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特許7124886洗浄装置、洗浄装置を備える撮像ユニット、および洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】洗浄装置、洗浄装置を備える撮像ユニット、および洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20220817BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20220817BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20220817BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H04N5/225 430
G03B17/02
G03B15/00 V
B60S1/62 110A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020559585
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2020000851
(87)【国際公開番号】W WO2020217600
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019086243
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 宣孝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 政明
(72)【発明者】
【氏名】天野 優
(72)【発明者】
【氏名】森 崇彰
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/198465(WO,A1)
【文献】特開2015-031564(JP,A)
【文献】特開2004-289532(JP,A)
【文献】特開2009-010736(JP,A)
【文献】特開2003-330082(JP,A)
【文献】特開2009-165032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225
G03B 17/02
G03B 15/00
B60S 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を保持する保持部と、
前記撮像素子の視野に配置される透光体と、
前記透光体を振動させる振動体と、
前記振動体を駆動する駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
前記駆動部で駆動する前記振動体のインピーダンスに関する値を検出する検出部と、
前記透光体の表面に洗浄体を吐出させる吐出部と、を備え、
前記制御部は、
第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数の時間変化と、前記検出部で検出するインピーダンスに関する値の時間変化と、前記撮像素子で撮像した画像の時間変化とのうち少なくとも2つの情報に基づき、前記透光体の表面に異物が付着したことを判断し、
前記検出部で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きに基づき、前記透光体の表面に付着した異物の種類を特定し、
当該判断に応じて前記振動体を制御し、特定した異物の種類に応じて前記吐出部から前記洗浄体を吐出させて前記透光体の表面を洗浄するか否かを制御する、洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記透光体の表面に異物が付着していると判断した場合、前記透光体の表面を洗浄するために前記振動体を駆動する駆動周波数を決定し、前記駆動周波数および第2の電圧で前記振動体を駆動する、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数の時間変化が負で、前記検出部で検出するインピーダンスの時間変化が正の場合、前記透光体の表面に異物が付着したと判断する、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数の時間変化が負で、前記撮像素子で撮像した画像から得られる明度の時間変化が負の場合、前記透光体の表面に異物が付着したと判断する、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部で検出するインピーダンスの時間変化が正で、前記撮像素子で撮像した画像から得られる明度の時間変化が負の場合、前記透光体の表面に異物が付着したと判断する、請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記透光体の表面に付着した異物の種類に応じて、前記検出部で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きの変化傾向を記憶する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数の振動モードで前記振動体を駆動することが可能で、前記透光体の表面に異物が付着したことを判断するために前記振動体を駆動する振動モードと、前記透光体の表面を洗浄するために前記振動体を駆動する振動モードとが異なる、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記制御部は、共振周波数およびインピーダンスのうち少なくとも1つの値に基づいて、前記透光体の表面を洗浄するための前記振動体を駆動する電圧を変更する、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記吐出部から前記洗浄体を吐出して前記透光体の表面を洗浄する場合、前記振動体を駆動する電圧を前記第1の電圧以上で、第2の電圧以下とする、請求項に記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記吐出部は、前記透光体の表面を洗浄する第1の洗浄体と、前記第1の洗浄体よりも強力な洗浄力を有する第2の洗浄体とを吐出させることが可能で、
前記制御部は、第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数と、前記検出部で検出するインピーダンスに関する値と、前記撮像素子で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、前記第1の洗浄体と、前記第2の洗浄体とを切り替える、請求項に記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記透光体の表面を洗浄するための前記振動体の駆動に、共振周波数近傍で駆動する第1期間と、当該共振周波数近傍以外で駆動する第2期間とを含み、
第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数と、前記検出部で検出するインピーダンスに関する値と、前記撮像素子で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、前記第1期間と前記第2期間とのデューティ比を決定する、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第1の電圧で前記振動体を駆動する場合の共振周波数の時間変化と、前記検出部で検出するインピーダンスに関する値の時間変化とに基づき、前記透光体の温度を推定し、
推定した前記透光体の温度に基づき、前記透光体の表面を洗浄する場合に前記振動体を駆動する電圧を変更する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記振動体または前記透光体の温度を測定する温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記温度測定部の測定結果に基づき、前記透光体の表面を洗浄する場合に前記振動体を駆動する電圧を変更する、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項14】
撮像素子と、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の前記洗浄装置とを備える、撮像ユニット。
【請求項15】
撮像素子を保持する保持部と、前記撮像素子の視野に配置される透光体と、前記透光体を振動させる振動体と、前記振動体を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、前記駆動部で駆動する前記振動体のインピーダンスに関する値を検出する検出部と、前記透光体の表面に洗浄体を吐出させる吐出部と、を備える洗浄装置で前記透光体の表面を洗浄する洗浄方法であって、
サーチモードとして、第1の電圧で前記振動体を駆動するステップと、
前記サーチモードにおける共振周波数の時間変化と、前記検出部で検出するインピーダンスに関する値の時間変化と、前記撮像素子で撮像した画像の時間変化とのうち少なくとも2つの情報に基づき、前記透光体の表面に異物が付着したことを判断するステップと、
前記検出部で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きに基づき、前記透光体の表面に付着した異物の種類を特定するステップと、
前記透光体の表面に異物が付着したことの判断に応じて前記振動体を駆動する駆動周波数を決定するステップと、
ドライブモードとして、決定した前記駆動周波数および第2の電圧で前記振動体を駆動し、特定した異物の種類に応じて前記吐出部から前記洗浄体を吐出させるか否かを制御するステップと、を含む、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置、洗浄装置を備える撮像ユニット、および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前部や後部に撮像ユニットを設けて、当該撮像ユニットで撮像した画像を利用して安全装置を制御したり、自動運転制御を行ったりすることが行われている。このような撮像ユニットは、車外に設けられることが多いため、外部を覆う透光体(レンズや保護ガラス)に雨滴、泥、塵埃等の異物が付着することがある。透光体に異物が付着すると、当該撮像ユニットで撮像した画像に付着した異物が映り込み、鮮明な画像が得られなくなる。
【0003】
そこで、透光体の表面に付着した異物を判別し、透光体を振動させて異物を除去する洗浄装置が開発されている(特許文献1)。また、透光体の表面に洗浄液を吐出し、透光体を振動させて異物を除去する洗浄装置が開発されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-138768号公報
【文献】特開2011-244417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の洗浄装置は、透光体を振動することのみでは、泥水などを除去できない場合があった。例えば、透光体を振動することによって泥水中の水分が霧化してしまい、泥水中の泥の濃度が上昇して透光体を振動することのみでは、泥水などを除去できない場合があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の洗浄装置では、透光体の振動と洗浄液の吐出との組み合わせにより、透光体の異物を除去することができる。しかし、実走行において、撮像ユニットには、透光体の異物として雨滴のみがかかる状況が殆どであり、泥が付着することは稀である。そのため、特許文献2に記載の洗浄装置では、透光体の異物として水滴や微量の泥が付着した場合でも、洗浄液の吐出を行っているので、洗浄液の消費量が増大してしまい効率の低い洗浄となっていた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、透光体に付着した異物に応じて、効率の高い洗浄を行うことができる洗浄装置、洗浄装置を備える撮像ユニット、および洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る洗浄装置は、撮像素子を保持する保持部と、撮像素子の視野に配置される透光体と、透光体を振動させる振動体と、振動体を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、駆動部で駆動する振動体のインピーダンスに関する値を検出する検出部と、前記透光体の表面に洗浄体を吐出させる吐出部と、を備え、制御部は、第1の電圧で振動体を駆動する場合の共振周波数の時間変化と、検出部で検出するインピーダンスに関する値の時間変化と、撮像素子で撮像した画像の時間変化とのうち少なくとも2つの情報に基づき、透光体の表面に異物が付着したことを判断し、検出部で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きに基づき、透光体の表面に付着した異物の種類を特定し、当該判断に応じて振動体を制御し、特定した異物の種類に応じて前記吐出部から前記洗浄体を吐出させて透光体の表面を洗浄するか否かを制御する
