(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】直動案内装置及び機械装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20220817BHJP
F16C 29/08 20060101ALI20220817BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20220817BHJP
【FI】
F16C33/76 Z
F16C29/08
F16J15/3204 101
(21)【出願番号】P 2018218340
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 厚
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 豊
【審査官】田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152123(WO,A1)
【文献】実開平04-124328(JP,U)
【文献】実開平06-037622(JP,U)
【文献】特開2005-291341(JP,A)
【文献】特開平05-164128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/76
F16C 29/08
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びる案内レール側軌道面を有する案内レールと、
該案内レールを跨ぐように取り付けられ、前記案内レール側軌道面に対向するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動するように配置されたスライダと、
前記案内レール側軌道面及び前記スライダ側軌道面との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配置される複数の転動体と、
前記案内レールの側面と前記スライダの内側面との間に生じた隙間を密封するように、前記スライダの固定面に取付けられるアンダーシールと、
を備え、
前記アンダーシールは、前記案内レールの側面に当接する主リップ部を備え、嵌合穴が形成されるシール本体と、開口が形成される嵌合凸部を備え、前記シール本体を保持するシールカバーと、を有し、
前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合し、前記嵌合凸部が前記スライダの固定面に当接した状態で、前記開口を貫通する締結部材を前記スライダに締結することにより、前記アンダーシールが前記スライダに取り付けられる直動案内装置において
前記シール本体は、前記スライダの固定面に向かって突出し、前記スライダの移動方向に沿って延在する補助リップ部を更に有することを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記スライダは、前記スライダ側軌道面を有するスライダ本体と、前記スライダ本体の移動方向端部に取り付けられたスライダ端面部品とを備え、
前記補助リップ部は、前記スライダ本体の下面と前記スライダ端面部品の下面との両方に当接する、請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記補助リップ部は、該補助リップ部の延在方向に直交する方向に、前記嵌合穴を挟んで、前記嵌合穴の中心から対称に配置されている、請求項1又は2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記補助リップ部は、前記シール本体の2箇所以上に配置されている、請求項3に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記アンダーシールは、前記シール本体における前記延在方向の両端部に、前記延在方向に直交する方向に延在する一対の端部補助リップ部を有し、
一対の前記端部補助リップ部は、前記補助リップ部の前記延在方向の端部とそれぞれ接続されている、請求項3又は請求項4に記載の直動案内装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の直動案内装置を含んで構成される機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置及び機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、切屑や粉塵、液体等が飛散する環境で用いられる場合がある。このような場合は、スライダ内部に異物が入らないように、防塵及び防水対策が必要である。例えば、特許文献1の直動案内軸受装置では、スライダの下面にアンダーシールを設置して、異物の侵入を防いでいる。アンダーシールのスライダ本体に対向する面には、スライダ本体とアンダーシールとの間からの異物の侵入を防ぐために、補助リップ(弾性リップ部)が設置されている。また、特許文献2の案内装置では、スライダの下面が、エンドキャップや防塵部品を含めて、略面一になっており、この底面にアンダーシールが取り付けられている。即ち、アンダーシールは、スライダの下面とスライダ端面部品の下面とを共に覆って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-291341号公報
【文献】特開2005-114034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の直動案内軸受装置では、補助リップがスライダ本体の下面(固定面)だけに設置される。このアンダーシールは、その両端付近がエンドキャップ等の部品に差し込まれてスライダに保持される。そのため、この直動案内軸受装置では、アンダーシールの差し込み部の形状が複雑になり、製作にコストと労力を要する。
