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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】歩行補助器
(51)【国際特許分類】
   A61H 3/04 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
A61H3/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020194742
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022055276
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】109133726
(32)【優先日】2020-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504429600
【氏名又は名称】緯創資通股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISTRON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】薛銘儒
(72)【発明者】
【氏名】劉政燻
(72)【発明者】
【氏名】李佳鴻
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-170119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を備える補助フレームと、
前記補助フレームに設けられると共に、前記補助フレームを帯同して動作させる駆動部と、
前記本体に設けられると共に、操作エリアをセンシングするのに用いられ且つセンシング信号を出力するセンサー部と、
前記センシング信号とセンシング閾値に基づいて、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して、前記センシング信号に対応する動作をするように前記駆動部を制御する制御器とを備え、
前記センサー部は2個の距離センサーを備え、
各前記距離センサーは前記操作エリアをセンシングして距離信号をそれぞれ出力し、
前記センシング閾値はサイドボディエリアを備え、
前記制御器は前記2個の距離信号の差異が前記サイドボディエリアの範囲に入るとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して回転方向へ回転するように制御する、ことを特徴とする歩行補助器。
【請求項2】
前記センシング閾値はボディエリアと快適利用エリアを備え、
前記快適利用エリアは前記ボディエリア内に位置し、
前記2個の距離センサーがセンシングする前記操作エリアは実質上異なり、
前記制御器は前記2個の距離信号が前記快適利用エリアに入るとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して進行方向へ移動するように前記駆動部を制御すると共に、
前記制御器は前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入るとき、前記駆動部が前記補助フレームの移動を維持するように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行補助器。
【請求項3】
前記制御器は、前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入らないとき、前記駆動部による移動を停止させるように制御し、
前記センシング閾値は近接エリアを備え、前記近接エリアと前記センサー部との間の距離は、前記ボディエリアと前記センサー部との間の距離よりも実質的に短く、
前記制御器は前記距離信号のいずれか一つが前記近接エリアに入っているとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して回転方向へ回転するように制御し、
前記制御器は、前記2個の距離信号に基づいて進行速度を取得し、前記制御器は前記駆動部が前記進行速度を以って前記補助フレームを帯同して前記進行方向へ移動するように制御し、前記進行速度に基づいて前記補助フレームが回転するように駆動し、
前記センサー部はトップセンサーを備え、前記センシング閾値はトップエリアを備え、前記トップセンサーは前記トップエリアをセンシングしてトップ信号を出力するのに用いられ、前記制御器は前記トップ信号が前記トップエリアに入らないとき、前記駆動部に対して前記補助フレームの運動を停止させるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行補助器。
【請求項4】
前記制御器は前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入らないとき、前記駆動部を停止させるように制御し、
前記制御器は、前記2個の距離信号に基づいて進行速度を取得し、前記制御器は前記駆動部を前記進行速度を以って前記補助フレームを帯同して進行方向へ移動するように制御し、前記進行速度に基づいて前記補助フレームが回転するように駆動し、
前記センサー部はトップセンサーを備え、前記センシング閾値はトップエリアを備え、前記トップセンサーは前記トップエリアをセンシングしてトップ信号を出力するのに用いられ、前記制御器は前記トップ信号が前記トップエリアに入らないとき、前記駆動部に対して前記補助フレームの運動を停止させるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行補助器。
【請求項5】
前記センサー部は更に重力センサーを備え、
前記重力センサーは前記歩行補助器の傾斜角度をセンシングするのに用いられ、前記制御器は前記傾斜角度が所定の傾斜角度の範囲内に入るとき、前記駆動部の駆動トルクを調整する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の歩行補助器。
【請求項6】
本体を備える補助フレームと、
前記補助フレームに設けられると共に、前記補助フレームを帯同して動作させる駆動部と、
前記本体に設けられると共に、操作エリアをセンシングするのに用いられ且つセンシング信号を出力するセンサー部と、
前記センシング信号とセンシング閾値に基づいて、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して、前記センシング信号に対応する動作をするように前記駆動部を制御する制御器とを備え、
前記センサー部は2個の距離センサーを備え、
各前記距離センサーは前記操作エリアをセンシングして距離信号をそれぞれ出力し、
前記センシング閾値はボディエリアと近接エリアを備え、
前記近接エリアと前記センサー部との間の距離は、前記ボディエリアと前記センサー部との間の距離よりも実質的に短く、
前記制御器は前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入るとき、前記駆動部が前記補助フレームの移動を維持するように制御し、
前記制御器は前記距離信号のいずれか一つが前記近接エリアに入っているとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して回転方向へ回転するように制御する
ことを特徴とする歩行補助器。
【請求項7】
本体を備える補助フレームと、
前記補助フレームに設けられると共に、前記補助フレームを帯同して動作させる駆動部と、
前記本体に設けられると共に、操作エリアをセンシングするのに用いられ且つセンシング信号を出力するセンサー部と、
前記センシング信号とセンシング閾値に基づいて、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して、前記センシング信号に対応する動作をするように前記駆動部を制御する制御器とを備え、
前記センサー部はトップセンサーを備え、
前記センシング閾値はトップエリアを備え、
前記トップセンサーは前記トップエリアをセンシングしてトップ信号を出力するのに用いられ、
