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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/46 20060101AFI20220817BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01R13/46 B
H01R4/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019127519
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012846
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】二戸 彩香
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-216257(JP,A)
【文献】特開2018-73652(JP,A)
【文献】特開平1-141212(JP,A)
【文献】特開2000-104719(JP,A)
【文献】特開2014-238956(JP,A)
【文献】特開2015-60680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/72
H01R 4/34
H01R 9/00
H01R 9/22- 9/24
F16B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに装着された接続端子と、
ナットが圧入方向に沿って圧入されて収容されるナット収容部と、を有し、
前記ナット収容部は、
前記コネクタハウジングを前記圧入方向に貫通する収容孔と、
前記収容孔から露出する前記接続端子の端面と、を有し、
前記収容孔は、前記圧入方向から見た形状が四角形をなす貫通孔と、前記貫通孔の四隅の角部に形成された凹部とを有し、
前記凹部は、前記貫通孔の外形を局所的に広げるように前記貫通孔の外側に向かって凹むように形成されているコネクタ。
【請求項2】
前記収容孔の外形をなす四辺の各辺は、直線状に延びる第1直線部と、前記第1直線部の両端部から前記貫通孔の外側に向かって前記第1直線部と交差する方向に延びる2本の延長部と、前記各延長部の端部から前記第1直線部と平行に延びる第2直線部と、を有し、
前記凹部は、前記四辺のうちの隣り合う二辺の前記延長部及び前記第2直線部によって構成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1直線部の長さL1は、前記各延長部及び前記各第2直線部の長さのうち前記第1直線部と平行な方向に沿う長さL2よりも長く形成されている請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1直線部の長さL1は、前記長さL2を2つ合わせた長さL3よりも長く形成されている請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記長さL1に対する前記長さL3の比L3/L1が0.3~0.7の範囲である請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1直線部を構成する前記貫通孔の内壁面は平坦面に形成されている請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ナット収容部に収容された前記ナットを覆うナットカバーを更に有し、
前記ナットカバーは、前記圧入方向とは反対方向への前記ナットの移動を規制する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記コネクタハウジングは、前記圧入方向と交差する方向に延びるガイド溝を有し、
前記ナットカバーは、前記ガイド溝に摺動可能なレール部を有し、
前記ナットカバーは、前記コネクタハウジングとは別部品に形成されている請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記ナット収容部は複数個設けられており、
複数の前記ナット収容部が1つの前記ナットカバーによって覆われている請求項8に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタの有する合成樹脂製のハウジングにナット収容部が設けられ、そのナット収容部に金属製のナットが圧入されて固定されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のナット収容部では、その内壁面に圧入方向に延びるリブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-296815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ナット収容部の内壁面に形成されたリブは、金属製のナットを圧入する際に擦れて削られるおそれがある。すると、削り屑がナット収容部の底面に溜まり、ナットが傾いたり浮き上がったりして、ナットの固定位置精度が低下するおそれがあった。但し、リブを形成しない場合には、寸法誤差等に起因してナットがナット収容部に収容できなくなるおそれがあった。
【0005】
本開示の目的は、ナットの固定位置精度の低下を抑制できるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、コネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着された接続端子と、ナットが圧入方向に沿って圧入されて収容されるナット収容部と、を有し、前記ナット収容部は、前記コネクタハウジングを前記圧入方向に貫通する収容孔と、前記収容孔から露出する前記接続端子の端面と、を有し、前記収容孔は、前記圧入方向から見た形状が四角形をなす貫通孔と、前記貫通孔の四隅の角部に形成された凹部とを有し、前記凹部は、前記貫通孔の外形を局所的に広げるように前記貫通孔の外側に向かって凹むように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタによれば、ナットの固定位置精度の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態の導電路を示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態のコネクタを示す概略斜視図である。
