(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】電源一体型真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
F04D19/04 Z
(21)【出願番号】P 2019078660
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋悟
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017673(JP,A)
【文献】特開2006-250033(JP,A)
【文献】特開2018-109371(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172179(US,A1)
【文献】特開2018-141375(JP,A)
【文献】特開2015-048734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にポンプロータが配置されるポンプ筐体と、
前記ポンプ筐体の外表面に固定される電源筐体と、
ポンプ筐体側の配線と電源筐体側の配線とを接続するコネクタと、
前記ポンプ筐体の外表面に固定され、前記コネクタが固定されるコネクタ固定面を有するスペーサとを備
え、
前記スペーサのポンプ側固定面から前記コネクタ固定面までの厚さは、前記ポンプ筐体の外表面から前記電源筐体の内周面までの厚さ方向寸法以上に設定される、
電源一体型真空ポンプ。
【請求項2】
内部にポンプロータが配置されるポンプ筐体と、
前記ポンプ筐体の外表面に固定される電源筐体と、
ポンプ筐体側の配線と電源筐体側の配線とを接続するコネクタと、
前記ポンプ筐体の外表面に固定され、前記コネクタが固定されるコネクタ固定面を有するスペーサとを備え、
前記スペーサの熱伝導率は前記ポンプ筐体の熱伝導率よりも小さい、
電源一体型真空ポンプ。
【請求項3】
内部にポンプロータが配置されるポンプ筐体と、
前記ポンプ筐体の外表面に固定される電源筐体と、
ポンプ筐体側の配線と電源筐体側の配線とを接続するコネクタと、
前記ポンプ筐体の外表面に固定され、前記コネクタが固定されるコネクタ固定面を有するスペーサと、
前記ポンプ筐体と前記電源筐体との間に設けられる断熱材と、を備え、
前記スペーサのポンプ側固定面から前記コネクタ固定面までの厚さは、前記電源筐体の厚さと前記断熱材の厚さとの和以上に設定される、
電源一体型真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電源一体型真空ポンプにおいて、
前記スペーサと前記ポンプ筐体との間を封止する第1真空シールと、
前記スペーサと前記コネクタとの間を封止する第2真空シールとを備える、電源一体型真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源一体型真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ本体と電源部とを一体に構成した電源一体型ターボ分子ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の電源一体型ターボ分子ポンプでは、ポンプ本体側の配線が接続されるコネクタがポンプ本体の外表面に直接固定されている。電源部側は大気圧環境下であるがポンプベース側は真空環境であるため、コネクタにはハーメチックシールコネクタが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電源一体型ターボ分子ポンプにおいては、電源部をポンプ本体に固定する際に、ポンプ本体に固定されたコネクタに接続されている電源側配線の一部が電源部筐体からはみ出して、ポンプ本体やコネクタと電源部筐体との間に挟み込まれるという不具合が発生しやすかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による電源一体型真空ポンプは、内部にポンプロータが配置されるポンプ筐体と、前記ポンプ筐体の外表面に固定される電源筐体と、ポンプ筐体側の配線と電源筐体側の配線とを接続するコネクタと、前記ポンプ筐体の外表面に固定され、前記コネクタが固定されるコネクタ固定面を有するスペーサとを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電源部固定時における配線の挟み込みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、電源一体型ターボ分子ポンプの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、ポンプ本体と電源部との接続部の拡大図である。
【
図3】
図3は、電源部をポンプ本体側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、コネクタスペーサの平面図およびA-A断面図を示す図である。