【0005】
また、特許文献2の案内装置では、スライダの下面(固定面)、即ち、スライダ本体、及び、スライダ端面部品(エンドキャップ、防塵部品等、スライダの端面に取り付けられる部品)の下面を完全に同一面とするのは困難である。つまり、個々の部品の製作誤差に加えて、組立時の位置合せ誤差があるため、スライダ本体の下面と、スライダ端面部品の下面との間には段差ができやすい。そのため、スライダ本体及びスライダ端面部品の下面と、アンダーシールとの対向部は、段差により部分的に隙間が生じやすく、隙間から異物が侵入したり、防塵性能及び防塵性能が低下したりするおそれがあった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、アンダーシールが取り付けられるスライダの固定面とアンダーシールとの間の高い防塵性及び防水性を維持できる直動案内装置及び機械装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 軸方向に延びる案内レール側軌道面を有する案内レールと、
該案内レールを跨ぐように取り付けられ、前記案内レール側軌道面に対向するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動するように配置されたスライダと、
前記案内レール側軌道面及び前記スライダ側軌道面との間に形成される転動体転動路内に転動自在に配置される複数の転動体と、
前記案内レールの側面と前記スライダの内側面との間に生じた隙間を密封するように、前記スライダの固定面に取付けられるアンダーシールと、
を備え、
前記アンダーシールは、前記案内レールの側面に当接する主リップ部を備え、嵌合穴が形成されるシール本体と、開口が形成される嵌合凸部を備え、前記シール本体を保持するシールカバーと、を有し、
前記嵌合穴に前記嵌合凸部が嵌合し、前記嵌合凸部が前記スライダの固定面に当接した状態で、前記開口を貫通する締結部材を前記スライダに締結することにより、前記アンダーシールが前記スライダに取り付けられる直動案内装置において
前記シール本体は、前記スライダの固定面に向かって突出し、前記スライダの移動方向に沿って延在する補助リップ部を更に有することを特徴とする直動案内装置。
この直動案内装置によれば、嵌合凸部を有するシールカバーによって、アンダーシールを適切に位置決めできると共に、スライダの固定面に段差があっても、補助リップ部が変形して、スライダの固定面に当接する。よって、スライダの固定面と補助リップとの間に隙間が生じず、高い防塵性及び防水性を維持できる。
【0008】
(2) 前記スライダは、前記スライダ側軌道面を有するスライダ本体と、前記スライダ本体の移動方向端部に取り付けられるスライダ端面部品とを備え、
前記補助リップ部は、前記スライダ本体の下面と前記スライダ端面部品の下面との両方に当接する、請求項1に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、スライダ本体の下面やスライダ端面部品の下面に段差があっても、補助リップ部が変形して、各下面に当接する。よって、スライダ本体及びスライダ端面部品の下面と補助リップとの間に隙間が生じず、高い防塵性及び防水性を維持できる。
【0009】
(3) 前記補助リップ部は、該補助リップ部の延在方向に直交する方向に、前記嵌合穴を挟んで、前記嵌合穴の中心から対称に配置されている、(1)又は(2)に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、補助リップ部を嵌合穴の中心から対称位置に配置することで、両サイドの補助リップ部に均等に加圧することが可能となる。これにより、確実なシール性が得られ、高い防塵性及び防水性を維持できる。
【0010】
(4) 前記補助リップ部は、前記シール本体の2箇所以上に配置されている、(3)に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、スライダ本体の底面を長手方向に沿って確実にシールできる。
【0011】
(5) 前記アンダーシールは、前記シール本体における前記延在方向の両端部に、前記延在方向に直交する方向に延在する一対の端部補助リップ部を有し、
一対の前記端部補助リップ部は、前記補助リップ部の前記延在方向の端部とそれぞれ接続されている、(3)又は(4)に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、端部補助リップ部は,スライダ端面部品(サイドシールや取付プレート)の下面と当接する。この端部補助リップ部によって、スライダ端面部品の下面とアンダーシールの当接面からの異物の侵入が防止される。
【0012】
(6) (1)~(5)のいずれか一つに記載の直動案内装置を含んで構成される、機械装置。
この機械装置によれば、切屑や粉塵、液体等が飛散する環境で用いられても、スライダ内部への異物の侵入を抑制して、高い防塵性能及び防水性能を備えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スライダの固定面とアンダーシールとの間の高い防塵性及び防水性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る直動案内装置の斜視図である。
【
図2】アンダーシールが取り付けられたスライダの斜視図である。
【
図3】スライダからアンダーシールが取り外された状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)はシール本体の正面図、(b)はシール本体の側面図、(c)は(a)のV-V断面図である。
【
図6】(a)は押さえ部材の正面図、(b)は押さえ部材の側面図、(c)は(a)のVI-VI断面図である。
【
