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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20220817BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20220817BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20220817BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/205
B60R21/2338
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140318
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020655
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 経太
(72)【発明者】
【氏名】平岩 卓也
(72)【発明者】
【氏名】石田 真一
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-308139(JP,A)
【文献】特開2009-40206(JP,A)
【文献】特開2008-132948(JP,A)
【文献】特開2009-67079(JP,A)
【文献】特開2017-177845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて前記収納部位から突出するように膨張する構成とされるとともに、内部に流入させた前記膨張用ガスの一部を排出可能な排出部を、有するエアバッグを、備える構成とされて、
前記排出部が、前記エアバッグを構成する基材を切り抜くようにして形成される開口部と、該開口部の周囲において前記基材に設けられるタック部と、前記エアバッグと別体とされるとともに前記開口部の周縁に配置されて前記開口部の開閉を規制する規制ベルト部と、を備える構成とされ、
前記タック部が、前記基材を平らに展開した状態から、前記開口部における開口の開口面積を減少させるように、前記基材に折目を付けるようにして形成される構成のエアバッグ装置において、
前記タック部が、前記基材を、内側領域と中間領域と外側領域とを積層させるように、略平行に形成される外側折目と内側折目とによって、折り込むようにして、形成され、
前記規制ベルト部が、元部端側を前記外側領域側に結合させて、前記外側折目及び前記内側折目に対して略直交するように配設されるとともに、前記基材における前記内側領域から連なって配置される部位に形成される挿通孔を挿通されるようにして、前記タック部の周囲を囲むように反転された状態で、前記エアバッグ内に挿入された先端側を、前記エアバッグにおいて前記元部端を結合させている部位よりも離隔した側に連結させる構成とされ、
前記タック部は、前記エアバッグの膨張完了時において、前記規制ベルト部に作用するテンションにより、前記規制ベルト部により折り込み状態を維持されて前記開口部の閉じ状態を維持可能とされ、前記規制ベルト部へのテンションの非作用時に、折り込み状態を解除されて前記開口部を開き状態とするように、構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記規制ベルト部が、前記開口部の周囲において、前記タック部の折目に沿った方向側となる両側の2箇所に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記開口部が、前記内側折目から前記外側折目にかけてを跨ぐように配設されて、閉じ状態においても、開口を有する構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記規制ベルト部が、先端側を、前記エアバッグ外に突出させた状態で、前記収納部位側に配置される係止部材に係止され、
該係止部材は、アクチュエータを作動させることにより、前記規制ベルト部の先端側の係止状態を解除可能に、構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記規制ベルト部は、膨張を完了させた前記エアバッグによる乗員の受止時に、前記開口部を開き状態とするように、構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記タック部を構成する前記外側折目及び前記内側折目が、前記エアバッグを構成する前記基材の外周縁側にかけて延びるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から突出するように膨張する構成とされるとともに、内部に流入させた膨張用ガスの一部を排出可能な排出部を、有するエアバッグを、備えるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に流入した膨張用ガスの一部を排出可能な排出部を備えるエアバッグでは、排出部は、エアバッグを構成する基材に折目を付けるようにして設けたタック部の領域に、基材を切り抜くようにして形成される開口部を配置させ、この開口部の両側から延びる2本の規制ベルト部を、有する構成とされていた。そして、この規制ベルト部は、先端側を、エアバッグに連結されており、乗員を受け止めて緩んだ際に、タック部の折目を解消して、開口部を開口させる構成であった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-177845公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のエアバッグ装置では、規制ベルト部は、開口部の両側に2つ配置されるとともに、それぞれ、タック部に連結される元部側の領域を、エアバッグの外表面側に配置される構成であるものの、先端を、元部側から離れ、かつ、タック部から離隔するようにして、タック部の領域よりもエアバッグの中央側となる位置に連結されていることから、エアバッグの膨張完了時において、規制ベルト部にテンションが生じた際に、規制ベルト部が、タック部においてエアバッグの内周面側に配置される折目の部位を内側に引っ張るような挙動となる。そのため、従来のエアバッグ装置では、タック部が、内部に流入する膨張用ガスの内圧を受けても、中間に配置される部位を、規制ベルト部により引っ張られて、外周面側に配置される部位から剥がされるような挙動となり、タック部により、開口部を安定して閉塞する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時のエアバッグの内圧を、排出部によって的確に制御可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、収納部位内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて収納部位から突出するように膨張する構成とされるとともに、内部に流入させた膨張用ガスの一部を排出可能な排出部を、有するエアバッグを、備える構成とされて、
