(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】磁性体粒子、圧粉磁心、およびコイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 1/24 20060101AFI20220817BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20220817BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20220817BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220817BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20220817BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20220817BHJP
【FI】
H01F1/24
H01F1/26
H01F27/255
B22F1/00 Y
B22F1/16 100
B22F1/102
(21)【出願番号】P 2020127859
(22)【出願日】2020-07-29
(62)【分割の表示】P 2018561342の分割
【原出願日】2018-01-05
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2017003618
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】久保田 博信
(72)【発明者】
【氏名】石田 祐也
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-42891(JP,A)
【文献】特開2009-227923(JP,A)
【文献】特開2009-16539(JP,A)
【文献】特開2014-42006(JP,A)
【文献】特開2015-26661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/24
H01F 1/26
H01F 27/255
B22F 1/00
B22F 1/102
B22F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料のコアと、前記磁性材料のコアを被覆する第1の絶縁被膜及び第2の絶縁被膜とを有してなる磁性体粒子であって、
前記第1の絶縁被膜及び前記第2の絶縁被膜
の一方または両方は、
金属アルコキシドと界面活性剤とのゾル-ゲル反応生成物により構成されている、磁性体粒子。
【請求項2】
前記第1の絶縁被膜は、金属アルコキシドと、界面活性剤と、シランカップリング剤
とのゾル-ゲル反応生成物により構成されている、請求項
1に記載の磁性体粒子。
【請求項3】
前記第2の絶縁被膜は、前記第1の絶縁被膜と異なる材料により構成されている、請求項
1または2に記載の磁性体粒子。
【請求項4】
磁性体粒子の製造方法であって、
磁性材料のコア上に
金属アルコキシドのゾル-ゲル反応により第2の絶縁被膜を形成する工程、および
前記第2の絶縁被膜が形成された磁性材料のコア上に
金属アルコキシドのゾル-ゲル反応により第1の絶縁被膜を形成する工程
を含
み、
前記第1の絶縁被膜を形成する工程及び前記第2の絶縁被膜を形成する工程の一方または両方は、前記磁性材料のコアと、前記金属アルコキシドと、前記界面活性剤とを混合する工程、および前記金属アルコキシドと、前記界面活性剤とをゾル-ゲル反応させる工程を含む、
磁性体粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第1の絶縁被膜を形成する工程は、前記磁性材料のコアと、金属アルコキシド、界面活性剤およびシランカップリング剤とを混合する工程
、および前記金属アルコキシドと、前記界面活性剤と、前記シランカップリング剤とをゾル-ゲル反応させる工程を含む、請求項
4に記載の磁性体粒子の製造方法。
【請求項6】
前記第2の絶縁被膜は、前記第1の絶縁被膜と異なる材料により構成されている、請求項
4または5に記載の磁性体粒子の製造方法。
【請求項7】
磁性材料のコアと、前記磁性材料のコアを被覆する絶縁被膜とを有してなる磁性体粒子であって、
前記絶縁被膜が、金属アルコキシドと界面活性剤との反応生成物により構成されている、磁性体粒子。
【請求項8】
前記絶縁被膜が、金属アルコキシドと界面活性剤とシランカップリング剤との反応生成物により構成されている、請求項