図7】(a)は、シール本体を押さえ部材に組み付ける前の状態を示す断面図であり、(b)は、シール本体を押さえ部材に組み付けた後の状態を示す断面図である。
【
図10】直動案内装置の
図4とは異なる軸線直交断面図である。
【
図11】本実施形態の第1の変形例に係るアンダーシールをスライダ側から見た図である。
【
図12】(a)は、本実施形態の第2の変形例に係るシール本体の正面図、(b)は(a)のXII-XII断面図である。
【
図13】本実施形態の第3の変形例に係るシール本体の斜視図である。
【
図14】第3の変形例に係るアンダーシールが取り付けられたスライダの断面図である。
【
図15】第2実施形態に係る、案内レールの長手方向に直交する方向の案内レール及びスライダの断面図である。
【
図16】(a)は、第2実施形態に係るシール本体の正面図、(b)は(a)のXVI-XVI断面図である。
【
図17】(a)、(b)は、第3実施形態に係るアンダーシールを示す
図7と同様な断面図である。
【
図18】(a)は、第4実施形態に係るシール本体の正面図、(b)はシール本体の側面図、(c)は(a)のXVIII-XVIII断面図である。
【
図19】(a)は、第4実施形態に係るシールカバーの正面図、(b)はシールカバーの側面図、(c)は(a)のXIX-XIX断面図である。
【
図20】(a)は、第4実施形態において、シール本体をシールカバーに組み付ける前の状態を示す断面図であり、(b)は、シール本体をシールカバーに組み付けた後の状態を示す断面図である。
【
図21】(a)は、第5実施形態に係るアンダーシールをスライダに組み付ける際に用いる治具を、スライダと共に示す断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。
【
図22】(a)は、第5実施形態の変形例に係るアンダーシールをスライダに組み付ける際に用いる別な治具を、スライダと共に示す断面図であり、(b)は、その一部拡大図である。
【
図23】(a)、(b)は、第5実施形態の変形例に係るアンダーシールをスライダ側から見た図である。
【
図24】(a)は直動案内装置を備える搬送装置のテーブルを省略した平面図、(b)はテーブルを含んだ(a)の正面図、(c)は(b)の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態に係る直動案内装置について、
図1~
図24を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の直動案内装置は、軸方向に延びる案内レール1と、案内レール1を跨いで案内レール1の軸方向に相対移動可能に組み付けられたスライダ2と、を備える。
【0017】
案内レール1の左右両側面1a,1aには、案内レール1の軸方向に沿って上下2つの案内レール側軌道面10が形成されている。
【0018】
スライダ2は、
図1及び
図2に示すように、スライダ本体2Aと、その軸方向両端部に着脱可能に取り付けられるスライダ端面部品と、を備える。スライダ端面部品としては、エンドキャップ2B、潤滑ユニット21、サイドシール7、取付プレート19等を挙げることができる。その他のスライダ端面部品としては、各種の防塵部品等が挙げられる。
【0019】
スライダ本体2Aは、案内レール1の上面1bに沿う上部5と、上部5の左右両側からそれぞれ下方に延びる2つの脚部6とを備えて、略コ字状の断面形状に形成されている。エンドキャップ2B,2Bも、スライダ本体2Aと同様に、略コ字状の断面形状を有する。
【0020】
また、エンドキャップ2Bの軸方向外端面には、エンドキャップ2Bと同様の断面形状に形成されたサイドシール7,7が装着されている。サイドシール7,7は、案内レール1の上面1b及び左右両側面1a,1aに滑り接触しており、案内レール1とスライダ2との間の隙間の開口のうち、スライダ2の軸方向端面側での該隙間を密封している。
さらに、潤滑ユニット21は、エンドキャップ2Bとサイドシール7の間に設けられ、潤滑油を長期に亘って供給可能とする。
【0021】
また、サイドシール7、潤滑ユニット21、エンドキャップ2Bは、取付プレート19を介してネジ25等でスライダ本体2Aに締結固定される。
【0022】
図4に示すように、スライダ本体2Aの脚部6の内側面には、2つの案内レール側軌道面10にそれぞれ対向する2つのスライダ側軌道面11(
図4は、一方のみ図示)が形成されている。
【0023】
そして、案内レール1の案内レール側軌道面10とスライダ2のスライダ側軌道面11との間には、軸方向に延びる断面形状略矩形の転動体転動路13がそれぞれ形成されている。この転動体転動路13内には、転動体である複数の円筒ころ3が、保持器8に保持されつつ転動自在に装填されていて、円筒ころ3の転動を介してスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動する。
【0024】
また、複数の円筒ころ3間には、スペーサ(図示せず)が介装されており、円筒ころ3がスペーサに案内されて転動体転動路13を転動する。
【0025】
さらに、スライダ本体2Aの左右両脚部6には、転動体転動路13と平行で、軸方向に貫通する転動体戻り穴16が形成されている。転動体戻り穴16には、円筒ころ3の形状に沿う断面形状の内面を有する管状部材18が挿入され、転動体転動路13を転動した複数の円筒ころ3が戻される転動体戻し通路14を構成する。なお、転動体がボールである場合には、転動体戻り穴16には、断面形状略円形を有する管状部材が挿入されればよい。
【0026】
エンドキャップ2Bには、転動体転動路13と転動体戻し通路14とを接続する湾曲した方向転換路が形成されており、転動体転動路13と転動体戻し通路14と共に無限循環路を構成する。
【0027】
