(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B60H1/34 651B
B60H1/34 611B
(21)【出願番号】P 2018214912
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 廣人
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-024555(JP,A)
【文献】特開2013-006569(JP,A)
【文献】特開2011-079374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通風路を有するとともに、空調用空気の流れ方向における前記通風路の下流端が、インストルメントパネルの後壁部における吹出口に連通するリテーナを備え、
前記後壁部のうち、前記吹出口の上側に隣接する箇所には、下流側ほど高くなり、かつ鉛直面に対しなす角度が30°~40°の傾斜壁部が形成され、
前記リテーナ内であって、前記吹出口の上流側には、車幅方向に延びる下フィンと、前記下フィンの上側で車幅方向に延びる上フィンとが、それぞれフィン軸により上下方向へ傾動可能に支持され、
前記リテーナの上壁部、前記上フィン、前記下フィン及び前記リテーナの底壁部の各下流端は、下方に位置するものほど上流側に位置しており、
前記下フィンは、下流側ほど高くなる方向へは、水平面に対し最大で30°傾動可能であり、
前記下フィンが水平面に対し下流側ほど高くなる方向へ最大角度傾動されたときには、前記上フィンの前記下フィンに対しなす角度が、水平状態のときよりも大きくなるように、前記上フィンを前記下フィンに連動させて傾動させる連動機構がさらに設けられ、
前記傾動機構は、前記下フィンが最大角度傾動されたときには、前記上フィンの水平面に対しなす角度が、前記下フィンの水平面に対しなす角度より大きくなるように傾動させ、
前記底壁部のうち、前記下フィンの上流端の下方には、下流側ほど高くなるように傾斜する斜面が形成されている空調用レジスタ。
【請求項2】
前記下フィンが水平面に対し前記最大角度傾動されたときには、前記上フィンの前記下フィンに対しなす角度が、前記連動機構により、水平状態のときよりも最大で5°大きくされる請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記斜面を下流斜面とした場合において、
前記底壁部は、下方へ凹む凹部を備えており、
前記下流斜面は、前記凹部の内底面の下流部分に形成されており、
前記凹部の内底面の前記下流斜面よりも上流には、下流側ほど低くなるように傾斜する上流斜面が形成されている請求項1又は2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記上流斜面及び前記下流斜面は、下側へ膨らむように湾曲する湾曲面により繋がれている請求項3に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記下流斜面は、水平面に対し30°±5°傾斜している請求項3又は4に記載の空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきた空調用空気を、インストルメントパネルの後壁部に設けられた吹出口から室内に吹き出すとともに、その吹出口からの空調用空気の吹き出し方向を変更する空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、空調装置から送られてきてインストルメントパネルの吹出口から車室内に吹出す空調用空気の向きを変更等するための空調用レジスタが組込まれている。この空調用レジスタは、空調用空気の通風路を有する筒状のリテーナを備えている。通風路には、車幅方向に延びるフィンが配置されている。フィンは、フィン軸により、リテーナに対し上下方向へ傾動可能に支持されている。
【0003】
上記空調用レジスタによると、空調装置から空調用空気がリテーナに送られてくると、その空調用空気はフィンに沿って流れ、吹出口から吹き出す。フィンが上下方向へ傾動されると、空調用空気の吹出口からの吹き出し方向が変えられる。ここで、水平面に対しフィンのなす角度を「振り角」といい、水平面に対し空調用空気が吹き出す方向のなす角度を「指向角」というものとする。
図10は、フィンの上下方向の振り角と同方向の指向角との関係をシミュレーションした結果を示している。
図10において二点鎖線で示す従来例1は、上述した一般的な空調用レジスタについての結果を示しており、振り角の増減に応じて指向角が増減する。
【0004】
上記空調用レジスタは、一般的には、インストルメントパネルの後壁部の上部に設けられるが、意匠上等の観点から吹出口を乗員の目に付きにくくするために、同空調用レジスタがインストルメントパネルの上記後壁部の低い位置に設けられる場合がある。
【0005】
この場合、インストルメントパネルの上部に設置される一般的な空調用レジスタの位置を単に低い位置に変えるだけでは、
