(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】電気錠コントローラ
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20220817BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20220817BHJP
H02H 5/04 20060101ALI20220817BHJP
H01H 47/32 20060101ALN20220817BHJP
【FI】
E05B47/00 H
H02H3/087
H02H5/04 120
H01H47/32 A
(21)【出願番号】P 2019001176
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-225438(JP,A)
【文献】実開昭49-97736(JP,U)
【文献】特開平6-70463(JP,A)
【文献】実開昭51-46249(JP,U)
【文献】特開2010-110063(JP,A)
【文献】特開2016-910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00 - 49/04
H02H 3/087
H02H 5/04
H01H 47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の施解錠を電気的に行う電気錠を制御する電気錠コントローラであって、
前記電気錠の動作用電源を生成する電源部と、
前記電源部から前記電気錠へと至る給電経路に直列に介在する常開型の制御用接点および通電されることにより前記制御用接点を閉じる制御用コイルを有する制御用リレーと、
前記電源部の出力電圧または前記出力電圧と同様に変化する電圧を用いて前記制御用コイルに通電するリレー駆動部と、
前記リレー駆動部の動作を制御する駆動制御部と、
前記電源部の出力電流が定常電流よりも高い所定の閾値電流に達すると前記電源部の出力電圧を前記制御用リレーの接点保持電圧より低い電圧に向けて低下させる電圧低下部と、
前記制御用コイルに通電される電圧を検出し、その検出電圧が前記制御用リレーの接点保持電圧より低い所定の下限電圧未満になると、前記駆動制御部による制御に関係なく、前記リレー駆動部による通電を強制的に停止する強制停止部と、
を備える電気錠コントローラ。
【請求項2】
制御対象に応じて出力を有電圧および無電圧のうちいずれかに切り替え可能な構成であり、
さらに、前記電源部から前記電気錠へと至る給電経路に直列に介在するとともに前記出力を切り替えるための常開型の設定用接点および通電されることにより前記設定用接点を閉じる設定用コイルを有する設定用リレーを備え、
前記リレー駆動部は、前記電源部の出力電圧または前記出力電圧と同様に変化する電圧を用いて前記設定用コイルに通電し、
前記強制停止部は、前記設定用コイルに通電される電圧を検出し、その検出電圧が前記設定用リレーの接点保持電圧より低い所定の下限電圧未満になると、前記駆動制御部による制御に関係なく、前記リレー駆動部による通電を強制的に停止する請求項1に記載の電気錠コントローラ。
【請求項3】
さらに、前記制御用コイルに通電される電圧に対して前記設定用コイルに通電される電圧が低くなるように調整する電圧調整部を備える請求項2に記載の電気錠コントローラ。
【請求項4】
前記制御用リレーの接点保持電圧に対して前記設定用リレーの接点保持電圧が高く設定されている請求項2または3に記載の電気錠コントローラ。
【請求項5】
さらに、前記強制停止部により前記通電が強制的に停止されると前記電源部の出力電流が過大となる過電流異常が生じたことを外部に報知する報知部を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の電気錠コントローラ。
【請求項6】
前記電圧低下部は、前記閾値電流を任意の値に調整することが可能な構成となっている請求項1から5のいずれか一項に記載の電気錠コントローラ。
【請求項7】
前記電源部は、前記動作用電源を生成するためにスイッチング動作を行うスイッチング素子を備え、
さらに、前記スイッチング素子の温度が所定の閾値温度以上になると、前記リレー駆動部による通電の経路を遮断する通電遮断部を備える請求項1から6のいずれか一項に記載の電気錠コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉の施解錠を電気的に行う電気錠を制御する電気錠コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
防犯および操作性を高めることを目的として扉の施錠や解錠を電気的に行う電気錠が用いられている。このような電気錠を制御する電気錠コントローラは、制御対象となる電気錠に対し、その動作用電源を供給するようになっている(例えば、特許文献1参照)。このような構成において、電気錠コントローラと電気錠とを接続するための配線など、動作用電源の給電経路に短絡故障が生じると、電気錠コントローラから電気錠に対して過大な電流、つまり過電流が流れるおそれがある。そこで、従来の電気錠コントローラには、上記給電経路に直列に介在するようにヒューズが設けられており、これにより過電流から電気錠を保護する過電流保護が実現されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒューズを用いて過電流保護を実現する構成(以下、従来技術と呼ぶ)では、次のような課題があった。すなわち、従来技術では、異常復旧には、ヒューズの交換が必要となる。そのため、従来技術では、交換可能なヒューズを用いる必要があり、また、ヒューズ交換のための作業空間を筐体内に確保するともに、ヒューズ交換を可能とするための機構などを筐体に搭載する必要が生じ、その結果、機器の小型化を十分に図ることが困難となっていた。また、交換に備えるために予備のヒューズを準備しておく必要があるが、準備された予備のヒューズの容量が使用されている電気錠に適応した容量ではない場合には、適切なタイミングで過電流保護が行われない可能性があり、安全性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の小型化および安全性の向上を図りつつ過電流保護を実現することができる電気錠コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の電気錠コントローラは、扉の施解錠を電気的に行う電気錠を制御するものであって、電源部、制御用リレー、リレー駆動部および駆動制御部を備える。電源部は、電気錠の動作用電源を生成する。制御用リレーは、電源部から電気錠へと至る給電経路に直列に介在する常開型の制御用接点および通電されることにより制御用接点を閉じる制御用コイルを有する。リレー駆動部は、電源部の出力電圧または出力電圧と同様に変化する電圧を用いて制御用コイルに通電する。駆動制御部は、リレー駆動部の動作を制御する。