図3図3は、一実施形態のコネクタを示す概略分解斜視図である。
図4図4は、一実施形態のコネクタを示す概略分解斜視図である。
図5図5は、一実施形態のコネクタを示す概略断面図である。
図6図6(a)は、一実施形態のナット収容部を示す概略平面図であり、図6(b)は、一実施形態のナット収容部の一部を拡大した拡大平面図である。
図7図7は、一実施形態のコネクタの一部を示す概略分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
[1]本開示のコネクタは、コネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに装着された接続端子と、ナットが圧入方向に沿って圧入されて収容されるナット収容部と、を有し、前記ナット収容部は、前記コネクタハウジングを前記圧入方向に貫通する収容孔と、前記収容孔から露出する前記接続端子の端面と、を有し、前記収容孔は、前記圧入方向から見た形状が四角形をなす貫通孔と、前記貫通孔の四隅の角部に形成された凹部とを有し、前記凹部は、前記貫通孔の外形を局所的に広げるように前記貫通孔の外側に向かって凹むように形成されている。
【0010】
この構成によれば、貫通孔の四隅の角部に、その貫通孔の外形を局所的に広げるように貫通孔の外側に向かって凹む凹部が形成される。この凹部を形成したことによって、貫通孔の四隅の空間を広げることができる。これにより、収容孔に圧入されるナットの角部と収容孔の角部(つまり、凹部の角部)との間に隙間を形成することができる。この隙間によって、寸法誤差や熱膨張差による寸法のばらつきを吸収することができるため、収容孔にナットを好適に収容することができる。
【0011】
ここで、従来のナット収容部において内壁面にリブを設けない場合には、ナットの角部の丸みの半径がナット収容部の角部の丸みの半径よりも小さくなると、ナットの角部がナット収容部の角部に干渉してしまう。このため、ナット収容部にナットを圧入する際に、削り屑が発生するという問題があった。
【0012】
これに対し、上記構成では、ナットの角部と収容孔の角部との間に隙間が形成されるため、例えばナットの角部の丸みの半径が収容孔の角部の丸みの半径よりも小さい場合であっても、ナットの角部が収容孔の角部に干渉することを抑制できる。この結果、収容孔にナットを圧入する際に、削り屑が発生することを抑制できる。したがって、削り屑がナット収容部の底面に溜まることを抑制できるため、ナットの固定位置精度が低下することを好適に抑制できる。
【0013】
[2]前記収容孔の外形をなす四辺の各辺は、直線状に延びる第1直線部と、前記第1直線部の両端部から前記貫通孔の外側に向かって前記第1直線部と交差する方向に延びる2本の延長部と、前記各延長部の端部から前記第1直線部と平行に延びる第2直線部と、を有し、前記凹部は、前記四辺のうちの隣り合う二辺の前記延長部及び前記第2直線部によって構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、収容孔の外形をなす四辺のうち隣り合う二辺の延長部及び第2直線部によって構成される凹部によって、貫通孔の四隅の空間を広げることができる。また、第2直線部を第1直線部と平行に延びるように形成したため、収容孔の外形が大きくなることを抑制できる。
【0015】
[3]前記第1直線部の長さL1は、前記各延長部及び前記各第2直線部の長さのうち前記第1直線部と平行な方向に沿う長さL2よりも長く形成されていることが好ましい。
この構成によれば、凹部の内壁面を構成する延長部及び第2直線部よりも、貫通孔の内壁面を構成する第1直線部が長く形成される。これにより、ナットの側面と密着する第1直線部の長さを長く形成できるため、ナットの側面と収容孔の内壁面との接触面積を大きくできる。このため、ナット収容部内においてナットががたつくことを抑制できる。
【0016】
[4]前記第1直線部の長さL1は、前記長さL2を2つ合わせた長さL3よりも長く形成されていることが好ましい。この構成によれば、ナットの側面と密着する第1直線部の長さをより長く形成できる。これにより、ナットの側面と収容孔の内壁面との接触面積をより大きくできるため、ナット収容部内においてナットががたつくことを好適に抑制できる。
【0017】
[5]前記長さL1に対する前記長さL3の比L3/L1が0.3~0.7の範囲であることが好ましい。
ここで、比L3/L1が小さくなり過ぎると、凹部の形成範囲が小さくなるため、ナットの角部が凹部の角部に干渉しやすくなる。一方、比L3/L1が大きくなり過ぎると、第1直線部が短くなり、収容孔の内壁面とナットの側面との接触面積が小さくなる。このため、比L3/L1が大きくなり過ぎると、ナット収容部内においてナットががたつき易くなる。
【0018】
これに対し、上記構成では、比L3/L1を0.3~0.7の範囲に設定した。これにより、ナットの角部と収容孔の角部とが干渉することを抑制しつつも、ナット収容部内においてナットががたつくことを好適に抑制できる。
【0019】
[6]前記第1直線部を構成する前記貫通孔の内壁面は平坦面に形成されていることが好ましい。この構成によれば、ナットの側面と密着する貫通孔の内壁面が平坦面に形成されるため、ナットの側面と貫通孔の内壁面との接触面積を大きくできる。これにより、ナット収容部内においてナットががたつくことを好適に抑制できる。
【0020】
[7]前記ナット収容部に収容された前記ナットを覆うナットカバーを更に有し、前記ナットカバーは、前記圧入方向とは反対方向への前記ナットの移動を規制することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、ナットカバーによって、圧入方向とは反対方向にナットが移動することが規制される。これにより、ナット収容部から脱離する方向にナットが移動することをナットカバーによって規制できるため、ナットがナット収容部から脱離することを好適に抑制できる。
【0022】