排出部が、エアバッグを構成する基材を切り抜くようにして形成される開口部と、開口部の周囲において基材に設けられるタック部と、エアバッグと別体とされるとともに開口部の周縁に配置されて開口部の開閉を規制する規制ベルト部と、を備える構成とされ、
タック部が、基材を平らに展開した状態から、開口部における開口の開口面積を減少させるように、基材に折目を付けるようにして形成される構成のエアバッグ装置において、
タック部が、基材を、内側領域と中間領域と外側領域とを積層させるように、略平行に形成される外側折目と内側折目とによって、折り込むようにして、形成され、
規制ベルト部が、元部端側を外側領域側に結合させて、外側折目及び内側折目に対して略直交するように配設されるとともに、基材における内側領域から連なって配置される部位に形成される挿通孔を挿通されるようにして、タック部の周囲を囲むように反転された状態で、エアバッグ内に挿入された先端側を、エアバッグにおいて元部端を結合させている部位よりも離隔した側に連結させる構成とされ、
タック部は、エアバッグの膨張完了時において、規制ベルト部に作用するテンションにより、規制ベルト部により折り込み状態を維持されて開口部の閉じ状態を維持可能とされ、規制ベルト部へのテンションの非作用時に、折り込み状態を解除されて開口部を開き状態とするように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のエアバッグ装置では、排出部において、元部端側をエアバッグの外表面側に結合される規制ベルト部が、開口部の周囲に設けられるタック部の周囲を囲むように、反転された状態で、エアバッグ内に挿入された先端側を、エアバッグ側に連結される構成であることから、エアバッグの膨張完了時に、規制ベルト部は、内側折目の折りを解消しない方向側に向かってテンションを発生させるように配置されることとなり、規制ベルト部によって、タック部の折り込み状態を維持させることができる。詳細に説明すれば、本発明のエアバッグ装置では、排出部を構成するタック部は、エアバッグの膨張完了時に、内側折目の折りを解消しない方向側に向かうように配置されつつテンションを発生させている規制ベルト部によって、内側折目の折りを解消され難く、タック部における内側領域と中間領域とを、エアバッグ内に流入した膨張用ガスの内圧を受けて、円滑に外側領域に密着させることができ、折り込み状態を維持させることができて、良好なシール性を確保することができる。そのため、開口部の閉じ状態を安定して維持することができ、膨張時のエアバッグの所定の内圧を安定して確保することができる。また、本発明のエアバッグ装置において、規制ベルト部のテンションの非作用時には、エアバッグの内部に流入した膨張用ガスの押圧力を受けて、タック部が、外側折目と内側折目とによる折り込み状態を、迅速に解消されるような態様となり、開口部は、開き状態となって、膨張用ガスを、安定して排気させることとなる。
【0008】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、膨張完了時のエアバッグの内圧を、排出部によって的確に制御することができる。
【0009】
また、本発明のエアバッグ装置において、規制ベルト部を、開口部の周囲において、タック部の折目に沿った方向側となる両側の2箇所に、配設させる構成とすれば、エアバッグの膨張完了時に、2つの規制ベルト部により、タック部の外側折目と内側折目とによる折り込み状態を、一層、安定して維持させることができて、好ましい。
【0010】
さらに、本発明のエアバッグ装置において、開口部を、内側折目から外側折目にかけてを跨ぐように配設されて、閉じ状態においても、開口を有する構成とすれば、閉じ状態においても開口部を開口させることにより、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるベントホールと兼用することができて、ベントホールを別途設けなくともよく、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、規制ベルト部の先端側を、エアバッグ外に突出させた状態で、収納部位側に配置される係止部材に係止させ、
係止部材を、アクチュエータを作動させることにより、規制ベルト部の先端側の係止状態を解除可能な構成とすることが好ましい。
【0012】
エアバッグ装置をこのような構成とすれば、開口部の開き状態への移行を、アクチュエータを作動させることにより、作動タイミングを略一定とすることができて、エアバッグの保護性能にバラつきが生じ難く、乗員を安定して保護することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、規制ベルト部を、膨張を完了させたエアバッグによる乗員の受止時に、開口部を開き状態とするように、構成してもよい。
【0014】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、タック部を構成する外側折目及び内側折目を、エアバッグを構成する基材の外周縁側にかけて延びるように形成する構成とすれば、基材に部分的にタック部を設ける場合と比較して、タック部の外形形状を安定させることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態である助手席用エアバッグ装置が搭載される付近を示す概略図である。
図2】実施形態のエアバッグ装置の前後方向に沿った概略拡大断面図である。
図3】実施形態のエアバッグ装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態の前左方から見た概略斜視図である。
図4図3のエアバッグを後右方から見た状態の概略斜視図である。
図5図3のエアバッグの概略縦断面図であり、後側壁部の左右の中央の部位での断面図である。
図6図3のエアバッグの概略縦断面図であり、拘束用凹部の部位での断面図である。
図7図3のエアバッグの概略横断面図である。
図8図3のエアバッグを構成する基材を示す平面図である。
図9図3のエアバッグを構成する基材の残りを示す平面図である。
図10】左パネル部の拡大平面図である。
図11】左パネル部にタック部を形成する状態を説明する概略平面図である。
図12】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略横断面図である。
図13】実施形態のエアバッグ装置において、膨張完了時のエアバッグにおける排出部の部位の概略断面図であり、閉塞モードの状態と開口モードの状態とを示す。
図14】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了時の概略側面図であり、閉塞モードの状態と開口モードの状態とを示す。
図15】本発明の他の形態であるエアバッグの概略横断面図であり、閉塞モードの状態と開口モードの状態とを示す。