【0009】
本発明の一形態に係る撮像ユニットは、上記に記載の洗浄装置を備える。
本発明の一形態に係る洗浄方法は、撮像素子を保持する保持部と、撮像素子の視野に配置される透光体と、透光体を振動させる振動体と、振動体を駆動する駆動部と、駆動部を制御する制御部と、駆動部で駆動する振動体のインピーダンスに関する値を検出する検出部と、前記透光体の表面に洗浄体を吐出させる吐出部と、を備える洗浄装置で透光体の表面を洗浄する洗浄方法であって、サーチモードとして、第1の電圧で振動体を駆動するステップと、サーチモードにおける共振周波数の時間変化と、検出部で検出するインピーダンスに関する値の時間変化と、撮像素子で撮像した画像の時間変化とのうち少なくとも2つの情報に基づき、透光体の表面に異物が付着したことを判断するステップと、検出部で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きに基づき、透光体の表面に付着した異物の種類を特定するステップと、透光体の表面に異物が付着したことの判断に応じて振動体を駆動する駆動周波数を決定するステップと、ドライブモードとして、決定した駆動周波数および第2の電圧で振動体を駆動し、特定した異物の種類に応じて前記吐出部から前記洗浄体を吐出させるか否かを制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、制御部が、少なくとも2つの情報に基づき、透光体の表面に異物が付着したことを判断し、透光体に付着した異物に応じて、効率の高い洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態1に係る撮像ユニットの構成を説明するための斜視図である。
図2】本実施の形態1に係る撮像ユニットの構成を説明するための断面図である。
図3】本実施の形態1に係る撮像ユニットの洗浄装置の制御を説明するためのブロック図である。
図4】本実施の形態1に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】圧電デバイスの共振周波数と温度との関係を示すグラフである。
図6】温度に対して圧電デバイスの共振周波数、インピーダンスの最小値をそれぞれプロットしたグラフである。
図7】異物の付着量に対して圧電デバイスの共振周波数、インピーダンスの最小値をそれぞれプロットしたグラフである。
図8】撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9】本実施の形態1に係る撮像ユニットの洗浄装置の実験結果を示す図である。
図10】異なる振動モードで保護カバー2を振動させた場合の振幅変位を示す模式図である。
図11】本実施の形態1の変形例に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図12】本実施の形態2に係る撮像ユニットの洗浄装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。
図13】本実施の形態3に係る撮像ユニットの洗浄装置の制御を説明するためのブロック図である。
図14】電気特性の変化量と駆動電圧との関係を説明するための図である。
図15】本実施の形態4に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図16】圧電デバイスの電圧の変化率と共振周波数の変化率との関係を示すグラフである。
図17】サーチモードをn回繰り返して動作させた場合の周波数およびインピーダンスの変化を示すグラフである。
図18】駆動モードAで駆動させた場合の一例を説明するための図である。
図19】駆動モードBで駆動させた場合の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施の形態に係る撮像ユニットについて図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【0013】
(実施の形態1)
以下に、本実施の形態1に係る撮像ユニットについて図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態1に係る撮像ユニット100の構成を説明するための斜視図である。図2は、本実施の形態1に係る撮像ユニット100の構成を説明するための断面図である。撮像ユニット100は、筐体1、筐体1の一面に設けられた透明の保護カバー2、保護カバー2に洗浄液(洗浄体)を吐出する開口部31を有する洗浄ノズル3、保護カバー2を振動させる振動体である振動部12、保護カバー2の内側に設けられた撮像部5を備えている。なお、撮像ユニット100から撮像部5を除いた、筐体1、保護カバー2、洗浄ノズル3および振動部12の構成が、撮像部5の撮像範囲に付着した異物(付着物)を洗浄する洗浄装置を構成している。
【0014】
撮像部5は、図2に示すように筒状の本体部材4により支えられ、ベースプレート4aに固定されている。ベースプレート4aは、筐体1の一部に固定されている。そのため、筐体1は、本体部材4およびベースプレート4aを介して撮像部5を保持する保持部として機能している。なお、保持部は、撮像部5を保持することができれば図2に示した構造に限定されない。
【0015】
撮像部5内には、撮像素子を含む回路6が内蔵されている。撮像部5の撮像方向に、レンズモジュール7が固定されている。レンズモジュール7は、筒状体からなり、内部に複数のレンズ9が設けられている。なお、撮像部5の構造は、レンズ9の前方に位置している被撮像物を撮像し得る限り特に限定されるものではない。
【0016】
筐体1は、角筒状で、たとえば金属や合成樹脂からなる。なお、筐体1は、円筒状などの他の形状であってもよい。筐体1の一端側にベースプレート4aが固定され、筐体1の他端側に保護カバー2および振動部12が設けられている。
【0017】
振動部12は、円筒状の形状を有している。振動部12は、円筒状の第1の筒部材13と、円筒状の第2の筒部材14と、円筒状の圧電振動子15とを有する。円筒状の圧電振動子15は、2枚の円筒状の圧電板16,17を有する。2枚の圧電板16,17は、厚み方向において、一方の圧電板の分極方向と他方の圧電板の分極方向とが逆方向となっている。
【0018】
なお、本発明において、振動部や圧電振動子については、円筒状の他、角筒状であってもよい。好ましくは、円筒状すなわちリング状の形状が用いられる。
【0019】
圧電板16,17は、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスからなる。もっとも、(K,Na)NbOなどの他の圧電セラミックスが用いられてもよい。さらにLiTaOなどの圧電単結晶が用いられてもよい。
【0020】
圧電板16,17の両面には、図示しない電極が形成されている。この電極は、たとえばAg/NiCu/NiCrの積層構造を有する。
【0021】
圧電振動子15の下面に、円筒状の第1の筒部材13が固定されている。第1の筒部材13は、金属からなる。金属としては、ジュラルミン、ステンレスまたはコバールなどを用いることができる。もっとも、第1の筒部材13は、導電性を有するSiなどの半導体からなるものであってもよい。
【0022】
第1の筒部材13の一部と、第2の筒部材14の一部との間に圧電振動子15が挟持されている。第1の筒部材13及び第2の筒部材14は、いずれも金属からなり、導電性を有する。圧電板16,17のそれぞれの電極に交流電界を印加することにより、圧電振動子15を縦振動または横振動させることができる。第2の筒部材14の一部においては、内周面に雌ネジ部が形成されている。それによって、第2の筒部材14に、第1の筒部材13がねじ込まれ、第1の筒部材13が第2の筒部材14に固定されている。このねじ込みより、圧電振動子15の上面及び下面に、第1の筒部材13の一部および第2の筒部材14の一部が圧接されている。
【0023】
従って、圧電振動子15において生じた振動により、振動部12全体が効率良く振動する。本実施の形態では、振動部12が縦効果または横効果により効率よく励振される。
【0024】
他方、第2の筒部材14には、外側に張り出したフランジ部14bが設けられている。フランジ部14bが、筐体1の凹部に載置され、かつ固定されている。
【0025】
第2の筒部材14の端には、外側に張り出したフランジ部14cが設けられている。このフランジ部14bとフランジ部14cとの間に連なる部分が、薄肉部14aである。薄肉部14aの厚みは、第1の筒部材13の厚みよりも薄くなっている。そのため、筒状の薄肉部14aは、振動部12の振動により大きく変位する。この薄肉部14aの存在により、振動、特に振幅の拡大を図ることができる。
【0026】
フランジ部14cに、保護カバー2が固定されている。保護カバー2は、被撮像物からの光を透光する透光体として機能している。保護カバー2は、一方向に開いた開口を有する。この開口の端が、フランジ部14cに接合されている。この接合は、たとえば、接着剤やろう材を用いて接合されている。また、熱圧着や陽極接合などを用いてもよい。
【0027】
保護カバー2は、フランジ部14cに接合した端から延びるドーム状の形状を有している。本実施の形態では、このドーム状の形状が半球の形状とされている。なお、撮像部5は、たとえば170°の視野角を備える。もっとも、ドーム状の形状は半球状の形状に限定されるものではない。半球に、円筒を連ねた形状や、半球よりも小さい曲面形状などを有していてもよい。保護カバー2は、その全体が透光性を有している。本実施の形態では、保護カバー2がガラスからなる。もっとも、ガラスに限らず、透明なプラスチックスなどにより構成されていてもよい。あるいは、透光性のセラミックスにより構成されていてもよい。もっとも、用途によっては、強化ガラスを用いることが好ましい。それによって、強度を高めることができる。さらに、ガラスの場合には、表面に、強度を高めるために、DLCなどからなるコーティング層が形成されていてもよい。
【0028】
保護カバー2内に、前述したレンズモジュール7および撮像部5が配置されている。この保護カバー2を通して外部の被撮像物の撮影が行われる。
【0029】
筐体1には、保護カバー2に洗浄液を吐出する開口部31を有する洗浄ノズル3が設けられている。洗浄ノズル3は、筒状形状で開口部31を設けた反対側の端部から洗浄液が供給され、開口部31から保護カバー2の端に洗浄液を吐出する。洗浄ノズル3の先端は、撮像部5の撮像範囲(視野)の外部にあり、開口部31は、撮像部5の画像に写り込む位置にはない。図2では、洗浄液の流れが矢印で示されている。この洗浄ノズル3は、洗浄液を吐出する吐出部として機能している。本実施の形態では、筐体1に洗浄ノズル3を1本設けた構成を示しているが、筐体1に洗浄ノズル3を複数本設けた構成であってもよい。
【0030】
なお、本実施の形態では、撮像ユニット100に設けた洗浄装置(以下、単に洗浄装置と称す)が洗浄ノズル3を備え、保護カバー2に洗浄液を吐出して洗浄することが可能な構成として説明するが、洗浄ノズル3を備えず保護カバー2を振動させることのみで洗浄を行う構成であってもよい。もちろん、洗浄装置は、洗浄ノズル3に加えて、または洗浄ノズル3に代えて別の構成(たとえば、エアブロワなど)を備えてもよい。