【0007】
上記構成では、リレー駆動部が制御用コイルに通電することにより制御用リレーの接点が閉じられ(オンされ)、これにより、電気錠コントローラから電気錠に対して動作用電源が供給される。このように電気錠に対して動作用電源が供給されている状態において、電気錠コントローラと電気錠とを接続するための配線など、動作用電源の給電経路に短絡故障が生じた際、上記構成では、次のようにして過電流保護が実現される。
【0008】
すなわち、上記構成の電気錠コントローラは、電源部の出力電流が定常電流よりも高い所定の閾値電流に達すると電源部の出力電圧を制御用リレーの接点保持電圧より低い電圧に向けて低下させる電圧低下部を備えている。短絡故障が生じている場合、電源部の出力電流は定常電流よりも上昇することになる。そのため、短絡故障が生じると、電源部の出力電流が上昇して閾値電流に達し、これを受けて電圧低下部が電源部の出力電圧を低下させる。電源部の出力電圧の低下に伴い、制御用コイルに対する通電電圧も同様に低下する。そして、制御用コイルに対する通電電圧が制御用リレーの接点保持電圧(感動電圧)を下回ると、制御用接点が閉じられる(オフされる)。これにより、上記給電経路、つまり短絡故障に起因して生じる過電流の流れる経路が遮断され、その結果、過電流による電気錠などの機器の故障の発生が防止される。
【0009】
ただし、この場合、給電経路が遮断されたことにより、電源部の出力電流は、低下して閾値電流よりも十分に小さくなる。そのため、電圧低下部による出力電圧の低下動作が停止され、電源部の出力電圧は上昇に転じる。電源部の出力電圧の上昇に伴い、制御用コイルに対する通電電圧も同様に上昇する。そして、制御用コイルに対する通電電圧が制御用リレーの接点保持電圧に達すると、制御用接点がオンされる。これにより、給電経路が再び形成され、その結果、短絡故障に起因する過電流が再び流れる。その後、上述し動作と同様の動作が繰り返されることにより、過電流が流れる状態と過電流が遮断される状態とが交互に繰り返される、いわゆるチャタリングのような現象が生じてしまう。
【0010】
このような現象の発生を防止するため、上記構成の電気錠コントローラは、制御用コイルに通電される電圧を検出し、その検出電圧が制御用リレーの接点保持電圧より低い所定の下限電圧未満になると、駆動制御部による制御に関係なく、リレー駆動部による通電を強制的に停止する強制停止部を備えている。このような構成によれば、電圧低下部による出力電圧の低下動作に伴って制御用接点がオフされた際、強制停止部がリレー駆動部による通電を強制的に停止する。したがって、上記構成によれば、制御用接点がオフされた後、電圧低下部による出力電圧の低下動作が停止されたとしても、上述したチャタリングのような現象が生じることなく、過電流が遮断された状態が維持される。
【0011】
このように、上記構成によれば、ヒューズを用いることなく、給電経路に直列に介在する制御用接点を有する制御用リレーを利用して過電流保護を実現することができる。そのため、上記構成では、ヒューズを用いる構成に特有の課題(装置の小型化が困難、安全性の低下など)は存在せず、装置の小型化を図ることができるとともに安全性を向上することができる。なお、例えばCPUなどを用いて、電源部の出力電流などをモニタするとともに、そのモニタ結果に基づいて過電流が発生したことが検知されると制御用リレーの制御用接点をオフ制御する、という具合に、ソフトウェアでのリレー制御により過電流保護を実現することも考えられる。
【0012】
ただし、このようなソフトウェアによるリレー制御では、ソフトウェアのバグなどに起因する誤動作、出力電流などをモニタする回路の故障などにより、過電流保護が正常に機能しない可能性があり、その安全性を十分に高めることができない。これに対し、上記構成では、CPUを含む構成が想定される駆動制御部を除き、全てハードウェアにより構成することができる。そして、上記構成では、駆動制御部による制御に関係なく(駆動制御部による制御を介在することなく)、過電流保護のための動作が行われるようになっているため、その動作の確実性は比較的高い。したがって、上記構成によれば、ソフトウェアでのリレー制御による過電流保護に比べ、その安全性を一層高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の電気錠コントローラは、制御対象に応じて出力を有電圧および無電圧のうちいずれかに切り替え可能な構成であり、さらに設定用リレーを備える。設定用リレーは、電源部から電気錠へと至る給電経路に直列に介在するとともに出力を切り替えるための常開型の設定用接点と、通電されることにより設定用接点を閉じる設定用コイルと、を有する。この場合、リレー駆動部は、電源部の出力電圧または出力電圧と同様に変化する電圧を用いて、設定用コイルにも通電する。また、この場合、強制停止部は、設定用コイルに通電される電圧を検出し、その検出電圧が設定用リレーの接点保持電圧より低い所定の下限電圧未満になると、駆動制御部による制御に関係なく、リレー駆動部による通電を強制的に停止する。
【0014】
上記構成では、電源部から電気錠へと至る給電経路に直列に介在する接点としては、制御用接点だけでなく、設定用接点も存在する。そこで、上記構成では、制御用リレーを利用した過電流保護に加え、このような設定用接点を有する設定用リレーを利用した過電流保護も行うようになっている。つまり、上記構成では、過電流保護の機能が二重化されている。なお、設定用リレーを利用した過電流保護の動作は、前述した制御用リレーを利用した過電流保護の動作と同様である。このような構成によれば、短絡故障が生じると、電圧低下部による出力電圧の低下動作に伴い給電経路に直列に介在する2つの接点(制御用接点および設定用接点)がオフされ、それにより過電流の流れる経路が遮断されるため、その安全性および信頼性を一層高めることができる。
【0015】
請求項3に記載の電気錠コントローラは、さらに、制御用コイルに通電される電圧に対して設定用コイルに通電される電圧が低くなるように調整する電圧調整部を備える。また、請求項4に記載の電気錠コントローラは、制御用リレーの接点保持電圧に対して設定用リレーの接点保持電圧が高く設定されている。これらの構成によれば、短絡故障が生じると、電圧低下部による出力電圧の低下動作に伴い2つの接点のうち設定用接点が先にオフされ、これにより過電流保護が実現される。
【0016】
