(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】離型剤塗布ユニット、及び離型剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/58 20060101AFI20220817BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220817BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220817BHJP
B05B 15/70 20180101ALI20220817BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B29C33/58
B29C33/02
B29C35/02
B05B15/70
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2018151976
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】川井 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 安弘
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-083253(JP,A)
【文献】特開2004-306273(JP,A)
【文献】特開平06-344352(JP,A)
【文献】特表2005-520107(JP,A)
【文献】特開2000-288430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローダーによりローカバーを把持しながら移動させることで前記ローカバーが投入されるモールドと、前記モールドに投入されたローカバーの内側で膨張することにより当該ローカバーを前記モールドに押し付けるブラダーと、を備え、前記モールド及び前記ブラダーより前記ローカバーを加硫成形してタイヤを得る加硫機において、前記ブラダーと前記タイヤとの離型性を確保するために前記ブラダーの外周面に離型剤を塗布する離型剤塗布ユニットであって、
前記ローダーにより把持可能な被把持部を有し、当該被把持部を前記ローダーにより把持しながら
前記離型剤塗布ユニット全体を移動させることで前記ブラダーの上方位置に配置されるベース部と、
前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で、前記ベース部に対して前記ブラダーの上下方向の中心線回りに回転可能なアーム部と、
前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で前記ブラダーの外周面に対して水平方向に所定間隔を隔てて配置されるように、前記アーム部に支持されて上下方向に延びる柱部と、
前記柱部に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で前記中心線に向けて離型剤を噴射可能な噴射部と、
前記ベース部側から前記噴射部側に離型剤を供給する供給部と、
を備える離型剤塗布ユニット。
【請求項2】
前記供給部は、
前記ベース部に固定され、離型剤が流れる固定側流路を有する固定体と、
前記固定側流路に連通して離型剤が流れる回転側流路を有し、前記中心線回りに回転可能な回転体と、
前記回転体を前記固定体に対して回転可能に支持するベアリングと、
を有する、請求項1に記載の離型剤塗布ユニット。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の離型剤塗布ユニットと、
前記アーム部の回転及び前記噴射部の上下移動をそれぞれ制御するとともに、前記噴射部からの離型剤の噴射を制御する制御ユニットと、
を備える離型剤塗布装置。
【請求項4】
前記ローダーにより前記ベース部の被把持部を把持可能な状態で、前記離型剤塗布ユニットを支持する支持スタンドをさらに備える請求項3に記載の離型剤塗布装置。
【請求項5】
