(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 75/32 20060101AFI20220817BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20220817BHJP
F02B 75/04 20060101ALI20220817BHJP
F01M 9/10 20060101ALI20220817BHJP
F16C 7/06 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
F02B75/32 A
F02D15/02 C
F02B75/04
F01M9/10 M
F16C7/06
(21)【出願番号】P 2018164985
(22)【出願日】2018-09-04
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】市原 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】有永 毅
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035127(WO,A1)
【文献】特開2005-248806(JP,A)
【文献】特開昭61-296937(JP,A)
【文献】特開2013-241846(JP,A)
【文献】特開2010-116777(JP,A)
【文献】特開2018-009634(JP,A)
【文献】特開2012-241743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0048383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/04 , 75/32
F02D 15/00
F02F 3/00
F01M 9/00
F16C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御軸の回転位置に応じて圧縮比を変更する可変圧縮比機構と、
上記第1制御軸と平行に配置された第2制御軸と、
一端が上記第1制御軸から突出する第1アーム部に第1連結ピンを介して回転可能に連結されるとともに、他端が上記第2制御軸から突出する第2アーム部に第2連結ピンを介して回転可能に連結されたレバーと、
上記第2制御軸に接続され、上記第2制御軸の回転位置を変更及び保持することで上記第1制御軸の回転位置を変更及び保持するアクチュエータと、を有し、
上記レバーは、上記第1連結ピンが挿入される第1連結ピン穴と、上記第2連結ピンが挿入される第2連結ピン穴を有し、
上記第1連結ピン穴及び上記第2連結ピン穴の少なくとも一方の内周面には、圧縮荷重が作用する側または引っ張り荷重が作用する側の少なくとも一方に、潤滑油を保持可能な油保持部が形成され
、
上記油保持部は、上記第1連結ピンの外周面または上記第2連結ピンの外周面と接していることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
上記油保持部は、内周面の周方向に沿って連続する溝であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
上記油保持部は、内周面の周方向に沿って連続する溝と、当該溝内に形成された内周面の周方向に沿って不連続な複数の凹部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項4】
上記油保持部は、内周面の周方向に沿って不連続な複数の凹部であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項5】
上記油保持部は、圧縮荷重が作用する側に形成される圧縮側油保持部と、引っ張り荷重が作用する側に形成される引っ張り側油保持部と、を有し、
上記圧縮側油保持部は、同一内周面に形成された引っ張り側油保持部よりも周方向に沿った長さが長くなるよう形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項6】
上記第1連結ピンは、円筒形状を呈し、かつ内径が軸方向の中央側ほど小さくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項7】
上記第2連結ピンは、円筒形状を呈し、かつ内径が軸方向の中央部分に近づくほど小さくなるよう形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮比を変更する可変圧縮比機構を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
複リンク式のピストンクランク機構を利用して内燃機関の圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関が従来から知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1制御軸の回転位置に応じて内燃機関の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、第1制御軸の回転位置を変更及び保持するアクチュエータと、第1制御軸と平行に配置され、アクチュエータの回転が減速機を介して伝達される第2制御軸と、第1制御軸と第2制御軸とを連結するレバーと、を有する可変圧縮比内燃機関が開示されている。第1制御軸と第2制御軸とは、レバーにより連動して回転する。
【0004】
この特許文献1の可変圧縮比内燃機関におけるレバーは、一端が第1制御軸から径方向に延出する第1アーム部の先端に第1連結ピンを介して回転可能に連結され、他端が第2制御軸から径方向に延出する第2アーム部の先端に第2連結ピンを介して回転可能に連結されている。第1連結ピンは、第1アーム部の先端に貫通形成された第1ピン孔とレバーの一端に貫通形成された第3ピン孔に挿入される。第2連結ピンは、第2アーム部の先端に貫通形成された第2ピン孔とレバーの他端に貫通形成された第4ピン孔に挿入される。
【0005】
このような特許文献1の可変圧縮比内燃機関においては、機関運転中に、第1制御軸に対して大きな燃焼荷重や主運動部品の慣性力が繰り返し作用する。
【0006】