【
図5】
図5は、コネクタに配線をハンダ付けする際の状態を示す図である。
【
図6】
図6は、ポンプ本体に電源部を固定する際の状況を示す図であり、コネクタスペーサを使用しない場合を示す。
【
図7】
図7は、ポンプ本体に電源部を固定する際の状況を示す図であり、コネクタスペーサを使用した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、電源一体型真空ポンプの一例である電源一体型ターボ分子ポンプ1の概略構成を示す断面図である。
図1に示す電源一体型ターボ分子ポンプ1は、ポンプ本体10と電源部20とがボルト30によって固定されることでそれらが一体となっている。
【0009】
ポンプ本体10は、ポンプ筐体を構成するポンプケーシング14およびポンプベース15を備えている。ポンプ本体10において、ポンプロータ11が取り付けられたシャフト12は、ポンプベース15に設けられた磁気軸受50A,50B,50Cによって非接触支持されている。シャフト12の浮上位置は、ポンプベース15に設けられたラジアル変位センサ51A,51Bおよびアキシャル変位センサ51Cによって検出される。なお、磁気軸受が作動していない状態では、シャフト12はメカニカルベアリング16,17によって支持される。
【0010】
シャフト12の下端には円形のロータディスク121が設けられており、このロータディスク121を上下に挟むように隙間を介して磁気軸受50Cの電磁石が設けられている。磁気軸受50Cによりロータディスク121を吸引することで、シャフト12がアキシャル方向に浮上する。
【0011】
ポンプロータ11には、回転軸方向に複数段の回転翼110が形成されている。上下に並んだ回転翼110の間には固定翼111がそれぞれ配設されている。これらの回転翼110と固定翼111とによりタービン翼段が構成される。各固定翼111は、スペーサ114によって上下に挟持されるように保持されている。スペーサ114は、固定翼111を保持する機能とともに、固定翼111間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。
【0012】
固定翼111の後段(図示下方)にはドラッグポンプ段を構成するネジステータ113が設けられており、ネジステータ113の内周面とポンプロータ11の円筒部112との間にはギャップが形成されている。ポンプロータ11と、スペーサ114によって保持された固定翼111とはポンプケーシング14内に納められている。ポンプベース15の外周には、ポンプベース15を所定温度に調整するためのヒータ19が設けられている。この温調は、ポンプ内に反応生成物が堆積するのを抑制するために行われる。
【0013】
電源部20は、ポンプ筐体であるポンプベース15の底面側にボルト固定されている。ポンプ本体10を駆動制御する電源部20には、図示は省略したが主制御部、磁気軸受制御部およびモータ制御部等を構成する電子部品が設けられており、それらの電子部品は電源部20の筐体内に収納されている。電源部20の筐体は、電源ケーシング201と、電源ケーシング201の上部開口を覆う冷却ジャケット202とにより構成される。ポンプベース15には、ポンプ側配線60と電源側配線61とを接続するコネクタ40が設けられている。コネクタ40の電源側配線61が接続される領域には、電源側配線61を一体に保持するためのモールド材63が施されている。
【0014】
図2は、コネクタ40による接続部分の拡大図である。なお、
図2では、
図1に示したモールド材63の図示を省略した。冷却ジャケット202は電源部20を冷却するためのものであり、冷却ジャケット202と温調が行われるポンプベース15との間には断熱板21が設けられている。断熱板21には、熱伝導率の小さな材料(例えば、セラミックスや樹脂材等)が用いられる。ポンプベース15には、冷却ジャケット202と対向する底面151にコネクタスペーサ41が固定されている。コネクタ40は、コネクタスペーサ41のコネクタ固定面411に固定されている。
【0015】
図2に示す例では、コネクタスペーサ41,冷却ジャケット202および断熱板21の厚さH1,H2,H3に関して、H1>H2+H3のように設定されている。厚さH1は、後述するようにH1≧H2+H3と設定するのが好ましい。このように設定することで、冷却ジャケット202の開口部202aから挿入されたコネクタスペーサ41のコネクタ固定面411は、冷却ジャケット202の内周面202bと同一面となるか、または、内周面202bから突出するようになる。コネクタスペーサ41とポンプベース15との間は真空シール62aにより封止され、コネクタ40とコネクタスペーサ41との間は真空シール62bにより封止されている。
【0016】