図16】比較例のエアバッグにおける膨張完了時の排出部の部位の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、エアバッグ装置として、助手席用エアバッグ装置を例に採り、説明をする。助手席用エアバッグ装置M(以下「エアバッグ装置」と省略する)は、図1,2,12に示すように、折り畳まれたエアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ25及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ25及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ25を覆うエアバッグカバー6と、エアバッグ25に形成される排出部50を構成する規制ベルト部65の先端65bを係止させる係止部材16と、を備えている。実施形態の場合、インフレーター8と、係止部材16と、は、図1に示す制御装置120により、作動を制御される。
【0017】
制御装置120は、図1に示すように、助手席PSに着座した乗員MPの体格や、インパネ1と乗員MPとの離隔距離を検知可能な位置検知センサ121、乗員MPの重量を検知可能な重量検知センサ122、及び、車両Vの加速度や加速の方向を検知可能な衝突検知センサ123等からの電気信号を入力させて、インフレーター8を作動させるとともに、好適な膨張モードでエアバッグ25を膨張させるように、係止部材16の作動を制御する。
【0018】
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ25の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ25に押されて開くように、構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12の周壁部14に連結される連結壁部6cが、形成されている。
【0019】
インフレーター8は、図1,2に示すように、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。実施形態では、インフレーター8は、車両Vの前面衝突と、斜め衝突と、オフセット衝突と、の際に、作動するように、制御装置120によって作動を制御されている。
【0020】
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成されて、図1,2に示すように、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形状の底壁部13と、底壁部13の外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部14と、を備えている。実施形態の場合、エアバッグ25とインフレーター8とは、エアバッグ25内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを取付手段として、このボルト9aを、エアバッグ25における流入用開口34の周縁、ケース12の底壁部13、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部13に連結される。具体的には、ケース12は、左右方向側を幅広として構成されるもので(図12参照)、底壁部13における左右の略中央となる位置に、インフレーター8の本体部8aを挿通可能な挿通孔と、リテーナ9の各ボルト9aを挿通させるための挿通孔と、を配設させている(図符号省略)。また、底壁部13において、インフレーター8の本体部8aを挿通させるための挿通孔の左側には、後述する規制ベルト部65の先端65b側を挿通可能とする貫通孔13aが、形成されている(図2参照)。このケース12は、底壁部13に形成される図示しないブラケットにより、車両Vのボディ側に連結される。
【0021】
そして、実施形態では、ケース12における底壁部13の下部側であって、貫通孔13aの近傍(具体的には、インフレーター8の左側)となる位置には、規制ベルト部65の先端65b側を係止させる係止部材16が、配設されている。係止部材16は、図2に示すように、規制ベルト部65の先端65b側に形成される係止孔66に挿通されて規制ベルト部65の先端65b側を係止する係止ピン17と、底壁部13の下面側に取り付けられて係止ピン17を引き込み可能に作動するアクチュエータ18と、係止ピン17の先端側において底壁部13から下方に延びるように構成されて係止ピン17の先端側を支持可能とされる支持ブラケット19と、を備えている。アクチュエータ18は、制御装置120からの作動信号を受けて係止ピン17を引き込むように作動する構成とされている。アクチュエータ18が係止ピン17を引き込むように作動すると、係止ピン17は、規制ベルト部65の先端65b側を係止している状態から、係止を解除する状態に移行し、規制ベルト部65が、移動することとなる(図2の二点鎖線参照)。アクチュエータ18は、制御装置120からの電気信号により係止ピン17を移動できれば、油圧・水圧・空気圧、あるいは、インフレーター等の膨張するガス圧を発生させる場合を含めた流体圧を利用するピストンシリンダ、それらの流体圧や電気を利用したモータ、電磁ソレノイド、復元時の付勢力を利用するばね等を、使用することができる。なお、アクチュエータ18の非作動時には、係止時における係止ピン17からの規制ベルト部65の先端65b側の部位の抜けを防止するように、係止ピン17は、先端側を支持ブラケット19により支持されている。
【0022】
エアバッグ25は、図3~7に示すように、バッグ本体26と、バッグ本体26の内部に配置される整流布74と、バッグ本体26の内部に配置されてバッグ本体26の膨張完了形状を規制するテザー77,83,84,90と、バッグ本体26における排出部50から延びる規制ベルト部65と、を備える構成とされている。
【0023】
バッグ本体26は、可撓性を有したシート体から形成される袋状とされるもので、実施形態の場合、図3~7に示すように、本体膨張部27と、膨張完了時の本体膨張部27の後面側から部分的に突出するように配置される突出膨張部41と、を備えている。突出膨張部41は、本体膨張部27の膨張完了時における左端側に、配設されている。
【0024】
本体膨張部27は、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置されるもので、膨張完了時の形状を、前端側にかけて収束される略四角錐形状とされている。本体膨張部27は、膨張完了時に乗員MP側である後面側に配置される後側壁部40と、後側壁部40の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部28と、を備えている。実施形態のエアバッグ25では、本体膨張部27は、略左右対称形とされている。
【0025】