前記制御器は前記トップ信号が前記トップエリアに入らないとき、前記駆動部に対して前記補助フレームの運動を停止させるように制御する
ことを特徴とする歩行補助器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行補助器に関し、特に、ユーザーの意図を感知してサポートし得る歩行補助器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢人口の増加に伴い、高齢者や身体が不自由な人が他人の助けを借りずに歩行するために、杖や車椅子、或いは押し車といった歩行補助器を使用するケースが増加している。また、歩行機能が若干低下している者やリハビリをしたい人が押し車を使って歩行する場合もある。更に、一部のユーザーは歩行の際の体力の低下を軽減するために電動アシスト機能付きの押し車を使用する場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、電動アシスト機能付きの歩行補助器は、一般に指でボタンを押すかハンドルを自ら手で傾けて歩行補助器の移動を制御するものであり、このような歩行補助器はそもそも手が不自由なユーザーにとっては必ずしも使い易いとは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の問題に鑑みて、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、本体を備える補助フレームと、
前記補助フレームに設けられると共に、前記補助フレームを帯同して動作させる駆動部と、
前記本体に設けられると共に、操作エリアをセンシングするのに用いられ且つセンシング信号を出力するセンサー部と、
前記センシング信号とセンシング閾値に基づいて、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して、前記センシング信号に対応する動作をするように前記駆動部を制御する制御器とを備える。
【0005】
また、前記センサー部は2個の距離センサーを備え、
前記センシング閾値はボディエリアと快適利用エリアを備え、
前記快適利用エリアは前記ボディエリア内に位置し、
各前記距離センサーは前記操作エリアをセンシングして距離信号をそれぞれ出力し、前記2個の距離センサーがセンシングする前記操作エリアは実質上異なり、
前記制御器は前記2個の距離信号が前記快適利用エリアに入るとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して進行方向へ移動するように前記駆動部を制御すると共に、
前記制御器は前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入るとき、前記駆動部が前記補助フレームの移動を維持するように制御する。
【0006】
更に、前記制御器は、前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入らないとき、前記駆動部による移動を停止させるように制御し、
前記センシング閾値は近接エリアを備え、前記近接エリアと前記センサー部との間の距離は、前記ボディエリアと前記センサー部との間の距離よりも実質的に短く、
前記制御器は前記距離信号のいずれか一つが前記近接エリアに入っているとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して回転方向へ回転するように制御し、
前記制御器は、前記2個の距離信号に基づいて進行速度を取得し、前記制御器は前記駆動部が前記進行速度を以って前記補助フレームを帯同して前記進行方向へ移動するように制御し、前記進行速度に基づいて前記補助フレームが回転するように駆動し、
前記センサー部はトップセンサーを備え、前記センシング閾値はトップエリアを備え、前記トップセンサーは前記トップエリアをセンシングしてトップ信号を出力するのに用いられ、前記制御器は前記トップ信号が前記トップエリアに入らないとき、前記駆動部に対して前記補助フレームの運動を停止させるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行補助器。
【0007】
また、前記制御器は前記2個の距離信号が前記ボディエリアに入らないとき、前記駆動部を停止させるように制御し、
前記センシング閾値はサイドボディエリアを備え、前記制御器は前記2個の距離信号の差異が前記サイドボディエリアの範囲に入るとき、前記駆動部が前記補助フレームを帯同して回転方向へ回転するように制御し、
前記制御器は、前記2個の距離信号に基づいて進行速度を取得し、前記制御器は前記駆動部を前記進行速度を以って前記補助フレームを帯同して進行方向へ移動するように制御し、前記進行速度に基づいて前記補助フレームが回転するように駆動し、
前記センサー部はトップセンサーを備え、前記センシング閾値はトップエリアを備え、前記トップセンサーは前記トップエリアをセンシングしてトップ信号を出力するのに用いられ、前記制御器は前記トップ信号が前記トップエリアに入らないとき、前記駆動部に対して前記補助フレームの運動を停止させるように制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行補助器。
【0008】
また、前記センサー部は更に重力センサーを備え、
前記重力センサーは前記歩行補助器の傾斜角度をセンシングするのに用いられ、前記制御器は前記傾斜角度が所定の傾斜角度の範囲内に入るとき、前記駆動部の駆動トルクを調整する。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、歩行補助器は、ユーザーの意図を感知し、ユーザーの意図に対応するように動くことができる。また、本発明によれば、歩行補助器は、ユーザーが転倒する可能性があるときに停止し、ユーザーが転倒する可能性を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の歩行補助器の使用状態の説明図である。
図2】本発明の歩行補助器の機能ブロック図である。
図3A】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図3B】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図3C】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図4A】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図4B】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図4C】本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。
図5】本発明の歩行補助器の上面図である。
図6A】横スキャニング信号Psと、上限進行特徴データ曲線Pu及び下限進行特徴データ曲線Plとの関係を説明するグラフである。
図6B】右曲がり回転特徴データ曲線を表すグラフである。
図6C】左曲がり回転特徴データ曲線を表すグラフである。
図7A】本実施形態によるノイズ軽減処理を経たスキャニング信号から得られるユーザーまでの距離が時間の変化によってどのように変動するかを説明する図である。
図7B】スキャニング信号のフィルタリング処理を行った波形図である。
図8A】本発明の実施形態による歩行補助器の使用状態を説明する側面図である。
図8B】本発明の実施形態による歩行補助器の使用状態を説明する側面図である。
図9】本発明の実施形態を説明する歩行補助器の側面図である。
図10A】本発明の実施形態を説明する垂直スキャン信号VsとVu及びVlの関係を示す図である。
図10B】ユーザーが進行方向の後ろ側へ倒れた場合と前側に倒れた場合の判定方法を説明するための図である。
図10C】ユーザーが進行方向の後ろ側へ倒れた場合と前側に倒れた場合の判定方法を説明するための図である。
図11】本発明の実施形態による歩行補助器の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態による歩行補助器の使用状態の概要を示す説明図である。また、図2は、本発明の実施形態による歩行補助器の機能ブロック図である。
【0012】