そして、設定用接点が正常にオフされた場合、設定用接点のオフによって給電経路が遮断されたことにより電源部の出力電圧が上昇に転じるため、制御用接点はオフされることがない。ただし、何らかの不具合により設定用接点がオフされなかった場合、電圧低下部による出力電圧の低下動作に伴い制御用接点がオフされ、これにより過電流保護が実現される。つまり、この場合、基本的には、設定用接点を有する設定用リレーを利用した過電流保護が行われようになっている。
【0017】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。すなわち、一般に、電気錠コントローラにおいて、制御用リレーは、電気錠毎に予め定められたタイミングで開閉されるものであり、その接点の開閉頻度は比較的高い。これに対し、設定用リレーは、例えば装置の起動後、制御対象を切り替える(設定する)ために一度だけ開閉されるものであり、その接点の開閉頻度は比較的低い。通常、リレーの接点は、開閉の回数が少ないほど、その信頼性は高くなる。このような事情から、電気錠コントローラにおいて、設定用リレーの接点(設定用接点)の信頼性は、制御用リレーの接点(制御用接点)の信頼性に比べ、格段に高くなっている。
【0018】
上記構成では、このような電気錠コントローラに特有の事情を考慮し、基本的には、信頼性が高いと考えられる設定用リレーの接点を利用した過電流保護を行いつつ、設定用リレーの接点に何らかの不具合が生じた場合には制御用リレーの接点を利用した過電流保護を行うようになっているため、その安全性および信頼性をさらに向上させることができる。また、この場合、制御用リレーの接点は、設定用リレーの接点に不具合が無い限り、過電流保護のために開閉されることがないため、元々の機能のための開閉動作以外の要因による接点へのダメージが極力低く抑えられ、その信頼性を良好に維持することができる。
【0019】
従来技術では、異常時にヒューズが切れて動作不能になったことを外部に通知することが難しく、異常の原因特定に多大な時間を要するという課題があった。これに対し、請求項5に記載の電気錠コントローラは、さらに、強制停止部により通電が強制的に停止されると電源部の出力電流が過大となる過電流異常が生じたことを外部に報知する報知部を備える。このような構成によれば、短絡故障などに起因した過電流異常が発生した場合、その異常が速やかに外部に報知される。したがって、上記構成によれば、異常の原因特定が容易になるとともに、その異常を解消するための対処を早急に実施することができるという効果が得られる。
【0020】
一般に、電気錠には、様々な仕様のものが存在し、その仕様に応じて動作電流も異なっている。電気錠コントローラとしては、このような様々な仕様の電気錠のうち、どの仕様の電気錠が接続される場合でも、正常に制御することができるようにしておく必要がある。このようなことから、電圧低下部における閾値電流が固定値である場合、その値を、様々な仕様の電気錠のうち最も動作電流の多い電気錠に対応した比較的大きい電流値に設定しておく必要がある。しかし、このようにした場合、動作電流が比較的少ない電気錠が接続されると、過電流保護の開始が適切なタイミングよりも遅れる可能性があり、安全性の向上という点において、改善の余地がある。
【0021】
そこで、請求項6に記載の電気錠コントローラでは、電圧低下部は、閾値電流を任意の値に調整することが可能な構成となっている。このような構成によれば、接続される電気錠の仕様(動作電流)に応じて、過電流保護の開始が適切なタイミングとなるように、閾値電流を調整することができる。したがって、上記構成によれば、様々な仕様の電気錠のうち、どの仕様の電気錠が接続される場合でも、適切なタイミングで過電流保護が開始されることになり、安全性をより一層向上させることができる。
【0022】
請求項7に記載の電気錠コントローラでは、電源部は、動作用電源を生成するためのスイッチング動作を行うスイッチング素子を備える。また、請求項7に記載の電気錠コントローラは、さらに、スイッチング素子の温度が所定の閾値温度以上になると、リレー駆動部による通電の経路を遮断する通電遮断部を備える。上記構成では、短絡故障が生じて電源部の出力電流が上昇すると、電源部が備えるスイッチング素子の温度が上昇する。そして、スイッチング素子の温度が上昇して閾値温度以上になると、通電遮断部によってリレー駆動部による通電の経路が遮断される。
【0023】
このような構成によれば、短絡故障が生じた際、仮に電圧低下部の動作などに不具合が生じていてリレーを利用した過電流保護が正常に機能しなかったとしても、スイッチング素子の温度上昇に伴って通電遮断部がリレー駆動部による通電の経路を遮断するため、給電経路に直列に介在する接点がオフされて過電流保護が実現される。このように、上記構成によれば、過電流保護の機能が多重化されていることにより、その安全性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る電気錠コントローラの構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る電源回路の具体的な構成を模式的に示す図
【
図3】第1実施形態に係る電気錠に供給される電圧および電流を模式的に示す図
【
図4】第2実施形態に係る電源回路の具体的な構成を模式的に示す図
【
図5】第3実施形態に係る電気錠コントローラの構成を模式的に示す図
【
図6】第4実施形態に係る電気錠コントローラの構成を模式的に示す図
【
図7】第5実施形態に係る電気錠コントローラの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図3を参照して説明する。
【0026】
<全体構成>
図1に示す電気錠コントローラ1は、端子P1、P2を介して接続される電気錠2を制御する。電気錠2は、図示しない扉の施錠および解錠を電気的に行うものである。電気錠2は、セキュリティ用のものであり、例えば店舗や住宅などの防犯対策に用いられるセキュリティシステムに適用される。電気錠コントローラ1は、電源回路3、リレー4、制御部5、スイッチング素子6およびラッチ回路7を備えている。
【0027】
電源回路3は、電源部8および電圧低下部9を備えている。電源部8は、電気錠2の動作用電源を生成し、電源線L1、L2を通じて出力する。電源線L2の電位は、回路の基準電位であるグランド(0V)となる。以下の説明では、電源線L2のことをグランドとも呼ぶこととする。電圧低下部9は、電源部8の出力電流が所定の閾値電流に達すると電源部8の出力電圧をリレー4の接点保持電圧より低い電圧に向けて低下させる。上記閾値電流は、定常時における出力電流である定常電流よりも高い所定値に設定される。具体的には、閾値電流は、定常電流の範囲の上限値(例えば1A)に設定されている。