そこで、特許文献1においては、このような荷重による第1制御軸の振動がアクチュエータ側に伝達されるのを防止するために、第1制御軸軸方向に沿った第1制御軸とレバーとの間の軸方向クリアランス、第2制御軸軸方向に沿った第2制御軸とレバーとの間の軸方向クリアランス、第1制御軸径方向に沿った第1連結ピンの外周面と第1ピン孔の内周面との間の径方向クリアランス、第1制御軸径方向に沿った第1連結ピンの外周面と第3ピン孔の内周面との間の径方向クリアランス、第2制御軸径方向に沿った第2連結ピンの外周面と第2ピン孔の内周面との間の径方向クリアランス、第2制御軸径方向に沿った第2連結ピンの外周面と第4ピン孔の内周面との間の径方向クリアランス等を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの軸方向クリアランスや径方向クリアランスの調整の結果、軸方向クリアランスや径方向クリアランスが小さく設定される場合、可変圧縮比内燃機関を構成する各種部品の寸法公差により、レバー、第1連結ピン、第2連結ピン等が組み付けられなくなる虞がある。
【0009】
つまり、可変圧縮比内燃機関の運転中、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動を低減するにあたっては、更なる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の内燃機関は、第1制御軸の回転位置に応じて圧縮比を変更する可変圧縮比機構と、上記第1制御軸と平行に配置された第2制御軸と、一端が上記第1制御軸から突出する第1アーム部に第1連結ピンを介して連結されるとともに、他端が上記第2制御軸から突出する第2アーム部に第2連結ピンを介して連結されたレバーと、上記第2制御軸に接続され、上記第2制御軸の回転位置を変更及び保持することで上記第1制御軸の回転位置を変更及び保持するアクチュエータと、を有している。
【0011】
上記レバーは、上記第1連結ピンが挿入される第1連結ピン穴と、上記第2連結ピンが挿入される第2連結ピン穴を有し、これら連結ピン穴の少なくとも一方の内周面には、圧縮荷重が作用する側または引っ張り荷重が作用する側の少なくとも一方に、潤滑油を保持可能な油保持部が形成されている。そして、上記油保持部は、上記第1連結ピンの外周面または上記第2連結ピンの外周面と接していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、油保持部に保持された潤滑油の粘性を利用して、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸から第2制御軸へ伝達されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の内燃機関に適用される可変圧縮比機構を模式的に示した説明図。
【
図2】第1制御軸とアクチュエータとの連結機構を模式的に示した説明図。
【
図3】第1連結ピン及び第2連結ピンを模式的に示した斜視図。
【
図5】可変圧縮比機構の各部に作用する荷重の向きを模式的に示した説明図であり、(a)は燃焼荷重の向きを模式的に示し、(b)は慣性荷重の向きを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の内燃機関に適用される可変圧縮比機構1をクランクシャフト軸方向から見た概略構成を模式的に示した説明図である。
【0016】
可変圧縮比機構1を有する内燃機関は、例えば、自動車等の車両に搭載される。
【0017】
可変圧縮比機構1は、ピストン2と、第1リンクとしてのアッパリンク4と、第2リンクとしてのロアリンク7と、第3リンクとしてのコントロールリンク9と、から大略構成されている。可変圧縮比機構1は、ピストン2とクランクシャフト6のクランクピン6aとを複数のリンクで連係した複リンク式ピストンクランク機構である。
【0018】
ピストン2は、ピストンピン3を介してアッパリンク4の一端に回転可能に連結されている。
【0019】
アッパリンク4の他端は、第1リンク連結ピンとしてのアッパピン5を介してロアリンク7の一端側に回転可能に連結されている。
【0020】
クランクシャフト6は、複数のジャーナル部6bとクランクピン6aとを備えており、シリンダブロック11(後述の
図5を参照)の主軸受(図示せず)に、ジャーナル部6bが回転可能に支持されている。クランクピン6aは、ジャーナル部6bから所定量偏心している。
【0021】
ロアリンク7は、クランクシャフト6のクランクピン6aに回転可能に連結されている。
【0022】
コントロールリンク9の一端は、第3リンク連結ピンとしてのコントロールピン8を介してロアリンク7の他端側に回転可能に連結されている。
【0023】
コントロールリンク9の他端は、機関本体側に支持される第1制御軸10の偏心軸部10aに回転可能に連結されている。
【0024】
金属製の第1制御軸10は、クランクシャフト6と平行に配置され、例えば、シリンダブロック11に回転可能に支持される。
【0025】
つまり、金属製の偏心軸部10aに回転可能に連結されているコントロールリンク9の他端は、機関本体側に揺動可能に支持されていることになる。
【0026】
偏心軸部10aの中心軸は、第1制御軸10の回転中心に対して所定量偏心している。
【0027】
可変圧縮比機構1は、第1制御軸10を回転させて偏心軸部10aの位置を変更することで、上死点におけるピストン2の位置が変更可能となり、内燃機関の機械的圧縮比を変更することができる。
【0028】
第1制御軸10は、ロアリンク7の自由度を規制するものであり、アクチュエータ21によって回転位置が変更及び保持される。
【0029】
図2は、第1制御軸10とアクチュエータ21との連結機構を模式的に示した説明図である。
【0030】
第1制御軸10は、金属製で二股状の第1アーム部22を有し、シリンダブロック11やその下側(下部)に固定されるオイルパンアッパ23等からなる内燃機関本体の内部に回転可能に支持されている。第1アーム部22は、第1制御軸10の径方向外側に向かって延出している。つまり、第1アーム部22は、第1制御軸10から突出している。
【0031】
アクチュエータ21は、例えば電動モータからなっており、上記内燃機関本体の外部に配置されている。アクチュエータ21の回転は、減速機(図示せず)により減速され、金属製の第2制御軸24の回転として取り出される。すなわち、第2制御軸24は、上記減速機を介してアクチュエータ21に接続されている。
【0032】
第2制御軸24は、第1制御軸10と平行に配置されており、オイルパンアッパ側壁27に沿って、機関前後方向に延在している。
【0033】
第2制御軸24は、金属製で二股状の第2アーム部26を有している。第2アーム部26は、第2制御軸24の径方向外側に向かって延出している。つまり、第2アーム部26は、第2制御軸24から突出している。