[8]前記コネクタハウジングは、前記圧入方向と交差する方向に延びるガイド溝を有し、前記ナットカバーは、前記ガイド溝に摺動可能なレール部を有し、前記ナットカバーは、前記コネクタハウジングとは別部品に形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、ナットカバーがコネクタハウジングとは別部品に形成されているため、ナット収容部にナットを収容した後に、コネクタハウジングに対してナットカバーを取り付けることができる。また、コネクタハウジングのガイド溝にナットカバーのレール部を摺動させながら、コネクタハウジングに対してナットカバーを取り付けることができる。これにより、ナットカバーの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0024】
[9]前記ナット収容部は複数個設けられており、複数の前記ナット収容部が1つの前記ナットカバーによって覆われていることが好ましい。
この構成によれば、1つのナットカバーによって、複数のナット収容部を覆うことができる。このため、複数のナット収容部の各々に個別のナットカバーを取り付ける場合に比べて、ナットカバーの取り付け作業を簡略化することができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。本明細書における「平行」や「直交」は、厳密に平行や直交の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね平行や直交の場合も含まれる。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
(導電路10の全体構成)
図1に示す導電路10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。導電路10は、ワイヤハーネス20と、ワイヤハーネス20の両端部と接続される一対の機器側のコネクタ30とを有している。導電路10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両の前部に設置されたインバータ11と、インバータ11よりも車両の後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。導電路10は、例えば、車両の床下を通るように配索されている。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0027】
(ワイヤハーネス20の構成)
ワイヤハーネス20は、複数(本実施形態では2本)の電線21と、電線21の両端部に取り付けられた一対の電線側コネクタ22と、複数の電線21を一括して包囲する保護管23とを有している。一方の電線側コネクタ22はインバータ11に取り付けられた機器側のコネクタ30に接続され、他方の電線側コネクタ22は高圧バッテリ12に取り付けられた機器側のコネクタ30に接続されている。保護管23としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。保護管23は、例えば、内部に収容する電線21を飛翔物や液体から保護する。
【0028】
各コネクタ30は、インバータ11及び高圧バッテリ12等の電気機器が有する導電性のケース15に固定される。各コネクタ30には、各電線側コネクタ22が嵌合され、各電線側コネクタ22が電気的に接続される。ケース15の材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。
【0029】
(ケース15の構成)
図2に示すように、ケース15は、箱状をなすケース本体16と、ケース本体16に一体に設けられ、ケース本体16の外部に突出した筒状をなす装着部17とを有している。装着部17は、装着部17を貫通する装着孔17Xを有することにより筒状に形成されている。装着孔17Xは、ケース本体16の内部空間S1とケース本体16の外部空間とを連通するように形成されている。装着孔17Xは、例えば、貫通方向から見た形状が長手方向と短手方向とを有する扁平形状に形成されている。本明細書において、「扁平形状」には、例えば、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。なお、本明細書における「長方形」は、長辺と短辺を有するものであり、正方形を除いたものである。また、本明細書における「長方形」には、稜部を面取りした形状や、稜部を丸めた形状も含まれる。本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる形状である。本実施形態の装着孔17Xは、貫通方向から見た形状が長円形状に形成されている。また、本実施形態の装着部17は、略長円筒状に形成されている。
【0030】
コネクタ30は、装着部17の姿勢に応じて任意の向きでケース15に対して装着可能であるが、本実施形態では、装着孔17Xの貫通方向を前後方向としてコネクタ30の構造について説明する。なお、各図面中のXYZ軸におけるX軸はコネクタ30の前後方向を表し、Y軸はX軸と直交するコネクタ30の左右方向(幅方向)を表し、Z軸はXY平面に対して直交するコネクタ30の上下方向(高さ方向)を表している。以下の説明では、便宜上、X軸に沿って延びる方向を前後方向Xと称し、Y軸に沿って延びる方向を左右方向Yと称し、Z軸に沿って延びる方向を上下方向Zと称する。また、以下の説明では、図2におけるX矢印方向を前方、Y矢印方向を左方、Z矢印方向を上方とする。
【0031】
ケース15は、コネクタ30をケース15に固定するための固定部18を有している。固定部18は、例えば、ケース本体16の外部に突出するように形成されている。固定部18は、例えば、装着部17と一体に形成されている。固定部18は、例えば、装着部17と左右方向Yに並んで設けられている。本実施形態の固定部18は、装着部17の右方に設けられている。固定部18には、ボルト固定孔18Xが形成されている。ボルト固定孔18Xは、例えば、前後方向Xに延びるように形成されている。
【0032】
(コネクタ30の構成)
図3及び図4に示すように、コネクタ30は、複数(本実施形態では、2個)の金属製の接続端子40と、接続端子40が装着されたコネクタハウジング50と、コネクタハウジング50の外周面に取り付けられたゴムリング76及びゴムリング77とを有している。図4に示すように、コネクタ30は、複数(本実施形態では、2個)のナット80と、ナットカバー90とを有している。
