(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】電池温度センサの異常検出装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20220817BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220817BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
(21)【出願番号】P 2018177642
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村松 祐希
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222133(JP,A)
【文献】特開2003-254839(JP,A)
【文献】特開2008-084625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0076011(US,A1)
【文献】特開2017-073845(JP,A)
【文献】特開2014-157717(JP,A)
【文献】特開2006-253066(JP,A)
【文献】特開2016-048656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールの二次電池に接触させた複数の電池温度センサのうち、前記二次電池より離間した電池温度センサを検出するための検出部を有する電池温度センサの異常検出装置であって、
前記二次電池に接触させた前記電池温度センサと比べて前記二次電池の発熱の影響の小さい場所で測定される温度を基準温度とした場合、
前記検出部は、前記電池温度センサのそれぞれによって測定された温度と前記基準温度とを比較し、前記電池温度センサのそれぞれによって測定された前記温度のうち、前記基準温度との差が閾値以下となる温度を測定した前記電池温度センサを、前記二次電池より離間していると判定
し、
前記基準温度は、前記電池モジュール周囲の雰囲気温度を測定する雰囲気温度センサが測定した前記雰囲気温度であることを特徴とする電池温度センサの異常検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、各電池温度センサのそれぞれによって測定された温度のうち、ファンによって前記電池モジュールの冷却が行われているときに前記基準温度に収束する温度を測定した前記電池温度センサを、前記二次電池より離間していると判定する請求項1に記載の電池温度センサの異常検出装置。
【請求項3】
いずれかの前記電池温度センサで測定された温度と前記基準温度との差が一定の温度差以上になった場合に前記基準温度と比較する閾値を第1の閾値とし、前記温度と前記基準温度との差が、前記一定の温度差未満の場合の閾値を第2の閾値とし、前記第1の閾値は前記第2の閾値よりも大きく設定されており、前記検出部は、各電池温度センサのそれぞれによって測定された温度に応じて閾値を変更する請求項1又は請求項2に記載の電池温度センサの異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池より離間した電池温度センサを検出するための検出部を有する電池温度センサの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の二次電池を有する電池モジュールと、電池モジュールから供給される電力によって駆動する負荷と、を備えた装置では、例えば、二次電池の過充放電の検出や、適切な充放電を行うため、電池温度センサによって二次電池の温度を測定している。電池温度センサは、二次電池や、電池モジュールを構成するための部材に貼り付けられている。
【0003】
しかし、電池温度センサが貼り付け対象から剥がれて二次電池より離間してしまう場合がある。電池温度センサが二次電池より離間してしまうと、電池温度センサによる温度測定が正確に行えなくなり、好ましくない。そこで、例えば、特許文献1では、複数の電池温度センサの測定値同士を比較し、その差の絶対値を閾値と比較して、電池温度センサが貼り付け対象(二次電池)に適切に接触しているか否かを確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1においては、電池温度センサが貼り付け対象に適切に接触しているか否かを確認しているだけであり、いずれの電池温度センサが貼り付け対象(二次電池)から離間しているかまでは検出していない。
【0006】
本発明の目的は、二次電池より離間した電池温度センサを検出できる電池温度センサの異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電池温度センサの異常検出装置は、電池モジュールの二次電池に接触させた複数の電池温度センサのうち、前記二次電池より離間した電池温度センサを検出するための検出部を有する電池温度センサの異常検出装置であって、前記二次電池に接触させた前記電池温度センサと比べて前記二次電池の発熱の影響の小さい場所で測定される温度を基準温度とした場合、前記検出部は、前記電池温度センサのそれぞれによって測定された温度と前記基準温度とを比較し、前記電池温度センサのそれぞれによって測定された前記温度のうち、前記基準温度との差が閾値以下となる温度を測定した前記電池温度センサを、前記二次電池より離間していると判定することを要旨とする。