【0031】
次に、洗浄装置の制御について図を用いて説明する。図3は、本実施の形態1に係る撮像ユニット100の洗浄装置の制御を説明するためのブロック図である。
【0032】
撮像ユニット100は、撮像部5、信号処理回路20、圧電駆動部30、圧電デバイス40、洗浄液吐出部50、洗浄駆動部60、インピーダンス検出部70、および電源回路80を含んでいる。信号処理回路20は、撮像部5からの撮像信号を処理するとともに、圧電駆動部30および洗浄駆動部60に対して制御信号を供給する制御部である。洗浄液吐出部50は、洗浄ノズル3の開口部31から洗浄液を吐出する構成を1つのブロックとして図示してある。
【0033】
信号処理回路20は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUが動作するためのプログラムや制御データ等を記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等を設けてある。
【0034】
圧電駆動部30は、信号処理回路20からの制御信号と駆動電圧に応じた、周波数f、電圧Vの交流出力信号を生成する。圧電デバイス40は、図2に示す圧電振動子15を有する振動部12により構成され、圧電振動子15に交流出力信号を印加することで、振動部12および保護カバー2を振動させて異物を除去する。
【0035】
また、信号処理回路20は、洗浄液を保護カバー2に吐出して洗浄する制御信号を生成することができる。洗浄駆動部60は、信号処理回路20からの制御信号に基づいて洗浄液吐出部50より洗浄液を保護カバー2に吐出させる制御を行う。
【0036】
インピーダンス検出部70は、圧電振動子15に交流出力信号を印加して圧電デバイス40を動作させている場合に、圧電駆動部30の電流をモニタしている。
【0037】
次に、撮像ユニットの洗浄装置の動作についてフローチャートに基づいて説明する。図4は、本実施の形態1に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。まず、信号処理回路20は、圧電デバイス40をサーチモードで動作させて、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する。圧電駆動部30は、圧電デバイス40をサーチモードで動作するために、駆動電圧VdrをV1とし、周波数fをスイープさせて交流出力信号を圧電振動子15に印加する。なお、圧電振動子15に印加する交流出力信号は、発熱抑制の観点から駆動電圧Vdrを小さくする方が望ましい。
【0038】
インピーダンス検出部70は、サーチモードで圧電デバイス40を動作させている間、圧電駆動部30の電流をモニタしている。具体的に、インピーダンス検出部70は、スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大(または電流値の逆数であるインピーダンスが最小)となる周波数を初期の共振周波数fr0、そのときの電流値をI0として測定している(ステップS101)。信号処理回路20は、測定した初期の共振周波数fr0、および電流値I0を、基準値fr、Iとして記憶を更新する(ステップS102)。
【0039】
ここで、圧電デバイス40の共振周波数と温度との関係を説明する。図5は、圧電デバイス40の共振周波数と温度との関係を示すグラフである。図5では、横軸を周波数[kHz]、縦軸をインピーダンス[Ω]としている。図5に示すグラフでは、インピーダンスが急激に変化している箇所の周波数が圧電デバイス40の共振周波数であり、温度が-40℃から85℃まで変化させた場合の共振周波数の変化の様子が図示されている。当該グラフから分かるように、温度が-40℃から85℃に変化するに従って、圧電デバイス40の共振周波数は低下している。
【0040】
一方、保護カバー2の表面に異物が付着した場合、圧電デバイス40の共振周波数は、付着している異物の量が多くなるに従い低下する。そうすると、インピーダンス検出部70で、圧電デバイス40の共振周波数の変化を測定するのみでは、保護カバー2の表面に異物が付着したことによる変動なのか、温度変化による変動なのかを正確に判断することができない。特に、圧電デバイス40の共振周波数は、温度上昇によって低下することが明らかとなったため、信号処理回路20は、共振周波数のみで保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断すると、温度上昇により保護カバー2の表面に異物が付着したと誤認識する虞がある。
【0041】
さらに、信号処理回路20は、温度上昇により保護カバー2の表面に異物が付着したと誤認識した場合、異物を除去するために圧電デバイス40の振動振幅を上昇させる方向で圧電振動子15に交流出力信号を印加することになる。圧電デバイス40の振動振幅を上昇させると保護カバー2の表面の温度をさらに上昇させることになり、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したことでさらに不安定となり判断することが難しくなる。
【0042】
圧電デバイス40の共振周波数の変化は、温度変化に限定されず、保護カバー2と振動部12との接合部の経年変化、樹脂部の吸湿などによっても共振周波数に変化が生じる。そのため、信号処理回路20は、圧電デバイス40の共振周波数の変化以外の情報とあわせて、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する必要がある。
【0043】
ここで、図5に示すグラフから分かるように、温度が-40℃から85℃に変化するに従って、圧電デバイス40の共振周波数が低下するとともに、インピーダンスの最小値も低下している。当該関係を分かり易く説明するため、温度に対する圧電デバイス40の共振周波数の変化のグラフと、温度に対するインピーダンスの最小値の変化のグラフとに分けて説明する。図6は、温度に対して圧電デバイス40の共振周波数、インピーダンスの最小値をそれぞれプロットしたグラフである。
【0044】
図6(a)には、温度に対する圧電デバイス40の共振周波数の変化が示されており、横軸が温度[℃]、縦軸が共振周波数[kHz]である。図6(a)に示すグラフから分かるように、圧電デバイス40の共振周波数は、温度が高くなるに従い低下している。図6(b)には、温度に対する圧電デバイス40の最小インピーダンス(インピーダンスの最小値)の変化が示されており、横軸が温度[℃]、縦軸が最小インピーダンス[Ω]である。図6(b)に示すグラフから分かるように、圧電デバイス40の最小インピーダンスは、温度が高くなるに従い低下する。
【0045】
一方、保護カバー2の表面に異物が付着した場合の圧電デバイス40の共振周波数、インピーダンスの最小値の変化について説明する。図7は、異物の付着量に対して圧電デバイス40の共振周波数、インピーダンスの最小値をそれぞれプロットしたグラフである。
【0046】
図7(a)には、保護カバー2の表面に付着した水の量に対する圧電デバイス40の共振周波数の変化が示されており、横軸が水付着量[μl]、縦軸が共振周波数[kHz]である。図7(a)に示すグラフから分かるように、圧電デバイス40の共振周波数は、水付着量が多くなるに従い低下している。図7(b)には、保護カバー2の表面に付着した水の量に対する圧電デバイス40の最小インピーダンス(インピーダンスの最小値)の変化率が示されており、横軸が水付着量[μl]、縦軸がインピーダンス変化率である。図7(b)に示すグラフから分かるように、圧電デバイス40の最小インピーダンスの変化率は、水付着量が多くなるに従い高くなる。なお、圧電デバイス40の最小インピーダンスに対応する電流値Iの変化率は、逆に水付着量が多くなるに従い低くなる。
【0047】
図6および図7のグラフから分かるように、信号処理回路20は、圧電デバイス40の共振周波数の変化と、圧電デバイス40の最小インピーダンス(インピーダンスの最小値)の変化とを組み合わせて判断することで、保護カバー2の表面に異物が付着したことによる変動なのか、温度変化による変動なのかを正確に判断することができる。なお、保護カバー2と振動部12との接合部の経年変化、樹脂部の吸湿などによっても圧電デバイス40の最小インピーダンスに変化が生じるが、保護カバー2の表面に異物が付着した場合の変化と異なるため、両者を区別して判断することが可能である。
【0048】
そこで、本実施の形態1に係る信号処理回路20では、共振周波数のみで保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するのではなく、共振周波数および電流値(または電流値の逆数であるインピーダンス)で保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する。つまり、信号処理回路20は、圧電デバイス40をサーチモードで動作させている間の共振周波数、そのときの電流値の変化で保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する。
【0049】
図4に戻って、一定時間後(たとえば、1秒後)、圧電駆動部30は、圧電デバイス40をサーチモードで動作するために、駆動電圧VdrをV1とし、周波数fをスイープさせて交流出力信号を圧電振動子15に印加する。そして、インピーダンス検出部70は、スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大となる周波数を共振周波数fr1、そのときの電流値をI1として測定する(ステップS103)。
【0050】
信号処理回路20は、ステップS102で更新した基準値fr、Iと共振周波数fr1、電流値I1との差分値を求め、当該差分値が予め定めてある閾値fth、Ithと比較する(ステップS104)。具体的には、信号処理回路20は、Δfr(=fr1-fr)≦-fth、およびΔI(=I1-I)≦-Ithの関係を満たしているか否かを判断する。つまり、信号処理回路20は、共振周波数が減少する変化量(Δfr)が閾値fth以下で、かつ電流値が減少する変化量(ΔI)が閾値Ith以下である場合、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断する。
【0051】
前述したように、信号処理回路20は、共振周波数の変化量(時間変化)のみで保護カバー2の表面に異物が付着したと判断するのではなく、インピーダンスに関する値である電流値の変化量(時間変化)で保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断している。
【0052】
差分値が予め定めてある閾値fth、Ithより大きい場合(ステップS104でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS102に戻し、ステップS104で測定した共振周波数fr1、および電流値I1を、基準値fr、Iとして記憶を更新する。
【0053】
差分値が予め定めてある閾値fth、Ith以下の場合(ステップS104でYES)、信号処理回路20は、基準値fr、Iと共振周波数fr1、電流値I1との差分値を求め、当該差分値が予め定めてある閾値fth1、Ith1と比較する(ステップS105)。なお、閾値fth1、Ith1は、ステップS104で用いた閾値fth、Ithより絶対値が大きい(fth1>fth、Ith1>Ith)。具体的には、信号処理回路20は、Δfr(=fr1-fr)≦-fth1、およびΔI(=I1-I)≦-Ith1の関係を満たしているか否かを判断する。つまり、信号処理回路20は、共振周波数が減少する変化量(Δfr)が閾値fth1以下で、かつ電流値が減少する変化量(ΔI)が閾値Ith1以下である場合、保護カバー2の表面に付着した異物が大きい(汚れ具合がひどい)と判断する。
【0054】
信号処理回路20は、閾値fth、Ithにより保護カバー2の表面に付着した異物の有無を判断し、閾値fth1、Ith1により保護カバー2の表面に付着した異物の程度を判断している。
【0055】