7に記載の磁性体粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体粒子、具体的には、絶縁被膜により被覆された磁性体粒子に関する。また、本発明は、上記磁性体粒子を用いた圧粉磁心、当該磁性体粒子を用いたコイル部品にも関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器および電子機器において、インダクタ、チョークコイルなどのコイル部品が用いられている。コイル部品は、一般的にコイルと磁心から構成される。近年、電気機器および電子機器の小型化が進んでおり、これに伴い、これらに用いられるコイル部品も小型化が求められている。また、コイル部品は、小型であることに加え、優れた磁気的、電気的および機械的特性を有することが求められることから、磁心は、高透磁率、高磁束密度、低損失、高強度であることが求められる。中でも、高周波領域での使用においては、渦電流損の増加を抑制するために、磁心は高比抵抗であることが求められる。このような要求を満たすために、軟磁性材料を微細な粒子(粉末)とし、各粒子の表面を絶縁被膜で覆って圧縮成形した圧粉磁心が知られている。例えば、特許文献1には、表面が絶縁被膜で被覆され、さらにシランカップリング剤からなるカップリング層で被覆された軟磁性材料の粉末を圧縮成形した圧粉磁心が開示されている。また、特許文献2には、表面が炭素で被覆され、さらにケイ素酸化物が主体の金属酸化物で被覆された磁性金属材料の粉末を圧縮成形した圧粉磁心が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-259939号公報
【文献】特開2013-209693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載の圧粉磁心は、確かにある程度の比抵抗を確保することができるが、高周波領域での使用における渦電流損を抑制するには、必ずしも十分であるとは言えなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、比透磁率および比抵抗が高い圧粉磁心の製造に用いられる磁性体粒子、当該磁性体粒子を用いた圧粉磁心、当該磁性体粒子を用いたコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題を解消すべく鋭意検討した結果、圧粉磁心の製造に用いる磁性材料のコアの表面に、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を用いるゾル-ゲル反応により絶縁被膜を形成することにより、高比抵抗を有し高比透磁率の部品を作ることのできる磁性体粒子を得ることができることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明の第1の要旨によれば、磁性材料のコアと、前記磁性材料のコアを被覆する絶縁被膜とを有してなる磁性体粒子であって、
絶縁被膜が、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている、磁性体粒子が提供される。
ここで、「絶縁被膜がゾル-ゲル反応生成物により構成されている」とは、絶縁被膜がゾルーゲル反応生成物を含んでいることを意味する。
【0008】
本発明の第2の要旨によれば、上記の磁性体粒子を圧縮成形した圧粉磁心が提供される。
【0009】
本発明の第3の要旨によれば、上記の圧粉磁心と当該圧粉磁心の周囲に巻回されたコイルとを有して成るコイル部品が提供される。
【0010】
本発明の第4の要旨によれば、上記の磁性体粒子と樹脂とを含んだ素体と、素体に埋め込まれたコイルとを有して成るコイル部品が提供される。
【0011】
本発明の第5の要旨によれば、磁性材料のコアと、前記磁性材料のコアを被覆する絶縁被膜とを有してなる磁性体粒子であって、
絶縁被膜が、金属アルコキシドおよび界面活性剤を含む混合物から形成されている、磁性体粒子が提供される。この磁性体粒子は、樹脂と混合されてコイル部品の素体を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁性材料のコアの表面に、有機リン酸またはその塩を含むゾル-ゲル反応物を用いるゾル-ゲル反応によって絶縁被膜を形成することにより、表面の絶縁性が高い磁性体粒子を提供することができる。本発明の磁性体粒子を圧縮成形して得られる圧粉磁心及び素体は比抵抗が大きくなるので、かかる圧粉磁心又は素体を用いることにより、高周波領域における渦電流損が抑制されたコイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の磁性材料のコアと、コアを覆う第1及び第2の絶縁被膜を示す摸式的な断面図である。
【
図2】本発明の圧粉磁心を用いたコイル部品を示す断面図である。
【
図3】本発明の磁性体粒子を用いた別のコイル部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
【0015】
本発明の磁性体粒子は、磁性材料のコアと、その表面に、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている第1の絶縁被膜とを有して成る。
【0016】
上記本発明の磁性体粒子は、以下のようにして製造される。
【0017】
まず、磁性材料のコアを準備する。コアとは、磁性材料の粒子のことであり、本発明の磁性体粒子はコアである磁性材料の粒子と、コア(粒子)を覆うシェルである絶縁被膜とを備える。
【0018】
磁性材料としては、特に限定されないが、軟磁性材料、特に鉄を含む軟磁性材料が好ましい。軟磁性材料を用いることにより、高い磁束密度および高い透磁率を有する圧粉磁心を得ることができる。
【0019】
鉄を含む軟磁性材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄、Fe-Si合金、Fe-Al合金、Fe-Ni合金、Fe-Co合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Si-Cr合金等が挙げられる。
【0020】
