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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20220817BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F27/24 K
H01F27/24 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018200774
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020068314
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
【審査官】泉 卓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/014160(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/099100(WO,A1)
【文献】特開2013-219318(JP,A)
【文献】特開2013-026418(JP,A)
【文献】特開2014-143332(JP,A)
【文献】特開2015-216147(JP,A)
【文献】特開2013-143453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列される第一巻回部及び第二巻回部を有するコイルと、環状の閉磁路を形成する磁性コアとを備え、
前記磁性コアは、前記第一巻回部と前記第二巻回部のそれぞれの内部に配置される内側コア部、及び前記内側コア部と環状の磁路を形成する外側コア部を有するリアクトルであって、
前記外側コア部は、
前記コイルに対向する内方面と、
前記内方面に設けられ、前記第一巻回部と前記第二巻回部との間に向って突出する内方突出部とを備え
前記内方突出部が磁性体である、
リアクトル。
【請求項2】
前記内方面からの前記内方突出部の突出長さは0.1mm以上2.0mm以下である請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記リアクトルは、前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸方向に沿ったX軸方向、前記第一巻回部と前記第二巻回部の並列方向に沿ったY軸方向、前記X軸方向と前記Y軸方向の両方に直交するZ軸方向を有し、
前記内方突出部は、前記Z軸方向に沿って延びる突条であり、
前記内方突出部の前記Z軸方向の長さは、前記内側コア部の前記Z軸方向の長さ以上である請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記Z軸方向に直交する断面における前記内方突出部は、前記内方面の側が広くなった山型である請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記内方突出部と、前記内方突出部を除く前記外側コア部の本体部と、が別体である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記コイルの端面と前記外側コア部との間に介在され、前記コイルと前記外側コア部を保持する保持部材を備え、
前記本体部とは別体の前記内方突出部は、前記保持部材に一体に保持されている請求項5に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記内側コア部の比透磁率は、5以上50以下で、
前記外側コア部の比透磁率は、前記内側コア部の比透磁率よりも高い請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記外側コア部の比透磁率は、50以上500以下である請求項7に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記内側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成される請求項7又は請求項8に記載のリアクトル。
【請求項10】
前記外側コア部は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成される請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項11】
前記外側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成される請求項7から請求項9のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、巻線を巻回してなる一対の巻回部を有するコイルと、閉磁路を形成する磁性コアとを備え、ハイブリッド自動車のコンバータの構成部品などに利用されるリアクトルが開示されている。リアクトルに備わる磁性コアは、各巻回部の内部に配置される内側コア部と、巻回部の外部に配置される外側コア部と、に分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-003125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
並列される一対の巻回部を備えるリアクトルでは、一対の巻回部の間隔が狭い場合など、一方の内側コア部から外側コア部を経ずに他方の内側コア部に磁束が漏れることがある。その場合、漏れ磁束が巻回部を透過するなどして、リアクトルの磁気特性が低下する恐れがある。この問題点を解決するために一対の巻回部の間隔を広げたり、リアクトルの磁気特性の低下を補うようにコイルや磁性コアを大きくしたりすると、リアクトルが大型化する。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、リアクトルを大型化することなくリアクトルの磁気特性を改善できるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