【0033】
(接続端子40の構成)
各接続端子40は、雄型端子部41と、端子接続部42とを有している。各接続端子40は、例えば、雄型端子部41と端子接続部42とが前後方向Xに連なって一体に形成された単一部品である。各接続端子40の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。各接続端子40は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施してもよい。
【0034】
雄型端子部41は、例えば、円柱状に形成されている。雄型端子部41は、例えば、端子接続部42から後方に向かって延びるように形成されている。雄型端子部41は、例えば、図1に示した電線側コネクタ22に設けられる雌型端子(図示略)を介して電線21と電気的に接続される。
【0035】
端子接続部42は、例えば、平板状に形成されている。端子接続部42は、例えば、雄型端子部41から前方に向かって延びるように形成されている。端子接続部42は、端子接続部42を板厚方向(ここでは、上下方向Z)に貫通する貫通孔43を有している。貫通孔43は、例えば、貫通方向(ここでは、上下方向Z)から見た形状が円形状に形成されている。
【0036】
図3に示すように、端子接続部42は、例えば、ケース本体16(図2参照)の内部空間S1において、相手端子100と電気的に接続される。ここで、相手端子100は、例えば、図1に示したインバータ11や高圧バッテリ12等の電気機器の接続端子である。相手端子100は、例えば、平板状に形成されたバスバである。相手端子100は、例えば、板厚方向(ここでは、上下方向Z)に貫通する貫通孔101を有している。貫通孔101は、例えば、貫通方向(ここでは、上下方向Z)から見た形状が円形状に形成されている。各接続端子40は、ボルトB1及びナット80によるボルト締結によって相手端子100と接続されている。具体的には、各端子接続部42の貫通孔43と各相手端子100の貫通孔101とが上下方向Zに重なるように、相手端子100の上面に端子接続部42が設けられる。そして、貫通孔43及び貫通孔101に挿通されるボルトB1の軸部にナット80が締結されることにより、端子接続部42と相手端子100とが接続されている。これにより、接続端子40と相手端子100とが電気的に接続される。なお、各相手端子100の材料としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属材料を用いることができる。各相手端子100は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、銀メッキ、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施してもよい。
【0037】
(コネクタハウジング50の構成)
図2に示すように、コネクタハウジング50は、例えば、前後方向Xに延びる略筒状をなしている。コネクタハウジング50は、例えば、上下方向Zよりも左右方向Yに長い扁平形状に形成されている。コネクタハウジング50は、ケース15の外側に配置されるフード部51と、ケース15の装着孔17Xに挿入される挿入部52とを有している。コネクタハウジング50は、例えば、フード部51と挿入部52とが前後方向Xに連なって一体に形成された単一部品である。コネクタハウジング50の材料としては、例えば、合成樹脂などの絶縁材料を用いることができる。
【0038】
(フード部51の構成)
フード部51は、例えば、上下方向Zよりも左右方向Yに長い扁平形状に形成されている。フード部51は、例えば、その外周形状が長円形状をなし、前後方向に延びた筒状をなしている。本実施形態のフード部51は、長円筒状に形成されている。フード部51の前端の外周面には、フード部51の径方向外側に張り出した固定部53が形成されている。固定部53は、例えば、概略板状に形成されている。固定部53には、固定部53の板厚方向(ここでは、前後方向X)に貫通するボルト挿通孔53Xが形成されている。
【0039】
図5に示すように、ボルト挿通孔53X内には、固定ボルトB2が挿通可能な金属製のカラー54が組み付けられている。コネクタハウジング50は、固定部53のボルト挿通孔53Xとケース15の固定部18に設けられたボルト固定孔18Xとに固定ボルトB2をねじ込むことにより、ケース15に固定される。このため、コネクタハウジング50の固定部53は、ケース15の外側に配置される。
【0040】
フード部51の固定部53よりも後方の外周面には、例えば、ゴムリング76が収容される収容溝51Xが形成されている。収容溝51Xは、例えば、フード部51の外周面の周方向全周にわたって形成されている。収容溝51Xには、ゴムリング76が嵌合されている。ゴムリング76は、例えば、コネクタ30と電線側コネクタ22(図1参照)とを嵌合させた際に、電線側コネクタ22の有する金属製のシールドシェルの内周面に周方向全周にわたって密着し、フード部51の外周面と電線側コネクタ22の内周面との間を防水する。
【0041】
(挿入部52の構成)
挿入部52は、例えば、フード部51の前端から前方に突出して形成されている。挿入部52は、筒状をなす筒部55と、筒部55よりも前方に突出して形成された端子保持部56とを有している。
【0042】
(筒部55の構成)
筒部55は、例えば、装着孔17Xの内周面に対応した形状の外周面を有する筒状に形成されている。筒部55は、例えば、その外周形状が長円形状をなし、前後方向に延びた筒状をなしている。本実施形態の筒部55は、長円筒状に形成されている。
【0043】
筒部55の外周面には、例えば、ゴムリング77が収容される収容溝55Xが形成されている。収容溝55Xは、例えば、筒部55の外周面の周方向全周にわたって形成されている。収容溝55Xには、ゴムリング77が嵌合されている。ゴムリング77は、挿入部52を装着孔17Xに嵌合させた際に、装着孔17Xの内周面に周方向全周にわたって密着し、コネクタハウジング50の外周面とケース15の内周面との間を防水する。
【0044】
(端子保持部56の構成)
