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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】流体用バルブ装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/16 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
F16K11/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019023339
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020133657
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信弥
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第674795(GB,A)
【文献】実開昭54-081124(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1容積室、第2容積室、及び、第3容積室を有し流体の流路となる本体部と、
前記第1容積室に連絡する第1流入路、前記第1容積室に連絡する第1流出路、前記第2容積室に連絡する第2流入路、前記第2容積室に連絡する第2流出路、前記第1容積室と前記第2容積室とを連絡する第1バイパス、前記第2流入路と前記第3容積室とを連絡する第2バイパス、及び、前記第3容積室と前記第1流出路とを連絡する第3バイパスを有する流路部と、
前記第1容積室と前記第1流出路との間を開閉する第1バルブ、前記第2流入路と前記第2容積室との間を開閉する第2バルブ、前記第1容積室と前記第2容積室との間を開閉する第3バルブ、及び、前記第3容積室と前記第2バイパスとの間を開閉する第4バルブを有するバルブ部と、
前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブを駆動する開閉弁駆動部と、を具備し、
前記開閉弁駆動部は、前記第1バルブを開き、前記第2バルブを開き、前記第3バルブを閉じ、かつ、前記第4バルブを閉じる第1モードと、
前記第1バルブを閉じ、前記第2バルブを閉じ、前記第3バルブを開き、かつ、前記第4バルブを開く第2モードと、を切り替える、流体用バルブ装置。
【請求項2】
前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、前記第4バルブは、各々、弁体と、前記弁体が着座する弁座と、前記弁体を前記弁座に向けて付勢する付勢要素と、を有し、
前記開閉弁駆動部は、前記弁体を前記弁座から離れる方向に押圧する押圧部を有し、
前記押圧部は、前記第1モードにおいて前記第1バルブの弁体及び前記第2バルブの弁体を押圧し、前記第2モードにおいて前記第3バルブの弁体及び前記第4バルブの弁体を押圧する、請求項1に記載の流体用バルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体用バルブ装置として、流体の流通経路を複数の方向に切り替えるものが知られている。当該流体用バルブ装置として、例えば、EV車等に搭載されクーラントの流路を切り替えるものが例示される。
【0003】
一般的なEV車にはモータ・インバータ及びバッテリが搭載される。モータ・インバータ及びバッテリは、車両の駆動に伴って発熱するため、この種の車両には、これらを冷却するための車両用冷却システムが配設される。車両用冷却システムはクーラントの流路を有し、当該流路は、モータ・インバータ及びバッテリに加えて、冷却器にも接続される。流路を流通するクーラントが、冷却器と、熱源となるモータ・インバータ及びバッテリと、の間で熱交換することで、モータ・インバータ及びバッテリが冷却される。
【0004】
モータ・インバータとバッテリとでは制御温度が異なっており、一般的には、バッテリの制御温度の方がモータ・インバータの制御温度よりも低い。このため、通常の使用状態においては、モータ・インバータとバッテリとは、冷却性能の異なる別々の冷却器で冷却されるのが一般的である。
バッテリ用の冷却器としては、ヒートポンプを具備するチラーが例示され、モータ・インバータ用の冷却器としては、空冷式のラジエータが例示される。
【0005】