上記磁性材料のコアの平均粒径(D50:体積基準で粒度分布を求め、全体積を100%とした累積曲線において、累積値が50%となる点の粒径)は、特に限定されないが例えば、0.01μm以上300μm以下、好ましくは1μm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下であり得る。平均粒径を、上記の範囲とすることにより、渦電流損の抑制効果を大きくすることができ、また、透磁率をより大きくすることができる。
【0021】
次に、上記磁性材料のコア上に第1の絶縁被膜を形成する。なお、コアは第2の絶縁被膜で予め覆われていてもよい。つまり、第1の絶縁被膜とコアの表面との間には、第2の絶縁被膜が存在してもよい。
【0022】
本発明において、第1の絶縁被膜は、ゾル-ゲル反応を利用して形成される。具体的には、第1の絶縁被膜は、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている。磁性体粒子の表面は第1の絶縁被膜で構成されていることが好ましい。第1の絶縁被膜は上記のゾル-ゲル反応生成物で形成されているため、クラックが生じにくく滑り性がよい。そのため、比抵抗が高く比透磁率の高い圧粉磁心及びコイル部品を提供することができる。
【0023】
まず、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含むゾル状の混合物を準備する。
【0024】
上記混合物は、上記金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を、溶媒中に溶解、または分散することにより得られる。
【0025】
上記金属アルコキシドとしては、特に限定されないが、例えば、M1(OR1)nで表される化合物が挙げられる。式中、M1は、Si、Ti、ZrまたはAlである。nは任意の数であり、M1の価数に応じて適宜決定される。R1は、炭化水素基であり、好ましくはアルキル基またはアリール基、より好ましくはアルキル基である。上記アルキル基は、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは炭素数1~4のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、またはtert-ブチル基であり得る。上記アリール基は、好ましくは炭素数6~12のアリール基、より好ましくは炭素数6~8のアリール基であり、例えばフェニル基であり得る。
【0026】
好ましい態様において、上記金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムn-ブトキシド、またはアルミニウムイソプロポキシドである。
【0027】
上記金属アルコキシドは、1種のみを用いても、または2種以上を用いてもよい。
【0028】
上記有機リン酸は、(R2O)P(=O)(OH)2または(R2O)2P(=O)OHで表される。式中、R2は、それぞれ独立して、炭化水素基である。R2は、鎖長が好ましくは5原子以上、より好ましくは10原子以上、さらに好ましくは20原子以上の基であることが好ましい。R2の鎖長は、好ましくは200原子以下、より好ましくは100原子以下、さらに好ましくは50原子以下の基であることが好ましい。つまり、有機リン酸はリン酸の少なくとも1つの水酸基の水素が炭化水素基で置換されている。炭化水素基の炭素鎖長は5原子以上であることが好ましく、より好ましくは10原子以上、さらに好ましくは20原子以上であることが好ましい。炭化水素基が長くなるほど、磁性粒子の表面の滑り性を高くすることができ、コイル部品中の磁性材料の密度を高くできて好ましい。炭化水素基の炭素鎖長は100原子以下であってよい。有機リン酸の炭化水素基は、親油基として機能し、有機リン酸の水酸基は親水基として機能する。有機リン酸の水酸基は金属アルコキシド及び/又は後述するシランカップリング剤と縮合しゾル-ゲル反応生成物を形成する。そして、生成物に取り込まれた有機リン酸の親油基は、磁性体粒子の表面でコイル部品の素体を構成する樹脂とのなじみを良くしたり磁性体粒子同士の摩擦を低減してコイル部品中の磁性体粒子の充填率の向上に寄与したりすると考えられる。
【0029】
上記炭化水素基は、好ましくは、置換されていてもよい、アルキルエーテル基またはフェニルエーテル基である。置換基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、ポリオキシアルキレン基、ポリオキシアルキレンスチリル基、ポリオキシアルキレンアルキル基、不飽和ポリオキシエチレンアルキル基等が挙げられる。
【0030】
上記有機リン酸の塩は、有機リン酸の少なくとも1つのOH基のHが脱離してできた有機リン酸アニオンとカウンターカチオンとの塩である。
【0031】
上記有機リン酸塩における有機リン酸アニオンは、(R2O)P(=O)(O-)2、(R2O)P(=O)(OH)(O-)、または(R2O)2P(=O)O-であり得る。
【0032】
上記リン酸塩におけるカウンターカチオンとしては、特に限定されず、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属のイオン、Be、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属のイオン、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等のその他の金属のイオン、NH4