端子保持部56は、例えば、筒部55の奥壁に設けられている。端子保持部56は、例えば、筒部55の奥壁から前方に突出するように形成されている。端子保持部56は、その一部又は全部が装着孔17Xよりも前方に突出してケース15の内部空間S1内に突出して設けられている。端子保持部56は、例えば、左右方向Yに並ぶ複数(ここでは、2個)の保持孔57を有している。各保持孔57は、例えば、端子保持部56を前後方向Xに貫通するように形成されている。各保持孔57には、例えば、各接続端子40が保持されている。コネクタ30では、例えば、接続端子40が端子保持部56に一体化されている。例えば、各接続端子40は、インサート成形などにより、端子保持部56に対して一体的に装着されている。
【0045】
ここで、各接続端子40の雄型端子部41は、筒部55の奥壁からフード部51に向かって後方に突出して形成されている。各雄型端子部41は、例えば、筒部55の後端付近まで延びるように形成されている。これら複数の雄型端子部41の間には、例えば、仕切壁58が形成されている。仕切壁58は、例えば、左右方向Yに並ぶ2個の雄型端子部41の間に設けられ、筒部55の奥壁から前後方向Xに沿って後方に延びるように形成されている。仕切壁58は、例えば、フード部51の内部空間まで延びるように形成されている。
【0046】
図3に示すように、コネクタ30は、各ナット80が圧入方向(ここでは、上下方向Z)に沿って圧入されて収容される複数のナット収容部60を有している。複数のナット収容部60は、例えば、互いに左右方向Yに離れて設けられている。
【0047】
(ナット80の構成)
ここで、各ナット80は、四角柱に形成されている。各ナット80は、上面81と、上面81の反対側の下面82と、上面81と下面82との間に設けられた4つの側面83とを有している。ナット80は、ナット80の圧入方向(ここでは、上下方向Z)に貫通する貫通孔84を有している。貫通孔84は、例えば、上面81から下面82まで貫通するように形成されている。貫通孔84は、例えば、ナット80の圧入方向から見た形状が円形状に形成されている。貫通孔84は、例えば、上面81の平面中央に形成されている。貫通孔84は、例えば、ナット80がナット収容部60に収容された状態において、端子接続部42の貫通孔43と上下方向Zに重なるように形成されている。
【0048】
ナット80は、ナット80の圧入方向(ここでは、上下方向Z)から見た平面形状が四角形に形成されている。本実施形態のナット80は、ナット80の圧入方向から見た平面形状が正方形に形成されている。すなわち、本実施形態では、ナット80の上面81及び下面82が正方形に形成されている。各側面83は、ナット80の圧入方向に沿って延びるように形成されている。隣り合う側面83の間の角部85、すなわちナット80の四隅の角部85は、ほぼピン角である。例えば、各角部85は、その角部85の丸みの半径Rが小さくなっている。例えば、角部85の半径Rは、0.3mm以下である。ナット80は、例えば、鍛造によって製造された鍛造品である。このような鍛造品であるナット80の場合には、角部85の半径Rが例えば0.2mm以下となる。
【0049】
(ナット収容部60の構成)
各ナット収容部60は、端子保持部56をナット80の圧入方向(ここでは、上下方向Z)に貫通する収容孔61と、収容孔61から露出された接続端子40の端面(ここでは、上面)とを有している。収容孔61は、例えば、コネクタハウジング50の端子保持部56に形成されている。収容孔61には、端子接続部42の貫通孔43が露出されている。収容孔61の内壁面は、例えば、端子接続部42の上面から上方に突出するように形成されている。例えば、収容孔61の内壁面は、端子接続部42の上面から連続して上方に立ち上がるように形成されている。例えば、収容孔61の内壁面は、端子接続部42の上面と一体化されている。そして、収容孔61の内壁面と、収容孔61から露出された端子接続部42の上面とによって、各ナット収容部60が構成されている。このため、収容孔61から露出された端子接続部42の上面は、各ナット収容部60の底面を構成している。収容孔61の深さ寸法は、例えば、ナット80の上下方向Zに沿う高さ寸法とほぼ同じ大きさに設定されている。
【0050】
図6(a)に示すように、収容孔61は、ナット80の圧入方向から見た平面形状が四角形をなす貫通孔62と、貫通孔62の四隅の角部に形成された凹部63とを有している。
【0051】
貫通孔62は、例えば、ナット80の圧入方向から見た平面形状が正方形に形成されている。貫通孔62の平面形状の大きさは、ナット80の平面形状の大きさとほぼ同じ大きさに設定されている。
【0052】
各凹部63は、貫通孔62の外形を局所的に広げるように貫通孔62の外側に向かって凹むように形成されている。凹部63は、貫通孔62の角部のみに形成されている。
図6(a)及び図6(b)に示すように、収容孔61の外形をなす四辺の各辺は、直線状に延びる直線部65と、直線部65の両端部から貫通孔62の外側に向かって直線部65と交差する方向に延びる2本の延長部66と、各延長部66から直線部65と平行に延びる直線部67とを有している。
【0053】
直線部65は、貫通孔62の内壁面を構成している。直線部65は、例えば、貫通孔62の内壁面を一周する方向である貫通孔62の周方向に沿って直線状に延びるように形成されている。図6(a)に示すように、ナット収容部60にナット80が収容された状態において、直線部65を構成する貫通孔62の内壁面には、ナット80の側面83が密着される。
【0054】
延長部66及び直線部67は、凹部63の内壁面を構成している。延長部66は、例えば、貫通孔62の周方向と交差する方向に延びるように形成されている。直線部67は、例えば、貫通孔62の周方向と平行な方向に沿って直線状に延びるように形成されている。
【0055】
各凹部63は、収容孔61の外形をなす四辺のうちの隣り合う二辺の延長部66及び直線部67によって構成されている。各凹部63では、隣り合う二辺の直線部67の端部同士が接続されている。そして、これら2本の直線部67の端部同士が接続された部分が凹部63の角部68となる。角部68の丸みの半径Rは、例えば、ナット80の角部85の丸みの半径Rよりも大きい。角部68の半径Rは、例えば、0.3mm~0.6mm程度とすることができる。
【0056】