【0028】
リレー4は、制御用リレーに相当するものであり、接点10およびコイル11を備えている。接点10は、電源線L1と端子P1との間に接続されている。つまり、接点10は、電源部8から電気錠2へと至る給電経路に直列に介在するものであり、制御用接点に相当する。コイル11は、その通電状態に応じて接点10の開閉を制御するものであり、制御用コイルに相当する。この場合、接点10は常開型の接点となっている。そのため、コイル11は、通電されると接点10をオンする(閉じる)とともに、通電が停止されると接点をオフする(開く)構成となっている。
【0029】
スイッチング素子6は、例えばNチャネル型MOSFETであり、電源部8の出力電圧を用いてコイル11に通電するリレー駆動部として機能する。なお、スイッチング素子6としては、例えばPチャネル型MOSFETなど、様々な半導体スイッチング素子を採用することができる。コイル11の一方の端子は、スイッチング素子6のドレインに接続され、その他方の端子は、電源線L2に接続されている。スイッチング素子6のソースは、電源線L1に接続されている。このような構成によれば、スイッチング素子6がオンされると電源部8の出力電圧によるコイル11への通電が実行され、スイッチング素子6がオフされるとコイル11への通電が停止される。
【0030】
スイッチング素子6のゲートには、制御部5から出力される駆動信号が与えられており、これにより、スイッチング素子6の動作(オンオフ)が制御される。制御部5は、CPUを主体として構成されており、電気錠コントローラ1の外部に設けられる上位の制御装置から与えられる指令に基づいて、スイッチング素子6の動作を制御する。このように、制御部5は、リレー駆動部に相当するスイッチング素子6の動作を制御する駆動制御部としての機能を有する。
【0031】
この場合、制御部5は、電気錠2に対し、所定のタイミングで動作用電源の供給が行われるように、スイッチング素子6の動作を制御する。例えば、電気錠2が、動作用電源を供給することによって解錠を行う仕様である場合、制御部5は、ユーザによる解錠の指示(例えばICカードをカードリーダにタッチする操作など)が行われると、スイッチング素子6をオンする。これにより、リレー4の接点10がオンされて電気錠2に対して動作用電源が供給されて解錠が行われる。
【0032】
ラッチ回路7は、スイッチング素子6のドレイン電圧に基づいてコイル11に通電される電圧を検出する。なお、ラッチ回路7は、電源線L1の電圧(スイッチング素子6のソース電圧)に基づいてコイル11に通電される電圧を検出することもできる。また、ラッチ回路7は、このようにして検出される検出電圧が下限電圧未満になると、制御部5から出力される駆動信号のレベルに関係なく、スイッチング素子6のゲート電圧を強制的にオフレベルに転じさせる。
【0033】
これにより、スイッチング素子6は、制御部5による駆動制御に関係なく、オフ固定され、コイル11への通電を行うことができなくなる。上述した下限電圧は、例えばリレー4の接点保持電圧(感動電圧)より低い電圧に設定されている。このように、ラッチ回路7は、上記検出電圧が下限電圧未満になると、制御部5による制御に関係なく、スイッチング素子6による通電を強制的に停止する強制停止部として機能する。
【0034】
また、ラッチ回路7は、上述したようにスイッチング素子6のゲート電圧を強制的にオフレベルに転じさせた場合、その旨を表す情報を、制御部5に通知する。制御部5は、ラッチ回路7から上記通知がなされると、電源部8の出力電流が過大となる過電流異常が生じたと判断し、その旨を上位の制御装置に対して報知する。これを受けて、上位の制御装置は、ユーザに対し、表示や音声などによって、過電流異常の発生を報知する。このように、制御部5は、過電流異常が生じたことを外部に報知する報知部としての機能を有する。また、この場合、過電流異常が解消されると、その旨が、上位の制御装置および制御部5を経由してラッチ回路7に伝達される。これを受けて、ラッチ回路7は、スイッチング素子6を強制的にオフ固定するための動作を解除する。
【0035】
<電源回路の具体的構成>
電源回路3の具体的な構成としては、例えば
図2に示すような構成を採用することができる。
図2に示すように、電源回路3は、外部から入力ノードNiを介して与えられる入力電圧Vinを降圧するとともに安定化し、出力ノードNoを介して出力する降圧型のスイッチングレギュレータとして構成されている。出力ノードNoから出力される出力電圧Voの定常値は、例えば+24Vとなっている。
【0036】
電源回路3は、コンデンサ21、22、例えばNチャネル型MOSFETであるスイッチング素子23、コイル24、ダイオード25、抵抗26~28、電源制御部29などを備えている。コンデンサ21は、入力電圧Vinの平滑用であり、入力ノードNiとグランドとの間に接続されている。コンデンサ22は、出力電圧Voutの平滑用であり、出力ノードNoとグランドとの間に接続されている。
【0037】
スイッチング素子23は、例えばNチャネル型MOSFETであり、動作用電源を生成するためにスイッチング動作を行うようになっている。なお、スイッチング素子23としては、例えばPチャネル型MOSFETなど、様々な半導体スイッチング素子を採用することができる。スイッチング素子23のソースは入力ノードNiに接続され、そのドレインはコイル24および抵抗26を介して出力ノードNoに接続されている。スイッチング素子23のゲートには、電源制御部29から出力される駆動信号が与えられており、これにより、スイッチング素子23の駆動(スイッチング動作)が制御される。ダイオード25のカソードはスイッチング素子23のドレインに接続され、そのアノードはグランドに接続されている。
【0038】
抵抗27、28の直列回路は、出力ノードNoとグランドとの間に接続されている。抵抗27、28は、出力電圧Voを分圧する分圧回路を構成しており、それらの相互接続ノードであるノードN1から出力される分圧電圧は、電源制御部29に与えられている。電源制御部29は、上記分圧電圧に基づいて出力電圧Voutを検出し、その検出値に基づいて出力電圧Voutが所望する目標電圧(例えば定常値である24V)に一致するように、スイッチング素子23の駆動を制御する。このように、上記構成では、抵抗26を除く各構成により電源部8が構成されている。
【0039】
抵抗26は、電源回路3(電源部8)の出力電流を検出するためのセンス抵抗であり、その各端子電圧は、電源制御部29に与えられている。電源制御部29は、抵抗26の各端子電圧に基づいて出力電流を検出する。電源制御部29は、その検出値に基づいて出力電流が定常電流よりも高い閾値電流(例えば1A)に達したことを検出すると、スイッチング素子23の駆動を停止させる、スイッチングにおけるオンデューティを低下させる、などして出力電圧Voutを低下させる。このように、上記構成では、抵抗26および電源制御部29により電圧低下部9が構成されている。
