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特許7124881クロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】クロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20220817BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220817BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20220817BHJP
   G01N 30/46 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G01N30/26 A
G01N30/86 V
G01N30/02 Z
G01N30/46 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020552494
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2018039956
(87)【国際公開番号】W WO2020084785
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 覚
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/063886(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/068786(WO,A1)
【文献】特開2011-099679(JP,A)
【文献】特開2011-220789(JP,A)
【文献】特開2015-017924(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02581741(EP,A1)
【文献】Shim-pack Scepter LCカラム(カタログ),株式会社島津製作所,2018年09月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御装置であって、
各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するpH範囲登録部と、
各移動相のpHを登録するpH登録部と、
分析に用いるカラムを選択するカラム選択部と、
前記pH登録部に登録されているpHが、前記カラム選択部により選択されたカラムに対応付けて前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、前記選択されたカラムに供給されないように、前記クロマトグラフ装置を制御し、前記pH登録部に登録されているpHが、前記選択されたカラムに対応付けて前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、前記クロマトグラフ装置を制御する分析制御部と
各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する作成部とを備え
前記分析制御部は、前記バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するように前記クロマトグラフ装置を制御し、
前記作成部は、前記pH登録部に登録されているpHが、前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせが前記バッチファイルに含まれないよう前記バッチファイルを作成する、クロマトグラフ制御装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記pH登録部に登録されているpHが、前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となるカラムと移動相との組み合わせを前記バッチファイルから除外する、請求項1記載のクロマトグラフ制御装置。
【請求項3】
使用者の操作に基づいて、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が入力されるpH範囲入力部をさらに備え、
前記pH範囲登録部は、各カラムに対応付けて前記pH範囲入力部により入力されたpHの範囲を登録する、請求項1または2記載のクロマトグラフ制御装置。
【請求項4】
使用者の操作に基づいて、各移動相のpHが入力されるpH入力部をさらに備え、
前記pH登録部は、各移動相について前記pH入力部により入力されたpHを登録する、請求項記載のクロマトグラフ制御装置。
【請求項5】
分析に用いる移動相として前記複数の移動相を自動的に順次選択する移動相選択部と、
評価部とをさらに備え、
前記カラム選択部は、分析に用いるカラムとして前記複数のカラムを自動的に順次選択するように構成され、
前記分析制御部は、前記pH登録部に登録されているpHが、前記カラム選択部により選択されたカラムに対応付けて前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、前記選択されたカラムに供給されず、前記pH登録部に登録されているpHが、前記選択されたカラムに対応付けて前記pH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、前記選択されたカラムに供給されるように、前記クロマトグラフ装置を制御し、
前記評価部は、前記分析制御部により実行された分析の結果を評価する、請求項1~のいずれか一項に記載のクロマトグラフ制御装置。
【請求項6】
クロマトグラフ装置と、
請求項1~のいずれか一項に記載のクロマトグラフ制御装置とを備え、
前記クロマトグラフ装置は、
複数のカラムと、
複数の移動相のうちいずれかの移動相を前記複数のカラムのうちいずれかのカラムに供給する移動相供給部と、
前記カラムに試料を供給する試料供給部と、
前記カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む、クロマトグラフシステム。
【請求項7】
複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御方法であって、
各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するステップと、
各移動相のpHを登録するステップと、
分析に用いるカラムを選択するステップと、
登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、前記選択されたカラムに供給されないように、前記クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、前記選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、前記クロマトグラフ装置を制御するステップと
