(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】エレベータの非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B66B1/34 A
(21)【出願番号】P 2020092931
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2020-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】田平 尚己
(72)【発明者】
【氏名】平田 智之
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-129483(JP,A)
【文献】特開平11-291796(JP,A)
【文献】特開平08-340602(JP,A)
【文献】特開2007-246266(JP,A)
【文献】特開2008-280106(JP,A)
【文献】特開2002-316563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータにおいて乗りかごへの給電を非接触で行う非接触給電システムであって、
給電用の磁界を発生させる導体線であり、昇降路内において下方へ垂れ下がった一対の垂下部を有する導体線と、
前記乗りかごに設けられ、磁界結合によって前記導体線から電力を受け取る受電コイルと、
前記導体線に取り付けられることによって当該導体線にだけ固定される保持具であり、前記一対の垂下部を、それらの間に所定間隔を空けて保持する保持具と、
を備える、エレベータの非接触給電システム。
【請求項2】
前記保持具を複数備え、
前記乗りかごの移動方向における前記導体線の複数箇所にて前記一対の垂下部が前記保持具により保持される、請求項1に記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項3】
エレベータにおいて乗りかごへの給電を非接触で行う非接触給電システムであって、
給電用の磁界を発生させる導体線であり、昇降路内において下方へ垂れ下がった一対の垂下部を有する導体線と、
前記乗りかごに設けられ、磁界結合によって前記導体線から電力を受け取る受電コイルと、
前記昇降路内に配された補助線
であり、前記一対の垂下部に並んで上下に張られる2本のワイヤと、
前記
2本のワイヤに
両端部がそれぞれ固定されており、その状態のまま前記導体線に取り付けられることによって当該導体線と前記
2本のワイヤとにだけ固定される保持具であり、前記乗りかごの移動方向における前記導体線の複数箇所において、前記一対の垂下部を、それらの間に所定間隔を空けて保持する複数の保持具と、
を備える、エレベータの非接触給電システム。
【請求項4】
前記保持具は、前記一対の垂下部を挟むための第1アーム部及び第2アーム部を有し、
前記第1アーム部及び前記第2アーム部の少なくとも何れか一方に、前記一対の垂下部をそれぞれ通す2つの溝が、それらの間に前記所定間隔を空けて形成されている、請求項1~3の何れかに記載のエレベータの非接触給電システム。
【請求項5】
前記溝の内面には、当該溝に通された前記垂下部に食い込む突起が設けられている、請求項4に記載のエレベータの非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータにおいて乗りかごへの給電を非接触で行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおいて乗りかごへの給電を非接触で行う技術として、特許文献1には、昇降路内に導体線を敷設し、電磁誘導を利用して導体線から乗りかごへの給電を行うものが開示されている。具体的には、昇降路内に導体線がU字状に垂らされることにより、当該導体線には、下方へ垂れ下がった一対の垂下部が形成される。また、乗りかごには受電コイルが設けられ、当該受電コイルは、電磁誘導による導体線(一対の垂下部)との磁界結合が可能となるように、一対の垂下部に近接した状態で配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310879号公報
【文献】特開2014-183668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように電磁誘導での給電を行う場合には、上述したように導体線(一対の垂下部)に対して受電コイルを近接させる必要がある。このため、乗りかごや導体線に揺れが生じた場合に、導体線と受電コイルや乗りかごとが接触し、それらが破損するおそれがあった。
【0005】
そこで本発明者らは、特許文献2に開示されている磁界共鳴を利用した給電技術をエレベータに適用することで、磁界共鳴を利用して導体線から乗りかごへの給電を行うことを考えている。なぜなら、磁界共鳴を利用した給電によれば、上記のような接触を回避できるように導体線(一対の垂下部)と受電コイルとの間の距離を比較的大きくした場合でも、それらを磁界結合させて乗りかごへの給電を実現できるからである。