直線部65の長さL1は、例えば、各延長部66及び各直線部67の長さのうち直線部65と平行な方向に沿う長さL2よりも長く設定されている。すなわち、直線部65の長さL1は、各延長部66及び各直線部67の長さのうち貫通孔62の周方向と平行な方向に沿う長さL2よりも長く設定されている。直線部65の長さL1は、例えば、2つの長さL2を合わせた長さL3(=L2×2)よりも長く設定されている。すなわち、直線部65の長さL1は、収容孔61の各辺に存在する2組の延長部66及び直線部67の合計の長さよりも長く設定されている。長さL1に対する長さL3の比L3/L1は、0.3~0.7の範囲が好ましく、0.4~0.6の範囲がより好ましく、0.4~0.5の範囲が更に好ましい。ここで、比L3/L1が小さくなり過ぎると、凹部63の形成範囲が小さくなるため、ナット80の角部85が凹部63の角部68に干渉しやすくなる。一方、比L3/L1が大きくなり過ぎると、直線部65が短くなり、収容孔61の内壁面とナット80の側面83との接触面積が小さくなる。このため、比L3/L1が大きくなり過ぎると、ナット収容部60内においてナット80ががたつき易くなる。これに対し、比L3/L1を0.3~0.7の範囲に設定すると、ナット80の角部85と凹部63の角部68との干渉を抑制しつつも、ナット収容部60内においてナット80ががたつくことを好適に抑制することができる。なお、直線部65の長さL1は、例えば、7mm~9mm程度とすることができる。長さL2は、例えば、1.5mm~3mm程度とすることができる。
【0057】
図6(b)に示すように、直線部65と直線部67との間の間隔L4は、例えば、0.1mm~0.2mm程度とすることができる。この間隔L4は、例えば、凹部63の凹み量に相当する。凹部63では、例えば、ナット80の角部85がピン角になった場合であっても、その角部85が凹部63の角部68に干渉しないような凹み量となるように、間隔L4が設定されている。
【0058】
図7に示すように、直線部65を構成する貫通孔62の内壁面は、例えば、平坦面に形成されている。すなわち、貫通孔62の内壁面には、リブや突起部などが形成されていない。同様に、凹部63の内壁面は、例えば、平坦面に形成されている。
【0059】
収容孔61の内壁面を構成する壁部のうち前方に位置する前壁69には、前壁69を前後方向Xに貫通する孔部69Xが形成されている。孔部69Xは、例えば、貫通孔62の内壁面の下端に形成されている。孔部69Xは、例えば、端子接続部42の上面の一部を露出するように形成されている。孔部69Xは、例えば、ナット収容部60の内外を連通するように形成されている。孔部69Xは、例えば、ナット80(図3参照)をナット収容部60に圧入する際に生じうる削り屑をナット収容部60の外部に逃がす孔として機能する。
【0060】
(ナットカバー90を取り付けるための取付構造)
図4及び図7に示すように、コネクタハウジング50(端子保持部56)は、各ナット収容部60の左右方向Yの両側に設けられた一対の側壁70と、ナット収容部60の後方において一対の側壁70を接続する接続壁71とを有している。各側壁70は、例えば、前後方向Xに延びるように形成されている。接続壁71は、例えば、一対の側壁70の間において左右方向Yに延びるように形成されている。側壁70の上面及び接続壁71の上面は、例えば、ナット収容部60の上面よりも上方に突出するように形成されている。例えば、側壁70の上面及び接続壁71の上面は、ナット収容部60の前壁69の上面よりも上方に突出するように形成されている。
【0061】
各側壁70には、例えば、ガイド溝72が形成されている。各ガイド溝72は、例えば、各側壁70のうちナット収容部60から離れる方向に向いた端面に形成されている。各ガイド溝72は、例えば、ナット80の圧入方向と交差する前後方向Xに延びるように形成されている。隣り合うナット収容部60の間には、例えば、2つの側壁70が左右方向Yに互いに離れた状態で設けられている。これら2つの側壁70の端面の各々にガイド溝72が形成されている。
【0062】
各接続壁71の上面には、例えば、ロック爪73が形成されている。ロック爪73は、例えば、接続壁71の上面から上方に突出するように形成されている。
(ナットカバー90の構成)
次に、ナットカバー90について説明する。
【0063】
図4に示すように、ナットカバー90は、例えば、コネクタハウジング50とは別部品になっている。ナットカバー90は、例えば、ナット80がナット収容部60に圧入されて収容された後に、コネクタハウジング50に取り付けられる。ナットカバー90は、ナット収容部60に収容されたナット80の圧入方向とは反対方向(ここでは、上下方向Z)への移動を規制する機能を有している。
【0064】
図7に示すように、ナットカバー90は、複数(本実施形態では、2個)の蓋部91と、複数の蓋部91を連結する連結部92とを有している。ナットカバー90は、連結部92の下面に形成されたレール部93と、各蓋部91の左右方向Yの外側に設けられたレール部94と、各蓋部91の後方に突出して設けられたロック枠部95とを有している。本実施形態のナットカバー90は、複数の蓋部91と連結部92とレール部93と複数のレール部94と複数のロック枠部95とが一体に形成された単一部品である。
【0065】
蓋部91は、例えば、平板状に形成されている。蓋部91は、例えば、連結部92よりも下方に凹んだ位置に形成されている。例えば、蓋部91の上面は、連結部92の上面よりも下方に設けられている。例えば、蓋部91の下面は、連結部92の下面よりも下方に設けられている。蓋部91は、蓋部91を上下方向Zに貫通する貫通孔91Xを有している。貫通孔91Xは、例えば、上下方向Zから見た平面形状が円形状に形成されている。
【0066】
蓋部91は、コネクタハウジング50に対してナットカバー90が取り付けられた状態において、ナット収容部60の開口部を塞ぐように設けられている。このとき、蓋部91の下面は、例えば、前壁69の上面に接触する。また、蓋部91は、例えば、一対の側壁70の間に設けられる。また、貫通孔91Xは、端子接続部42の貫通孔43と上下方向Zに重なるように設けられる。
【0067】
連結部92は、複数の蓋部91の間に設けられている。連結部92は、例えば、複数の蓋部91と連続して一体に形成されている。連結部92は、例えば、蓋部91の前後方向Xの全長にわたって前後方向Xに延びるように形成されている。さらに、連結部92は、例えば、蓋部91の後端部よりも後方に突出して延びるように形成されている。
