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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】トノカバーの固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018183241
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050237
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成松 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸聖
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108666(JP,A)
【文献】特開昭54-157908(JP,A)
【文献】登録実用新案第3192197(JP,U)
【文献】特開2017-094801(JP,A)
【文献】特開平11-278155(JP,A)
【文献】特開2000-062536(JP,A)
【文献】特表2018-514464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の荷室の内装材に配設されるトノカバーの固定構造であって、
前記トノカバーは、
前後方向及び左右方向に折り曲げ可能な金属性のワイヤーと、
前記ワイヤーによって膜状に広げられた膜状部と、を備え、
前記荷室を覆う形で展開された展開状態と、前記ワイヤーが折り曲げられ前記膜状部が折り畳まれた折畳状態と、の間で状態変化可能な構成とされ、
前記内装材は、荷室の側壁をなすサイドトリムであり、
前記サイドトリムは、その上部において一段下がった段部を有し、
前記段部の底面部の裏面側には上下方向に延在する板状のリブが設けられるとともに、前記底面部の下方であって前記リブの上方にはスリット状をなす隙間が形成され、
前記隙間に磁石が嵌め込まれており、
前記ワイヤーが前記磁石に吸引されることで、前記トノカバーが、前記内装材の上部に固定されることを特徴とするトノカバーの固定構造。
【請求項2】
前記ワイヤーは、前記膜状部の全周に亘って配されていることを特徴とする請求項1に記載のトノカバーの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トノカバーの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トノカバーの固定構造として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のトノカバーの固定構造では、前後方向に区画形成された複数の板状部を備え、当該複数の板状部のうち、最後部に位置する後端板状部において、前方領域に第1の補強材が、後方領域に第2の補強材が設けられた折り畳み式トノボードが開示されている。そしてこのような構成により、各々の板状部を交互に折り畳むことができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-62536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、トノボードを折り畳んだとしても、複数の板状部のうち最小の板状部よりも小さく折り畳むことができない。また、トノボードを折り畳んで収納したり、展開して固定したりするのに手間がかかる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、固定が簡単なトノカバーの固定構造を提供することを目的の一つとする。また、収納しやすいトノカバーの固定構造を提供することをさらなる目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、乗物の荷室の内装材に配設されるトノカバーの固定構造であって、前記トノカバーは、前後方向及び左右方向に折り曲げ可能な金属性のワイヤーと、前記ワイヤーによって膜状に広げられた膜状部と、を備え、前記荷室を覆う形で展開された展開状態と、前記ワイヤーが折り曲げられ前記膜状部が折り畳まれた折畳状態と、の間で状態変化可能な構成とされ、前記内装材の上部には、磁石が取り付けられ、前記ワイヤーが前記磁石に吸引されることで、前記トノカバーが、前記内装材の上部に固定されることに特徴を有する。
【0007】
このようなトノカバーの固定構造によると、トノカバーの配設が不要なときは、展開状態から折畳状態にすることで、トノカバーを小さく折り畳んで収納することができる。また、ワイヤーが磁石で吸引されることで、トノカバーを簡単に内装材の上部に固定することができる。
【0008】
上記構成において、前記ワイヤーは、前記膜状部の全周に亘って配されていることとすることができる。このようなトノカバーの固定構造によると、ワイヤーによって膜状部が面内外側に好適に広げられるので、展開状態においてトノカバーにヨレや撓みが生じにくい。そして、トノカバーの状態変化がスムーズになる。また、内装材において任意の位置に磁石を配置しやすくなる。
【0009】
上記構成において、前記内装材は、荷室の側壁をなすサイドトリムであり、前記サイドトリムは、その上部において一段下がった段部を有し、前記磁石は、前記段部に配されていることとすることができる。このようなトノカバーの固定構造によると、トノカバーの端部が段部に嵌まりつつ、ワイヤーが磁石に吸引されて、トノカバーが固定される。これにより、トノカバーを内装材に強固に固定することができる。また、トノカバーを内装材の上部に配設する際に位置決めが容易になる。
【0010】
上記構成において、前記磁石は、前記段部の裏面側に配されていることとすることができる。このようなトノカバーの固定構造によると、使用者から磁石が視認されないので意匠性の低下を防ぐことができる。また、磁石がトノカバーで擦れたり引っ掛かったりすることがないので、トノカバーおよび磁石の耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定が簡単なトノカバーの固定構造を提供することが可能となる。また、収納しやすいトノカバーの固定構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る車両の後部を上方から視た図