各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成するステップとを含み、
前記クロマトグラフ装置を制御するステップは、前記バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するように前記クロマトグラフ装置を制御することを含み、
前記バッチファイルを作成するステップは、登録されているpHが、登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせが前記バッチファイルに含まれないよう前記バッチファイルを作成することを含む、クロマトグラフ制御方法。
【請求項8】
複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御プログラムであって、
各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録する処理と、
各移動相のpHを登録する処理と、
分析に用いるカラムを選択する処理と、
登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、前記選択されたカラムに供給されないように、前記クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、前記選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、前記選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、前記クロマトグラフ装置を制御する処理と
各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する処理とを、
処理装置に実行させ
前記クロマトグラフ装置を制御するステップは、前記バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するように前記クロマトグラフ装置を制御することを含み、
前記バッチファイルを作成するステップは、登録されているpHが、登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせが前記バッチファイルに含まれないよう前記バッチファイルを作成することを含む、クロマトグラフ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフ装置の制御を行うクロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる物質を異なる成分ごとに分離する装置としてクロマトグラフ装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された液体クロマトグラフ装置においては、分析対象の試料がオートサンプラにより分離カラム(以下、単にカラムと呼ぶ。)に導入される。また、溶離液(移動相)が溶離液ポンプによりカラムに供給される。カラムに導入された試料は、化学的性質または組成の違いにより成分ごとに溶離され、検出器により検出される。
【文献】特開2008-224559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
クロマトグラフ装置においては、カラムの充填剤、カラムの寸法、カラムの温度、移動相の種類、移動相のpHおよび移動相の流量等の種々の分析条件の各々を適切に選択する必要がある。したがって、使用者は、種々の分析条件の組み合わせの各々について試料の分析を行い、適切な分析条件の組み合わせを探索する。しかしながら、分析条件によっては、カラムに負荷が加わることによりカラムが破損する可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、カラムの破損を防止することが可能なクロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一局面に従うクロマトグラフ制御装置は、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御装置であって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するpH範囲登録部と、各移動相のpHを登録するpH登録部と、分析に用いるカラムを選択するカラム選択部と、pH登録部に登録されているpHが、カラム選択部により選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、pH登録部に登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御する分析制御部と、各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する作成部とを備え、分析制御部は、バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するようにクロマトグラフ装置を制御し、作成部は、pH登録部に登録されているpHが、pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせがバッチファイルに含まれないようバッチファイルを作成する。
【0006】
このクロマトグラフ制御装置においては、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が、各カラムの識別情報に対応付けて登録され、各移動相のpHが登録される。分析に用いるカラムが選択される。ここで、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置が制御される。一方、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置が制御される。
【0007】
この構成によれば、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外であることにより、当該各カラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相が、当該カラムに供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