【0034】
上記減速機、第2制御軸24及び第2アーム部26は、上記内燃機関本体の外部に配置されているとともに、上記内燃機関本体の側壁であるオイルパンアッパ側壁27に取り付けられたハウジング28に収容されている。本実施例では、このハウジング28の後端にアクチュエータ21が取り付けられている。
【0035】
第1アーム部22と、第2アーム部26とは、第1制御軸10及び第2制御軸24に対して直交する細長い金属製のレバー30により連係されている。すなわち、潤滑用のオイル(潤滑油)が飛散する上記内燃機関本体内に配置された第1制御軸10と、上記内燃機関本体の外部に設けられた第2制御軸24とは、オイルパンアッパ側壁27を貫通するレバー30によって機械的に連結された構成となっている。
【0036】
第1アーム部22の先端には、レバー30の一端が挟み込まれている。第1アーム部22とレバー30は、金属製で円筒状の第1連結ピン31を介して回転可能に連結されている。第1連結ピン31は、第1制御軸10に平行な状態で、第1アーム部22の先端及びレバー30の一端を貫通している。
【0037】
第1連結ピン31を介して連結された第1アーム部22とレバー30との連結部分は、例えば上記内燃機関本体内を飛散する潤滑油や、上記内燃機関本体内の底部に滞留した潤滑油によって潤滑される。
【0038】
第2アーム部26の先端には、レバー30の他端が挟み込まれている。第2アーム部26とレバー30は、金属製で円筒状の第2連結ピン32を介して回転可能に連結されている。第2連結ピン32は、第2制御軸24に平行な状態で、第2アーム部26の先端及びレバー30の他端を貫通している。
【0039】
第2連結ピン32を介して連結された第2アーム部26とレバー30との連結部分は、例えばハウジング28内に供給された潤滑油によって潤滑される。ハウジング28内に供給された潤滑油は、例えば、レバー30が貫通するオイルパンアッパ側壁27の開口部(図示せず)を介して上記内燃機関本体内に戻される。
【0040】
図3及び
図4は、第1連結ピン31及び第2連結ピン32を示す斜視図と断面図である。なお、第1連結ピン31と第2連結ピン32は相似形状であるので、便宜上共通の図面を用いて両者を説明する。
【0041】
第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、
図3及び
図4に示すように、円筒状を呈し、かつ内径が軸方向の中央部分に近づくほど小さくなるよう形成されている。換言すれば、円筒形状の第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、軸方向に沿って肉厚が変化しており、中央で肉厚が最も厚くなり、両側の端部に近づくほど肉厚が薄くなるよう形成されている。さらに言えば、第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、例えば肉厚一定で外径と中央部分の内径が同一の円筒部材に対して中央部から両端の端部に近づくほど肉厚が薄くなるよう機械加工を施すことによって得ることができる。なお、第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、中央で肉厚が最も厚くなり、両側の端部に近づくほど肉厚が薄くなるように鋳造してもよい。
【0042】
アクチュエータ21の回転に伴い第2制御軸24が回転すると、第2制御軸24の回転に伴う第2アーム部26の揺動により第1制御軸10に直交する平面に沿ってレバー30が往復運動する。そして、レバー30の往復運動に伴い第1アーム部22が揺動することで第1制御軸10が回転する。
【0043】
つまり、アクチュエータ21は、第2制御軸24の回転位置を変更及び保持することで第1制御軸10の回転位置を変更及び保持することが可能となっている。
【0044】
このような内燃機関においては、
図5に示すように、機関運転中に、第1制御軸10に対して燃焼荷重や主運動部品の慣性力である慣性荷重が繰り返し作用する。第1制御軸10に作用する燃焼荷重は、第1制御軸10に作用する慣性荷重に比べて大きくなる。
【0045】
図5は、可変圧縮比機構1の各部に繰り返し作用する荷重の向きを模式的に示した説明図である。
図5(a)は、可変圧縮比機構1に作用する燃焼荷重の向きを模式的に示した説明図である。
図5(b)は、可変圧縮比機構1に作用する慣性荷重の向きを模式的に示した説明図である。
【0046】
燃焼荷重や慣性荷重により第1制御軸10に生じた振動が第2制御軸24に伝達されると、第2制御軸24に接続された減速機やアクチュエータ21の耐久性及び信頼性の低下を招く虞がある。
【0047】
そこで、本実施例(第1実施例)のレバー30は、
図6~
図8に示すにように、第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35が形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36が形成されている。
【0048】
図6は、第1実施例におけるレバー30の斜視図である。
図7は、第1実施例におけるレバー30の平面図である。
図8は、第1実施例におけるレバー30の要部断面であり、
図7のA-A線に沿った断面図である。
【0049】
レバー30は、第1アーム部22に接続される一端側が略直線状となり、第2アーム部26に接続される他端側が円弧状に湾曲した形状となっている。
【0050】
詳述すると、レバー30は、クランクシャフト軸方向視で、第1連結ピン穴33の中心C1と第2連結ピン穴34の中心C2とを結ぶ直線Lに対して、レバー30の長手方向の略中央位置よりも一端側となる部分は直線Lと重なり合い、レバー30の長手方向の略中央位置よりも他端側となる部分は中間部分が直線Lと重ならないように湾曲している。
【0051】
レバー30は、一端に第1連結ピン31が挿入される円形の第1連結ピン穴33が形成され、他端に第2連結ピン32が挿入される円形の第2連結ピン穴34が形成されている。
【0052】
一端側第1溝35は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する溝であって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。一端側第1溝35は、
図8に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0053】
