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特許7124494空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60C11/00 F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018127072
(22)【出願日】2018-07-03
(65)【公開番号】P2020006729
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 卓範
(72)【発明者】
【氏名】須藤 裕輝
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-287106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255134(US,A1)
【文献】特開2002-301916(JP,A)
【文献】特開平08-337101(JP,A)
【文献】特表2015-506867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、
タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数で表される曲線から成ることを特徴とする空気入りタイヤ。
ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【数1】
【請求項2】
タイヤ幅方向の半径aが、タイヤ総幅SWに対して0.30≦a/SW≦0.60の関係を有する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
指数pが、1.00≦p≦7.00の範囲にある請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
指数pが、4.05≦pの範囲にある請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ径方向の半径bが、タイヤ幅方向の半径aに対して0.10≦b/a≦1.20の関係を有する請求項1~4のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
タイヤ径方向の半径bが、指数qに対して1.00<b/q≦30.0の関係を有する請求項1~5のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
指数qが、q≦1.95あるいは4.05≦qの範囲にある請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トレッドプロファイルとタイヤ赤道面およびタイヤ接地端との各交点P1、P4を通り、p=q=2である楕円関数の仮想プロファイルを定義し、
前記トレッドプロファイルが、タイヤ赤道面からタイヤ接地端までの距離の少なくとも35[%]から60[%]の領域にて、前記仮想プロファイルに対してタイヤ径方向外側にオフセットする請求項1~7のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記トレッドプロファイルとタイヤ赤道面およびタイヤ接地端との各交点P1、P4を通り、p=q=2である楕円関数の仮想プロファイルを定義し、
前記トレッドプロファイルが、タイヤ赤道面からタイヤ接地端までの距離の95[%]以上の領域にて、前記仮想プロファイルに対してタイヤ径方向内側にオフセットする請求項1~8のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記トレッドプロファイルが、キャンバ角0[deg]でのタイヤ接地領域の全域にて、前記楕円関数で定義される請求項1~9のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記トレッドプロファイルが、タイヤ赤道面からキャンバ角4[deg]までの接地領域にて、前記楕円関数で定義される請求項1~10のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
タイヤ赤道面におけるトレッドゲージGa1と、タイヤ赤道面からタイヤ接地端までの距離の60[%]の位置におけるトレッドゲージGa2と、タイヤ接地端におけるトレッドゲージGa3とが、Ga3<Ga2≦Ga1の関係を有する請求項1~11のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数を基準輪郭線として定義し、
タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、接続された4つ以上の円弧を用いて前記基準輪郭線を近似した曲線から成り、且つ、
前記4つ以上の円弧のそれぞれと前記基準輪郭線との距離が、0.2[mm]以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【数1】
【請求項14】
カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に延在する複数の周方向溝と、前記周方向溝に区画されて成るセンター陸部およびセカンド陸部とを備え、
タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数を基準輪郭線として定義し、
タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、前記基準輪郭線と、前記センター陸部および前記セカンド陸部の少なくとも一方にて前記基準輪郭線からタイヤ径方向外側に膨出した踏面とを接続した曲線から成り、且つ、
前記踏面の膨出量Hpが、0.1[mm]≦Hp≦0.5[mm]の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。
ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、タイヤのコーナリング性能を向上できる空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の空気入りタイヤでは、高速走行時における操縦安定性能を高める観点から、トレッドプロファイルを改善することにより、タイヤの接地特性を高めてコーナリング性能を向上することが行われている。このような課題に関する従来の空気入りタイヤとして、特許文献1、2に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平6-35681号公報
【文献】特許第3223134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、タイヤのコーナリング性能を向上できる空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかる空気入りタイヤは、カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数で表される曲線から成ることを特徴とする空気入りタイヤ。ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【0006】
【数1】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数を基準輪郭線として定義し、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、接続された4つ以上の円弧を用いて前記基準輪郭線を近似した曲線から成り、且つ、前記4つ以上の円弧のそれぞれと前記基準輪郭線との距離が、0.2[mm]以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【数1】
また、この発明にかかる空気入りタイヤは、カーカス層と、前記カーカス層の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、前記交差ベルトの径方向外側に配置されるトレッドゴムとを備える空気入りタイヤであって、タイヤ周方向に延在する複数の周方向溝と、前記周方向溝に区画されて成るセンター陸部およびセカンド陸部とを備え、タイヤ赤道面上に中心点をもつ以下の楕円関数を基準輪郭線として定義し、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルが、前記基準輪郭線と、前記センター陸部および前記セカンド陸部の少なくとも一方にて前記基準輪郭線からタイヤ径方向外側に膨出した踏面とを接続した曲線から成り、且つ、前記踏面の膨出量Hpが、0.1[mm]≦Hp≦0.5[mm]の範囲にあることを特徴とする空気入りタイヤ。ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【数1】
【発明の効果】
【0009】
この発明にかかる空気入りタイヤおよび空気入りタイヤの製造方法では、タイヤ接地形状がフラットとなり、すなわち接地領域の接地長が均一化されて、接地圧分布が均一化される。これにより、タイヤのコーナリング性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドプロファイルを示す説明図である。
図3図3は、図2に記載した説明図の要部拡大図である。
図4図4は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドプロファイルを示す説明図である。
図5図5は、図4に記載した説明図の要部拡大図である。
図6図6は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。
図7図7は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。
図8図8は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0012】
[空気入りタイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。また、同図は、空気入りタイヤの一例として、乗用車用ラジアルタイヤを示している。
【0013】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端である。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0014】
空気入りタイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0015】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0016】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上90[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0017】
ベルト層14は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143とを積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で20[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。ベルトカバー143は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトカバー143は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成されても良い。また、ベルトカバー143が交差ベルト141、142の全域を覆って配置される。
【0018】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側にそれぞれ配置されて、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0019】