また、クロマトグラフ制御装置は、各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する作成部をさらに備え、分析制御部は、バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するようにクロマトグラフ装置を制御し、作成部は、pH登録部に登録されているpHが、pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせがバッチファイルに含まれないようバッチファイルを作成する。この場合、分析制御部は、バッチファイルに従って、登録されているpHがいずれかのカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相は当該カラムに供給されないようにクロマトグラフ装置を容易に制御することができる。
(2)作成部は、pH登録部に登録されているpHが、pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となるカラムと移動相との組み合わせをバッチファイルから除外してもよい。
【0008】
)クロマトグラフ制御装置は、使用者の操作に基づいて、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が入力されるpH範囲入力部をさらに備え、pH範囲登録部は、各カラムに対応付けてpH範囲入力部により入力されたpHの範囲を登録してもよい。この場合、使用者は、pH範囲入力部を操作することにより、各カラムの識別情報に対応付けて、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を容易に入力することができる。
【0009】
)クロマトグラフ制御装置は、使用者の操作に基づいて、各移動相のpHが入力されるpH入力部をさらに備え、pH登録部は、各移動相についてpH入力部により入力されたpHを登録してもよい。この場合、使用者は、pH入力部を操作することにより、各移動相のpHを容易に入力することができる。
【0010】
)クロマトグラフ制御装置は、分析に用いる移動相として複数の移動相を自動的に順次選択する移動相選択部と、評価部とをさらに備え、カラム選択部は、分析に用いるカラムとして複数のカラムを自動的に順次選択するように構成され、分析制御部は、pH登録部に登録されているpHが、カラム選択部により選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されず、pH登録部に登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されるように、クロマトグラフ装置を制御し、評価部は、分析制御部により実行された分析の結果を評価してもよい。
【0011】
この構成によれば、カラムと移動相との組み合わせに対応する分析結果が取得され、当該分析の結果が評価される。これにより、使用者は、試料の分析に最適なカラムと移動相との組み合わせを容易に判断することができる。また、カラムと移動相との組み合わせを変更しつつ分析を行う場合でも、各カラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相が、当該カラムに供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0013】
)本発明の他の局面に従うクロマトグラフシステムは、クロマトグラフ装置と、上記クロマトグラフ制御装置とを備え、クロマトグラフ装置は、複数のカラムと、複数の移動相のうちいずれかの移動相を複数のカラムのうちいずれかのカラムに供給する移動相供給部と、カラムに試料を供給する試料供給部と、カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む。
【0014】
このクロマトグラフシステムにおいては、クロマトグラフ装置により複数のカラムのうちいずれかのカラムにいずれかの移動相および試料が供給され、カラムを通過した試料が検出される。クロマトグラフ制御装置により、選択されたカラムを用いて分析が行われるようにクロマトグラフ装置が制御される。ここで、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0015】
(7)本発明のさらに他の局面に従うクロマトグラフ制御方法は、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御方法であって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するステップと、各移動相のpHを登録するステップと、分析に用いるカラムを選択するステップと、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御するステップと、各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成するステップとを含み、クロマトグラフ装置を制御するステップは、バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するようにクロマトグラフ装置を制御することを含み、バッチファイルを作成するステップは、登録されているpHが、登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせがバッチファイルに含まれないようバッチファイルを作成することを含む。
【0016】
このクロマトグラフ制御方法によれば、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0017】
(8)本発明のさらに他の局面に従うクロマトグラフ制御プログラムは、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御プログラムであって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相pHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録する処理と、各移動相のpHを登録する処理と、分析に用いるカラムを選択する処理と、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御する処理と、各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する処理とを、処理装置に実行させ、クロマトグラフ装置を制御するステップは、バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するようにクロマトグラフ装置を制御することを含み、バッチファイルを作成するステップは、登録されているpHが、登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせがバッチファイルに含まれないようバッチファイルを作成することを含む
【0018】