前記離型剤塗布ユニットを支持している前記支持スタンド、及び前記制御ユニットが設置される台車をさらに備える請求項4に記載の離型剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤塗布ユニット、及び離型剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤを加硫成形する加硫機では、ローカバー(未加硫のタイヤ)の内側にブラダーを挿入した状態で、ブラダーの内部に高温水蒸気等の加熱加圧媒体を充填し、膨張したブラダーの圧力によりローカバーをモールドに押しつけることでタイヤが得られる。その後は、ブラダーを収縮させてタイヤからブラダーを引き剥がすが、その際にタイヤからブラダーを引き剥がすことができない場合がある。そこで、ブラダーとタイヤとの間の離型性を確保するために、塗装ユニットによりブラダーの外周面に離型剤を塗布する作業が定期的に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、前記塗装ユニットを設置するために、加硫機の上方において塗装ユニットを水平方向に移動させる移動手段や、塗装ユニットを昇降させる昇降ユニットなどの大掛かりな設備が必要となり、塗装ユニットの設置場所が制限されるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑み、離型剤塗布ユニットの設置場所の自由度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の離型剤塗布ユニットは、ローダーによりローカバーを把持しながら移動させることで前記ローカバーが投入されるモールドと、前記モールドに投入された前記ローカバーの内側で膨張することにより当該ローカバーを前記モールドに押し付けるブラダーと、を備え、前記モールド及び前記ブラダーより前記ローカバーを加硫成形してタイヤを得る加硫機において、前記ブラダーと前記タイヤとの離型性を確保するために前記ブラダーの外周面に離型剤を塗布する離型剤塗布ユニットであって、前記ローダーにより把持可能な被把持部を有し、当該被把持部を前記ローダーにより把持しながら移動させることで前記ブラダーの上方位置に配置されるベース部と、前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で、前記ベース部に対して前記ブラダーの上下方向の中心線回りに回転可能なアーム部と、前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で前記ブラダーの外周面に対して水平方向に所定間隔を隔てて配置されるように、前記アーム部に支持されて上下方向に延びる柱部と、前記柱部に対して上下方向に移動可能に取り付けられ、前記ベース部が前記上方位置に配置された状態で前記中心線に向けて離型剤を噴射可能な噴射部と、前記ベース部側から前記噴射部側に離型剤を供給する供給部と、を備える。
【0007】
本発明の離型剤塗布ユニットによれば、ローカバーをモールドに投入するためのローダーによりベース部の被把持部を把持しながら移動させることで、ベース部を加硫機のブラダーの上方位置に配置することができる。そして、この状態から、アーム部を柱部と共に回転させるとともに柱部に対して噴射部を上下移動させながら噴射部から離型剤を噴射することで、ブラダーの外周面に離型剤を塗布することができる。このように本発明によれば、加硫機と共に既設されたローダーを用いることにより、離型剤塗布ユニットをブラダーまで移動させて離型剤を塗布することができる。従って、ローダーによりローカバーがモールドに投入される加硫機であれば、離型剤塗布ユニットを設置することができるので、離型剤塗布ユニットの設置場所の自由度を高めることができる。
【0008】
また、ローダーにより離型剤塗布ユニットのベース部をブラダーの上方位置に配置することで、アーム部を容易にブラダーの上下方向の中心線回りに回転可能に配置することができる。これにより、噴射部は、柱部を介してアーム部と共にブラダーの上下方向の中心線回りに回転するため、離型剤を容易にブラダーの外周面全体にわたって均一に塗布することができる。
【0009】
(2)前記供給部は、前記ベース部に固定され、離型剤が流れる固定側流路を有する固定体と、前記固定側流路に連通して離型剤が流れる回転側流路を有し、前記中心線回りに回転可能な回転体と、前記回転体を前記固定体に対して回転可能に支持するベアリングと、を有するのが好ましい。
