(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】運動支援装置、運動支援システム、運動支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/30 20180101AFI20220817BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220817BHJP
【FI】
G16H20/30
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020561097
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039364
(87)【国際公開番号】W WO2021085233
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019199835
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 基浩
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201905(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092912(WO,A1)
【文献】特表2011-520556(JP,A)
【文献】特開2006-263002(JP,A)
【文献】特開2010-082054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め
、頻度、強度、持続時間、及び種類の少なくとも1つが規定された複数回の反復実施によるセット運動である自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量
として、自重運動の実施時に変化する運動部位の角度を取得する取得部と、
前記取得部により
直近の複数セットの運動について取得された物理量
である前記角度を用いて、
前記物理量の平均値Avを算出し、以降の前記運動の強度
として、前記平均値Av、又は前記平均値Avと調整値αとの和を導出する導出部と、
前記導出部によって導出された強度を提示する提示部と、
を備えた運動支援装置。
【請求項2】
前記導出部は、
運動開始日から2日目である場合には、前記以降の前記運動の強度として、前記平均値Avを導出し、
運動開始日から3日目以降である場合には、前記以降の前記運動の強度として、前記平均値Avと調整値αとの和を導出する請求項1記載の運動支援装置。
【請求項3】
前記調整値αは、前日分の運動において前記物理量が成功閾値以上となった回数に応じて定められる請求項1又は2記載の運動支援装置。
【請求項4】
前記導出部は、前記運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合、
前記以降の運動の強度として、次回のセット運動の強度を導出する、
請求項
1~請求項3の何れか1項記載の運動支援装置。
【請求項5】
前記取得部は、ウェアラブル端末を用いて前記物理量を取得する、
請求項1~請求項
4の何れか1項に記載の運動支援装置。
【請求項6】
請求項1~請求項
5の何れか1項に記載の運動支援装置と、
前記運動支援装置の前記取得部に前記物理量を示す情報を送信する送信部を備えた端末と、
を含む運動支援システム。
【請求項7】
コンピュータが、予め
、頻度、強度、持続時間、及び種類の少なくとも1つが規定された複数回の反復実施によるセット運動である自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量
として、自重運動の実施時に変化する運動部位の角度を取得し、
直近の複数セットの運動について取得された物理量
である前記角度を用いて、
前記物理量の平均値Avを算出し、以降の前記運動の強度
として、前記平均値Av、又は前記平均値Avと調整値αとの和を導出し、
導出した強度を提示する、
運動支援方法。
【請求項8】
予め
、頻度、強度、持続時間、及び種類の少なくとも1つが規定された複数回の反復実施によるセット運動である自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量
として、自重運動の実施時に変化する運動部位の角度を取得し、
直近の複数セットの運動について取得された物理量
である前記角度を用いて、
前記物理量の平均値Avを算出し、以降の前記運動の強度
として、前記平均値Av、又は前記平均値Avと調整値αとの和を導出し、
導出した強度を提示する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、運動支援装置、運動支援システム、運動支援方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動プログラムによる運動を効果的に実施することができるようにするために適用することのできる技術として、以下の技術があった。
【0003】
特許文献1には、運動中のユーザの体調を適切に評価する運動支援装置が開示されている。この運動支援装置は、ユーザの運動量を表す運動データと、該ユーザの生理状態を表す生体データとの組み合わせから、該ユーザの身体状態を評価する評価手段と、該評価手段によって得られた評価結果を用いて該ユーザに提示する指示内容を決定する決定手段とを備えている。前記評価手段は、前記運動データの推移と、前記生体データの推移との組み合わせから、該ユーザの身体状態を評価することを特徴とする。
【0004】
特許文献2には、ユーザの運動を妨げることなく、ユーザの運動能力や運動中の体調変化に応じた運動コンテンツを提供する運動支援システムが開示されている。この運動支援システムは、運動強度の異なる複数の運動情報を含む運動コンテンツを表示し、ユーザに提供すべき運動情報を他の運動情報とは異なる表示形式で表示する表示手段と、上記表示手段に上記運動コンテンツを表示中に、ユーザの生体データを検出する生体データ検出手段と、上記生体データ検出手段が検出した上記生体データが、上記ユーザに提供すべき運動情報において予め定められた生体データの目標値の範囲内であるか否かを判定する生体データ判定手段と、上記生体データ判定手段が、上記生体データが上記目標値の範囲内ではないと判定したとき、上記ユーザに提供すべき運動情報を、運動強度の異なる他の運動情報に切り替える表示切り替え手段とを備えている。
【0005】