ところで、EV車の走行状態や環境によっては、モータ・インバータの発熱量が上昇する場合がある。この場合には、冷却性能に優れる冷却器でモータ・インバータを冷却するのが良いと考えられる。このため、一般的な車両用冷却システムでは、モータ・インバータの発熱量が大きく上昇した場合には、流体すなわちクーラントの流通経路を異なる方向に切り替えて、バッテリ用の冷却器によってモータ・インバータを冷却している。
【0006】
クーラントの流通経路を異なる方向に切り替えるためには、複数の流路と、当該複数の流路を開閉するための複数のバルブが必要となる。
【0007】
図5及び図6を基に一般的な車両用冷却システムとバルブとの関係を説明する。
先ず、図5及び図6に示される車両用冷却システムでは、バルブは、通常はバッテリBとチラーCとを接続しかつモータ・インバータMとラジエータRとを接続する。また、モータ・インバータMの発熱量が上昇した際にはバッテリB及びモータ・インバータMとチラーCとを接続する。どちらの場合にも、チラーCとバッテリBとは流路pXによって常に接続すれば良く、ラジエータRとモータ・インバータMとは流路pYによって常に接続すれば良い。
【0008】
この種の車両用冷却システムでは、上記した流路pX及び流路pY以外のクーラントの流路としては、バッテリBとチラーCとを接続する流路pA、モータ・インバータMとラジエータRとを接続する流路pB、バッテリBとモータ・インバータMとを接続する流路pC、及び、ラジエータRとチラーCとを接続する流路pDの4つがあれば良いと考えられる。バルブについては、流路pAを開閉するバルブVA、流路pBを開閉するバルブVB、流路pCを開閉するバルブVC、流路pDを開閉するバルブVDの4つがあれば良いと考えられる。
【0009】
図5に示すように、バルブVA及びバルブVBを開け、バルブVC及びバルブVDを閉じると、流路pAによってバッテリBとチラーCとが接続され、かつ、流路pBによってモータ・インバータMとラジエータRとが接続される。この場合、クーラントは、バッテリBから流路pA→チラーC→流路pXの順に流通してバッテリBに戻る経路と、モータ・インバータMから流路pY→ラジエータR→流路pBの順に流通してモータ・インバータMに戻る経路と、の2系統の経路を流通する。
したがってこの場合には、チラーCによってバッテリBを冷却でき、ラジエータRによってモータ・インバータMを冷却できる。
【0010】
また、図6に示すように、バルブVC及びバルブVDを開け、バルブVA及びバルブVBを閉じると、流路pCによってバッテリBとモータ・インバータMとが接続され、かつ、流路pDによってラジエータRとチラーCとが接続される。この場合、クーラントは、バッテリBから流路pC→モータ・インバータM→流路pY→ラジエータR→流路pD→チラーC→流路pXの順に流通してバッテリBに戻る経路を流通する。
したがってこの場合には、チラーCによってバッテリB及びモータ・インバータMの両者を冷却できる。
【0011】
ところで、図5及び図6に示す車両用冷却システムにおいては、バルブVA~バルブVDの4つのバルブを互いに同期させつつ開閉する必要がある。複数のバルブを同期させる場合、当該複数のバルブを別々に開閉駆動すると、流体用バルブ装置が大型化したり当該流体用バルブ装置に要するコストが高くなったりする問題がある。近年、車両の構成部品については小型化や軽量化が盛んに要求されており、大型な流体用バルブ装置はこの種の要求にそぐわない。
【0012】
ここで、例えば特許文献1に紹介されているようなカム及びステッピングモータを用いると、複数のバルブを個別にかつ同期して動作させ得ると考えられる。
しかしこの場合にも、流路pA~流路pDの4つの流路は依然として必要であり、流体用バルブ装置の小型化は依然として困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】実開平4-134903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小型化可能な流体用バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明の流体用バルブ装置は、
第1容積室、第2容積室、及び、第3容積室を有し流体の流路となる本体部と、
前記第1容積室に連絡する第1流入路、前記第1容積室に連絡する第1流出路、前記第2容積室に連絡する第2流入路、前記第2容積室に連絡する第2流出路、前記第1容積室と前記第2容積室とを連絡する第1バイパス、前記第2流入路と前記第3容積室とを連絡する第2バイパス、及び、前記第3容積室と前記第1流出路とを連絡する第3バイパスを有する流路部と、