【0040】
次に、上記構成の作用について説明する。
上記構成では、スイッチング素子6がオンされてコイル11に対する通電が行われることによりリレー4の接点10がオンされ、これにより、電気錠コントローラ1から電気錠2に対して動作用電源が供給される。このように電気錠2に対して動作用電源が供給されている状態において、電気錠コントローラ1と電気錠2とを接続するための配線など、動作用電源の給電経路に短絡故障(例えば配線ショートなど)が生じた際、上記構成では、次のようにして過電流保護が実現される。
【0041】
以下、このような過電流保護の動作について
図3を参照して説明する。なお、
図3における電圧は、端子P1、P2間の電圧、つまり電気錠2に供給される電圧を示している。また、
図3における電流は、端子P1、P2間に流れる電流、つまり電気錠2に供給される電流を示している。リレー4の接点10がオンであれば、電気錠2に供給される電圧および電流は、電源部8の出力電圧および出力電流のそれぞれと略同じとなる。そのため、以下の説明では、電気錠2に供給される電圧と電源部8の出力電圧とを区別する必要がない場合には、それらを電源部8の出力電圧と総称するとともに、電気錠2に供給される電流と電源部8の出力電流とを区別する必要がない場合には、それらを電源部8の出力電流と総称することとする。
【0042】
短絡故障が生じている場合、電源部8の出力電流は定常電流の範囲の上限値を超えて上昇することになる。そのため、短絡故障が生じると、電源部8の出力電流が上昇して閾値電流に達し、これを受けて電圧低下部9が電源部8の出力電圧を低下させる。電源部8の出力電圧の低下に伴い、コイル11に対する通電電圧も同様に低下する。そして、コイル11に対する通電電圧がリレー4の接点保持電圧(感動電圧)を下回ると、接点10がオフされる(リレー接点OFF)。これにより、上記給電経路、つまり短絡故障に起因して生じる過電流の流れる経路が遮断されるため、電気錠2に供給される電圧および電流が、いずれもゼロとなり、その結果、過電流による電気錠2などの機器の故障の発生が防止される。
【0043】
このようなリレー接点OFFのタイミング、つまり過電流保護の開始タイミングは、電源回路3の仕様(閾値電流の設定値など)およびリレー4の仕様(感動電圧など)に応じて、任意のタイミングに設定することができる。本実施形態では、過電流保護の開始タイミングは、電源部8の出力電流が定常電流の上限値の2倍(例えば2A)となる時点に設定されている。
【0044】
ただし、この場合、給電経路が遮断されたことにより、電源部8の出力電流は、低下して閾値電流よりも十分に小さくなる。そのため、電圧低下部9による出力電圧の低下動作が停止され、電源部8の出力電圧は上昇に転じる。電源部8の出力電圧の上昇に伴い、コイル11に対する通電電圧も同様に上昇する。そして、コイル11に対する通電電圧がリレー4の接点保持電圧に達すると、接点10がオンされる。これにより、給電経路が再び形成され、その結果、短絡故障に起因する過電流が再び流れる。その後、上述し動作と同様の動作が繰り返されることにより、過電流が流れる状態と過電流が遮断される状態とが交互に繰り返される、いわゆるチャタリングのような現象が生じてしまう。
【0045】
しかし、上記構成の電気錠コントローラ1では、電圧低下部9による出力電圧の低下動作に伴って接点10がオフされた際、ラッチ回路7がスイッチング素子6をオフ固定してコイル11に対する通電を強制的に停止する。したがって、上記構成によれば、接点10がオフされた後、電圧低下部9による出力電圧の低下動作が停止されたとしても、上述したチャタリングのような現象が生じることなく、過電流が遮断された状態が維持される。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の電気錠コントローラ1によれば、従来技術のようにヒューズを用いることなく、給電経路に直列に介在する接点10を有するリレー4を利用して過電流保護を実現することができる。そのため、上記構成では、ヒューズを用いる構成に特有の課題(装置の小型化が困難、安全性の低下など)は存在せず、装置の小型化を図ることができるとともに安全性を向上することができる。
【0047】
ここで言う安全性とは、従来技術において説明した予備のヒューズの容量が使用されている電気錠に適用した容量ではないこと(予備が不適合となること)に起因する安全性のことである。本実施形態では、再利用可能なリレー4を利用して過電流保護を実現する構成であるため、そもそも予備が必要ではなく、予備が不適合となるリスク自体が存在しないことから、このような安全性を向上することができる。
【0048】
なお、例えばCPUを主体として構成された制御部5などを用いて、電源部8の出力電流などをモニタするとともに、そのモニタ結果に基づいて過電流が発生したことが検知されるとリレー4の接点10をオフ制御する、という具合に、ソフトウェアでのリレー制御により過電流保護を実現することも考えられる。
【0049】
ただし、このようなソフトウェアによるリレー制御では、ソフトウェアのバグなどに起因する誤動作、出力電流などをモニタする回路の故障などにより、過電流保護が正常に機能しない可能性があり、その安全性を十分に高めることができない。これに対し、上記構成では、制御部5を除き、全てハードウェアにより構成することができる。そして、上記構成では、制御部5による制御に関係なく(制御部5による制御を介在することなく)、過電流保護のための動作が行われるようになっているため、その動作の確実性は比較的高い。したがって、本実施形態によれば、ソフトウェアでのリレー制御による過電流保護に比べ、その安全性を一層高めることができる。
【0050】
従来技術では、異常時にヒューズが切れて動作不能になったことを外部に通知することが難しく、異常の原因特定に多大な時間を要するという課題があった。これに対し、本実施形態の電気錠コントローラ1では、短絡故障などに起因した過電流異常が発生した場合、ラッチ回路7からの通知を受けた制御部5が、過電流異常が生じたことを、速やかに外部に報知するようになっている。したがって、本実施形態によれば、過電流異常が発生した際、その異常の原因特定が容易になるとともに、その異常を解消するための対処を早急に実施することができるという効果が得られる。
【0051】