差分値が予め定めてある閾値fth1、Ith1より大きい場合(ステップS105でNO)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が小さい(汚れ具合が軽い)と判断して、圧電駆動部30は、圧電デバイス40を駆動モードで動作するために、駆動電圧VdrをV2(>V1)に設定し、駆動周波数fdrを共振周波数fmaxとする交流出力信号を圧電振動子15に印加する(ステップS106)。信号処理回路20は、洗浄駆動部60を駆動せずに、圧電駆動部30のみを駆動する駆動モードAを実行する(ステップS107)。
【0056】
一方、差分値が予め定めてある閾値fth1、Ith1以下の場合(ステップS105でYES)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が大きい(汚れ具合がひどい)と判断して、圧電駆動部30は、圧電デバイス40を駆動モードで動作するために、駆動電圧VdrをV3(<V2)に設定し、駆動周波数fdrを共振周波数fmaxとする交流出力信号を圧電振動子15に印加する(ステップS108)。つまり、圧電駆動部30は、ステップS106の場合より弱振動で圧電振動子15を振動させる。信号処理回路20は、洗浄駆動部60を駆動させて洗浄液を吐出させて、圧電駆動部30も駆動する駆動モードBを実行する(ステップS109)。信号処理回路20は、駆動モードBを実行することで、保護カバー2に付着した異物をより強力に洗浄できる。なお、信号処理回路20は、共振周波数と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する値(電流値)と、撮像部5で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、駆動モードBで吐出する洗浄液よりも強力な洗浄力を有する洗浄液とを切り替えてもよい。
【0057】
ステップS108またはステップS109の洗浄により保護カバー2の表面に付着した異物が除去されると、インピーダンス検出部70で測定される電流値Idrが一定以上に増加する。つまり、インピーダンス検出部70で測定される電流値Idrは、保護カバー2の表面に異物が付着していないときの電流値Idrの値にほぼ戻る。そのため、信号処理回路20は、インピーダンス検出部70で測定される電流値Idrが一定以上に増加したか否かを判断する(ステップS110)。
【0058】
電流値Idrが一定以上に増加した場合(ステップS110でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を終了する操作を受付けているか否か判断する(ステップS111)。洗浄処理を終了する操作を受付けている場合(ステップS111でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を終了する。一方、洗浄処理を終了する操作を受付けていない場合(ステップS111でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS101に戻す。
【0059】
電流値Idrが一定以上に増加していない場合(ステップS110でNO)、信号処理回路20は、洗浄処理の駆動モードで一定時間(たとえば、1分間)を超えて駆動しているか否かを判断する(ステップS112)。洗浄処理の駆動モードで長時間、圧電デバイス40を駆動した場合、保護カバー2が発熱するなどの不具合が発生する可能性がある。そこで、洗浄処理の駆動モードで一定時間を超えて駆動している場合(ステップS112でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を異常終了する。洗浄処理の駆動モードにおいて一定時間以下で駆動している場合(ステップS112でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS105に戻す。
【0060】
次に、撮像ユニット100の洗浄装置の動作についてタイミングチャートを用いてさらに詳しく説明する。図8は、撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。図8に示すタイミングチャートでは、上段が圧電駆動部30に対して駆動モードA(図4:ステップS107)での動作を指示する波形、下段が洗浄液吐出部50に対して洗浄液を吐出する動作を伴い圧電駆動部30に対して駆動モードB(図4:ステップS109)での動作を指示する波形が図示されている。
【0061】
まず、信号処理回路20は、サーチモードにおいて、保護カバー2の表面に異物が付着しているか判断するために駆動電圧VdrをV1とし、周波数fをスイープさせて交流出力信号を圧電駆動部30から圧電振動子15に印加させる。
【0062】
信号処理回路20は、測定した共振周波数fr、電流値Iのそれぞれの変化(差分値Δfr、ΔI)と閾値fth、Ithと比較して保護カバー2の付着物の有無を判断する。さらに、信号処理回路20は、測定した共振周波数fr、電流値Iのそれぞれの変化(差分値Δfr、ΔI)と閾値fth1(<fth)、Ith1(<Ith)と比較して保護カバー2に付着した異物の程度を判断する。
【0063】
具体的に、信号処理回路20は、周波数fをスイープさせて一定範囲の周波数をスキャンし、そのうちで電流が最大となる周波数を共振周波数frとし、そのときの電流をインピーダンスの逆数として測定する。信号処理回路20は、測定した共振周波数frの時間変化(Δfr)が負で、Δfrの絶対値(|Δfr|)>50Hz、かつ電流値Iの時間変化(ΔI)が負で、ΔIの絶対値|ΔI|>2mAのとき、保護カバー2の表面に異物が付着していると判断する。なお、閾値fthは50Hz、閾値Ithは2mAとする。
【0064】
さらに、信号処理回路20は、測定した共振周波数frの時間変化(Δfr)が負で、Δfrの絶対値(|Δfr|)>100Hz、かつ電流値Iの時間変化(ΔI)が負で、ΔIの絶対値|ΔI|>4mAのとき、保護カバー2の表面に付着した異物が大きい(汚れ具合がひどい)と判断する。なお、閾値fth1は100Hz、閾値Ith1は4mAとする。
【0065】
サーチモードにおいて、保護カバー2の表面に異物が付着していると判断し、保護カバー2に付着した異物が小さい(汚れ具合が軽い)場合、信号処理回路20は、圧電駆動部30に対して駆動モードAでの動作を指示する。圧電駆動部30は、図8に示す上段の波形のように、時間0sのタイミングで所定の大きさの振動振幅で圧電振動子15を振動させるための電圧を印加する。
【0066】
圧電駆動部30に自励振回路を設けた場合、圧電駆動部30は、発振周波数を共振周波数に追随させることができるので、共振周波数frにおける電流値Idrに応じて、振動振幅を調整するように圧電振動子15に印加する電圧を変化させている。つまり、圧電駆動部30は、圧電振動子15の振動により保護カバー2に付着した異物が小さくなるにつれて(たとえば、時間1.6s、時間2.0sのタイミング)、共振周波数frにおける電流値Idrが増加することになり、圧電振動子15の振動振幅を小さくするように印加する電圧を低下させている。
【0067】
圧電駆動部30は、共振周波数frにおける電流値Idrが一定以上増加した場合(たとえば、時間10sのタイミング)、保護カバー2に付着した異物が圧電振動子15の振動により除去されたとして、駆動モードが終了して再びサーチモードに移行する。
【0068】
サーチモードにおいて、保護カバー2の表面に異物が付着していると判断し、保護カバー2に付着した異物が大きい(汚れ具合がひどい)場合、信号処理回路20は、圧電駆動部30および洗浄駆動部60に対して駆動モードBでの動作を指示する。洗浄駆動部60は、図8に示す上段の波形のように、時間0sのタイミングで洗浄液吐出部50から洗浄液を吐出させる(時間0s~時間1.6sの間)。その後、圧電駆動部30は、時間2.0sのタイミングで所定の大きさの振動振幅で圧電振動子15を振動させるための電圧を印加する。なお、圧電駆動部30が圧電振動子15を振動させるために電圧を印加するタイミングは、時間0sのタイミングからであっても、時間0s~時間1.6sの間のうちの何れかのタイミングからであってもよい。
【0069】
圧電駆動部30に自励振回路を設けた場合、圧電駆動部30は、発振周波数を共振周波数に追随させることができるので、共振周波数frにおける電流値Idrに応じて、振動振幅を調整するように圧電振動子15に印加する電圧を変化させている。しかし、圧電駆動部30は、圧電振動子15の振動により保護カバー2に付着した異物が変化しない場合、圧電振動子15への電圧の印加を停止する(たとえば、時間15sのタイミング)。
【0070】
その後、洗浄駆動部60は、時間16sのタイミングで再度、洗浄液吐出部50から洗浄液を吐出させる(時間16s~時間17.6s間)。圧電駆動部30は、時間18sのタイミングで所定の大きさの振動振幅で圧電振動子15を振動させるための電圧を印加する。
【0071】
駆動モードBでは、振動と洗浄液の吐出とを併用して保護カバー2の表面に付着した異物の洗浄を行っている。具体的に、洗浄装置は、洗浄液で異物を洗い流した後、残った水滴を振動で霧化させている。しかし、たとえば保護カバー2の表面に付着した異物が泥水であれば、先に振動で水滴を霧化させてしまうと、固化した泥成分が残り、洗浄液で泥成分を洗い流し難くなる。そのため、駆動モードBでは、先に洗浄液で泥水を洗い流した後に、残った水滴を振動で霧化させることで、泥成分が残り難くしている。また、洗浄液の吐出中に水分が霧化しない程度の振動を保護カバー2に与えておくことで、超音波洗浄効果により、保護カバー2上に固着した異物が浮き上がり、洗い流しやすくなる効果がある。このように、振動と洗浄液の吐出とを組み合わせることで、効果的に汚れを除去することができる。
【0072】
前述したように、撮像ユニット100の洗浄装置では、圧電振動子15の共振周波数frと電流値I(または電流値Iの逆数であるインピーダンス)とを測定して、保護カバー2の表面に異物が付着していると判断すると説明した。次に、当該洗浄装置の実験結果を説明する。図9は、本実施の形態1に係る撮像ユニットの洗浄装置の実験結果を示す図である。図9では、横軸が時間(s)、左側の縦軸が電流値I(A)、右側の縦軸が共振周波数fr(Hz)である。
【0073】
図9に示す実験では、撮像ユニット100の洗浄装置をON状態にしてから100秒後、保護カバー2の表面に異物をスプレーで付着させている。当該洗浄装置は、サーチモードで駆動しているとき、図9に示すように、共振周波数frおよび電流値Iが温度変化によって緩やかに変化している。なお、撮像ユニット100では、急に日光が当たるなど環境が変化することで、温度が急激に変化する可能性もあるため、時間微分値のみをもって異物の付着を判断することは困難である。洗浄装置は、約100後にスプレーで付着させた異物(たとえば、水)により、共振周波数frおよび電流値Iがともに低下している。このように、本実施に形態に係る洗浄装置では、2つのパラメータ(たとえば、共振周波数frおよび電流値I)を測定することで、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断することができる。
【0074】
つまり、本実施に形態に係る洗浄装置では、温度変化や経年変化による電気特性(たとえば、共振周波数fr)の変化と、保護カバー2の表面に異物が付着したことによる電気特性(たとえば、電流値I)の変化を区別して、誤動作を防止することができる。また、本実施に形態に係る洗浄装置では、閾値の設定により保護カバー2の表面に付着した異物の程度に応じて、洗浄液を節約しつつ効果的な洗浄を行うことができる。さらに、本実施に形態に係る洗浄装置では、洗浄が不要な場合には圧電振動子15を振動させることがなく、保護カバー2に付着した異物が小さい(汚れ具合が軽い)場合には圧電振動子15の振動振幅を小さくすることで、振動部12にかかる応力を低減し、寿命を向上させることができる。
【0075】
なお、振動部12により保護カバー2を振動させる振動モードには、保護カバー2の中心部分の振動変位を大きくして、保護カバー2に付着した水分を霧化させるのに最適な振動モード以外に、複数存在する。以下に、振動モードについて図を用いて説明する。図10は、異なる振動モードで保護カバー2を振動させた場合の振幅変位を示す模式図である。