また、空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31、32とをトレッド面に備える。主溝とは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、一般に3.0[mm]以上の溝幅および5.0[mm]以上の溝深さを有する。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁の距離の最大値として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。また、溝がタイヤ周方向にジグザグ状あるいは波状に延在する構成では、溝壁の振幅の中心線を測定点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
例えば、図1の構成では、空気入りタイヤ1が、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域が2本の周方向主溝21、22をそれぞれ有している。また、これらの周方向主溝21、22が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21、22により、5列の陸部31~33が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0024】
しかし、これに限らず、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良い(図示省略)。また、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されることにより、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0025】
また、タイヤ赤道面CLを境界とする1つの領域に配置された2本以上の周方向主溝(タイヤ赤道面CL上に配置された周方向主溝を含む。)のうち、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝を最外周方向主溝として定義する。最外周方向主溝は、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域にてそれぞれ定義される。
【0026】
また、図1の構成では、タイヤ赤道面CLから左右の最外周方向主溝21、21の溝中心線までの距離(図中の寸法記号省略)が、タイヤ接地幅(図中の寸法記号省略)の26[%]以上32[%]以下の範囲にある。また、タイヤ赤道面CLからセンター主溝22、22の溝中心線までの距離が、タイヤ接地幅の8[%]以上12[%]以下の範囲にある。なお、図1の構成において、一方の最外周方向主溝21が、主溝ではなく、細溝であっても良い(図示省略)。
【0027】
周方向主溝の溝中心線は、周方向主溝の溝幅の左右の測定点の中点を通りタイヤ周方向に平行な直線として定義される。
【0028】
タイヤ接地幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0029】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0030】
また、最外周方向主溝21、21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31、31をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31、31は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。
【0031】
また、最外周方向主溝21、21に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部32、32をセカンド陸部として定義する。したがって、セカンド陸部32、32は、最外周方向主溝21、21を挟んでショルダー陸部31、31に隣り合う。
【0032】
また、セカンド陸部32、32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。センター陸部33は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0033】
なお、4本の周方向主溝21、21を備える構成(図1参照)では、一対のセカンド陸部32、32と単一のセンター陸部33とが形成される。また、例えば、5本以上の周方向主溝を備える構成では、2列以上のセンター陸部が形成され(図示省略)、3本の周方向主溝を備える構成では、セカンド陸部がセンター陸部を兼ねる(図示省略)。
【0034】
また、陸部31~35は、タイヤ周方向に連続するリブであっても良いし、ラグ溝によりタイヤ周方向に分断されたブロック列であっても良い(図示省略)。
【0035】
[トレッドプロファイル]
図2は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドプロファイルを示す説明図である。同図は、タイヤ赤道面を境界とする片側の接地領域のトレッドプロファイルを示している。また、横軸が、タイヤ赤道面CLからのタイヤ幅方向の位置を示し、縦軸が、トレッドプロファイルとタイヤ赤道面との交点P1から距離b[mm]の位置を原点Oとしたタイヤ径方向の位置を示している。
【0036】
図2において、トレッドプロファイルPL1は、図1に記載した空気入りタイヤ1のプロファイルであり、タイヤ赤道面CL上に中心点(原点O)をもつ以下のスーパー楕円関数により定義される。ただし、a[mm]がタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、b[mm]がタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<aの条件を満たす。また、指数p、qが1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。また、距離x[mm]、y[mm]が0<x、0<yの条件を満たす。