【0008】
これによれば、電池温度センサが二次電池に接触していれば、二次電池の充放電に伴う発熱により、電池温度センサによって測定される温度は上昇する。その一方で、電池温度センサが二次電池より離間していると、二次電池の充放電に伴う発熱の影響が小さく、その電池温度センサによって測定される温度は基準温度に近付くことになる。そして、検出部は、基準温度との温度差が閾値以下となる温度を測定した電池温度センサについて二次電池より離間していると判定する。よって、検出部により、複数の電池温度センサの中から、二次電池より離間した電池温度センサを検出できる。
【0009】
また、電池温度センサの異常検出装置について、前記検出部は、各電池温度センサのそれぞれによって測定された温度のうち、ファンによって前記電池モジュールの冷却が行われているときに前記基準温度に収束する温度を測定した前記電池温度センサを、前記二次電池より離間していると判定してもよい。
【0010】
これによれば、二次電池に接触した電池温度センサによって測定される温度は、ファンによる二次電池の冷却によって若干低下するが、二次電池の発熱もあるため、基準温度までは低下しない。その一方で、二次電池より離間した電池温度センサによって測定される温度は、二次電池の発熱の影響が小さく、しかもファンによる冷却によって基準温度にまで低下していき、基準温度に収束する。その結果として、基準温度との差に関する閾値を小さく設定しても、二次電池より離間した電池温度センサを精度良く検出できる。
【0011】
また、電池温度センサの異常検出装置について、いずれかの前記電池温度センサで測定された温度と前記基準温度との差が一定の温度差以上になった場合に前記基準温度と比較する閾値を第1の閾値とし、前記温度と前記基準温度との差が、前記一定の温度差未満の場合の閾値を第2の閾値とし、前記第1の閾値は前記第2の閾値よりも大きく設定されており、前記検出部は、各電池温度センサのそれぞれによって測定された温度に応じて閾値を変更してもよい。
【0012】
これによれば、二次電池の大きな発熱等により、いずれかの電池温度センサによって測定される温度と基準温度との差が一定の温度差以上になる場合がある。すると、二次電池より離間した電池温度センサであっても、二次電池の発熱を受けて温度上昇する可能性がある。この場合、閾値が、第1の閾値よりも温度の低い第2の閾値に設定されていると、二次電池より離間した電池温度センサであっても、測定された温度と基準温度との差が閾値以下にならない可能性がある。そこで、検出部により、閾値を第2の閾値から第1の閾値に変更することにより、上記のような二次電池の大きな発熱等があった場合でも、二次電池より離間した電池温度センサを検出できる。
【0013】
また、電池温度センサの異常検出装置について、前記基準温度は、前記電池モジュール周囲の雰囲気温度を測定する雰囲気温度センサが測定した前記雰囲気温度である。
これによれば、雰囲気温度センサは、電池モジュール周囲の雰囲気温度を測定するための既存の構成である場合が多いため、既存の部品を使いながら二次電池より離間した電池温度センサを検出できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、二次電池より離間した電池温度センサを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】電池ECUが行う処理を示すフローチャート。
【
図5】(a)は第1の閾値及び第2の閾値と二次電池の温度との関係を示すグラフ、(b)は第2の閾値と二次電池の温度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、電池温度センサの異常検出装置を具体化した一実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両10は、電池パック11と、電力変換部31と、モータMと、を備える。車両10は、モータMの駆動によって走行動作を行う。なお、モータMは、交流電力によって駆動するモータである。
【0017】
図1又は
図2に示すように、電池パック11は、複数の二次電池12を有する電池モジュール13と、二次電池12の温度を測定する第1の電池温度センサ14と、第2の電池温度センサ15と、第3の電池温度センサ16と、を備える。また、電池パック11は、当該電池パック11内における電池モジュール13周囲の雰囲気温度を測定する雰囲気温度センサ17と、電池ECU18と、二次電池12の冷却を行うファン19と、ケース20と、を備える。
【0018】
電池パック11は、電池モジュール13、第1の電池温度センサ14、第2の電池温度センサ15、第3の電池温度センサ16、雰囲気温度センサ17、電池ECU18、及び、ファン19をユニット化したものである。電池モジュール13、第1の電池温度センサ14、第2の電池温度センサ15、第3の電池温度センサ16、雰囲気温度センサ17、及び、電池ECU18はケース20に収容され、ファン19はケース20の外面に設置されている。ケース20は、電池パック11の外郭を構成するものである。なお、電池パック11の数は、単数でもよいし、複数でもよい。また、ファン19は、ケース20の内側に配置されていてもよい。