並列される第一巻回部及び第二巻回部を有するコイルと、環状の閉磁路を形成する磁性コアとを備え、
前記磁性コアは、前記第一巻回部と前記第二巻回部のそれぞれの内部に配置される内側コア部、及び前記内側コア部と環状の磁路を形成する外側コア部を有するリアクトルであって、
前記外側コア部は、
前記コイルに対向する内方面と、
前記内方面に設けられ、前記第一巻回部と前記第二巻回部との間に向って突出する内方突出部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、リアクトルを大型化することなくリアクトルの磁気特性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のリアクトルの概略斜視図である。
図2図2は、図1のリアクトルの概略水平断面図である。
図3図3は、図1のリアクトルに備わる第一外側コア部をその外方面側から見た概略斜視図である。
図4図4は、図1のリアクトルに備わる第一外側コア部をその内方面側から見た概略斜視図である。
図5図5は、図1のリアクトルに備わる第一外側コア部と第一保持部材の概略図である。
図6図6は、図5とは異なる構成を備える第一外側コア部と第一保持部材の概略図である。
図7図7は、図1のリアクトルの製造方法の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
・本開示の実施形態の説明
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
並列される第一巻回部及び第二巻回部を有するコイルと、環状の閉磁路を形成する磁性コアとを備え、
前記磁性コアは、前記第一巻回部と前記第二巻回部のそれぞれの内部に配置される内側コア部、及び前記内側コア部と環状の磁路を形成する外側コア部を有するリアクトルであって、
前記外側コア部は、
前記コイルに対向する内方面と、
前記内方面に設けられ、前記第一巻回部と前記第二巻回部との間に向って突出する内方突出部とを備える。
【0011】
外側コア部に内方突出部を設けることで、外側コア部を経ずに一対の内側コア部間をわたる漏れ磁束が巻回部を透過することを抑制できる。このような漏れ磁束は、内側コア部と外側コア部との繋ぎ目の近傍で生じ易い。より具体的には、一方の内側コア部から外側コア部に向う磁束の一部が、外側コア部ではなく、他方の内側コア部に向って漏れる。その際、外側コア部に磁性体の内方突出部があれば、漏れ磁束が内方突出部に向い易い。漏れ磁束を内方突出部に導くことで、漏れ磁束が巻回部を透過することを抑制できるので、リアクトルの磁気特性の低下を抑制できる。
【0012】
上記内方突出部を設けることで、一対の巻回部の間隔を広げることや、磁性コアを大型化すること無く、リアクトルの磁気特性を改善できる。また上記内方突出部は、第一巻回部と第二巻回部との間に向って突出しているため、外側コア部に内方突出部を設けてもリアクトルの外形が大きくなることは無い。従って、上記リアクトルの構成によれば、リアクトルを大型化することなくリアクトルの磁気特性を改善できる。
【0013】
<2>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内方面からの前記内方突出部の突出長さは0.1mm以上2.0mm以下である形態を挙げることができる。
【0014】
内方突出部の突出長さが0.1mm以上であれば、十分に内方突出部の機能を果たすことができる。また、内方突出部の突出長さが2.0mm以下であれば、内方突出部が他の部材(例えば巻回部)の配置の邪魔となることがない。
【0015】
<3>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記リアクトルは、前記第一巻回部と前記第二巻回部の軸方向に沿ったX軸方向、前記第一巻回部と前記第二巻回部の並列方向に沿ったY軸方向、前記X軸方向と前記Y軸方向の両方に直交するZ軸方向を有し、
前記内方突出部は、前記Z軸方向に沿って延びる突条であり、
前記内方突出部の前記Z軸方向の長さは、前記内側コア部の前記Z軸方向の長さ以上である形態を挙げることができる。
【0016】
上記構成によれば、Z軸方向のどの位置で漏れ磁束が発生しても、その漏れ磁束が巻回部に向うことを抑制できる。
【0017】
<4>上記<3>のリアクトルの一形態として、
前記Z軸方向に直交する断面における前記内方突出部は、前記内方面の側が広くなった山型である形態を挙げることができる。
【0018】
上記構成によれば、第一巻回部と第二巻回部の間に向って内方突出部を配置し易い。内方突出部の先端が細くなっているため、内方突出部が、外側コア部に近接する部材の配置を妨げ難いからである。
【0019】
<5>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内方突出部と、前記内方突出部を除く前記外側コア部の本体部と、が別体である形態を挙げることができる。
【0020】
内方突出部を本体部と別体とすることで、従来の外側コア部をそのまま利用できる。その場合、従来の外側コア部の内方面の所定位置に内方突出部を配置することで、内方突出部を設けたことによる効果を得ることができる。
【0021】
<6>上記<5>のリアクトルの一形態として、
前記コイルの端面と前記外側コア部との間に介在され、前記コイルと前記外側コア部を保持する保持部材を備え、
前記本体部とは別体の前記内方突出部は、前記保持部材に一体に保持されている形態を挙げることができる。