このクロマトグラフ制御プログラムによれば、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。なお、クロマトグラフ制御プログラムは、記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カラムの破損を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。
図2図2はクロマトグラフ装置の構成を示す模式図である。
図3図3はクロマトグラフ制御装置の構成を示す図である。
図4図4は表示部に表示されるカラム登録画面の一例を示す図である。
図5図5は表示部に表示される移動相登録画面の一例を示す図である。
図6図6は表示部に表示される移動相登録画面の他の例を示す図である。
図7図7はクロマトグラフ制御プログラムにより行われるクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図8図8図7のクロマトグラフ制御処理におけるバッチファイル作成処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
図9図9図7のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。
図10図10はクロマトグラフ制御プログラムにより行われる他のクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)クロマトグラフシステムの構成
以下、本発明の実施の形態に係るクロマトグラフ制御装置、クロマトグラフシステム、クロマトグラフ制御方法およびクロマトグラフ制御プログラムについて図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るクロマトグラフシステムの構成を示す図である。図1に示すように、クロマトグラフシステム300は、処理装置100およびクロマトグラフ装置200を含む。
【0022】
処理装置100は、CPU(中央演算処理装置)110、RAM(ランダムアクセスメモリ)120、ROM(リードオンリメモリ)130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F(インターフェイス)170により構成される。CPU110、RAM120、ROM130、記憶部140、操作部150、表示部160および入出力I/F170はバス180に接続される。CPU110、RAM120およびROM130がクロマトグラフ制御装置10を構成する。
【0023】
RAM120は、CPU110の作業領域として用いられる。ROM130にはシステムプログラムが記憶される。記憶部140は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含む。記憶部140には、クロマトグラフ装置200を制御するためのクロマトグラフ制御プログラムが記憶されている。なお、クロマトグラフ制御プログラムは、記憶部140とは異なる記憶媒体に記憶されていてもよい。CPU110が記憶部140等に記憶されたクロマトグラフ制御プログラムをRAM120上で実行することにより、後述するクロマトグラフ制御処理が行われる。
【0024】
操作部150は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。表示部160は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、クロマトグラフ制御装置10によるクロマトグラフ制御処理の実行画面等を表示する。入出力I/F170は、クロマトグラフ装置200に接続される。
【0025】
図2は、クロマトグラフ装置200の構成を示す模式図である。図2に示すように、本実施の形態においては、クロマトグラフ装置200は液体クロマトグラフ装置であり、移動相供給部210、試料供給部220、カラム恒温槽230および検出器240を備える。
【0026】
移動相供給部210は、2つの送液部211,212および混合部213を含む。また、移動相供給部210には、複数(図2の例では8個)の薬液ボトルB1~B8が設けられる。薬液ボトルB1~B4には、それぞれ異なる水溶液が薬液として貯留される。薬液ボトルB5~B8には、それぞれ異なる有機溶媒が薬液として貯留される。
【0027】
送液部211,212は、例えば送液ポンプである。送液部211は、薬液ボトルB1~B4のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれか1個以上の薬液ボトルに貯留された薬液を圧送する。送液部212は、薬液ボトルB5~B8のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれか1個以上の薬液ボトルに貯留された薬液を圧送する。なお、送液部211と薬液ボトルB1~B4との間、および送液部212と薬液ボトルB5~B8との間の各々には、図示しない脱気装置が介挿される。
【0028】
混合部213は、例えばグラジエントミキサである。混合部213は、送液部211により圧送された薬液と送液部212により圧送された薬液とを任意の割合で混合することにより種々の移動相を生成し、生成された移動相を供給する。試料供給部220は、例えばインジェクタである。試料供給部220は、分析対象の試料を移動相供給部210により供給された移動相とともに、後述するカラム231~233のうち、図示しない切替バルブにより選択された、いずれかのカラムに選択的に導入する。
【0029】
カラム恒温槽230の内部は所定の一定温度に調整される。カラム恒温槽230は、複数(本例では3個)のカラム231,232,233を収容する。各カラム231~233は、導入された試料を化学的性質または組成の違いにより成分ごとに分離する。検出器240は、各カラム231~233により分離された試料の成分を検出する。
【0030】
クロマトグラフ制御装置10は、カラム231~233と移動相との組み合わせを変更しつつ試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する。これにより、所望の試料を適切に分析するための分析条件の組み合わせを探索することができる。このような分析条件の組み合わせの探索は、メソッドスカウティングと呼ばれる。以下、クロマトグラフ制御装置10の構成について説明する。
【0031】
(2)クロマトグラフ制御装置の構成
図3は、クロマトグラフ制御装置10の構成を示す図である。図3に示すように、クロマトグラフ制御装置10は、機能部として、pH範囲入力部A、pH範囲登録部B、pH入力部C、pH登録部D、カラム選択部E、移動相選択部F、作成部G、分析制御部H、置換制御部I、取得部Jおよび評価部Kを含む。図1のCPU110が記憶部140等に記憶されたクロマトグラフ制御プログラムを実行することにより、クロマトグラフ制御装置10の機能部が実現される。クロマトグラフ制御装置10の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0032】