他端側第1溝36は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する溝であって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。他端側第1溝36は、
図8に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0054】
一端側第1溝35及び他端側第1溝36は、潤滑油を保持可能な油保持部(圧縮側油保持部)であり、内部に保持された潤滑油の粘性を利用して、主として燃焼荷重が作用した際に第1制御軸10から第2制御軸24へ振動が伝達されることを抑制することができる。
【0055】
つまり、内燃機関は、レバー30の一端側第1溝35及び他端側第1溝36に保持された潤滑油の粘性を利用することで、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸10から第2制御軸24へ伝達されることを抑制できる。
【0056】
また、レバー30は、一端側第1溝35及び他端側第1溝36を設けることによって、剛性を相対的に低下させることができる。詳述すると、レバー30は、第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35を形成することによって、第1連結ピン31との連結部分における剛性を低下させ、第1連結ピン31との連結部分を変形させることで振動を吸収することが可能となる。また、レバー30は、第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36を形成することによって、第2連結ピン32との連結部分における剛性を低下させ、第2連結ピン32との連結部分を変形させることで振動を吸収することが可能となる。
【0057】
つまり、内燃機関は、レバー30の変形により振動を吸収することが可能となり、この点でも燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸10から第2制御軸24へ伝達されることを抑制できる。
【0058】
また、第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、両側の端部に近づくほど肉厚が薄くなるよう軸方向に沿って肉厚が変化しているので、肉厚が一定の円筒ピンに比べて剛性を低下させることが可能となる。
【0059】
そのため、内燃機関は、第1連結ピン31及び第2連結ピン32を変形させることで、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸10から第2制御軸24へ伝達されることを抑制できる。
【0060】
以下、本発明の他の実施例について説明する。なお、上述した第1実施例と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
図9及び
図10を用いて、本発明の第2実施例の内燃機関について説明する。
図9は、第2実施例におけるレバー40の平面図である。
図10は、第2実施例におけるレバー40の要部断面であり、
図9のB-B線に沿った断面図である。なお、
図9におけるB-B線は、
図7におけるA-A線と同じ位置に沿ったものである。
【0062】
第2実施例の内燃機関は、上述した第1実施例の内燃機関と略同一構成となっているが、レバー40の第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35の他に一端側第2溝41が形成され、レバー40の第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36の他に他端側第2溝42が形成されている。つまり、第2実施例におけるレバー40は、第1実施例のレバー30と略同一構成となっているが、一端側第2溝41と他端側第2溝42を更に有している。
【0063】
一端側第2溝41は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する溝であって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。一端側第2溝41は、
図10に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0064】
一端側第2溝41は、同一内周面に形成された一端側第1溝35よりも第1連結ピン穴33の内周面33aの周方向に沿った長さが短くなるよう設定される。
【0065】
他端側第2溝42は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する溝であって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。他端側第2溝42は、
図10に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0066】
他端側第2溝42は、同一内周面に形成された他端側第1溝36よりも第2連結ピン穴34の内周面34aの周方向に沿った長さが短くなるよう設定される。
【0067】
このような第2実施例においては、一端側第1溝35及び他端側第1溝36に加えて、一端側第2溝41及び他端側第2溝42が潤滑油を保持可能な油保持部(引っ張り側油保持部)として機能する。
【0068】
一端側第1溝35及び他端側第1溝36は、内部に保持された潤滑油の粘性を利用して、主として燃焼荷重が作用した際に第1制御軸10から第2制御軸24へ振動が伝達されることを抑制することができる。また、一端側第2溝41及び他端側第2溝42は、内部に保持された潤滑油の粘性を利用して、主として引っ張り荷重が作用した際に第1制御軸10から第2制御軸24へ振動が伝達されることを抑制することができる。
【0069】
そのため、この第2実施例の内燃機関においては、潤滑油の粘性を利用した振動伝達抑制効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0070】
また、第2実施例のレバー40は、一端側第1溝35及び他端側第1溝36に加えて、一端側第2溝41及び他端側第2溝42を設けることによって、上述した第1実施例のレバー30よりも剛性を低下させることができる。そのため、レバー40は、自身の変形により振動を吸収することが一層容易となる。詳述すると、レバー40は、第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35と一端側第2溝41を形成することによって、第1連結ピン31との連結部分における剛性をより一層低下させ、第1連結ピン31との連結部分を変形させることで振動をより一層吸収することが可能となる。また、レバー40は、第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36と他端側第2溝42を形成することによって、第2連結ピン32との連結部分における剛性をより一層低下させ、第2連結ピン32との連結部分を変形させることで振動をより一層吸収することが可能となる。