図10の従来例1のように、指向角の可変領域が狭く、乗員の上下方向に広い領域に向けて空調用空気を吹き出させることが難しい。例えば、乗員の腹部から喉元までの領域に向けて空調用空気を吹き出させることができるが、それよりも上側の頭部等に向けて空調用空気を吹き出させることができない。
【0006】
そのため、特許文献1に記載されているように、吹出口から吹き出された上向きの空調用空気を、コアンダ効果を利用して、インストルメントパネルの後壁部に沿わせることで上方へ向かわせるようにした空調用レジスタが考えられている。この空調用レジスタでは、インストルメントパネルの後壁部のうち、吹出口の上側に隣接する箇所に、下流側ほど高くなるように傾斜する傾斜壁部が形成される。そのため、フィンが下流側ほど高くなるように大きな振り角で傾斜された場合、吹出口から上向きに吹き出された空調用空気は、コアンダ効果によって傾斜壁部に沿って流れることで、コアンダ効果のない場合よりも上側へ向けて流れる。このようにして、指向角の可変領域が上側へ拡大される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1を含め、コアンダ効果を利用して空調用空気の流れ方向を上側へ変える従来の空調用レジスタでは、次のような問題があった。
図10において破線で示す従来例2は、コアンダ効果の発生する従来の空調用レジスタについての結果を示している。この空調用レジスタにおいて、フィンを水平な状態(振り角:0°)から、フィンの下流側ほど高くなるように、そのフィンを傾動させていくと、振り角が所定値(10°)以下のときには、指向角は振り角の増加に略比例して増加していく。空調用空気は、概ねフィンの向く方向へ吹き出される。しかし、振り角が上記所定値(10°)よりも大きくなると、コアンダ効果が効き過ぎて指向角が急激に増加する。その結果、空調用空気を、頭部等、乗員の上部の任意の箇所に向けて吹き出させることが難しい。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、コアンダ効果により指向角の可変領域を上側へ拡大しつつも、乗員の上部の任意の箇所に向けて空調用空気を吹き出させることのできる空調用レジスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する空調用レジスタは、空調用空気の通風路を有するとともに、空調用空気の流れ方向における前記通風路の下流端が、インストルメントパネルの後壁部における吹出口に連通するリテーナを備え、前記後壁部のうち、前記吹出口の上側に隣接する箇所には、下流側ほど高くなり、かつ鉛直面に対しなす角度が30°~40°の傾斜壁部が形成され、前記リテーナ内であって、前記吹出口の上流側には、車幅方向に延びる下フィンと、前記下フィンの上側で車幅方向に延びる上フィンとが、それぞれフィン軸により上下方向へ傾動可能に支持され、前記リテーナの上壁部、前記上フィン、前記下フィン及び前記リテーナの底壁部の各下流端は、下方に位置するものほど上流側に位置しており、前記下フィンは、下流側ほど高くなる方向へは、水平面に対し最大で30°傾動可能であり、前記下フィンが水平面に対し下流側ほど高くなる方向へ最大角度傾動されたときには、前記上フィンの前記下フィンに対しなす角度が、水平状態のときよりも大きくなるように、前記上フィンを前記下フィンに連動させて傾動させる連動機構がさらに設けられ、前記底壁部のうち、前記下フィンの上流端の下方には、下流側ほど高くなるように傾斜する斜面が形成されている。
【0011】
上記の構成によれば、下フィンが水平状態から、下流側ほど高くなる方向へ30°近くの角度、例えば25°までの領域で傾動されると、その傾動が連動機構によって上フィンに伝達される。上フィンは下フィンに連動して下流側ほど高くなる方向へ傾動される。このときには、コアンダ効果が発生しない、又は発生しにくい。空調用空気は、下フィン及び上フィンに沿って流れる。
【0012】
ここで、水平面に対し下フィンのなす角度を「振り角」といい、水平面に対し空調用空気が吹き出す方向のなす角度を「指向角」というものとする。すると、振り角が0°から30°近くの角度、例えば25°までの領域で変化すると、その変化に応じて指向角が変化し、振り角と同一又は同等となる。空調用空気は、吹出口から下フィン及び上フィンの向く方向へ吹き出される。従って、空調用空気を乗員の上部の任意の箇所に向けて吹き出させることが可能である。
【0013】
振り角が30°近くの角度、例えば25°よりも大きく30°以下となるように、下フィンが傾動されると、上フィンが下フィンに連動して傾動する。上フィンとリテーナの上壁部との間隔が狭く、空調用空気は、両者の間を流れにくい。また、上フィンと下フィンとの間隔が狭まる。下フィンが下流側ほど高くなる方向へ最大角度傾斜したときには、上フィンの下フィンに対し同方向へなす角度が、水平状態のときよりも大きくなる。上フィンの上流端が下フィンに接近し、両者の間隔が狭くなる。空調用空気は、上フィン及び下フィンの間を流れにくい。そのため、空調用空気の多くは、下フィンと底壁部との間を流れる。
【0014】