周壁部28は、エアバッグ25の膨張完了時に、主に、インパネ1とインパネ1上方のウィンドシールド4との間に配置される部位であり、上下方向側で対向して配置される上壁部29,下壁部30と、左右方向側で対向して配置される左壁部31,右壁部32と、を備えている。周壁部28の前端側(本体膨張部27の前端27a側)における下面側(下壁部30側)には、内部に膨張用ガスを流入可能に略円形に開口して形成される流入用開口34と、流入用開口34の周縁においてリテーナ9のボルト9aを挿通させるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔35と、が、形成されている。また、流入用開口34の左側には、排出部50から延びる規制ベルト部65の先端65b側を挿通可能なスリット状の挿通孔36が、左右方向に略沿って形成されている。また、実施形態のバッグ本体26において、周壁部28における左壁部31には、内部に流入させた膨張用ガスの一部を排出可能な排出部50が、形成されている。排出部50における後述する開口部51は、実施形態の場合、閉じ状態においても、小開口状態として、開口を有する構成とされており、小開口状態の開口部51Sは、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるベントホールの役割を果たすこととなる。右壁部32には、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるためのベントホール37が、略円形に開口して形成されている。実施形態の場合、左壁部31に形成される開口部51と、右壁部32に形成されるベントホール37とは、左右方向側から見た状態での配置位置を、略一致させて構成されるもので、それぞれ、左右方向側から見た状態で、前後の中央より後側であって、かつ、上下の中央より僅かに上側となる位置に、配置させる構成とされている。また、ベントホール37の開口面積は、小開口状態の開口部51Sの開口面積と略同一として、構成されている。
【0026】
後側壁部40は、エアバッグ25の膨張完了時に、乗員MP側となる後面側において、上下方向に略沿うように配置されるもので、左右方向の一端側(実施形態の場合、運転席側となる左端側)の部位に、部分的に後方に突出するように膨張する突出膨張部41を、配設させている。この後側壁部40において、突出膨張部41の右側に配置される領域が、車両Vの前突時に前進移動する乗員MPの頭部MHを保護可能な前突用拘束面43を、構成している。
【0027】
突出膨張部41は、膨張完了時の本体膨張部27の後面側における上側の領域に配置されるもので、エアバッグ25の膨張完了時に、助手席PSに着座した乗員MPの左斜め前方となる位置に配置される(図12参照)。この突出膨張部41は、本体膨張部27に連通される前端側を経て、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するもので、膨張完了時の外形形状を、厚さ方向を左右方向に沿わせるように配置される略板状として、左右方向側から見て後端側にかけて狭幅とされる略台形状とされている。突出膨張部41は、膨張完了時に、左右方向側で対向するように配置される左壁部41aと右壁部41bとを備えており、左壁部41aは、図7に示すように、本体膨張部27における周壁部28の左壁部31から連なるように、構成されている。突出膨張部41において、右壁部41bは、車両Vの斜め衝突時若しくはオフセット衝突時に斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを保護可能な斜突用拘束面44を構成している。この突出膨張部41の外形寸法(上下方向側の幅寸法及び前後方向側の幅寸法(後側壁部40からの突出量))は、エアバッグ25の膨張完了時において、右壁部41b(斜突用拘束面44)によって斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを接触させた際に、この乗員MPの頭部MHを、的確に受け止め、かつ、後述する拘束用凹部45に向かって円滑に案内可能な寸法に、設定されている。
【0028】
実施形態のエアバッグ25では、突出膨張部41と後側壁部40との境界部位(前突用拘束面43と斜突用拘束面44との間)に、斜め前方に向かって移動する乗員MPの頭部MHを進入させて拘束させるための拘束用凹部45が、形成されている。拘束用凹部45は、突出膨張41部の右側の領域と、本体膨張部27における後側壁部40と、の境界部位に、上下方向に略沿うようにして形成されるとともに、図6,7に示すように、後端45b側を開口させてポケット状に前方に凹む構成とされている。拘束用凹部45は、左右方向側からみて上下に幅広とするとともに、前端45a側にかけて僅かに狭幅とされる略台形状の左壁部46と右壁部47との外周縁を、後縁側を除いて、相互に連続的に結合(縫着)させせて構成されている。実施形態の場合、拘束用凹部45は後端45b側の部位の上下方向側の長さ寸法(開口幅寸法)を、突出膨張部41における前端側の部位の上下方向側の幅寸法より大きくして、突出膨張部41よりも下方に延びるように、形成されている(図6参照)。
【0029】
また、実施形態のエアバッグ25では、拘束用凹部45は、凹みの先端(前端45a)側を、バッグ本体26内に配置される凹部用テザー90に連結されて、エアバッグ25の膨張完了時に、凹部用テザー90によって、凹みの先端(前端45a)側を前方に牽引された状態で、配置されることとなる(図7参照)。実施形態の場合、拘束用凹部45は、エアバッグ25の膨張完了時に、左壁部46と右壁部47とを略全域にわたって接触させるようにして、突出膨張部41の右壁部41bから連なって、前端45aを右方に向けるように、前後方向に対して僅かに傾斜して、配置されることとなる。
【0030】
左壁部31に設けられる排出部50は、エアバッグ25を構成する基材としての後述する左パネル部99を切り抜くようにして形成される開口部51と、開口部51の周囲において左パネル部99に設けられるタック部54と、バッグ本体26(エアバッグ25)と別体とされるとともに開口部51の周縁に配置されて開口部51の開閉を規制する規制ベルト部65と、を備える構成とされている。
【0031】
開口部51は、図10に示すように、左パネル部99を平らに展開した状態において、前後に幅広とした略長円状に開口して形成される開口形成部52から、構成されている。詳細には、開口形成部52の開口形状は、上縁52aと下縁52bとを略平行な直線状とし、前縁52cと後縁52dとを前後に離れた方向側に突出するような略半円弧状とされている。
【0032】
タック部54は、実施形態の場合、規制ベルト部65の先端65b側を係止部材16に係止させた状態でのエアバッグ25の膨張完了時において、左壁部31に、上下の略全域にわたって、上下方向に略沿うように、配設されている(図3及び図14のA参照)。このタック部54は、左パネル部99を、図11のA,Bに示すごとく、順次、エアバッグ25の内周側からの内側領域59、中間領域60、及び、外側領域61、を積層させるように、略平行に形成される外側折目56と内側折目57とによって、折り込むようにして、形成されるもので、実施形態の場合、タック部54を構成する外側折目56と内側折目57とは、左パネル部99の全長にわたって形成されるとともに、開口形成部52(詳細には、開口形成部52の上縁52a,下縁52b)に対して略直交するように、形成される(図10参照)。詳細には、左パネル部99を平らに展開した状態において、エアバッグ25の膨張完了時に外周面側に配置されることとなる外側折目56は、開口形成部52の前端近傍であって開口形成部52の前縁52cよりも後側となる位置に形成され、エアバッグ25の膨張完了時に内周面側に配置されることとなる内側折目57は、開口形成部42の前後の略中央となる位置に、形成される。換言すれば、開口51を構成する開口形成部42は、内側折目57から外側折目56にかけてを跨ぐように、配設されている。