【0068】
レール部93は、例えば、連結部92の前後方向Xの全長にわたって延びるように形成されている。レール部93は、例えば、隣り合うナット収容部60の間に設けられた2つのガイド溝72に摺動可能に構成されている。
【0069】
各レール部94は、例えば、各蓋部91の左右方向Yの外側に張り出すように形成されている。各レール部94の上面は、例えば、蓋部91の上面よりも上方に設けられている。各レール部94の上面は、例えば、連結部92の上面と同一平面上に形成されている。各レール部94は、例えば、蓋部91の前後方向Xの全長にわたって前後方向Xに延びるように形成されている。さらに、各レール部94は、例えば、蓋部91の後端部よりも後方に突出して延びるように形成されている。各レール部94は、例えば、各ナット収容部60の左右方向Yの外側に設けられたガイド溝72に摺動可能に構成されている。
【0070】
各ロック枠部95は、例えば、各蓋部91の後端部に接続された接続部96の後端部から後方に突出するように形成されている。接続部96の上面及びロック枠部95の上面は、例えば、蓋部91の上面よりも上方に設けられている。接続部96の上面及びロック枠部95の上面は、例えば、連結部92の上面及びレール部94の上面と同一平面上に形成されている。各ロック枠部95は、例えば、接続部96と接続された基端部を固定端とし、基端部とは反対側の突出先端部を自由端とする片持ち状に形成されている。各ロック枠部95は、例えば、弾性変形による上下方向Zへの撓みが可能に構成されている。
【0071】
ロック枠部95は、コネクタハウジング50のロック爪73が係合可能な係合孔95Xを有している。係合孔95Xは、例えば、ロック枠部95を上下方向Zに貫通するように形成されている。係合孔95Xは、例えば、上下方向Zから見た平面形状が四角形状に形成されている。
【0072】
ナットカバー90は、例えば、コネクタハウジング50に対して、その前方から前後方向Xに沿って後方にスライドさせることにより、コネクタハウジング50に取り付けることができる。このとき、ナットカバー90は、レール部93,94をコネクタハウジング50のガイド溝72に摺動させながら、前後方向Xに沿って移動させることができる。ナットカバー90がコネクタハウジング50に取り付けられると、各ロック爪73がロック枠部95の係合孔95Xに係合される。これにより、ナットカバー90は、蓋部91によってナット収容部60の開口部が閉塞された閉状態を維持することができる。この閉状態では、ナット80(図3参照)の上方が蓋部91によって覆われるため、ナット80の上下方向Zへの移動が規制される。このような閉状態において、図3に示したボルトB1とナット80との締結を行うことにより、その締結の際にナット80が上下方向Zに移動することを好適に抑制することができる。本実施形態では、1つのナットカバー90によって、2つのナット収容部60の開口を一括して塞ぐようにした。これにより、各ナット収容部60に対して個別にナットカバー90を取り付ける場合に比べて、取り付け作業を簡略化することができる。
【0073】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)コネクタ30は、ナット80が圧入方向に沿って圧入されて収容されるナット収容部60を有している。ナット収容部60は、コネクタハウジング50をナット80の圧入方向に貫通する収容孔61と、収容孔61から露出する接続端子40の端子接続部42の上面とを有する。収容孔61は、ナット80の圧入方向から見た形状が四角形をなす貫通孔62と、貫通孔62の四隅の角部に形成された凹部63とを有する。凹部63は、貫通孔62の外形を局所的に広げるように貫通孔62の外側に向かって凹むように形成されている。
【0074】
この構成によれば、貫通孔62の四隅の角部に、その貫通孔62の外形を局所的に広げるように貫通孔62の外側に向かって凹む凹部63が形成される。この凹部63を形成したことによって、貫通孔62の四隅の空間を広げることができる。これにより、収容孔61に圧入されるナット80の角部85と収容孔61の角部(つまり、凹部63の角部68)との間に隙間を形成することができる。この隙間によって、寸法誤差や熱膨張差による寸法のばらつきを吸収することができるため、収容孔61にナット80を好適に収容することができる。
【0075】
ここで、従来のナット収容部において内壁面にリブを設けない場合には、ナットの角部の丸みの半径がナット収容部の角部の丸みの半径よりも小さくなると、ナットの角部がナット収容部の角部に干渉してしまう。このため、ナット収容部にナットを圧入する際に、削り屑が発生するという問題があった。
【0076】
これに対し、上記構成では、ナット80の角部85と収容孔61の角部68との間に隙間が形成されるため、例えばナット80の角部85の丸みの半径Rが収容孔61の角部68の丸みの半径Rよりも小さい場合であっても、ナット80の角部85が収容孔61の角部68に干渉することを抑制できる。この結果、収容孔61にナット80を圧入する際に、削り屑が発生することを抑制できる。したがって、削り屑がナット収容部60の底面に溜まることを抑制できるため、ナット80の固定位置精度が低下することを好適に抑制できる。
【0077】
(2)収容孔61の外形をなす四辺の各辺は、直線状に延びる直線部65と、直線部65の両端部から貫通孔62の外側に向かって直線部65と交差する方向に延びる2本の延長部66と、各延長部66の端部から直線部65と平行に延びる直線部67とを有する。凹部63は、上記四辺のうちの隣り合う二辺の延長部66及び直線部67によって構成されている。
【0078】
この構成によれば、収容孔61の外形をなす四辺のうち隣り合う二辺の延長部66及び直線部67によって構成される凹部63によって、貫通孔62の四隅の空間を広げることができる。また、直線部67を直線部65と平行に延びるように形成したため、例えば直線部67が円弧状をなす形状である場合に比べて、収容孔61の外形が大きくなることを抑制できる。
【0079】