歩行補助器は、補助フレーム10、駆動部20、センサー部30、及び制御器40を備える。また、補助フレーム10は、図1に示すようにユーザーと向かい合うように高さ方向へ延伸する本体12に加え、この本体12を底面側から支える底部14を備える。
【0013】
駆動部20は、補助フレーム10を駆動して移動させることができるようにこの実施形態では補助フレーム10の底部14に取り付けられている。なお、駆動部20の後述する駆動回路22は補助フレーム10を駆動できるように電気的な接続が得られていれば本体12側に取り付けても差し支えない。
【0014】
センサー部30は本体12上に配置され、操作エリア90を検知(センシング)し、検知信号(センシング信号)を出力する。
【0015】
制御器40は、駆動部20を駆動するように補助フレーム10を制御し、センシング信号とセンシング閾値に基づいて、後述する要領でセンシング信号に対応する動作を歩行補助器に行わせる。
【0016】
センサー部30は、操作エリア90をセンシングし、対応するセンシング信号を出力するために使用される。なお、ユーザーが操作エリア90にいるかどうかによって、センサー部30によって出力されるセンシング信号から得られるものは異なるものとなるが、詳細は後述する。
【0017】
制御器40は、駆動部20を制御して、補助フレーム10を駆動して、センシング信号とセンシング閾値に従って、センシング信号に対応するように補助フレーム10の動作を制御する。ここで、センシング閾値の内容については後述する。
【0018】
また、センシング閾値については複数の距離を表す距離データで構成されるが、これら距離データは図示しない記憶装置に記憶されており、この記憶装置は図2の制御器40と電気的に接続されており、制御器40は、センシング閾値である当該数値データを記憶装置にアクセスして参照できるものとする。
【0019】
具体的には、制御器40は、センシング信号から得られる例えばユーザーまでの距離を示す数値データが、センシング閾値である記憶装置に記憶された当該数値データの範囲内に入るか否かを判断し、その判断結果に基づいて、駆動部20で補助フレーム10を駆動するか駆動しないで停止させるか制御する。
【0020】
例えば、センシング信号から得られるユーザーまでの距離がセンシング閾値の範囲内に入らない場合、制御器40は、駆動部20が補助フレーム10を駆動することを許可しない。
【0021】
一方、センシング信号から得られる数値データがセンシング閾値である記憶装置に記憶された数値データの範囲内に入る場合、制御器40は、駆動部20が補助フレーム10を駆動するように制御する。したがって、歩行補助器は、ユーザーが補助フレーム10に近づいて手で持てる距離まで近づいたときに、ユーザーを補助し始めることができる。
【0022】
また、本実施形態では、上述した操作エリア90は、ユーザーが立ち上がった状態(起立した状態)で補助フレーム10のグリップ部16を容易に保持できる領域とすることができる。また、本実施形態では、センシング閾値は、近すぎず且つ遠すぎず、即ち中間的な距離範囲にユーザーがいる場合を検知できるユーザーまでの距離を表す複数の数値データとすることができる。
【0023】
例えば、ユーザーの手が補助フレーム10に届かないほど離れた距離の場合にはセンシング閾値の範囲外とする。
【0024】
また、近すぎない距離としては、例えば、これに限定されないが、ユーザーが補助フレーム10に近づきすぎて、補助フレーム10のグリップ部16を持ちにくい程に近づいた場合や補助フレーム10にユーザーが衝突する恐れのある距離が挙げられる。このように、ユーザーが操作エリア90に入って、補助フレーム10(のグリップ部16)を持つことができる距離にいる場合、本発明による歩行補助器はユーザーの歩行を補助できる。
【0025】
また、本実施形態では、制御器40は、極めて短い時間間隔で連続して出力されるセンシング信号から得られる数値データが所定の時間(例えば0.5秒間や1秒間又は2秒間等)連続してセンシング閾値である数値データの範囲内に入ると判断した際に、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御する。このようにマージンを持たせることにより、ユーザーが意図しない誤動作の発生を抑制し得る。
【0026】
そして、ユーザーがスイッチ(図示せず)をオンにしてから所定の時間内に補助フレーム10を保持し得る距離まで移動した後に、制御器40は、補助フレーム10を動作させるように制御し得るので、ユーザーは歩行補助器を余裕をもって利用することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、図1から明らかなように、歩行補助器は押し車である。本実施形態では押し車は図1に示すように駆動輪26と従動輪28の車輪を有する。
【0028】
また、他の実施形態としては、歩行補助器は歩行を補助し得るロボットであっても良い。すなわち、歩行補助器の移動機構(駆動部)が複数の足を交互に動かすことにより前進し又は後退して歩行を補助し得るロボットであっても良い。なお、他の実施形態による歩行を補助し得るロボットは、足の数が3本、4本、又は5本以上あっても差し支えない。
【0029】
なお、他の実施形態としては、歩行補助器は、歩行を補助しえるクローラー(キャタピラ、無限軌道)を備えたタイプでも良い。これは、歩行補助器の移動機構(駆動部)がクローラータイプであることを意味する。
【0030】
また、本実施形態では、歩行補助器の補助フレーム10は上述のようにグリップ部16を備える。ここでグリップ部16は図1に示されるように手で握れるようなハンドルタイプのものでも良く、或いは手で握るタイプではなく、寄りかかることができるように形成されたもの(図示せず)でも良い。なお、寄りかかることができる当接部を備えたタイプでは、ユーザーは歩行時により体力を消費せずに歩行することができる。
【0031】
また、本実施形態では、歩行補助器の補助フレーム10には、ユーザーが座って休むことができる椅子18が備えられている。なお、他の実施形態としては、補助フレーム10は、中に物を入れることができるよう形成された籠(図示せず)を備えていても良く、籠の中にユーザーは物を入れた状態で歩行補助器を使用し得る。
【0032】
駆動部20は、制御器40の制御を受けて補助フレーム10を駆動して移動させるために使用される。なお、動き方としては歩行補助器を回転させたり前進させたりするものであるが詳しくは後述する。
【0033】
また、本実施形態では、移動速度は、必要に応じて変化させても良く、一定の速度をキープさせても良い。なお、詳細は後述する。
【0034】
また、本実施形態では、歩行補助器の回転半径は、必要に応じて調整しても良く、固定の値でも良く、詳細は後述する。
【0035】
センサー部30は、補助フレーム10の本体12に設けられる。また、本実施形態では、センサー部30は複数個設けても差し支えなく、それぞれユーザーの腰、胸、腹部、又は臀部の位置を検出し得る位置及び角度で取り付けられる。
【0036】
よって、ユーザーが操作エリア90に入ると、各センサー部30は、それぞれが対応するユーザーの腰、胸、腹部、又は臀部の位置を感知する。
【0037】
なお、本発明による歩行補助器は複数の実施形態の下で実施することができるが、実施形態毎にユーザーをアシストし得る内容が異なる。詳細は後述する。
【0038】
次に、図3を参照しながら本発明による歩行補助器を説明する。ここで、図3A図3Cはそれぞれ本発明の歩行補助器の使用状態を示す上面図である。なお、理解の容易のために図3では、真上から眺めた際にちょうど目視し得る補助フレーム10の上側に位置する構成のみを示すものとし、底面側の構成は図示を省略する。
【0039】
図3Aに示すように、センサー部30は、距離センサー32を備える。また、この実施形態における図示しない記憶装置に記録されたセンシング閾値は、ボディエリアであり、即ち距離センサー32によって検出されたユーザーまでの距離と比較され得る距離データを記憶したものである。
【0040】
また、この実施形態におけるセンシング閾値には、ボディエリアの範囲で距離センサー32にユーザーの体が最も近づく近端境界(Lp)と、ユーザーの体から距離センサー32までの距離がボディエリアの中で最も遠い遠端境界(Ld)を含む。すなわち、本実施形態では、ユーザーまでの距離と逐次比較され得る遠端境界の距離データと近端境界の距離データをセンシング閾値として記憶装置に記憶している。