【0071】
つまり、第2実施例の内燃機関は、レバー40の変形による振動吸収効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0072】
また、第2実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32の変形による振動伝達抑制効果は、上述した第1実施例の内燃機関と同等である。
【0073】
なお、一端側第2溝41及び他端側第2溝42が形成される位置は、引っ張り荷重が作用する位置であり、レバー40の構造上薄肉で剛性が他の部分に比べて低い部分となる。そのため、一端側第2溝41は、剛性低下が強度上の問題とならないように、一端側第1溝35に比べて、第1連結ピン穴33の内周面33aの周方向に沿った長さが短くなっている。同様の理由で、他端側第2溝42も、他端側第1溝36に比べて、第2連結ピン穴34の内周面34aの周方向に沿った長さが短くなっている。
【0074】
図11を用いて、本発明の第3実施例の内燃機関について説明する。
図11は、第3実施例におけるレバー50の要部断面図であって、
図7のA-A線に沿った位置に相当する断面図である。
【0075】
第3実施例の内燃機関は、上述した第1実施例の内燃機関と略同一構成となっているが、レバー50の一端側第1溝35の内部に複数の凹部としての複数の一端側第1凹部51が形成され、レバー50の他端側第1溝36の内部に複数の凹部としての複数の他端側第1凹部52が形成されている。つまり、第3実施例におけるレバー50は、第1実施例のレバー30と略同一構成となっているが、複数の一端側第1凹部51と複数の他端側第1凹部52を更に有している。
【0076】
一端側第1凹部51は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の一端側第1凹部51は、一端側第1溝35内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0077】
他端側第1凹部52は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の他端側第1凹部52は、他端側第1溝36内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0078】
テクスチャリング形状は、例えば、放電加工、レーザー、ショットピーニング(ショットブラスト)、切削加工等によって形成される。
【0079】
一端側第1凹部51及び他端側第1凹部52は、潤滑油を保持する機能を有している。つまり、この第3実施例においては、第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35と多数の一端側第1凹部51とを有する油保持部(圧縮側油保持部)が形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36と多数の他端側第1凹部52とを有する油保持部(圧縮側油保持部)が形成されている。
【0080】
各一端側第1凹部51及び各他端側第1凹部52は、微細な凹部であり、一端側第1溝35や他端側第1溝36に比べて極めて小さいものであるが、
図11においては便宜上、一端側第1溝35や他端側第1溝36と識別できる程度に拡大して模式的に示している。
【0081】
複数の一端側第1凹部51や複数の他端側第1凹部52からなるテクスチャリング形状は、それ自体で潤滑油を保持する性能が高くなっている。従って、この第3実施例においては、上述した第1実施例よりも、第1連結ピン穴33の内周面33a及び第2連結ピン穴34の内周面34aに多くの潤滑油を保持可能となる。
【0082】
そのため、この第3実施例の内燃機関においては、上述した第1実施例の内燃機関と略同様の作用効果を得られるとともに、潤滑油の粘性を利用した振動伝達抑制効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0083】
一端側第1凹部51及び他端側第1凹部52は、例えば、数十ミクロン程度の凹みである。そのため、複数の一端側第1凹部51や複数の他端側第1凹部52からなるテクスチャリング形状は、一端側第1溝35や他端側第1溝36のようにレバー50の剛性低下には寄与しない。
【0084】
つまり、この第3実施例の内燃機関においては、レバー50の変形による振動伝達抑制効果が上述した第1実施例の内燃機関と同等となる。
【0085】
なお、第3実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32の変形による振動伝達抑制効果は、上述した第1実施例の内燃機関と同等である。
【0086】
図12を用いて、本発明の第4実施例の内燃機関について説明する。
図12は、第4実施例におけるレバー60の要部断面図であって、
図7のA-A線または
図9のB-B線に沿った位置に相当する断面図である。
【0087】
第4実施例の内燃機関は、上述した第1実施例の内燃機関と略同一構成となっているが、レバー60の第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35の他に一端側第2溝41が形成され、レバー60の第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36の他に他端側第2溝42が形成されている。
【0088】
そして、レバー60の一端側第1溝35の内部には、複数の凹部としての複数の一端側第1凹部51が形成されている。レバー60の一端側第2溝41の内部には、複数の凹部としての複数の一端側第2凹部61が形成されている。レバー60の他端側第1溝36の内部には、複数の凹部としての複数の他端側第1凹部52が形成されている。レバー60の他端側第2溝42の内部には、複数の凹部としての複数の他端側第2凹部62が形成されている。
【0089】
つまり、第4実施例におけるレバー60は、第1実施例のレバー30と略同一構成となっているが、一端側第2溝41と他端側第2溝42と、複数の一端側第1凹部51、複数の一端側第2凹部61、複数の他端側第1凹部52、複数の他端側第2凹部62を更に有している。換言すれば、第4実施例のレバー60は、第2実施例のレバー40と略同一構成となっているが、複数の一端側第1凹部51、複数の一端側第2凹部61、複数の他端側第1凹部52、複数の他端側第2凹部62を更に有している。