ここで、下フィン及び上フィンのいずれも、下流側ほど高くなるように傾斜している。また、底壁部のうち、下フィンの上流端の下方に設けられた斜面は、下流側ほど高くなるように傾斜している。そのため、空調用空気のうちリテーナ内の底壁部の近くを流れるものの一部は斜面に沿って流れることで、流れ方向を、下流側ほど高くなるように傾斜させられる。この空調用空気は、下流側ほど高くなるように傾斜した下フィンと底壁部との間に導かれる。従って、より多くの空調用空気が、下フィンに沿って流れることで、下流側ほど高くなるように傾斜した方向へ流れる。
【0015】
また、このときには、上記のように下流側ほど高くなるように傾斜する方向へ流れる空調用空気は、吹出口を通過した後に、その上側の傾斜壁部を通過する。この際に、コアンダ効果が発生して、空調用空気が傾斜壁部に引き寄せられる。空調用空気は、傾斜壁部に沿った方向、すなわち、下流側ほど高くなる方向へ向けて流れる。そのため、空調用レジスタの吹出口が、乗員の前下方に位置するものの、空調用空気はその乗員の頭部の上方に向けても流れる。このようにして、指向角の可変領域が上側へ拡大される。
【0016】
上記空調用レジスタにおいて、前記下フィンが水平面に対し前記最大角度傾動されたときには、前記上フィンの前記下フィンに対しなす角度が、前記連動機構により、水平状態のときよりも最大で5°大きくされることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、下フィンが下流側ほど高くなる側へ最大角度傾斜したときには、上フィンの下フィンに対しなす角度が、水平状態のときよりも最大で5°大きくなる。すると、上フィンの上流端と下フィンとの間隔は、同上流端が下フィンと干渉しにくく、また、空調用空気が通過しにくい間隔になる。
【0018】
上記空調用レジスタにおいて、前記斜面を下流斜面とした場合において、前記底壁部は、下方へ凹む凹部を備えており、前記下流斜面は、前記凹部の内底面の下流部分に形成されており、前記凹部の内底面の前記下流斜面よりも上流には、下流側ほど低くなるように傾斜する上流斜面が形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、下フィンが下流側ほど高くなる方向へ最大角度又は最大角度近く傾斜したときには、上壁部及び上フィンの間での通過を制限され、かつ上フィン及び下フィンの間での通過を制限された空調用空気の多くは、下フィンと底壁部との間を流れる。このことから、空調用空気のうち底壁部の近くを流れるものの一部は、凹部内に入り込みやすい。凹部内に入り込んだ空調用空気は、上流斜面に沿って流れることで、流れ方向を斜め下方へ変えられながら下流斜面にスムーズに導かれる。
【0020】
上記空調用レジスタにおいて、前記上流斜面及び前記下流斜面は、下側へ膨らむように湾曲する湾曲面により繋がれていることが好ましい。
上記の構成によれば、下フィンが下流側ほど高くなる方向へ最大角度又は最大角度近く傾斜したとき、空調用空気のうち底壁部の近くを流れるものの一部は凹部内に入り込み、上流斜面に沿って流れた後、下方へ膨らむように湾曲する湾曲面に沿って流れることで、流れ方向を徐々に変えられながら下流斜面に導かれる。
【0021】
上記空調用レジスタにおいて、前記下流斜面は、水平面に対し30°±5°傾斜していることが好ましい。
上記の構成によれば、下流斜面が水平面に対し傾斜する角度(30°±5°)は、下フィンが最大角度傾斜した場合の角度(30°)と同程度である。下流斜面に沿って流れる空調用空気の流れ方向は、下フィンに沿って流れる空調用空気の流れ方向と略同一となる。そのため、下フィンに沿って流れる空調用空気の量が一層多くなる。
【発明の効果】
【0022】
上記空調用レジスタによれば、コアンダ効果により指向角の可変変域を上側へ拡大しつつも、乗員の上部の任意の箇所に向けて空調用空気を吹き出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態における空調用レジスタの斜視図。
【
図2】一実施形態において、吹出口から乗員に向けて吹き出される空調用空気の上下方向の指向角の可変領域を示す概略図。
【
図3】一実施形態における空調用レジスタの一部の構成部品の分解斜視図。
【
図4】一実施形態における空調用レジスタの平断面図。
【
図6】一実施形態の空調用レジスタにおいて、
図5とは異なる箇所での断面構造を示す側断面図。
【
図7】一実施形態の空調用レジスタにおいて、
図5及び
図6とは異なる箇所での断面構造を示す側断面図。
【
図8】一実施形態の空調用レジスタにおいて、下フィンが水平状態(振り角:0°)にされたときの上下両フィン及び縦連結ロッドの位置関係を説明する部分側断面図。
【
図9】一実施形態の空調用レジスタにおいて、下フィンが水平状態から下側へ最大角度(振り角:30°)傾動されたときの上下両フィン及び縦連結ロッドの位置関係を説明する部分側断面図。
【
図10】実施例、従来例1及び従来例2の各々について、下フィン(フィン)の上下方向の振り角と同方向の指向角との関係をシミュレーションした結果を示すグラフ。
【