【0037】
【数1】
【0038】
トレッドプロファイルは、タイヤ子午線方向の断面視におけるトレッド面の輪郭線であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にてレーザープロファイラを用いて計測される。レーザープロファイラとしては、例えば、タイヤプロファイル測定装置(株式会社マツオ製)が使用される。
【0039】
また、タイヤ幅方向の半径aが、タイヤ総幅SW(図1参照)に対して0.30≦a/SW≦0.60の関係を有することが好ましく、0.35≦a/SW≦0.50の関係を有することがより好ましい。したがって、タイヤ幅方向の半径aは、タイヤサイズとの関係で設定される。上記下限により、タイヤ接地幅が確保されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される。上記上限により、タイヤ接地領域における接地圧分布が均一化されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される。
【0040】
タイヤ総幅SWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのサイドウォール間の(タイヤ側面の模様、文字などのすべての部分を含む)直線距離として測定される。
【0041】
また、指数pが、1.00<p≦7.00の範囲にあることが好ましく、2.00≦p≦6.00の範囲にあることがより好ましい。指数pが大きいほど、トレッド部センター領域におけるトレッドプロファイルPL1の落ち込み量が小さくなる。上記下限により、タイヤ接地幅が確保されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される。特に、指数pが4.05≦pの範囲、より好ましくは5.01≦pの範囲にあることにより、タイヤの旋回性能が効果的に高まる。また、上記上限により、タイヤ接地領域における接地圧分布が均一化されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される。
【0042】
また、タイヤ径方向の半径bが、タイヤ幅方向の半径aに対して0.10≦b/a≦1.20の関係を有することが好ましく、0.56≦b/a≦1.10の関係を有することが好ましい。上記下限により、トレッド部ショルダー領域のプロファイル形状が適正化され、上記上限により、接地圧分布が適正化されてコーナリングフォースが増加する。
【0043】
また、タイヤ径方向の半径bが、指数qに対して1.00<b/q≦30.0の関係を有する。また、比b/qが、2.00≦b/q≦28.0の関係を有することが好ましく、6.00≦b/q≦26.0の関係を有することがより好ましい。上記下限により、トレッドショルダー領域の肩落ち量が適正化され、上記上限により、直進走行時における接地面積とコーナリング走行時における接地面積とが両立する。
【0044】
また、指数qが、1.00≦q≦8.00の範囲にあることが好ましく、4.05≦q≦7.50の範囲にあることがより好ましい。指数qが大きいほど、トレッド部ショルダー領域におけるトレッドプロファイルPL1の落ち込み量が小さくなる。上記下限により、タイヤ接地幅が確保され、上記上限により、接地圧分布が均一化される。特に、指数qが4.05≦q(より好ましくは4.20≦q)の範囲にあることにより、接地圧分布がさらに均一化されて、コーナリングフォースが増加する。
【0045】
図2では、タイヤサイズ245/40R18 97Y、タイヤ接地幅210[mm]において、トレッドプロファイルPL1が上記スーパー楕円関数から成り、その半径a、bがa=136.28[mm]かつb=121.85[mm]に設定され、指数p、qがp=2.99かつq=6.57に設定されている。また、点P1~P4が、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地幅の0[%]、35[%]、60[%]および100[%]の各位置におけるトレッドプロファイルPL1上の点である。
【0046】
仮想プロファイルPL2は、楕円関数から成り、タイヤ赤道面CL上の点P1およびタイヤ接地端T上の点P4にてトレッドプロファイルPL1に一致し、また、その指数p、qがp=2.00かつq=2.00に設定されている。
【0047】
仮想プロファイルPL3は、インボリュート曲線から成り、タイヤ赤道面CL上の点P1およびタイヤ接地端T上の点P4にてトレッドプロファイルPL1に一致し、また、その数式が(X-105.27)^2/(105.27)^2+Y^2/(19.15)^2に設定されている。
【0048】
図3は、図2に記載した説明図の要部拡大図である。同図は、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の35[%]から60[%]までの領域におけるトレッドプロファイルPL1~PL3の拡大図を示している。
【0049】
図2および図3に示すように、スーパー楕円関数から成るトレッドプロファイルPL1は、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の30[%]以上65[%]以下(少なくとも35[%]以上60[%]以下)の領域にて、他の仮想プロファイルPL2、PL3に対してタイヤ径方向外側にオフセットした形状、すなわちタイヤ径方向に大きな外径を有する。上記の領域は、かかる構成では、トレッド部センター領域における接地形状がフラットとなり、すなわちセンター領域の接地長が均一化されて、接地圧分布が均一化される。これにより、トレッド部センター領域の偏摩耗が抑制される。
【0050】
また、図2に示すように、トレッドプロファイルPL1は、タイヤ接地端Tの近傍の領域、具体的にはタイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の95[%]以上の領域にて、他の仮想プロファイルPL2、PL3に対してタイヤ径方向内側にオフセットした形状を有する。かかる構成では、タイヤ接地端における接地圧集中が緩和されて、横力負荷時における接地圧が均一化される。これにより、コーナリングフォースが増加する。