特許文献3には、高齢者を力づけ、個別化された生活様式栄養プログラムを通じて生活の質と自立を高めることができるようにすることを目的として、対象者の身体状況を判断するコンピュータ実施方法が開示されている。このコンピュータ実施方法は、前記対象者の栄養パラメータ及び身体状況パラメータの分類システムを用意するステップと、前記対象者の前記パラメータの値を評価及び採点するステップと、得られた点数を使用して、前記対象者を前記パラメータのそれぞれに関するクラスに分類するステップと、各パラメータについて求められた前記クラスを使用して、前記対象者の身体状況を判断するステップと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-142333号公報
【文献】特開2010-252985号公報
【文献】特表2016-507114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、レジスタンス運動における自重運動、すなわち、器具を用いることなく、自身の重さを利用して実施する運動については、当該運動の強度を適切に設定することが難しいと言われている(体育学研究、57:191-199、2012)。
【0008】
例えば、レジスタンス運動におけるダンベル体操では、ダンベルの重さを調整することで強度を簡易、かつ、適切に設定することができる。これに対して、プッシュアップ(所謂腕立て伏せ)、レッグレイズ、ランジ、自重スクワット等の自重運動の場合、運動の強度を変更することのできる調整対象物がないため、運動の強度を適切に設定することは困難である。
【0009】
これに対し、特許文献1~特許文献3の各文献に開示されている技術では、対応する文献に記載の目的の達成には寄与することができる。しかしながら、自重運動に対する強度の設定に関しては考慮されていないため、必ずしも自重運動に対する強度を適切に設定することができるとは限らなかった。
【0010】
本開示の技術は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、レジスタンス運動における自重運動に対する強度を適切に設定することができる運動支援装置、運動支援システム、運動支援方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1態様は、運動支援装置であって、予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得する取得部と、前記取得部により取得された物理量を用いて、以降の前記運動の強度を導出する導出部と、前記導出部によって導出された強度を提示する提示部と、を備える。
本開示の第2態様は、運動支援システムであって、上記第1態様の運動支援装置と、前記運動支援装置の前記取得部に前記物理量を示す情報を送信する送信部を備えた端末と、を含む。
【0012】
本開示の第3態様は、運動支援方法であって、予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得し、取得した物理量を用いて、以降の前記運動の強度を導出し、導出した強度を提示する。
【0013】
本開示の第4態様は、プログラムであって、予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得し、取得した物理量を用いて、以降の前記運動の強度を導出し、導出した強度を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本開示の技術によれば、レジスタンス運動における自重運動に対する強度を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る運動支援システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る運動支援システムの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係るウェアラブル端末の装着状態の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るウェアラブル端末の装着状態の他の例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る自重運動(プッシュアップ)の強度の説明に供する図である。
【
図6】実施形態に係る自重運動(レッグレイズ)の強度の説明に供する図である。
【
図7】実施形態に係る運動プログラムデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】実施形態に係る運動履歴情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】実施形態に係る強度情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図10】実施形態に係る登録依頼処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る登録画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図12】実施形態に係る登録実施処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施形態に係る運動実施処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施形態に係る運動プログラム表示画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図15】実施形態に係る運動状況登録処理の一例を示すフローチャートである。
【
図16】実施形態に係る強度設定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】実施形態に係る運動プログラム作成モデルの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本開示の技術を、サーバコンピュータ等により構成された運動支援装置と、各々利用者が個別に用いる端末である複数の携帯端末と、各々利用者が運動プログラムによる運動を実施する際に身に付ける複数のウェアラブル端末と、を含む運動支援システムに適用した場合について説明する。また、本実施形態では、利用者が2型糖尿病の患者である場合に本開示の技術を適用した場合の形態例について説明する。
【0017】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る運動支援システム90の構成を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る運動支援システム90は、ネットワーク80に各々アクセス可能とされた、運動支援装置10と、複数の携帯端末40と、を含む。なお、運動支援装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の汎用の情報処理装置が挙げられる。また、携帯端末40の例としては、スマートフォン、タブレット端末、PDA(Personal Digital Assistant、携帯情報端末)、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の携帯型で、かつ、無線通信可能な端末が挙げられる。