【0076】
図10(a)では、図2に示す撮像ユニット100を図中左側から見た保護カバー2の図が示されており、第一の振動モード(共振周波数f1)で保護カバー2を振動させている。第一の振動モードでは、振動変位の大きい部分が保護カバー2の中心部分(振動の腹)で、振動変位の小さい部分が保護カバー2と接続されている振動部12(振動の節)になっている。図中では、振動変位の大きさをハッチングにより表しており、線の間隔が狭いハッチングの方がより振動変位が大きいことを表している。
【0077】
図10(b)では、図2に示す撮像ユニット100を図中左側から見た保護カバー2の図が示されており、第二の振動モード(共振周波数f2)で保護カバー2を振動させている。第二の振動モードでは、振動変位の大きい部分が保護カバー2と接続されている振動部12(振動の腹)で、振動変位の小さい部分が保護カバー2の部分(振動の節)になっている。
【0078】
図10(c)では、図2に示す撮像ユニット100を図中左側から見た保護カバー2の図が示されており、第三の振動モード(共振周波数f3)で保護カバー2を振動させている。第三の振動モードでは、振動変位の大きい部分が保護カバー2の周縁部(振動の腹)で、振動変位の小さい部分が当該周縁部以外の部分(振動の節)になっている。
【0079】
サーチモードにおいて、保護カバー2の部分が振動の節となるような第二の振動モードで振動部12を振動させることで、保護カバー2に付着した異物の影響を小さくして、温度や経年変化のみによる電気特性の変動を測定することが可能となる。そのため、保護カバー2の部分が振動の腹となるような第一の振動モードで振動部12を振動させ、保護カバー2に付着した異物の影響が大きい電気特性の変動を測定した結果から、第二の振動モードでの測定結果との差分を求めることで、保護カバー2に付着した異物のみによる電気特性の変動を測定することが可能となる。
【0080】
また、霧化させるのに最適な振動モードは、第一の振動モードであるが、当該第一の振動モードでは、振動変位が最大となる保護カバー2の中心部分で異物に対する感度が高くなるが、それ以外の部分では異物に対する感度が小さくなる。そのため、サーチモードにおいて、第一の振動モードで振動部12を振動させ、保護カバー2の中心部に付着した異物を感度よく測定した結果と、第三の振動モードで振動部12を振動させ、保護カバー2の周縁部に付着した異物を感度よく測定した結果とを組み合わせて行ってもよい。これにより、保護カバー2のあらゆる位置に付着した異物を検知することが可能になり、さらに保護カバー2のどの位置に異物が付着したのかを特定することも可能になる。また、保護カバー2に異物が付着した位置のみ振動させることも可能になる。
【0081】
(変形例)
前述で説明したように、本実施の形態に係る洗浄装置では、2つのパラメータ(たとえば、共振周波数frおよび電流値I)を測定することで、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断することができると説明した。しかし、保護カバー2の表面に付着した異物の判断は、共振周波数frおよび電流値Iを測定する以外に、撮像部5で撮像した画像の情報を用いてもよい。例えば、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するために、共振周波数frの変化量(時間変化)、電流値Iの変化量(時間変化)に加えて、撮像部5で撮像した画像の時間変化の情報を考慮してもよい。また、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するために、共振周波数frの変化量(時間変化)と撮像部5で撮像した画像の時間変化とを組み合わせてもよい。さらに、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するために、電流値Irの変化量(時間変化)と撮像部5で撮像した画像の時間変化とを組み合わせてもよい。
【0082】
例えば、信号処理回路20は、共振周波数frの変化量が閾値fthの絶対値より大きく、かつ撮像部5で撮像した画像の明度積分値が低下した場合、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する。これにより、信号処理回路20は、共振周波数frの変化量を考慮することで、撮像ユニット100を装着した車が例えばトンネルに入ることで生じる明度積分値の低下と、保護カバー2の表面に異物が付着したことで生じる明度積分値の低下とを区別することができる。
【0083】
また、信号処理回路20は、共振周波数frの変化量、電流値Iの変化量が閾値fth、Ithのそれぞれの絶対値より大きく、かつ撮像部5で撮像した画像の明度積分値が大きく低下した場合、保護カバー2の表面に付着した異物が泥など不透明物であると判断する。信号処理回路20は、撮像部5で撮像した画像の明度積分値の低下が小さい場合、保護カバー2の表面に付着した異物が水など透明物であると判断する。このように、信号処理回路20は、撮像部5で撮像した画像の時間変化の情報を考慮することで、保護カバー2の表面に付着した異物の種類をより正確に判断し、洗浄液の吐出の有無を精度よく判断することができる。
【0084】
次に、本変形例に係る洗浄装置の動作についてフローチャートに基づいて説明する。図11は、本実施の形態1の変形例に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図11に示すフローチャートにおいて、図4に示すフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付して詳細な説明を繰返さない。まず、インピーダンス検出部70は、スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大(または電流値の逆数であるインピーダンスが最小)となる周波数を初期の共振周波数fr0、そのときの電流値をI0として測定する(ステップS101)。信号処理回路20は、初期の共振周波数fr0、および電流値I0を、基準値fr、Iとして記憶を更新する(ステップS102)。
【0085】
一定時間後(たとえば、1秒後)、圧電駆動部30は、圧電デバイス40をサーチモードで動作するために、駆動電圧VdrをV1とし、周波数fをスイープさせて交流出力信号を圧電振動子15に印加する。そして、インピーダンス検出部70は、スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大となる周波数を共振周波数fr1、そのときの電流値をI1として測定する(ステップS103)。
【0086】
信号処理回路20は、ステップS102で更新した基準値fr、Iと共振周波数fr1、電流値I1との差分値を求め、当該差分値が予め定めてある閾値fth、Ithと比較する(ステップS104)。
【0087】
差分値が予め定めてある閾値fth、Ithより大きい場合(ステップS104でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS102に戻し、ステップS104で測定した共振周波数fr1、および電流値I1を、基準値fr、Iとして記憶を更新する。
【0088】
差分値が予め定めてある閾値fth、Ith以下の場合(ステップS104でYES)、信号処理回路20は、撮像部5で撮像した画像の明度積分値(時間変化)が一定以上に低下か否かを判断する(ステップS205)。保護カバー2の表面に泥など不透明物な異物が付着すると、撮像部5で撮像した画像の明度が急激に低下する。そのため、信号処理回路20は、閾値fth、Ithより絶対値が大きい閾値fth1、Ith1を用いて、保護カバー2の表面に付着した異物の程度を判断することなく、画像の時間変化で異物の程度を判断できる。
【0089】
画像の明度積分値が一定以上に低下していない場合(ステップS205でNO)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が水など透明物であると判断して、圧電駆動部30は、圧電デバイス40を駆動モードで動作するために、駆動電圧VdrをV2(>V1)に設定し、駆動周波数fdrを共振周波数fmaxとする交流出力信号を圧電振動子15に印加する(ステップS106)。信号処理回路20は、洗浄駆動部60を駆動せずに、圧電駆動部30のみを駆動する駆動モードAを実行する(ステップS107)。
【0090】
一方、画像の明度積分値が一定以上に低下した場合(ステップS205でYES)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が泥など不透明物であると判断して、圧電駆動部30は、圧電デバイス40を駆動モードで動作するために、駆動電圧VdrをV3(<V2)に設定し、駆動周波数fdrを共振周波数fmaxとする交流出力信号を圧電振動子15に印加する(ステップS108)。信号処理回路20は、洗浄駆動部60を駆動させて洗浄液を吐出させて、圧電駆動部30も駆動する駆動モードBを実行する(ステップS109)。
【0091】
信号処理回路20は、インピーダンス検出部70で測定される電流値Idrが一定以上に増加したか否かを判断する(ステップS110)。電流値Idrが一定以上に増加した場合(ステップS110でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を終了する操作を受付けているか否か判断する(ステップS111)。洗浄処理を終了する操作を受付けている場合(ステップS111でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を終了する。一方、洗浄処理を終了する操作を受付けていない場合(ステップS111でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS101に戻す。
【0092】
電流値Idrが一定以上に増加していない場合(ステップS110でNO)、信号処理回路20は、洗浄処理の駆動モードで一定時間(たとえば、30分間)を超えて駆動しているか否かを判断する(ステップS112)。洗浄処理の駆動モードで長時間、圧電デバイス40を駆動した場合、保護カバー2が発熱するなどの不具合が発生する可能性がある。そこで、洗浄処理の駆動モードで一定時間を超えて駆動している場合(ステップS112でYES)、信号処理回路20は、洗浄処理を異常終了する。洗浄処理の駆動モードにおいて一定時間以下で駆動している場合(ステップS112でNO)、信号処理回路20は、処理をステップS105に戻す。
【0093】
以上のように、本実施の形態1に係る撮像ユニット100では、洗浄装置を備えている。この洗浄装置は、撮像部5を保持する筐体1と、撮像部5の視野に配置される保護カバー2と、保護カバー2を振動させる振動部12と、振動部12を駆動する圧電駆動部30と、圧電駆動部30を制御する信号処理回路20と、信号処理回路20で駆動する振動部12のインピーダンスに関する値(電流値I)を検出するインピーダンス検出部70とを備える構成である。そして、信号処理回路20は、第1の電圧(V1)で振動部12を駆動する場合の共振周波数の変化量(Δf)と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する電流値の変化量(ΔI)と、撮像部5で撮像した画像の時間変化(明度積分値)とのうち少なくとも2つの情報に基づき、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断し、当該判断に応じて振動部12を制御して保護カバー2の表面を洗浄する。
【0094】
そのため、本実施の形態1に係る洗浄装置は、少なくとも2つの情報に基づき、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断し、当該判断に応じて振動部12を制御して保護カバー2の表面を洗浄するので、効率の高い洗浄を行うことができる。
【0095】