コネクタ40に関して、ポンプ側配線60が設けられるポンプ側空間は真空であり、電源側配線61が設けられる電源側空間は大気圧になっている。そのため、コネクタ40にはハーメチックシールコネクタが用いられる。コネクタ40は、フランジが形成されたシェル401内に封止材402が設けられ、その封止材402を貫通するように複数のコネクタピン403が設けられている。コネクタ40はフィードスルータイプのコネクタであって、ポンプ側配線60および電源側配線61はコネクタピン403に半田付けされる。コネクタ40のシェル401とコネクタスペーサ41との間には上述した真空シール62bが設けられる。
【0017】
図3は、電源部20をポンプ本体10側から見た平面図である。なお、
図3では断熱板21の形状を想像線(二点鎖線)で示した。電源部20の平面形状は8角形であり、電源ケーシング201の8角形状の開口部には8角形の冷却ジャケット202がボルト31により固定されている。冷却ジャケット202に形成された8か所のネジ穴202cは、冷却ジャケット202をポンプベース15に固定するボルト30(
図1,2参照)が螺合するネジ穴である。
【0018】
冷却ジャケット202には、冷媒を流すための配管203が埋設されている。二点鎖線で示した断熱板21は外形形状が8角形で、内側に円形孔21aが形成されている。すなわち、断熱板21は矩形の開口部202aを避けるように、冷却ジャケット202の周辺領域に設けられている。
【0019】
図4はコネクタスペーサ41の平面図およびA-A断面図を示す図である。平面図におけるコネクタスペーサ41の形状は、冷却ジャケット202の開口部202aと同様の四角形であり、ポンプ側配線60を通すための円形の貫通孔410が形成されている。コネクタ40が固定されるコネクタ固定面411には、コネクタ40をボルト固定するためのネジ穴415と、真空シール(Oリング)62bが配置されるシール面413とが形成されている。また、コネクタ固定面411の四隅には、コネクタスペーサ41をポンプベース15の底面151に固定するボルトが通るボルト孔414が形成されている。上述した厚さH1は、コネクタ固定面411からポンプ側固定面412までの高さ寸法である。
【0020】
(コネクタスペーサ41の効果)
本実施の形態では、コネクタ40をポンプベース15の底面151に直接固定せず、
図2に示すようにコネクタスペーサ41を介してコネクタ40を固定するようにした。それにより、コネクタ40の位置をポンプベース15の底面151から突出させることができ、電源部20とポンプベース15との間に電源側配線61を挟み込んでしまうという電源固定時における不具合の発生を防止することができる。
【0021】
図5~7は配線挟み込み防止効果を説明する図である。
図5は、コネクタ40に配線をハンダ付けする際の状態を示す図である。
図6,7はポンプベース15に電源部20を固定する際の状況を示す図であり、
図6はコネクタスペーサ41を使用しない場合を示す。なお、
図5~7では、
図1に示したモールド材63の図示を省略した。
【0022】
図5に示すように、コネクタ40のコネクタピン403にポンプ側配線60および電源側配線61をハンダ付けする場合には、ハンダ付け作業が楽に行えるようにポンプベース15および電源部20からポンプ側配線60および電源側配線61を引き出すようにする。ハンダ付け後は、コネクタ40をポンプベース15の底面151に固定する。その固定の際には、引き出されたポンプ側配線60を畳み込むようにしてポンプ本体内部に押し込む。
【0023】
次いで、電源部20をポンプベース15に固定する。この固定の際には、引き出された電源側配線61を電源筐体内に畳み込むように押し込んで、電源部20を二点鎖線で示すようにポンプベース15側に近づけて固定する。電源部20をポンプベース15側に近づける際に、
図6のように畳み込まれた電源側配線61の一部が冷却ジャケット202とポンプベース15との間に挟み込まれる場合がある。このような挟み込は冷却ジャケット202とポンプベース15との隙間から目視で確認することになるが、
図6に示すように冷却ジャケット202がポンプベース15に近づいた状態にならないと挟み込まれるか否かの判定ができない。
【0024】
開口部202aは冷却ジャケット202の外周面から離れた位置にあるので、
図6のように冷却ジャケット202とポンプベース15とが近づいた状態では、目視での確認が非常に難しく、挟み込みを見逃してしまう可能性が高い。電源側配線61が
図6に示すような状態になった場合、電源部20をポンプベース15に密着させたときに、符号Bで示す部分の配線は電源筐体内に引き込まれず冷却ジャケット202とポンプベース15との間に挟み込まれてしまう。
【0025】
一方、本実施の形態ではコネクタ40とポンプベース15との間にコネクタスペーサ41を配置しているので、電源部20をポンプベース15に固定した状態では、
図6のようにコネクタスペーサ41を使用しない場合に比べて、コネクタ40がコネクタスペーサ41の厚さH1の分だけ余計に電源筐体内部に入り込むことになる。そのため、
図7に示す状態において