図11】(a)~(d)は、一実施形態における空調用レジスタの作用を説明するための図であり、下フィンの振り角が0°、15°、25°及び30°にされたときに吹出口から吹き出される空調用空気の流れを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、車両用の空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の進行方向(前進方向)を前方とし、後進方向を後方とし、高さ方向を上下方向として説明する。また、車幅方向(左右方向)については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定する。
【0025】
図1及び
図2に示すように、車両10の前席(運転席及び助手席)の前方には、車室11の略全幅にわたってインストルメントパネル12が設けられている。インストルメントパネル12の左右方向における中央部、両側部等には空調用レジスタ20が設けられている。なお、
図1では、インストルメントパネル12が左右方向に短縮された状態で図示されている。インストルメントパネル12のうち車室11に面する後壁部13の一部は、上側ほど後方に位置するように傾斜している。後壁部13において、上記のように傾斜した部分には、上下方向よりも左右方向に細長い四角形状をなす吹出口14が設けられている。
【0026】
図5に示すように、後壁部13において吹出口14の上側に隣接する箇所には、上側ほど後方に位置するように傾斜する傾斜壁部15が形成されている。傾斜壁部15が鉛直面VSに対しなす角度αは30~40°である。この角度αは、31°~36°であることがより好ましい。
【0027】
図3~
図5に示すように、空調用レジスタ20は、リテーナ21、下流側のフィン、第1連動機構M1、上流側のフィン51,52、第2連動機構M2、操作ノブ61及び伝達機構M3を備えている。上述した吹出口14及び傾斜壁部15も空調用レジスタ20の一部として利用されている。次に、空調用レジスタ20を構成する各部について説明する。
【0028】
<リテーナ21>
リテーナ21は、空調装置の送風ダクト(図示略)と、上記吹出口14とを繋ぐためのものである。リテーナ21の内部空間は、送風ダクトを通じて空調装置から送られてくる空調用空気A1の流路(以下「通風路22」という)を構成している。ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」、「上流側」等といい、同空調装置から遠い側を「下流」、「下流側」等というものとする。上流は車両前方と合致し、下流は車両後方と合致する。従って、上記傾斜壁部15は、下流側ほど高くなるように傾斜している。
【0029】
リテーナ21がインストルメントパネル12に組み付けられた状態では、同リテーナ21の下流端23は吹出口14の上流側に隣接している。通風路22の下流端は、吹出口14に連通している。
【0030】
リテーナ21は、リテーナ本体24及び複数のシムを備えている。リテーナ本体24は、リテーナ21の主要部を構成するものであり、上流端と下流端とが開放された筒状をなしている。
【0031】
通風路22は、リテーナ21の4つの壁部によって取り囲まれている。これらの4つの壁部は、左右方向に相対向する一対の縦壁部25と、両縦壁部25の上端部同士を繋ぐ上壁部26と、両縦壁部25の下端部同士を繋ぐ底壁部27とを備えている。上壁部26の下流端は、底壁部27の下流端よりも下流側に位置している。
【0032】
複数のシムは、一対の第1シム28,29と、一対の第2シム33,34とからなり、いずれもリテーナ本体24よりも軟質の材料によって形成されている。一対の第1シム28,29は、上下方向及び上記流れ方向に延びる板状をなしている。第1シム28,29は、それぞれ縦壁部25の一部として、リテーナ本体24内の下流部の左右両側部に配置されている。第2シム33,34は、左右方向及び上記流れ方向に延びる板状をなし、リテーナ本体24内の上下両部に配置されている。上側の第2シム33は上壁部26の一部を構成し、下側の第2シム34は底壁部27の一部を構成している。両第1シム28,29及び両第2シム33,34は、通風路22に面している。
【0033】
各第1シム28,29の下流上部において上下方向に互いに離間した2箇所には、軸受孔31が形成されている。上側の軸受孔31は、第1シム28,29の上端部に形成されている。下側の軸受孔31は、上下方向における第1シム28,29の略中央部分に形成されている。右側の第1シム29であって、下側の軸受孔31よりも上流には、同軸受孔31を中心とする円弧状のガイド溝32が形成されている。
【0034】
上側の第2シム33の上流部であって、左右方向に互いに離間した複数箇所には軸受孔35が形成されている。下側の第2シム34には、下方へ凹む凹部36が形成されている。
図8に示すように、凹部36の内底面は、上記流れ方向に互いに隣接する2つの斜面を有している。これらの斜面を区別するために、上流側に位置するものを「上流斜面37」といい、下流側に位置するものを「下流斜面38」というものとする。上流斜面37は、水平面HSに対し、下流側ほど低くなるように一定の角度で傾斜している。下流斜面38は、後述する下フィン42の上流端の下方に位置している。また、下流斜面38は、水平面HSに対し、下流側ほど高くなるように一定の角度β、ここでは30±5°で傾斜している。