信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着していると判断した場合、保護カバー2の表面を洗浄するために振動部12を駆動する駆動周波数fdrを決定し、駆動周波数fdrおよび第2の電圧(V2)で振動部12を駆動してもよい。これにより、圧電駆動部30は、適切な駆動周波数fdrおよび第2の電圧(V2)で、保護カバー2の表面を洗浄することができる。
【0096】
信号処理回路20は、第1の電圧(V1)で振動部12を駆動する場合の共振周波数の変化量(Δf)が負で、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスの時間変化が正(電流値の変化量(ΔI)が負)の場合、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断してもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したことによる変動なのか、温度変化による変動なのかを正確に判断することができる。
【0097】
信号処理回路20は、第1の電圧(V1)で振動部12を駆動する場合の共振周波数の変化量(Δf)が負で、撮像部5で撮像した画像から得られる明度の時間変化(明度積分値)が負の場合、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断してもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類をより正確に判断し、洗浄液の吐出の有無を精度よく判断することができる。
【0098】
信号処理回路20は、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスの時間変化が正(電流値の変化量(ΔI)が負)で、撮像部5で撮像した画像から得られる明度の時間変化(明度積分値)が負の場合、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断してもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類をより正確に判断し、洗浄液の吐出の有無を精度よく判断することができる。
【0099】
信号処理回路20は、前記撮像素子で撮像した画像の解析結果(明度積分値)に基づき、保護カバー2の表面に付着した異物の種類を特定してもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が泥など不透明物であると判断する。
【0100】
信号処理回路20は、複数の振動モードで振動部12を駆動することが可能で、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するために振動部12を駆動する振動モード(たとえば、第一の振動モード+第二の振動モード)と、保護カバー2の表面を洗浄するために振動部12を駆動する振動モード(たとえば、第一の振動モード)とが異ならせてもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2に付着した異物のみによる電気特性の変動を測定することが可能となる。
【0101】
信号処理回路20は、共振周波数およびインピーダンスのうち少なくとも1つの値に基づいて、保護カバー2の表面を洗浄するための振動部12を駆動する電圧(V2またはV3)を変更してもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2に付着した異物の程度に応じて圧電振動子15の振動振幅を変更できる。
【0102】
保護カバー2の表面に洗浄液(洗浄体)を吐出させる洗浄液吐出部50をさらに備え、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したとの判断に応じて、洗浄液吐出部50から洗浄液を吐出させてもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2に付着した異物をより強力に洗浄できる。
【0103】
信号処理回路20は、洗浄液吐出部50から洗浄液を吐出して保護カバー2の表面を洗浄する場合、振動部12を駆動する電圧を第1の電圧(V1)以上で、第2の電圧(V2)以下としてもよい。これにより、信号処理回路20は、洗浄液の吐出による洗浄に組み合わせて振動でも洗浄が可能となる。信号処理回路20は、振動のみの洗浄と同じ振動振幅で洗浄を行うと洗浄液が霧化して有効に利用できないため、振動部12を弱振動で駆動させる。
【0104】
洗浄液吐出部50は、保護カバー2の表面を洗浄する第1の洗浄液と、第1の洗浄液よりも強力な洗浄力を有する第2の洗浄液とを吐出させることが可能で、信号処理回路20は、第1の電圧で振動部12を駆動する場合の共振周波数と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する値(電流値)と、撮像部5で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、第1の洗浄液と、第2の洗浄液とを切り替えてもよい。これにより、信号処理回路20は、保護カバー2に付着した異物をより強力に洗浄できる。
【0105】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る洗浄装置では、保護カバー2の表面に付着した異物の程度に応じて、信号処理回路20で圧電振動子15に印加する電圧を変更するのみであった。本実施の形態に係る洗浄装置では、保護カバー2の表面に付着した異物の程度に応じて、信号処理回路20で圧電振動子15に印加する周波数をスイープさせる構成について説明する。
【0106】
図12は、本実施の形態2に係る撮像ユニットの洗浄装置の制御を説明するためのタイミングチャートである。図12にタイミングチャートにおいてサーチモードの期間(tCYCLE期間)では、圧電駆動部30が、たとえば駆動電圧VdrをV1とし、周波数fをfMIN~fMAXまでスイープさせて交流出力信号を圧電振動子15に印加する。信号処理回路20は、サーチモードでの共振周波数および電流値の測定結果に基づいて、保護カバー2の表面に付着した異物が水であると判断した場合、共振周波数f01の前後でスイープさせた交流出力信号を圧電振動子15に印加する。なお、信号処理回路20は、実施の形態1で説明した構成で保護カバー2の表面に付着した異物の有無、程度を判断することができる。
【0107】
信号処理回路20は、図12に示す駆動モードCのように、期間ΔTで共振周波数f01の前後の範囲fFSをスイープさせた交流出力信号を圧電振動子15に印加する。これにより、洗浄装置は、共振周波数f01での振動を継続することにより保護カバー2の温度が過度に上昇することを防止でき、保護カバー2の表面に付着した水(液滴)を霧化させることができる。また、洗浄装置は、圧電振動子15に印加する交流出力信号を共振周波数f01の前後の範囲fFSでスイープさせることで、保護カバー2の表面に付着した水膜が定常状態で振動して霧化せず残る現象を回避することができる。
【0108】
なお、サーチモードおよび駆動モードCで、圧電振動子15に印加する交流出力信号は、図12に示すようにスッテプ状に周波数が変化する。具体的に、交流出力信号は、期間Δtごとに周波数fSTEPだけ増加または減少する。
【0109】
信号処理回路20は、期間ΔtDRIVEを駆動モードCで駆動した後、再びサーチモードで駆動し、当該サーチモードでの共振周波数および電流値の測定結果に基づいて、保護カバー2の表面に付着した異物が泥であると判断する。信号処理回路20は、異物が泥であると判断した場合、共振周波数f02で固定して交流出力信号を圧電振動子15に印加する。これは、保護カバー2の表面に泥が付着した場合、霧化ではなく、異物を「ふるい落とす」動作で振動させて洗浄するのが有効であるためである。つまり、信号処理回路20は、駆動モードDとして共振周波数f02で固定して圧電振動子15を駆動させ、異物に対して最大のエネルギーを与えることで保護カバー2の表面から異物を離脱させる。
【0110】
ここで、泥が霧化しにくい理由について、表面張力と比重との関係により説明する。水(液滴)を霧化させるためには、水(液滴)の表面に生じるキャビテーション波によるエネルギーが、水(液滴)の表面張力に打ち勝つ必要がある。そのため、表面張力が大きい異物が保護カバー2の表面に付着した場合、霧化させるためには、より多くのエネルギーを水(液滴)の表面に与える必要である。
【0111】
表面張力は、液種によっても異なるが、液体の温度によっても異なる。そのため、表面張力が大きい低温側では、圧電振動子15の振動振幅を増大させて霧化を促す必要がある。さらに、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物を有効に霧化させるためには、温度に応じて圧電振動子15の振動振幅を変化させる必要がある。
【0112】
また、保護カバー2の表面に泥水が付着した場合、洗浄装置は、洗浄液の吐出に頼らないで、前述したように泥と水とに応じた洗浄方法を採用することができる。また、信号処理回路20は、駆動モードC,Dにおける駆動を、共振周波数近傍で強振動させる時間を時間t1、共振周波数近傍以外で振動させる時間を時間t2として、t1/(t1+t2)のデューティ値で制御することができる。つまり、信号処理回路20は、時間t2を時間t1と比較して長く設定することで駆動モードCのような共振周波数f01の前後の範囲fFSをスイープさせた交流出力信号を圧電振動子15に印加することができる。また、信号処理回路20は、時間t1を時間t2と比較して長く設定することで駆動モードDのような共振周波数f02で固定して交流出力信号を圧電振動子15に印加することができる。
【0113】
以上のように、本実施の形態2に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、保護カバー2の表面を洗浄するための振動部12の駆動に、共振周波数近傍で駆動する第1期間(時間t1)と、当該共振周波数近傍以外で駆動する第2期間(時間t2)とを含み、第1の電圧で振動部12を駆動する場合の共振周波数と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する値(電流値)と、撮像部5で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、第1期間と第2期間とのデューティ比を決定する。
【0114】
これにより、本実施の形態2に係る洗浄装置では、保護カバー2の表面に付着した異物に応じて、適切な振動を与え除去することができる。
【0115】
(実施の形態3)
実施の形態1に係る洗浄装置では、圧電デバイス40の共振周波数が温度により変化することを説明した。本実施の形態に係る洗浄装置では、温度を測定する温度測定部を設けた構成について説明する。
【0116】
図13は、本実施の形態3に係る撮像ユニット200の洗浄装置の制御を説明するためのブロック図である。撮像ユニット200は、撮像部5、信号処理回路20、圧電駆動部30、圧電デバイス40、洗浄液吐出部50、洗浄駆動部60、インピーダンス検出部70、電源回路80、および温度測定部90を含んでいる。撮像ユニット200は、図3に示した撮像ユニット100に温度測定部90が追加された以外は同じ構成であり、同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0117】
温度測定部90は、撮像ユニット200、たとえば振動部12、保護カバー2の近傍での温度を測定することが可能である。温度測定部90は、信号処理回路20に対して測定した温度を出力することができればよく、公知の温度センサ、温度測定装置を用いることができる。
【0118】
信号処理回路20は、温度測定部90で測定した温度の情報を利用して、保護カバー2の表面に付着した異物を除去するために駆動モードで圧電振動子15に印加する駆動電圧を変更する。図14は、電気特性の変化量と駆動電圧との関係を説明するための図である。図14では、横軸が電気特性の変化量(たとえば、電流値の変化量(ΔI))で、縦軸が駆動電圧である。圧電振動子15に印加する駆動電圧は、図14に示すように、温度が40℃より高ければ電気特性の変化量が変化しても、ほぼ同じ電圧となる。なお、電気特性の変化量が大きくなるにつれて、保護カバー2の表面に付着した異物が大きくなる(汚れ具合がひどくなる)。