これにより、案内レール1に組みつけられたスライダ2が案内レール1に沿って軸方向に移動すると、円筒ころ3は、転動体転動路13内を転動しつつ案内レール1に対してスライダ2と同方向に移動し、無限循環路内を循環する。
【0028】
図4に示すように、保持器8の下端には、インナーシール20を取り付ける取付溝8aが形成されている。インナーシール20は、案内レール1の側面1aと保持器8の内側面との隙間を密封している。また、案内レール1の側面1aとスライダ2の内側面との隙間を脚部6の先端側で密封するために、スライダ2の固定面、即ち、スライダ本体2Aの下面6cに取り付けられるアンダーシール30が設けられている。以下、アンダーシール30について説明する。
【0029】
図3~
図6(c)に示すように、アンダーシール30は、シール本体31と、シール本体31を脚部6に取り付ける為のシールカバー32とを備える。シールカバー32は、脚部6の下面6cから案内レール1側へ突出している。
【0030】
図5において、ゴムや樹脂などの軟質材からなるシール本体31は、細長い矩形板状の基部31aと、基部31aの一縁に沿って形成されたブレード状の主リップ部31bとを有している。基部31aには、所定間隔で複数(本実施形態では、3つ)の円形状の嵌合穴31cが形成されている。また、シール本体31は、スライダ本体2Aの下面6c及びスライダ端部部品の下面に向かって突出し、スライダ2の移動方向に沿って延在する補助リップ部31eと、を有している。
なお、シール本体31を構成する材料は、密封性能及び寿命を向上すべく、比較的弾力性に富み、且つ耐摩耗性を有するものであることが好ましい。
【0031】
図6において、硬質プラスチック、金属(スチール)等などからなるシールカバー32は、細長い矩形板状の底壁部32aと、底壁部32aの一縁に沿って該底壁部32aから屈曲して接続された側壁部32bと、底壁部32aの長手方向両端において底壁部32aから屈曲して接続された端壁部32cとを有している。底壁部32aには、側壁部32b及び端壁部32cから離間した位置に、嵌合穴31cと等ピッチで複数(本実施形態では、3つ)の嵌合凸部32dが側壁部32b、端壁部32cが屈曲する側に突出して形成されている。嵌合凸部32dの頂壁には、円形の開口32eが形成されている。底壁部32aは、嵌合凸部32d以外は段差のない平面となっている。
【0032】
特に、本実施形態では、シールカバー32が一様な板厚の金属板材からなり、側壁部32b及び端壁部32cは、底壁部32aから折り曲げられることでそれぞれ形成される。このため、
図6に示すように、側壁部32bの厚さt1は、端壁部32cの厚さt2と略等しい。
【0033】
さらに、
図7(a)に示すように、シール本体31の嵌合穴31cの内周面はテーパ形状(円錐台形状)の内側テーパ面31dとなっており、また、シールカバー32の嵌合凸部32dの外周面は、底壁部32aから離れるにつれて小径となるテーパ形状(円錐台形状)の外側テーパ面32fとなっている。
【0034】
従って、
図7(b)に示すように、シール本体31をシールカバー32に組み付けたとき、内側テーパ面31dと外側テーパ面32fとが接触して、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合し、相対的に位置決めされる。これにより、ボルト33(
図4)を挿通する開口32eに対して、主リップ部31bの位置が定まる。又、仮にシール本体31の上下を逆にして組付けようとしても、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは嵌合できなくなる。従って、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとの適切な嵌合により、主リップ部31bを規定の向きである下向きに設置でき、これにより誤組を防止できる。またシールカバー32に対するシール本体31のズレを抑制することで、シールの拘束力も高まる。
【0035】
そして、シール本体31とシールカバー32とが一体となったアンダーシール30はボルト(締結部材)33を用いて脚部6の下面6cに取り付けられる。具体的には、脚部6の下面6cに対し、シール本体31をシールカバー32で挟持するような形でアンダーシール30を配置し、嵌合凸部32dの開口32e及び嵌合穴31cを通過するようにして、その後にボルト33を挿通し、脚部6の下面6cに形成されたねじ穴6bに螺合させる。これにより、シールカバー32を介してシール本体31は脚部6の下面6cに固定することができる。
【0036】
また、
図8及び
図10を参照して、側壁部32bの高さ方向の厚さA1は、端壁部32cの高さ方向の厚さA2と略等しく設計されている。
【0037】
なお、本実施形態のシールカバー32は、ボルト33で固定されているが、リベットやネジ等の他の締結部材を用いて固定してもよい。
【0038】
このとき、上述のように開口32eに対して主リップ部31bの位置が定まるため、適切な当たり代で主リップ部31bを案内レール1の側面1aに当接させることができる。又、嵌合凸部32dの上端が下面6cに直接的に当接するので、確実な締結が可能になると共に、シール本体31の過度な圧縮を抑制することで、シール本体31の変形や破損を抑制できる。ボルト33の頭部は、嵌合凸部32d内の空間Sに収容されることで、シールカバー32より下方に突出せず、他部品との干渉を抑制できる。
【0039】
ここで、本実施形態では、案内レール1に向けて傾斜するシール本体31の主リップ部31bが、シール本体31の長手方向(案内レール1の長手方向と同方向)の全長に渡って形成される。主リップ部31bは、案内レール1の側面1aに当接し、スライダ2と案内レール1とが相対移動する際、案内レール1の側面1aに摺接する。直動案内装置は、この主リップ部31bによって、案内レール1の側面1aと、スライダ2の間からの異物の侵入が防止される。
【0040】