図5及び
図8に示すように、上流斜面37及び下流斜面38は、下側へ膨らむように湾曲する湾曲面40によって繋がれている。上流斜面37の上流部であって、上記第2シム33の軸受孔35の下方となる箇所には、軸受孔39が形成されている。
【0035】
<下流側のフィン及び第1連動機構M1>
図3~
図5に示すように、下流側のフィンは、吹出口14から吹き出される空調用空気A1の上下方向における向きを変更するためのものであり、上フィン41と、その下方に配置された下フィン42とからなる。上フィン41は、通風路22の上端部分であって、上壁部26(第2シム33)に接近した箇所に配置されている。下フィン42は、上下方向における通風路22の略中央部分に配置されている。上フィン41及び下フィン42が水平状態にされたときの下フィン42と底壁部27との間隔は、上フィン41と上壁部26との間隔よりも広い。
【0036】
上フィン41の下流端は、上壁部26の下流端よりも上流側に位置している。下フィン42の下流端は、上フィン41の下流端よりも上流側であり、かつ底壁部27の下流端よりも下流側に位置している。また、下フィン42の下流端は、上フィン41の傾きに拘わらず、常に上フィン41の上流端よりも下流側に位置している。このように、上壁部26、上フィン41、下フィン42及び底壁部27の各下流端は、下方に位置するものほど上流側に位置している。
【0037】
上フィン41及び下フィン42は、その骨格部分を構成するフィン本体43と、フィン本体43毎の一対のフィン軸44とを備えている。
図3~
図6に示すように、各フィン本体43は、左右方向及び上記流れ方向に延びる板状をなしている。両フィン本体43は、吹出口14の上流近傍に配置されている。上フィン41毎及び下フィン42毎の一対のフィン軸44は、各フィン本体43の左右方向については両端部であって、上記流れ方向については下流端部に設けられている。そして、各フィン軸44が第1シム28,29の対応する軸受孔31に係合されることにより、上フィン41及び下フィン42は、フィン軸44において第1シム28,29に対し上下方向への傾動可能に支持されている。
【0038】
図4及び
図7に示すように、各フィン本体43の左端部において、上記フィン軸44よりも上流へ偏倚した箇所には、連結ピン45が設けられている。両連結ピン45は、縦連結ロッド46によって連結されている。両連結ピン45及び縦連結ロッド46により、上フィン41及び下フィン42を機械的に連結し、上フィン41を下フィン42に連動させて傾動させる連動機構としての第1連動機構M1が構成されている。
【0039】
また、
図3及び
図4に示すように、下フィン42におけるフィン本体43の右端部において、上記フィン軸44よりも上流へ偏倚した箇所にはガイドピン47が設けられている。このガイドピン47は、右側の第1シム29における上記ガイド溝32に係合されている。ガイドピン47は、フィン軸44を支点とした下フィン42の傾動に伴い、ガイド溝32内を上下方向へ移動することを許容される。そして、下フィン42が水平状態から下方へ30°傾動すると、ガイドピン47がガイド溝32の下端に当たり、下フィン42がそれ以上下方へ傾動することを規制される。反対に、下フィン42が水平状態から上方へ所定角度傾動すると、ガイドピン47がガイド溝32の上端に当たり、下フィン42がそれ以上上方へ傾動することを規制される。
【0040】
ここで、
図8に示すように、水平面HSに対しフィン(上フィン41、下フィン42)のなす角度を「振り角」といい、水平面HSに対し空調用空気A1が吹き出す方向のなす角度を「指向角」というものとする。
図7に示すように、第1連動機構M1は、さらに、上フィン41及び下フィン42における連結ピン45の位置を工夫することにより、上フィン41及び下フィン42が水平状態から下側へ傾動された場合、振り角の増大に伴い、上フィン41の振り角が下フィン42の振り角よりも最大で5°大きくなるように設定されている。本実施形態では、下フィン42が、水平状態から下側へ最大角度(30°)傾動された場合、上フィン41の振り角が35°となるように設定されている。このように、下フィン42が水平面HSに対し下流側ほど高くなる方向へ最大角度傾動されたときには、上フィン41の下フィン42に対しなす角度が、水平状態のときよりも最大で5°大きくなるように設定されている。
【0041】
<上流側のフィン51,52及び第2連動機構M2>
図3~
図5に示すように、上流側の各フィン51,52は、吹出口14から吹出す空調用空気A1の左右方向における向きを変更するためのものであり、複数設けられている。フィン51,52は、その主要部を構成するフィン本体53と、フィン本体53毎の一対のフィン軸54とを備えている。
【0042】
各フィン本体53は、上下方向及び上記流れ方向に延びる板状をなしている。フィン51,52毎のフィン軸54は、各フィン本体53の上下方向の両端部に設けられている。そして、各フィン軸54が、第2シム33,34の対応する軸受孔35,39に係合されることにより、各フィン51,52が、両第2シム33,34に対し傾動可能に支持されている。