上記構成において、リレー4は、機械式のリレーであるため、その接点10の開閉動作は、電源部8の出力電流などの電流の変動に比べて遅いものとなる。そのため、上記構成では、短絡故障が生じた際、リレー4の動作としてのチャタリングが生じる可能性が高い。そこで、本実施形態では、前述したような動作を行うラッチ回路7を設けており、これによりチャタリングの発生を防止している。
【0052】
さらに、この場合、電圧低下部9が、電源部8の出力電流が閾値電流に達すると電源部8の出力電圧をリレー4の接点保持電圧より十分に低い電圧に向けて低下させるようにすると、チャタリングの防止効果を一層高めることができる。なぜなら、このようにすれば、短絡故障の発生時、電源部8の出力電流が閾値電流を多少下回って電圧低下部9による出力電圧の低下動作が停止されたとしても、電源部8の出力電圧は、リレー4の接点保持電圧より十分に低い電圧まで低下されているため、直ちに接点保持電圧に達するまで上昇することはない。したがって、上記構成によれば、短絡故障の発生時、電源部8の出力電流が閾値電流を境界に多少変動するような場合でも、リレー4の動作としてのチャタリングが発生することを確実に防止することができる。
【0053】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態に対し電源回路の具体的な構成などが変更された第2実施形態について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、本実施形態の電源回路31は、
図2に示した第1実施形態の電源回路3に対し、抵抗26に代えて可変抵抗32を備えている点などが異なっている。可変抵抗32は、抵抗26と同様、センス抵抗である。この場合、可変抵抗32および電源制御部29により電圧低下部9が構成されている。
【0054】
電源回路31において、センス抵抗である可変抵抗32の抵抗値が変更されると、電源部8の出力電流が可変抵抗32を流れることにより可変抵抗32の端子間に発生する電圧、つまり出力電流の検出値が変化する。そのため、可変抵抗32の抵抗値が変更されると、電圧低下部9における閾値電流が変化することになる。したがって、この場合の電圧低下部9は、閾値電流を任意の値に調整することが可能な構成となっている。
【0055】
可変抵抗32の抵抗値の調整、ひいては閾値電流の値の調整は、制御部5により行われる。電気錠コントローラ1の運用開始時、例えばユーザによる操作などに応じて接続される電気錠2の仕様などが制御部5に対して通知されて登録される。これを受けて、制御部5は、接続される電気錠2の仕様に応じて、適切なタイミングで過電流保護が開始されるように、可変抵抗32の抵抗値、ひいては閾値電流の値を調整するようになっている。
【0056】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
一般に、電気錠2には、様々な仕様のものが存在し、その仕様に応じて動作電流も異なっている。電気錠コントローラ1としては、このような様々な仕様の電気錠2のうち、どの仕様の電気錠2が接続される場合でも、正常に制御することができるようにしておく必要がある。このようなことから、電圧低下部9における閾値電流が固定値である場合、その値を、様々な仕様の電気錠2のうち最も動作電流の多い電気錠2に対応した比較的大きい電流値に設定しておく必要がある。しかし、このようにした場合、動作電流が比較的少ない電気錠2が接続されると、過電流保護の開始が適切なタイミングよりも遅れる可能性があり、安全性の向上という点において、改善の余地がある。
【0057】
そこで、本実施形態では、電圧低下部9は、閾値電流を任意の値に調整することが可能な構成となっている。このような構成によれば、接続される電気錠2の仕様(動作電流)に応じて、過電流保護の開始が適切なタイミングとなるように、閾値電流を調整することができる。したがって、本実施形態によれば、様々な仕様の電気錠2のうち、どの仕様の電気錠2が接続される場合でも、適切なタイミングで過電流保護が開始されることになり、安全性をより一層向上させることができる。
【0058】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図5を参照して説明する。
図5に示す本実施形態の電気錠コントローラ41は、
図1に示した第1実施形態の電気錠コントローラ1に対し、サーミスタ42が追加されている点が異なっている。サーミスタ42は、PTCサーミスタであり、その周囲温度が所定の閾値温度を超えると急激に抵抗値が上昇するものである。サーミスタ42は、スイッチング素子6によるコイル11への通電の経路に直列に挿入されている。具体的には、サーミスタ42は、スイッチング素子6のソースと電源線L1との間に接続されている。
【0059】
図示は省略するが、サーミスタ42は、電源回路3のスイッチング素子23の近傍に配置されている。上記構成によれば、スイッチング素子23が発熱して周囲温度が閾値温度を超えると、サーミスタ42の抵抗値が急激に上昇し、電源線L1からスイッチング素子6のソースへと至る給電経路が遮断され、その結果、スイッチング素子6によるコイル11への通電の経路が遮断される。このように、サーミスタ42は、スイッチング素子23の温度が閾値温度以上になるとコイル11への通電の経路を遮断するものであり、通電遮断部に相当する。
【0060】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の電気錠コントローラ41では、短絡故障が生じて電源回路3(電源部8)の出力電流が上昇すると、電源回路3が備えるスイッチング素子23の温度が上昇する。そして、スイッチング素子23の温度が上昇して閾値温度以上になると、サーミスタ42の抵抗値が急激に上昇してコイル11への通電の経路が遮断される。
【0061】
このような構成によれば、短絡故障が生じた際、仮に電圧低下部9の動作などに不具合が生じていてリレー4を利用した過電流保護が正常に機能しなかったとしても、スイッチング素子23の温度上昇に伴いサーミスタ42の抵抗値が急激に上昇してコイル11への通電の経路が遮断されるため、給電経路に直列に介在するリレー4の接点10がオフされて過電流保護が実現される。このように、本実施形態によれば、過電流保護の機能が多重化されていることにより、その安全性を一層高めることができる。
【0062】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図6を参照して説明する。
図6に示す本実施形態の電気錠コントローラ51は、
図5に示した第3実施形態の電気錠コントローラ41に対し、サーミスタ42の接続位置が変更されている点が異なっている。この場合も、サーミスタ42は、スイッチング素子6によるコイル11への通電の経路に直列に挿入されている。ただし、この場合、サーミスタ42は、スイッチング素子6のドレインとリレー4のコイル11との間に接続されている。