【0041】
次に、センシングを実際に行う方法を順に説明する。距離センサー32は、操作エリア90をセンシングして、センシング信号を出力する。
【0042】
制御器40は、センシング信号から得られる距離データが、ボディエリアとして記憶装置(図示せず)に記録されている距離の範囲内(要はLp以上でLd以下の距離)に入ると、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御して進行方向に歩行補助器を移動させる。
【0043】
また、本実施形態では、センシング信号から得られる距離データがボディエリアとして記憶装置(図示せず)に記録されている距離区間の範囲外である場合(要するに例えばLdの位置よりも更に距離センサー32から遠い場所)には、制御器40は、駆動部20を制御して移動を停止する。
【0044】
また、上述したボディエリアは、操作エリア90のサイズに対応する。図3Aの実施形態を例として説明すると、ボディエリアは、上述したようにLdとLpとの間のエリアである。
【0045】
ここで、上述したように、Ldはボディエリアの遠端境界であり、Lpはボディエリアの近端境界であり、遠端境界Ldと近端境界Lpの間のエリアにユーザーが入ると、ボディエリアの範囲内に入ったと制御器40が判断することとなる。
【0046】
具体的には、距離センサー32は、図3Aに示すように、距離センサー32からユーザーまでの距離を距離信号Lsを利用して検出する。
【0047】
なお、ユーザーまでの距離の検出方法は、例えば信号出力機能と信号受信機能を有する距離センサー32から信号をボディエリアに向けて出力して、該信号がユーザーで反射し、この反射して戻ってきた信号を距離センサー32で受信するまでの時間(信号出力から受信までの時間差)を利用して制御器40がユーザーまでの距離を測定しても良いが、これには限られない。
【0048】
このようにして制御器40がユーザーまでの距離を判断するので、図3Aに示すようにユーザーが距離センサー32から離れ過ぎていて、ユーザーの位置が操作エリア90に入らない場合、距離信号Lsから得られるデータは、ボディエリアとして図示しない記憶装置に記憶されている距離データであるセンシング閾値の範囲外となる。
【0049】
一方、この状態からユーザーが例えば図3Bに示すように距離センサー32へ向かって近づいて操作エリア90の範囲内に入ると、距離信号Lsから得られるユーザーまでの距離を表すデータは、ボディエリアとして記憶されているユーザーまでの距離と比較され得るセンシング閾値の範囲内に入ることとなる。
【0050】
他方、図3Cに示すようにユーザーが距離センサー32に近づきすぎて近端境界Lpの範囲から外れてしまうと、距離信号Lsから得られるユーザーまでの距離を表すデータは、再びボディエリアとして記憶装置に記憶されているセンシング閾値の範囲外となる。
【0051】
このように、ユーザーが歩行補助器の近くにいないとき、距離センサー32は操作エリア90の範囲内で物体(ユーザー)を検出することができないので、距離信号Lsから得られる距離データは、所定の範囲(距離)を示すボディエリアとして記憶装置に記憶されているセンシング閾値の範囲内とならない。
【0052】
すなわち、ユーザーから距離センサー32までの距離が遠端境界Ldよりも大きくなるので、距離信号Lsから得られる距離データはボディエリアの範囲外となり、制御器40ではボディエリア内にユーザーがいないと判断することとなり、この際、本発明による歩行補助器は歩行を補助する動作を行わない。
【0053】
一方、ユーザーが操作エリアに入り、距離信号Lsから得られる距離データがボディエリアとして記憶装置に記憶されている距離データ(センシング閾値)の範囲内に入ると、制御器40は、駆動部20を制御して、図3Aの上向きの矢印で示した進行方向96へ向けて補助フレーム10を駆動して、歩行補助器を進行方向96に移動させる。
【0054】
そして、この図3Aの状態から離れ過ぎず且つ近づきすぎない距離である図3Bに示す操作エリア90の範囲内にユーザーが留まり続けると、ユーザーの歩行を補助するように本発明の実施形態による歩行補助器は進行方向にユーザーと共に動き続ける。
【0055】
一方、ユーザーが歩行補助器の進行速度よりも所定の期間内(例えば0.2秒間や0.5秒間等)に素早く移動すると、ユーザーが歩行補助器の距離センサー32に近づき過ぎることとなり、距離信号Lsから得られるユーザーが今何処にいるか(距離センサー32からどの程度離れているか)を示す距離信号Lsから得られる距離データは、ボディエリアの近端境界Lpから外れる(すなわち、距離センサー32に接近しすぎ又は距離センサー32と接触する)こととなる。
【0056】
このとき、制御器40は駆動部20を制御して歩行補助器の移動を停止する。このように、瞬間的にユーザーの移動速度が加速するようなケースでは、ユーザーが突然進行方向の前側へ転倒しそうになりながらも踏みとどまっていることが予想されるが、このような不測の事態が生じた場合でも、本発明による歩行補助器は、ユーザーの転倒を食い止めるように進行方向への急激な移動を制限するので、ユーザーの転倒防止の可能性を軽減することができる。
【0057】
また、本発明の実施形態では、記憶装置に記憶されるセンシング閾値には、図3に示すように快適利用距離Lmに対応したデータが含まれる。ここで、快適利用距離Lmは、ユーザーが操作エリア90上に立ち、最も快適な状態で補助フレーム10を保持し得る距離に対応する。
【0058】
また、本実施形態では、「快適利用距離Lm」を中心とした所定の範囲を「快適利用エリア」と呼び、「快適利用エリア」の範囲であれば「快適利用距離Lm」と丁度同じ距離にユーザーがいなくても比較的快適な状態で本実施形態による歩行補助器を使用し得る。
【0059】
ここで、例えば、「快適利用距離Lm」はボディエリアを形成する距離範囲の概ね中間(要するに、LpとLdの両者の距離を足して2で割った距離)である最も使い易い距離に位置する。そして、ボディエリアを超えない範囲内で、この快適利用距離Lmを中心として、距離センサー32に近づいた方向及び距離センサー32から遠ざかる方向へ所定の幅を持たせたものが「快適利用エリア」となる。
【0060】
ここで、「快適利用エリア」はボディエリアの近端境界Lpから遠端境界Ldと全く同じ距離範囲としても差し支えないが、それより若干狭くしても良い。
【0061】
そして、本実施形態では、制御器40は、距離信号Lsから得られる距離データが、ボディエリアのみならず、快適利用エリアにも入るときに、駆動部20で補助フレーム10を駆動するよう制御して歩行補助器を進行方向に移動させることができる。
【0062】
このように、快適利用エリアの設定範囲を、ボディエリアの近端境界Lpと遠端境界Ldよりも若干「快適利用距離Lm」寄りに狭くしてやることにより、ボディエリアにユーザーが入ると直ぐに歩行補助器が動き始めるのではなく、快適利用エリアに入ってから動き始めるので、ユーザーは時間的なゆとりを持って本実施形態による歩行補助器を利用することができる。
【0063】
なお、上述した遠端境界Ld、近端境界Lp、快適利用距離Lm、及び快適利用エリアは、必要に応じてユーザーが設定できる。例えば、体の大きなユーザーの場合には、快適利用距離Lmを長く設定すると共に快適利用エリアの範囲も広くとることが考えられる。
【0064】
また、本実施形態では、遠端境界Ld、近端境界Lp、快適利用距離Lm、快適利用エリア等の各種のセンシング閾値は、制御器に内蔵された記憶装置又は外部の記憶装置に記憶されるのは上述した通りである。
【0065】
また、ユーザーの移動速度は、予め一般的な歩行者であるユーザーの移動速度に関するデータを記憶装置に記憶しておく(第1の設定値)こともできるが、例えばリハビリの内容や強度等に基づいてユーザーが自ら移動速度を変更して設定(第2の設定値)しても良い。なお、このように複数のモードから選択できることを「速度制御モード」という。
【0066】
また、本実施形態では、ユーザーが上述した遠端境界Ldに入ると、制御器40は、距離信号Lsを所定間隔で連続して出力することによりユーザーの移動速度を繰り返し検出し、急激にユーザーの移動速度が上昇した等の異常が検出されなければ、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御して進行方向96に移動する。
