52)
スプール弁52は、スプール孔部53の内径よりも僅かに小さい外径を有する複数の大径部52aと、軸方向に隣接する大径部52a同士を繋ぎ大径部52aよりも小径な小径部52bとを有する。スプール弁52は軸方向に移動することで大径部52aがポート55を開閉する。バルブボディ51のフロント側端部には、スプール孔部53のフロント側の開口を塞ぐ閉塞部材57が挿入される。閉塞部材57とスプール弁52のフロント側端部との間には、圧縮ばね60が配置される。このため、スプール弁52は、圧縮ばね60によってリア側へ附勢される。
【0050】
<ソレノイド10の組み立て方法>
先ず、蓋体33は、図2に示すように、ハウジング本体部31のフロント側に開口する第2開口部31nから突出部33eがフロント側へ向いた姿勢で、ハウジング本体部31内に挿入される。蓋体33は、周縁部33cのリア側の面33d2が第1段部31mに接触した状態でハウジング本体部31内に配置される。蓋体33の配置後、ヨーク21は、第1フランジ部21bがリア側に向いた状態で第2開口部31nからハウジング本体部31内に挿入されて、第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1を蓋体33の周縁部33cのフロント側の面33d1に接触させる。
【0051】
ヨーク21の配置後、ボビン25とターミナル本体部37が一体成型されたアセンブリを、ハウジング本体部31の第2開口部31nからハウジング本体部31内に挿入する。ボビン25は、ボビン25の外周面がハウジング本体部31の内壁31bの内面に嵌め合わされて固定される。また、ヨーク21の第1円筒部21aの外周面はボビン25の内周面に接触する。
【0052】
アセンブリの挿入後、プランジャ13を第2開口部31nからハウジング本内部31内に挿入し、プランジャ13をヨーク21の第1円筒部21aの第1貫通孔21hに挿入する。プランジャ13の挿入後、カラー41を、第2開口部31nからハウジング本体部31内に挿入して、ヨーク21の第1嵌合部21gに嵌め合わせる。カラー41の挿入後、軸部11が挿入されたコア17を、第1空間部17dがリア側に向いた状態で、コア17を第2開口部31nからハウジング本体部31内に挿入し、コア17の第2嵌合部17iにヨーク21からフロント側へ延びるカラー41を嵌め合わせて、ソレノイド10の組み立てが終了する。
【0053】
なお、ソレノイド10の組み立て方法は、前述した順序に限るものではない。前述した組み立て方法では、ヨーク21の配置後に、アセンブリをハウジング本体部31内に挿入したが、ヨーク21の配置後にプランジャ13をヨーク21内に挿入してもよい。
【0054】
<ソレノイド装置1の作用・効果>
次に、ソレノイド装置1の作用・効果について説明する。図1に示すように、ソレノイド装置1のソレノイド10のコイル29が励磁されると、コイル29に発生する磁力によってプランジャ13がコア17側に吸引される。このため、プランジャ13に接触する軸部11がプランジャ13とともにフロント側に移動する。なお、軸部11の移動時には、圧縮ばね60の付勢に抗して移動する。したがって、軸部11に当接するスプール弁52がフロント側へ移動する。
【0055】
一方、ソレノイド10のコイル29が非励磁状態になると、プランジャ13は、コア17からの吸引力が無くなる。このため、圧縮ばね60のフロント側へ向く付勢力によって、スプール弁52はリア側へ移動する。また、スプール弁52のリア側への移動に伴ってソレノイド10の軸部11及びプランジャ13は、リア側へ移動する。
【0056】
(1)ここで、本実施形態に係るソレノイド装置1の蓋体33は非磁性材料製であり、図2及び図3に示すように、第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1が第2段部31jに接触し、蓋体33の周縁部33cが第1段部31m及び第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21d1とで挟まれた状態でハウジング30に固定される。このため、蓋体33は、軸方向に強固に固定される。また、プランジャ13からヨーク21を通ってコイル29に戻る磁力線は蓋体33を通る虞はない。また、コイル29から出る磁力線が第1フランジ部21bを介してハウジング30内を通る場合、第1フランジ部21bが第2段部31jを介してハウジング30に接触しているので、第1フランジ部21bからハウジング30への磁力線の透過が容易になる。このため、ソレノイド装置1での磁気回路の分散を抑制することができ、コア17へのプランジャ13の吸着力の低下を防止することができる。
【0057】
(2)また、ヨーク21の第1フランジ部21bは、ボビン25の軸方向一方側の端面25cと、第2段部31jとで挟まれた状態でハウジング30に固定される。このため、ヨーク21をハウジング30に対して軸方向に強固に固定することができる。
【0058】
(3)また、蓋体33は、ハウジング30に固定された状態で第1開口部31aを塞ぐ。このため、プランジャ13やヨーク21を通る磁力線が第1開口部31aから外部に漏れ出す虞を防止することができる。
【0059】
(4)また、ヨーク21の第1円筒部21aと第1フランジ部21bとは一体的になる。このため、ヨーク21の第1円筒部21aと第1フランジ部21bとが別体である場合と比較して、部品数を低減することができる。
【0060】
(5)また、蓋体33は、プランジャ13のリア側のプランジャ端面13cに対向配置される蓋体本体部33aと、蓋体本体部33aの径方向外側端部から軸方向他方側へ進むに従って径方向外側へ延びる環状の傾斜部33bと、傾斜部33bの径方向外側端部から径方向外側に突出する環状の周縁部33cと、を有する。このため、周縁部33cに対して蓋体本体部33aを軸方向一方側に位置させることができる。したがって、プランジャ13を蓋体本体部33a側に寄せた配置が可能となり、ソレノイド装置1の軸方向の大型化を抑制することができる。
【0061】
(6)また、周縁部33cの軸方向厚さは、第1内壁部31cの軸方向長さよりも大きい。このため、周縁部33cの軸方向他方側の面33d1を第1フランジ部21bの軸方向一方側端面21dに確実に接触させることができる。
【0062】
(7)また、蓋体本体部33aは、蓋体本体部33aの径方向内側にプランジャ13側に突出する突出部33eを有する。このため、プランジャ13が軸方向一方側に移動する場合、プランジャ13の軸方向一方側のプランジャ端面13cが突出部33eに接触して、プランジャ13の軸方向一方側への移動を規制することができる。
【0063】
(8)また、蓋体本体部33aは、第1開口部31aの軸方向の領域内に配置される。このため、蓋体本体部33aが第1開口部31aよりも軸方向他方側に配置される場合と比較して、ソレノイド装置1の軸方向の大型化を抑制することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発名とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 ソレノイド装置
11 軸部
13 プランジャ
13c プランジャ端面
17 コア
17a 第2円筒部
21 ヨーク
21a 第1円筒部
21b 第1フランジ部
21c 周端部
21d1 軸方向一方側端部
25 ボビン
25c 端面
29 コイル
30 ハウジング
31 ハウジング本体部
31a 第1開口部
31b 内壁
31c 第1内壁部
31d 第2内壁部
31j 第2段部
31m 第1段部
33 蓋体
33a 蓋体本体部
33b 傾斜部
33c 周縁部
33d1,33d2 面
33e 突出部

図1
図2
図3