【0006】
しかしながら、導体線には、一対の垂下部の間の間隔が変化するような揺れも生じることがあり、そのような導体線の揺れは、給電用の磁界や共振周波数などを変化させてしまうため、給電効率に大きな影響を及ぼし得る。
【0007】
例えば特許文献1には、取付具(レールブラケット)を介してガイドレールに導体線を固定することにより導体線の揺れを抑制することが開示されている。しかし、他の機器との関係で、必ずしも、導体線の揺れを抑制できるようにガイドレールに導体線を固定できるとは限らない。
【0008】
そこで本発明の目的は、磁界結合を利用して導体線から乗りかごへの給電を行うエレベータの非接触給電技術において、導体線の揺れを簡易な構成で抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非接触給電システムは、エレベータにおいて乗りかごへの給電を非接触で行うシステムであり、導体線と、受電コイルと、保持具と、を備える。導体線は、給電用の磁界を発生させる導体線であり、昇降路内において下方へ垂れ下がった一対の垂下部を有する。受電コイルは、乗りかごに設けられ、磁界結合によって導体線から電力を受け取る。保持具は、一対の垂下部を、それらの間に所定間隔を空けて保持する。
【0010】
上記非接触給電システムによれば、保持具を備えた簡易な構成で、一対の垂下部の間隔が、導体線への保持具の取付位置において所定間隔で維持される。従って、一対の垂下部の間の間隔が変化するような導体線の揺れが抑制されやすくなり、その結果として、導体線の揺れが原因となって生じ得る給電効率への影響が防止されやすくなる。
【0011】
上記非接触給電システムは、保持具を複数備えていてもよい。そして、乗りかごの移動方向における導体線の複数箇所にて一対の垂下部が保持具により保持されていてもよい。この構成によれば、乗りかごの移動方向における導体線の全域において、一対の垂下部の間の間隔を所定間隔で維持することが可能になる。
【0012】
上記非接触給電システムは、昇降路内に配された補助線を更に備えていてもよい。そして、一対の垂下部を保持する複数の保持具が、補助線を介して互いに連結されていてもよい。この構成によれば、補助線によって保持具どうしが連結されることにより、保持具自体が揺れにくくなり、その結果として、当該保持具に保持された導体線において、乗りかごへ近づく方向の揺れ(即ち、乗りかごへの衝突を招くおそれがある揺れ)が抑制される。
【0013】
上記非接触給電システムにおいて、保持具は、一対の垂下部を挟むための第1アーム部及び第2アーム部を有していてもよい、そして、当該第1アーム部及び第2アーム部の少なくとも何れか一方に、一対の垂下部をそれぞれ通す2つの溝が、それらの間に所定間隔を空けて形成されていてもよい。このような保持具によれば、その構成が簡易であるにも拘らず、2つの溝に一対の垂下部を通してから当該垂下部を保持具で挟むといった簡単な作業で、導体線への保持具の取付けと同時に、一対の垂下部を、それらの間に所定間隔を空けて保持することができる。
【0014】
上記非接触給電システムにおいて、上記溝の内面には、当該溝に通された垂下部に食い込む突起が設けられていてもよい。この構成によれば、溝に通された垂下部に突起を食い込ませることが可能になる。そして、垂下部に突起が食い込むことにより、導体線に沿って保持具が滑り落ちにくくなり、導体線に対して保持具が強固に固定される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導体線の揺れを簡易な構成で抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係るエレベータの非接触給電システムを示した概念図である。
【
図3】導体線への保持具の取付状態を示した斜視図である。
【
図4】第1変形例に係るエレベータの非接触給電システムを示した概念図である。
【
図5】第2変形例として保持具に関する2つの例を示した図である。
【
図6】第3変形例として保持具に関する2つの他の例を示した図である。
【
図7】第4変形例として保持具に関する更なる他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1]実施形態
図1は、実施形態に係るエレベータの非接触給電システムを示した概念図である。非接触給電システムは、エレベータにおいて乗りかごKへの給電を非接触で行うシステムである。本実施形態では、非接触給電システムは、磁界結合の一種である磁界共鳴を利用して乗りかごKへの給電を行うものであり、導体線1と、受電コイル2と、を備える。
【0018】
