(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】インナーライナー用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 23/22 20060101AFI20220817BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20220817BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20220817BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C08L23/22
C08K5/098
C08K5/20
B60C5/14 A
(21)【出願番号】P 2018525634
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(86)【国際出願番号】 JP2018003504
(87)【国際公開番号】W WO2018143379
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017018523
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博
(72)【発明者】
【氏名】大窪 栄
(72)【発明者】
【氏名】小原 圭
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014667(JP,A)
【文献】特開2014-084430(JP,A)
【文献】特表2014-512448(JP,A)
【文献】特開2007-112847(JP,A)
【文献】特開2015-093928(JP,A)
【文献】特開2014-031404(JP,A)
【文献】特開2008-126634(JP,A)
【文献】特開2007-320992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物と、オイルと、C5系石油樹脂とを含み、
前記ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量が70質量%以上、
前記ゴム成分100質量部に対する前記混合物の含有量が0.8~3.2質量部、前記混合物、前記オイル及び前記C5系石油樹脂の合計含有量が6.0~16.0質量部であるインナーライナー用ゴム組成物
(但し、ブチル系ゴムの含有量が30~95質量%、イソプレン系ゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が5~70質量%であるゴム成分と、ハイドロタルサイトと、有機樹脂と、無水フタル酸、及び無水マレイン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸とを含むインナーライナー用ゴム組成物は除く)。
【請求項2】
前記ブチル系ゴムが再生ブチル系ゴムを含むものである請求項1記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項3】
キノリン系老化防止剤を含む請求項1又は2記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項4】
前記C5系石油樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、2.0~9.0質量部である請求項1~3のいずれかに記載のインナーライナー用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナー用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物には、インナーライナーの空気遮断性を向上させる目的でブチル系ゴムが汎用されている(特許文献1)。
【0003】
また、インナーライナー用ゴム組成物には、タイヤ成形時の加工性等を向上する観点から、比較的多量のプロセスオイルが配合されているが、空気遮断性が充分ではない、等の問題もある。従って、タイヤ成形時の加工性、加硫ゴムの空気遮断性等の性能バランスに優れたインナーライナーの提供が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記課題を解決し、シート加工性、空気遮断性の性能バランスに優れたインナーライナー用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴム成分と、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物と、オイルと、C5系石油樹脂とを含み、前記ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量が70質量%以上、前記ゴム成分100質量部に対する前記混合物の含有量が0.8~3.2質量部、前記混合物、前記オイル及び前記C5系石油樹脂の合計含有量が6.0~16.0質量部であるインナーライナー用ゴム組成物に関する。
【0007】
前記ブチル系ゴムは、再生ブチル系ゴムを含むことが好ましい。
前記ゴム組成物は、キノリン系老化防止剤を含むことが好ましい。
【0008】
本発明はまた、前述のゴム組成物を用いて作製したインナーライナーを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴム成分と、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物と、オイルと、C5系石油樹脂とを含み、前記ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量が70質量%以上、前記ゴム成分100質量部に対する前記混合物の含有量が0.8~3.2質量部、前記混合物、前記オイル及び前記C5系石油樹脂の合計含有量が6.0~16.0質量部であるインナーライナー用ゴム組成物であるので、シート加工性、空気遮断性の性能バランスを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインナーライナー用ゴム組成物は、ブチル系ゴムを含むゴム成分と、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物と、オイルと、C5系石油樹脂とを所定量含有する。
【0011】
多量にブチル系ゴムを含むゴム成分に、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物、オイル、C5系石油樹脂を所定量配合することで、シート加工性、空気遮断性の性能バランスが改善される。特に、再生ブチル系ゴムを含む配合に前記混合物を添加した場合、例えば、ブチル系ゴムとして通常のブチル系ゴムのみを用いた配合に添加した場合に比べ、前記性能バランスが顕著に(相乗的に)改善される。
【0012】
また、キノリン系老化防止剤を含む配合や所定量のオイル及びC5系石油樹脂を含む配合に前記混合物を添加した場合も同様に、例えば、老化防止剤としてアミン系老化防止剤を用いた配合や軟化剤としてオイルのみを用いた配合に添加した場合に比べ、前記性能バランスが顕著に(相乗的に)改善される。
【0013】
ゴム成分として、ブチル系ゴムが使用される。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR);臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)、フッ素化ブチルゴム(F-IIR)等のハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。なかでも、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できる点から、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムがより好ましい。