【0043】
左右方向における中央部分のフィン51は、切欠き部55及び伝達軸部56を備えている。伝達軸部56は、切欠き部55において上下方向へ延びている。
各フィン本体53の上端部において、上記フィン軸54よりも上流へ偏倚した箇所には、連結ピン57が設けられている。フィン51,52毎の連結ピン57は、略左右方向へ延びる横連結ロッド58によって連結されている。上記連結ピン57及び横連結ロッド58により、全てのフィン51,52を機械的に連結し、フィン52をフィン51に連動させて傾動させる第2連動機構M2が構成されている。
【0044】
<操作ノブ61>
操作ノブ61は、吹出口14からの空調用空気A1の吹出し方向を変更する際に乗員P1によって操作される部材である。操作ノブ61は、その主要部を構成するノブ本体62と、ノブ本体62に対し下流側から装着されるノブカバー63と、シム64とを備えている。操作ノブ61は、下フィン42のフィン本体43に対し左右方向へスライド可能に装着されている。操作ノブ61は、下フィン42と一緒に、フィン軸44を支点として傾動可能であり、また、下フィン42上をスライドすることで、左右方向へ変位可能である。シム64は、ノブ本体62に装着されており、下フィン42のフィン本体43に弾性的に接触されている。この接触により、操作ノブ61がスライドされたときにシム64とフィン本体43との間に摺動抵抗が発生し、適度な荷重が付与される。
【0045】
<伝達機構M3>
伝達機構M3は、操作ノブ61のスライド動作をフィン51に伝達するための機構であり、フォーク65を備えている。フォーク65は、軸66によりノブ本体62に支持されている。フォーク65は、上記フィン51の伝達軸部56を左右両側から挟み込んでいる。フォーク65及びフィン51の伝達軸部56により伝達機構M3が構成されている。
【0046】
次に、上記のようにして構成された本実施形態の空調用レジスタ20の作用及び効果について説明する。
図4において、操作ノブ61がフィン本体43における左右方向の中央部に位置するときには、フィン51,52が両縦壁部25に対し平行な状態(中立状態)になる。この中立状態から操作ノブ61が下フィン42に沿って左方又は右方へスライド操作されると、その操作ノブ61の動きが伝達機構M3におけるフォーク65及び伝達軸部56を通じてフィン51に伝達される。フィン51が両フィン軸54を支点として操作ノブ61のスライド方向と同方向へ傾動させられる。フィン51の傾動は、第2連動機構M2を介して他の全てのフィン52に伝達される。その結果、フィン51に連動して、他の全てのフィン52が両フィン軸54を支点としてフィン51と同方向へ傾動させられる。空調用空気A1は、フィン51,52に沿って流れる。
【0047】
一方、
図5~
図8に示すように、下フィン42が水平状態のときには、上フィン41が同様に水平状態となる。そのため、空調装置からリテーナ21に送れられてきた空調用空気A1は、リテーナ21の上壁部26と上フィン41との間、上フィン41と下フィン42との間、下フィン42と底壁部27との間を流れる。ただし、上壁部26と上フィン41との間隔は、上フィン41と下フィン42との間隔や、下フィン42と底壁部27との間隔に比べると狭い。そのため、上壁部26と上フィン41との間を流れる空調用空気A1は少なく、上流側のフィン51,52を通過した空調用空気A1の多くは、上フィン41と下フィン42との間や、下フィン42と底壁部27との間を流れる。そして、空調用空気A1は、吹出口14から略水平方向へ吹き出される。
図10において実線で示す実施例は、本実施形態と同様の構成を有する空調用レジスタを対象とし、下フィンの上下方向の振り角と同方向の指向角との関係をシミュレーションした結果を示している。
【0048】
また、
図11(a)は、下フィン42を水平状態にした場合(振り角:0°)の空調用空気A1の吹き出し状態を示している。これらの
図10の実施例、及び
図11(a)から、指向角が6°前後であるが、空調用空気A1は
図8において矢印で示すように、概ね水平方向へ吹き出されることが判る。なお、空調用空気A1は、左右方向については、上流側のフィン51,52に沿う方向へ吹き出される。
【0049】
上記の水平状態から
図5における操作ノブ61の下流端に対し、矢印で示すように上方へ向かう力が加えられると、その力が下フィン42に伝達される。下フィン42がフィン軸44を支点として、上流側ほど低くなるように下側へ傾動させられる。
【0050】
水平状態から下側へ30°近くの角度、ここでは25°までの領域で、下フィン42が傾動されると、その傾動が第1連動機構M1によって上フィン41に伝達される。上フィン41は下フィン42に連動して下側へ傾動される。
【0051】
ここで、一般に、下フィン42が水平面HSに対し上下方向へ25°よりも大きな角度傾斜し、かつその角度に対し6°~11°加算した角度だけ傾斜壁部15が鉛直面VSに対し傾斜すると、コアンダ効果が発生するものとされている。
【0052】