前記第1容積室と前記第1流出路との間を開閉する第1バルブ、前記第2流入路と前記第2容積室との間を開閉する第2バルブ、前記第1容積室と前記第2容積室との間を開閉する第3バルブ、及び、前記第3容積室と前記第2バイパスとの間を開閉する第4バルブを有するバルブ部と、
前記第1バルブ、前記第2バルブ、前記第3バルブ、及び、前記第4バルブを駆動する開閉弁駆動部と、を具備し、
前記開閉弁駆動部は、前記第1バルブを開き、前記第2バルブを開き、前記第3バルブを閉じ、かつ、前記第4バルブを閉じる第1モードと、
前記第1バルブを閉じ、前記第2バルブを閉じ、前記第3バルブを開き、かつ、前記第4バルブを開く第2モードと、を切り替える、流体用バルブ装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の流体用バルブ装置は、小型化可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の流体用バルブ装置を模式的に表す説明図である。
図2】実施例1の流体用バルブ装置を模式的に表す説明図である。
図3】実施例1の流体用バルブ装置を具備する車両用冷却システムを模式的に表す説明図である。
図4】実施例1の流体用バルブ装置を具備する車両用冷却システムを模式的に表す説明図である。
図5】一般的な車両用冷却システムを模式的に表す説明図である。
図6】一般的な車両用冷却システムを模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の流体用バルブ装置は、流体の流通経路を異なる2通りの方向に切り替えるものである。本発明の流体用バルブ装置に流通する流体はクーラントであっても良いし、その他の用途に用いる流体であっても良い。当該流体は液体に限定されず、例えば気体であっても良い。したがって、本発明の流体用バルブ装置は、上記した従来の車両用冷却システムの一部として使用することもできるし、その他の用途に用いることもできる。
【0019】
以下、具体例を挙げて本発明の流体用バルブ装置を説明する。
【0020】
(実施例1)
図1及び図2は実施例1の流体用バルブ装置を模式的に表す説明図である。図3及び図4は、実施例1の流体用バルブ装置を具備する車両用冷却システムを模式的に表す説明図である。
詳しくは、図1及び図3では、実施例1の流体用バルブ装置は第1モードにあり、図2及び図4では、実施例1の流体用バルブ装置は第2モードにある。第1モード及び第2モードについては追って説明する。
【0021】
先ず、実施例1の流体用バルブ装置について説明する。
図1に示すように、実施例1の流体用バルブ装置は、本体部1、流路部3、バルブ部6、及び開閉弁駆動部7を有する。
【0022】
本体部1は、第1容積室11、第2容積室12、及び第3容積室13を有する。当該本体部1は、主外筒20、第1区画壁21、第2区画壁22及びリッド29によって区画形成される。主外筒20の軸方向は、図1に示す上下方向に一致する。
【0023】
主外筒20は、軸方向の一端部が開口し他端部が閉じた有底の略円筒状をなす。リッド29は、主外筒20の軸方向の一端部を覆う。第1区画壁21及び第2区画壁22は、主外筒20の内部において、主外筒20の軸方向に配列する。主外筒20の内部は、第1区画壁21及び第2区画壁22によって、主外筒20の軸方向に沿って、第1容積室11、第2容積室12及び第3容積室13の3つの領域に区画される。
【0024】
第1区画壁21は第2区画壁22の上方に配置され、主外筒20の内部の3つの領域は、上側から下側に向けて、第1容積室11、第2容積室12、第3容積室13の順に配列する。なお、第1区画壁21及び第2区画壁22は略リング状をなし、その中央部には、後述する開閉弁駆動部7のカムシャフト70が挿通されている。
【0025】
リッド29は、軸方向の一端側が閉じ他端側が開口した有底の略円筒状をなす。リッド29は主外筒20と同軸的に配置され、カムシャフト70を駆動するシャフト入力部79を内蔵している。リッド29の軸方向長さは主外筒20の軸方向長さよりも短い。
【0026】
流路部3は、第1流入路31、第1流出路32、第2流入路33、第2流出路34、第1バイパス35、第2バイパス36、及び、第3バイパス37を有する。
【0027】