+、アミンイオン等が挙げられる。好ましくは、上記カウンターカチオンは、Li+、Na+、K+、NH4
+またはアミンイオンまたはであり得る。
【0033】
好ましい態様において、上記有機リン酸塩は、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、または不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩であり、塩を構成するカウンターカチオンとして、Li+、Na+、K+、NH4
+またはアミンイオンが挙げられる。
【0034】
上記リン酸またはその塩は、1種のみを用いても、または2種以上を用いてもよい。
【0035】
上記混合物中、上記金属アルコキシドの含有量は、好ましくは、上記磁性材料100重量部に対し、0.06重量部以上15.0重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上4.0重量部以下、さらに好ましくは0.2重量部以上2.0重量部以下である。金属アルコキシドの含有量を上記の範囲とすることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心の比抵抗をより高くすることができる。
【0036】
上記混合物中、上記有機リン酸またはその塩の含有量は、上記磁性材料100重量部に対し、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.3重量部以上、好ましくは0.3重量部以上10重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上5.0重量部以下である。有機リン酸またはその塩の含有量を上記の範囲とすることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心の比抵抗をより高くすることができる。
【0037】
上記混合物において、有機リン酸またはその塩に対する金属アルコキシドの重量比(金属アルコキシド/有機リン酸またはその塩)は、好ましくは0.06以上40.0以下、より好ましくは0.06以上15.0以下、さらに好ましくは0.2以上15.0以下である。金属アルコキシドと有機リン酸またはその塩の重量比を上記の範囲とすることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心の比抵抗をより高くすることができる。
【0038】
好ましい態様において、上記金属アルコキシドの一部は、シランカップリング剤により置換されていてもよい。即ち、上記混合物は、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩に加え、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0039】
上記シランカップリング剤の置換量は、好ましくは、上記金属アルコキシドの2重量%以上50重量%以下である。即ち、上記混合物におけるシランカップリング剤の含有量は、金属アルコキシドとシランカップリング剤の合計に対して、2重量%以上50重量%以下、例えば10重量%以上40重量%以下である。シランカップリング剤を上記の範囲の量で加えることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心の比抵抗をより高くすることができる。
【0040】
上記混合物中、上記金属アルコキシドおよびシランカップリング剤の合計量は、混合物全体に対して、好ましくは0.05重量%以上20.0重量%以下であり、より好ましくは0.2重量%以上15.0重量%以下、さらに好ましくは0.3重量%以上10重量%以下であり得る。
【0041】
上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、RaSiRb
mRc
3-mで表される化合物が挙げられる。
【0042】
式中、Raは、置換基されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~20のアリール基であり得る。Raは、好ましくは、置換基されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、より好ましくは、置換基されていてもよい炭素数3~20のアルキル基、さらに好ましくは、置換基されていてもよい炭素数8~20のアルキル基である。
【0043】
上記置換基されていてもよい炭素数1~20のアルキル基または炭素数6~20のアリール基における置換基としては、特に限定されないが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、グリシジルオキシ基、アミノ基、置換アミノ基等が挙げられる。上記置換アミノ基の置換基としては、特に限定されないが、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアミノアルキル基等が挙げられる。
【0044】
Rbは、-OH、-ORd、-OCORd、-NRd
2または-NHRd(これら式中、Rdは、置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基、好ましくはメチル基である。)であり、好ましくは-ORd、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基、特に好ましくはメトキシ基である。