【0022】
保持部材に内方突出部を一体化することで、本体部と別体である内方突出部を単独で扱うことが無くなるので、内方突出部の損傷を抑制できる。
【0023】
<7>実施形態に係るリアクトルの一形態として、
前記内側コア部の比透磁率は、5以上50以下で、
前記外側コア部の比透磁率は、前記内側コア部の比透磁率よりも高い形態を挙げることができる。
【0024】
外側コア部の比透磁率を内側コア部の比透磁率よりも高くすることで、両コア部間における漏れ磁束を低減できる。特に、両コア部の比透磁率の差を大きくすることで、両コア部間での漏れ磁束をより確実に低減できる。上記差によっては、上記漏れ磁束をかなり低減できる。また、上記形態では、内側コア部の比透磁率が低いため、磁性コア全体の比透磁率が高くなり過ぎることを抑制でき、ギャップレス構造の磁性コアとすることができる。
【0025】
<8>上記<7>のリアクトルの一形態として、
前記外側コア部の比透磁率は、50以上500以下である形態を挙げることができる。
【0026】
外側コア部の比透磁率を上記範囲とすることで、小型で磁気飽和し難いリアクトルとすることができる。
【0027】
<9>上記<7>又は<8>のリアクトルの一形態として、
前記内側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成される形態を挙げることができる。
【0028】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末の量を調整することでその比透磁率を小さくし易い。そのため、複合材料の成形体であれば、比透磁率が上記<7>の範囲を満たす内側コア部を作製し易い。
【0029】
<10>上記<7>から<9>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記外側コア部は、軟磁性粉末の圧粉成形体で構成される形態を挙げることができる形態を挙げることができる。
【0030】
圧粉成形体であれば、外側コア部を精度良く作製することができる。また、軟磁性粉末を緻密に含む圧粉成形体であれば、比透磁率が上記<7>の条件、あるいは上記<8>の範囲を満たす外側コア部を作製し易い。
【0031】
<11>上記<7>から<9>のいずれかのリアクトルの一形態として、
前記外側コア部は、軟磁性粉末と樹脂とを含む複合材料の成形体で構成される形態を挙げることができる。
【0032】
複合材料であれば、内方突出部を備える複雑形状の外側コア部であっても容易に作製できる。
【0033】
・本開示の実施形態の詳細
以下、本開示のリアクトルの実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0034】
<実施形態1>
実施形態1では、図1図7に基づいてリアクトル1の構成を説明する。図1に示すリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と保持部材4C,4Dとを組み合わせて構成される。リアクトル1は更に、コイル2に備わる第一巻回部2Aと第二巻回部2Bの内部に配置される内側樹脂部5(図2参照)と、磁性コア3を構成する外側コア部3C,3D(図2参照)の少なくとも一部を覆う外側樹脂部6と、を備える。このリアクトル1の特徴の一つとして、外側コア部3Cに内方突出部31が形成されていることが挙げられる。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0035】
≪コイル≫
本実施形態のコイル2は、図1に示すように、並列される第一巻回部2A及び第二巻回部2Bと、両巻回部2A,2Bを連結する連結部2Rと、を備える。各巻回部2A,2Bは、互いに同一の巻数、同一の巻回方向で中空筒状に形成され、各軸方向が平行になるように並列されている。本例では、一本の巻線2wでコイル2を製造している。
【0036】
本例とは異なり、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとは、巻数が異なっていても良いし、大きさが異なっていても良い。また、別々の巻線2wにより作製した巻回部2A,2Bを連結してコイル2を製造しても良い。
【0037】
本実施形態の各巻回部2A,2Bは角筒状に形成されている。角筒状の巻回部2A,2Bとは、その端面形状が四角形状(正方形状を含む)の角を丸めた形状の巻回部のことである。もちろん、巻回部2A,2Bは円筒状に形成しても構わない。円筒状の巻回部とは、その端面形状が閉曲面形状(楕円形状や真円形状、レーストラック形状など)の巻回部のことである。
【0038】
巻回部2A,2Bを含むコイル2は、銅やアルミニウム、マグネシウム、あるいはその合金といった導電性材料からなる平角線や丸線などの導体の外周に、絶縁性材料からなる絶縁被覆を備える被覆線によって構成することができる。本実施形態では、導体が銅製の平角線(巻線2w)からなり、絶縁被覆がエナメル(代表的にはポリアミドイミド)からなる被覆平角線をエッジワイズ巻きにすることで、各巻回部2A,2Bを形成している。
【0039】
コイル2は、図示しない端子部材に接続される第一巻線端部2aと第二巻線端部2bを備える。第一巻線端部2aは、第一巻回部2Aの軸方向の一端側(連結部2Rの反対側)で第一巻回部2Aから引き出される。第二巻線端部2bは、第二巻回部2Bの軸方向の一端側で第二巻回部2Bから引き出される。巻線端部2a,2bではエナメルなどの絶縁被覆は剥がされている。巻線端部2a,2bに接続される端子部材を介して、コイル2に電力供給を行なう電源などの外部装置が接続される。
【0040】
ここで、コイル2を基準にしてリアクトル1における方向を規定する。まず、コイル2の巻回部2A,2Bの軸方向に沿った方向をX軸方向とする。そのX軸方向に直交し、巻回部2A,2Bの並列方向に沿った方向をY軸方向とする。そして、X軸方向とY軸方向の両方に交差する方向をZ軸方向とする。更に、以下に示す方向を規定する。