また、補助リップ部31eは、スライダ本体2Aの下面6cとスライダ端面部品の下面に対向する面に、スライダ2の移動する方向に沿って延在し、スライダ本体2Aの下面6cとスライダ端面部品の下面との両方に当接する。一対の補助リップ部31eは、案内レール1の長手方向に直交する方向(シール本体31の幅方向)に離間して、互いに平行に設けられる。直動案内装置は、この補助リップ部31eによって、スライダ本体2Aの下面6cと、アンダーシール30の当接面からの異物の侵入が防止される。本実施形態において、一対の補助リップ部31eは、それぞれ頂角側がスライダ本体2Aの下面6cに接する断面三角形状に形成される。
【0041】
これにより、アンダーシール30は、スライダ本体2Aの下面6cと、スライダ端面部品の下面(
図8に示すエンドキャップ2Bの下面26、潤滑ユニット21の下面27、サイドシール7の下面28、取付プレート19の下面29)との両方に当接する。そして、アンダーシール30は、スライダ2における移動方向の略全長に渡りスライダ本体2Aの下面6c及びスライダ端面部品の下面を覆っている。
【0042】
したがって、スライダ本体2Aの下面6cやスライダ端面部品の下面6cに段差があっても、補助リップ部31eが変形して、各下面6cに当接する。よって、スライダ2及びスライダ端面部品の下面と補助リップ部31eとの間に隙間が生じることがなく、高い防塵性及び防水性を維持できる。
【0043】
また、一対の補助リップ部31eは、互いに平行に、嵌合穴31cを挟んで線対称に配置されている。即ち、複数の補助リップ部31eが、嵌合穴31cの中心から対称位置に配置されることで、両サイドの補助リップ部31eに均等に加圧することが可能となる。これにより、確実なシール性が得られ、高い防塵性や防水性を維持できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、シールカバー32の底壁部32aで、シール本体31を嵌合穴31cの周囲を含めて挟持しつつ固定することで、安定した取り付けを行うことが出来る。
【0045】
特に、本実施形態によれば、シール本体31の厚みに相当する高さの側壁部32b及び端壁部32cをシールカバー32に設けているので、シール本体31の側面及び端面を覆うことで、これらを保護することができる。また、組み付けたとき、案内レール1の側面1aに当接する主リップ部31bは、シールカバー32の底壁部32aにより保護される。従って、不用意な取扱い等により他部品とアンダーシール30とが接触したような場合にも、シール本体31を保護することができる。同時に、側壁部32b及び端壁部32cを設けることで、シールカバー32の剛性が高まるため、軽量な部品を用いながらも確実にアンダーシール30を脚部6に取り付けることができる。
【0046】
金属板材を折り曲げてシールカバー32の側壁部32b及び端壁部32cを形成すると、軽量化のため薄肉の板材を用いても全体変形に対する力が大きくなり、ボルト33の締結によりシール本体31に均等且つ大きめの力を与えられる。又、シール本体31はスライダ2の全長にわたって連続し、また嵌合穴31c周囲も連続しているため、ボルト33の締結により脚部6の下面6cと緊密に密着することが可能となる。よって、シール本体31とスライダ2間の密封性が良くなり、そこから液体または細かい粉塵などの異物の侵入を防ぐことができる。尚、シールカバー32の主リップ部31b側の側面は、主リップ部31bとの干渉を回避すべく折り曲げていないが、側面1aとシールカバー32との隙間が微小であるので、主リップ部31bは損傷し難い。
【0047】
また、金属板材をシール長手方向端側に折り曲げることで端壁部32cを形成することにより、シール本体31の進行方向の保護も出来、大きい異物または固い異物に接触しても変形しにくく、シール本体31が傷つけられ密封性が悪くなる可能性を軽減できる。
【0048】
更に、シールカバー32がシール本体31の側面と端面とを覆っているため、シール本体31が空気または異物環境に暴露されなく、経時劣化も抑えられる利点がある。それにより、シール本体31が大きい異物または固い異物に接触しても変形しにくく、傷つけられ密封性が悪くなる可能性を軽減できる。
【0049】
本実施形態に係るアンダーシールを備えた直動案内装置によれば、粉塵、液体などの異物環境でも長寿命駆動が可能のため、大型機械や自動車等の用途において、直動案内装置の多環境長寿命化を実現できる。
【0050】
又、側壁部32bの高さ方向の厚さA1は、端壁部32cの高さ方向の厚さA2と略等しい。したがって、側壁部32bと端壁部32cについて、一様な厚さのシール本体31を等しく覆うことができて、高い防塵性能を確保できる。
【0051】
さらに、
図6に示すように、側壁部32bの厚さt1は、端壁部32cの厚さt2と略等しい。したがって、一定厚さの板材から、端壁部32cと側壁部32bを折り曲げてシールカバー32を形成できるので、製造性が良好である。
【0052】
また、
図6に示すシールカバー32では、端壁部32cの端面エッジと側壁部32bの端面エッジとを互いに接触させ、端壁部32cの端面と側壁部32bの端面との間に空間Cが形成されている。このため、端壁部32cと側壁部32bとを独立して折り曲げることができ、折り曲げ時の製造難易度が低下しコスト低減につながる。
【0053】
なお、本実施形態の変形例として、
図11に示すアンダーシール130のように、シールカバー132は、端壁部32cの端面を側壁部32bの側面に当接させるようにしてもよい。
【0054】
次に、
図4を参照して、脚部6の形状について説明する。上述したように、スライダ2の脚部6には、案内レール側軌道面10とスライダ側軌道面11との間を転動する円筒ころ3が戻される転動体戻り穴16と、ボルト33を螺合させるねじ穴6bとが形成されている。
【0055】
ここで、