【0067】
また、本実施形態によれば、制御器40は、ユーザーの移動速度を算出しても差し支えない。すなわち、制御器40はユーザーが遠端境界Ldに入った時刻aとユーザーが快適利用距離Lmに到達した時刻bの2種類を記録する。遠端境界Ldから快適利用距離Lmまでの距離を、上述した時刻aと時刻bの時間差で割ればユーザーの移動速度を算出できる。
【0068】
また、制御器40は、ユーザーが遠端境界Ldに入ってから快適距離Lmに入るまでの時間(例えば1秒間)を、更に細かい複数のサブタイムセクション(例えば一つのセクションを0.1秒として、10個のサブタイムセクションを準備する。)に分けてサブタイムセクション毎の移動速度を求めてこれらの中央値又は平均値をユーザーの移動速度と判断しても良い。
【0069】
また、本実施形態では、制御器40は、駆動部20に補助フレーム10の移動速度を動的に調整する(動的調整モードという。)ようにして駆動させることができる。
【0070】
具体的には、制御器40は、移動速度に応じて補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御した後、ユーザーの移動速度を連続的に算出し、補助フレーム10を駆動部20によって駆動して移動速度を調整する。
【0071】
例えば、駆動部20が補助フレーム10を駆動して移動を開始した後に、制御器40は、ローリング補正方法を用いてユーザーの移動速度を再計算する。ここで、ローリング補正方法について説明する。
【0072】
本実施形態によるローリング補正方法では、制御器40は、新たに移動速度を取得しようとする時刻より前の時刻である複数の所定時刻におけるユーザーの位置データと時刻データに加えて、新たに移動速度を取得しようとする時刻におけるユーザーの位置データおよび時刻データを組み合わせて、新たに移動速度を算出する。
【0073】
なお、このような方式で新たな移動速度を算出した場合、駆動部20が補助フレーム10を駆動して移動させる際、距離信号Lsに基づいて制御器40によって算出される新たな移動速度は、絶対速度ではなく相対速度となることに留意されたい。したがって、制御器40は、駆動部20の移動速度を制御するために使用するには、相対速度と絶対速度を変換しなければならない場合がある。
【0074】
また、本実施形態では、前述の速度制御モードのうちの2種類以上を組み合わせて利用することができる。例えば、ユーザーは、第1の設定値又は第2の設定値を選択して先ず歩行補助器の動作を開始する。そして、駆動部20が歩行補助器を駆動させはじめた後に、上述した「動的調整モード」を利用して駆動しても良い。
【0075】
再び、図1図2を参照して説明する。本実施形態では、歩行補助器は車輪付きの歩行補助器であり、駆動部20は、図2に示すように、駆動回路22、電動機24、及び駆動輪26を備える。これらのうち電動機24と駆動輪26は図1に示すように、補助フレーム10の底部14側に設けられる。ただし、駆動回路22は制御器40及び電動機24と電気的な接続が得られれば足りるため、底部14に取り付けても良く、電線を一本準備して本体12側に取り付けて該電線で電気的に接続しても良く、それ以外の例えば椅子18の下側に取り付けても差し支えない。
【0076】
図1の実施形態では、駆動部20は、2つの駆動回路22、2つの電動機24、2つの駆動輪26、及び2つの従動輪28を備える。
【0077】
制御器40は、駆動回路22が電動機(電気モーター)24を駆動して動作させるように駆動回路22を制御して駆動輪26を回転させる。このようにして、駆動輪26は補助フレーム10を帯同して回転する。図3Aを例として説明すると、駆動輪26は、補助フレーム10を帯同するようにして補助フレーム10を進行方向96に移動させる。
【0078】
本実施形態では、駆動部20は、2つの独立した駆動機構を含み、これら独立した駆動機構は、それぞれ駆動回路22、電動機24、及び駆動輪26を備える。なお、これらの構成要素の動作はすでに述べたので再度の説明は行わない。
【0079】
次に、図4A図4Cを参照して本実施形態による歩行補助器を説明する。本実施形態では、センサー部30は、複数の距離センサー32a、32bを備え、センシング閾値には、ボディエリア(Ld、Lp)が含まれる。
【0080】
距離センサー32a、32bのそれぞれは、操作エリア90を感知し、距離信号La、Lbを出力するために使用される。距離センサー32aと、距離センサー32bによって感知される操作エリア90の範囲は、実質的に異なる。ここで、実質的に異なるとは、図4Aに示すように、距離センサー32aはユーザーの左側の位置を検出できるように設けられる一方、距離センサー32bはユーザーの右側の位置を検出できるように設けられるので、ユーザーが歩行補助器のセンサー部30に対して傾斜するように立っていてもその傾き具合が分かる。
【0081】
制御器40は、距離信号La、Lbがボディエリアに入ると、即ち、距離信号La、Lbから得られる距離データが記憶装置に記憶されているボディエリアの数値データ(センシング閾値)の範囲に入ると、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御して、歩行補助器を進行方向に移動させる。
【0082】
図4Aに示す実施形態は、例として2つの距離センサー32a、32bの場合を示しているが、これに限定されず、水平に配置された3つ又は4つの距離センサーを設けても良い。
【0083】
また、各距離センサー32a、32bによって感知される操作エリア90の領域は、先細の領域である。すなわち、図4Aの場合、距離センサー32a側が細く、距離センサー32aから離れるにしたがって感知し得る領域が喇叭状に広がっていく。すなわち、近端境界Lpにすら届かない距離センサー32aに極めて近い位置の場合には、距離センサー32aが感知できるエリアと、距離センサー32bが感知できるエリアは重ならないが、遠端境界Ldを超える程にセンサー部30から離れた位置では、一部のエリアは距離センサー32aでも感知でき、距離センサー32bでも感知できる。
【0084】
よって、距離センサー32a、32bによって感知される操作エリア90は実質的に異なり、それらが完全には重ならない。このようにして、複数の距離センサー32で感知し得るエリアをずらすことによってユーザーの様々な部位を感知できる。
【0085】
また、本実施形態では、制御器40は、距離信号La、Lbから得られるユーザーまでの距離を示す距離データが、ボディエリアとして記憶装置に記録されている距離データ(センシング閾値)の範囲から外れるほどにユーザーが遠くにいる場合(すなわち、遠端境界Ldより遠い)に移動を停止するように駆動部20を制御する。
【0086】
制御器40は、距離信号La及びLbのすべてがボディエリア内にあるときに、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御して、歩行補助器を進行方向96に移動させる。
【0087】
また、本実施形態では、制御器40が距離信号La、Lb、快適利用距離Lm、及び快適利用エリアを決定する方法は、図3A、3B、3Cで説明した方法と同じなので説明を省略する。
【0088】
また、距離信号La、Lbの一方がボディエリアにあり、他方が遠端境界Ldよりも遠い場合において、歩行補助器が移動しているならば、制御器40は、歩行補助器を元通り移動させる状態を保つ。
【0089】
一方、距離信号La、Lbの一方がボディエリアにあり、距離信号La、Lbの他方が遠端境界Ldより遠い場合において、歩行補助器が静止状態にある場合には、制御器40は駆動部20を駆動して補助フレーム10を動作させるのを一時的に見合わせる。
【0090】
次に、距離信号La、Lbの両方がボディエリアに入る場合には、制御器40は、補助フレーム10を駆動するように駆動部20を制御して、以下の1)~4)のモードで動作を開始する。
【0091】