【0045】
Rcは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~10のアリール基、好ましくはメチル基、エチル基またはフェニル基を表す。
【0046】
mは、1、2または3であり、好ましくは3である。
【0047】
好ましい態様において、上記シランカップリング剤は、RaSi(ORd)3である。
【0048】
上記シランカップリング剤の例としては、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシ-オクチルトリメトキシシラン、8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシ-オクチルトリメトキシシラン、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、およびデシルトリメトキシシランが挙げられる。
【0049】
上記シランカップリング剤は、1種のみを用いても、または2種以上を用いてもよい。
【0050】
上記溶媒としては、特に限定されないが、アルコール類、エーテル類、グリコール類またはグリコールエーテル類が好ましい。好ましい態様において、溶媒は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソ-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、またはジエチレングリコールモノヘキシルエーテルであり得る。また、水を必要に応じて含んでいても良い。
【0051】
上記溶媒は、1種のみを用いても、または2種以上を用いてもよい。
【0052】
一の態様において、混合物は、種々の添加剤、例えば触媒、pH調整剤、安定化剤、増粘剤等を含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、ホウ酸化合物等の酸化合物、アンモニア化合物等の塩基化合物が挙げられる。
【0053】
次に、上記混合物を上記磁性材料のコアを覆うように塗布し、乾燥させることにより混合物が硬化して絶縁被膜(第1の絶縁被膜)となり、磁性体粒子が得られる。乾燥は、混合物中の溶媒が揮発すればよく、混合物が塗布された粒子を加熱しても粒子に送風してもよい。なお、加熱して乾燥させると混合物中の金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤の硬化が促進されより緻密な膜が出来やすくなるため好ましい。
【0054】
上記混合物を上記磁性材料の粒子に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば上記混合物中に、上記の磁性材料の粒子を加え、撹拌し、濾別する方法が挙げられる。撹拌時間は、好ましくは10分以上5時間以下、より好ましくは30分以上3時間以下、さらに好ましくは1時間以上2時間以下であり得る。
【0055】
なお、上記の形態では、混合物を準備し、混合物中に磁性材料の粒子を加えることにより混合物を粒子に塗布しているが、方法はこれに限らない。たとえば、磁性材料の粒子と、金属アルコキシド及び/又はシランカップリング剤と、有機リン酸またはその塩とを、それぞれ、別々に加え混合してもよい。また、磁性材料の粒子に金属アルコキシドと有機リン酸またはその塩を投入し、ゾル-ゲル反応に付した後、シランカップリングを投入しさらにゾル-ゲル反応を行うことで絶縁被覆を形成してもよい。
【0056】
上記乾燥工程において加熱を行う場合、加熱温度は、好ましくは40℃以上500℃以下、より好ましくは50℃以上400℃以下、さらに好ましくは60℃以上350℃以下であり得る。
【0057】
上記乾燥工程において加熱を行う場合、加熱時間は、好ましくは10分以上5時間以下、より好ましくは30分以上3時間以下、さらに好ましくは1時間以上2時間以下であり得る。
【0058】
得られた磁性体粒子は、コアが絶縁被膜(つまり、第1の絶縁被膜)により覆われていることから、粒子間の絶縁性が高い。
【0059】
第1の絶縁被膜の厚みは1nm以上100nm以下であることが好ましい。第1の絶縁被膜の厚みを1nm以上とすることにより、磁性体粒子の比抵抗を高めることができる。また、第1の絶縁被膜の厚みを100nm以下とすることにより、磁性体粒子に占める磁性材料の割合を高くし、コイル部品の磁気特性を高めることができる。
【0060】
図1に示すように、磁性体粒子1は第1の絶縁被膜3に加えて、第1の絶縁被膜3とコア2との間に第2の絶縁被膜4を備えてもよい。この場合、磁性材料の粒子の表面を構成する第1の絶縁被膜にヒビ割れが発生したとしても、ヒビ割れは第2の絶縁被膜まで進展しにくく、磁性体粒子の絶縁性の低下を抑制できる。
【0061】
第2の絶縁被膜は、金属アルコキシドと有機リン酸またはその塩とを含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている。あるいは、第2の絶縁被膜は、金属アルコキシドと有機リン酸またはその塩とシランカップリング剤とを含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている。あるいは、第2の絶縁被膜は、金属アルコキシドとシランカップリング剤とを含む混合物のゾル-ゲル反応生成物により構成されている。あるいは、第2の絶縁被膜はリン酸化成処理で形成された、例えばリン酸鉄等の金属塩の被膜である。あるいは、第2の絶縁被膜は磁性材料の酸化物により形成されている。第2の絶縁被膜は、第1の絶縁被膜と同じ材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてよい。