図4において、ねじ穴6bの中心は、スライダ2の幅方向において、転動体戻り穴16とスライダ側軌道面11との間に配置されている。ねじ穴6bの中心からアンダーシール30における案内レール1から離れた外側面までの距離をW3とし、ねじ穴6bの中心から転動体戻り穴16の中心までの距離をW4としたときに、W3≧W4となっている。
【0056】
アンダーシール30を固定する脚部6の下面(固定面)6cが段差のない同一平面で構成されており、かつW3≧W4となっているので、十分な左右方向幅の下面6cを設けられる。よって、アンダーシール30を脚部6の下面6cに対して確実に密着固定でき、確実な防塵性及び防水性を保てる。
【0057】
更に、
図4において、スライダ2における脚部6の下面6cに連続し、且つ下面6cに交差した案内レール1側の面6dから、ねじ穴6bの中心までの距離をW1とし、転動体戻り穴16における案内レール1側の最近接部からねじ穴6bの中心までの距離をW2としたときに、W1≧W2となっている。
【0058】
即ち、脚部6の下方端を、案内レール1から左右方向に最も離間した脚部6の内側面6eに対して案内レール1側に突出する固定面拡大部6fを設けることで下面6cを延長し、面6dまでの距離W1を大きくとれるようにしている。これによりアンダーシール30を確実に下面6cに取り付けることができる。又、このような構成により、ねじ穴6bから面6dまでの肉厚を十分に確保できる。よって、熱処理の際の変形や過熱などを防止できて、製造性が良好である。
【0059】
また、スライダ2における案内レール1から左右方向に最も離間した内側面6eからねじ穴6bの中心までの最小距離をT1としたときに、W1>T1となっている。
【0060】
このように、W1>T1となるように、脚部6の下方端に固定面拡大部6fを設けることによって、下面6cをいっそう広くすることができる。これにより、アンダーシール30を下面6cに対して確実に密着固定できる。
【0061】
熱処理の際の変形や過熱などを防止する観点からは、T1≧1mmとすることが好適である。また、T1とW2は、略等しいことが好ましく、W2=T1とすることがより好ましい。これによりねじ穴6bから幅方向への脚部6の肉厚を略均等にでき、熱処理の際の変形や過熱の抑制を行える。
なお、上記寸法W1,W2,W3,W4,T1は、いずれもスライダ2の幅方向における距離である。
【0062】
なお、上記実施形態では、一対の補助リップ部31eは、シール本体31の幅方向寸法の制約上、嵌合穴31cを通過するように形成されている。しかしながら、
図12に示す変形例のように、シール本体131の一対の補助リップ部31eは、シール本体131の幅方向において、嵌合穴31cを通過せず、嵌合穴31cの外側で、スライダ2の移動する方向に沿って形成されてもよい。したがって、本実施形態の補助リップ部31eは、仮に嵌合穴31cから液体が侵入しても、スライダ2の内方への侵入をより確実に抑制する。
【0063】
また、本実施形態では、シール本体31には、一対の補助リップ部31eが設けられているが、これに限定されず、補助リップ部31eは、一本以上の任意の本数とすることができる。また、一本の補助リップ部31eとする場合には、防塵性及び防水性の観点から、案内レール1の側面1a側のみに配置されることが好ましい。
【0064】
さらに、
図13及び
図14に示す変形例のように、アンダーシール230は、シール本体231に、案内レール1に直交する方向(シール本体231の幅方向)に延在し、かつ、補助リップ部31eの延在方向の端部に接続する一対の端部補助リップ部31f(図では、一方のみ図示)を有してもよい。
【0065】
一対の端部補助リップ部31fは、一対の補助リップ部31eの延在方向両端にそれぞれ接続する。したがって、一対の補助リップ部31eと、一対の端部補助リップ部31fとは、稜線により四方から包囲する空間を形成する。嵌合穴31cは、この空間内に配置される。この空間は、アンダーシール230がスライダ本体2Aの下面6cに当接することで閉鎖空間69となる。したがって、仮に嵌合穴31cから液体が侵入しても、液体は、この閉鎖空間69に留まり、スライダ2の内方への侵入が抑制される。
【0066】
この変形例に係るアンダーシール230においては、端部補助リップ部31fは、スライダ端面部品の下面(取付プレート19の下面29やサイドシール7の下面28)と当接する。この端部補助リップ部31fによって、スライダ端面部品の下面とアンダーシール230の当接面からの異物の侵入が防止される。
なお、一対の補助リップ部31e及び端部補助リップ部31fは、ボルト33が締め付けられると、嵌合凸部32dの上端がスライダ本体2Aの下面6cに当接した際に、弾性変形し、基部31aの上面も下面6cと接触するため、閉鎖空間69が見えない状態となるが、
図14では、説明の便宜上、閉鎖空間69を図示している。
【0067】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るアンダーシール330について、
図15及び
図16を参照して説明する。上記実施形態では、シールカバー32は、金属板材をプレス加工することで形成されているが、本実施形態のシールカバー332は、
図15に示すように、樹脂射出成形によって形成されている。
【0068】
また、このシールカバー332では、嵌合凸部32dは、ボルト33の頭部を収容する空間Sを有さずに、ボルト33の頭部がシールカバー32の底壁部32aから下方に突出する。この場合、嵌合凸部32dに形成される開口32eは、アンダーシール30の厚さ方向に亙って一様内径の貫通孔で構成され、嵌合凸部32dの外周面は、第1実施形態と同様に、テーパ形状となっている。
シール本体331には、
図16に示すように、シールカバー332の形状に合わせて、嵌合凸部32dと嵌合するように、テーパ形状の嵌合穴31cが形成されている。