(3)直線部65の長さL1は、各延長部66及び各直線部67の長さのうち直線部65と平行な方向に沿う長さL2よりも長く形成されている。この構成によれば、凹部63の内壁面を構成する延長部66及び直線部67よりも、貫通孔62の内壁面を構成する直線部65が長く形成される。これにより、ナット80の側面83と密着する直線部65の長さを長く形成できるため、ナット80の側面83と収容孔61の内壁面との接触面積を大きくできる。このため、ナット収容部60内においてナット80ががたつくことを抑制できる。
【0080】
(4)直線部65の長さL1は、長さL2を2つ合わせた長さL3よりも長く形成されている。この構成によれば、ナット80の側面と密着する直線部65の長さをより長く形成できる。これにより、ナット80の側面と収容孔61の内壁面との接触面積をより大きくできるため、ナット収容部60内においてナット80ががたつくことを好適に抑制できる。
【0081】
(5)直線部65を構成する貫通孔62の内壁面は平坦面に形成されている。すなわち、直線部65を構成する貫通孔62の内壁面には、リブや突起部が形成されていない。これにより、ナット80の側面83と貫通孔62の内壁面との接触面積を大きくできるため、ナット収容部60内においてナット80ががたつくことを好適に抑制できる。
【0082】
(6)ナット収容部60に収容されたナット80を覆うナットカバー90を設けた。ナットカバー90は、圧入方向とは反対方向へのナット80の移動を規制する。これにより、ナット収容部60から脱離する方向にナット80が移動することをナットカバー90によって規制できるため、ナット80がナット収容部60から脱離することを好適に抑制できる。
【0083】
(7)コネクタハウジング50は、ナット80の圧入方向と交差する方向に延びるガイド溝72を有する。ナットカバー90は、ガイド溝72に摺動可能なレール部93,94を有する。ナットカバー90は、コネクタハウジング50とは別部品に形成されている。
【0084】
この構成によれば、ナットカバー90とコネクタハウジング50とが別部品に形成されているため、ナット収容部60にナット80を収容した後に、コネクタハウジング50に対してナットカバー90を取り付けることができる。また、コネクタハウジング50のガイド溝72にナットカバー90のレール部93,94を摺動させながら、コネクタハウジング50に対してナットカバー90を取り付けることができる。これにより、ナットカバー90の取り付け作業を容易に行うことができる。
【0085】
(8)複数のナット収容部60が1つのナットカバー90によって覆われている。このため、複数のナット収容部60の各々に個別のナットカバー90を取り付ける場合に比べて、ナットカバー90の取り付け作業を簡略化することができる。
【0086】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0087】
・上記実施形態では、1つのナットカバー90により複数のナット収容部60を覆うようにしたが、これに限らない。例えば、複数のナット収容部60の各々に対して個別のナットカバーを取り付けるようにしてもよい。例えば、ナット収容部60が2個の場合には、コネクタハウジング50に対して2つのナットカバーが取り付けられる。
【0088】
・上記実施形態では、ナットカバー90を、コネクタハウジング50に対してナット80の圧入方向と交差する前後方向Xに沿って取り付けるようにしたが、これに限定されない。例えば、ナットカバー90を、コネクタハウジング50に対してナット80の圧入方向に沿って取り付ける構成に変更してもよい。
【0089】
・上記実施形態のナットカバー90を省略してもよい。
・上記実施形態における凹部63の形状に特に限定されない。例えば、直線部67を、ナット80の圧入方向から見た形状が円弧状をなす形状に変更してもよい。
【0090】
・上記実施形態では、ナット80の圧入方向から見た平面形状を正方形に形成したが、これに限定されない。例えば、ナット80の圧入方向から見た平面形状を長方形に形成してもよい。この場合には、貫通孔62の貫通方向から見た平面形状も長方形に形成される。
【0091】
・上記実施形態では、接続端子40が雄型端子部41を有するようにしたが、これに限定されない。例えば、接続端子40が雌型端子部を有するようにしてもよい。この場合には、例えば、電線側コネクタ22が雄型端子部を有することになる。
【0092】
・上記実施形態のコネクタ30におけるナット収容部60の個数は特に限定されない。ナット収容部60の個数は、1個であってもよく、3個以上であってもよい。
・上記実施形態のコネクタハウジング50に装着される接続端子40の個数は、特に限定されない。接続端子40の個数は、1個であってもよく、3個以上であってもよい。
【0093】
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、導電路10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【0094】
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
10 導電路
11 インバータ
12 高圧バッテリ
15 ケース
16 ケース本体
17 装着部
17X 装着孔
18 固定部
18X ボルト固定孔
20 ワイヤハーネス
21 電線
22 電線側コネクタ
23 保護管
30 コネクタ
40 接続端子
41 雄型端子部
42 端子接続部
43 貫通孔
50 コネクタハウジング
51 フード部
51X 収容溝
52 挿入部
53 固定部
53X ボルト挿通孔
54 カラー
55 筒部
55X 収容溝
56 端子保持部
57 保持孔
58 仕切壁
60 ナット収容部
61 収容孔
62 貫通孔
63 凹部
65 直線部(第1直線部)
66 延長部
67 直線部(第2直線部)
68 角部
69 前壁
69X 孔部
70 側壁
71 接続壁
72 ガイド溝
73 ロック爪
76 ゴムリング
77 ゴムリング
80 ナット
81 上面
82 下面
83 側面
84 貫通孔
85 角部
90 ナットカバー
91 蓋部
91X 貫通孔
92 連結部
93 レール部
94 レール部
95 ロック枠部
95X 係合孔
96 接続部
100 相手端子
101 貫通孔
B1 ボルト
B2 固定ボルト
L1 長さ
L2 長さ
L3 長さ
L4 間隔
S1 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7