【0062】
第2の絶縁被膜の厚みは、第1の絶縁被膜との合計で1nm以上100nm以下であることが好ましい。第1と第2の絶縁被膜の合計厚みを1nm以上とすることにより、磁性体粒子の比抵抗を高めることができる。また、合計厚みを100nm以下とすることにより、磁性体粒子に占める絶磁性材料の割合を高くし、コイル部品の磁気特性を高めることができる。
【0063】
上記で得られた磁性体粒子を用いた圧粉磁心は、高い比透磁率を有し、かつ、高い比抵抗を有する。従って、コイル部品の磁心として用いた場合に、高い電気特性を示しつつ、渦電流損を抑制することができる。
【0064】
従って、本発明は、上記した本発明の磁性体粒子を圧縮成形した圧粉磁心をも提供する。また、本発明は、
図2に示すように、上記した本発明の圧粉磁心11と、当該圧粉磁心の周囲に巻回されたコイル12とを有して成るコイル部品10をも提供する。
【0065】
上記圧粉磁心は、当該分野で公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の圧粉磁心は、本発明の磁性体粒子に結合材(例えば、シリコン樹脂)を添加した混合粉末を圧縮成形し、得られた圧粉体を熱処理することにより得ることができる。
【0066】
また、本発明は、
図3に示すように、上記で得られた磁性体粒子と樹脂とを含む素体21と、素体に埋め込まれたコイル22とを備えるコイル部品20も提供する。
【0067】
このコイル部品において、磁性体粒子の表面は炭化水素基を有する有機リン酸またはその塩を含む第1の絶縁被膜に覆われているため、磁性体粒子が樹脂中で良く分散することができ、素体中の磁性体粒子の充填性を高めて素体の透磁率を向上させることが出来る。また、磁束の集中を低減して磁束飽和密度を高めることが出来る。また、磁性体粒子が、シランカップリング剤を含む混合物から構成される場合、第1の絶縁被膜の滑り性を高めることができ、素体の透磁率を向上させることができる。
【0068】
<第2の実施形態>
本実施形態では、磁性体粒子は、磁性材料のコアと、コアを覆う絶縁被膜とを備え、絶縁被膜は、金属アルコキシドと界面活性剤の混合物から形成される。磁性材料及び金属アルコキシドについては、第1の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0069】
界面活性剤は、親油基と親水基とを有する化合物である。本実施形態では、磁性体粒子が親油基と親水基とを有する界面活性剤を含んで形成されることにより、親水基で金属アルコキシドとの親和性を高めながら、磁性体粒子の表面に親油基を配置して表面を滑り性良く構成することができる。これにより、コイル部品の素体を構成する樹脂との馴染み性を高めながら磁性体粒子同士の摩擦を抑制してコイル部品中の磁性体粒子の充填率を高めることができる。実施形態1の有機リン酸またはその塩も界面活性剤である。
【0070】
界面活性剤の備える親油基は、実施形態1に記載の炭化水素基である。炭化水素基はオキシエチレン基を含むことが好ましい。界面活性剤の親水基は、例えば、水酸基、スルホニル基、リン酸基、アンモニウムカチオンである。界面活性剤は、水酸基を有することが好ましい。水酸基を有する界面活性剤は、水酸基が金属アルコキシドやシランカップリング剤と反応することができ、界面活性剤がゾル-ゲル反応生成物に取り込まれることができる。そして、磁性体粒子の表面に界面活性剤の親油基を配置して磁性体粒子同士の摩擦を抑制することができる。界面活性剤が備える親水基は、特に、リン酸の水酸基が好ましい。リン酸の水酸基は反応性が高く、金属アルコキシドやシランカップリング剤と効率的に反応することができる。
【0071】
界面活性剤は、アニオン性、ノニオン性、カチオン性のいずれも用いることができる。アニオン性の界面活性剤としては、実施形態1に記載の有機リン酸またはその塩、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウムなどを挙げることが出来る。ノニオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートを挙げることができる。カチオン性の界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを挙げることができる。
【0072】
界面活性剤の含有量は、上記磁性材料100重量部に対し、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.3重量部以上、好ましくは0.3重量部以上10重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上5.0重量部以下である。界面活性剤の含有量を上記の範囲とすることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心の比抵抗をより高くすることができる。
【0073】