【0063】
図示は省略するが、サーミスタ42は、電源回路3のスイッチング素子23の近傍に配置されている。上記構成によれば、このように、サーミスタ42は、スイッチング素子23の温度が閾値温度以上になるとコイル11への通電の経路を遮断するものであり、通電遮断部に相当する。
【0064】
以上説明した本実施形態の構成によっても、第3実施形態の構成と同様、スイッチング素子23が発熱して周囲温度が閾値温度を超えると、サーミスタ42の抵抗値が急激に上昇し、スイッチング素子6によるコイル11への通電の経路が遮断される。したがって、本実施形態によっても、第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について
図7を参照して説明する。
図7に示す本実施形態の電気錠コントローラ61は、有電圧接点出力により制御する機器である電気錠2および図示しない例えば自動ドアなどの無電圧接点出力により制御する機器(以下、自動ドア等と称する)のうちいずれかを選択的に制御可能な構成となっている。この場合、自動ドア等は、電気錠2とは別の被制御機器に相当する。
【0066】
電気錠コントローラ61は、電気錠2を制御対象とする場合、リレー4の接点10の開閉に応じて、動作用電源の供給を実行する状態と、動作用電源の供給を停止する状態と、を切り替える必要がある。また、電気錠コントローラ61は、自動ドア等を制御対象とする場合、リレー4の接点10の開閉に応じて、端子P1、P2間を短絡する状態と、端子P1、P2間を開放する状態と、を切り替える必要がある。つまり、電気錠コントローラ61は、制御対象に応じて、その出力を有電圧および無電圧のうちいずれかに切り替え可能な構成となっている必要がある。
【0067】
このような機能を実現するため、電気錠コントローラ61は、
図1に示した第1実施形態の電気錠コントローラ1に対し、リレー62、スイッチング素子63および抵抗64が追加されているとともに、制御部5およびラッチ回路7に代えて制御部65およびラッチ回路66を備えている。リレー62は、電気錠コントローラ61の出力を切り替えるためのもの、つまり電気錠コントローラ61の制御対象とする機器を切り替える(設定する)ためのものであり、設定用リレーに相当する。リレー62は、接点67、68およびコイル69を備えている。
【0068】
接点67の第1切替端子Aは、電源線L1に接続され、接点68の第1切替端子Aは、電源線L2に接続されている。接点67の第2切替端子Bは、接点68の第2切替端子Bに接続されている。接点67の共通端子は、リレー4の接点10を介して端子P1に接続されている。接点68の共通端子は、端子P2に接続されている。この場合、接点67、68は、電源部8から電気錠2へと至る給電経路に直列に介在するものであり、設定用接点に相当する。コイル69は、その通電状態に応じて接点67、68の開閉を制御するものであり、設定用コイルに相当する。
【0069】
コイル69は、通電されると、接点67、68をいずれも第1切替端子A側に切り替える。また、コイル69は、通電が停止されると、接点67、68をいずれも第2切替端子B側に切り替える。この場合、接点67、68が第1切替端子A側に切り替えられた状態が、接点をオンした(閉じた)状態に相当する。また、この場合、接点67、68が第2切替端子B側に切り替えられた状態が、接点をオフした(開いた)状態に相当する。このようなことから、接点67、68は、常開型の接点であると言える。
【0070】
スイッチング素子63は、例えばNチャネル型MOSFETであり、電源部8の出力電圧を用いてコイル69に通電するリレー駆動部として機能する。コイル69の一方の端子は、スイッチング素子63のドレインに接続され、その他方の端子は、電源線L2に接続されている。スイッチング素子63のソースは、抵抗64を介して電源線L1に接続されている。このような構成によれば、スイッチング素子63がオンされると電源部8の出力電圧より抵抗64による電圧降下分だけ低い電圧によるコイル69への通電が実行され、スイッチング素子63がオフされるとコイル69への通電が停止される。
【0071】
スイッチング素子63のゲートには、制御部65から出力される駆動信号が与えられており、これにより、スイッチング素子63の動作(オンオフ)が制御される。制御部65は、電気錠コントローラ61の外部に設けられる上位の制御装置から与えられる指令に基づいて、スイッチング素子6、63の動作を制御する。この場合、制御部65は、制御部5と同様に、スイッチング素子6の動作を制御する。
【0072】
また、この場合、制御部65は、次のように、スイッチング素子63の動作を制御する。すなわち、制御部65は、電気錠2を制御対象とする旨の指令が与えられた場合、スイッチング素子63をオンする。これにより、リレー62の接点67、68がいずれも第1切替端子A側に切り替えられ、リレー4の接点10の開閉に応じて、電気錠2に対して動作用電源の供給を実行する状態と、動作用電源の供給を停止する状態と、を切り替えることができる。また、制御部65は、自動ドア等を制御対象とする旨の指令が与えられた場合、スイッチング素子63をオフする。これにより、リレー62の接点67、68がいずれも第2切替端子B側に切り替えられ、リレー4の接点10の開閉に応じて、端子P1、P2間を短絡する状態と、端子P1、P2間を開放する状態と、を切り替えることができる。
【0073】
ラッチ回路66は、ラッチ回路7と同様、制御部65による駆動制御に関係なく、スイッチング素子6をオフ固定することができる。また、ラッチ回路66は、スイッチング素子63のドレイン電圧に基づいてコイル69に通電される電圧を検出する。なお、ラッチ回路66は、スイッチング素子63のソース電圧に基づいてコイル69に通電される電圧を検出することもできる。また、ラッチ回路66は、このようにして検出される検出電圧が下限電圧未満になると、制御部65から出力される駆動信号のレベルに関係なく、スイッチング素子63のゲート電圧を強制的にオフレベルに転じさせる。
【0074】
これにより、スイッチング素子63は、制御部65による駆動制御に関係なく、オフ固定され、コイル69への通電を行うことができなくなる。上述した下限電圧は、例えばリレー62の接点保持電圧(感動電圧)より低い電圧に設定されている。なお、この場合、リレー4、62の各接点保持電圧は、概ね同じ電圧となっている。このように、ラッチ回路66は、上記検出電圧が下限電圧未満になると、制御部65による制御に関係なく、スイッチング素子63による通電を強制的に停止する強制停止部として機能する。
【0075】