【0051】
図4は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッドプロファイルを示す説明図である。図5は、図4に記載した説明図の要部拡大図である。同図は、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の60[%]および70[%]の位置にある点P3、P5を含む領域におけるトレッドプロファイルPL1、PL4の拡大図を示している。
【0052】
図4において、トレッドプロファイルPL1は、図2に記載したものと同じである。
【0053】
仮想プロファイルPL4は、いわゆる二段ラジアスから成るプロファイルであり、異なる径をもつ2種類の円弧を接続して成る。図4の構成では、仮想プロファイルPL4が、トレッド部センター領域のプロファイルを構成する大径の第一円弧(図中の符号省略)と、主としてトレッド部ショルダー領域を構成する小径の第二円弧とが、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の60[%]の位置(点P3)で接続されて、1つのトレッドプロファイルが形成されている。また、第一および第二の円弧が、1300[mm]および140[mm]の曲率半径をそれぞれ有し、また、タイヤ径方向内側に中心を有している。また、仮想プロファイルPL4が、タイヤ赤道面CL上の点P1およびタイヤ接地端T上の点P4にてトレッドプロファイルPL1に一致する。
【0054】
図4および図5に示すように、スーパー楕円関数から成るトレッドプロファイルPL1は、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の0[%]~60[%]付近までの領域にて、仮想プロファイルPL4に対して略一致した形状を有するが、第一および第二の円弧の接続点(すなわち、二段ラジアスの変曲点)である60[%]の位置からタイヤ幅方向外側の領域で、仮想プロファイルPL4に対してタイヤ径方向内側にオフセットした形状を有する。これは、二段ラジアスから成る仮想プロファイルPL4では、第二円弧が小径であるため、第一円弧との接続点の近傍でタイヤ径方向外側に凸となるように配置されることに起因する。
【0055】
上記の構成では、スーパー楕円関数から成るトレッドプロファイルPL1は、二段ラジアスから成る仮想プロファイルPL4と比較して、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の60[%]~70[%]の領域にて滑らかな形状を有する。これにより、トレッド部センター領域とショルダー領域との境界部における接地長の変化量が低減されて、タイヤの偏摩耗が抑制される。
【0056】
なお、上記に限らず、トレッドプロファイルPL1が、接続された4つ以上の円弧を用いて上記スーパー楕円関数を近似して構成されても良い(図示省略)。かかる構成としても、上記した二段ラジアスから成る仮想プロファイルPL4における問題点を解決できる。また、タイヤ成形金型の製造工程を簡易化できる。
【0057】
近似に用いられる円弧の中心座標および曲率半径は、例えば数学的算出法や幾何学的算出法を用いて計算し得る。また、近似に用いられる円弧と、基準輪郭線PL1の部分との距離が0.2[mm]以下であることが好ましく、0.1[mm]以下であることが好ましい。これにより、基準輪郭線PL1の部分が適正に近似される。
【0058】
また、上記の構成では、トレッドプロファイルPL1が、キャンバ角0[deg]でのタイヤ接地領域の全域にて、上記スーパー楕円関数で定義されることが好ましい。これにより、タイヤ接地領域のトレッドプロファイルが適正化される。
【0059】
キャンバ角は、車両装着時におけるタイヤの装着構造として、例えば、タイヤのサイドウォール部に付されたマークや凹凸、あるいはタイヤに添付されたカタログによって表示され得る。
【0060】
また、トレッドプロファイルPL1が、タイヤ赤道面CLからキャンバ角4[deg]までの接地領域にて、上記スーパー楕円関数で定義されることが好ましい。すなわち、スーパー楕円関数から成るトレッドプロファイルPL1が、タイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向外側の所定の位置(具体的には、図1におけるキャンバ角4[deg]でのタイヤ接地端T’)まで延在する。これにより、トレッドプロファイルが適正化されて、タイヤの操縦安定性能、サーキット走行性能および耐摩耗性能が向上する。
【0061】
[トレッドゲージ]
図6は、図1に記載した空気入りタイヤのトレッド部を示す拡大図である。同図は、タイヤ赤道面CLを境界とする片側領域を示している。
【0062】
図6の構成では、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドゲージGa1と、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の60[%]の位置(図2の点P3)におけるトレッドゲージGa2と、タイヤ接地端TにおけるトレッドゲージGa3とが、Ga3<Ga2≦Ga1の関係を有することが好ましく、Ga3<Ga2<Ga1の関係を有することがより好ましい。かかる構成では、トレッドゲージGa1~Ga3がトレッド部センター領域からショルダー領域に向かって減少するため、タイヤ接地圧が均一化される。
【0063】
トレッドゲージは、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッドプロファイル上の測定点からベルト層の最もタイヤ径方向外側にあるベルトプライのベルトコード面に下ろした垂線の長さとして測定される。ベルトコード面は、ベルトプライを構成する複数のベルトコードのタイヤ径方向外側の端部を含む面として定義される。
【0064】