【0090】
一端側第2溝41は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する溝であって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。一端側第2溝41は、
図12に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0091】
一端側第2溝41は、同一内周面に形成された一端側第1溝35よりも第1連結ピン穴33の内周面33aの周方向に沿った長さが短くなるよう設定される。
【0092】
他端側第2溝42は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する溝であって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。他端側第2溝42は、
図12に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0093】
他端側第2溝42は、同一内周面に形成された他端側第1溝36よりも第2連結ピン穴34の内周面34aの周方向に沿った長さが短くなるよう設定される。
【0094】
一端側第1凹部51及び一端側第2凹部61は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の一端側第1凹部51は、一端側第1溝35内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。複数の一端側第2凹部61は、一端側第2溝41内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0095】
他端側第1凹部52及び他端側第2凹部62は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の他端側第1凹部52は、他端側第1溝36内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。複数の他端側第2凹部62は、他端側第2溝42内に付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0096】
テクスチャリング形状は、例えば、放電加工、レーザー、ショットピーニング(ショットブラスト)、切削加工等によって形成される。
【0097】
このような第4実施例においては、一端側第1溝35、一端側第2溝41、他端側第1溝36、他端側第2溝42、一端側第1凹部51、一端側第2凹部61、他端側第1凹部52、他端側第2凹部62がそれぞれ潤滑油を保持可能な機能を有している。つまり、この第4実施例においては、第1連結ピン穴33の内周面33aに、一端側第1溝35と多数の一端側第1凹部51とを有する第1の油保持部(圧縮側油保持部)と、一端側第2溝41と多数の一端側第2凹部61とを有する第2の油保持部(引っ張り油保持部)が形成されている。また、この第4実施例においては、第2連結ピン穴34の内周面34aに、他端側第1溝36と多数の他端側第1凹部52とを有する第3の油保持部(圧縮側油保持部)と、他端側第2溝42と多数の他端側第2凹部62とを有する第4の油保持部(引っ張り側油保持部)が形成されている。
【0098】
各一端側第1凹部51、各一端側第2凹部61、各他端側第1凹部52及び各他端側第2凹部62は、微細な凹部であり、一端側第1溝35、一端側第2溝41、他端側第1溝36及び他端側第2溝42に比べて極めて小さいものであるが、
図12においては便宜上、一端側第1溝35や他端側第2溝42と識別できる程度に拡大して模式的に示している。
【0099】
複数の一端側第1凹部51、複数の他端側第1凹部52、複数の一端側第2凹部61、複数の他端側第2凹部62からなる各テクスチャリング形状は、それ自体で潤滑油を保持する機能を有している。
【0100】
従って、この第4実施例の内燃機関においては、上述した第1実施例の内燃機関よりも、第1連結ピン穴33の内周面33a及び第2連結ピン穴34の内周面34aに多くの潤滑油を保持可能となる。
【0101】
そのため、この第4実施例の内燃機関においては、上述した第1実施例の内燃機関と略同様の作用効果を得られるとともに、潤滑油の粘性を利用した振動伝達抑制効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0102】
さらに言えば、この第4実施例の内燃機関においては、潤滑油の粘性を利用した振動伝達抑制効果が上述した第3実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0103】
また、第4実施例のレバー60は、一端側第1溝35及び他端側第1溝36に加えて、一端側第2溝41及び他端側第2溝42を設けることによって、上述した第1実施例のレバー30よりも剛性を低下させることができる。そのため、レバー60は、自身の変形により振動を吸収することが一層容易となる。詳述すると、レバー60は、第1連結ピン穴33の内周面33aに一端側第1溝35と一端側第2溝41を形成することによって、第1連結ピン31との連結部分における剛性をより一層低下させ、第1連結ピン31との連結部分を変形させることで振動をより一層吸収することが可能となる。また、レバー60は、第2連結ピン穴34の内周面34aに他端側第1溝36と他端側第2溝42を形成することによって、第2連結ピン32との連結部分における剛性をより一層低下させ、第2連結ピン32との連結部分を変形させることで振動をより一層吸収することが可能となる。
【0104】
つまり、第4実施例の内燃機関は、レバー60の変形による振動吸収効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0105】
一端側第1凹部51、一端側第2凹部61、他端側第1凹部52及び他端側第2凹部62は、例えば、数十ミクロン程度の凹みである。そのため、複数の一端側第1凹部51、複数の他端側第1凹部52、複数の一端側第2凹部61、複数の他端側第2凹部62からなる各テクスチャリング形状は、一端側第1溝35、他端側第1溝36、一端側第2溝41、他端側第2溝42のようにレバー60の剛性低下には寄与しない。
【0106】