その他の構成及び作用については、上述した第1実施形態と同様である。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るアンダーシール430について、
図17(a)及び
図17(b)を参照して説明する。
図17(a)に示すように、本実施形態のシールカバー432は、第1実施形態のシールカバー32に対して、側壁部32b及び端壁部32cを除いたものである。これによりシールカバー432の製造コストを抑えることができる。シール本体31は、上述した実施形態のものと同様である。
【0070】
本実施形態においても、シール本体31をシールカバー432に組み付けたとき、内側テーパ面31dと外側テーパ面32fとが接触することにより、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合して、相対的に位置決めされる。
その他の構成及び作用については、上述した第1実施形態と同様である。
【0071】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係るアンダーシール530について、
図18(a)~
図20(b)を参照して説明する。本実施形態のアンダーシール530は、シール本体531と、シール本体531を脚部6に取り付ける為のシールカバー532とからなる。
【0072】
図18(a)~
図18(c)に示すように、シール本体531は、所定間隔で複数(本実施形態では、3つ)の矩形状の嵌合穴31cを有する。
図20(a)に示すように、嵌合穴31cの一側面は内側テーパ面31d1となっている。一方、
図19(a)~
図19(c)に示すように、シールカバー532は、底壁部32aには嵌合穴31cと等ピッチで矩形断面の複数(本実施形態では、3つ)の嵌合凸部32dを有している。嵌合凸部32dの頂壁には、円形の開口32eが形成されている。
図20(a)に示すように、嵌合凸部32dの一側面は外側テーパ面32f1となっている。即ち、本実施形態の嵌合凸部32dは、板材の一部を矩形状に切り起こすことで形成され、この形状に合わせて、嵌合穴31cが形成されている。
【0073】
従って、
図20(b)に示すように、シール本体531をシールカバー532に組み付けたとき、内側テーパ面31d1と外側テーパ面32f1とが接触して、嵌合穴31cと嵌合凸部32dとは相互に嵌合し、相対的に位置決めされる。これにより、ボルト33(
図4)を挿通する開口32eに対して、主リップ部31bの位置が定まることとなる。
その他の構成及び作用については、上述した第1実施形態と同様である。
【0074】
(第5実施形態)
第5実施形態では、第1実施形態のアンダーシール30を用いて、直動案内装置の組み付け方法について説明する。
図21は、本実施形態に係るアンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に用いる治具40を、スライダ2と共に示す断面図である。治具40は、その断面形状が案内レール1と類似しているが、脚部6に対向する側面(対向面)41に凹溝42を軸方向に沿って設けており、更に側面41は案内レール1の側面1aより脚部6側に突出している点が異なる。
【0075】
以下、治具40を用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける組み付け方法について説明する。まず、
図21に示すように、治具40をスライダ2内に配置する。次いで、治具40の側面41に、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁を当接させた状態で、凹溝42内にシール本体31の主リップ部31bが収容されるようにして、ボルト33を用いてアンダーシール30を脚部6に取り付ける(調整ステップ)。側面41にシールカバー32の内側縁が当接するようにアンダーシール30を脚部6に固定することで、シール本体31の主リップ部31bの当たり代が適正になる。
【0076】
その後、治具40を取り外して、案内レール1を組み付ける(組付ステップ)。上述したように、シール本体31はシールカバー32に対して精度良く位置決めされているので、側面41にシールカバー32を当接させることで、案内レール1を組み付けた際に、主リップ部31bの当たり代が精度良く確保される。案内レール1を組み付けた状態で、シールカバー32は案内レール1の側面1aに対して非接触となるので(
図4参照)、案内レール1を傷つけることはない。
【0077】
図22は、本実施形態の変形例に係るアンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に用いる別な治具40Aを、スライダ2と共に示す断面図である。治具40Aは、スライダ2に対して配置されるベース43と、ベース43に対して位置調整可能なブロック状の調整部44とを有している。ベース43は案内レール1に類似した形状を有し、また、調整部44の上面と共に凹溝42を構成している。調整部44は、ボルト45によりベース43に対して位置調整可能に締結できる。
【0078】
以下、治具40Aを用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける組み付け方法について説明する。前工程として、調整部44の側面46が、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁と適切な位置で当接するように予め位置調整し、このような状態を維持しつつ、ボルト45によりベース43に対して調整部44を締結する。
【0079】
次いで、
図22に示すように、治具40Aをスライダ2内に配置し、調整部44の側面46に、アンダーシール30のシールカバー32の内側縁を当接させた状態で、ベース43の凹溝42内にシール本体31の主リップ部31bが収容されるようにして、ボルト33を用いてアンダーシール30を脚部6に取り付ける。