第1流入路31は、略筒状をなす第1流入筒41の内部に区画形成されている。第1流出路32もまた、略筒状をなす第1流出筒42の内部に区画形成されている。第1流入筒41及び第1流出筒42は、各々、主外筒20における第1容積室11を区画する部分に一体化されている。そして、第1流入路31及び第1流出路32は、各々、第1容積室11に連絡している。
【0028】
第2流入路33は、略筒状をなす第2流入筒43の内部に区画形成されている。第2流出路34もまた、略筒状をなす第2流出筒44の内部に区画形成されている。第2流入筒43及び第2流出筒44は、各々、主外筒20における第2容積室12を区画する部分に一体化されている。そして、第2流入路33及び第2流出路34は、各々、第2容積室12に連絡している。
【0029】
第1区画壁21には、第1容積室11と第2容積室12とを連絡する貫通孔が設けられている。当該貫通孔は第1バイパス35に該当する。したがって第1バイパス35は、第1容積室11と第2容積室12とを連絡する。
【0030】
第2バイパス36は、軸方向の一端部が閉じられ他端が開かれた有底の略筒状をなす第2バイパス筒46の内部に区画形成されている。第2バイパス筒46は、第2流入筒43と略平行に配置されている。
【0031】
第2バイパス筒46における軸方向の他端部は、主外筒20における第3容積室13を区画する部分に一体化され、僅かに主外筒20の内部に入り込んでいる。したがって、当該第2バイパス筒46における軸方向の他端部を通じて、第2バイパス36は第3容積室13に連絡している。
一方、第2バイパス筒46の周壁は、第2流入筒43の周壁に一体化されている。当該一体化された部分には、第2バイパス筒46の周壁と第2流入筒43の周壁とを貫通する貫通穴39が設けられている。したがって、当該貫通穴39を通じて、第2バイパス36は第2流入路33に連絡している。第2バイパス36は、第2流入路33と第3容積室13とを連絡する。
【0032】
第3バイパス37は、筒状をなす第3バイパス筒47の内部に区画形成されている。第3バイパス筒47における軸方向の一端部は、主外筒20における第3容積室13を区画する部分に一体化され、第3バイパス37と第3容積室13とは連絡している。また、第3バイパス筒47における軸方向の他端部は、第1流出筒42の周壁に一体化され、第3バイパス37と第1流出路32とは連絡している。
第1流出路32は第3容積室13よりも上側に位置している。したがって、第3バイパス37における第1流出路32側の端部は、第3バイパス37における第3容積室13側の端部よりも上側に位置している。
【0033】
バルブ部6は、第1バルブVa、第2バルブVb、第3バルブVc及び第4バルブVdを有する。第1バルブVa~第4バルブVdは、略同形状のポペット式バルブである。第1バルブVa~第4バルブVdは、各々、基体60と、弁体61と、基体60と弁体61との間に介装されている付勢要素62と、弁体61を挟んで付勢要素62の逆側にある弁座63と、を有する。弁座63には貫通孔が設けられ、弁体61は当該貫通孔に挿通されるピン状の受圧部64を有する。付勢要素62は、圧縮されて付勢力を蓄積する圧縮コイルばねである。
【0034】
このうち第1バルブVaは、第1流出路32と第1容積室11との間に配設される。
具体的には、第1バルブVaの弁座63は、貫通孔を有する略リング状をなし、第1流出筒42における主外筒20側の端部に一体化されている。第1バルブVaの弁座63は、第1流出路32に露出するともいえる。基体60及び付勢要素62、並びに、弁体61のうち付勢要素62側の部分は、第1流出筒42の内部に配置される。このうち基体60は第1流出筒42に固定されている。付勢要素62及び弁体61については、位置変化又は状態変化可能である。
【0035】
弁体61のうち受圧部64側の部分は、弁座63の貫通孔に挿通されて、主外筒20の内部、具体的には第1容積室11に配置される。弁体61は、付勢要素62によって、弁座63に着座する方向、すなわち、第1バルブVaが閉じる方向に付勢されている。受圧部64が基体60側、すなわち、第1流出路32側に押圧されると、付勢要素62が圧縮して、弁体61は弁座63から離れる方向、すなわち、第1バルブVaが開く方向に位置変化する。したがって第1バルブVaは、第1流出路32と第1容積室11との間を開閉可能である。
【0036】
第2バルブVbは、第2流入路33と第2容積室12との間に配設される。