図6の場合と同程度に電源側配線61が開口部202aから外側に出ていても、ポンプベース15に密着する状態まで電源部20を近づけたときに、符号Bで示す部分の電源側配線61は電源筐体内に引き込まれることになる。その結果、電源側配線61の挟み込みが防止される。
【0026】
また、電源部20とポンプベース15との隙間が
図6の場合に比べて大きいので、開口部202aから出ている電源側配線61を目視で容易に確認することができる。例えば、電源側配線61が
図7に示す場合よりもさらに長く開口部202aから外に出ている場合には、二点鎖線で示すように電源部20をポンプベース15に近づけた際に、外に出ている電源側配線61が完全に電源筐体内に引き込まれずに、一部が電源部20をポンプベース15に挟み込まれる危険がある。本実施の形態では、
図6のようにコネクタ40が開口部202aにほとんど挿入された状態において、電源部20とポンプベース15との隙間が従来の場合よりも大きい。そのため、電源側配線61が開口部202aから出ているのを容易に確認でき、電源部20の固定作業をやり直すことで電源側配線61の挟み込みを未然に防止することができる。
【0027】
ところで、ポンプベース15はヒータ19を用いた温調により70~80℃程度まで昇温される。本実施の形態では、コネクタスペーサ41を介してコネクタ40をポンプベース15に固定しているので、
図6のようにコネクタ40をポンプベース15に直接固定する場合に比べて、ポンプベース15からコネクタ40への熱伝達を低減することができ、コネクタ40の温度上昇を抑えることができる。コネクタピン403に流せる許容電流値はコネクタ温度が高くなるほど低下するが、コネクタスペーサ41を設けてコネクタ温度をより低く抑えることにより、コネクタ温度上昇による許容電流値の悪化を防止できる。また、コネクタ温度上昇によるコネクタ40の耐久性および寿命の低下も防止できる。
【0028】
コネクタスペーサ41には、一般的にアルミ材が用いられるポンプベース15よりも熱伝導率の低い金属材料(例えば、SUS材)が用いられるが、樹脂材等により形成しても良い。また、コネクタスペーサ41とポンプベース15との間に断熱材を配置することで、さらに熱伝達低減を図ることができる。なお、断熱材を配置する場合には、コネクタスペーサ41がポンプベース15と同様のアルミ材であっても熱伝達低減を図ることができる。
【0029】
さらに、コネクタ40をコネクタスペーサ41に固定した際に、ポンプ側配線60の一部をコネクタスペーサ41の貫通孔410に収納することができるので、ポンプ本体側の配線収納スペースを少なくすることが可能となる。
【0030】
また、
図6に示す構成の場合、ポンプベース15の底面151が冷却ジャケット202にかなり近づいた状態とならないと、コネクタ40が開口部202aに挿入される状態にならない。そのため、コネクタ40と開口部202aとの位置関係の確認が難しく、コネクタ40が冷却ジャケット202と干渉するおそれがある。一方、
図7のようにコネクタスペーサ41を用いる場合には、コネクタ40と開口部202aとの位置合わせ確認がしやすく、挿入の際にコネクタ40が開口部202aに干渉するのを防止することができる。さらに、コネクタスペーサ41が開口部202aに挿入され始めると、コネクタスペーサ41がガイドとして機能するので、挿入作業中にコネクタ40が開口部202aと干渉することは無い。このように、コネクタスペーサ41を設けたことによって、電源部固定作業の作業性向上が図れる。
【0031】
なお、
図1に示すように、コネクタピン403と電源側配線61との接続部分を含むようにモールド材63でモールドすることにより、電源側配線61がコネクタピン403から外れるのを防止することができるとともに、電源側配線61の全体が電源筐体方向に方向付けされる。その結果、電源側配線61の一部が
図7のように挟み込まれるのを防止することができる。
【0032】
(変形例)
上述した実施の形態では、コネクタ40は、
図2に示すようにコネクタピン403の真空側にポンプ側配線60が接続されると共に大気圧側に電源側配線61が接続される、フィードスルー方式のコネクタであった。しかし、コネクタ40の構成はこのような構成に限定されず、
図8に示すような着脱可能なレセプタクル421とプラグ422とで構成されるコネクタ42であっても良い。その場合、レセプタクル421がコネクタスペーサ41に固定される。
【0033】
また、一つのコネクタ40を、弱電系(センサ信号など)の配線を接続するためのコネクタと、強電系(モータ電流、電磁石電流)の配線を接続するためのコネクタとに分けても良い。
【0034】
上述した複数の例示的な実施の形態および変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0035】
[1]一態様に係る電源一体型真空ポンプは、内部にポンプロータが配置されるポンプ筐体と、前記ポンプ筐体の外表面に固定される電源筐体と、ポンプ筐体側の配線と電源筐体側の配線とを接続するコネクタと、前記ポンプ筐体の外表面に固定され、前記コネクタが固定されるコネクタ固定面を有するスペーサとを備える。