導体線1は、給電用の磁界(交番磁界)を発生させる導体線である。本実施形態では、導体線1は、昇降路内において下方へU字状に垂らされた状態で配されている。従って、導体線1には、下方へ直線的に垂れ下がった一対の垂下部10A及び10Bが形成されている。そして、導体線1に交流が流れることにより、垂下部10A及び10Bの周囲に給電用の磁界(交番磁界)が発生する。
【0019】
また本実施形態では、導体線1として、断面が円形又はそれに近い形状のものが用いられる(
図2参照)。尚、導体線1は、給電用の磁界を発生させることができるものであれば、断面が四角形のものや扁平したものなどに適宜変更されてもよい。また、導体線1には、配線時の扱いやすさなどを考慮して、細線を編んで構成することで柔軟性を持たせたもの(例えば平編線)などが用いられてもよい。
【0020】
受電コイル2は、磁界結合によって導体線1から電力を受け取るコイルであり、乗りかごKに設けられる。
図1の例では、受電コイル2は、乗りかごKの天面において、一対の垂下部10A及び10Bの何れとも対向する位置に設けられている。尚、受電コイル2の設置位置は、乗りかごKの天面に限らず、導体線1との磁界結合が可能な他の位置(乗りかごKの側面や底面など)に適宜変更されてもよい。
【0021】
そして、本実施形態の非接触給電システムは、導体線1(一対の垂下部10A及び10B)で発生した磁界のエネルギを、磁界共鳴を利用して受電コイル2へ伝えることにより、乗りかごKへの給電を非接触で行う。このような磁界共鳴を利用した給電によれば、導体線1(一対の垂下部10A及び10B)と受電コイル2との間の距離を比較的大きくした場合(例えば数十cm~数mの場合)でも、それらを磁界結合させて乗りかごKへの給電を実現することができる。よって、乗りかごKや導体線1に、それらが互いに近づくような揺れが生じた場合でも、導体線1が乗りかごKや受電コイル2と接触しないように、導体線1(一対の垂下部10A及び10B)と受電コイル2との間の距離を調整することが可能になる。
【0022】
しかしながら、導体線1には、一対の垂下部10A及び10Bの間の間隔が変化するような揺れも生じることがあり、そのような導体線1の揺れは、給電用の磁界や共振周波数などを変化させてしまうため、給電効率に大きな影響を及ぼし得る。
【0023】
そこで、本実施形態の非接触給電システムは、一対の垂下部10A及び10Bの間の間隔が変化するような導体線1の揺れを抑制するべく、保持具3を備えている(
図1参照)。ここで、保持具3は、導体線1に取り付けて使用される器具であり、一対の垂下部10A及び10Bを、それらの間に所定間隔Ltを空けて保持する。そして、本実施形態の非接触給電システムは、
図1に示されるように保持具3を複数備えており、乗りかごKの移動方向Dmにおける導体線1の複数箇所に保持具3が取り付けられている。以下、保持具3の詳細について説明する。
【0024】
図2は、保持具3を示した斜視図である。
図3は、導体線1への保持具3の取付状態を示した斜視図である。
図2に示されるように、保持具3は、第1アーム部31及び第2アーム部32と、ヒンジ部33と、係止部34と、を有している。また、保持具3は、導体線1の周囲に発生する磁界(交番磁界)によって電磁誘導で加熱されてしまうことがないように、非磁性の材料で構成されることが好ましい。
【0025】
第1アーム部31及び第2アーム部32は、一対の垂下部10A及び10Bを挟むための部分である。本実施形態では、第1アーム部31及び第2アーム部32は、ヒンジ部33によって開閉可能に連結されており、閉じられたときに互いに近接又は接触して対向する面31a及び32aをそれぞれ有している。そして、第1アーム部31の面31aには、半円状に窪んだ2つの溝310A及び310Bが、それらの間に所定間隔Ltを空けて形成されている。また、第2アーム部32の面32aには、半円状に窪んだ2つの溝320A及び320Bが、それらの間に所定間隔Ltを空けて形成されている。しかも、溝320A及び320Bは、保持具3が閉じられたときに溝310A及び310Bと対向する位置にそれぞれ配されている。
【0026】
従って、保持具3が閉じられたとき(
図3参照)には、対向した2つの溝310A及び320Aにより、垂下部10Aを通す1つの丸い孔30Aが形成される。また、対向した2つの溝310B及び320Bにより、垂下部10Bを通す1つの丸い孔30Bが形成される。しかも、これら2つの孔30A及び30Bは、それらの間に所定間隔Ltを空けて形成される。尚、溝310A及び320Aの形状、並びに溝310B及び320Bの形状は、導体線1の断面形状に応じて適宜変更できる。
【0027】
係止部34は、第1アーム部31及び第2アーム部32を閉じた状態で固定するためのものである。具体的には、係止部34は、可撓部341と爪部342とで構成されている。ここで、可撓部341は、保持具3が閉じられたとき(