具体的には、第2バルブVbの弁座63は、貫通孔を有する略リング状をなし、第2流入筒43における主外筒20側の端部に一体化されている。第2バルブVbの弁座63は、第2流入路33に露出するともいえる。第2バルブVbの弁体61のうち受圧部64側の部分は、弁座63の貫通孔に挿通されて、主外筒20の内部、具体的には第2容積室12に配置される。第2バルブVbは、第1バルブVaと同様の機序により、第2流入路33と第2容積室12との間を開閉可能する。
【0037】
第3バルブVcは、第1容積室11と第2容積室12との間に配設される。
具体的には、第3バルブVcの弁座63は、貫通孔を有する略リング状をなし、第1区画壁21に一体化されている。第3バルブVcの弁座63は、第1バイパス35に露出するともいえる。第3バルブVcの弁体61のうち受圧部64側の部分は、弁座63の貫通孔に挿通されて、第1容積室11に配置される。第3バルブVcは、第1バルブVaと同様の機序により、第1容積室11と第2容積室12との間を開閉する。
【0038】
第4バルブVdは、第3容積室13と第2バイパス36との間に配設される。
具体的には、第4バルブVdの弁座63は、貫通孔を有する略リング状をなし、第2バイパス筒46における主外筒20側の端部に一体化されている。第4バルブVdの弁座63は、第2バイパス36に露出するともいえる。第4バルブVdの弁体61のうち受圧部64側の部分は、弁座63の貫通孔に挿通されて、第3容積室13に配置される。第4バルブVdは、第1バルブVaと同様の機序により、第2バイパス36と第3容積室13との間を開閉する。
【0039】
開閉弁駆動部7は、カムシャフト70、第1カム71、第2カム72及び第3カム73を有する。第1カム71、第2カム72及び第3カム73は、各々、カムシャフト70に一体化されている。
カムシャフト70は、主外筒20の内部に配設される。既述したように、カムシャフト70は、リング状をなす第1区画壁21及び第2区画壁22の中央部に挿通されている。したがって、カムシャフト70と主外筒20とは略同軸的に配置されている。カムシャフト70の軸方向の一端側には、ハンドル状のシャフト入力部79が、カムシャフト70と一体的に設けられている。
【0040】
シャフト入力部79はリッド29の内部に配置され、リッド29の内部に配置されているその他の部材とともに、ステッピングモータの一部を構成している。リッド29の内部と主外筒20の内部とは図略の隔壁によって区画され、シールされている。
カムシャフト70は、シャフト入力部79を含むステッピングモータによって回転駆動される。当該カムシャフト70に一体化されている第1カム71、第2カム72、及び、第3カム73もまた、当該カムシャフト70と一体的に回転可能である。つまり、カムシャフト70、第1カム71、第2カム72及び第3カム73を有する開閉弁駆動部7は、ステッピングモータによって回転駆動されるといえる。
【0041】
第1カム71、第2カム72及び第3カム73は、各々、偏心した略板状をなす。
【0042】
第1カム71は、押圧部Ia及び押圧部Icを有し、第1容積室11に配置される。
押圧部Iaは、第1カム71の径方向端部の一部で構成される。弁体61が弁座63に着座したときの第1バルブVaの受圧部64と、カムシャフト70の軸心Loと、の距離をWa(図略)とする。また、カムシャフト70の軸心Loと押圧部Iaとの距離をW1(図略)とする。当該距離Waと距離W1との関係は、図1に示す第1モードにおいてはW1>Waであり、図2に示す第2モードにおいてはW1≦Waである。したがって、押圧部Iaは、図1に示す第1モードにおいて第1バルブVaの受圧部64を押圧し、図2に示す第2モードにおいては第1バルブVaの受圧部64を押圧しない。
【0043】
押圧部Icは、第1カム71における、第1区画壁21に対向する側の軸方向端面の一部で構成される。第1カム71のうち、第1区画壁21に背向する側の軸方向端面71sは、カムシャフト70の軸心Loと直交する略平面状をなす。また、第1カム71のうち、第1区画壁21に対向する側の軸方向端面は、第1区画壁21に向けて部分的に突出する。したがって、第1カム71の軸方向厚さは部分的に異なるといえ、押圧部Icは第1カム71の軸方向端面のうち第1区画壁21側に突出する部分だともいえる。
【0044】