【0019】
電池モジュール13は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池12を直列接続したものである。本実施形態では、二次電池12のケース12aは、扁平な四角箱状である。電池モジュール13は、二次電池12の厚さ方向が、電池モジュール13における二次電池12の並設方向と一致する状態に並べて一体化されている。本実施形態では、二次電池12を13個用いている。
【0020】
なお、電池モジュール13としては、複数の二次電池12を並列接続したものや、複数の二次電池12を接続してモジュール化したものを直列接続、あるいは、並列接続したものでもよい。
【0021】
第1~第3の電池温度センサ14~16は、電池モジュール13の一つの側面に纏めて設置されている。第1~第3の電池温度センサ14~16は、二次電池12の並設方向に沿って等間隔おきに設置されている。第1~第3の電池温度センサ14~16は、それぞれ二次電池12のケース12aに粘着テープ等により貼り付けられている。第1~第3の電池温度センサ14~16は、粘着テープ等を介してケース12aに接触している。そして、第1~第3の電池温度センサ14~16は、貼り付けられた二次電池12の温度を測定する。第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定された二次電池12の温度に基づき、電池ECU18は、充放電を停止させたり、二次電池12に流れる電流の大きさを制御する。
【0022】
雰囲気温度センサ17は、電池パック11のケース20内に配置され、ケース20内での電池モジュール13周囲の温度を測定する。雰囲気温度センサ17は、電池ECU18に一体に設けられている。雰囲気温度センサ17は、二次電池12から離れており、二次電池12に接触させた第1~第3の電池温度センサ14~16と比べて二次電池12の発熱による影響の小さい場所に配置されている。
【0023】
そして、雰囲気温度センサ17によって測定される温度は、二次電池12の発熱による影響が小さい場所で測定される温度であり、大気温度に近い温度である。本実施形態では、雰囲気温度センサ17によって測定される雰囲気温度が基準温度となる。
【0024】
電池ECU18は、CPUと、RAM及びROM等からなる記憶部と、を備える電子制御ユニットである。記憶部には、電池パック11を制御するための種々のプログラムが記憶されている。電池ECU18は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。電池ECU18は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0025】
電池ECU18には、第1~第3の電池温度センサ14~16、及び雰囲気温度センサ17が信号接続されている。電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16の測定値、及び雰囲気温度センサ17の測定値を取得する。電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16の測定値、及び雰囲気温度センサ17の測定値を電圧信号として取得するが、以下の説明では、第1~第3の電池温度センサ14~16の測定値を二次電池12の温度として記載し、雰囲気温度センサ17の測定値を基準温度として記載する。そして、電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定された二次電池12の温度、及び雰囲気温度センサ17によって測定された基準温度を用いて、第1~第3の電池温度センサ14~16のいずれが、二次電池12より離間したかを判定する。よって、電池ECU18が検出部として機能するとともに、電池ECU18により、電池温度センサの異常検出装置が構成されている。
【0026】
ファン19は、二次電池12の冷却のために、ケース20内に電池パック11外の空気を取り込む。ファン19は、電池ECU18に信号接続され、電池ECU18によって駆動が制御される。なお、ファン19は電池パック11内の空気を外に排気するように設けられていてもよい。
【0027】
電力変換部31は、インバータ32と、駆動ECU35と、を備える。インバータ32は、電池モジュール13から供給される直流電力を交流電力に変換してモータMに出力する。駆動ECU35は、CPUと、RAM及びROM等からなる記憶部と、を備える電子制御ユニットである。駆動ECU35は、インバータ32を制御することでモータMを駆動させる。駆動ECU35と、電池ECU18とは、CANやLINなどの通信プロトコルで通信を行うことが可能である。
【0028】
次に、電池ECU18による電池温度センサの異常検出処理について
図3又は
図4を用いて説明する。なお、二次電池12は充電状態又は放電状態であり、二次電池12には充電電流又は放電電流が流れているとともに、ファン19は駆動していないものとする。
【0029】