【0018】
また、本実施形態に係る運動支援システム90は、複数のウェアラブル端末50を含む。なお、ウェアラブル端末50の例としては、リストバンド型端末、時計型端末、クリップ型端末、眼鏡型端末等の、加速度センサ及びジャイロセンサを含んで構成された3D(3-Dimensional、3次元)モーションセンサを有する各種端末が挙げられる。以下では、ウェアラブル端末50としてリストバンド型端末を適用した場合について説明する。
【0019】
本実施形態に係る運動支援装置10は、運動支援システム90の運営会社(本実施形態では、製薬会社。以下、単に「運営会社」ともいう。)が管理する装置である。運動支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、及び通信I/F部18はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0020】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cが記憶されている。登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cは、登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、登録実施プログラム13A、運動状況登録プログラム13B、及び強度設定プログラム13Cが各々有するプロセスを順次実行する。
【0021】
また、記憶部13には、運動プログラムデータベース13D、運動履歴情報データベース13E、及び強度情報データベース13Fが記憶される。運動プログラムデータベース13D、運動履歴情報データベース13E、及び強度情報データベース13Fについては、詳細を後述する。
【0022】
一方、本実施形態に係る携帯端末40は、運動支援システム90が提供するサービス(運動プログラムによる運動を支援するサービスであり、以下、「提供サービス」という。)の利用対象となる複数の利用者(本実施形態では、2型糖尿病の患者。以下、単に「対象者」ともいう。)が各々所持する端末である。携帯端末40は、CPU41、一時記憶領域としてのメモリ42、不揮発性の記憶部43、タッチパネル等の入力部44、液晶ディスプレイ等の表示部45、及び予め定められた通信規格(本実施形態では、Wi-Fi(登録商標)及びBluetooth(登録商標)の2種類の通信規格)で無線通信を行う無線通信部48を備えている。CPU41、メモリ42、記憶部43、入力部44、表示部45、及び無線通信部48はバスB2を介して互いに接続されている。
【0023】
記憶部43は、HDD、SSD、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部43には、登録依頼プログラム43A及び運動実施プログラム43Bが記憶されている。登録依頼プログラム43A及び運動実施プログラム43Bは、予め記憶部43にインストールされている。CPU41は、登録依頼プログラム43A及び運動実施プログラム43Bを記憶部43から読み出してメモリ42に展開し、登録依頼プログラム43A及び運動実施プログラム43Bが有するプロセスを順次実行する。
【0024】
ところで、本実施形態に係る運動プログラムは、レジスタンス運動における自重運動によるプログラムとされている。なお、本実施形態に係る自重運動としては、プッシュアップ、レッグレイズ、ランジ、自重スクワット等が例示される。
【0025】
なお、本実施形態では、運動プログラムに含まれる自重運動が、頻度、強度、持続時間、及び種類が規定されたものとされているが、これに限るものではない。例えば、上記自重運動が、頻度、強度、持続時間、及び種類のうち、強度を含み、かつ、2種類~3種類の組み合わせが規定されたものとする形態としてもよい。あるいは、上記自重運動が、頻度、強度、持続時間、及び種類のうち、少なくとも1つが規定されたものとする形態としてもよい。
【0026】
本実施形態に係るウェアラブル端末50は、対象者が運動プログラムによる運動を実施する際に各々身に付けるものである。なお、本実施形態に係るウェアラブル端末50は、内蔵された3Dモーションセンサ51により検出された物理量(本実施形態では、装着者(対象者)が実施している運動の実施程度を示す物理量(本実施形態では、3次元方向に対する動きの量及び速度の双方を含む。以下、単に「実施状況情報」ともいう。))を予め定められた通信規格(本実施形態では、Bluetooth(登録商標))による無線通信で対象者が所持する携帯端末40に送信する機能を有している。
【0027】
図3及び
図4には、ウェアラブル端末50としてリストバンド型端末を適用した場合のウェアラブル端末50の対象者に対する装着状態の例が示されている。なお、
図3は、実施する運動がプッシュアップである場合の例を示しており、
図3に示す例では、対象者の腕の上腕にウェアラブル端末50を装着した場合の一例が示されている。また、
図4は、実施する運動がレッグレイズである場合の例を示しており、
図4に示す例では、対象者の脚の下腿にウェアラブル端末50を装着した場合の一例が示されている。但し、ウェアラブル端末50の装着位置は、これらの例には限定されず、例えば、実施する運動がレッグレイズである場合には、上記下腿に加えて、対象者の脚の太腿にウェアラブル端末50を装着する形態等としてもよい。
【0028】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る運動支援装置10及び携帯端末40の機能的な構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る運動支援装置10は、取得部11A、導出部11B、及び提示部11Cを含む。運動支援装置10のCPU11が運動状況登録プログラム13B及び強度設定プログラム13Cを実行することで、取得部11A、導出部11B、及び提示部11Cとして機能する。
【0029】
本実施形態に係る取得部11Aは、予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得する。なお、本実施形態では、上記運動の実施程度を示す物理量として、対象者が運動プログラムに含まれる自重運動を実施している際にウェアラブル端末50によって検出される上記実施状況情報を適用している。
【0030】