図3参照)に第2アーム部32の先端面32bを覆うように第1アーム部31の先端部に形成されており、当該先端面32bから離れる方向へ撓曲することが可能である。爪部342は、保持具3を閉じたときに、第2アーム部32の先端部のうちの第1アーム部31とは反対側の角32cに引っ掛かるように、可撓部341に突設されている。
【0028】
このような保持具3によれば、次のようにして導体線1に取り付けることが可能になる。先ず、保持具3が開かれた状態で、第2アーム部32の溝320A及び320B(又は、第1アーム部31の溝310A及び310B)に一対の垂下部10A及び10Bがそれぞれ通される(
図2参照)。その後、保持具3が閉じられることにより、上述した2つの孔30A及び30Bが、それらに一対の垂下部10A及び10Bがそれぞれ通された状態で形成される(
図3参照)。しかも、2つの孔30A及び30Bは、それらの間に所定間隔Ltを空けて形成される。従って、これら2つの孔30A及び30Bにそれぞれ通された一対の垂下部10A及び10Bの間隔も、当該保持具3の取付位置において所定間隔Ltで維持される。
【0029】
また、保持具3が閉じられる過程において、爪部342が第2アーム部32の先端面32bに乗り上げることで、可撓部341が当該先端面32bから離れる方向へ撓曲する。これにより、爪部342には、元の位置(可撓部341が撓曲していないときの位置)へ爪部342を戻そうとする力が加わる。そして、第1アーム部31と第2アーム部32とが近接又は接触したとき(即ち、保持具3が閉じたとき)に、爪部342は、第2アーム部32の角32cに到達することで、第2アーム部32の先端面32bに乗り上げた状態から解放されて元の位置に戻る。これにより、第2アーム部32の角32cに爪部342が引っ掛かり、その結果として、第1アーム部31及び第2アーム部32が、閉じた状態で固定される。
【0030】
更に本実施形態では、孔30A及び30Bは、それらの内径が導体線1の直径より小さくなるように形成されている。従って、一対の垂下部10A及び10Bをそれぞれ孔30A及び30Bに通すためには、導体線1への保持具3の取付け時に、溝310A及び310B並びに溝320A及び320Bに、垂下部10A及び10Bをそれぞれ押し込んで嵌合させる必要がある。これにより、導体線1への保持具3の取付状態(
図3参照)においては、孔30A及び30Bへの垂下部10A及び10Bの嵌合によって保持具3が導体線1に固定される。即ち、保持具3は、一対の垂下部10A及び10Bを、それらの間に所定間隔Ltを空けて保持すると共に、その保持により自身も一対の垂下部10A及び10Bによって保持される。
【0031】
本実施形態の非接触給電システムによれば、上述したように保持具3を備えた簡易な構成で、一対の垂下部10A及び10Bの間隔が保持具3により所定間隔Ltに維持される。従って、一対の垂下部10A及び10Bの間の間隔が変化するような導体線1の揺れが抑制されやすくなり、その結果として、導体線1の揺れが原因となって生じ得る給電効率への影響が防止されやすくなる。そして、
図1に示されるように、乗りかごKの移動方向Dmにおける導体線1の複数箇所に保持具3が取り付けられることにより、移動方向Dmにおける導体線1の全域において、一対の垂下部10A及び10Bの間の間隔を所定間隔Ltで維持することが可能になる。
【0032】
また、上述した保持具3(
図2参照)によれば、その構成が簡易であるにも拘らず、2つの溝320A及び320B(又は、溝310A及び310B)に一対の垂下部10A及び10Bを通してから保持具3を閉じる(即ち、垂下部10A及び10Bを保持具3で挟む)といった簡単な作業で、導体線1への保持具3の取付けと同時に、一対の垂下部10A及び10Bを、それらの間に所定間隔Ltを空けて保持することができる。
【0033】
[2]変形例
[2-1]第1変形例
図4は、第1変形例に係るエレベータの非接触給電システムを示した概念図である。
図4に示されるように、非接触給電システムは、昇降路内に配された補助線4を更に備えていてもよい。ここで、補助線4は、比較的強度の高いワイヤ(番線など)であり、昇降路の天井や床、或いはガイドレールに取り付けられたレールブラケットなどに固定されることにより、一対の垂下部10A及び10Bと並んで上下に張られる。従って、補助線4自体は、導体線1や乗りかごKなどに比べて、殆ど揺れることがない。
【0034】
そして
図4の例では、一対の垂下部10A及び10Bを保持する複数の保持具3が、補助線4に取り付けられることにより、当該補助線4を介して互いに連結されている。一例として、各保持具3は、そのヒンジ部33が補助線4に固定されることで当該補助線4に取り付けられる。尚、各保持具3は、第1アーム部31又は第2アーム部32の先端部が補助線4に固定されることで当該補助線4に取り付けられてもよい。
【0035】
このように、殆ど揺れない補助線4に保持具3が取り付けて保持具3どうしが連結されることにより、保持具3自体が揺れにくくなり、その結果として、当該保持具3に保持された導体線1において、乗りかごKへ近づく方向の揺れ(即ち、乗りかごKへの衝突を招くおそれがある揺れ)が抑制される。