この場合、ベース部に固定された固定体にベアリングを介して回転体が回転可能に支持されることによって、固定体の固定側流路と回転体の回転側流路とが連通している。このため、例えば、離型剤を導入するホース等の可撓接続管を固定側流路に接続し、回転側流路には噴射部に一端が接続された流路の他端を接続することで、可撓接続管に導入した離型剤を、固定側流路及び回転側流路等を介して噴射部から噴射することができる。これにより、可撓接続管は固定側となるベース部側に接続されるので、回転側となる噴射部がアーム部と共に回転しても、可撓接続管が他部材に絡まるのを防止することができる。
【0010】
(3)本発明の離型剤塗布装置は、前記離型剤塗布ユニットと、前記アーム部の回転及び前記噴射部の上下移動をそれぞれ制御するとともに、前記噴射部からの離型剤の噴射を制御する制御ユニットと、を備える。
本発明の離型剤塗布装置によれば、制御ユニットにより、離型剤塗布ユニットにおけるアーム部の回転、噴射部の上下移動、及び噴射部からの離型剤の噴射を制御するので、これらの制御を適切に行うことで、ブラダーの外周面に離型剤を簡単にかつ精度良く塗布することができる。
【0011】
(4)前記離型剤塗布装置は、前記ローダーにより前記ベース部の被把持部を把持可能な状態で、前記離型剤塗布ユニットを支持する支持スタンドをさらに備えるのが好ましい。
この場合、支持スタンドにより離型剤塗布ユニットが支持されている状態で、ローダーによりベース部の被把持部を容易に把持することができる。
【0012】
(5)前記離型剤塗布装置は、前記離型剤塗布ユニットを支持している前記支持スタンド、及び前記制御ユニットが設置される台車をさらに備えるのが好ましい。
この場合、離型剤塗布ユニットを支持している支持スタンド及び制御ユニットを設置した台車を移動させることで、離型剤塗布装置を所望の位置へ移動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、離型剤塗布ユニットの設置場所の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る離型剤塗布ユニットが用いられる加硫機及びローダーの平面図である。
【
図3】離型剤塗布ユニットの一部断面正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る離型剤塗布装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る離型剤塗布ユニットが用いられる加硫機及びローダーの平面図である。
図2は、
図1のローダーの正面図である。
図1及び
図2において、加硫機1及びローダー3は、タイヤの製造装置の一部でもある。
【0016】
タイヤの製造では、ローカバーRは、図示しない成形機において、トレッドやサイドウォール等の部材を組み合わせることにより得られる。この成形機において成形されたローカバーRは、搬送台車等により加硫機1の近くまで搬送された後、ローダー3により把持されて加硫機1に移動される。加硫機1は、ローカバーRからタイヤを加硫成形するものである。
【0017】
[加硫機]
加硫機1は、ローダー3によりローカバーRを把持しながら移動させることでローカバーRが投入されるモールド2と、モールド2に投入されたローカバーRの内側に配置されるブラダー4とを備える。なお、
図1では、説明の便宜上、モールド2の一部のみを図示している(
図3も同様)。ブラダー4は、その内部に高温水蒸気等の加熱加圧媒体が充填されることで膨張するものである。ローダー3によりモールド2に投入されたローカバーRは、ブラダー4を膨張させることにより、加圧及び加熱されてモールド2に強く押し付けられる。これにより、タイヤが得られる。
【0018】
[ローダー]
ローダー3は、モールド2に近接して設置された支柱3aと、支柱3aに一端部が取り付けられた水平方向に延びるフレーム3bと、フレーム3bの他端部の下側に取り付けられたチャック3cとを有している。フレーム3bは、図示しない駆動手段により支柱3aに対して昇降可能であり、かつ図示しない他の駆動手段により支柱3aに対して水平方向に旋回可能である。
【0019】
チャック3cは、ローカバーRを内側から把持するものであり、図示されない拡縮機構を有する。チャック3cは、縮径状態でフレーム3bと共に下降することにより、ローカバーRの内側に挿入される。挿入後、チャック3cを拡径することで、ローカバーRはチャック3cにより把持される。そして、ローカバーRを把持したチャック3cをフレーム3bと共に上昇、旋回及び下降させることで、ローカバーRはモールド2に投入される。
【0020】