一方、導出部11Bは、取得部11Aにより取得された物理量(実施状況情報)を用いて、以降の自重運動の強度を導出する。なお、本実施形態に係る導出部11Bは、取得部11Aにより直前に取得された物理量を用いて、次回の自重運動の強度を導出するが、これに限るものではない。例えば、導出部11Bは、直前に取得された物理量より所定回数(一例として、1回)前に取得された物理量等を用いて、以降の自重運動の強度を導出する形態としてもよい。また、例えば、導出部11Bは、次回より所定回数(一例として、1回)後の自重運動の強度を導出する形態としてもよい。以下、本実施形態に係る強度について具体的に説明する。
【0031】
例えば、自重運動としてプッシュアップを実施する場合、一例として
図5に示すように、対象者の上腕は、肘を回転中心とし、鉛直方向を基準方向として角度52が変化する。ここで、プッシュアップを実施している最中における角度52が180度に近いほど、上腕の筋肉及び大胸筋に対する負荷が大きくなる。本実施形態に係る運動支援システム90では、プッシュアップに対する強度として、ウェアラブル端末50から得られる実施状況情報を用いて得られる、プッシュアップの実施時における角度52そのものを適用している。
【0032】
同様に、自重運動としてレッグレイズを実施する場合、一例として
図6に示すように、対象者の下腿は、腰部を回転中心とし、水平方向を基準方向として角度52が変化する。ここで、レッグレイズを実施している最中における角度52に応じて、腹筋に対する負荷がかかる。本実施形態に係る運動支援システム90では、レッグレイズに対する強度として、ウェアラブル端末50から得られる実施状況情報を用いて得られる、レッグレイズの実施時における角度52そのものを適用している。なお、その他の自重運動についても同様の考え方で強度を規定しているが、ここでの説明は省略する。各自重運動の強度を導出する際には、例えば角度として90度等といった対応する自重運動の基準となる物理量を、「基準物理量」として用いてもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る導出部11Bは、実施する自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合、上記直前に取得された物理量として、取得部11Aによって直近の少なくとも1セットの運動について取得された物理量を用いて上記強度を導出する。また、本実施形態に係る導出部11Bは、実施する自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合、上記次回の自重運動の強度として、次回のセット運動の強度を導出する。
【0034】
例えば、実施する自重運動が、1セットが10回のプッシュアップを1日当たり3セットで毎日実施する運動である場合、翌日の少なくとも1セット目のプッシュアップの強度を、前日の3セット目のプッシュアップの実施時に得られた物理量(実施状況情報)を用いて導出する。
【0035】
なお、本実施形態に係る導出部11Bは、上記強度を、前回より増加された値(以下、「増加値」という。)、前回より減少された値(以下、「減少値」という。)及び前回と同じ値(以下、「同一値」という。)のいずれか一の値として導出する。但し、この形態に限らず、導出部11Bは、増加値、減少値、及び同一値のうち、増加値及び同一値の組み合わせのみを適用する形態や、増加値及び減少値の組み合わせのみ適用する形態、増加値のみを適用する形態としてもよい。
【0036】
また、本実施形態に係る導出部11Bは、上記以降の自重運動の強度を、取得部11Aにより取得された物理量が示す強度が、成功したと見なされる範囲の下限値として予め定められた成功閾値以上であるか否かに応じて導出する。
【0037】
そして、提示部11Cは、導出部11Bによって導出された強度を提示する。なお、本実施形態では、提示部11Cによる強度の提示として、携帯端末40の表示部45を用いた表示による提示を適用しているが、これに限るものではない。例えば、スピーカを用いた音声による提示や、印刷装置を用いた印刷による提示等の他の提示を、提示部11Cによる提示として適用する形態としてもよい。
【0038】
一方、本実施形態に係る携帯端末40は、送信部41Aを含む。携帯端末40のCPU41が運動実施プログラム43Bを実行することで、送信部41Aとして機能する。
【0039】
本実施形態に係る送信部41Aは、運動支援装置10の取得部11Aに上記物理量を示す情報(実施状況情報)を送信する。
【0040】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る運動プログラムデータベース13Dについて説明する。
【0041】
図7に示すように、本実施形態に係る運動プログラムデータベース13Dは、対象者の属性(本実施形態では、性別及び年齢)を示す対象者属性別に、レジスタンス運動における予め定められた種類の自重運動の組み合わせからなる運動プログラム情報が記憶される。
図7に示す例では、運動プログラム情報として、所定期間(
図7に示す例では、1~2週、3~4週、5~12週の3段階の期間)毎の規定種(本実施形態では、強度の成功範囲である強度範囲、実施頻度等を示す実施対象、運動の種類を示す運動種)が記憶される。以下では、上記所定期間について、1~2週を「第1期間」といい、3~4週を「第2期間」といい、5~12週を「第3期間」という。
【0042】
図7に示す例では、例えば、20歳から29歳までの男性に対応する運動プログラム情報として、第1期間における強度範囲としてB1~B2が適用され、実施対象としてX1種目、Y1セットが適用され、運動種としてプッシュアップ、レッグレイズ等が適用されている。なお、ここでは、上記規定種における強度範囲及び実施対象の各情報として、便宜上、B1、B2、X1、Y1等と記載しているが、実際には具体的な数値が記憶されていることは言うまでもない。また、上記強度範囲における下限値及び上限値は、上述したように、自重運動を実施している際に実際に得られる計測値(本実施形態では、角度)の下限値及び上限値である。
【0043】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る運動履歴情報データベース13Eについて説明する。
【0044】
図8に示すように、本実施形態に係る運動履歴情報データベース13Eは、対象者ID(IDentification)、対象者情報、運動種、及び上記所定期間(本実施形態では、上述した第1期間、第2期間、第3期間の3段階の期間)毎の運動履歴の各情報が記憶される。また、上記対象者情報には、氏名、性別、及び年齢の各情報が含まれる。
【0045】