さらに、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の0[%]以上50[%]未満の領域における平均トレッドゲージGa1_avと、50[%]以上80[%]未満の領域における平均トレッドゲージGa2_avと、80[%]以上100[%]以下の領域における平均トレッドゲージGa3_avとが、Ga3_av<Ga2_av≦Ga1_avの関係を有することが好ましく、Ga3_av<Ga2_av<Ga1_avの関係を有することがより好ましい。
【0065】
[踏面の膨出部]
図7は、図1に記載した空気入りタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、タイヤ子午線方向の断面視における陸部32(33)の踏面の拡大図を示し、また、陸部32(33)の踏面の膨出部を誇張して示している。
【0066】
図7に示すように、セカンド陸部32およびセンター陸部33の少なくとも一方がトレッドプロファイルPL1からタイヤ径方向外側に膨出した踏面を有することが好ましい。また、かかる構成において、踏面の最大膨出量Hpが、0.1[mm]≦Hp≦0.5[mm]の範囲にあることが好ましく、0.2[mm]≦Hp≦0.4[mm]の範囲にあることがより好ましい。図7の構成では、陸部32(33)の踏面が、陸部32(33)の幅方向の全域に渡って円弧状に膨出している。また、踏面の最大膨出量Hpと陸部32(33)の幅Wbとが、0.05≦Hp/Wb≦0.25の関係を有することが好ましく、0.07≦Hp/Wb≦0.20の関係を有することより好ましい。これにより、踏面の最大膨出量Hpが適正化される。
【0067】
踏面の最大膨出量Hpは、基準輪郭線(PL1)から陸部の踏面までの最大距離として測定される。
【0068】
陸部の幅Wbは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、陸部を区画する左右の周方向主溝の溝幅の測定点のタイヤ幅方向の距離として測定される。
【0069】
特にタイヤ接地幅が広く、陸部32(33)がタイヤ周方向に連続するリブである構成では、陸部32(33)内における接地圧分布が不均一になり易いという課題がある。この点において、陸部32(33)が上記膨出した踏面を有することにより、陸部32(33)内における接地圧分布が均一化される。
【0070】
[効果]
以上説明したように、この空気入りタイヤ1では、カーカス層13と、カーカス層13の径方向外側に配置される一対の交差ベルトと、交差ベルト141、142の径方向外側に配置されるトレッドゴム15とを備える(図1参照)。また、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのトレッドプロファイルPL1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ以下の楕円関数で定義される。ただし、aがタイヤ幅方向かつ長軸の半径であり、bがタイヤ径方向かつ短軸の半径であり、0<b<a、0<x、0<y、1.00<p、1.00<qおよびp≠qの条件を満たす。
【0071】
【数1】
【0072】
かかる構成では、タイヤ接地形状がフラットとなり、すなわち接地領域の接地長が均一化されて、接地圧分布が均一化される。これにより、タイヤのコーナリング性能が向上する利点があり、また、タイヤの耐偏摩耗性能が向上する利点がある。
【0073】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ幅方向の半径aが、タイヤ総幅SW(図1参照)に対して0.30≦a/SW≦0.60の関係を有する(図2参照)。上記下限により、タイヤ接地幅が確保されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される利点がある。上記上限により、タイヤ接地領域における接地圧分布が均一化されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される利点がある。
【0074】
また、この空気入りタイヤ1では、指数pが、1.00≦p≦7.00の範囲にある。上記下限により、タイヤ接地幅が確保されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される利点がある。また、上記上限により、タイヤ接地領域における接地圧分布が均一化されて、旋回走行時のコーナリングフォースが確保される利点がある。
【0075】
また、この空気入りタイヤ1では、指数pが、4.05≦pの範囲にある。かかる構成では、指数pが適正化されて、タイヤの旋回性能が効果的に高まる利点がある。
【0076】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ径方向の半径bが、タイヤ幅方向の半径aに対して0.10≦b/a≦1.20の関係を有する。上記下限により、上記下限により、トレッド部ショルダー領域のプロファイル形状が適正化される利点があり、上記上限により、接地圧分布が適正化されてコーナリングフォースが増加する利点がある。
【0077】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ径方向の半径bが、指数qに対して1.00<b/q≦30.0の関係を有する。上記下限により、トレッドショルダー領域の肩落ち量が適正化される利点があり、上記上限により、直進走行時における接地面積とコーナリング走行時における接地面積とが両立する利点がある。
【0078】
また、この空気入りタイヤ1では、指数qが、q≦1.95あるいは4.05≦qの範囲にある。かかる構成では、特に、指数qが、4.05≦qの範囲にあることにより、接地圧分布が均一化されて、コーナリングフォースが増加する利点がある。