なお、ここでいう「コアンダ効果」とは、気体、液体等の流体の流れが、その流れの傍にあってその流れと異なる方向に延びる面に引き寄せられて、その面に沿った方向へ流れようとする現象のことである。
【0053】
そのため、下フィン42が上記のように水平状態と、水平状態から下側へ30°近くの角度(25°)までの領域で傾動し、それに連動して上フィン41が傾動する場合には、コアンダ効果が発生しない、又は発生しにくい。空調用空気A1は、下フィン42及び上フィン41に沿って流れる。
【0054】
ここで、上記のように振り角が0°から25°までの領域で変化すると、その変化に応じて指向角が変化し、同指向角は振り角と同一又は同等となる。表現を変えると、指向角と振り角との比が略一定となる。空調用空気A1は、吹出口14から上フィン41及び下フィン42の向く方向へ吹き出される。従って、
図2に示すように、空調用空気A1を乗員P1の上半身(腹部PBの上部、胸部PT、頭部PH等)の任意の箇所に向けて吹き出させることが可能である。
【0055】
図11(b)は、下フィン42が水平状態から下側へ15°傾動された場合(振り角:15°)の空調用空気A1の吹き出し状態を示している。
図10の実施例、及び
図11(b)から、指向角が17°程度となる。空調用空気A1は、下フィン42の傾斜した方向と概ね同じ方向へ吹き出されることが判る。
【0056】
図11(c)は、下フィン42が水平状態から下側へ25°傾動された場合(振り角:25°)の空調用空気A1の吹き出し状態を示している。
図10の実施例、及び
図11(c)から、指向角が25°程度となる。空調用空気A1は、下フィン42の傾斜した方向と概ね同じ方向へ吹き出されることが判る。
【0057】
さらに、
図10の実施例からは、下フィン42の振り角が0°から25°までの領域では、振り角の増減に伴い指向角がリニアに変化、すなわち、振り角の変化に対する指向角の変化の度合いが一定又は略一定となることが判る。
【0058】
これに対し、振り角が25°よりも大きく30°以下となるように、
図9に示すように、下フィン42が下側へ傾動されると、上フィン41が下フィン42に連動して下側へ傾動する。上フィン41と上壁部26との間隔は、上フィン41が
図8の水平状態であるときよりもさらに狭くなり、空調用空気A1は、上フィン41と上壁部26との間を流れにくい。
【0059】
また、上フィン41と下フィン42との間隔が狭まる。また、このときには、上フィン41の下フィン42に対しなす角度が、水平状態のときよりも大きくなる。上フィン41の上流端が下フィン42に接近し、両者の間隔が狭くなる。上フィン41の下フィン42に対しなす角度が一定である場合には、上フィン41及び下フィン42の間に少なからず隙間ができ、空調用空気A1がその隙間を流れるが、本実施形態では、隙間を小さくすることで、空調用空気A1が流れにくくなる。
【0060】
特に、本実施形態では、下フィン42が下側へ最大角度(30°)傾斜したときには、上フィン41の下フィン42に対しなす角度が、水平状態のときよりも5°大きくなる。上フィン41の上流端と下フィン42との間隔は、同上流端が下フィン42と干渉しにくく、また、空調用空気A1が通過しにくい間隔になる。従って、空調用空気A1は、上フィン41の上流端と下フィン42との間を流れにくい。上記隙間を流れる空調用空気A1の量を少なくすることができる。
【0061】
下フィン42と底壁部27との間隔は、同下フィン42の傾動に伴い狭くなるものの、その間隔は、上壁部26と上フィン41との間隔や、上フィン41と下フィン42との間隔よりも広い。そのため、上壁部26及び上フィン41の間での通過を制限され、上フィン41及び下フィン42の間での通過を制限された空調用空気A1の多くは、下フィン42と底壁部27との間を流れる。
【0062】
ここで、仮に、底壁部27のうち、下フィン42の上流端の下方に下流斜面38が設けられていないものとする。この場合には、たとえ下フィン42が下流側ほど高くなるように傾斜したとしても、空調用空気A1の少なくとも一部が底壁部27に沿って下流側へ真っ直ぐ流れてしまう。その分、下フィン42に沿って流れることで流れ方向を変えられる空調用空気A1の量が少なくなる。
【0063】
この点、本実施形態では、底壁部27のうち、下フィン42の上流端の下方に凹部36が設けられている。上述したように、空調用空気A1の多くが下フィン42と底壁部27との間を流れることから、同空調用空気A1のうち底壁部27の近くを流れるものの一部は、凹部36内に入り込みやすい。
【0064】
上述したように、上流斜面37は、水平面HSに対し、下流側ほど低くなるように一定の角度で傾斜している。凹部36に形成された下流斜面38は、水平面HSに対し、下流側ほど高くなるように一定の角度βで傾斜している。上流斜面37の上流端は凹部36の上流端に位置し、下流斜面38の下流端は凹部36の下流端に位置している。そのため、凹部36内に入り込んだ空調用空気A1は、上流斜面37に沿って流れることで、流れ方向を急激に変えられることなく斜め下方へ変えられながら下流斜面38に導かれる。
【0065】