pH範囲入力部Aは、図2の各カラム231~233を用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を、各カラム231~233の識別情報に対応付けて入力するためのカラム登録画面を表示部160に表示させる。また、pH範囲入力部Aには、各カラム231~233を用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が、各カラム231~233の識別情報に対応付けて操作部150から入力される。
【0033】
図4は、表示部160に表示されるカラム登録画面の一例を示す図である。図4に示すように、カラム登録画面161は、複数の情報入力部1,2を含む。各情報入力部1,2は、文字列を入力するための欄またはプルダウンメニューである。使用者は、操作部150を用いて情報入力部1を操作することにより、各カラム231~233を用いて分析する際の移動相のpHの範囲を入力することができる。また、使用者は、操作部150を用いて情報入力部2を操作することにより、各カラム231~233の識別情報(本例では、当該カラムの名称、ブランド、固定相、耐圧、カラム充填剤の粒子径、カラムの内径またはカラムの長さ等を含む。)入力することができる。
【0034】
pH範囲登録部Bは、pH範囲入力部Aに入力された移動相のpHを、当該カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲として、pH範囲入力部Aに入力された識別情報により特定されるカラムに対応付けて登録する。
【0035】
pH入力部Cは、分析に用いる各移動相のpHの入力を受け付けるための移動相登録画面を表示部160に表示させる。また、pH入力部Cには、各移動相のpHが操作部150から入力される。分析に用いる移動相は、薬液ボトルB1~B8に貯留された各薬液を含む。薬液ボトルB1~B4に貯留された薬液、または薬液ボトルB5~B8に貯留された薬液がブレンディングされた薬液を移動相として用いることも可能である。また、薬液ボトルB1~B4に貯留されたいずれかの薬液と薬液ボトルB5~B8に貯留されたいずれかの薬液との混合液を移動相として用いることも可能である。
【0036】
図5は、表示部160に表示される移動相登録画面の一例を示す図である。図5に示すように、移動相登録画面162は、複数の情報入力部3,4を含む。各情報入力部3,4は、文字列を入力するための欄またはプルダウンメニューである。使用者は、操作部150を用いて情報入力部3を操作することにより、各移動相のpHを入力することができる。また、使用者は、操作部150を用いて各情報入力部4を操作することにより、当該移動相の名称等を入力することができる。
【0037】
図6は、表示部160に表示される移動相登録画面162の他の例を示す図である。図6の例では、移動相登録画面162は、複数の情報入力部5をさらに含む。各情報入力部5は、文字列を入力するための欄またはプルダウンメニューである。複数の情報入力部5には、複数の薬液をブレンディングする場合における各薬液の名称およびブレンディングの比率を入力可能である。使用者は、操作部150を用いて各情報入力部3~5を操作することにより、移動相のpH、移動相の名称、各薬液の名称およびブレンディングの比率を入力することができる。
【0038】
pH登録部Dは、pH入力部Cに入力された名称、当該移動相における各薬液の名称およびブレンディングの比率等により特定される移動相について、pH入力部Cに入力されたpHを登録する。
【0039】
カラム選択部Eは、操作部150からの指示に基づいて、カラム231~233のうちいずれかのカラムを選択する。使用者は、操作部150を操作することにより、カラム231~233のうち所望のカラムを指示することができる。また、カラム選択部Eは、後述するメソッドスカウティング処理時には、分析に用いるカラムとして複数のカラム231~233を自動的に順次選択する。
【0040】
移動相選択部Fは、操作部150からの指示に基づいて、分析に用いる移動相を選択する。使用者は、操作部150を操作することにより、分析に用いる移動相として、移動相供給部210により供給可能な液体のいずれかを指示することができる。また、移動相選択部Fは、後述するメソッドスカウティング処理時には、分析に用いる移動相として複数の移動相を自動的に順次選択する。
【0041】
作成部Gは、カラム231~233と移動相との種々の組み合わせを用いて試料の分析を行うためのバッチファイルを作成する。ここで、pH登録部Dにより登録されているいずれかの移動相のpHが、pH範囲登録部Bによりいずれかのカラムの識別情報に対応付けて登録されているpHの範囲外である場合には、当該移動相は、当該カラムに負担を与える可能性がある。そのため、作成部Gは、当該移動相と当該カラムとの組み合わせをバッチファイルから除外する。
【0042】
分析制御部Hは、移動相選択部Fにより選択された移動相がカラム選択部Eにより選択されたカラムに供給されつつ試料の分析を行うようにクロマトグラフ装置200を制御する。また、後述するメソッドスカウティング処理時には、分析制御部Hは、カラム選択部Eにより選択されたカラム、移動相選択部Fにより選択された移動相および作成部Gにより作成されたバッチファイルに基づいて、カラム231~233と移動相との組み合わせを変更しつつ試料の分析を行うようにクロマトグラフ装置200を制御する。これらの場合において、登録されているpHが、カラム231~233に対応付けて登録されているpHの範囲外の移動相は、当該カラム231~233に供給されない。
【0043】
分析制御部Hにより分析に用いる移動相が変更された直後には、カラム231~233を含むクロマトグラフ装置200の流路内に変更前の移動相が残存する。そのため、移動相の変更後、次の分析が直ちに行われると、当該移動相についての正確な分析結果を得ることができない。そこで、置換制御部Iは、分析に用いる移動相が変更された場合、流路内に残存する変更前の移動相が変更後の移動相により置換されるようにクロマトグラフ装置200を制御する。分析制御部Gによる変更後の移動相についての次の分析は、置換制御部Iの動作後に行われる。
【0044】
取得部Jは、クロマトグラフ装置200による試料の成分の検出結果を取得し、取得された検出結果を処理することにより、各成分の保持時間と検出強度との関係を示すクロマトグラムを生成する。評価部Kは、取得部Jにより生成されたクロマトグラムが示す成分の分離度に基づいて当該クロマトグラムの良否を評価する。また、評価部Kは、クロマトグラムの評価結果と当該クロマトグラムが生成されたときの分析条件の組み合わせとを対応付けて表示部160に表示させる。
【0045】