上記構成では、リレー4のコイル11に通電される電圧は、電源部8の出力電圧と同程度の電圧となっているのに対し、リレー62のコイル69に通電される電圧は、電源部8の出力電圧よりも抵抗64の電圧降下分だけ低い電圧となっている。したがって、抵抗64は、リレー4のコイル11に通電される電圧に対して、リレー62のコイル69に通電される電圧が低くなるように調整する電圧調整部として機能する。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の電気錠コントローラ61の電気錠出力は、制御対象に応じて有電圧(電気錠2を制御対象とする場合)および無電圧(例えば自動ドアなどの電気錠2とは別の被制御機器を制御対象とする場合)のうちいずれかに切り替え可能な構成であり、制御用リレーに相当するリレー4に加え、制御対象とする機器を切り替えるための設定用リレーに相当するリレー62を備えている。上記構成では、電源部8から電気錠2へと至る給電経路に直列に介在する接点としては、リレー4の接点10だけでなく、リレー62の接点67、68も存在する。
【0077】
そこで、本実施形態の電気錠コントローラ61では、リレー4を利用した過電流保護に加え、このような接点67、68を有するリレー62を利用した過電流保護も行うようになっている。つまり、本実施形態の電気錠コントローラ61では、過電流保護の機能が二重化されている。なお、リレー62を利用した過電流保護の動作は、上記各実施形態において説明したリレー4を利用した過電流保護の動作と同様である。このような構成によれば、短絡故障が生じると、電圧低下部9による出力電圧の低下動作に伴い給電経路に直列に介在する接点10、67、68がオフされ、それにより過電流の流れる経路が遮断されるため、その安全性および信頼性を一層高めることができる。
【0078】
本実施形態の電気錠コントローラ61では、スイッチング素子63のソースと電源線L1との間に抵抗64が挿入されていることから、リレー4のコイル11に通電される電圧に対してリレー62のコイル69に通電される電圧が低くなるように調整されている。このような構成によれば、短絡故障が生じると、電圧低下部9による出力電圧の低下動作に伴い、リレー4の接点10およびリレー62の接点67、68のうち、リレー62の接点67、68が先にオフされ(第2切替端子B側に切り替えられ)、これにより過電流保護が実現される。
【0079】
リレー62の接点67、68が正常にオフされた場合、接点67、68のオフによって電源部8から電気錠2へと至る給電経路が遮断されたことにより電源部8の出力電圧が上昇に転じるため、リレー4の接点10はオフされることがない。ただし、何らかの不具合によりリレー62の接点67、68がオフされなかった場合、電圧低下部9による出力電圧の低下動作に伴いリレー4の接点10がオフされ、これにより過電流保護が実現される。つまり、この場合、基本的には、接点67、68を有するリレー62を利用した過電流保護が行われようになっている。
【0080】
このようにすれば、次のような効果が得られる。すなわち、一般に、電気錠コントローラ1において、制御用リレーであるリレー4は、電気錠2毎に予め定められたタイミングで開閉されるものであり、その接点10の開閉頻度は比較的高い。これに対し、設定用リレーであるリレー62は、例えば装置の起動後、制御対象を切り替える(設定する)ために一度だけ開閉されるものであり、その接点67、68の開閉頻度(切替頻度)は比較的低い。通常、リレーの接点は、開閉の回数が少ないほど、その信頼性は高くなる。このような事情から、電気錠コントローラ61において、設定用リレーであるリレー62の接点67、68の信頼性は、制御用リレーであるリレー4の接点10の信頼性に比べ、格段に高くなっている。
【0081】
本実施形態では、このような電気錠コントローラ61に特有の事情を考慮し、基本的には、信頼性が高いと考えられる設定用リレーであるリレー62の接点67、68を利用した過電流保護を行いつつ、リレー62に何らかの不具合が生じた場合には制御用リレーであるリレー4の接点10を利用した過電流保護を行うようになっているため、その安全性および信頼性をさらに向上させることができる。また、この場合、制御用リレーであるリレー4の接点10は、リレー62に不具合が無い限り、過電流保護のために開閉されることがないため、元々の機能(電気錠2への動作用電源の供給の実行および停止など)のための開閉動作以外の要因による接点10へのダメージが極力低く抑えられ、その信頼性を良好に維持することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
本発明は、セキュリティ用の電気錠2を制御する電気錠コントローラに限らず、電気錠を制御する電気錠コントローラ全般に適用することができる。
【0083】
電源部8および電圧低下部9を含む電源回路の具体的な構成は、電気錠コントローラの仕様に応じて適宜変更することができる。したがって、電源回路としては、
図2などに示した降圧型のスイッチングレギュレータに限らずともよく、昇圧型のスイッチングレギュレータ、シリーズレギュレータなど、様々な回路方式を採用することができる。どのような回路方式の電源回路を採用する場合でも、上記各実施形態において説明した考え方に基づいて、電源部8および電圧低下部9と同様の機能を有する構成を設けることが可能である。
【0084】
上記各実施形態では、電源部8の出力電圧を用いてリレー4のコイル11に通電する構成となっていたが、電源部8の出力電圧と同様に変化する別の電圧を用いてリレー4のコイル11に通電する構成でもよい。このような構成であっても、電源部8の出力電圧の低下に伴いコイル11に対する通電電圧も同様の低下することになるため、上記各実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0085】
第5実施形態の電気錠コントローラ61において、電圧調整部として機能する抵抗64を省いてもよい。ただし、この場合、制御用リレーであるリレー4の接点保持電圧に対して設定用リレーであるリレー62の接点保持電圧を高く設定するとよい。このようにすれば、第5実施形態と同様、基本的にはリレー62を利用した過電流保護が行われるようになることから、第5実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【符号の説明】
【0086】
1、41、51、61…電気錠コントローラ、2…電気錠、4…リレー、5…制御部、6…スイッチング素子、7…ラッチ回路、8…電源部、9…電圧低下部、10…接点、11…コイル、23…スイッチング素子、42…サーミスタ、62…リレー、63…スイッチング素子、64…抵抗、65…制御部、66…ラッチ回路、67、68…接点、69…コイル。