ここで、1)モードは距離信号La、Lbの両方がボディエリアに入る場合である。2)モードは、距離信号LaとLbの両方がボディエリアに入り且つ所定の時間を経過した場合である。3)モードは、距離信号La、Lbのいずれかが快適利用エリアにある場合である。そして、4)モードは、距離信号La、Lbの両方が快適利用エリアの範囲に入っている場合である。なお、これらの4つのモードは例示であってこれには限られない。
【0092】
また、本実施形態では、センシング閾値は、近接エリア(LnからLpの範囲をいう。また、Lnは近接境界とも称する)を含む。そして、この近接エリア(Ln、Lp)とセンサー部30との間の距離は、ボディエリア(Lp、Ld)とセンサー部30との間の距離よりも実質的に短い。
【0093】
また、図4B、4Cに示すように、距離信号La、Lbのいずれか1つが近接エリア(Ln、Lp)に入ると、制御器40は、駆動部20が補助フレーム10を駆動して歩行補助器が回転方向に回転するように制御する。要するに、距離信号La、Lbのいずれか1つから得られるユーザーまでの距離を示すデータが、近接エリアとして記憶装置に記憶されている距離を意味する2個(Ln、Lp)のセンシング閾値の範囲に入ると、制御部40が旋回動作をするように制御を開始する。
【0094】
本実施形態では、「近接エリア(Ln、Lp)とセンサー部30との間の距離は、ボディエリア(Lp、Ld)とセンサー部30との間の距離よりも実質的に短い」とは、近接エリア(Ln、Lp)とボディエリア(Lp、Ld)はその境界部分が部分的に重なり合うか、重ならないように両エリアがずらされ、互いに隣り合う境界があることを意味する。なお、図4Aの実施形態では、Lpの位置は近接エリアとボディエリアの境界を意味しており、両エリアが隣り合っていることを意味する。
【0095】
また、図4B、4Cに示すように、距離信号La、Lbのいずれか1つが近接エリア(Ln、Lp)に入ると、制御器40は、補助フレーム10を駆動して回転方向に回転させるように駆動部20を制御する。ここで、当該回転方向は、距離信号La、Lbに対応しており、図4Bのように距離信号Laが快適利用エリア内であるが、距離信号Lbが近接エリアに入っている場合には、ユーザーは左へ曲がりたいので、回転方向は反時計回りとなる。同様の理由で、図4Cのケースでは時計回りに回転する。
【0096】
つまり、本実施形態では、回転方向は、距離信号LaおよびLbのうち、センサー部30からユーザーまでの距離が長い方に対応し、これは、図4Bを例にとると、制御器40が駆動部20を制御して左に曲がることを意味する。同様に、図4Cを例にとると、制御器40は、駆動器20を制御して右に曲がることを意味する。
【0097】
制御器40は、駆動部20を制御して右に(時計回りに)回転する場合、図1の駆動部20に備えられた前輪である2個の駆動輪26を例としてとると、制御器40は、右側の駆動輪26を静止させる一方で、左側の駆動輪26のみを回転させる。このように制御することにより、右側の駆動輪26を回転軸として左側の駆動輪26が時計回りに回転して歩行補助器は向きを変えることができる。
【0098】
また、他の実施形態としては、制御器40は、右側の駆動輪26の回転速度を、左側の駆動輪26の回転速度よりも低くなるように制御しても良く、この場合には回転半径は右側の駆動輪26を静止させた場合より大きくなるが、同様に時計回りに回転できる。
【0099】
本実施形態では、駆動部20は、2つの駆動回路22、2つの電動機24、2つの駆動輪26、2つの従動輪28、及び2つのステアリング機構(図示せず)を備える。制御器40は、これらの方向転換をするための構造を制御して、歩行補助器を右または左に曲げることができる。
【0100】
また、本実施形態では、駆動部20は車輪からなる構造が採用されている。具体的には、駆動部20は、駆動回路22、電動機24、ステアリング機構(図示せず)、駆動輪26、及び2個の従動輪28を備える。制御器40は、ステアリング機構のステアリングを制御して、右又は左に曲がるように制御する。
【0101】
ここで、本実施形態による駆動部20は2系統準備されており、駆動部20は、制御器40の命令に基づいて、それぞれ独立して動く2個の駆動回路22と、独立して動く2個の駆動輪26と、独立して動く2個の電動機24に加えて、2個の従動輪28を備える。
【0102】
制御器40はこれら2系統の駆動回路22が、2個の電動機(電気モーター)24をそれぞれ回して、2個の駆動輪26の回転を独立して制御することにより歩行補助器を旋回させる。
【0103】
また、本実施形態では、距離信号La、Lbがすべて近接エリア(Ln、Lp)に入るとき、制御器40は、駆動部20を制御して、歩行補助器を停止させる。
【0104】
また、他の実施形態としては、距離信号La、Lbのいずれか一方が近接エリア(Ln、Lp)に入り、距離信号La、Lbのいずれか他方から得られる位置が、遠端境界Ldよりも遠い(ボディエリアから外れている)場合、制御器40は駆動部20を制御して、歩行補助器を停止させる。
【0105】
また、本実施形態では、制御器40は、距離信号La、Lbに基づいて移動速度を取得し、制御器40が、駆動器20を制御して、補助フレーム10を駆動して、所定の移動速度で進行方向に移動するように制御する。また、上述した補助フレーム10を所定の移動速度で時計回り又は反時計回りに回転させる。
【0106】
また、図4に示した実施形態で、制御器40が距離信号La、Lbに従って移動速度を取得する方法は、前述の「図3Aの距離信号Lsに従って移動速度を取得する方法」に記載されている方法と同じようにして、距離信号Laと距離信号Lbから得られる移動速度をそれぞれ取得することができる。
【0107】
そして、距離信号Laと距離信号Lbの2つを足してから平均するか、距離信号La、又は距離信号Lbの平均値を直接使用して、前述の「距離信号Lsに基づいて移動進行度を取得する図3Aの方法」に準じて移動速度を取得する。
【0108】
前述の制御器40は、所定の移動速度に応じて歩行補助器を旋回するように補助フレーム10を制御する。制御器40は、例えば直進する場合と同じ移動速度で2個の駆動器20を制御して、補助フレーム10を回転させることができる。
【0109】
また、本実施形態では、制御器40は、駆動器20を制御して、補助フレーム10を駆動して、移動速度を所定倍率に調整して回転させることができる。所定の倍率は、回転(時計回り反時計回りに旋回)に必要な速度に応じて、例えば0.6から1.2の間で調節できるものとするが、他の範囲でも差し支えなく、要するに、直進する際の速度よりも若干速度を落とした状態で旋回させることもできる。
【0110】
再び、図4A、4B、及び4Cを参照して説明する。本実施形態では、センシング閾値は、サイドボディエリアを含む。制御器40は、距離信号Laと距離信号Lbの間の差があるときに、補助フレーム10を駆動して回転方向に回転させるように駆動部20を制御する。
【0111】
すなわち、距離信号Laから得られるユーザーの左上半身までの距離と、距離信号Lbから得られる右上半身までの距離に差異があり、例えば図4Bのように左前方を向いているような場合である。また、前記距離信号La、Lbの最大差異値がサイドボディエリアの範囲に入るとき、即ち、距離信号La、Lbから得られる距離の差異値が、センシング閾値として記憶されている範囲を超えると、制御器40は、駆動部20が補助フレーム10を帯同して回転方向へ回転するように制御する。
【0112】
本実施形態では、サイドボディエリアの範囲は20cm~40cmであり、前述の距離信号La、Lb間の最大の差異値は、La-Lbの絶対値である。
【0113】
該最大の差異値がサイドボディエリアに入る(センシング閾値を超える)ときは即ちユーザーが回転しようとしていることを意味し、このため、制御器40は、駆動部20が補助フレーム10を帯同して距離信号の中で最大を示すものの方向へ回転する(要するに、例えば図4Cの実施形態なら右折する)。
【0114】
即ち、制御器40は、駆動部20を制御して、補助フレーム10を駆動して、距離信号から得られるユーザーまでの距離がセンサー部30からより離れている方へ回転させる。
【0115】
例えば、図4Cを例に挙げて説明すると、距離信号Laから得られる距離がセンサー30から20cm離れており、距離信号Lbから得られる距離がセンサーから30cm離れている場合には、右上半身が進行方向に対して後ろ側に位置している状態、即ち右に傾いて進行方向を向いていると判断し、時計回りに回転する。
【0116】