【0014】
本発明では、ブチル系ゴムとして、通常のブチル系ゴム(再生ブチル系ゴム以外のブチル系ゴム)の他、再生ブチル系ゴムを併用することが好ましい。再生ブチル系ゴムは、通常、ハロゲン化されていないブチルゴム(レギュラーブチルゴム)の含有率が高いため、ハロゲン化ブチルゴムと併用することで、良好な空気遮断性、加硫速度を確保できる。特に、再生ブチル系ゴムを含む配合に脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドの混合物を添加した場合、シート加工性、空気遮断性の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善される。
【0015】
再生ブチル系ゴムとは、タイヤのチューブや、タイヤ製造時に使用するブラダー等のブチル系ゴムを多く含むゴム製品の粉砕物、又は該粉砕物を加熱・加圧したものに含まれるブチル系ゴム分であり、ゴム成分の架橋結合を切断(脱硫処理)し、再加硫可能としたものを含む。一般的に、粉砕物中の約50質量%が再生ブチル系ゴムである。なお、再生ブチル系ゴム中には硫黄分も存在するが、架橋に関与しない程度に失活している。
【0016】
再生ブチル系ゴムの市販品としては、村岡ゴム(株)製のチューブ再生ゴム、(株)カークエスト製のブラダー再生ゴムなどがあげられる。村岡ゴム(株)製のチューブ再生ゴムは、ブチルチューブを加圧条件下で加熱処理して製造された再生ゴムである。(株)カークエスト製のブラダー再生ゴムは、ブラダーを押し出し機で粉砕して得られるものである。これらの再生ブチル系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの合計含有量は、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。70質量%未満であると、充分な空気遮断性が得られないおそれがある。該合計含有量は、100質量%でもよいが、シート加工性、空気遮断性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0018】
ゴム成分100質量%中の再生ブチル系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。5質量%未満であると、再生ブチル系ゴムを用いることによるメリットが充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。30質量%を超えると、充分な空気遮断性、加硫速度を確保できないおそれがある。
【0019】
ゴム組成物に含まれる全ブチル系ゴム100質量%中(通常のブチル系ゴムと再生ブチル系ゴムの合計)、再生ブチル系ゴムの含有量は、好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。7質量%未満であると、再生ブチル系ゴムを用いることによるメリットが充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。35質量%を超えると、充分な空気遮断性、加硫速度を確保できないおそれがある。
【0020】
本発明のゴム組成物は、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという点から、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
【0021】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。なかでも、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという理由から、NR、IRが好ましい。
【0022】
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0023】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、シート加工性、空気遮断性がバランスよく得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。30質量%を超えると、加硫ゴムの空気遮断性が充分に得られないおそれがある。
【0024】
本発明では、ブチル系ゴム、イソプレン系ゴムの以外に、他のゴム成分を含んでもよい。例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明では、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物が使用される。再生ブチル系ゴム等のブチル系ゴムに該混合物を添加することで、シート加工性、空気遮断性の性能バランスが改善される。
【0026】
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、飽和又は不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数6~28(より好ましくは炭素数10~25、更に好ましくは炭素数14~20)の飽和又は不飽和脂肪酸)が挙げられ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ネルボン酸等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14~20の飽和脂肪酸がより好ましい。
【0027】
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、モリブデン等が挙げられる。なかでも、亜鉛、カルシウムが好ましい。
【0028】
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、N-(1-オキソオクタデシル)サルコシン、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
【0029】
前記混合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.8質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.2質量部以上である。0.8質量部未満では、シート加工性の改善効果が得られないおそれがある。また、該含有量は、3.2質量部以下、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下である。3.2質量部を超えると、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。これにより、シート加工性、空気遮断性等、良好な性能が得られる。カーボンブラックとしては、例えば、GPF、HAF、ISAF、SAFなどを用いることができる。
【0031】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N2SA)は10m2/g以上が好ましく、20m2/g以上がより好ましい。10m2/g未満であると、補強性等が低下するおそれがある。該N2SAは70m2/g以下が好ましく、40m2/g以下がより好ましい。70m2/gを超えると、シート加工性が悪化するおそれがある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定される。
【0032】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。20質量部未満では、補強性が低下するおそれがある。また、該含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。100質量部を超えると、シート加工性が悪化するおそれがある。
【0033】