弁体61が弁座63に着座したときの第3バルブVcの受圧部64と、第1カム71のうち第1区画壁21に背向する側の軸方向端面71sと、の距離をWc(図略)とする。また、第1カム71のうち第1区画壁21に背向する側の軸方向端面71sと、押圧部Icとの距離と、の距離をW3(図略)とする。当該距離Wcと距離W3との関係は、図1に示す第1モードにおいてはW3≦Wcであり、図2に示す第2モードにおいてはW3>Wcである。したがって、押圧部Icは、図2に示す第2モードにおいて第3バルブVcの受圧部64を押圧し、図1に示す第1モードにおいては第3バルブVcの受圧部64を押圧しない。
【0045】
第2カム72は、押圧部Ibを有し、第2容積室12に配置される。
押圧部Ibは、第2カム72の径方向端部の一部で構成される。弁体61が弁座63に着座したときの第2バルブVbの受圧部64と、カムシャフト70の軸心Loと、の距離をWb(図略)とする。また、カムシャフト70の軸心Loと押圧部Ibとの距離をW2(図略)とする。当該距離Wbと距離W2との関係は、図1に示す第1モードにおいてはW2>Wbであり、図2に示す第2モードにおいてはW2≦Wbである。したがって、押圧部Ibは、図1に示す第1モードにおいて第2バルブVbの受圧部64を押圧し、図2に示す第2モードにおいては第2バルブVbの受圧部64を押圧しない。
【0046】
第3カム73は、押圧部Idを有し、第3容積室13に配置される。
押圧部Idは、第3カム73の径方向端部の一部で構成される。弁体61が弁座63に着座したときの第4バルブVdの受圧部64と、カムシャフト70の軸心Loと、の距離をWd(図略)とする。また、カムシャフト70の軸心Loと押圧部Idとの距離をW4(図略)とする。当該距離Wdと距離W4との関係は、図1に示す第1モードにおいてはW4≦Wdであり、図2に示す第2モードにおいてはW4>Wdである。したがって、押圧部Idは、図2に示す第2モードにおいて第4バルブVdの受圧部64を押圧し、図1に示す第1モードにおいては第4バルブVdの受圧部64を押圧しない。
【0047】
以下、実施例1の流体用バルブ装置の動作を説明する。
【0048】
(第1モード)
先ず、図1に示す第1モードでは、開閉弁駆動部7の押圧部Iaが第1バルブVaの受圧部64を押圧し、押圧部Ibが第2バルブVbの受圧部64を押圧し、押圧部Icが第3バルブVcの受圧部64を押圧せず、かつ、押圧部Idが第4バルブVdの受圧部64を押圧しない。したがって、第1モードにおいて、開閉弁駆動部7は第1バルブVa及び第2バルブVbを開き、第3バルブVc及び第4バルブVdを閉じる。
【0049】
したがって、当該第1モードにおいて、実施例1の流体用バルブ装置には、第1流入路31→第1容積室11→第1流出路32の順に流体が流通する第1経路fr1と、第2流入路33→第2容積室12→第2流出路34の順に流体が流通する第2経路fr2と、が形成される。
【0050】
(第2モード)
ステッピングモータにより開閉弁駆動部7を回転駆動することで、実施例1の流体用バルブ装置は第1モードから第2モードに切り替えられる。
図2に示す第2モードでは、開閉弁駆動部7の押圧部Iaが第1バルブVaの受圧部64を押圧せず、押圧部Ibが第2バルブVbの受圧部64を押圧せず、押圧部Icが第3バルブVcの受圧部64を押圧し、かつ、押圧部Idが第4バルブVdの受圧部64を押圧する。したがって、第2モードにおいて、開閉弁駆動部7は第1バルブVa及び第2バルブVbを閉じ、第3バルブVc及び第4バルブVdを開く。
【0051】
ところで、図1に示す第1モードにおいて、第2バルブVbが開かれているときには、第2バイパス筒46の周壁と第2流入筒43の周壁とを貫通する貫通穴39が第2バルブVbの弁体61によって閉じられる。
流体用バルブ装置が第1モードから第2モードに切り替えられ、第2バルブVbが閉じられると、第2バルブVbの弁体61が位置変化することで、当該貫通穴39が開かれる。このため、第2モードにおいては第2流入路33と第2バイパス36とが連絡する。
【0052】
したがって、当該第2モードにおいて、実施例1の流体用バルブ装置には、第1流入路31→第1容積室11→第2容積室12→第2流出路34の順に流体が流通する第3経路fr3と、第2流入路33→第2バイパス36→第3容積室13→第3バイパス37→第1流出路32の順に流体が流通する第4経路fr4と、が形成される。
【0053】
以下、実施例1の流体用バルブ装置を具備する車両用冷却システムについて説明する。当該車両用冷却システムを実施例1の車両用冷却システムと称する。
図3に示すように、実施例1の車両用冷却システムは、実施例1の流体用バルブ装置VSに加えて、クーラント流路r、バッテリB、モータ・インバータM1、モータ・インバータM2、チラーC、ラジエータR、輸液ポンプP1及び輸液ポンプP2を有する。