【0033】
そして、タック部54は、外側折目56よりも前側の領域を外側領域61、外側折目56と内側折目57との間の領域を中間領域60、内側折目57よりも後側の領域を内側領域59とし、外側折目56,内側折目57の形成時に、これらの内側領域59と中間領域60と外側領域61とを積層させるようにして、形成される。そして、左パネル部99に外側折目56,内側折目57を形成したタック部54形成時に、開口部51Sは、図11のAに示すように、閉じ状態(小開口状態)となって、左パネル部99を平らに展開した状態(タック部非形成時)である開き状態(大開口状態、開口形成部62の外形形状と略一致)の開口部51L(図11のB参照)と比較して、開口面積を小さくされることとなる。詳細には、閉じ状態(小開口状態)の開口部51Sは、開口形成部52における前縁52cと後縁52dとを接近させるようにして(前後方向側の幅寸法を縮めるようにして)、開口面積を、開口形成部52の外形形状と略一致している開き状態(大開口状態)の開口部51Lの開口面積よりも、小さくされる。実施形態の場合、タック部54は、エアバッグ25の製造時に、外側折目56と内側折目57とを形成した状態で、左パネル部99の上縁99a及び下縁99bを、前パネル部97の左縁97cに結合させる際に、折り重なった縁部を共縫いされることにより、形成されることとなる。また、左パネル部99(左壁部31)において、タック部54の後側に配置される一般後側領域31bにおける内側領域59近傍の部位(左パネル部99における内側領域59から連なって配置される部位)には、規制ベルト部65を挿通可能なスリット状の挿通孔63が、形成されている(図10のB及び図13のA参照)。詳細には、挿通孔63は、開口形成部52の後端近傍であって開口形成部52の後縁52dよりも前側となる位置において、開口形成部52の上下の2箇所に、形成されている。また、挿通孔63は、内側折目57を中心として、外側折目56と略対称となる位置(外側折目56形成時に、外側折目56に近接した位置)において、外側折目56及び内側折目57に略沿うように、形成されている(図10,11参照)。
【0034】
規制ベルト部65は、バッグ本体26と別体の帯状体から構成されている。実施形態の場合、規制ベルト部65は、開口部51の周囲において、タック部54の外側折目56,内側折目57に沿った方向側(上下方向側)となる両側の2箇所に、すなわち、開口部51の上側と下側との2箇所に、配設されている(図11参照)。各規制ベルト部65は、図10,11に示すように、元部端65a側をタック部54における外側領域61側に結合させ、外側折目56及び内側折目57に対して略直交するように配設されている。そして、各規制ベルト部65は、左壁部31においてタック部54の後側に形成される挿通孔63を挿通されるようにして、タック部54の周囲を囲むように反転された状態で、エアバッグ25内に挿入された先端65b側を、エアバッグ25において元部端65aを結合させている部位よりも離隔した側(前側となる位置)に連結させる構成とされている。具体的には、各規制ベルト部65の先端65bは、バッグ本体26における本体膨張部27の前端27a側に形成される挿通孔36から突出されて、ケース12に設けられる係止部材16に係止される構成である。各規制ベルト部65の先端65bには、係止部材16の係止ピン17を貫通可能な係止孔66が、形成されている。すなわち、実施形態では、各規制ベルト部65は、元部端65aから挿通孔63にかけての部位であり、膨張完了時に外周面側に配置される外周側部位68を、外側折目56及び内側折目57に対して略直交するように配置させ、挿通孔63に挿通される反転部位69で、反転され、反転部位69から先端65bにかけての部位を、膨張完了時に内周面側に配置される内周側部位70として、前方に延びるように、配置させて、構成されている(図10のA参照)。また、実施形態の場合、規制ベルト部65の元部端65a側を外側領域61に結合させる結合部位67は、外側領域61における外側折目56側(後側)の領域に、形成されている(図11のA参照)。なお、規制ベルト部65の元部端65aは、外側領域61に限らず、左パネル部99における外側領域61近傍の領域(左壁部31において、外側領域61の前側に配置される一般前側領域31a)に、結合される構成としてもよい。
【0035】
なお、実施形態では、2つの規制ベルト部65,65は、先端65b側で連結される一枚のベルト用基材72(図9参照)から構成されるもので、先端側を二つ折りした状態で、係止部材16に係止されている。各規制ベルト部65は、長さ寸法を、係止孔66に係止ピン17を挿通させて係止ピン17との係止を維持された状態でエアバッグ25が膨張する際にも、エアバッグ25を支障なく膨張可能で、かつ、エアバッグ25の膨張完了時に、発生するテンションによって、タック部54の折り込み状態を維持し、開口部51の閉じ状態(小開口状態の開口部51S)を安定して維持可能な寸法に、設定されている。そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、規制ベルト部65と係止部材16との係止を維持させた閉塞モードでエアバッグ25が膨張する場合には、エアバッグ25は、排出部50におけるタック部54の折り込み状態を維持された状態で、開口部51Sを小開口状態として、膨張することとなる(図13のA及び図14のA参照)。また、規制ベルト部65と係止部材16との係止を解除させた開口モードでエアバッグ25が膨張する場合には、排出部50が、タック部54の折り込み状態を解除されて、開口部51Lを大開口状態として、膨張することとなる(図13のB及び図14のB参照)。
【0036】
バッグ本体26内に配設される整流布74は、図5に示すように、流入用開口34の上方を覆うとともに、左右両側を開口させた略筒状として、流入用開口34からバッグ本体26内に内部に流入する膨張用ガスを一旦左右方向側に向けて流すように構成されている。整流布74は、図8に示す整流布用基材75から、構成されている。
【0037】
バッグ本体26内において、バッグ本体26の膨張完了形状を規制するテザーとしては、実施形態の場合、本体膨張部27の領域内に、図5~7に示すように、前後テザー77と、左右テザー83,84と、凹部用テザー90と、が、配設されている。
【0038】
前後テザー77は、前突用拘束面43(後側壁部40)の左右方向の略中央と、本体膨張部27の前端27a側と、を連結するもので、図5,7に示すように、流入用開口34の周縁から延びる前側部位78と、後側壁部40側から延びる後側部位79と、を連結させるようにして、構成されている。前側部位78は、図8に示す前側部位用基材81を折って形成されるもので、バッグ本体26の膨張完了時における外形形状を、前端側を左右方向に略沿わせ、後端側を上下方向に略沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている。後側部位79は、外形形状を、前側部位78に連結される前端側を狭幅とし、後側壁部40に連結される後端側にかけて上下に拡開されるような略台形状のシート体から構成されるもので、後端側を、後側壁部40の上下左右の略中央となる位置に、連結される構成である。