本発明のゴム組成物では、ブチル系ゴム、前記混合物の他、オイル、C5系石油樹脂も使用される。これにより、良好なシート加工性が得られ、前記性能バランスが改善される。
【0034】
オイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル等を使用できる。ここで、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3.0~9.0質量部以下、より好ましくは4.0~7.0質量部である。
【0035】
C5系石油樹脂は、C5(炭素数5)系石油炭化水素を重合して得られる。ここで、C5系石油炭化水素とは、ナフサの熱分解により得られるC5留分(炭素数5の留分)のことをいい、具体的には、イソプレン、1,3-ペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレンなどのジオレフィン類や2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンテンなどのモノオレフィン類が挙げられる。ここで、C5系石油樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2.0~9.0質量部が好ましく、3.0~7.0質量部がより好ましい。
【0036】
C5系石油樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。上記範囲内であると、前述の性能が良好に得られる。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0037】
前記混合物、オイル及びC5系石油樹脂の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、6.0質量部以上、好ましくは8.0質量部以上である。6.0質量部未満では、シート加工性、空気遮断性が低下する傾向がある。また、該合計含有量は、16.0質量部以下、好ましくは13.0質量部以下である。16.0質量部を超えると、空気遮断性が悪化するおそれがある。
【0038】
本発明では、キノリン系老化防止剤を配合することが好ましい。キノリン系老化防止剤としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、ポリ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
【0039】
キノリン系老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。0.2質量部未満であると、添加による効果が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、変色(茶変色)やtanδが悪化する傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ等の充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
【0041】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0042】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのインナーライナーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0043】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0044】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
ハロゲン化ブチル系ゴム:エクソン化学社製のクロロブチルHT1066(塩素化ブチルゴム)
再生ブチル系ゴム:(株)カークエスト製の再生ブチル系ゴム(ブチルゴム:50質量%、カーボンブラックN660:33質量%、その他:17質量%)
カーボンブラックN660:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN660(N2SA:35m2/g)
オイル1(パラフィン系プロセスオイル):出光興産(株)製のダイアナプロセスPA32(パラフィン成分:67質量%、ナフテン成分:28質量%、アロマ成分:5質量%)
オイル2(パラフィン系プロセスオイル(パラフィン成分:68質量%、ナフテン成分:28質量%、アロマ成分:4質量%)
C5系石油樹脂1:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT-100AS(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂、軟化点:100℃)
C5系石油樹脂2:東ソー(株)製のペトロタック100V(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂、軟化点:98℃)
加工助剤1:ストラクトール社製のWB16(脂肪酸金属塩(脂肪酸カルシウム、構成脂肪酸:炭素数14~20の飽和脂肪酸)と脂肪酸アミドとの混合物)
老化防止剤RD:大内新興化学工業(株)製のノクラック224(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製の椿
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄(5質量%オイル含有):細井化学(株)製のHK-200-5(オイル分:5質量%)
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)
【0045】
〔実施例及び比較例〕
各表に示す配合処方に従い、酸化亜鉛、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、5分間、排出温度160℃になるまで混練りし、混練物を得た。次に、得られた混練物に、酸化亜鉛、硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、4分間、105℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を所定の形状に押し出し成形し、170℃で12分間プレス加硫した。
【0046】
なお、インナーライナー自体は、薄膜状でサンプリングが困難であるため、以下に示す各試験目的に応じて、それに合ったゴム試験片を作成し、評価した。表1~4は比較例1-1、表5は比較例5-1、表6は比較例6-1、表7は比較例7-1を基準比較例とした。
【0047】
(シート加工性)
未加硫ゴム組成物を押出し加工し、押出し生地の焼け、シートの平坦性、押出し寸法の維持特性(シートが不均一にシュリンクしない)、真直性(エッジの凸凹がない)の4点について、基準比較例を100として、各配合のシート加工性を指数表示した。シート加工性指数が大きいほど、シート加工性に優れることを示す。
【0048】
(空気遮断性(耐空気透過性))
ASTM D-1434-75M法に従い、加硫ゴム組成物の空気透過量を測定し、下記計算式により、比較例1-1を100として、各配合の空気透過量を指数表示した。空気遮断性指数が大きいほど加硫ゴム組成物の空気透過量が小さく、空気遮断性に優れることを示す。
(空気遮断性指数)=(基準比較例の空気透過量)/(各配合の空気透過量)×100
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
表1、5~7から、多量のブチル系ゴムを含む配合において、所定量の前記混合物を添加することで、シート加工性、空気遮断性がバランス良く改善された。更に表2~4から、再生ブチル系ゴムを含む配合、キノリン系老化防止剤を含む配合、オイル及びC5系石油樹脂を含む配合に前記混合物を添加した場合、シート加工性、空気遮断性の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善されることも明らかとなった。