上記対象者IDは、各対象者を識別するために、各対象者別に予め割り当てられた情報であり、上記氏名は、対応する対象者の氏名を示す情報であり、上記性別は、対応する対象者の性別を示す情報であり、上記年齢は、対応する対象者の年齢を示す情報である。また、上記運動種は、対応する対象者が、提示された運動プログラムに従って実施する自重運動の種類を示す情報である。また、上記運動履歴は、対応する対象者が、対応する運動種の自重運動を、対応する期間に実施した状況を示す情報であり、本実施形態では、上述した実施状況情報を適用している。但し、この形態に限らず、実施状況情報に代えて、対応する自重運動を実施した際の強度を上記運動履歴として適用する形態としてもよい。
【0046】
次に、
図9を参照して、本実施形態に係る強度情報データベース13Fについて説明する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態に係る強度情報データベース13Fには、対象者ID、運動種、及び上記所定期間(本実施形態では、上述した第1期間、第2期間、第3期間の3段階の期間)における各日毎の強度の各情報が記憶される。
【0048】
上記対象者IDは、運動履歴情報データベース13Eの対象者IDと同一の情報であり、上記運動種も、運動履歴情報データベース13Eの運動種と同一の情報である。また、上記強度は、対応する対象者が、対応する運動日程において対応する自重運動を行う際の強度の成功範囲の下限値(以下、「成功閾値」という。)を示す情報である。
【0049】
次に、
図10~
図16を参照して、本実施形態に係る運動支援システム90の作用を説明する。なお、以下では、錯綜を回避するため、運動プログラムデータベース13Dが予め構築されている場合について説明する。
【0050】
まず、
図10~
図11を参照して、対象者が提供サービスへの自身の登録を運営会社に依頼する際の本実施形態に係る携帯端末40の作用を説明する。何れかの携帯端末40のCPU41が登録依頼プログラム43Aを実行することによって、
図10に示す登録依頼処理が実行される。
図10に示す登録依頼処理は、例えば、提供サービスを利用したい2型糖尿病の患者から、自身の携帯端末40の入力部44を介して登録依頼処理の実行指示が入力された場合に実行される。
【0051】
図10のステップ100で、CPU41は、予め定められた構成とされた登録画面を表示部45により表示する制御を行った後、ステップ102で、CPU41は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0052】
図11には、本実施形態に係る登録画面の一例が示されている。
図11に示すように、本実施形態に係る登録画面では、対象者自身に関する情報の入力を促すメッセージが表示されると共に、対象者自身の氏名、性別、及び年齢を入力するための入力領域が表示される。
【0053】
図11に示される登録画面が表示部45に表示されると、対象者は、自身に関する各情報を対応する入力領域に入力部44を介して入力した後、入力部44を介して終了ボタン45Aを指定する。対象者によって終了ボタン45Aが指定されると、ステップ102が肯定判定となってステップ104に移行する。
【0054】
ステップ104で、CPU41は、登録画面において対象者によって入力された各情報(以下、「登録情報」という。)を、運動支援装置10に無線通信部48及びネットワーク80を介して送信する。登録情報を受信すると、運動支援装置10は、後述するように、受信した登録情報に対応した運動プログラム情報を、登録情報の送信元の携帯端末40に送信する。
【0055】
そこで、ステップ106で、CPU41は、運動支援装置10から運動プログラム情報を受信するまで待機し、ステップ108で、CPU41は、運動支援装置10から受信した運動プログラム情報を記憶部43に記憶する。この運動プログラム情報の記憶により、対象者は、当該運動プログラム情報により示される運動プログラムを随時参照することができる。
【0056】
ところで、本実施形態に係る運動支援装置10は、運動プログラム情報を携帯端末40に送信した後、対象者に対して運動プログラム情報の提供に対する対価の支払いを指示する処理(以下、「対価支払い指示処理」という。)を実行する。そこで、ステップ110では、CPU41により、当該対価支払い指示処理に応じて、運営会社に対して対価を支払うための処理(以下、「対価支払い処理」という。)を実行し、その後に本登録依頼処理を終了する。なお、後述するように、本実施形態に係る運動支援装置10は、対価支払い指示処理を実行する際に、対象者に対して新規に付与した対象者IDを当該対象者の携帯端末40に送信する。そこで、ステップ110で、CPU41は、対価支払い処理を実行すると共に、受信した対象者IDを記憶部43に記憶する処理も実行する。
【0057】
次に、
図12を参照して、何れかの対象者から提供サービスへの自身の登録の依頼を受けた際の本実施形態に係る運動支援装置10の作用を説明する。運動支援装置10のCPU11が登録実施プログラム13Aを実行することによって、
図12に示す登録実施処理が実行される。
図12に示す登録実施処理は、何れかの対象者が所持する携帯端末40から上述した登録情報を受信した場合に実行される。
【0058】
図12のステップ200で、CPU11は、受信した登録情報における対象者の性別及び年齢に対応する運動プログラム情報を運動プログラムデータベース13Dから読み出す。ステップ202で、CPU11は、読み出した運動プログラム情報を、受信した登録情報の送信元の携帯端末40に通信I/F部18及びネットワーク80を介して送信する。
【0059】
ステップ204で、CPU11は、その時点で運動履歴情報データベース13Eに登録されていない対象者IDを新たに生成する。CPU11は、当該対象者IDと、受信した登録情報における氏名、性別、及び年齢の各情報と、送信した運動プログラム情報における運動種と、を対応付けて運動履歴情報データベース13Eに記憶(登録)する。また、ステップ204で、CPU11は、生成した対象者IDと、送信した運動プログラム情報における運動種と、を対応付けて強度情報データベース13Fに記憶(登録)する。
【0060】
ステップ206で、CPU11は、上述した対価支払い指示処理を実行し、その後に本登録実施処理を終了する。なお、CPU11は、対価支払い指示処理を実行する際に、ステップ204の処理において生成した対象者IDを、受信した登録情報の送信元の携帯端末40に通信I/F部18及びネットワーク80を介して送信する。
【0061】
次に、
図13及び
図14を参照して、対象者が運動支援装置10から受信した運動プログラム情報により示される自重運動を実施する際の携帯端末40の作用を説明する。携帯端末40のCPU41が運動実施プログラム43Bを実行することによって、
図13に示す運動実施処理が実行される。
図13に示す運動実施処理は、対象者から入力部44を介して運動実施処理の実行指示が入力された場合に実行される。なお、この際に対象者は、自身が所持するウェアラブル端末50を装着して稼働状態にする。これにより、携帯端末40は、ウェアラブル端末50から