・X1方向…X軸方向のうち、巻線端部2a,2bに向う方向
・X2方向…X軸方向のうち、連結部2Rに向う方向
・Y1方向…Y軸方向のうち、第一巻回部2Aに向う方向
・Y2方向…Y軸方向のうち、第二巻回部2Bに向う方向
・Z1方向…Z軸方向のうち、連結部2Rが配置される側に向う方向
・Z2方向…Z軸方向のうち、Z1方向の反対に向う方向
【0041】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、図2に示すように、第一内側コア部3A、第二内側コア部3B、第一外側コア部3C、及び第二外側コア部3Dを備える。第一内側コア部3Aは、第一巻回部2Aの内部に配置される。第二内側コア部3Bは、第二巻回部2Bの内部に配置される。第一外側コア部3Cは、第一内側コア部3Aの一端(X1方向の端部)と、第二内側コア部3Bの一端とを繋ぐ。第二外側コア部3Dは、第一内側コア部3Aの他端(X2方向の端部)と、第二内側コア部3Bの他端とを繋ぐ。これらコア部3A,3B,3C,3Dが環状に繋がることで閉磁路が形成される。
【0042】
[内側コア部]
内側コア部3A(3B)は、コイル2の巻回部2A(2B)の軸方向、即ちX軸方向に沿った部分である。本例では、磁性コア3のうち、巻回部2A,2Bの軸方向に沿った部分の両端部が巻回部2A,2Bの端面から突出している(内側コア部3A,3Bの端面300の位置を参照)。その突出する部分も内側コア部3A,3Bの一部である。
【0043】
内側コア部3A(3B)の形状は、巻回部2A(2B)の内部形状に沿った形状であれば特に限定されない。本例の内側コア部3A(3B)は、略直方体状である。内側コア部3A(3B)は、複数の分割コアとギャップ板とを連結した構成としても良いが、本例のように一つの部材とすると、リアクトル1の組み立てが容易となるため好ましい。
【0044】
[外側コア部]
外側コア部3C(3D)は、磁性コア3のうち、巻回部2A,2Bの外部に配置される部分である。外側コア部3C(3D)の形状は、一対の内側コア部3A(3B)の端部を繋ぐ形状であれば特に限定されない。本例の外側コア部3C(3D)は、略直方体状である(図3,4を参照)。
【0045】
第一外側コア部3Cは、コイル2の巻回部2A,2Bの端面に対向する内方面310(本例では第一内方面と呼ぶ)と、第一内方面310と反対側の外方面319(本例では第一外方面と呼ぶ)とを有する。また、第二外側コア部3Dは、コイル2の巻回部2A,2Bの端面に対向する内方面320(本例では第二内方面と呼ぶ)と、第二内方面320と反対側の外方面329(本例では第二外方面と呼ぶ)とを有する。図2に示すように、第一内方面310(第二内方面320)は、内側コア部3A,3Bの端面300と接触しているか、又は接着剤を介して実質的に接触している。
【0046】
本例の第一外側コア部3Cは、磁路の主たる通り道となる本体部30と、この本体部30に設けられる内方突出部31及び外方突出部39とを備える。一方、本例の第二外側コア部3Dは、内方突出部31も外方突出部39も有していない。本例とは異なり、第二外側コア部3Dは、内方突出部31を備えていても良い。
【0047】
[[内方突出部]]
内方突出部31は、図2に示すように、第一外側コア部3Cの第一内方面310に設けられ、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとの間に向って突出する。つまり、内方突出部31は、X2方向に向って突出している。本例の内方突出部31は、本体部30に一体に設けられている。
【0048】
第一外側コア部3Cに内方突出部31を設けることで、第一外側コア部3Cを経ずに両内側コア部3A,3B間をわたる漏れ磁束が巻回部2A,2Bを透過することを抑制できる。例えば、第一内側コア部3Aから第一外側コア部3Cを経ずに第二内側コア部3Bに向う漏れ磁束が生じた場合、その漏れ磁束を内方突出部31に向けることができる。磁束は、比透磁率が高い部分を通ろうとするからである。その結果、漏れ磁束が巻回部2Bを透過することを抑制できるので、リアクトル1の磁気特性の低下を抑制できる。
【0049】
内方突出部31は、両巻回部2A,2Bに向って突出しているが、両巻回部2A,2Bの間に介在される程の大きさは有していない。第一内方面310からの内方突出部31の突出長さは0.1mm以上2.0mm以下とすることが好ましい、内方突出部31の突出長さが0.1mm以上であれば、上述した内方突出部31の効果を十分に得られる。また、内方突出部31の突出長さが2.0mm以下であれば、内方突出部31が他の部材(例えば巻回部2A,2B)の配置の邪魔となることがない。より好ましい内方突出部31の突出長さは1.0mm以上2.0mm以下である。
【0050】
本例の内方突出部31は、図4に示すように、Z軸方向に延びる突条である。その内方突出部31のZ軸方向の長さは、内側コア部3A,3B(図2)のZ軸方向の長さ以上とすることが好ましい。つまり、内方突出部31のZ1方向の端部が、内側コア部3A,3B(図2)のZ1方向の端部と同じ位置、又は内側コア部3A,3BのZ1方向の端部よりもZ1方向側の位置にあることが好ましい。同様に、内方突出部31のZ2方向の端部が、内側コア部3A,3BのZ2方向の端部と同じ位置、又は内側コア部3A,3BのZ2方向の端部よりもZ2方向側の位置にあることが好ましい。このような構成とすることで、Z軸方向のどの位置で漏れ磁束が発生しても、その漏れ磁束を内方突出部31に導くことができる。本例では、内方突出部31のZ1方向の端面は、第一外側コア部3CのZ1方向の端面と面一になっており、内方突出部31のZ2方向の端面は、第一外側コア部3CのZ2方向の端面と面一になっている。
【0051】