[離型剤塗布ユニット]
図3は、離型剤塗布ユニット10の一部断面正面図である。
図4は、離型剤塗布ユニット10の平面図である。
図3及び
図4において、離型剤塗布ユニット10は、加硫機1のブラダー4とタイヤとの離型性を確保するために、ブラダー4の外周面4aに離型剤を塗布するものである。本実施形態の離型剤塗布ユニット10は、ベース部11、回転部12、アーム部13、柱部14、噴射部15、及び供給部16を備える。
【0021】
ベース部11は、凸状に形成された中央本体部11aと、中央本体部11aの下面に固定された円環部11bと、円環部11bの外周縁から上方に突出するように一体に形成された環状の被把持部11cとを有している。被把持部11cは、その径方向内側が開口するように断面鉤状に形成されており、ローダー3のチャック3cにより把持可能とされている。
【0022】
チャック3cは、縮径状態でフレーム3bと共に下降することにより、被把持部11cの内側に挿入される。挿入後、チャック3cを拡径することで、被把持部11cがチャック3cにより把持される。そして、被把持部11cをチャック3cにより把持しながら、ローダー3のフレーム3bを上昇、旋回及び下降させることで、
図3に示すようにブラダー4の上方位置にベース部11が配置される。この上方位置において、ベース部11の上下方向の中心線は、ブラダー4の上下方向の中心線C上に配置される。
【0023】
回転部12は、例えば円板状に形成されており、ベース部11の下方に配置されている。回転部12の中心部は、供給部16の後述する回転体18の先端部に固定されている。これにより、回転部12は、回転体18と共に中心線C回りに回転可能とされている。
【0024】
アーム部13は、回転部12の下方において水平方向に延びて配置されている。アーム13は、回転部12の下面に固定された一対のブラケット12aに支持されている。これにより、アーム13は、ベース部11に対して、回転部12と共に中心線C回りに回転可能である。アーム13の一端部13aは、
図3に示すように、膨張させたブラダー4の外周面4aよりも径方向外側に突出している。なお、
図4ではアーム部13の図示を省略している。
【0025】
柱部14は、アーム13の一端部13aから下方に延びて配置されており、当該一端部13aに柱部14の上端部が支持されている。これにより、柱部14は、膨張させたブラダー4の外周面4aに対して水平方向に所定間隔を隔てて配置されている。従って、柱部14は、アーム13が中心線C回りに回転することで、ブラダー4の外周面4aに対して所定間隔を隔てながらブラダー4の周囲を旋回するようになっている。
【0026】
噴射部15は、ブラダー4の外周面4aに向けて離型剤を噴射するものであり、柱部14に対して上下方向に移動可能に取り付けられている。柱部14には、噴射部15を上下移動させるボールねじ等の上下移動駆動手段(図示省略)が設けられている。噴射部15は、ブラダー4の中心線Cに向けて離型剤を噴射するように配置されている。
【0027】
これにより、アーム13を中心線C回りに回転させて柱部14をブラダー4の周囲で旋回させるとともに噴射部15を上下移動させながら噴射部15から離型剤を噴射することで、ブラダー4の外周面4a全体に離型剤を塗布することができる。その際、ブラダー4を膨張させた状態で噴射部15から離型剤を噴射するため、外周面4a全体にわたって離型剤を均一に塗布することができる。なお、本実施形態の噴射部15は、膨張させたブラダー4の外周面4aに離型剤を噴射しているが、収縮させたブラダー4の外周面4aに離型剤を噴射してもよい。
【0028】
図5は、離型剤塗布ユニット10の供給部16の一例を示す拡大断面図である。
図3及び
図5において、供給部16は、後述するタンク50から圧送された離型剤を、ベース部11側(固定側)から噴射部15側(回転側)に供給するものである。本実施形態の供給部16は、例えばローターシールからなり、離型剤が流れる固定側流路17aを内部に有する固定体17と、離型剤が流れる回転側流路18aを内部に有する回転体18と、固定体17と回転体18との間に設けられた一対のベアリング19とを有している。
図3に示す状態において、供給部16の軸線Xは、ブラダー4の中心線C上に配置されている。
【0029】