図3に示すように、ステップS1において、電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16から二次電池12の温度として、各電池温度センサ14~16の測定値を取得する。つまり、電池ECU18は、ファン19を駆動させる前の第1~第3の電池温度センサ14~16の測定値を取得する。ステップS2において、電池ECU18は、ファン19を一定時間駆動させ、二次電池12を冷却する。ステップS3において、電池ECU18は、ファン19を駆動させてから一定時間経過した後に、第1~第3の電池温度センサ14~16から二次電池12の温度として、各電池温度センサ14~16の測定値を取得する。つまり、電池ECU18は、ファン19を駆動させた後の第1~第3の電池温度センサ14~16の測定値を取得する。ステップS4において、電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16から、二次電池12の温度として、測定値を取得した時点で、雰囲気温度センサ17から電池パック11内の雰囲気温度を取得する。
【0030】
ステップS5において、電池ECU18は、取得された雰囲気温度に対する、取得された各二次電池12の温度との差をそれぞれ算出し、その差が閾値以下か否かを判定する。差が閾値以下の場合(ステップS5でYES)、電池ECU18は、差が閾値以下となった温度を測定した電池温度センサが、二次電池12より離間している異常があると判定し(ステップS6)、処理を終了する。一方、差が閾値より大きい場合(ステップS5でNO)、電池ECU18は、処理を終了する。なお、差が閾値より大きい場合(ステップS5でNO)、その温度を測定した電池温度センサは、二次電池12に接触していることになる。
【0031】
閾値は、二次電池12に充電電流又は放電電流を流したときに、実際に二次電池12より離間した電池温度センサによって測定される温度と、雰囲気温度との温度差を測定し、誤差等のマージンを加味して設定する。このように設定される閾値は、5~10℃程度であり、小さい値である。これは、電池温度センサが二次電池12から離間していれば、その電池温度センサによって測定される温度は、雰囲気温度に近付くことから、電池温度センサの測定誤差等を加味する程度で十分判定できるためである。
【0032】
図4に示すように、二次電池12に接触している第1及び第2の電池温度センサ14,15によって測定される二次電池12の温度は、ファン19が駆動されると、ファン19による冷却によって、ファン19駆動前(ファンON前)の温度より若干低下する。しかし、二次電池12は発熱しているため、二次電池12の温度は雰囲気温度までは低下しない。よって、第1~第3の電池温度センサ14~16が二次電池12に接触していれば、ファン19の駆動後(ファンON後)であっても第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定される温度は雰囲気温度よりも高くなるはずである。
【0033】
しかし、第3の電池温度センサ16が二次電池12より離間していると、ファン19の駆動後(ファンON後)に、その第3の電池温度センサ16によって測定される温度は、ファン19による冷却によって第1及び第2の電池温度センサ14,15によって測定される温度よりも低くなり、最終的には雰囲気温度に収束する。このため、雰囲気温度と、第1~第3の電池温度センサ14~16の測定した温度とを比較し、その差が小さくなるほど、二次電池12より離間した電池温度センサとしてみなすことができ、差が閾値以下となる電池温度センサを検出することで、二次電池12より離間した電池温度センサを検出できる。
【0034】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定される温度を雰囲気温度と比較し、その差が閾値以下の温度を測定した電池温度センサを、二次電池12より離間した電池温度センサとして検出する。雰囲気温度は、二次電池12の発熱によって変化しにくいため、電池温度センサの測定した温度が雰囲気温度に近ければ、その温度を測定した電池温度センサは二次電池12より離間していることとなる。よって、電池ECU18は、雰囲気温度センサ17によって測定された雰囲気温度を用いて判定することにより、複数の電池温度センサの中から、二次電池12より離間した電池温度センサを検出できる。
【0035】
(2)二次電池12より離間した電池温度センサを検出する方法として、電池温度センサによって測定された温度同士を比較し、温度差が閾値以上になった場合に、電池温度センサが二次電池12より離間していると判定する方法がある。しかし、この方法では、電池温度センサの製造誤差や、二次電池の温度によっては、温度差が大きく開かない場合があり、閾値を用いて判定できるようにするためには、誤差等を含めて閾値の値を大きく設定する必要がある。すると、二次電池12がかなりの高温(又は低温)にならなければ、二次電池12より離間した電池温度センサを検出できない。しかし、本実施形態では、雰囲気温度に対する温度差を閾値とするため、閾値を大きくしなくても、二次電池12より離間した電池温度センサを検出できる。さらには、電池温度センサによって測定された温度が雰囲気温度に近いほど、二次電池12より離間した電池温度センサである可能性が高いため、閾値を小さくしても、二次電池12より離間した電池温度センサを精度良く検出できる。
【0036】