Z軸方向に直交する内方突出部31の断面形状は、特に限定されない。例えば、当該断面は、内方突出部31の根元側(X1方向側)から先端側(X2方向側)にかけて幅が一様な矩形とすることが挙げられる。本例では、当該断面は、内方面の側(根元側)が広くなった山型としている。断面山型の内方突出部31は、両巻回部2A,2Bの間に向って配置し易い。内方突出部31の先端が細くなっているため、内方突出部31が、第一外側コア部3Cに近接する部材の配置を妨げ難いからである。
【0052】
ここで、内方突出部31は、本体部30と別体であっても良い。例えば、本体部30と別に作製した内方突出部31を本体部30の第一内方面310に接着しても良い。その他、後述する第一保持部材4C(図1,2)に内方突出部31を一体に成形しても良い。この場合、内方突出部31は、第一内方面310に接触するか、もしくは若干ではあるが離隔する。内方突出部31を第一保持部材4Cに一体化した構成については、第一保持部材4Cの説明にて詳しく述べる。
【0053】
[[外方突出部]]
外方突出部39は、第一外方面319から突出する。外方突出部39は、本体部30に一体に設けられている。外方突出部39のX1方向の端面は平坦面となっている。この平坦面は、後述する外側樹脂部6の表面と面一になっており、外側樹脂部6から外部に露出している。外方突出部39が外側樹脂部6から突出しないので、リアクトル1を取り扱う際、外方突出部39が損傷し難い。
【0054】
外方突出部39によって、第一外側コア部3Cの磁路断面積を大きくできる。そのため、磁性コア3の磁気特性を向上させられる。また、外方突出部39が外側樹脂部6から露出することで、磁性コア3の放熱性、即ちリアクトル1の放熱性を向上させられる。
【0055】
外方突出部39は、第一外方面319の外周輪郭線よりも小さい。そのため、外方突出部39を第一外方面319の側から見たときに、外方突出部39の外周輪郭線は、第一外方面319の輪郭線の内側にある(特に図3参照)。そのため、図1に示すように、第一外側コア部3Cを覆う外側樹脂部6が、Y軸方向にもZ軸方向にも分断されずに繋がった状態になる。外側樹脂部6は、後述する内側樹脂部5と共にリアクトル1を構成する各部材を一体化する役割を持っている。第一外側コア部3Cの第一外方面319を覆う外側樹脂部6が、Y軸方向にもZ軸方向にも分断されずに繋がっていれば、外側樹脂部6によって第一外側コア部3Cを確りと固定できる。
【0056】
第一外方面319からの外方突出部39の突出長さは0.1mm以上2.0mm以下とすることが好ましい。外方突出部39の端面が外側樹脂部6の表面と面一になっているため、外方突出部39の突出高さは、第一外方面319を覆う外側樹脂部6の厚さに等しいと考えて良い。つまり、外方突出部39の突出長さが0.1mm以上ということは、第一外方面319を覆う外側樹脂部6の厚さが0.1mm以上ということである。既に述べたように、第一外方面319を覆う外側樹脂部6はY軸方向にもZ軸方向にも分断されていないため、外側樹脂部6の厚さが0.1mm以上あれば、第一外側コア部3Cを確りと固定するという外側樹脂部6の効果が十分に得られる。一方、外方突出部39の突出長さが2.0mm以下であれば、磁性コア3のX軸方向の長さが長くなり過ぎない。そのため、リアクトル1が不必要に大型化することを抑制できる。より好ましい外方突出部39の突出長さは1.0mm以上2.0mm以下である。
【0057】
上記外方突出部39を備えるリアクトル1は、外方突出部39の端面を基準にして設置対象に設置することで、外部機器と接続し易くなる。外方突出部39は、巻線端部2a,2bに近い第一外側コア部3Cに設けられているので、リアクトル1の各部材に寸法誤差があっても、外方突出部39の端面から巻線端部2a,2bまでの距離を精度良く決め易い。また、外方突出部39の端面は外側樹脂部6から露出しているので、外側樹脂部6の厚みのバラツキが、上記距離の精度を低下させることもない。そのため、外方突出部39の端面を基準にしてリアクトル1を設置対象の所定位置に設置すれば、設置対象における所望の位置にリアクトル1の巻線端部2a,2bを精度良く配置できる。その結果、設置対象に設けられた外部機器と、リアクトル1の巻線端部2a,2bとを接続し易くなる。
【0058】
[磁気特性・材質など]
内側コア部3A,3Bの比透磁率は5以上50以下で、外側コア部3C,3Dの比透磁率は内側コア部3A,3Bの比透磁率よりも高いことが好ましい。内側コア部3A,3Bの比透磁率は、更に10以上45以下、15以上40以下、20以上35以下とすることができる。一方、外側コア部3C,3Dの比透磁率は、50以上500以下であることが好ましい。外側コア部3C,3Dの比透磁率は、80以上、100以上、150以上、180以上とすることができる。外側コア部3C,3Dの比透磁率を内側コア部3A,3Bの比透磁率よりも高くすることで、内側コア部3A,3Bと第一外側コア部3Cとの間、及び内側コア部3A,3Bと第二外側コア部3Dとの間における漏れ磁束を低減できる。特に、内側コア部3A,3Bと外側コア部3C,3Dとの比透磁率の差を大きくする、例えば外側コア部3C,3Dの比透磁率を内側コア部3A,3Bの比透磁率の2倍以上とすることで、漏れ磁束をより低減できる。また、内側コア部3A,3Bの比透磁率が外側コア部3C,3Dの比透磁率に比べて低いため、磁性コア3全体の比透磁率が高くなり過ぎることを抑制できる。その結果、ギャップレス構造の磁性コア3とすることができる。
【0059】
内側コア部3A,3Bと外側コア部3C,3Dは、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形してなる圧粉成形体、あるいは軟磁性粉末と樹脂との複合材料の成形体で構成することができる。圧粉成形体の軟磁性粉末は、鉄などの鉄族金属やその合金(Fe-Si合金、Fe-Ni合金など)などで構成される軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。原料粉末には潤滑材などが含まれていてもかまわない。