【0039】
この前後テザー77は、エアバッグ25の膨張完了時に、後側壁部40の左右方向の略中央、すなわち、前突用拘束面43の左右方向の略中央と、流入用開口34の周縁部位(本体膨張部27の前端27a側)と、を連結するもので、エアバッグ25の膨張初期における前突用拘束面43(後側壁部40)の過度の後方への突出や、膨張完了時の前突用拘束面43の後方移動を、抑制するために、配置されている。また、実施形態では、後側壁部40は、この前後テザー77に牽引されるようにして、エアバッグ25の膨張完了時に、左右の略中央を、上下の略全域にわたって僅かに車両前方側に向かって凹ませて配置されることとなる(図7参照)。
【0040】
左右テザー83,84は、実施形態の場合、図5,6に示すように、前後テザー77の上方と下方との2箇所に配置されるもので、左壁部31と右壁部32との後端近傍部位を、それぞれ、連結して、バッグ本体26の膨張完了時に左右方向に略沿って配設されている。左右テザー83,84は、排出部50(タック部54)よりも後方の領域に、配設されている。各左右テザー83,84は、それぞれ、2枚の帯状のテザー用基材86L,86R,87L,87Rから、構成されている(図9参照)。この左右テザー83,84は、膨張初期のエアバッグ25の左右への過度な広がりを抑制し、かつ、膨張完了時のエアバッグ25の左右方向側の幅寸法(左壁部31と右壁部32との離隔距離)を規制するために、配設されている。
【0041】
凹部用テザー90は、エアバッグ25の膨張完了時に、図7に示すように、拘束用凹部45の凹みの先端(前端45a)側と、エアバッグ25の前端側(本体膨張部27の前端27a側)と、を連結するように、配置されている。実施形態の場合、凹部用テザー89は、図7に示すように、流入用開口34の周縁から延びる前側部位91と、拘束用凹部45側から延びる後側部位92と、を連結させるようにして、構成されている。前側部位91は、前後テザー77における前側部位78と同様に、図8に示す前側部位用基材94を折って形成されるもので、バッグ本体26の膨張完了時における外形形状を、前端側を左右方向に略沿わせ、後端側を上下方向に略沿わせるような略三角錐形状に近似した立体形状とされている。後側部位92は、外形形状を、前側部位91に連結される前端側を狭幅とし、拘束用凹部45に連結される後端側にかけて上下に拡開されるような略台形状のシート体から構成されるもので、後端側を、拘束用凹部45の前端側に、連結される構成である。実施形態の場合、後側部位92は、後述する後左パネル部105及び後中央パネル部109に形成される凹部用部位107,110からそれぞれ延びるように形成される延設部107b,110から、形成されている(図6,8参照)。この凹部用テザー90は、エアバッグ25の膨張完了時に、前端90a側を右方に位置させ、後端90b側を左方に位置させるように、前後方向に対して、傾斜して配置される構成である(図7参照)。そして、この凹部用テザー90は、長さ寸法を、エアバッグ25の膨張完了時に、拘束用凹部45を凹部用テザー90に略沿わせるようにして前方に牽引可能な寸法に、設定されている。
【0042】
バッグ本体26は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に形成されるもので、実施形態の場合、図8,9に示すように、左パネル部99,右パネル部102と、前パネル部97と、後左パネル部105,後中央パネル部109,後右パネル部112と、から構成されている。
【0043】
前パネル部97は、外形形状を、長手方向を前後方向に略沿わせて略帯状として、平らに展開した状態の前端側と後端側とを、それぞれ、端縁側(後上縁97a,後下縁97b)にかけて幅広とするように、構成されている。この前パネル部97は、膨張完了時の本体膨張部27において、上下方向で対向する上壁部29から下壁部30にかけてを、構成している。実施形態の場合、前パネル部97は、左右対称形とされている。
【0044】
左パネル部99は、膨張完了時の本体膨張部27における左壁部31から突出膨張部41の左壁部41aにかけてを構成するもので、後端側の領域を、突出膨張部41の左壁部41aを構成する突出部構成部100としている。実施形態の場合、左パネル部99の後縁88cは、下側の領域を、下縁99bからなだらかに傾斜させるようにして、形成されている。左パネル部99における前後の中央よりもやや前側であって、上下の略中央となる位置には、排出部50の開口部51を構成する開口形成部52が、上述したごとく、前後方向に略沿った長円状に、形成されている。この左パネル部99は、タック部54の形成時に、突出部構成部100を除いた前側の領域の外形形状を、右パネル部102と略同一とするように、構成されている。右パネル部102は、本体膨張部27の右壁部32を、構成している。
【0045】
後左パネル部105は、膨張完了時の本体膨張部27における後側壁部40の左縁側の部位を構成する略帯状とされるとともに、突出膨張部41の右壁部41bを構成する突出部構成部106と、拘束用凹部45の左壁部46を構成する凹部用部位107と、を、部分的に突出させている。具体的には、突出部構成部106は、平らに展開した状態の後左パネル部105における左縁105cから突出し、凹部用部位107は、右縁105dから突出するように、形成されている。凹部用部位107の先端側には、凹部用テザー90の後側部位92を構成する延設部107bが、配設されている。
【0046】
後中央パネル部109は、後側壁部40における左右の中央よりも左側の領域を構成するもので、長手方向を上下方向に略沿わせた帯状として構成されている。後中央パネル部109の左縁109cには、拘束用凹部45の右壁部47を構成する凹部用部位110が、突出して形成されている。凹部用部位110の先端側には、凹部用テザー90の後側部位92を構成する延設部110bが、配設されている。後右パネル部112は、後側壁部40における左右の中央よりも右側の領域を構成するもので、長手方向を上下方向に略沿わせた帯状として、構成されている。
【0047】
実施形態のエアバッグ25では、開口部51の周縁の領域に、略円形の補強布115が、配設されている(図3,9,14参照)。そして、実施形態では、バッグ本体26を構成する前パネル部97,左パネル部99,右パネル部102,後左パネル部105,後中央パネル部109,後右パネル部112,補強布115、ベルト用基材72、整流布用基材75、前後テザー77の前側部位78(前側部位用基材81),後側部位79、凹部用テザー90の前側部位91(前側部位用基材94)、及び、左右テザー83,84のテザー用基材86L,86R,87L,87Rは、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。
【0048】
そして、実施形態のバッグ本体26は、図3~9に示すように、前パネル部97,左パネル部99,右パネル部102,後左パネル部105,後中央パネル部109,後右パネル部112の対応する縁部相互を、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、排出部50を有した袋状とされている。