つまり、第4実施例の内燃機関は、レバー60の変形による振動伝達抑制効果が上述した第1実施例の内燃機関よりも高くなるものの、上述した第2実施例の内燃機関と同等となる。
【0107】
また、第4実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32の変形による振動伝達抑制効果は、上述した第1実施例の内燃機関と同等である。
【0108】
なお、一端側第2溝41及び他端側第2溝42が形成される位置は、引っ張り荷重が作用する位置であり、レバー60の構造上薄肉で剛性が他の部分に比べて低い部分となる。そのため、一端側第2溝41は、剛性低下が強度上の問題とならないように、一端側第1溝35に比べて、第1連結ピン穴33の内周面33aの周方向に沿った長さが短くなっている。同様の理由で、他端側第2溝42も、他端側第1溝36に比べて、第2連結ピン穴34の内周面34aの周方向に沿った長さが短くなっている。
【0109】
図13を用いて、本発明の第5実施例の内燃機関について説明する。
図13は、第5実施例におけるレバー70の要部断面図であって、
図7のA-A線に沿った位置に相当する断面図である。
【0110】
第5実施例の内燃機関は、上述した第1実施例の内燃機関と略同一構成となっているが、レバー70には、一端側第1溝35に換えて複数の凹部としての複数の一端側第1凹部51が形成されているとともに、他端側第1溝36に換えて複数の凹部としての複数の他端側第1凹部52が形成されている。つまり、第5実施例の内燃機関は、第1連結ピン穴33の内周面33aに第1実施例の一端側第1溝35が形成されていないとともに、第2連結ピン穴34の内周面34aに第1実施例の他端側第1溝36が形成されていない。
【0111】
第5実施例におけるレバー70は、第1実施例のレバー30と略同一構成となっているが、一端側第1溝35に換えて複数の一端側第1凹部51が形成され、他端側第1溝36に換えて複数の他端側第1凹部52が形成されたものとなっている。
【0112】
一端側第1凹部51は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。一端側第1凹部51は、
図13に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0113】
他端側第1凹部52は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。他端側第1凹部52は、
図13に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0114】
一端側第1凹部51は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の一端側第1凹部51は、第1連結ピン穴33の内周面33aに付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0115】
他端側第1凹部52は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の他端側第1凹部52は、第2連結ピン穴34の内周面34aに付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0116】
各一端側第1凹部51及び各他端側第1凹部52は、微細な凹部であり、極めて小さいものであるが、
図13においては便宜上、識別できる程度に拡大して模式的に示している。
【0117】
複数の一端側第1凹部51、複数の他端側第1凹部52からなる各テクスチャリング形状は、それ自体で潤滑油を保持する機能を有している。つまり、この第5実施例においては、第1連結ピン穴33の内周面33aに多数の一端側第1凹部51からなる油保持部(圧縮側油保持部)が形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aに多数の他端側第1凹部52からなる油保持部(圧縮側油保持部)が形成されている。
【0118】
従って、一端側第1凹部51及び他端側第1凹部52は、内部に保持された潤滑油の粘性を利用して、燃焼荷重が作用した際に第1制御軸10から第2制御軸24へ振動が伝達されることを抑制することができる。
【0119】
つまり、第5実施例の内燃機関は、レバー70の一端側第1凹部51及び他端側第1凹部52に保持された潤滑油の粘性を利用することで、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸10から第2制御軸24へ伝達されることを抑制できる。
【0120】
なお、第5実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32の変形による振動伝達抑制効果は、上述した第1実施例の内燃機関と同等である。
【0121】
図14を用いて、本発明の第6実施例の内燃機関について説明する。
図14は、第6実施例におけるレバー80の要部断面図であって、
図7のA-A線または
図9のB-B線に沿った位置に相当する断面図である。
【0122】
第6実施例の内燃機関は、上述した第1実施例の内燃機関と略同一構成となっているが、レバー80には、一端側第1溝35に換えて複数の凹部としての複数の一端側第1凹部51が形成されているとともに、他端側第1溝36に換えて複数の凹部としての複数の他端側第1凹部52が形成され、更に複数の凹部としての複数の一端側第2凹部61が第1連結ピン穴33の内周面33aに形成され、複数の凹部としての複数の他端側第2凹部62が第2連結ピン穴34の内周面34aに形成されている。つまり、第6実施例の内燃機関は、第1連結ピン穴33の内周面33aに第1実施例の一端側第1溝35が形成されていないとともに、第2連結ピン穴34の内周面34aに第1実施例の他端側第1溝36が形成されていない。
【0123】
さらに言えば、第6実施例におけるレバー80は、第1実施例のレバー30と略同一構成となっているが、一端側第1溝35に換えて複数の一端側第1凹部51が形成され、他端側第1溝36に換えて複数の他端側第1凹部52が形成され、第1連結ピン穴33の内周面33aの所定範囲に多数の一端側第2凹部61が形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aの所定範囲に多数の他端側第2凹部62が形成されたものとなっている。換言すれば、第6実施例のレバー80は、第5実施例のレバー70と略同一構成となっているが、第1連結ピン穴33の内周面33aに多数の一端側第2凹部61がさらに形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aに多数の他端側第2凹部62がさらに形成されたものとなっている。