使用者は、表示部160に表示された評価結果を視認することにより、最適な分析条件の組み合わせを認識することができる。なお、表示部160には、生成された全部のクロマトグラムの評価結果が表示されてもよいし、一定以上の良好度を有するクロマトグラムの評価結果のみが表示されてもよいし、最も高い良好度を有するクロマトグラムの評価結果のみが表示されてもよい。全部のクロマトグラムの評価結果が表示される場合には、一定以上の良好度を有するクロマトグラムの評価結果が識別可能に表示されてもよいし、良好度が大きい順にクロマトグラムの評価結果が表示されてもよい。
【0046】
(3)クロマトグラフ制御処理
図7は、クロマトグラフ制御プログラムにより行われるクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。クロマトグラフ制御処理においては、まず、後述する図8のバッチファイル作成が実行される(ステップS1)。バッチファイル作成処理は、カラム231~233と移動相との種々の組み合わせを用いて試料の分析を行うためのバッチファイルを作成する処理である。
【0047】
その後、後述する図9のメソッドスカウティング処理が、ステップS1で作成されたバッチファイルに基づいて実行される(ステップS2)。メソッドスカウティング処理は、カラム231~233と移動相との組み合わせを変更しつつ試料の分析を行い、各組み合わせについてのクロマトグラムを評価する処理である。ステップS2のメソッドスカウティング処理が実行された後、評価部Kは、分析処理における評価結果を表示部160に表示させ(ステップS3)、クロマトグラフ制御処理を終了する。
【0048】
(4)バッチファイル作成処理
図8は、図7のクロマトグラフ制御処理におけるバッチファイル作成処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。バッチファイル作成処理においては、pH範囲入力部Aは、カラム登録画面161を表示部160に表示させる(ステップS11)。
【0049】
次に、pH範囲入力部Aは、いずれかのカラム231~233の識別情報に対応付けて移動相のpHの範囲が入力されたか否かを判定する(ステップS12)。使用者は、カラム登録画面161において操作部150を操作することによりいずれかのカラム231~233に対応付けて移動相のpHの範囲を入力することができる。移動相のpHの範囲が入力されない場合、pH範囲入力部AはステップS14に進む。移動相のpHの範囲が入力された場合、pH範囲登録部Bは、入力された移動相のpHの範囲を当該カラムに対応付けて登録し(ステップS13)、ステップS14に進む。
【0050】
ステップS14で、pH入力部Cは、移動相登録画面162を表示部160に表示させる(ステップS14)。次に、pH入力部Cは、いずれかの移動相についてpHが入力されたか否かを判定する(ステップS15)。使用者は、移動相登録画面162において操作部150を操作することによりいずれかの移動相のpHを入力することができる。pHが入力されない場合、pH入力部CはステップS17に進む。pHが入力された場合、pH登録部Dは、入力された移動相のpHを登録し(ステップS16)、ステップS17に進む。
【0051】
ステップS17で、作成部Gは、入力の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS17)。使用者は、操作部150を操作することにより、入力の終了を指示することができる。入力の終了が指示されない場合、作成部GはステップS11に戻る。使用者が全部のカラム231~233に対応付けて移動相のpHの範囲を入力しかつ全部の移動相のpHを入力し、入力の終了を指示するまでステップS11~S17が繰り返される。
【0052】
入力の終了が指示された場合、作成部Gは、カラム231~233と移動相との種々の組み合わせを用いて試料の分析を行うためのバッチファイルを作成する(ステップS18)。ここで、ステップS16でいずれかの移動相に対応付けて登録されているpHが、ステップS14でいずれかのカラムの識別情報対応付けて登録されているpHの範囲外である場合、当該移動相と当該カラムとの組み合わせが分析の手順から除外されるようにバッチファイルが作成される。すなわち、作成部Gは、選択可能なカラムおよび選択可能な移動相の全組み合わせを順番に選択していき、選択された移動相に対応付けて登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲の条件を満足していれば、選択されたカラムと移動相との組み合わせをバッチファイルに登録し、選択された移動相に対応付けて登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲の条件を満足しない場合、選択されたカラムと移動相との組み合わせをバッチファイルに登録しないようにする。
【0053】
(5)メソッドスカウティング処理
図9は、図7のクロマトグラフ制御処理におけるメソッドスカウティング処理のアルゴリズムの一例を示すフローチャートである。図9のメソッドスカウティング処理においては、図8のバッチファイル作成処理で作成されたバッチファイルにおける1つ目の移動相とカラムとの組み合わせが選択されることにより、移動相選択部Fが移動相を選択し(ステップS21)、カラム選択部Eがカラムを選択する(ステップS22)。
【0054】
次に、分析制御部Hは、分析対象の試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS23)。当該分析においては、ステップS21で選択された移動相が、ステップS22で選択されたカラムに供給される。取得部Jは、ステップS23で行われたクロマトグラフ装置200による試料の成分の検出結果を取得し、取得された検出結果を処理することにより、クロマトグラムを取得する(ステップS24)。評価部Kは、ステップS24で取得されたクロマトグラムの良否を評価する(ステップS25)。
【0055】
続いて、分析制御部Hは、バッチファイルにおける移動相とカラムとの全部の組み合わせについて分析が実行されたか否かを判定する(ステップS26)。全部の組み合わせについて分析が実行されていない場合、分析制御部HはステップS21に戻る。この場合、バッチファイルにおける次の移動相とカラムとの組み合わせが選択され、移動相とカラムとの全部の組み合わせについて分析が実行されるまでステップS21~S26が繰り返される。ステップS26で移動相とカラムとの全部の組み合わせについて分析が実行された場合、分析制御部Hはメソッドスカウティング処理を終了する。
【0056】
なお、手順がステップS26からステップS21に戻る際に、分析に用いる移動相が変更される場合、置換制御部Iは、クロマトグラフ装置200の流路内に残存する変更前の移動相が変更後の移動相により置換されるようにクロマトグラフ装置200を制御する。移動相の置換は、変更後の移動相が所定の時間または所定の容量だけ流路に供給されることにより行われる。