【0054】
このうちクーラント流路rは、バッテリBと流体用バルブ装置VSとを接続する流路r1、流体用バルブ装置VSとチラーCとを接続する流路r2、チラーCと輸液ポンプP1を接続する流路r3、輸液ポンプP1とバッテリBとを接続する流路r4、モータ・インバータM1とラジエータRとを接続する流路r5、ラジエータRと流体用バルブ装置VSとを接続する流路r6、流体用バルブ装置VSと輸液ポンプP2とを接続する流路r7、輸液ポンプP2とモータ・インバータM1とを接続する流路r8、ラジエータRとモータ・インバータM2とを接続する流路r9、及び、モータ・インバータM2とラジエータRとを接続する流路r10を有する。なお、流路r10については、より正確には、モータ・インバータM1とラジエータRとを接続する流路r5に接続される。
【0055】
なお、流路r1は流体用バルブ装置VSの第1流入路31に接続され、流路r2は流体用バルブ装置VSの第1流出路32に接続され、流路r6は流体用バルブ装置VSの第2流入路33に接続され、かつ、流路r7は流体用バルブ装置VSの第2流出路34に接続される。
【0056】
実施例1の流体用バルブ装置VSが第1モードにあるときの、実施例1の車両用冷却システムにおけるクーラントの流通経路を説明する。
【0057】
図1に示す第1モードにある流体用バルブ装置VSには、第1流入路31→第1容積室11→第1流出路32の順に流体が流通する第1経路fr1と、第2流入路33→第2容積室12→第2流出路34の順に流体が流通する第2経路fr2と、が形成される。
既述したように、第1流入路31には車両用冷却システムの流路r1が接続され、第1流出路32には車両用冷却システムの流路r2が接続され、第2流入路33には車両用冷却システムの流路r6が接続され、かつ、第2流出路34には車両用冷却システムの流路r7が接続される。したがって、このとき流体用バルブ装置VSは、第1経路fr1によって流路r1と流路r2とを連絡し、第2経路fr2によって流路r6と流路r7とを連絡する。
【0058】
したがって、図3中の黒矢印で示すように、第1モードにおいては、バッテリBを通過する際にバッテリBを冷却して温められたクーラントは、流路r1→流体用バルブ装置VS→流路r2の順に流通してチラーCに流入する。そして、チラーCで冷却されたクーラントは、流路r3→輸液ポンプP1→流路r4の順に流通してバッテリBに戻される。
【0059】
また、第1モードにおいて、モータ・インバータM1を冷却して温められたクーラントは、流路r5を通じてラジエータRに流入する。また、モータ・インバータM2を冷却して温められたクーラントは、流路r10→流路r5の順に流通してラジエータRに流入する。ラジエータRで冷却されたクーラントの一部は、流路r6→流体用バルブ装置VS→流路r7→輸液ポンプP2→流路r8の順に流通してモータ・インバータM1に戻される。ラジエータRで冷却されたクーラントの残部は、流路r9を通じてモータ・インバータM2に戻される。
【0060】
長時間連続して運転した場合や外気温が高い場合などには、モータ・インバータの温度が高くなり、ラジエータだけではモータ・インバータを充分に冷却し難くなる。図3に示す車両用冷却システムでは、このような場合に、ステッピングモータを駆動して、流体用バルブ装置VSを図1に示す第1モードから図2に示す第2モードに切り替える。
【0061】
図2に示す第2モードにある流体用バルブ装置VSには、第1流入路31→第1容積室11→第2容積室12→第2流出路34の順に流体が流通する第3経路fr3と、第2流入路33→第2バイパス36→第3容積室13→第3バイパス37→第1流出路32の順に流体が流通する第4経路fr4と、が形成される。
したがって、図4に示すように、このとき流体用バルブ装置VSは、第3経路fr3によって流路r1と流路r7とを連絡し、第4経路fr4によって流路r6と流路r2とを連絡する。
【0062】
図4中の白矢印で示すように、第2モードにおいては、バッテリBを冷却して温められたクーラントは、流路r1→流体用バルブ装置VS→流路r7→輸液ポンプP2→流路r8→と流通し、モータ・インバータM1に流入する。そして、モータ・インバータM1を冷却して更に温められたクーラントは、流路r5を通じてラジエータRに流入し、ラジエータRにより冷却される。ラジエータR1で冷却されたクーラントの一部は、更に流路r6→流体用バルブ装置VS→流路r2を流通してチラーCに流入し、チラーCによって更に冷却される。チラーで冷却されたクーラントは、流路r3→輸液ポンプP1→流路r4の順に流通してバッテリBに戻される。