上述した実施状況情報の受信を連続的に行うことができる。
【0062】
図13のステップ600で、CPU41は、上述した登録依頼処理において記憶した運動プログラム情報を記憶部43から読み出す。ステップ602で、CPU41は、当日が読み出した運動プログラム情報により示される自重運動を実施する初日であるか否かを判定し、肯定判定となった場合は後述するステップ608に移行する。一方、CPU41は、否定判定となった場合はステップ604に移行する。なお、本実施形態では、上記自重運動を実施する初日であるか否かの判定を、対象者に当日が何日目の自重運動の実施日であるのかを入力部44を介して入力させることで行っているが、これに限るものではない。例えば、運動履歴情報データベース13Eを参照して、実施状況情報の登録状況から上記初日であるか否かの判定を行う形態等としてもよい。
【0063】
ところで、本実施形態に係る運動支援装置10は、後述するように、対象者が運動プログラム情報により示される自重運動を上記所定期間にわたって実施している際に、2日目以降の自重運動の強度の成功範囲の下限値である成功閾値を導出し、強度情報データベース13Fに登録する。成功閾値は、前日の同一種の自重運動の実施状況情報を用いて導出される。
【0064】
そこで、ステップ604で、CPU41は、運動支援装置10によって登録された当日の成功閾値を、無線通信部48及びネットワーク80を介して強度情報データベース13Fから読み出す。ステップ606で、CPU41は、読み出した成功閾値に、読み出した運動プログラム情報における、対応する期間の強度範囲の下限値を置き換え、その後にステップ608に移行する。
【0065】
ステップ608で、CPU41は、以上の処理を経た運動プログラム情報を用いて、予め定められた構成とされた運動プログラム表示画面を表示部45により表示する制御を行う。
【0066】
図14には、本実施形態に係る運動プログラム表示画面の一例が示されている。
図14に示すように、本実施形態に係る運動プログラム表示画面では、対象者に適した運動プログラム情報が示す運動プログラムが表示される。なお、
図14に示す例では、ステップ604~ステップ606の処理による強度範囲の下限値の置き換えが行われていない場合について示している。しかし、当該置き換えが行われた場合には、対応する強度範囲の下限値が変更された運動プログラムが表示されることになる。対象者は、表示された運動プログラムを参照することで、自身が実施する自重運動の種類や実施回数等を把握することができると共に、当該自重運動を実施するうえで、成功と見なすことのできる強度の許容範囲の下限値を把握することができる。従って、対象者は、把握した下限値を、対応する自重運動を実施する際の強度の目標とすることで、効果的な自重運動を実施することができる。
【0067】
ステップ610で、CPU41は、ウェアラブル端末50からの実施状況情報の受信、及び受信した実施状況情報の記憶部43への記憶を開始する。ステップ612で、CPU41は、所定時間(本実施形態では、10秒)が経過するまで待機し、ステップ614で、送信部41Aは、この時点から遡って上記所定時間前から、この時点までに記憶した実施状況情報を記憶部43から読み出す。
【0068】
ステップ616で、送信部41Aは、対象者の対象者IDを記憶部43から読み出し、読み出した実施状況情報を、読み出した対象者IDと共に、無線通信部48及びネットワーク80を介して運動支援装置10に送信する。ステップ618で、CPU41は、予め定められた終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ612に戻る。一方、CPU41は、肯定判定となった場合にはステップ620に移行する。なお、本実施形態では、上記終了タイミングとして、対象者が装着しているウェアラブル端末50の稼働状態が停止されたタイミングを適用しているが、これに限るものではない。例えば、対象者によって運動実施処理を終了させる旨の指示入力が入力部44を介して行われたタイミング等を上記終了タイミングとする形態としてもよい。
【0069】
ステップ620で、CPU41は、ステップ610の処理によって開始した実施状況情報の受信及び記憶部43への記憶を停止させ、その後に本運動実施処理を終了する。
【0070】
次に、
図15を参照して、本実施形態に係る運動状況登録処理を実行する場合の運動支援装置10の作用を説明する。運動支援装置10のCPU11が運動状況登録プログラム13Bを実行することによって、
図15に示す運動状況登録処理が実行される。
図15に示す運動状況登録処理は、何れかの登録された対象者の携帯端末40から実施状況情報の受信を開始した場合に実行される。
【0071】
図15のステップ700で、CPU11は、受信した実施状況情報を、当該実施状況情報と共に受信した対象者IDに対応する運動履歴として、運動履歴情報データベース13Eに記憶する。ステップ702で、CPU11は、予め定められた終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ700に戻る。一方、CPU41は、肯定判定となった場合には本運動状況登録処理を終了する。なお、本実施形態では、上記終了タイミングとして、対応する携帯端末40からの実施状況情報の受信が上記所定時間を超えて受信されなくなったタイミングを適用しているが、これに限らない。例えば、受信した対象者IDに対応する対象者に提供した運動プログラム情報を参照する。当該運動プログラム情報によって示される、対応する1日分の自重運動の量に相当する量だけ実施状況情報の運動履歴情報データベース13Eへの記憶が終了したタイミング等を上記終了タイミングとする形態としてもよい。
【0072】
次に、
図16を参照して、本実施形態に係る強度設定処理を実行する場合の運動支援装置10の作用を説明する。運動支援装置10のCPU11が強度設定プログラム13Cを実行することによって、
図16に示す強度設定処理が実行される。
図16に示す強度設定処理は、登録した各対象者について、当該対象者に送信した運動プログラム情報による自重運動が開始されてから2日目以降で、かつ、当該自重運動の実施期間が終了するまでの各日毎の所定時刻(本実施形態では、午前零時)に対象者毎に実行される。
【0073】
図16のステップ800で、取得部11Aは、処理対象とする対象者(以下、「処理対象者」という。)に対応し、かつ、処理対象者が実施する全運動種に対応する前日の実施状況情報を運動履歴情報データベース13Eから読み出す。ステップ802で、導出部11Bは、読み出した実施状況情報から、実施する自重運動の1種目分で、かつ、前日の最後の1セット分の実施状況情報を抽出する。なお、実施状況情報を抽出した自重運動を、以下では「処理対象運動」という。
【0074】