【0079】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドプロファイルPL1とタイヤ赤道面CLおよびタイヤ接地端Tとの各交点P1、P4を通り、p=q=2である楕円関数の仮想プロファイルPL2(図2参照)を定義する。このとき、前記トレッドプロファイルPL1が、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の少なくとも35[%]から60[%]の領域にて、仮想プロファイルPL2に対してタイヤ径方向外側にオフセットする(図3参照)。かかる構成では、トレッド部センター領域における接地形状がフラットとなり、すなわち接地長が均一化されて、接地圧分布が均一化される。これにより、トレッド部センター領域の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0080】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドプロファイルPL1とタイヤ赤道面CLおよびタイヤ接地端Tとの各交点P1、P4を通り、p=q=2である楕円関数の仮想プロファイルPL2(図2参照)を定義する。このとき、トレッドプロファイルPL1が、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の95[%]以上の領域にて、仮想プロファイルPL2に対してタイヤ径方向内側にオフセットする。かかる構成では、タイヤ接地端における接地圧集中が緩和されて、横力負荷時における接地圧が均一化される。これにより、コーナリングフォースが増加する。
【0081】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドプロファイルPL1が、キャンバ角0[deg]でのタイヤ接地領域の全域にて、前記スーパー楕円関数で定義される。これにより、タイヤ接地領域のトレッドプロファイルが適正化される利点がある。
【0082】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドプロファイルPL1が、タイヤ赤道面CLからキャンバ角4[deg]までの接地領域にて、前記スーパー楕円関数で定義される。これにより、トレッドプロファイルが適正化されて、タイヤの操縦安定性能、サーキット走行性能および耐摩耗性能が向上する利点がある。
【0083】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドゲージGa1と、タイヤ赤道面CLからタイヤ接地端Tまでの距離の60[%]の位置におけるトレッドゲージGa2と、タイヤ接地端TにおけるトレッドゲージGa3とが、Ga3<Ga2≦Ga1の関係を有する(図6参照)。かかる構成では、トレッドゲージGa1~Ga3がトレッド部センター領域からショルダー領域に向かって単調減少するため、タイヤ接地圧が均一化される利点がある。
【0084】
また、この空気入りタイヤ1では、トレッドプロファイルPL1が、接続された4つ以上の円弧を用いて前記スーパー楕円関数を近似して成る。かかる構成としても、上記した二段ラジアスから成る仮想プロファイルPL4における問題点を解決できる利点がある。また、タイヤ成形金型の製造工程を簡易化できる利点がある。
【0085】
また、この空気入りタイヤ1では、タイヤ周方向に延在する複数の周方向溝21~23と、これらの周方向溝21~23に区画されて成るセンター陸部33およびセカンド陸部32とを備える(図1参照)。また、センター陸部33およびセカンド陸部32の少なくとも一方が、トレッドプロファイルPL1からタイヤ径方向外側に膨出した踏面を有する(図7参照)。また、踏面の膨出量Hpが、0.1[mm]≦Hp≦0.5[mm]の範囲にある。かかる構成では、陸部32(33)が上記膨出した踏面を有することにより、陸部32(33)内における接地圧分布が均一化される利点がある。
【実施例
【0086】
図8は、この発明の実施の形態にかかる空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0087】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)コーナリング性能および(2)耐摩耗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ245/40R18 97Yの試験タイヤがリムサイズ18×81/2Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに250[kPa]の内圧および6[kN]の荷重が付与される。また、試験タイヤが、試験車両である試験車両である排気量2000[cc]かつ4輪駆動方式のセダンの総輪に装着される。
【0088】
(1)コーナリング性能に関する評価では、試験車両が所定のテストコースを走行し、その走行タイムが測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど走行タイムが速く好ましい。
【0089】
(2)耐摩耗性能に関する評価では、室内摩耗試験機による台上試験にて、3万[km]を走行した後の陸部の摩耗量が測定される。そして、この測定結果に基づいて従来例を基準(100)とした指数評価が行われる。この指数評価は、数値が大きいほど摩耗耐久性に優れ、好ましい。
【0090】
実施例1の試験タイヤは、図1の構成を備え、トレッドプロファイルPL1が上記スーパー楕円関数から成る。また、タイヤ総幅SWが245[mm]であり、タイヤ接地幅が210[mm]である。
【0091】
従来例の試験タイヤは、実施例1の構成において、トレッドプロファイルが楕円(p=q=0)である。
【0092】
試験結果が示すように、実施例1~11の試験タイヤでは、タイヤのコーナリング性能および耐摩耗性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0093】
1 空気入りタイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;143 ベルトカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21、22 周方向溝;31~33 陸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8