【0036】
図5~7で説明したように、コネクタスペーサ41の分だけコネクタ40のポンプベース15の底面151からの高さが増加するので、開口部202aを通したコネクタ40の電源筐体への挿入量が増加する。その結果、電源筐体組付け時における電源側配線61の挟み込みの発生を低減することができる。さらに、コネクタ40をコネクタスペーサ41に固定した際に、ポンプ側配線60の一部をコネクタスペーサ41の内部空間である貫通孔410に収納することができるので、ポンプ本体側の配線収納スペースを少なくすることが可能となる。
【0037】
また、
図2に示すように、スペーサとしてのコネクタスペーサ41を設けたことによりポンプ筐体であるポンプベース15からの熱伝達が低減され、コネクタ40の温度上昇を抑えることができる。その結果、コネクタ40の電流容量の低下およびコネクタ耐久性の低下を防止することができる。
【0038】
[2]上記[1]に記載の電源一体型真空ポンプにおいて、前記スペーサのポンプ側固定面から前記コネクタ固定面までの厚さは、前記ポンプ筐体の外表面から前記電源筐体の内周面までの厚さ方向寸法以上に設定される。
【0039】
このように設定すると、
図2のようにコネクタ固定面411は電源筐体の一例である冷却ジャケット202の内周面202bと同一面、または、内周面202bよりも電源筐体内側に突出した状態となる。その結果、
図7の符号Bで示すような配線の飛び出しは、電源部20をポンプベース15に密着させたときに解消されることになり、電源側配線61の挟み込みを防止する効果が向上する。
【0040】
[3]上記[1]または[2]に記載の電源一体型真空ポンプにおいて、前記スペーサの熱伝導率は前記ポンプ筐体の熱伝導率よりも小さい。
【0041】
コネクタスペーサ41をコネクタ40とポンプベース15との間に介在させることにより、コネクタスペーサ41の熱抵抗によりコネクタスペーサ41を設けない場合に比べてコネクタ40の温度を下げることができる。さらに、上記のようにコネクタスペーサ41の熱伝導率をコネクタスペーサ41が固定されるポンプベース15の熱伝導率よりも小さくすることで、コネクタ40の温度をより低くすることができる。その結果、コネクタ40の電流容量低下やコネクタ耐久性低下を防止する効果がより高まる。
【0042】
[4]上記[1]から[3]までのいずれか一項に記載の電源一体型真空ポンプにおいて、前記スペーサと前記ポンプ筐体との間を封止する第1真空シールと、前記スペーサと前記コネクタとの間を封止する第2真空シールとを備える。
【0043】
図2に示すように、コネクタスペーサ41とポンプベース15との間を封止する真空シール62aと、コネクタスペーサ41とコネクタ40との間を封止する真空シール62bとを設けることで、ポンプ電源側からポンプ筐体側への空気の浸入を確実に防止することができ、ポンプ性能への悪影響を防止することができる。
【0044】
[5]上記[1]から[4]までのいずれか一項に記載の電源一体型真空ポンプにおいて、前記ポンプ筐体と前記電源筐体との間に設けられる断熱材を備え、前記スペーサのポンプ側固定面から前記コネクタ固定面までの厚さは、前記電源筐体の厚さと前記断熱材の厚さとの和以上に設定される。
【0045】
図2に示すように、ポンプ筐体と電源筐体との間の断熱材として断熱板21を設けることでポンプベース15から電源部20への熱侵入を低減できる。その際に、コネクタスペーサ41のポンプ側固定面412からコネクタ固定面411までの厚さH1を、電源筐体の一例である冷却ジャケット202の厚さH2と断熱板21の厚さH3との和以上、すなわち、H1≧H2+H3に設定する。そのように設定することで、コネクタスペーサ41のコネクタ固定面411は、冷却ジャケット202の内周面202bと同一面となるか、または、内周面202bから突出するようになり、電源側配線61の挟み込みを防止することができる。
【0046】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、
図1に示したように電源部20をポンプベース15の底面151に固定する構成を例に説明したが、ポンプベース15の側面に電源部20を固定する構造の場合にも、同様にコネクタスペーサ41を適用することができる。また、電源一体型ターボ分子ポンプに限らず、電源一体型の真空ポンプにも同様に適用することができる。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…電源一体型ターボ分子ポンプ、10…ポンプ本体、11…ポンプロータ、14…ポンプケーシング、15…ポンプベース、20…電源部、21…断熱板、40,42…コネクタ、41…コネクタスペーサ、60…ポンプ側配線、61…電源側配線、62a,62b…真空シール、201…電源ケーシング、202…冷却ジャケット、202a…開口部、411…コネクタ固定面、412…ポンプ側固定面