【0049】
具体的には、前パネル部97の後上縁97aは、後左パネル部105,後中央パネル部109,後右パネル部112の上縁105a,109a,112aと結合され、後下縁97bは、後左パネル部105,後中央パネル部109,後右パネル部112の下縁105b,109b,112bと結合されている。前パネル部97の左縁97cは、左パネル部99の上縁99aから下縁99bにかけてと結合され、右縁97dは、右パネル部102の上縁102aから下縁102bにかけてと結合される。左パネル部99の後縁99cは、後左パネル部105の左縁及び突出部構成部106の外縁106aと結合される。右パネル部102の後縁は、後右パネル部112の右縁112dと結合される。後左パネル部105の右縁105dは、後中央パネル部109の左縁109cと結合され、このとき、凹部用部位107,110の外縁107a,110a相互も結合される。後中央パネル部109の右縁109dは、後右パネル部112の左縁112cと結合される。
【0050】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。まず、エアバッグ25を、リテーナ9を内部に収納させた状態で、ケース12内に収納可能に折り畳み、折り畳んだエアバッグ25の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるんでおく。このとき、排出部50から延びる規制ベルト部65の先端65b側を、バッグ本体26に形成される挿通孔36から突出させておく。その後、折り畳まれたエアバッグ25を、ボルト9aを底壁部13から突出させるようにして、予め係止部材16を取り付けておいたケース12内に収納させる。そして、係止部材16の係止ピン17を、底壁部13に形成される貫通孔13bから突出させた規制ベルト部65の先端65b側の係止孔66に挿通させ、係止ピン17の先端を支持ブラケット19に支持させるようにして、規制ベルト部65の先端65b側を係止部材16に係止させる。次いで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部13の下方から、ケース12内に挿入させるとともに、底壁部13から下方に突出しているリテーナ9のボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、折り畳んだエアバッグ25とインフレーター8とを、ケース12に取り付けることができる。
【0051】
その後、車両Vに搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース12の周壁部14を係止させ、ケース12に設けられた図示しないブラケットを車両Vのボディ側に固定させ、インフレーター8と係止部材16とを制御装置120に電気的に接続させれば、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0052】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、車両Vに搭載した状態で、車両Vの前面衝突、斜め衝突、若しくは、オフセット衝突を検知すれば、制御装置120がインフレーター8に作動信号を出力することとなって、インフレーター8が、ガス吐出口8bから膨張用ガスを吐出させ、エアバッグ25が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開かせることとなる。そして、エアバッグ25は、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両Vの後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、図1の二点鎖線及び図12,14に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0053】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排出部50において、元部端65a側をエアバッグ25(本体膨張部27)の外表面側に結合される規制ベルト部65が、図13のAに示すように、開口部41の周囲に設けられるタック部54の周囲を囲むように、反転された状態で、エアバッグ25内に挿入された先端65b側を、エアバッグ25側に連結される構成であることから、エアバッグ25の膨張完了時に、規制ベルト部65は、内側折目57の折りを解消しない方向側に向かってテンションTを発生させるように配置されることとなり、規制ベルト部65によって、タック部54の折り込み状態を維持させることができる。詳細に説明すれば、実施形態のエアバッグ装置では、排出部50を構成するタック部54は、エアバッグ25の膨張完了時に、内側折目57の折りを解消しない方向側に向かうように配置されつつテンションTを発生させている規制ベルト部65によって、内側折目57の折りを解消され難く、タック部54における内側領域59と中間領域60とを、エアバッグ25内に流入した膨張用ガスの内圧を受けて、円滑に外側領域61に密着させることができ、折り込み状態を維持させることができて、良好なシール性を確保することができる。そのため、図14のAに示すように、開口部51の閉じ状態(小開口状態)を安定して維持することができ、膨張時のエアバッグ25の所定の内圧を安定して確保することができる。ちなみに、従来のごとく、規制ベルト部65´の先端側を、元部65a側から離れ、かつ、タック部54´から離隔するようにして、配置させた構成のエアバッグ25´を、比較例として、図16に記載するが、このような構成のエアバッグ25´では、膨張完了時において、規制ベルト部65´にテンションTが生じた際に、規制ベルト部65´が、タック部54´においてエアバッグ25´の内周面側に配置される内側折目57´の部位を外側領域61´から離隔させるように、内側に引っ張るよう挙動となる。そのため、タック部54´が、内部に流入する膨張用ガスの内圧を受けても、内側領域59´と中間領域60´とを、規制ベルト部65´により引っ張られて、外周面側に配置される外側領域61´から剥がされるような挙動となり、タック部54´により、開口部51´を安定して閉塞できない。実施形態のエアバッグ装置Mにおいて、規制ベルト部65のテンションの非作用時には、エアバッグ25の内部に流入した膨張用ガスの押圧力を受けて、タック部54が、外側折目56と内側折目57とによる折り込み状態を、迅速に解消されるような態様となり(図13のB参照)、開口部51は、開き状態(大開口状態)となって(図14のB参照)、膨張用ガスを、安定して排気させることとなる。
【0054】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、膨張完了時のエアバッグ25の内圧を、排出部50によって的確に制御することができる。