界面活性剤に対する金属アルコキシドの重量比(金属アルコキシド/界面活性剤)は、好ましくは0.06以上40以下であり、より好ましくは0.06以上15以下である。金属アルコキシドと界面活性剤の重量比を上記の範囲とすることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心及び素体の比抵抗をより高くすることができる。
【0074】
本実施形態の混合物は、さらに、シランカップリング剤を含んでいてもよい。シランカップリング剤については実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0075】
シランカップリング剤の量は、好ましくは、金属アルコキシドの2重量%以上50重量%以下である。即ち、上記混合物におけるシランカップリング剤の含有量は、金属アルコキシドとシランカップリング剤の合計に対して、2重量%以上50重量%以下、例えば10重量%以上40重量%以下である。シランカップリング剤を上記の範囲の量で加えることにより、磁性体粒子から得られる圧粉磁心や素体の比抵抗をより高くすることができる。
【0076】
本実施形態の磁性体粒子は、コイル部品の材料として用いることができる。コイル部品は、例えば、磁性体粒子と樹脂とを含む素体と、素体に埋め込まれたコイルとを備える。本実施形態の磁性体粒子を用いたコイル部品は、界面活性剤を含む混合物から形成されることにより、樹脂との摩擦が抑制されて磁性体粒子の充填率が高く、透磁率に優れる。
【実施例】
【0077】
実施例1
下記のように、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩の混合物から形成された第1の絶縁被膜を有する磁性体粒子、およびかかる磁性体粒子の圧粉磁心を製造した。
【0078】
磁性材料としてFe-Si-Cr合金粒子(平均粒子径30μm)を準備した。なお、試料番号24については、リン酸化成処理済みのFe-Si-Cr合金粒子(平均粒子径30μm)を準備した。つまり、試料番号24の磁性体粒子は、第2の絶縁被膜としてリン酸金属塩の被膜を有する。
【0079】
金属アルコキシドとして、下記化合物を準備した。
アルコキシド1:テトラエトキシシラン
アルコキシド2:チタンテトライソポロポキシド
アルコキシド3:ジルコニウムn-ブトキシド
アルコキシド4:アルミニウムイソプロポキシド
【0080】
有機リン酸またはその塩として、下記化合物を準備した。
リン酸塩1:ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルリン酸ナトリウム
リン酸塩2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム
リン酸塩3:ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸モノエタノールアミン塩
リン酸塩4:アルキルエーテルリン酸ナトリウム
リン酸塩5:不飽和ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸アンモニウム
リン酸6:ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルリン酸
リン酸7:ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸
リン酸8:ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸
【0081】
16重量%アンモニア水10.0gを溶解した70gのエタノールを準備した。この溶液に、後で添加する磁性材料100重量部に対する使用量が表1の比率になるように、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を加えた。
【0082】
次に、上記の磁性材料(Fe-Si-Cr合金)30gを添加し、120分間撹拌した。反応溶液を濾別し、処理した粉体を80℃で120分間乾燥させ、磁性材料粒子の表面に絶縁被膜を形成した。これにより表面が絶縁被膜で覆われた磁性体粒子を得た。
【0083】
次に、得られた磁性体粒子と、結合剤としてのシリコン樹脂(磁性材料100重量部に対し4.2重量部)とを混合し、400MPaの圧力で圧縮成形し、200℃で1時間加熱して、内径4mm、外径9mm、厚さ1mmのトロイダルコア、および3mm×3mm×1mmの角板試料を作製した。
【0084】
(評価)
・比透磁率
作製したトロイダルコイルについてアジレント・テクノロジー株式会社製のRFインピーダンスアナライザー(E4991A)を用いて、1MHz、1Vrmsでの比透磁率を測定した(n=3の平均値を表1に示す)。
【0085】
・比抵抗
角板試料について株式会社アドバンテスト社製の高抵抗測定器(R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER)を用い、900Vの直流電圧を印加し、5秒後の抵抗を測定し、試料寸法から比抵抗を算出した(n=3の平均値を表1に示す)。
【0086】
【表1】
金属アルコキシドおよび、有機リン酸またはその塩の使用量は、Fe-Si-Cr合金粒子100重量部に対する量(重量部)である。
*を付した試料22および23は、比較例である。
**は、試料番号23では、無機リン酸を用いている。
【0087】