図2】左側のサイドトリムにトノカバーを配設する態様を示す斜視図
図3】左側のサイドトリムとトノカバーの断面図(図1のA-A線断面)
図4】トノカバーのワイヤーを折り曲げる態様を示す図
図5】トノカバーが折り畳まれた状態を示す図
図6】実施形態2に係るサイドトリムとトノカバーの断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図5によって説明する。なお、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方、矢印方向FRを前方、矢印方向RRを後方、矢印方向Uを上方、矢印方向Bを下方として説明する。
【0014】
車両(乗物)1の後部には、図1に示すように、車室後方に配され、乗員が着座する後部座席2,2と、車両1の後端部に配された内装材であって、図示しないバックドアの下端部が対向する部分に取り付けられたエンドトリム3と、エンドトリム3の左方及び右方に配された内装材であって、上下方向に柱状をなすDピラートリム4,4と、が配されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、後部座席2,2とDピラートリム4,4との間には、床面を構成するデッキボード5の左右の端部から上方に延在する内装材のサイドトリム10,10が配されている。サイドトリム10,10は、その上部11が水平方向に平面をなす形状となっている。なお、図2は、左右に配された一対のサイドトリム10,10のうち、左側のサイドトリム10を示している。
【0016】
車両1の後部には、後部座席2,2、エンドトリム3、Dピラートリム4,4、デッキボード5、そして、サイドトリム10,10によって囲まれた空間である荷室6が設けられている。後部座席2,2は、荷室6の前側の側壁を、サイドトリム10,10は、荷室6の左右側の側壁をなしている。荷室6は、乗員が比較的大きな荷物を収納するための空間である。
【0017】
サイドトリム10,10の上部11,11には、車室と荷室6とを仕切る膜状のトノカバー30が上方から配設されている。トノカバー30は、荷室6に収納した荷物が視認されるのを防止したり、荷室6に入射する日光を遮ったりする部材であり、可撓性を有する。トノカバー30の前側部分は、左右方向に伸びた平面視長方形状をなし、後側部分は、Dピラートリム4,4を避けるように左右方向から面内内側に窪みつつ、後方に伸びた形状をなしている。トノカバー30は、荷室6を上方から覆う形で展開されている(この状態を、展開状態という)。
【0018】
トノカバー30は、その大部分をなす膜状部31と、前後方向及び左右方向に折り曲げ可能な金属性のワイヤー32と、を有する。ワイヤー32は、膜状部31の全周を囲むように配された布状の端末部材33に包まれており(図3参照)、端末部材33が膜状部31の周端部の表裏面に縫製されていることで、膜状部31の全周に亘って配されている。ワイヤー32は、膜状部31を面内外側に広げる方向に付勢している。膜状部31は、ワイヤー32によって膜状に広げられ、適度な張力を保っている。なお、膜状部31としては、織布、不織布、メッシュシート等を採用することができる。
【0019】
図4図5は、使用者7が展開状態のトノカバー30を、後述する折畳状態に状態変化させる態様を示す図である。展開状態のトノカバー30は、図4に示すように、その端部を使用者7が握り、例えばワイヤー32が八の字形状になるように、右手と左手とで反対方向に捻ることで、前後方向及び左右方向に折り曲げることができる。そして、膜状部31を重ね合わせて折り畳むと、図5に示すように、トノカバー30を折り畳むことができる(この状態を、折畳状態という)。折畳状態では、トノカバー30は、展開状態の半分以下の大きさとなり、端部が丸い形状となる。尚、折畳状態のトノカバー30は、上記手順を遡ることで、展開状態に戻ることができる。このように、トノカバー30は、展開状態と折畳状態との間で状態変化可能とされている。
【0020】
以降は、図2及び図3を用いて左側のサイドトリム10の詳細について説明するが、右側のサイドトリム10についても同様の構成であるものとする。左側のサイドトリム10は、その上部11の右側(荷室内側)の端部において、下方に一段下がった部分であって前後方向に延在する段部12を有する。段部12は、上部11の水平面から立ち下がった面をなす立下り壁部13と、立下り壁部13の下端部から右方(荷室内側)に延在し、段部12の底面を構成する底面部14と、を有する。底面部14の下方には、デッキボード5から上方に立ち上がった側壁をなす側壁部15が配されている。
【0021】
ここで、左側のサイドトリム10において、荷室内側の面を表面とした場合に、その裏側の面であって、荷室外側の面を裏面とすると、側壁部15の裏面側には、上下方向に延在する板状のリブ16が設けられている。段部12の底面部14の下方であって、リブ16の左上方には、右側方向にスリット状をなす隙間が形成されており、その隙間に、前後方向に長板状の磁石20が嵌め込まれている。磁石20は、底面部14の裏面14B側に配されているともいえる。
【0022】
磁石20は、底面部14の裏面14B側において、前後方向に複数設けられている。トノカバー30の展開状態において、トノカバー30の端部は、サイドトリム10の段部12に嵌まっている。このとき、ワイヤー32は、底面部14の表面14Aに端末部材33を挟んで当接しており、底面部14及び端末部材33を越えて作用する磁石20の磁力によって下方に吸引されている。これにより、トノカバー30は、サイドトリム10の段部12に固定されている。