固定体17は、ベース部11の中央本体部11aに固定されている。固定側流路17aは、固定体17の中央部において軸線X方向に延びて形成されている。固定側流路17aの下端は、固定体17の下面において開口している。固定体17の外周面には、固定側流路17aの上端部に連通する入口ポート17bが形成されている。タンク50から圧送された離型剤は、入口ポート17bから固定側流路17aに流入する。
【0030】
回転体18は、円筒状に形成されており、その内部空間が回転側流路18aとされている。回転体18は、固定体17の固定側流路17aに挿入されており、回転側流路18aの上側の開口は、固定側流路17aに連通している。回転側流路18aの下側の開口は、出口ポート18bとされており、出口ポート18bには、噴出部15に一端が接続されたホース等の流路(図示省略)の他端が接続されている。
【0031】
ベアリング19は、例えばボールベアリングからなる。ベアリング19は、固定体17の内周面の下端部と、当該下端部に対向する回転体18の外周面との間において上下一対配置されており、回転体18を固定体17に対して回転可能に支持している。回転体18は、図示しない回転駆動手段により軸線X(中心線C)回りに回転駆動される。
以上の構成により、入口ポート17bから固定側流路17aに流入した離型剤は、回転する回転体18の回転側流路18aを通過して出口ポート18bから噴出部15に向けて排出される。
【0032】
[離型剤塗布装置]
図6は、本発明の一実施形態に係る離型剤塗布装置5を示す側面図である。
図6において、本実施形態の離型剤塗布装置5は、上述した離型剤塗布ユニット10と、制御ユニット30と、離型剤塗布ユニット10を支持する支持スタンド40と、離型剤を貯留しているタンク50と、制御ユニット30、支持スタンド40及びタンク50が設置される台車60とを備えている。
【0033】
制御ユニット30は、供給部16の回転体18を回転させる前記回転駆動手段の駆動を制御することで、アーム部13の回転を制御する。また、制御ユニット30は、噴射部15を上下移動させる前記上下移動駆動手段の駆動を制御することで、噴射部15の上下移動を制御する。さらに、制御ユニット30は、後述する圧送ポンプ53の駆動を制御することで、噴射部15からの離型剤の噴射を制御する。
【0034】
制御ユニット30が上記制御を行うにあたり、ローダー3と支持スタンド40に支持された離型剤塗布ユニット10との位置関係、離型剤塗布ユニット10による離型剤の塗布作業を行う頻度、及び1回の塗布作業における離型剤の噴射量などを予め決めておくのが好ましい。この場合、ローダー3の駆動を制御する制御装置(図示省略)と、上記制御を行う制御ユニット30とにより、ローダー3と離型剤塗布ユニット10とを用いたブラダー4への離型剤の塗布作業を完全自動化することができる。
【0035】
支持スタンド40は、基台41上に複数の支柱42と複数の支持板43とを図示のように組み付けて構成されている。最上段に配置された所定数の支柱42の上端には、離型剤塗布ユニット10の回転部12が載置されている。これにより、支持スタンド40は、ローダー3のチャック3cによりベース部11の被把持部11cを把持可能な状態で離型剤塗布ユニット10を支持するようになっている。
【0036】
タンク50は、離型剤を貯留しているタンク本体51と、タンク本体51に接続された吐出配管52とを有している。吐出配管52の途中には、タンク本体51内の離型剤を外部に圧送するための圧送ポンプ53と、吐出配管52を開閉するための開閉バルブ54とが設けられている。吐出配管52の開放端部には、ホース等の可撓接続管(図示省略)の一端が接続されており、当該可撓接続管の他端は、離型剤塗布ユニット10における供給部16の入口ポート17b(
図5参照)に接続されている。これにより、圧送ポンプ53を駆動することで、タンク本体51に貯留されている離型剤を離型剤塗布ユニット10に向けて圧送することができる。
【0037】
台車60は、台車本体61と、台車本体61の下側に回転可能に取り付けられた複数の車輪62と、台車本体61の長手方向の一端部から上方に延びる取手フレーム63とを有している。台車本体61の上面には、離型剤塗布ユニット10を支持している支持スタンド40とタンク50とが載置されている。取手フレーム63には、制御ユニット30が取り付けられている。この状態で台車60を加硫機1に近接する位置まで移動させることで、離型剤塗布ユニット10のベース部11をローダー3により把持可能な位置に配置することができる。そして、ローダー3によりベース部11を把持しながら上昇、旋回及び下降させることで、