さらに、下流斜面38が上流斜面37とは反対側へ傾いているものの、上流斜面37及び下流斜面38が、下方へ膨らむように湾曲する湾曲面40によって繋がれている。そのため、空調用空気A1は湾曲面40に沿って流れることで、流れ方向を徐々に変えられながら下流斜面38に導かれる。
【0066】
空調用空気A1は、下流斜面38に沿って流れることで、流れ方向を、下流側ほど高くなるように傾斜させられた後、凹部36から下流側へ出る。
従って、空調用空気A1は、凹部36に入り込み、凹部36内を流れ、凹部36から出るまでの期間において、急激に流れ方向を変えられることがなくスムーズに流れる。
【0067】
凹部36から出た空調用空気A1は、下流側ほど高くなるように傾斜した下フィン42と底壁部27との間に導かれた後、同下フィン42に沿って流れる。
上記下流斜面38が水平面HSに対し傾斜する角度β(30°±5°)は、下フィン42が最大角度傾斜した場合の角度(30°)と同程度である。下流斜面38に沿って流れる空調用空気A1の流れ方向は、下フィン42に沿って流れる空調用空気A1の流れ方向と略同一となる。そのため、下フィン42に沿って流れる空調用空気A1の量が一層多くなる。
【0068】
下フィン42を通過した空調用空気A1は、引き続き上フィン41に沿って流れることで、さらに下流側ほど高くなるように傾斜した方向へ流れる。
一方で、傾斜壁部15が鉛直面VSに対し30°~40°傾斜している本実施形態の空調用レジスタ20にあって、振り角が25°よりも大きく30°以下となるように、下フィン42が下側へ傾動されると、コアンダ効果が発生する。そのため、上記のように下流側ほど高くなるように傾斜する方向へ流れる空調用空気A1は、吹出口14を通過した後に、その上側の傾斜壁部15を通過する際に、同傾斜壁部15に引き寄せられる。空調用空気A1は、傾斜壁部15に沿った方向、すなわち、下流側ほど高くなる方向へ向けて流れる。
【0069】
図11(d)は、下フィン42が水平状態から下側へ30°傾動された場合(振り角:30°)の空調用空気A1の吹き出し状態を示している。
図10の実施例及び
図11(d)から、指向角が45°程度となり、空調用空気A1は、下フィン42の傾斜した方向よりも上側へ吹き出されることが判る。
【0070】
そのため、
図2に示すように、空調用レジスタ20の吹出口14が、乗員P1の前下方(腹部PBや胸部PTの前方)に位置するものの、空調用空気A1は、同
図2において二点鎖線で示すように、乗員P1の腹部PBの上部から頭部PHよりも高い箇所にわたる広い領域に向けて流れる。下フィン42を下側へ最大角度傾斜させた場合には、空調用空気A1は頭部PHよりも高い箇所に向けて流れる。この場合には、空調用空気A1は乗員P1には当たらない。このように、本実施形態によると、コアンダ効果により上下方向の指向角の可変領域を上側へ拡大しつつも、乗員P1の上部の任意の箇所に向けて空調用空気A1を吹き出させることができる。
【0071】
以上は、下フィン42を水平状態(振り角:0°)から下側へ傾動させた場合についての作用及び効果であるが、下フィン42が下側へ最大角度(振り角:30°)傾斜させられた状態から上側へ傾動されて水平状態に戻される場合についても、上記と同様の作用及び効果が得られる。そのため、詳細については説明を省略する。
【0072】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。
・底壁部27において下流斜面38よりも上流側の部分が、同下流斜面38の上流端と同じ高さまで下げられてもよい。この場合には、上流斜面37が省略される。
【0073】
・上フィン41及び下フィン42におけるフィン軸44が、下流端に代えて、空調用空気A1の流れ方向における中間部分や上流端部に設けられてもよい。
・下流斜面38は、平面によって構成されてもよいが、全体として下流側ほど高くなるように傾斜することを条件に、上方又は下方へ膨らむ湾曲面によって構成されてもよい。同様に、上流斜面37は、平面によって構成されてもよいが、全体として下流側ほど低くなるように傾斜することを条件に、上方又は下方へ膨らむ湾曲面によって構成されてもよい。
【0074】
・下フィン42が水平面HSに対し下側へ最大角度傾斜したときには、上フィン41の下フィン42に対しなす角度が、水平状態のときとは異なる角度であって、5°よりも小さい角度だけ大きくされてもよい。この場合にも、上フィン41の上流端と下フィン42との間隔は、同上流端が下フィン42と干渉しにくく、また、空調用空気A1が通過しにくい間隔になる。
【0075】
・上記空調用レジスタ20は、インストルメントパネル12が設けられた乗物であれば、車両に限らず広く適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
12…インストルメントパネル、13…後壁部、14…吹出口、15…傾斜壁部、20…空調用レジスタ、21…リテーナ、22…通風路、23…下流端、26…上壁部、27…底壁部、36…凹部、37…上流斜面、38…下流斜面(斜面)、40…湾曲面、41…上フィン、42…下フィン、44…フィン軸、A1…空調用空気、HS…水平面、M1…第1連動機構(連動機構)、VS…鉛直面、α,β…角度。