前記実施形態において、センサー部30は、3個以上の距離センサー32a、32b、32c(図示せず)を備えていても良く、この時、距離信号La、Lbの最大の差異値がサイドボディエリアに入るか否か判断し(つまり、センシング閾値として記憶装置に記録されている距離データを超えるか判断し)、ユーザーが回転しようとする意図があるか判断する。
【0117】
この結果、本実施形態による歩行補助器は、ユーザーが回転方向を示すボタンを押したりハンドルを曲げたりしなくても、制御器40がユーザーの状態からユーザーの意図を判断することができる。
【0118】
また、制御器40は、距離信号Laと距離信号Lbの差異が正常な動作をしていることを意味する許容範囲にあるかどうかを判断することにより、ユーザーが方向転換する意図があるか判断する。
【0119】
例えば、距離信号Laから得られるユーザーまでの距離が20cmで、距離信号Lbから得られるユーザーまでの距離が22cmで、両者に2cmしか差異がない場合には許容範囲に入り、方向転換する意思がないものと制御器40が判断する。
【0120】
一方、例えば、距離信号Laから得られるユーザーまでの距離が20cmで、距離信号Lbから得られるユーザーまでの距離が35cmで15cmもの差異がある場合には、ユーザーが直進したいと判断し得る許容範囲を外れ、方向転換する意思があるものと制御器40が判断する。
【0121】
次に、図5図6を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、図5は、本実施形態による歩行補助器の上面図を示している。一方、図6Aは横スキャニング信号Psと上限進行特徴データ曲線Pu及び下限進行特徴データ曲線Plの関係を示した図である。また、図6B、6Cはそれぞれ右曲がり回転特徴データ曲線Trと、左曲がり回転特徴データ曲線Tlを説明する図である。
【0122】
この実施形態では、センサー部30は、幅方向スキャンセンサー32cを備える。そして、幅方向スキャンセンサー32cが検知した信号と比較され得るセンシング閾値には上限進行特徴データ曲線(Pu)、下限進行特徴データ曲線(Pl)が含まれる。
【0123】
幅方向スキャンセンサー32cは、操作エリア90を水平方向、即ち幅方向にスキャニングし、横スキャニング信号Psから得られるユーザーまでの距離が上限進行特徴データ曲線(Pu)、下限進行特徴データ曲線(Pl)に入るかどうかによって、つまりセンシング閾値を超えるか否かによって、制御器40の動作が変化する。そして、幅方向スキャンセンサー32cからユーザーまでの距離がこれらPu、Plの範囲に入れば、駆動部20は、補助フレーム10を駆動して進行方向に移動するように制御される。
【0124】
また、本実施形態では、幅方向スキャンセンサー32cは幅方向(水平方向)へ走査して距離を測る距離センサーである。なお、幅方向スキャンセンサー32cの水平方向へのスキャニングは、地面と同じ高さである必要はなく、例えば地面から1m高い場所を水平方向へスキャンしても良い。
【0125】
また、幅方向スキャンセンサー32cの水平方向へ走査する横スキャニング信号Psから得られるユーザーまでの距離と、上限進行特徴データ曲線Pu、下限進行特徴データ曲線Plとして記憶装置に記録された距離データであるセンシング閾値とを比較することにより、制御器40が歩行補助器の動作を判断する。
【0126】
図6Aのグラフの横軸は、幅方向スキャンセンサー32cが水平方向に走査する幅を意味する。また、上述のように横スキャニング信号Psは、本実施形態では、上限進行特徴データ曲線Puと下限進行特徴データ曲線Plと比較されるが、これら上限進行特徴データ曲線Pu、下限進行特徴データ曲線Plは、操作エリア90に対応する。
【0127】
横スキャニング信号Psが上限進行特徴データ曲線Pu、下限進行特徴データ曲線Plのいずれかに入ると、すなわち、横スキャニング信号Psから得られるユーザーまでの距離が、操作エリア90に対応する上限進行特徴データ曲線Pu、下限進行特徴データ曲線Plのいずれかに入ると、制御器40は補助フレーム10を駆動して歩行補助器を移動させる。
【0128】
続いて、図6B図6Cを参照して本発明の実施形態を説明する。図6B図6Cは、それぞれ右曲がり回転特徴データ曲線Trと、左曲がり回転特徴データ曲線Tlはいずれもセンシング閾値であり、具体的には歩行補助器を回転させるか否か判断する際に利用される記憶装置に記録されたデータである。
【0129】
制御器40は、横スキャニング信号Psから得られたユーザーまでの距離が、センシング閾値を超えたと判断すると、駆動部20を駆動して補助フレーム10を回転方向に回転させるように制御する。また、本実施形態では、センシング閾値に図6Bに示した右折の条件と図6Cに示した左折の条件の両方を含む。
【0130】
したがって、ユーザーの位置が、右曲がり回転特徴データ曲線Tr又は左曲がり回転特徴データ曲線Tlを超えると、ユーザーが右方向又は左方向に旋回する意思があることを意味する。制御器40は、駆動部20を駆動して補助フレーム10を対応する回転方向に旋回させるように制御する。
【0131】
また、本実施形態では、制御器40は、横スキャニング信号Psが右曲がり回転特徴データ曲線Tr又は左曲がり回転特徴データ曲線Tlのうちのどちらの状態にあるかを決定するとき、以下に説明する右曲がり特徴範囲又は左曲がり特徴範囲を使用して、ユーザーの意図を判断することができる。
【0132】
本実施形態では、右曲がり特徴範囲は、所謂マージンであり、右方向へ回転させるときに右曲がり回転特徴データ曲線Trを超えたら直ちに回転を始めるのではなく、判断する値を適宜増加又は減少させることによって右曲がり特徴範囲は決定される。左曲がり特徴範囲についても右曲がり特徴範囲と同様である。なお、右と左でマージンの値は同じでも異なっていても差し支えない。
【0133】
なお、幅方向スキャンセンサー32cは、図示しないノイズを軽減するフィルタリング機能を備えた「センサー装置」であっても良い。この結果、幅方向スキャンセンサー32cで取得される横スキャニング信号Psが「センサー装置」によって信号処理されると、センサー装置から得られる距離データはノイズが少ないものとなる。
【0134】
なお、本実施形態では、幅方向スキャンセンサー32cの出力信号はノイズ軽減処理が行われていない信号でも良い。このとき、制御器40は、加算器(図示せず)を利用して該信号を平均化する処理を行い、後述する図7の要領でノイズを軽減する。
【0135】
なお、横スキャニング信号Ps(センシング信号)から得られる距離データをA/D変換して平均化するために複数回測定して加算器(図示せず)を使用して制御に不要なノイズ成分を減らしたデジタル値を得る方法は通常の測定装置と同じであるので、本願ではハードウェアの説明は必要最低限しか行わない。
【0136】
次に、図7Aを参照して説明する。ここで、図7Aは、本実施形態によるノイズ軽減処理を経た後の横スキャニング信号Psを示しており、具体的には横スキャニング信号Psから得られるユーザーまでの距離が時間の変化によってどのように変動するかを説明する図である。図7Aの横軸は時間であり、縦軸は距離である。
【0137】
図7Aに示すように、ノイズを軽減するフィルタリング処理(平均化)が行われる前の点線で表した信号Srについては例えば時間50(t)の少し手前で距離がマイナス30になる等、歩行補助器を通常どおり使用していたら発生し得ない挙動を示しており、横スキャニング信号Psから得られるユーザーまでの距離の変動値が大きく、時間によって距離のばらつきが大きい。一方、図7Aから明らかなように、ノイズを軽減するフィルタリング処理を行った実線で示された信号Sdについては時間の変化に伴う極端な距離変動は起きていない。
【0138】
次に、図7Bを参照してノイズを軽減するフィルタリング処理を説明する。本実施形態による横スキャニング信号Psのフィルタリングの様子を示す図7Bを参照して説明する。図7Bにおいて太い実線で描かれている信号Sfは、フィルタリング処理後の信号であるが、図7Aで得られた信号Sdよりも更に動きが滑らかなのを確認できる。
【0139】
よって、制御器40がフィルタリング後の信号Sfをユーザーまでの距離として使用して判断することにより、ユーザーの意図をより正確に判断し、対応する正しいアクションを行うことができる。