【0124】
一端側第1凹部51は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。一端側第1凹部51は、
図14に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0125】
一端側第2凹部61は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第1連結ピン穴33の内周面33aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。一端側第2凹部61は、
図14に示すように、第1連結ピン穴軸方向で、内周面33aの中央に形成されている。
【0126】
他端側第1凹部52は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、燃焼荷重に起因する圧縮荷重が作用する部分に形成されている。他端側第1凹部52は、
図14に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0127】
他端側第2凹部62は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って連続する所定の範囲に多数形成された凹部あって、第2連結ピン穴34の内周面34aのうち、慣性荷重に起因する引っ張り荷重が作用する部分に形成されている。他端側第2凹部62は、
図14に示すように、第2連結ピン穴軸方向で、内周面34aの中央に形成されている。
【0128】
一端側第1凹部51及び一端側第2凹部61は、第1連結ピン穴33の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の一端側第1凹部51及び複数の一端側第2凹部61は、第1連結ピン穴33の内周面33aに付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0129】
他端側第1凹部52及び他端側第2凹部62は、第2連結ピン穴34の周方向に沿って不連続な互いに独立した円形の凹部である。詳述すると、複数の他端側第1凹部52及び複数の他端側第2凹部62は、第2連結ピン穴34の内周面34aに付加されたいわゆるテクスチャリング形状である。
【0130】
テクスチャリング形状は、例えば、放電加工、レーザー、ショットピーニング(ショットブラスト)、切削加工等によって形成される。
【0131】
各一端側第1凹部51、各一端側第2凹部61、各他端側第1凹部52及び各他端側第2凹部62は、微細な凹部であり、極めて小さいものであるが、
図14においては便宜上、識別できる程度に拡大して模式的に示している。
【0132】
複数の一端側第1凹部51、複数の他端側第1凹部52、複数の一端側第2凹部61、複数の他端側第2凹部62からなる各テクスチャリング形状は、それ自体で潤滑油を保持する機能を有している。つまり、この第6実施例においては、第1連結ピン穴33の内周面33aに多数の一端側第1凹部51からなる第1の油保持部(圧縮側油保持部)と多数の一端側第2凹部61からなる第2の油保持部(引っ張り側油保持部)が形成され、第2連結ピン穴34の内周面34aに多数の他端側第1凹部52からなる第3の油保持部(圧縮側油保持部)と、多数の他端側第2凹部62からなる第4の油保持部(引っ張り側油保持部)が形成されている。
【0133】
従って、一端側第1凹部51、一端側第2凹部61、他端側第1凹部52及び他端側第2凹部62は、内部に保持された潤滑油の粘性を利用して、燃焼荷重が作用した際に第1制御軸10から第2制御軸24へ振動が伝達されることを抑制することができる。
【0134】
つまり、第6実施例の内燃機関は、レバー80の一端側第1凹部51、一端側第2凹部61、他端側第1凹部52及び他端側第2凹部62に保持された潤滑油の粘性を利用することで、燃焼荷重と慣性荷重が繰り返し作用することにより生じる振動が第1制御軸10から第2制御軸24へ伝達されることを抑制できる。
【0135】
また、この第6実施例の内燃機関においては、上述した第5実施例の内燃機関よりも、第1連結ピン穴33の内周面33a及び第2連結ピン穴34の内周面34aに多くの潤滑油を保持可能となる。
【0136】
そのため、この第6実施例の内燃機関においては、潤滑油の粘性を利用した振動伝達抑制効果が上述した第5実施例の内燃機関よりも大きなものとなる。
【0137】
なお、第6実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32の変形による振動伝達抑制効果は、上述した第1実施例の内燃機関と同等である。
【0138】
また、この第6実施例において、内周面33aの周方向に沿った一端側第2凹部61の形成範囲の長さは、内周面33aの周方向に沿った一端側第1凹部51の形成範囲の長さと同じでもよい。また、内周面33aの周方向に沿った他端側第2凹部62の形成範囲の長さは、内周面33aの周方向に沿った他端側第1凹部52の形成範囲の長さと同じでもよい。
【0139】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0140】
例えば、上述した第1実施例において他端側第1溝36を省略したり、上述した第2実施例において一端側第2溝41と他端側第2溝42のうちの一方を省略したりしてもよい。
【0141】
例えば、上述した第3実施例において一端側第1凹部51と他端側第1凹部52のうちの一方を省略したり、上述第4実施例において、一端側第1凹部51と一端側第2凹部61と他端側第1凹部52と他端側第2凹部62とのうちの多くとも3つを省略したりしてもよい。
【0142】
例えば、上述した各実施例の内燃機関において、第1連結ピン31及び第2連結ピン32は、軸方向に沿って内径が変化しないように形成したものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1…可変圧縮比機構
10…第1制御軸
21…アクチュエータ
22…第1アーム部
24…第2制御軸
26…第2アーム部
30…レバー
31…第1連結ピン
32…第2連結ピン
33…第1連結ピン穴
33a…内周面
34…第2連結ピン穴
34a…内周面
35…一端側第1溝
36…他端側第1溝
41…一端側第2溝
42…他端側第2溝
51…一端側第1凹部
52…他端側第1凹部
61…一端側第2凹部
62…他端側第2凹部