【0060】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末と未固化の樹脂との混合物を金型に充填し、樹脂を固化させることで製造できる。複合材料の軟磁性粉末には、圧粉成形体で使用できるものと同じものを使用できる。一方、複合材料に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、低温硬化性樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。その他、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴム等も利用できる。上述の複合材料は、軟磁性粉末及び樹脂に加えて、アルミナやシリカ等の非磁性かつ非金属粉末(フィラー)を含有すると、放熱性をより高められる。非磁性かつ非金属粉末の含有量は、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下が挙げられる。
【0061】
複合材料中の軟磁性粉末の含有量は、30体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、磁性粉末の含有量は更に、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上とすることができる。製造過程での流動性の向上の観点から、磁性粉末の含有量を75体積%以下とすることが好ましい。複合材料の成形体では、軟磁性粉末の充填率を低く調整すれば、その比透磁率を小さくし易い。そのため、複合材料の成形体は、比透磁率が5以上50以下を満たす内側コア部3A,3Bの作製に好適である。本例では、内側コア部3A,3Bを複合材料の形成体で構成し、その比透磁率を20としている。
【0062】
圧粉成形体は、複合材料の成形体よりも軟磁性粉末の含有量を高め易く(例えば80体積%超、更に85体積%以上)、飽和磁束密度や比透磁率がより高いコア片を得易い。そのため、圧粉成形体は、比透磁率が50以上500以下の外側コア部3C,3Dの作製に好適である。本例では、外側コア部3C,3Dを圧粉成形体で構成し、その比透磁率を200としている。もちろん、外側コア部3C,3Dは、複合材料の成形体で構成しても良い。複合材料の成形体であれば、内方突出部31と外方突出部39を有する複雑形状の第一外側コア部3Cを容易に作製できる。
【0063】
≪保持部材≫
図1に示す本例のリアクトル1は更に、第一保持部材4Cと第二保持部材4Dとを備える。図2に示すように、第一保持部材4Cは、コイル2の巻回部2A,2BのX1方向の端面と、磁性コア3の第一外側コア部3Cの第一内方面310と、の間に介在され、これらを保持する部材である。第二保持部材4Dは、コイル2の巻回部2A,2BのX2方向の端面と、磁性コア3の第二外側コア部3Dの第二内方面320との間に介在され、これらを保持する部材である。保持部材4C,4Dは、代表的にはポリフェニレンスルフィド樹脂などの絶縁材料で構成される。保持部材4C,4Dは、コイル2と磁性コア3との間の絶縁部材や、巻回部2A,2Bに対する内側コア部3A,3B、外側コア部3C,3Dの位置決め部材として機能する。
【0064】
以下、図5を参照して保持部材4C,4Dの一例を説明する。図5では、第一保持部材4Cの構成を説明する。図5では、Z軸方向の中央で第一保持部材4Cを切断した状態が示されている。第一外側コア部3Cは、切断していない状態で示されている。
【0065】
第一保持部材4Cは、図5に示すように、一対の貫通孔40,40と、一対のコイル収納部41,41と、コア収納部42と、仕切り部43とを備える。貫通孔40は、第一保持部材4Cの厚み方向に貫通する。貫通孔40には図2に示すように内側コア部3A,3Bが挿通される。コイル収納部41は、第一保持部材4CのX2方向側の面に形成される。コイル収納部41には、各巻回部2A,2B(図1)の端面及びその近傍が嵌め込まれる。コア収納部42は、第一保持部材4CのX1方向側の面に形成される凹みである。コア収納部42には、第一外側コア部3Cの第一内方面310及びその近傍が嵌め込まれる(図2を合わせて参照)。仕切り部43は、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとの間に介在される。仕切り部43によって、両巻回部2A,2B間の絶縁を確保する。これらの構成は、第二保持部材4Dにも備わっている。第二保持部材4Dは更に、図1に示すように、コイル2の連結部2Rを収納する切欠き部45を備える。
【0066】
第一保持部材4Cは更に、突起収納部44を備える。突起収納部44は、第一外側コア部3Cの内方突出部31に対応する位置に設けられる。突起収納部44の内周面形状は、内方突出部31の外周面形状に対応する形状を備える。そのため、太線矢印で示すように、第一保持部材4Cに第一外側コア部3Cを嵌め込んだとき、内方突出部31が突起収納部44に収納される。その結果、第一保持部材4Cに対する第一外側コア部3Cの位置が決まるので、巻回部2A,2Bに対して内方突出部31が適切な位置に配置される。
【0067】
図6に示すように、予め複合材料で成形した内方突出部31を第一保持部材4Cに一体化することもできる。図6に示す例では、第一保持部材4Cに内方突出部31をインサート成形している。図6の構成であれば、第一保持部材4Cに第一外側コア部3Cを嵌め込む際、内方突出部31が損傷することを抑制できる。第一保持部材4Cに第一外側コア部3Cを嵌め込んだとき、内方突出部31は第一内方面310に接触するか、又は若干離隔する。第一内方面310から内方突出部31が離隔していても、内方突出部31は第一外側コア部3Cの一部と見做す。