【0119】
圧電振動子15に印加する駆動電圧は、温度が40℃以下であれば電気特性の変化量が変化するにつれて、高い電圧となる。つまり、保護カバー2の表面に付着した異物(たとえば、液滴)は、低温になると表面張力が増大して霧化、離脱しにくくなるため、信号処理回路20は、それを補償するように圧電振動子15に印加する駆動電圧を高くする。また、圧電振動子15による振動振幅が温度特性を持つ場合、信号処理回路20は、表面張力の補償に加えて、振動振幅の温度特性を補償するように設定してもよい。
【0120】
図14から分かるように、圧電振動子15に印加する駆動電圧は、低温になるにしたがって、電圧を高くすることが望ましい。なお、温度測定部90は、温度センサ、温度測定装置であると説明した。しかし、別途、温度センサ、温度測定装置を設けることなく、図6(a)に示した圧電デバイス40の共振周波数の変化量、図6(b)に示した圧電デバイス40のインピーダンスの変化量から温度を推定してもよい。つまり、図13に示す撮像ユニット200に温度測定部90を設けずに、信号処理回路20内の処理として温度測定を行ってもよい。
【0121】
以上のように、本実施の形態3に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、第1の電圧(V1)で振動部12を駆動する場合の共振周波数の変化量(Δf)と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する電流値の変化量(ΔI)とに基づき、保護カバー2の温度を推定し、推定した保護カバー2の温度に基づき、保護カバー2の表面を洗浄する場合に振動部12を駆動する電圧を変更する。
【0122】
これにより、本実施の形態3に係る洗浄装置では、温度測定部を別途設けなくても、低温時に洗浄性能が低下するのを抑制することができる。また、洗浄装置では、高温時に、不必要な振動により接合部にストレスがかかり、寿命が低下するのを防止することができる。
【0123】
また、本実施の形態3に係る洗浄装置では、振動部12または保護カバー2の温度を測定する温度測定部90をさらに備え、信号処理回路20は、温度測定部90の測定結果に基づき、保護カバー2の表面を洗浄する場合に振動部12を駆動する電圧を変更してもよい。これにより、本実施の形態3に係る洗浄装置では、温度測定部90の測定結果を利用して、低温時に洗浄性能が低下するのを抑制することができる。
【0124】
(実施の形態4)
実施の形態1に係る洗浄装置では、インピーダンス検出部70が圧電デバイス40を動作させている間の圧電駆動部30の電流をモニタすることで、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断している。本実施の形態に係る洗浄装置では、インピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きの差を用いて、保護カバーの表面に異物が付着したことを判断する構成について説明する。
【0125】
本実施の形態4に係る撮像ユニットは、図3に示した撮像ユニット100と同じ構成である。信号処理回路20において、インピーダンス検出部70で検出したインピーダンス値と共振周波数とを記憶することができる機能を有する以外、同じ構成であるため、同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は繰り返さない。
【0126】
本実施の形態4に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作についてフローチャートに基づいて説明する。図15は、本実施の形態4に係る撮像ユニットの洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。まず、信号処理回路20は、圧電デバイス40をサーチモードで動作させて、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する。圧電駆動部30は、圧電デバイス40をサーチモードで動作するために、駆動電圧VdrをV0とし、周波数fをスイープさせて交流出力信号を圧電振動子15に印加する。なお、圧電振動子15に印加する交流出力信号は、発熱抑制の観点から駆動電圧Vdrを小さくする方が望ましい。
【0127】
インピーダンス検出部70は、サーチモードで圧電デバイス40を動作させている間、圧電駆動部30のインピーダンスをモニタしている。具体的に、インピーダンス検出部70は、スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大(または電流値の逆数であるインピーダンスが最小)となる周波数を初期の共振周波数fr1、そのときのインピーダンスをZ1として測定している(ステップS301)。なお、信号処理回路20は、測定した初期の共振周波数fr1、およびインピーダンスZ1を記憶する。また、インピーダンスのリファレンス値であるインピーダンスZ0、および共振周波数のリファレンス値である共振周波数fr0は、信号処理回路20にあらかじめ最初から記憶されている。
【0128】
ここで、圧電デバイス40の電圧の変化率と共振周波数の変化率との関係を説明する。図16は、圧電デバイス40の電圧と共振周波数の変化率との関係を示すグラフである。図16では、横軸を共振周波数の変化率[%]、縦軸を電圧の変化率[%]としている。図16に示すグラフでは、グラフAが水のみの異物が保護カバー2の表面に付着した場合、グラフBが水に含まれる泥の重量割合が50%の泥水(泥水50%)の異物が保護カバー2の表面に付着した場合、グラフCが水に含まれる泥の重量割合が100%の泥水(泥水100%)の異物が保護カバー2の表面に付着した場合、グラフDが水に含まれる泥の重量割合が200%の泥水(泥水200%)の異物が保護カバー2の表面に付着した場合をそれぞれ示している。
【0129】
図16に示すグラフから分かるように、電圧の変化率と共振周波数の変化率との傾きが保護カバー2の表面に付着した異物によって異なることが分かる。また、保護カバー2を数回振動させて異物を除去する動作をさせると、グラフB~グラフDの傾きがグラフAの傾きに近づくことが実験で分かっている。つまり、電圧の変化率と共振周波数の変化率との傾きは、保護カバー2を数回振動させることで、泥水の傾きから水の傾きに近づく。なお、電圧とインピーダンスとは比例関係があるので、電圧の変化率と共振周波数の変化率との傾きは、インピーダンスの変化率(時間変化)と共振周波数の変化率(時間変化)との傾きと同様の傾向となる。
【0130】
そのため、本実施の形態4に係る撮像ユニットの洗浄装置では、インピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きの差を用いて保護カバー2の表面に付着した異物を判断する。具体的に、洗浄装置では、過去のインピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きを記憶しておき、今回測定した傾きと比較することで保護カバー2の表面に付着した異物の種類まで判断することができる。
【0131】
15に戻って、信号処理回路20は、ステップS301で測定したインピーダンスZ1のインピーダンスZ0に対する変化率ΔZ1を、ΔZ1=Z1/Z0で計算し、測定した共振周波数fr1の共振周波数fr0に対する変化率Δfr1を、Δfr1=fr1/fr0で計算する(ステップS302)。信号処理回路20は、ステップS302で計算したインピーダンスの変化率ΔZ1および共振周波数の変化率Δfrを記憶する。
【0132】
信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したか否かを判断するため、測定したインピーダンスZ1とリファレンス値のインピーダンスZ0との差分、および測定した共振周波数fr1とリファレンス値の共振周波数fr0との差分を求める。信号処理回路20は、求めた差分|Z1-Z0|が閾値th1以上で、かつ求めた差分|fr1-fr0|が閾値th2以上であるか否かを判断する(ステップS303)。例えば、インピーダンスZ0を約100Ωと閾値th1を約10Ωとし、共振周波数fr0を約50kHzと閾値th2を約100kHzとした場合、測定したインピーダンスZ1が110Ω以上、共振周波数fr1が150kHz以上となると、ステップS303の条件を満たし、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断する。
【0133】
求めた差分|Z1-Z0|が閾値th1未満で、かつ求めた差分|fr1-fr0|が閾値th2未満である場合(ステップS303でNO)、信号処理回路20は、処理を終了する。求めた差分|Z1-Z0|が閾値th1以上で、かつ求めた差分|fr1-fr0|が閾値th2以上である場合(ステップS303でYES)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に異物が付着したと判断して、付着した異物の種類を判定する処理に移行する。
【0134】
信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類を判定する処理として、サーチモードをn回繰り返して動作して、インピーダンス検出部70にインピーダンスZnおよび共振周波数frnを測定させる(ステップS304)。図17は、サーチモードをn回繰り返して動作させた場合の周波数およびインピーダンスの変化を示すグラフである。インピーダンス検出部70は、1回目スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大(または電流値の逆数であるインピーダンスが最小)となる周波数を共振周波数fr1、そのときのインピーダンスをZ1として測定する。なお、ステップS301での測定を、1回目の測定としてもよい。1回目の測定後、時間tのインターバル時間を挟んで2回目の測定を開始する。インピーダンス検出部70は、図17に示すようにn回目スイープさせた周波数fのうち、圧電駆動部30の電流が最大(または電流値の逆数であるインピーダンスが最小)となる周波数を共振周波数frn、そのときのインピーダンスをZnとして測定する。
【0135】
信号処理回路20は、ステップS304で測定したインピーダンスZnのインピーダンスZ0に対する変化率ΔZnを、ΔZn=Zn/Z0で計算し、測定した共振周波数frnの共振周波数fr0に対する変化率Δfrnを、Δfrn=frn/fr0で計算する(ステップS305)。
【0136】
信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類を判断するため、測定したインピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きを求める。信号処理回路20は、求めた傾き|ΔZn/Δfrn-(ΔZ1/Δfr1)|が閾値th3以下であるか否かを判断する(ステップS306)。例えば、図16で示したように保護カバー2の表面に水のみの異物が付着したグラフAは、サーチモードをn回繰り返しても傾きに変化はないが、保護カバー2の表面に泥水50%や泥水100%などの異物が付着したグラフB,Cは、サーチモードをn回繰り返すと傾きがグラフAの傾き近づくように変化する。つまり、信号処理回路20は、サーチモードをn回繰り返して傾きにあまり変化がない場合、保護カバー2の表面に付着した異物が水であると判断し、サーチモードをn回繰り返して傾きに変化がある場合、保護カバー2の表面に付着した異物が泥水であると判断できる。
【0137】
求めた傾き|ΔZn/Δfrn-(ΔZ1/Δfr1)|が閾値th3以下の場合(ステップS306でYES)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が水であると判断して、圧電駆動部30を駆動するため駆動周波数fdrを共振周波数に設定し、駆動電圧VdrをV1に設定する(ステップS307)。信号処理回路20は、洗浄駆動部60を駆動せずに、ステップS307で設定した値に基づき圧電駆動部30のみを駆動する駆動モードAを実行する(ステップS308)。信号処理回路20は、その後、処理をステップS303に戻す。