【0063】
なお、第2モードにおいてモータ・インバータM2を通過した温かいクーラントは、流路r10→流路r5の順に流通してラジエータRに流入して冷却される。そして、当該ラジエータRにて、モータ・インバータM2を通過したクーラントとモータ・インバータM1を通過したクーラントとが合流し、その一部は流路r6を経てチラーCに向かい、チラーCによって更に冷却される。他の一部は流路r9を通じてモータ・インバータM2に戻される。このように、第2モードでは、車両用冷却システムに流通するクーラントの大部分が、チラーCによって冷却される。また、全てのクーラントはラジエータRに流入するため、チラーCを通過したクーラントと、チラーCを通過せずモータ・インバータM2に戻されたクーラントとが、ラジエータRで混ざり合うか、又は、熱交換する。このため、第2モードでは、全てのクーラントが直接的又は間接的にチラーCで冷却され、その結果、モータ・インバータM1及びモータ・インバータM2が充分に冷却される。
【0064】
図1及び図2に示すように、実施例1の流体用バルブ装置は、実質的な流体の流路として、第1流入路31、第1流出路32、第2流入路33、第2流出路34、第1容積室11及び第2容積室12を有し、必要に応じて、これらの流路を、第3容積室13、第1バイパス35、第2バイパス36、又は、第3バイパス37によって適宜連絡するものである。このことにより、実施例1の流体用バルブ装置においては、流路の数や容積の総計を低減でき、かつ、デッドスペースを低減できるために、小型化可能である。また、実施例1の流体用バルブ装置では、流体の流路の一部である第1容積室11~第3容積室13に第1バルブVa~第4バルブVdを内蔵し、これらをユニット化している。このことも、流体用バルブ装置の小型化に寄与する。
【0065】
なお、本発明の流体用バルブ装置において、開閉弁駆動部7は、バルブ部6、本体部1及び流路部3と別体であっても良いし、ユニット化されていても良い。しかし、流体用バルブ装置を小型化することを考慮すると、これらをユニット化するのが好ましい。本体部1、流路部3、バルブ部6及び開閉弁駆動部7をユニット化する場合、バルブ部6及び開閉弁駆動部7は、本体部1の内部に配設するのが好ましい。
【0066】
実施例1の流体用バルブ装置においては、バルブ部6に含まれる第1バルブVa~第4バルブVdとしてポペット式バルブを用いたが、本発明の流体用バルブ装置におけるバルブ部6は、実施例1の第1バルブVa~第4バルブVdに限定されず、例えば、電磁弁等であっても良い。
【0067】
なお、実施例1の流体用バルブ装置において第1バルブVa~第4バルブVdとして用いたポペット式バルブは、弁体が弁座シート面から直角方向に移動する形式のバルブである。この種のバルブは、簡単な構造であり、かつ、シール性及び動作の信頼性に優れる。したがって、実施例1の流体用バルブ装置では、第1バルブVa~第4バルブVdとしてポペット式バルブを用い、かつ、流体の流路を上記のように構成することで、シール性及び動作の信頼性を確保しつつ流体用バルブ装置の小型化を実現するといい得る。
【0068】
本発明の流体用バルブ装置において、第3バイパス筒47における第1流出路32側の端部と、第3バイパス筒47における第3容積室13側の端部の位置関係は、特に限定されず、実施例1の流体用バルブ装置とは異なる位置関係としても良い。例えば、輸液ポンプP1、P2等により第1流出路32と第3容積室13との間で流体圧差を適切に生じさせれば、これらの位置関係は特に考慮しなくても良い。また、例えば、第3バイパス筒47の内部に逆止弁を設けても良い。
【0069】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0070】
1:本体部 11:第1容積室
12:第2容積室 13:第3容積室
3:流路部 31:第1流入路
32:第1流出路 33:第2流入路
34:第2流出路 35:第1バイパス
36:第2バイパス 37:第3バイパス
6:バルブ部 Va:第1バルブ
Vb:第2バルブ Vc:第3バルブ
Vd:第4バルブ 61:弁体
63:弁座 62:付勢要素
7:開閉弁駆動部 Ia、Ib、Ic、Id:押圧部
VS:流体用バルブ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6