(3)電池ECU18は、ファン19による冷却の前後で第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定された温度を雰囲気温度と比較し、その雰囲気温度に収束する温度を測定した電池温度センサを、二次電池12より離間していると判定する。二次電池12より離間している電池温度センサによって測定される温度は、二次電池12の発熱の影響が小さく、逆に、ファン19による冷却によって基準温度にまで低下し、最終的には基準温度に収束する。よって、異常判定のための閾値を小さく設定しても、二次電池12より離間した電池温度センサを精度良く検出できる。
【0037】
(4)雰囲気温度を測定する雰囲気温度センサ17は、電池モジュール13周囲の雰囲気温度を測定するため、電池パック11に設置されている場合が多い。このため、既存の部品を使いながら二次電池12より離間した電池温度センサを検出できる。
【0038】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 基準温度を測定する温度センサは、ケース20の外面に設置されていてもよい。
○ 基準温度を測定する温度センサは、例えば、車両における電池パック11より外側の温度を測定する車両搭載の温度センサであってもよく、この場合は、電池ECU18は、車両ECUから電池パック11周囲の温度を基準温度として取得する。基準温度は、二次電池12に接触させた第1~第3の電池温度センサ14~16と比べて二次電池12の発熱による影響の小さい場所で測定される温度であれば、その測定場所は適宜変更してもよい。
【0039】
○
図5(a)に示すように、二次電池12の温度が大きく上昇している場合、この二次電池12の温度と、雰囲気温度との間には、一定値以上の第1の温度差ΔT1が生じる。この第1の温度差ΔT1が生じたときに使用する閾値を第1の閾値K1とする。
【0040】
一方、
図5(b)に示すように、二次電池12の温度が、第1の温度差ΔT1が生じる温度よりも小さい場合には、二次電池12の温度と、雰囲気温度との間には、第2の温度差ΔT2が生じる。この第2の温度差ΔT2が生じたときに使用する閾値を第2の閾値K2とする。
【0041】
しかし、第1の温度差ΔT1が生じる場合は、二次電池12の温度が高い。第1~第3の電池温度センサ14~16のいずれかが、二次電池12より離間していた場合、その電池温度センサが測定する温度も、二次電池12の高い温度の影響を受けて上昇する場合がある。
【0042】
この場合、閾値が、第1の閾値K1よりも温度の低い第2の閾値K2であると、二次電池12より離間している電池温度センサであっても、測定された温度と雰囲気温度(基準温度)との差が閾値以下にならない可能性がある。そこで、第1の温度差ΔT1が生じるような場合、電池ECU18により、閾値を第2の閾値K2から第1の閾値K1に変更することにより、上記のような二次電池12の大きな発熱等があった場合でも、二次電池12より離間した電池温度センサを検出できる。
【0043】
○ ファン19による冷却がない場合であっても、第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定された温度と、雰囲気温度センサ17によって測定された雰囲気温度とを比較し、差が閾値以下となった温度を測定した電池温度センサを、二次電池12より離間していると判定してもよい。
【0044】
図6に示すように、第1の電池温度センサ14及び第2の電池温度センサ15は二次電池12に接触し、第3の電池温度センサ16は、二次電池12より離間しているとする。電池ECU18は、第1~第3の電池温度センサ14~16によって測定された温度同士を比較し、差を算出する。センサ間閾値よりも第1及び第2の電池温度センサ14,15によって測定される温度同士の差は小さく、しかも、各温度は雰囲気温度から離れている。一方、第1の電池温度センサ14によって測定される温度と第3の電池温度センサ16によって測定される温度との差、及び第2の電池温度センサ15によって測定される温度と第3の電池温度センサ16によって測定される温度との差はセンサ間閾値よりも大きい。これにより、電池ECU18は、第3の電池温度センサ16によって測定される温度が、他の電池温度センサ14,15によって測定される温度から離れていると判定する。次に、電池ECU18は、第3の電池温度センサ16によって測定される温度と、雰囲気温度との差が閾値以下か否か判定する。そして、差が閾値以下の場合、電池ECU18は、第3の電池温度センサ16が、二次電池12より離間していると判定する。なお、センサ間閾値は、二次電池12間の温度差や電池温度センサの誤差等のマージンを加味し、雰囲気温度との差の判定に用いられる閾値よりも高く設定され、15℃程度である。
【0045】
○ 電池温度センサの数は2つでもよいし、4つ以上でもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記検出部は、複数の電池温度センサによって測定された温度同士の差を算出し、前記差に基づいて、測定した温度が他の温度よりも低い温度を測定した電池温度センサを判定し、当該電池温度センサの測定した温度と前記基準温度との差が閾値以下となる場合、当該電池温度センサを前記二次電池より離間していると判定する電池温度センサの異常検出装置。
【符号の説明】
【0046】
12…二次電池、13…電池モジュール、14…第1の電池温度センサ、15…第2の電池温度センサ、16…第3の電池温度センサ、17…雰囲気温度センサ、18…検出部としての電池ECU、19…ファン。