【0036】
尚、1本の補助線4に保持具3を取り付けた場合、補助線4の捻れが原因となって当該補助線4を中心として保持具3が回転するおそれがある。そこで、そのような回転を防止するべく、非接触給電システムは、上述した補助線4を2本備え、当該2本の補助線4に、保持具3の両端部(ヒンジ部33と、第1アーム部31又は第2アーム部32の先端部)がそれぞれ固定されてもよい。
【0037】
[2-2]第2変形例
図5(A)及び(B)は、第2変形例として保持具3に関する2つの例を示した図である。
図5(A)に示されるように、第1アーム部31の溝310Aの内面には、当該内面に沿って周方向に延びた鍔状の突起35が設けられていてもよい。また、第1アーム部31の溝320Aの内面にも、同様の突起35が設けられていてもよい。このような構成によれば、導体線1への保持具3の取付け時において、溝310A及び310Bに通された一対の垂下部10A及び10Bに突起35を食い込ませることが可能になる。そして、垂下部10A及び10Bに突起35が食い込むことにより、導体線1に沿って保持具3が滑り落ちにくくなり、導体線1に対して保持具3が強固に固定される。尚、同様の突起35は、第2アーム部32の溝320A及び320Bにも設けることができる。
【0038】
或いは
図5(B)に示されるように、保持具3の孔30Aを構成する溝310A及び320Aの内面には、周方向に並んだ鋸歯状の突起36が設けられていてもよい。また、保持具3の孔30Bを構成する溝310B及び320Bの内面にも、同様の突起36が設けられていてもよい。このような構成によれば、導体線1への保持具3の取付け時において、孔30A及び30Bに通された一対の垂下部10A及び10Bに突起36を食い込ませることが可能になる。そして、垂下部10A及び10Bに突起36が食い込むことにより、導体線1に沿って保持具3が滑り落ちにくくなり、導体線1に対して保持具3が強固に固定される。
【0039】
尚、一対の垂下部10A及び10Bに食い込ませる突起の形状は、
図5(A)や
図5(B)に示されたものに限らず、保持具3の落下を防止できる他の形状に適宜変更されてもよい。
【0040】
[2-3]第3変形例
図6(A)及び(B)は、第3変形例として保持具3に関する2つの他の例を示した図である。これらの図に示されるように、保持具3は、ヒンジ部33を持たないものであってもよく、そのような構成においては、次のような手段により第1アーム部31と第2アーム部32とを互いに近接又は接触させた状態で固定することができる。1つ目の手段として、
図6(A)に示されるように、第1アーム部31の両端部に係止部34を設け、第2アーム部32を2つの係止部34で抱き込むようにして第2アーム部32の左右の両角に爪部342を引っ掛かけることにより、第1アーム部31に対して第2アーム部32を固定する。2つ目の手段として、
図6(B)に示されるように、係止部34に代えて、第1アーム部31及び第2アーム部32の両端部をバンド37で結束する。
【0041】
[2-4]第4変形例
上述した保持具3は、
図2に示されるように一対の垂下部10A及び10Bを通す溝が第1アーム部31及び第2アーム部32の両方に形成されたものに限らず、第1アーム部31及び第2アーム部32の何れか一方にだけ形成されたものに変更されてもよい。このような変更が可能かどうかは、変更したときに導体線1を溝に挿入できるか否か(即ち、導体線1の断面形状)によって決まるが、例えば導体線1の断面形状が四角形である場合には、
図7に示されるように、溝を、深さ方向において一定の幅で形成できるため、第1アーム部31及び第2アーム部32の何れか一方にだけ溝を形成した場合でも、当該溝に導体線1を挿入できる。
図7の例では、断面形状が四角形である導体線1に対応させて、第2アーム部32にだけ溝320A及び320Bを形成した場合が示されている。
【0042】
[2-5]他の変形例
上述した非接触給電システムの各部構成は、磁界共鳴を利用して乗りかごKへの給電を行うエレベータに限らず、磁界結合の一種である電磁誘導を利用して乗りかごKへの給電を行うエレベータにも適用できる。
【0043】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態又は変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1 導体線
2 受電コイル
3 保持具
4 補助線
K 乗りかご
10A、10B 垂下部
30A、30B 孔
31 第1アーム部
31a 面
32 第2アーム部
32a 面
32b 先端面
32c 角
33 ヒンジ部
34 係止部
35、36 突起
37 バンド
Dm 移動方向
Lt 所定間隔
310A、310B、320A、320B 溝
341 可撓部
342 爪部