【0023】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、車両1の荷室6の内装材10に配設されるトノカバー30の固定構造であって、トノカバー30は、前後方向及び左右方向に折り曲げ可能な金属性のワイヤー32と、ワイヤー32によって膜状に広げられた膜状部31と、を備え、荷室6を覆う形で展開された展開状態と、ワイヤー32が折り曲げられ膜状部31が折り畳まれた折畳状態と、の間で状態変化可能な構成とされ、内装材10の上部11には、磁石20が取り付けられ、ワイヤー32が磁石20に吸引されることで、トノカバー30が、内装材10の上部11に固定されている。
【0024】
このようなトノカバー30の固定構造によると、トノカバー30の配設が不要なときは、展開状態から折畳状態にすることで、トノカバー30を小さく折り畳んで収納することができる。また、ワイヤー32が磁石20で吸引されることで、トノカバー30を簡単に内装材10の上部11に固定することができる。
【0025】
また、本実施形態では、ワイヤー32は、膜状部31の全周に亘って配されている。このようなトノカバー30の固定構造によると、ワイヤー32によって膜状部31が面内外側に好適に広げられるので、展開状態においてトノカバー30にヨレや撓みが生じにくい。そして、トノカバー30の状態変化がスムーズになる。また、内装材10において任意の位置に磁石20を配置しやすくなる。
【0026】
また、本実施形態では、内装材10は、荷室6の側壁をなすサイドトリム10であり、サイドトリム10は、その上部11において一段下がった段部12を有し、磁石20は、段部12に配されている。このようなトノカバー30の固定構造によると、トノカバー30の端部が段部12に嵌まりつつ、ワイヤー32が磁石20に吸引されて、トノカバー30が固定される。これにより、トノカバー30を内装材10に強固に固定することができる。また、トノカバー30を内装材10の上部11に配設する際に位置決めが容易になる。
【0027】
また、本実施形態では、磁石20は、段部12の裏面14B側に配されている。このようなトノカバー30の固定構造によると、使用者から磁石20が視認されないので意匠性の低下を防ぐことができる。また、磁石20がトノカバー30で擦れたり引っ掛かったりすることがないので、トノカバー30および磁石20の耐久性が向上する。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図6によって説明する。本実施形態では、実施形態1とはサイドトリムの構成や磁石の位置が異なるトノカバーの固定構造を例示する。なお、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0029】
左側のサイドトリム210の段部212は、上部211の水平面から立ち下がった面をなす立下り壁部213と、立下り壁部213の下端部から右方(荷室内側)に延在し、段部212の底面を構成する底面部214と、を有する。底面部214の下方には、デッキボード5から上方に立ち上がった側壁をなす側壁部215が配されている。
【0030】
底面部214の表面214A側には、前後方向に長方形状の両面テープ221が貼り付けられている。両面テープ221の表面側(上側)には、前後方向に長板状の磁石220が貼り付けられている。トノカバー30の展開状態において、ワイヤー32は、底面部214の表面214A側に配置されており、端末部材33を越えて作用する磁石220の磁力によって下方に吸引されている。これにより、トノカバー30は、サイドトリム210の段部212に固定されている。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0032】
(1)上記実施形態以外にも、トノカバーが配設される内装材は適宜変更可能である。上記実施形態では、トノカバーは、サイドトリムの上部に固定されるものとしたが、これに限られない。例えば、トノカバーは、エンドトリムやDピラートリムに配設されるものであってもよい。この場合、エンドトリムやDピラートリムに磁石を設けてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態以外にも、磁石の位置や取付方法は適宜変更可能である。上記実施形態1では、磁石は、隙間に嵌め込まれるものとしたが、底面部の裏面側に両面テープで固定されていてもよい。また、上記実施形態では、磁石は、底面部の裏面側又は表面側に配されているものとしたが、これに限られない。例えば、磁石は、立下り壁部の裏面側又は表面側に配されるものとしてもよい。
【0034】
(3)上記実施形態では、トノカバーの形状は、前側部分が、左右方向に伸びた平面視長方形状をなし、後側部分が、Dピラートリムを避けるように左右方向から面内内側に窪みつつ、後方に伸びた形状をなすものとしたが、これに限られない。トノカバーの形状は、後部座席、サイドトリム、Dピラートリム、そしてエンドトリムの形状(すなわち、荷室の形状)によって適宜変更可能である。また、それに伴って、ワイヤーの形状も適宜変更可能である。
【0035】
(4)上記実施形態以外にも、サイドトリムの上部の構成は適宜変更可能である。上記実施形態では、サイドトリムは、その上部において一段下がった段部を有するものとしたが、これに限られない。例えば、サイドトリムは、その上部において荷室内側に突出した突出部を複数有するものとしてもよい。その場合、突出部の裏面側又は表面側に磁石を設けてもよい。
【0036】
(5)上記実施形態で例示したトノカバーの固定構造は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記トノカバーの固定構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…車両(乗物)、2…後部座席、3…エンドトリム、4…Dピラートリム、5…デッキボード、6…荷室、10,210…サイドトリム(内装材)、12,212…段部、13,213…立下り壁部、14,214…底面部、15,215…側壁部、16…リブ、20,220…磁石、30…トノカバー、31…膜状部、32…ワイヤー、33…端末部材、221…両面テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6