【0057】
(6)効果
本実施の形態に係るクロマトグラフシステム300は、クロマトグラフ制御装置10およびクロマトグラフ装置200を備える。クロマトグラフ装置200においては、移動相供給部210により複数の移動相のいずれかが、複数のカラム231~233のうちいずれかに供給される。また、試料供給部220により試料が同カラム231~233に供給される。当該カラム231~233を通過した試料が検出器240により検出される。
【0058】
クロマトグラフ制御装置10においては、各カラム231~233を用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が、各カラム231~233の識別情報に対応付けてpH範囲登録部Bにより登録される。また、各移動相のpHが、pH登録部Dにより登録される。カラム選択部Eにより分析に用いるカラム231~233が選択される。
【0059】
ここで、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、分析制御部Hによりクロマトグラフ装置200が制御される。一方、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、分析制御部Hによりクロマトグラフ装置200が制御される。
【0060】
この場合、登録されているpHが、選択されたカラム231~233に対応付けて登録されているpHの範囲外であることにより、当該カラム231~233を用いて分析する際に使用不可能な移動相が、当該カラム231~233に供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
【0061】
また、分析に用いるカラムとして複数のカラム231~233がカラム選択部Eにより自動的に順次選択されるとともに、分析に用いる移動相として複数の移動相が移動相選択部Fにより自動的に順次選択される。カラムと移動相との組み合わせに対応する分析結果が取得部Jにより取得され、当該分析結果が評価部Kにより評価される。これにより、使用者は、試料の分析に最適なカラムと移動相との組み合わせを容易に判断することができる。
【0062】
(7)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、クロマトグラフ制御装置10は評価部Kを含むが、本発明はこれに限定されない。使用者がクロマトグラムを目視することによりクロマトグラムの良否を判断する場合には、クロマトグラフ制御装置10は評価部Kを含まなくてもよい。この場合、図7のステップS3、図9のステップS25のステップS35は省略される。
【0063】
(b)上記実施の形態において、クロマトグラフ装置200は液体クロマトグラフ装置であるが、本発明はこれに限定されない。クロマトグラフ装置200は、超臨界クロマトグラフ装置等の他のクロマトグラフ装置であってもよい。
【0064】
(c)上記実施の形態において、クロマトグラフ制御装置10はメソッドスカウティング処理を行うが、本発明はこれに限定されない。図10は、クロマトグラフ制御プログラムにより行われる他のクロマトグラフ制御処理のアルゴリズムを示すフローチャートである。図10のクロマトグラフ制御処理においては、図8のバッチファイル作成処理におけるステップS11~S17とそれぞれ同様のS41~S47が実行される。
【0065】
その後、カラム選択部Eは、操作部150からの指示に基づいてカラム231~233のうちいずれかのカラムを選択する(ステップS48)。また、移動相選択部Fは、操作部150からの指示に基づいて複数の移動相のうちいずれかの移動相を選択する(ステップS49)。使用者は、操作部150を操作することにより所望のカラム231~233および所望の移動相を指示することができる。なお、ステップS48とステップS49とは、いずれが先に実行されてもよい。
【0066】
分析制御部Hは、ステップS49で選択された移動相に対応付けて登録されているpHが、ステップS48で選択されたカラムの識別情報に対応付けて登録されているpHの範囲内であるか否かを判定する(ステップS50)。移動相に対応付けて登録されているpHが、カラムの識別情報に対応付けて登録されている移動相のpHの範囲内である場合、分析制御部Hは、分析対象の試料の分析が行われるようにクロマトグラフ装置200を制御する(ステップS51)。当該分析においては、ステップS49で選択された移動相がステップS48で選択されたカラムに供給される。その後、分析制御部HはステップS52に進む。
【0067】
一方、ステップS50で移動相に対応付けて登録されているpHが、カラムの識別情報に対応付けて登録されている移動相のpHの範囲内でない場合、移動相に対応付けて登録されているpHは、カラムの識別情報に対応付けて登録されている移動相のpHの範囲外となる。この場合、分析制御部Hは分析を行うことなくステップS52に進む。これにより、カラムに登録されているpHの範囲外のpHを有する移動相が当該カラムに供給されることが防止される。
【0068】
ステップS52で、分析制御部Hは、クロマトグラフ制御処理の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS52)。使用者は、操作部150を操作することによりクロマトグラフ制御処理の終了を指示することができる。終了が指示されない場合、分析制御部HはステップS48に戻る。終了が指示されるまで、ステップS48~S52が繰り返される。終了が指示された場合、分析制御部Hはクロマトグラフ制御処理を終了する。
【0069】
なお、図10のステップS48~S50において、使用者がカラムと移動相とを選択する画面において、移動相に対応付けて登録されているpHが、カラムの識別情報に対応付けて登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせが表示されないようにしてもよい。
(8)参考形態
(8-1)本発明の第1の参考形態に係るクロマトグラフ制御装置は、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御装置であって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するpH範囲登録部と、各移動相のpHを登録するpH登録部と、分析に用いるカラムを選択するカラム選択部と、pH登録部に登録されているpHが、カラム選択部により選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、pH登録部に登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御する分析制御部とを備える。