【0140】
なお、図示しない加算器によって加算・平均化する回数を増やせばそれだけ滑らかになるのは通常の測定装置の原理と同様なので、Sdから更にSfを得る方法は説明しない。つまり、Sfについては単位時間内により多くのサンプルとなる距離データを取得して多くのデータの平均値を出したものである。
【0141】
また、本実施形態では、制御器40は、横スキャニング信号Psに基づいて進行速度を取得し、駆動部20を駆動して補助フレーム10を所定の速度で進行方向に移動するように制御し、又は、所定の進行速度で時計回り又は反時計回りに補助フレーム10を備えた歩行補助器を旋回させる。なお、旋回させる方法は上述した内容と同様なので説明を省略する。
【0142】
次に、図8A図8Bを参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、図8A図8Bは本実施形態による歩行補助器の側面図である。
【0143】
本実施形態では、センサー部30は、トップセンサー32dを備え、センシング閾値には「トップ距離エリア」が含まれる。トップセンサー32dは、トップ信号Lhを利用して「トップエリア92」の内部に入ったユーザーの体の一部を感知することができる。また、制御器40は、トップ信号Lhを利用してユーザーまでの距離を測るが、トップ信号Lhから得られるユーザーが「トップ距離エリア」にいないと判断した場合には駆動部20を駆動して補助フレーム10の動きを停止するよう制御する。
【0144】
なお、本実施形態では、「トップ距離エリア」は「トップエリア92」に対応しており、一致していても差し支えない。なお、「トップ距離エリア」には、上限距離と下限距離が含まれるが、詳細は先に説明した実施形態と同様なので説明を省略する。
【0145】
本実施形態では、ユーザーが通常通り歩行補助器を使用する場合、トップ信号Lhは「トップ距離エリア」に入る。しかし、ユーザーが進行方向に対して後方に倒れたり、図8Bに示すように前方に倒れると、トップ信号Lhから得られるユーザーまでの距離は、トップ距離エリアから外れる。
【0146】
このように、トップ信号Lhから得られる距離が、トップ距離エリア内に収まらないときに、制御器40は、駆動部20を駆動して補助フレーム10の移動を停止するように制御する。このため、図8Bに示すように仮にユーザーが前方に倒れた場合でも、本発明による歩行補助器が所謂突っ支い棒としての役割を奏し、ユーザーの安全性が高まる。
【0147】
次に、図9図10A、10B、10Cを参照して説明する。ここで、図9は本実施形態による歩行補助器の側面図である。また、図10Aは、本実施形態による垂直スキャニング信号を示している。図10Bと10Cは、それぞれユーザーが進行方向の後ろ側へ倒れた場合と前側に倒れた場合の判定方法を説明するための図である。
【0148】
本実施形態では、センサー部30は、垂直スキャニングセンサー32eを備え、センシング閾値には、後側異常判定データ曲線(図10BのVb)と前側異常判定データ曲線(図10CのVf)が含まれる。
【0149】
そして、垂直スキャニングセンサー32eは、操作エリア90を垂直に(縦方向に)走査し、垂直スキャニング信号Vsを出力する。垂直スキャニング信号Vsから得られる距離(この実施形態では高さ方向の距離)が、後側異常判定データ曲線(Vb)、又は前側異常判定データ曲線(Vf)のいずれかに入ると、駆動部20は、補助フレーム10の動きを停止するように制御器40によって制御される。
【0150】
ここで、垂直スキャニング信号Vsが後側異常判定データ曲線(Vb)又は前側異常判定データ曲線(Vf)の1つに入るとは、垂直スキャニング信号Vsから得られる距離データと、記憶装置に記憶されている異常であることを示すデータであるセンシング閾値とを比較して、両者が一致するか、垂直スキャニング信号Vsから得られる距離が、異常判定データ曲線として記憶されているデータ値(センシング閾値)を上回るという意味である。
【0151】
図10Bに示される異常判定データ曲線Vbは、ユーザーが後方に傾いている状況に対応しており、図10Cに示される異常判定データ曲線Vfは、ユーザーが前方に傾いているか歩行補助器が折りたたまれている状況に対応する。
【0152】
また、本実施形態では、垂直スキャニング信号Vsは、図10Aの上限判定データ曲線Vuと下限判定データ曲線V1との間にあるべきである。この状態では、制御器40は、ユーザーが正常状態にあると決定する。
【0153】
次に、図11を参照して本発明の実施形態を説明する。ここで、図11は本実施形態による歩行補助器の側面図である。歩行補助器は自身の傾斜角を感知するために使用される重力センサー38を備える。すなわち、この実施形態ではセンサー部30は更に重力センサー38をも備える。
【0154】
制御器40は、傾斜角が所定の傾斜角(上り坂を判定できる上限傾斜角と、下り坂を判定できる下限傾斜角と、平坦な道であることを判定できる平坦判定傾斜角を含む)のいずれかの範囲内にあるとき、傾斜角に基づいて駆動部20の駆動トルクを調整する。
【0155】
例えば図11のようにきつい上り坂の場合には記憶装置に記憶された上限傾斜角を示すデータを超える程に重力センサー38で検出される傾斜角も大きくなるので、その場合には駆動部20の駆動トルクを平坦な道よりも大きくするように制御器40が制御する。
【0156】
また、本実施形態では、重力センサー38は、補助フレーム10上に配置され、ユーザーが動くときの路面の傾斜角を感知するように、駆動輪26または従動輪28に相対するように配置される。
【0157】
本実施形態では、所定の傾斜角は、上り坂と下り坂を判別し得るように複数の範囲が設定される。図示しない記憶装置に記憶された上り坂を示すデータ範囲に、重力センサー38を介して得られた傾斜角が入る場合、制御器40は、駆動部20の駆動トルクを増加させる。
【0158】
一方、下り坂の場合、制御器40は、駆動部20の駆動トルクを制御して、補助フレーム10を安定した速度に維持する。要するに、下り坂を自重によって勝手に転がらないように制御する。
【0159】
また、本実施形態では、駆動トルクの調整値は、傾斜角に比例する。例えば、本実施形態において、現在の重力センサー38から得られる傾斜角が上り坂を示す所定の傾斜角よりも小さい場合、制御器40は、平坦な道でありトルクを調整する必要がないと判断して駆動部20の駆動トルクを大きく調整しない。
【0160】
また、本実施形態では、制御器40が駆動部20を制御して補助フレーム10を駆動して移動させる場合に限って、駆動部20の駆動トルクは制御器40によって傾斜角に基づいて調整される。要するに、歩行補助器がそもそも動いていない場合、つまり歩行補助器が停止状態にあるか又はトラックやタクシーに詰め込まれて運搬されているとき等は、制御器40は、傾斜角に基づいて駆動部20の駆動トルクを調整しない。
【0161】
以上を纏めると、本発明の複数の実施形態では、歩行補助器がユーザーの意図を感知し、対応する動きを発生させることができる。また、本発明の上述した複数の実施形態では、歩行補助器は、ユーザーが転倒する可能性があるときに停止し、ユーザーが転びにくいようにサポートできる。
【符号の説明】
【0162】
10 補助フレーム
12 本体
14 底部
16 グリップ部
18 椅子
20 駆動部
22 駆動回路
24 電動機
26 駆動輪
28 従動輪
30 センサー部
32 距離センサー
32a 距離センサー
32b 距離センサー
32c 幅方向スキャンセンサー
32d トップセンサー
32e 垂直スキャニングセンサー
38 重力センサー
40 制御器
90 操作エリア
92 トップエリア
96 進行方向
La 距離信号
Lb 距離信号
Ld 遠端境界
Lh トップ信号
Lm 快適利用距離
Ln 近接境界
Lp 近端境界
Ls 距離信号
Pl 下限進行特徴データ曲線
Ps 横スキャニング信号
Pu 上限進行特徴データ曲線
Sd 異常値除去処理信号
Sf 濾過信号
Sr 基本信号
Tl 左曲がり回転特徴データ曲線
Tr 右曲がり回転特徴データ曲線
Vb 後側異常判定データ曲線
Vf 前側異常判定データ曲線
Vl 下限判定データ曲線
Vs 垂直スキャン信号
Vu 上限判定データ曲線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図11