【0068】
≪内側樹脂部≫
内側樹脂部5は、図2に示すように、巻回部2A,2Bの内部に配置される。第一巻回部2Aの内部にある内側樹脂部5は、第一巻回部2Aの内周面と第一内側コア部3Aの外周面を接合する。第二巻回部2Bの内部にある内側樹脂部5は、第二巻回部2Bの内周面と第二内側コア部3Bの外周面とを接合する。内側樹脂部5は、巻回部2A(2B)の内周面と外周面との間に跨がることなく、巻回部2A(2B)の内部に留まっている。つまり、巻回部2A,2Bの外周面は、図1に示すように、樹脂に覆われることなく外部に露出している。
【0069】
内側樹脂部5は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、PPS樹脂、PA樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂、常温硬化性樹脂、あるいは低温硬化性樹脂を利用することができる。これらの樹脂にアルミナやシリカなどのセラミックスフィラーを含有させて、内側樹脂部5の放熱性を向上させても良い。
【0070】
≪外側樹脂部≫
外側樹脂部6は、図1,2に示すように、外側コア部3C(3D)における保持部材4C(4D)から露出する部分を覆うように配置される。外側樹脂部6によって、外側コア部3C(3D)が保持部材4C(4D)に固定されると共に、外側コア部3C,3Dが外部環境から保護される。本例の外側樹脂部6は内側樹脂部5に繋がっている。つまり、外側樹脂部6と内側樹脂部5とは同じ樹脂で一度に形成されたものである。両樹脂部5,6によって、コイル2と磁性コア3と保持部材4C,4Dとが一体化される。そのため、本例のリアクトル1は、図1に示す状態で車両などに搭載することができる。
【0071】
本例の外側樹脂部6は、保持部材4C(4D)における外側コア部3C(3D)が配置される側にのみ設けられ、巻回部2A,2Bの外周面に及んでいない。外側コア部3C,3Dの固定と保護を行なうという外側樹脂部6の機能に鑑みれば、外側樹脂部6の形成範囲は図示する程度で十分である。外側樹脂部6の形成範囲を限定することで、樹脂の使用量を低減できるといった利点や、外側樹脂部6によってリアクトル1が不必要に大型化することを抑制できるといった利点がある。
【0072】
第一外側コア部3Cの外周を覆う外側樹脂部6からは、外方突出部39のX1方向の端面が露出している。外方突出部39のX1方向の端面は、外側樹脂部6のX1方向の端面と面一になっている。その外側樹脂部6は、外方突出部39を取り囲むように第一外方面319全体を覆っている。外側樹脂部6は、Y軸方向にもZ軸方向にも分断されていないので、外側樹脂部6による第一外側コア部3Cの固定強度を向上させられる。
【0073】
第二外側コア部3Dの外周を覆う外側樹脂部6には、ゲート痕60と孔部61が形成されている。これらは、外側樹脂部6と内側樹脂部5とが樹脂成形によって形成された名残である。ゲート痕60は、図7に示す樹脂成形の金型7の樹脂充填孔70(ゲート)によって形成される。孔部61は、図7の金型7の内での磁性コア3の位置を決める支持材71によって形成される。
【0074】
≪使用態様≫
本例のリアクトル1は、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車といった電動車両に搭載される双方向DC-DCコンバータなどの電力変換装置の構成部材に利用することができる。本例のリアクトル1は、液体冷媒に浸漬された状態で使用することができる。液体冷媒は特に限定されないが、ハイブリッド自動車でリアクトル1を利用する場合、ATF(Automatic Transmission Fluid)などを液体冷媒として利用できる。その他、フロリナート(登録商標)などのフッ素系不活性液体、HCFC-123やHFC-134aなどのフロン系冷媒、メタノールやアルコールなどのアルコール系冷媒、アセトンなどのケトン系冷媒などを液体冷媒として利用することもできる。本例のリアクトル1では、巻回部2A,2Bの外部に露出しているため、リアクトル1を液体冷媒等の冷却媒体で冷却する場合には、巻回部2A,2Bを冷却媒体に直接接触させられるので、本例のリアクトル1は放熱性に優れる。
【0075】
本例のリアクトル1は、Z2方向の面を設置面とすることができる。リアクトル1における設置面とは、冷却ベースなどの設置対象に接触する面のことである。その他、リアクトル1におけるY1方向の面、Y2方向の面、X1方向の面、あるいはX2方向の面を、設置対象に接触する設置面とすることができる。
【0076】
≪効果≫
本例のリアクトル1の構成によれば、リアクトル1を大型化することなく、リアクトル1の磁気特性を改善できる。既に述べたように、リアクトル1に備わる内方突出部31は、漏れ磁束を巻回部2A,2Bから遠ざけ、リアクトル1の磁気特性を改善する。この内方突出部31は、第一巻回部2Aと第二巻回部2Bとの間に向って突出するように設けられている。そのため、第一外側コア部3Cに内方突出部31を設けてもリアクトル1の外形が大きくなることは無い。従って、本例のリアクトル1の構成によれば、リアクトルを大型化することなくリアクトルの磁気特性を改善できる。
【0077】
≪リアクトルの製造方法≫
次に、実施形態1に係るリアクトル1を製造するためのリアクトルの製造方法の一例を図7に基づいて説明する。リアクトルの製造方法は、大略、次の工程を備える。
・コイル2と磁性コア3と保持部材4C,4Dとを組み合わせる工程(工程I)
・巻回部の内部に樹脂を充填する工程(工程II)
・樹脂を固化させる工程(工程III)
【0078】
[工程I]