ステップ804で、導出部11Bは、処理対象運動に関して抽出した1セット分の実施状況情報を用いて、処理対象運動の強度を上述したように自重運動の各回別に導出する。ステップ806で、導出部11Bは、導出した1セット分の強度の平均値Avを算出する。ステップ808で、導出部11Bは、この時点が処理対象者による運動開始日から2日目であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ810に移行する。
【0075】
ステップ810で、提示部11Cは、平均値Avを次回以降の自重運動の強度の成功範囲の下限値である成功閾値LIとして強度情報データベース13Fの対応する領域に記憶し、その後にステップ824に移行する。
【0076】
一方、ステップ808において否定判定となった場合、すなわち、この時点が処理対象者による運動開始日から3日目以降である場合はステップ812に移行する。ステップ812で、導出部11Bは、ステップ804の処理によって導出した1セット分の強度のうち、前日分として強度情報データベース13Fに登録されている成功閾値LI以上となっている強度の回数、すなわち、処理対象運動が成功した回数(以下、「成功回数」という。)Nを導出する。
【0077】
ステップ814で、導出部11Bは、導出した成功回数Nが所定閾値以上であるか否かを判定し、肯定判定となった場合はステップ816に移行する。導出部11Bは、対応する強度の上限閾値をHIとし、成功閾値LIとして前日分の成功閾値LIを適用し、βを予め定められた係数(一例として、20)として、次の式(1)により調整値αを算出する。その後に、導出部11Bは、後述するステップ820に移行する。ここで、上限閾値HIは、対応する運動プログラム情報の、対応する期間における強度範囲の上限値を適用すればよい。また、係数βは、式(1)からも明らかなように、調整値αに大きく影響するものである。このため、適用している運動プログラムによる、対応する自重運動の実施期間や、実施する自重運動に要求される効果の高さ等に応じて予め設定しておくことが好ましい。
【0078】
α=(HI-LI)/β (1)
【0079】
一方、ステップ814において否定判定となった場合、すなわち、成功回数Nが上記所定閾値未満であった場合はステップ818に移行する。導出部11Bは、調整値αを0(零)とした後、ステップ820に移行する。
【0080】
ステップ820で、導出部11Bは、次の式(2)により次回の処理対象運動に適用する成功閾値LIを算出する。ステップ822で、提示部11Cは、算出した成功閾値LIを強度情報データベース13Fの対応する領域に記憶(登録)し、その後にステップ824に移行する。
【0081】
LI=Av+α (2)
【0082】
ステップ824で、導出部11Bは、ステップ800で実施状況情報の読み出し対象とした自重運動の各運動種のうち、以上の処理を実行していない運動種が残っているか否かを判定する。否定判定となった場合はステップ802に戻る一方、肯定判定となった時点で本強度設定処理を終了する。なお、ステップ802~ステップ824の処理を繰り返し実行する際には、それまでに処理対象としなかった運動種の自重運動を処理対象運動とする。
【0083】
以上説明したように、本実施形態によれば、運動支援装置10は、予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得する取得部11Aと、取得部11Aにより取得された物理量を用いて、以降の上記運動の強度を導出する導出部11Bと、導出部11Bによって導出された強度を提示する提示部11Cと、を備えている。従って、レジスタンス運動における自重運動に対する強度を適切に設定することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、自重運動を、頻度、強度、持続時間、及び種類が規定されたものとしている。従って、より簡易、かつ、定量的に、自重運動を規定することができる。なお、本実施形態では、上記頻度及び持続時間に関する情報の一例として、運動プログラムデータベース13Dにおける実施対象の各情報を適用している。
【0085】
また、本実施形態によれば、取得部11Aによって直前に取得された物理量を用いて強度を導出している。従って、より実態に即した強度を設定することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合、上記直前に取得された物理量として、直近の少なくとも1セットの運動について取得された物理量を用いて強度を導出している。従って、運動がセット運動である場合においても、より実態に即した強度を設定することができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、導出部11Bによって次回の運動の強度を導出している。従って、次回の自重運動について、強度を適切に設定することができる。
【0088】
また、本実施形態によれば、導出部11Bにより、上記自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合、上記次回の運動の強度として、次回のセット運動の強度を導出している。従って、運動がセット運動である場合においても、次回の自重運動の強度を適切に設定することができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、導出部11Bにより、上記強度を、前回より増加された値、前回より減少された値及び前回と同じ値のいずれか一の値として導出している。従って、個々人の運動の状況や体力等に応じて、何ら制限されることなく、強度を適切に設定することができる。
また、本実施形態によれば、導出部11Bにおいて、上記自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である。従って、セット運動とされた自重運動に対する強度を適切に設定することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、取得部11Aにより、上記物理量を、上記運動を実施している場合の3次元方向に対する動きの量及び速度の双方を示す値として取得している。従って、運動の強度を規定する上で重要な要素(動きの量及び速度)を用いて強度を導出することができる結果、より的確に強度を設定することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、取得部11Aにより、ウェアラブル端末50を用いて上記物理量を取得している。従って、より簡易に当該物理量を取得することができる。
【0092】