このクロマトグラフ制御装置においては、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が、各カラムの識別情報に対応付けて登録され、各移動相のpHが登録される。分析に用いるカラムが選択される。ここで、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置が制御される。一方、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置が制御される。
この構成によれば、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外であることにより、当該各カラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相が、当該カラムに供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
(8-2)クロマトグラフ制御装置は、使用者の操作に基づいて、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲が入力されるpH範囲入力部をさらに備え、pH範囲登録部は、各カラムに対応付けてpH範囲入力部により入力されたpHの範囲を登録してもよい。この場合、使用者は、pH範囲入力部を操作することにより、各カラムの識別情報に対応付けて、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を容易に入力することができる。
(8-3)クロマトグラフ制御装置は、使用者の操作に基づいて、各移動相のpHが入力されるpH入力部をさらに備え、pH登録部は、各移動相についてpH入力部により入力されたpHを登録してもよい。この場合、使用者は、pH入力部を操作することにより、各移動相のpHを容易に入力することができる。
(8-4)クロマトグラフ制御装置は、分析に用いる移動相として複数の移動相を自動的に順次選択する移動相選択部と、評価部とをさらに備え、カラム選択部は、分析に用いるカラムとして複数のカラムを自動的に順次選択するように構成され、分析制御部は、pH登録部に登録されているpHが、カラム選択部により選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されず、pH登録部に登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けてpH範囲登録部に登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されるように、クロマトグラフ装置を制御し、評価部は、分析制御部により実行された分析の結果を評価してもよい。
この構成によれば、カラムと移動相との組み合わせに対応する分析結果が取得され、当該分析の結果が評価される。これにより、使用者は、試料の分析に最適なカラムと移動相との組み合わせを容易に判断することができる。また、カラムと移動相との組み合わせを変更しつつ分析を行う場合でも、各カラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相が、当該カラムに供給されることが防止される。これにより、カラムの破損を防止することができる。
(8-5)クロマトグラフ制御装置は、各カラムと各移動相との組み合わせを含むバッチファイルを作成する作成部をさらに備え、分析制御部は、バッチファイルに含まれるカラムと移動相との組み合わせに従って分析を実行するようにクロマトグラフ装置を制御し、作成部は、pH登録部に登録されているpHが、pH範囲登録部に登録されているpHの範囲外となる、カラムと移動相との組み合わせがバッチファイルに含まれないようバッチファイルを作成してもよい。この場合、分析制御部は、バッチファイルに従って、登録されているpHがいずれかのカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相は当該カラムに供給されないようにクロマトグラフ装置を容易に制御することができる。
(8-5)本発明の第2の参考形態に係るクロマトグラフシステムは、クロマトグラフ装置と、上記クロマトグラフ制御装置とを備え、クロマトグラフ装置は、複数のカラムと、複数の移動相のうちいずれかの移動相を複数のカラムのうちいずれかのカラムに供給する移動相供給部と、カラムに試料を供給する試料供給部と、カラムを通過した試料を検出する検出器とを含む。
このクロマトグラフシステムにおいては、クロマトグラフ装置により複数のカラムのうちいずれかのカラムにいずれかの移動相および試料が供給され、カラムを通過した試料が検出される。クロマトグラフ制御装置により、選択されたカラムを用いて分析が行われるようにクロマトグラフ装置が制御される。ここで、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。
(8-6)本発明の第3の参考形態に係るクロマトグラフ制御方法は、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御方法であって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録するステップと、各移動相のpHを登録するステップと、分析に用いるカラムを選択するステップと、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御するステップとを含む。
このクロマトグラフ制御方法によれば、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。
(8-7)本発明の第4の参考形態に係るクロマトグラフ制御プログラムは、複数のカラムのいずれかと複数の移動相のいずれかとを用いて試料の分析を行うクロマトグラフ装置を制御するクロマトグラフ制御プログラムであって、各カラムを用いて分析する際に使用可能な移動相のpHの範囲を、各カラムの識別情報に対応付けて登録する処理と、各移動相のpHを登録する処理と、分析に用いるカラムを選択する処理と、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲外である移動相が、選択されたカラムに供給されないように、クロマトグラフ装置を制御し、登録されているpHが、選択されたカラムに対応付けて登録されているpHの範囲内である移動相が、選択されたカラムに供給されつつ分析が行われるように、クロマトグラフ装置を制御する処理とを、処理装置に実行させる。
このクロマトグラフ制御プログラムによれば、選択されたカラムを用いて分析する際に使用不可能な移動相は、当該カラムに供給されない。これにより、カラムの破損を防止することができる。なお、クロマトグラフ制御プログラムは、記憶媒体に記憶された形態で提供することも可能である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10