図3に示すように、ベース部11をブラダー4の上方位置に配置することができる。
【0038】
[作用効果]
本実施形態の離型剤塗布ユニット10では、ローカバーRをモールド2に投入するためのローダー3によりベース部11の被把持部11cを把持しながら移動させることで、ベース部11を加硫機1のブラダー4の上方位置に配置することができる。そして、この状態から、アーム部13を柱部14と共に回転させるとともに柱部14に対して噴射部15を上下移動させながら噴射部15から離型剤を噴射することで、ブラダー4の外周面4aに離型剤を塗布することができる。
【0039】
このように本実施形態によれば、加硫機1と共に既設されたローダー3を用いることにより、離型剤塗布ユニット10をブラダー4まで移動させて離型剤を塗布することができる。従って、ローダー3によりローカバーRがモールド2に投入される加硫機1であれば、離型剤塗布ユニット10を設置することができるので、離型剤塗布ユニット10の設置場所の自由度を高めることができる。
【0040】
また、ローダー3により離型剤塗布ユニット10のベース部11をブラダー4の上方位置に配置することで、アーム部13を容易にブラダー4の中心線C回りに回転可能に配置することができる。これにより、噴射部15は、柱部14を介してアーム部13と共にブラダー4の中心線C回りに回転するため、離型剤を容易にブラダー4の外周面4a全体にわたって均一に塗布することができる。
また、ローダー3により離型剤塗布ユニット10を移動させるので、作業者が、熱源(プラテン板等)を有する加硫機1に近づいて離型剤塗布ユニット10を移動させる作業が不要となる。
【0041】
また、噴射部15に離型剤を供給する供給部16では、ベース部11に固定された固定体17にベアリング19を介して回転体18が回転可能に支持されることによって、固定体17の固定側流路17aと回転体18の回転側流路18aとが連通している。このため、離型剤を導入する可撓接続管を固定側流路17aに接続し、回転側流路18aには噴射部15に一端が接続された流路の他端を接続することで、可撓接続管に導入した離型剤を、固定側流路17a及び回転側流路18a等を介して噴射部15から噴射することができる。これにより、可撓接続管は固定側となるベース部11側に接続されるので、回転側となる噴射部15がアーム部13と共に回転しても、可撓接続管が他部材に絡まるのを防止することができる。
【0042】
本実施形態の離型剤塗布装置5によれば、制御ユニット30により、離型剤塗布ユニット10におけるアーム部13の回転、噴射部15の上下移動、及び噴射部15からの離型剤の噴射を制御するので、これらの制御を適切に行うことで、ブラダー4の外周面4aに離型剤を簡単にかつ精度良く塗布することができる。その結果、加硫成形されたタイヤの品質を安定させることができる。
【0043】
また、離型剤塗布装置5は、ローダー3によりベース部11の被把持部11cを把持可能な状態で離型剤塗布ユニット10を支持する支持スタンド40を備えているので、支持スタンド40により離型剤塗布ユニット10が支持されている状態で、ローダー3によりベース部11の被把持部11cを容易に把持することができる。
【0044】
また、離型剤塗布ユニット10を支持している支持スタンド40、および制御ユニット30が設置されている台車60を移動させることで、離型剤塗布装置5を所望の位置へ移動させることができる。
【0045】
[その他]
本実施形態の制御ユニット30は、台車60に設置されているが、離型剤塗布ユニット10(例えばベース部11等)に設けられていてもよい。また、本実施形態の支持スタンド40は、台車60に設置されているが、地面に設置されていてもよい。さらに、本実施形態の離型剤塗布ユニット10は、支持スタンド40により支持されているが、台車60直接設置されていてもよいし、地面に設置されていてもよい。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 加硫機
2 モールド
3 ローダー
4 ブラダー
4a 外周面
5 離型剤塗布装置
10 離型剤塗布ユニット
11 ベース部
11c 被把持部
13 アーム部
14 柱部
15 噴射部
16 供給部
17 固定体
17a 固定側流路
18 回転体
18a 回転側流路
19 ベアリング
30 制御ユニット
40 支持スタンド
60 台車
C 中心線
R ローカバー