上記の結果から、有機リン酸またはその塩を使用することにより、高い透磁率と高い比抵抗が得られることが確認された。特に、Fe-Si-Cr合金粒子100重量部に対して、0.3重量部以上のリン酸塩を使用した試料3~17は、高い透磁率と高い比抵抗を有することが確認された。
【0088】
比較例1(ディップ法)
(試料番号22)
16重量%アンモニア水10.0gを溶解した70gのエタノールの代わりに、ゾル-ゲル反応触媒であるアンモニアを含まない70gのエタノールを準備し、磁性材料の添加後120分間撹拌する代わりに、1分間浸漬した以外は、上記実施例の試料番号11と同様にして、表面に絶縁被膜が形成された磁性体粒子を得た。
【0089】
得られた磁性体粒子について、上記と同様に比透磁率と比抵抗を測定した。結果は、比透磁率が27であり、比抵抗が9.8×104(Ω・cm)であった。
【0090】
(試料番号23)
また、有機リン酸及びその塩の代わりに無機リン酸を用いた以外は実施例1と同様にして磁性体粒子を得た。
【0091】
上記の結果から、本発明と同様の組成の金属アルコキシドと有機リン酸の混合物を用いた場合であっても、ゾル-ゲル反応を利用しない場合は、十分は比抵抗を得ることができないことが確認された。
【0092】
また、有機リン酸またはその塩の代わりに無機リン酸を用いた場合には、有機リン酸又はその塩を用いた場合に比べ、比透磁率及び比抵抗が小さかった。この結果から、有機リン酸の有する炭化水素基が比透磁率及び比抵抗の向上に特異的な効果をもたらすことが分かった。さらに、表1は、有機リン酸又はその塩が磁性材料に対し0.3重量部以上で、且つ、金属アルコキシドに対する有機リン酸またはその塩の重量比を5以下とすれば、高い比抵抗が得られることを示している。
【0093】
実施例2
下記のように、金属アルコキシド、シランカップリング剤および有機リン酸またはその塩の混合物から形成された絶縁被膜を有する磁性体粒子、およびかかる磁性体粒子の圧粉磁心を製造した。
【0094】
シランカップリング剤酸塩として、下記化合物を準備した。
シランカップリング剤1:オクタデシルトリメトキシシラン
シランカップリング剤2:ヘキサデシルトリメトキシシラン
シランカップリング剤3:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤4:8-メタクリロイルオキシ-オクチルトリメトキシシラン
シランカップリング剤5:8-(2-アミノエチルアミノ)オクチルトリメトキシシラン
シランカップリング剤6:8-グリシジルオキシ-オクチルトリメトキシシラン
シランカップリング剤7:アミノプロピルトリエトキシシラン
シランカップリング剤8:3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン
シランカップリング剤9:デシルトリメトキシシラン
【0095】
上記金属アルコキシドの一部をシランカップリング剤に置換し、表2に示す比率となるように混合してコーティング剤としたこと以外は、実施例1と同様にして、磁性体粒子および圧粉磁心を製造した。尚、比較として試料11を併せて示す。
【0096】
【0097】
上記の結果から、シランカップリング剤を加えた試料31~44は、より高い比透磁率を示すことが確認された。特に、シランカップリング剤の鎖長が長い試料において、より高い比透磁率が示される傾向が確認された。
【0098】
(実施例3)
試料番号50~56は、有機リン酸またはその塩の代わりにその他の界面活性剤を用いた以外は、第1の実施形態の実施例1と同様の方法で磁性体粒子を作成し、実施例1と同様の方法で比抵抗と比透磁率の評価を行った。金属アルコキシドと界面活性剤の量、及び評価結果を表3に示す。表3は、さらに、実施例3は、実施例1の試料番号3~5、15~18、23を含む。試料番号23は、比較例である。
【0099】
【0100】
表3から、親油基と親水基とを有する界面活性剤を使用することにより、高い透磁率と高い比抵抗が得られることが確認された。特に、Fe-Si-Cr合金粒子100重量部に対して、0.3重量部以上の界面活性剤を使用した試料3~5、15~18、50~56は、高い透磁率と高い比抵抗を有することが確認された。さらに、界面活性剤の中でも有機リン酸またはその塩を使用した試料番号3~5、15~18は、5.6×1011Ω・cm以上の高い比抵抗を有することが分かった。
【0101】
(実施例4)
実施例3の金属アルコキシドの一部をシランカップリング剤に置換し、表4に示す比率となるように混合してコーティング剤としたこと以外は、実施例3の試料番号50~56と同様にして、磁性体粒子および圧粉磁心を製造した。
【0102】
【0103】
試料番号60と51、61と53、62と56との比較からわかるように、金属アルコキシドとシランカップリング剤と界面活性剤との混合物から形成される絶縁被膜を有する磁性体粒子は高い比透磁率と比抵抗を有するコイル部品を提供することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の磁性体粒子は、コイル部品の材料として好適に用いられる。かかるコイル部品は、特に高周波領域で用いられる電気機器または電子機器において、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0105】
1 磁性体粒子
2 コア
3 第1の絶縁被膜
4 第2の絶縁被膜
10 コイル部品
11 圧粉磁心
12 コイル
20 コイル部品
21 素体
22 コイル