【0138】
求めた傾き|ΔZn/Δfrn-(ΔZ1/Δfr1)|が閾値th3より大きい場合(ステップS306でNO)、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が泥水であると判断して、圧電駆動部30を駆動するため駆動周波数fdrを共振周波数に設定し、駆動電圧VdrをV1に設定して洗浄駆動部60を起動する(ステップS309)。信号処理回路20は、洗浄駆動部60で洗浄液を吐出させて、ステップS309で設定した値に基づき圧電駆動部30を駆動する駆動モードBを実行する(ステップS310)。信号処理回路20は、その後、処理をステップS303に戻す。
【0139】
図18は、駆動モードAで駆動させた場合の一例を説明するための図である。信号処理回路20は、サーチモードで保護カバー2の表面に付着した異物が水であると判断した場合、ドライブモードにおいて駆動モードAで洗浄駆動部60を駆動せずに、圧電駆動部30のみを駆動する。なお、圧電駆動部30に自励振回路を設けた場合、圧電駆動部30は、発振周波数を共振周波数に追随させることができる。信号処理回路20は、所定の期間、ドライブモードで駆動した後、再びサーチモードで駆動し保護カバー2の表面に付着した異物の有無を判断する。信号処理回路20は、異物なしと判断した場合、処理を終了し、異物ありと判断した場合、異物の種類を特定し、最適な駆動モードへ移行する。このように、信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物が水であると判断できれば、異物の水を振動だけで除去することが可能となり、ウォッシャなどの洗浄駆動部60を無駄に動作させなくて済む。
【0140】
図19は、駆動モードBで駆動させた場合の一例を説明するための図である。信号処理回路20は、サーチモードで保護カバー2の表面に付着した異物が泥水であると判断した場合、ドライブモードにおいて駆動モードBで洗浄駆動部60および圧電駆動部30を駆動する。具体的に、信号処理回路20は、洗浄駆動部60で保護カバー2に洗浄液を吐出して汚れを洗い流した後、残った水滴を圧電駆動部30で霧化させる。圧電駆動部30で、先に異物を霧化させてしまうと、例えば異物が泥水の場合、泥水の水分だけが霧化され、固化した泥成分が保護カバー2の表面に残ることになり、洗浄液を吐出しても固化した泥成分を洗い流しにくくなる。そのため、信号処理回路20は、圧電駆動部30で異物を霧化させる前に、洗浄駆動部60で保護カバー2に洗浄液を吐出して汚れを洗い流す。また、信号処理回路20は、洗浄駆動部60で洗浄液による洗浄中に、圧電駆動部30で保護カバー2を異物が霧化しない程度の振動を与えておくことで、超音波洗浄効果により、保護カバー2上に固着した汚れが浮き上がり、洗い流しやすくなる効果がある。このように、撮像ユニットの洗浄装置、洗浄駆動部60での洗浄と圧電駆動部30での振動とを組み合わせることで、保護カバー2の表面に付着した異物を効果的に除去することができる。
【0141】
前述の例では、信号処理回路20は、インピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きに対して閾値th3を設定することで、保護カバー2の表面に付着した異物が水か泥水かを判断できると説明した。しかし、これに限られず、保護カバー2の表面に付着した異物の種類に応じて、インピーダンスの変化率と共振周波数の変化率との傾きの変化傾向が分かれば、閾値th3を適切に設定することで保護カバー2の表面に付着した異物を水や泥水以外でも判断できる。また、信号処理回路20は、同じ泥水でも、泥水50%か泥水200%かを、閾値th3を適切に設定することで判断できる。信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類を判断することで、最適な洗浄方法を選択して効率的に異物を除去することが可能となる。
【0142】
以上のように、本実施の形態4に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きに基づき、保護カバー2の表面に付着した異物の種類を特定する。これにより、本実施の形態4に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、最適な洗浄方法を選択することが可能となる。信号処理回路20は、保護カバー2の表面に付着した異物の種類に応じて、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスの時間変化と共振周波数の時間変化との傾きの変化傾向を記憶してもよい。これにより、信号処理回路20は、水と泥水以外の異物についても異物の種類を判断することが可能となる。
【0143】
本実施の形態4に係る洗浄装置は、前述の実施の形態1に係る洗浄装置で説明した構成を適宜組み合わせることができる。例えば、本実施の形態4に係る洗浄装置では、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断するために振動部12を駆動する振動モードと、保護カバー2の表面を洗浄するために振動部12を駆動する振動モードとを異ならせてもよい。信号処理回路20は、共振周波数およびインピーダンスのうち少なくとも1つの値に基づいて、保護カバー2の表面を洗浄するための振動部12を駆動する電圧を変更してもよい。信号処理回路20は、洗浄液吐出部50から洗浄液を吐出して保護カバー2の表面を洗浄する場合、振動部12を駆動する電圧を第1の電圧(V1)以上で、第2の電圧(V2)以下としてもよい。
【0144】
さらに、洗浄液吐出部50は、保護カバー2の表面を洗浄する第1の洗浄液と、第1の洗浄液よりも強力な洗浄力を有する第2の洗浄液とを吐出させることが可能で、信号処理回路20は、第1の電圧で振動部12を駆動する場合の共振周波数と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する値(電流値)と、撮像部5で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、第1の洗浄液と、第2の洗浄液とを切り替えてもよい。
【0145】
また、本実施の形態4に係る洗浄装置に、前述の実施の形態2に係る洗浄装置で説明した構成を適宜組み合わせることができる。例えば、本実施の形態4に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、保護カバー2の表面を洗浄するための振動部12の駆動に、共振周波数近傍で駆動する第1期間(時間t1)と、当該共振周波数近傍以外で駆動する第2期間(時間t2)とを含み、第1の電圧で振動部12を駆動する場合の共振周波数と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する値(電流値)と、撮像部5で撮像した画像とのうち少なくとも1つの情報に基づき、第1期間と第2期間とのデューティ比を決定してもよい。
【0146】
また、本実施の形態4に係る洗浄装置に、前述の実施の形態3に係る洗浄装置で説明した構成を適宜組み合わせることができる。例えば、本実施の形態4に係る洗浄装置では、信号処理回路20が、第1の電圧(V1)で振動部12を駆動する場合の共振周波数の変化量(Δf)と、インピーダンス検出部70で検出するインピーダンスに関する電流値の変化量(ΔI)とに基づき、保護カバー2の温度を推定し、推定した保護カバー2の温度に基づき、保護カバー2の表面を洗浄する場合に振動部12を駆動する電圧を変更してもよい。また、本実施の形態4に係る洗浄装置に、前述の実施の形態3で説明した振動部12または保護カバー2の温度を測定する温度測定部90をさらに備えてもよく、信号処理回路20は、温度測定部90の測定結果に基づき、保護カバー2の表面を洗浄する場合に振動部12を駆動する電圧を変更してもよい。
【0147】
(その他の変形例)
前述の実施の形態に係る撮像ユニットでは、特に撮像部5の構成については詳しく説明していないが、撮像部5として、カメラ、LiDAR,Raderなどを含んでもよい。
【0148】
前述の実施の形態に係る洗浄装置では、信号処理回路20は、共振周波数の変化量(Δf)と、電流値の変化量(ΔI)と、画像の時間変化(明度積分値)とのうち少なくとも2つの情報に基づき、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断すると説明した。しかし、洗浄装置が、温度測定部90をさらに備えるのであれば、信号処理回路20は、共振周波数の変化量(Δf)と、電流値の変化量(ΔI)と、画像の時間変化(明度積分値)と、温度測定部90で測定した温度のうち少なくとも2つの情報に基づき、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断してもよい。
【0149】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットの洗浄装置では、保護カバー2の表面に付着した異物の有無、程度を判断するためのサーチモードと、保護カバー2の表面に付着した異物を除去するための駆動モードとに分けて駆動している。しかし、これに限定されず、洗浄装置では、保護カバー2の表面に付着した異物の有無、程度を判断するためのサーチモードを常時駆動させても、所定の周期で間欠的に駆動させてもよい。
【0150】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットの洗浄装置では、保護カバー2を振動させる洗浄、洗浄液吐出部50により洗浄液を吐出する洗浄を例示したが、これに限定されるものではない。たとえば、洗浄液吐出部50によりエアを吐出する洗浄で保護カバー2の表面に付着した異物を除去してもよい。
【0151】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットでは、図1で示したように1本の洗浄ノズル3を筐体1に設ける構成であると説明したが、これに限られず、複数本の洗浄ノズル3を筐体1に設ける構成であってもよい。
【0152】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットは、車両に設けられる撮像ユニットに限定されず、撮像素子の視野に配置される透光体を洗浄する必要がある用途の撮像ユニットに対しても同様に適用することができる。
【0153】
前述の実施の形態に係る撮像ユニットでは、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断する情報の1つとして、撮像部5で撮像した画像の時間変化があり、一例として撮像部5で撮像した画像の明度積分値の時間変化であると説明した。しかし、これに限られず、撮像部5で撮像した画像の時間変化として、例えば、撮像した画像のエッジのぼやけを画像処理の周波数スペクトルで評価し、周波数スペクトルの時間変化で異物が保護カバー2の表面に付着したと判断してもよい。
【0154】
具体的に、保護カバー2の表面に異物として雨滴が付着した場合、撮像部5で撮像した画像は、雨滴が付着していない場合に比べて画像のエッジにぼやけが生じ、ぼやけていない状態の画像と比較して低い周波数で周波数スペクトルの周波数パワーが大きくなる。そのため、信号処理回路20は、周波数スペクトルにおいて周波数パワーが大きくなる周波数が低く変化した場合、保護カバー2の表面に異物として雨滴が付着したと判断することができる。信号処理回路20は、周波数スペクトルの時間変化を組み合わせて、保護カバー2の表面に異物が付着したことを判断することで、より正確性を向上させることができる。
【0155】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0156】
1 筐体、2 保護カバー、3 洗浄ノズル、4 本体部材、4a ベースプレート、5 撮像部、7 レンズモジュール、9 レンズ、31 開口部、12 振動部、15 圧電振動子、100 撮像ユニット。
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