この工程では、コイル2と磁性コア3と保持部材4C,4Dとを組み合わせる。例えば、巻回部2A,2Bの内部に内側コア部3A,3Bを配置し、一対の保持部材4C,4Dをそれぞれ巻回部2A,2Bの一端面と他端面に当接させた第一組物を作製する。そして、その第一組物を一対の外側コア部3C,3Dで挟み込んだ第二組物を作製する。内側コア部3A,3Bの端面300と第一外側コア部3Cの第一内方面310との間、及び内側コア部3A,3Bの端面300と第二外側コア部3Dの第二内方面320との間は、接着剤などで接合することができる。
【0079】
[工程II]
工程IIでは、第二組物における巻回部2A,2Bの内部に樹脂を充填する。本例では、第二組物を金型7内に配置し、金型7内に樹脂を注入する射出成形を行なう。金型7内の第二組物はX1方向に押圧される。具体的には、第二外側コア部3Dの第二外方面329が支持材71,71で押圧される。その結果、第二組物の外方突出部39の端面は、金型7の内周面に当接される。
【0080】
樹脂の注入は、金型7の二つの樹脂充填孔70から行われる。樹脂充填孔70は、第二外側コア部3Dの第二外方面329に対応する位置に設けられている。樹脂充填孔70を介して金型7内に充填された樹脂は、第二外側コア部3Dの外周全体を覆うと共に、第二保持部材4Dの貫通孔40を介して巻回部2A,2Bの内部に流入する。巻回部2A,2Bの内部に流入した樹脂は、第一保持部材4Cの貫通孔40を介して、第一外側コア部3Cに至る。このとき、第一外側コア部3Cの外方突出部39の端面が金型7の内周面に接触しているので、当該端面は樹脂で覆われずに外部に露出する。
【0081】
[工程III]
工程IIIでは、熱処理などで樹脂を固化させる。固化した樹脂のうち、巻回部2A,2Bの内部にあるものは図2に示すように内側樹脂部5となり、外側コア部3C,3Dを覆うものは外側樹脂部6となる。内側樹脂部5と外側樹脂部6とは、保持部材4C,4Dの内部で繋がっている。
【0082】
[効果]
以上説明したリアクトルの製造方法によれば、図1に示すリアクトル1を製造することができる。また、本例のリアクトルの製造方法では、内側樹脂部5と外側樹脂部6とを一体に形成しており、樹脂を充填する工程と、樹脂を硬化させる工程が1回ずつで済むので、生産性良くリアクトル1を製造することができる。
【0083】
また、本例のリアクトルの製造方法によれば、リアクトル1における巻線端部2a,2b(図1)の位置を精度良く決められる。図7に示すように外方突出部39の端面を金型7の内周面に当接させて、樹脂部5,6を形成している。そのため、外方突出部39の端面を設置の基準として、巻線端部2a,2bの位置が精度良く決まっている。外方突出部39の端面を基準にしてリアクトル1を設置対象に設置すれば、設置対象における所望の位置に巻線端部2a,2bを精度良く配置できる。その結果、当該巻線端部2a,2bと外部機器とを接続し易くなる。
【0084】
≪試験例≫
実施形態1に示す内方突出部31を有するリアクトル1と、内方突出部31を有さない参考品のリアクトルについて、シミュレーションによってインダクタンスと合計損失を測定した。両リアクトルの内側コア部3A,3Bの比透磁率は20、外側コア部3C,3Dの比透磁率は200とした。また、実施形態1のリアクトル1の内方突出部31の突出長さは1.2mmとした。インダクタンス及び合計損失のシミュレーションには、市販のソフトウェア(例、株式会社JSOL製 JMAG-Designer)を用いた。
【0085】
各試料のリアクトルに、100A又は200A以下の電流を流したときのインダクタンス(μH)をシミュレーションにより求めた。その結果を以下に列記する。
【0086】
・実施形態1のリアクトル…86μH(100A)、45.6μH(200A)
・参考品のリアクトル…85.5μH(100A)、45.3μH(200A)
【0087】
上記のように、100Aの通電条件においても200Aの通電条件においても、実施形態1のリアクトル1のインダクタンスは、参考品のリアクトルのインダクタンスよりも高かった。そのインダクタンスの上昇率は、100Aの通電条件で0.6%、200Aの通電条件で0.7%であった。つまり、通電電流が大きくなるほど、実施形態1のリアクトル1のインダクタンスと、参考品のリアクトルのインダクタンスとの差が大きくなる傾向にあることが分かった。
【0088】
各試料のリアクトルを、直流電流50A、入力電圧300V、出力電圧300V、周波数20kHzで駆動したときの直流銅損、鉄損、交流銅損をシミュレーションにより求めた。これら直流銅損、鉄損、交流銅損を合計した合計損失(W)とする。その結果を以下に列記する。
【0089】
・実施形態1のリアクトル…83.9W
・参考品のリアクトル…84.9W
【0090】
上記のように、実施形態1のリアクトル1の合計損失は、参考品のリアクトルの損失よりも低くなっている。その損失の低減率は約1.2%である。
【0091】
上記シミュレーションの結果から、ごく小さな内方突出部31であっても、リアクトル1の磁気特性の改善に有効であることが分かった。
【符号の説明】
【0092】
1 リアクトル
2 コイル 2w 巻線
2A 第一巻回部 2B 第二巻回部 2R 連結部
2a 第一巻線端部 2b 第二巻線端部
3 磁性コア
3A 第一内側コア部 3B 第二内側コア部
3C 第一外側コア部 3D 第二外側コア部
30 本体部 31 内方突出部 39 外方突出部
300 端面
310 第一内方面 319 第一外方面
320 第二内方面 329 第二外方面
4C 第一保持部材 4D 第二保持部材
40 貫通孔 41 コイル収納部 42 コア収納部
43 仕切り部 44 突起収納部 45 切欠き部
5 内側樹脂部
6 外側樹脂部
60 ゲート痕 61 孔部
7 金型
70 樹脂充填孔 71 支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7