【0055】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、規制ベルト部65が、開口部51の周囲において、タック部54の外側折目56,内側折目57に沿った方向側となる両側の2箇所、実施形態の場合、開口部51の上側と下側との2箇所に、配設される構成であることから、エアバッグ25の膨張完了時に、2つの規制ベルト部65により、タック部54の外側折目56と内側折目57とによる折り込み状態を、一層、安定して維持させることができる。なお、このような点を考慮しなければ、規制ベルト部を1箇所のみに配置させる構成としてもよい。
【0056】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、開口部51を構成する開口形成部52が、内側折目57から外側折目56にかけてを跨ぐように配設され、開口部51は、図14のAに示すように、閉じ状態においても、小開口状態として、開口を有する構成である。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、閉じ状態においても開口部51Sを開口させることにより、内部に流入した余剰の膨張用ガスを排気させるベントホールと兼用することができて、ベントホールを別途設けなくともよい。実施形態では、小開口状態の開口部51Sは、開口面積を、右壁部32に設けられるベントホール37と略同一に設定されており、閉じ状態においては、余剰の膨張用ガスを排気する構成とされている。勿論、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、開口部を、閉じ状態において、閉塞状態とするように構成し、別途ベントホールを設けるように、構成してもよい。
【0057】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、規制ベルト部65の先端65b側が、エアバッグ25外に突出させた状態で、ケース12側に配置される係止部材16に係止される構成であり、この係止部材16は、アクチュエータ18を作動させることにより、規制ベルト部65の先端65b側の係止状態を解除可能に、構成されている。そのため、開口部51の開き状態への移行を、アクチュエータ18を作動させることにより、作動タイミングを略一定とすることができて、エアバッグ25の保護性能にバラつきが生じ難く、乗員MPを安定して保護することができる。
【0058】
具体的には、実施形態のエアバッグ装置Mでは、排出部50から延びる規制ベルト部65の先端65b側を係止する係止部材16のアクチュエータ18は、制御装置120により、作動を制御されている。そして、所定のセンサ121,122,123からの信号を入力させている制御装置120が、例えば、小柄乗員MP1の着座を検知したり、乗員MPがインパネ1に近接した位置に着座していることを検知した場合には、インフレーター8の作動と略同時に、係止部材16のアクチュエータ18に作動信号を出力させて、係止部材16が、係止ピン17を引き込むように作動されることとなる。そして、エアバッグ25は、図14のBに示すように、タック部54の折り込み状態を解除されて、開口部51Lを大開口状態とするような開口モードで膨張することとなり、大開口状態の開口部51Lから余剰の膨張用ガスGを排気させるようにして、膨張を完了させることとなる。そのため、エアバッグ25が、開口部51Lから余剰の膨張用ガスGを排気させ、内圧上昇を抑制された状態で膨張を完了させることから、小柄乗員MP1やインパネ1に近接して着座している乗員MPを、内圧を低く設定されたエアバッグ25により、必要以上に押圧することを抑えて、ソフトに保護することができる。
【0059】
逆に、制御装置120が、例えば、大柄乗員MP2の着座を検知したり、乗員MPがインパネ1から離れた位置に着座していることを検知した場合には、制御装置120からアクチュエータ18に作動信号が出力されず、エアバッグ25は、規制ベルト部65に発生するテンションにより、タック部54の折り込み状態を維持された状態で、開口部51Sを小開口状態とするような閉塞モードで膨張することとなり、図14のAに示すように、小開口状態を維持されたままで、膨張を完了させることとなる。小開口状態の開口部51Sは、通常エアバッグに設けられるベントホールとして作用し、膨張用ガスの排気量が抑制されることから、エアバッグ25は、内圧の高い状態で膨張を完了させることとなり、大柄乗員MP2やインパネ1から離隔して着座している乗員MPを、十分な内圧を確保して、クッション性よく膨張したエアバッグ25により、底付きすることなく、的確に保護することができる。
【0060】
なお、規制ベルト部の先端は、係止部材に係止させなくともよく、例えば、図15に示すエアバッグ25Aのごとく、排出部50Aから延びる規制ベルト部65Aの先端65bを、バッグ本体26Aの内周面側において、元部端65aを結合させている部位よりも離隔した側(実施形態の場合、前側)となる位置に、結合(縫着)させ、この規制ベルト部65Aを、膨張完了時において、前突用拘束面43Aによって乗員MPを受け止めた際に、図15のBに示すように、緩み可能に、構成してもよい。詳細には、このエアバッグ25Aでは、膨張用ガスを排出させるための排出部50Aは、左壁部31Aの後端近傍に配設されており、前突用拘束面43Aによって乗員を受け止めた際に、前方移動する前突用拘束面43Aに伴い、左壁部31Aが前後方向側の幅寸法を縮められるように撓み、この左壁部31Aの撓みにより、規制ベルト部65Aが緩んで、排出部50Aの開口部が、開き状態となり、余剰の膨張用ガスを排気させることとなる。
【0061】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、タック部54を構成する外側折目56及び内側折目57が、エアバッグ25を構成する基材としての左パネル部99の外周縁側(上縁99a側と下縁99b側)にかけて延びるように形成されていることから、基材に部分的にタック部を設ける場合と比較して、タック部54の外形形状を安定させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、タック部を、左パネル部(左壁部)の全域にわたって配設させなくともよい。
【0062】
なお、実施形態では、助手席用エアバッグ装置を例に採り、説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、助手席用エアバッグ装置に限られるものではなく、例えば、乗員としての運転者の前方に配置されるステアリングホイール用のエアバッグ装置や、後部座席に着座した乗員の前方に配置されるエアバッグ装置等にも、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
8…インフレーター、12…ケース(収納部位)、16…係止部材、17…係止ピン、18…アクチュエータ、25…エアバッグ、26…バッグ本体、31…左壁部、50…排出部、51(51S,51L)…開口部、52…開口形成部、54…タック部、56…外側折目、57…内側折目、59…内側領域、60…中間領域、61…外側領域、63…挿通孔、65…規制ベルト部、65a…元部端、65b…先端、120…制御装置、MP…乗員、V…車両、M…助手席用エアバッグ装置。
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