【0080】
その後、治具40を取り外して、案内レール1を組み付ける。本実施形態の変形例によれば、シールカバー32の内側縁が当接する調整部44の側面46の位置を微調整できるので、主リップ部31bの当たり代を細かく調整できる。
その他の構成及び作用については、上述した第1実施形態と同様である。
【0081】
尚、治具40又は40Aを用いて、アンダーシール30をスライダ2に組み付ける際に、シールカバー32は、側面41又は側面46に適切に当接できるように位置調整可能となっていることが望ましい。そこで、本実施形態においては
図23(a)に示すシールカバー632のように、ボルト33の外径に対して開口32eの内径φ2を大きくしてもよい。
【0082】
或いは、変形例として示す
図23(b)に示すシールカバー732のように、開口32eを案内レール1の軸線に直交する方向を長手方向とする長孔としても良い。これにより、開口32eとボルト33との間には、少なくとも案内レール1の軸線に直交する方向において隙間が形成され、シールカバー632,732を側面41又は側面46に対して適切に当接させることができる。
【0083】
<直動案内装置への適用例>
図24(a)は直動案内装置を備える搬送装置71のテーブル73を省略した平面図、(b)はテーブル73を含んだ(a)の正面図、(c)は(b)の拡大図である。
アンダーシール30を備える直動案内装置は、
図24(a)~(c)に示すような機械装置である搬送装置71に組み込むことができる。すなわち、本実施形態の直動案内装置は、スライダ2が、搬送装置71の被取付部であるベース75の上面に平行に2つずつ固定され、テーブル73の下面に一対の案内レール1が取り付けられ、ベース75に対してテーブル73が直線運動する構成である。この搬送装置71では、重力方向(矢印で表示)に対して、テーブル73は上方に配置され、ベース75は下方に配置されている。なお、案内レール1は、テーブル73に設けられた段差、すなわち肩77に当接するようにしてテーブル73に高精度に取り付けられる。
【0084】
ここで、搬送装置71の使用時においては、ゴミ等の異物が、上方から降りかかる可能性がある。そのため、ベース75の上に並行に設置されるスライダ2には、アンダーシール30が、
図24(c)に示すように、外側だけに装着されてもよい。
これは、直動案内装置において肩77がある側は、テーブル73によって上方を覆われているので、防塵性能の必要性は高くないため、肩77のある側ではアンダーシールを取り付けていないのである。
【0085】
このように構成することで、スライダ2の下面から案内レール底面までの高さ寸法(d1)を大きく確保することができる。このため、テーブル73の肩77にスライダ2が干渉しにくいので、搬送装置71の設計の自由度が増す。一方、肩77がない側は、テーブル73に覆われていないので、防塵の必要性があり、各スライダ2の肩77がない側には、アンダーシール30が取り付けられる。各スライダ2の幅方向(
図24(c)の左右方向)の外側では、案内レール1の底面部からスライダ2の下面までの高さ方向の寸法(d2)は小さくなるが、こちらには肩77がないので、搬送装置71の設計に制約を与えることはない。
【0086】
このように、本実施形態の直動案内装置を搬送装置71に適用した場合でも、インナーシール20(
図4参照)とアンダーシール30とを個別に固定しているため(
図4参照)、幅方向の左右片側のアンダーシール30だけを取り外すことができる。即ち、取付プレート19はそのままで、片側のアンダーシール30だけを外した構成とできる。したがって、周囲の環境に応じて、防塵性能を調整できる搬送装置71が得られる。この搬送装置71においても、不要な箇所のアンダーシールだけを省くことができるので、不要にコストを増大させることがない。
【0087】
そして、本実施形態の直動案内装置を適用した搬送装置71によれば、切屑や粉塵、液体等が飛散する環境で用いられても、スライダ内部への異物の侵入を抑制して、高い防塵性能を備えることができる。
【0088】
したがって、本実施形態に係る直動案内装置によれば、スライダ2及びスライダ端面部品の下面とアンダーシール30との間の高い防塵性を維持できる。
【0089】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0090】
例えば上記の構成例では、機械装置が搬送装置である場合を例に説明したが、機械装置は、この他、例えば、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤等の種々の機器であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 案内レール
1a 側面
1b 上面
2 スライダ
2A スライダ本体
2B エンドキャップ(スライダ端面部品)
3 円筒ころ(転動体)
6b ねじ孔
6c 下面
6d 面
6e 内側面
7 サイドシール(スライダ端面部品)
8 保持器
8a 取付溝
10 案内レール側軌道面
11 スライダ側軌道面
13 転動体転動路
16 転動体戻り穴
18 管状部材
19 取付プレート(スライダ端面部品)
21 潤滑ユニット(スライダ端面部品)
30,130、230、330 アンダーシール
31、131、231、331 シール本体
31a 基部
31b 主リップ部
31c 嵌合穴
31d、31d1 内側テーパ面
31e 補助リップ部
31f 端部補助リップ部
32、132、232、332、432、532、632、732 シールカバー
32a 底壁部
32b 側壁部
32c 端壁部
32d 嵌合凸部
32e 開口
32f、32f1 外側テーパ面
33 ボルト
40、40A 治具
41 側面
42 凹溝
43 ベース
44 調整部
45 ボルト
46 側面
71 搬送装置(機械装置)