更に、本実施形態によれば、導出部11Bにより、上記以降の運動の強度を、取得部11Aにより取得された物理量が示す強度が、成功したと見なされる範囲の下限値として予め定められた成功閾値以上であるか否かに応じて導出している。従って、より適切に自重運動の強度を設定することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、運動支援システム90の対象者を2型糖尿病の患者とした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、メタボリックシンドロームの患者を上記対象者として適用してもよいし、患者以外の何ら疾患を有さない通常の人を上記対象者として適用する形態としてもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、本開示の技術を運動支援装置10、携帯端末40、及びウェアラブル端末50を含む運動支援システム90により実現した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、運動支援装置10を適用することなく、携帯端末40及びウェアラブル端末50のみで本開示の技術を実現する形態としてもよい。この場合の形態例としては、携帯端末40に上記実施形態に係る登録実施処理、運動状況登録処理、及び強度設定処理の各処理で、かつ、携帯端末40との間の通信を除く処理を実行する形態を例示することができる。この場合、運動支援装置10が不要となるため、上記実施形態に比較して、より低コストで本開示の技術を実現することができる。
【0095】
また、本開示の技術は、運動支援装置10及びウェアラブル端末50のみで実現する形態としてもよい。この場合の形態例としては、ウェアラブル端末50に上記実施形態に係る登録依頼処理及び運動実施処理の各処理で、かつ、ウェアラブル端末50との間の通信を除く処理を実行する形態を例示することができる。この場合、携帯端末40が不要となるため、この場合も、上記実施形態に比較して、より低コストで本開示の技術を実現することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、自重運動の種類にかかわらず、各自重運動のデフォルトの強度(成功閾値)を共通とした場合について説明したが、これに限定されない。例えば、自重運動の種類毎に異なる強度をデフォルトの強度として適用する形態としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、導出部11Bによって導出した成功閾値LIを、提示部11Cによって次回以降の自重運動の強度の成功範囲の下限値として強度情報データベース13Fに登録することで、携帯端末40の表示部45により、運動プログラムに組み込まれた形で間接的に表示(提示)する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、強度設定処理(
図16参照。)におけるステップ810及びステップ822の処理に代えて、対応する処理対象者の携帯端末40に対して成功閾値LIを送信し、当該携帯端末40の表示部45に成功閾値LIを表示させる処理を実行することで、成功閾値LIを直接表示(提示)する形態としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、強度設定処理において、自重運動が複数回の反復実施によるセット運動である場合において成功閾値LIを導出する場合について説明したが、これに限定されない。自重運動が1回のみの運動である場合には、強度設定処理において1セット分について実行した処理を、当該1回の自重運動の実施に応じて得られた実施状況情報(以下、「単一実施状況情報」という。)のみを対象として実行すればよい。また、この場合、強度設定処理におけるステップ806の平均値Avを算出する処理は不要となり、以降の処理における平均値Avに代えて、単一実施状況情報から得られた強度を適用し、ステップ814の処理で適用する所定閾値として‘1’を適用すればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、ウェアラブル端末50から得られる実施状況情報として、3次元方向に対する動きの量及び速度の双方を含む情報を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、実施状況情報として、3次元方向に対する動きの量及び速度の何れか一方のみを含む情報を適用する形態としてもよい。この場合、各自重運動の強度を、適用した物理量を用いて導出することとなる。
【0100】
また、上記実施形態で適用した式(1)~式(2)は一例であり、各数式ともに本開示の技術の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【0101】
また、上記実施形態では、運動プログラムを、対象者の性別及び年齢毎に予め用意しておく場合について説明したが、これに限定されない。例えば、一例として
図17に示す、対象者にとって好適な運動プログラム情報を作成するための機械学習モデルである運動プログラム作成モデルを予め作成しておく。当該運動プログラム作成モデルを用いて、対象者毎に運動プログラム情報を作成する形態としてもよい。
【0102】
なお、
図17に示す運動プログラム作成モデルは、入力層、複数の中間層、及び出力層を含むニューラルネットワークとされている。運動プログラム作成モデルの入力層には、上記実施形態に係る登録情報の一部である対象者の性別及び年齢が入力される。運動プログラム作成モデルの出力層は、入力された情報に対応する対象者に好適な運動プログラム情報を出力する。運動プログラム作成モデルは、過去に得られた、不特定多数の対象者の性別及び年齢と、当該対象者において運動の継続性や有効性が高かった運動プログラム情報との複数の組み合わせを教師データとして学習させることによって予め得られている。また、この形態の応用例として、対象者の身体機能(体力、筋力等)、及び最初の運動の実施結果を入力層に入力するものとし、過去に得られた、不特定多数の対象者の上記身体機能及び最初の運動の実施結果と、当該対象者において運動の継続性や有効性が高かった運動プログラム情報との複数の組み合わせを教師データとして学習させることで、運動プログラム作成モデルを構築する形態としてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、自重運動が成功したか否かを、実際に実施された運動の強度が成功閾値LI以上であるか否かを判定することによって判定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ウェアラブル端末等を用いて自重運動を実施している場合の対象者のフォームを示す物理量を取得し、取得した物理量を用いて自重運動が成功したか否かを判定する形態としてもよい。
【0104】
この形態では、フォームを示す物理量を検出する際に、例えば自重運動がプッシュアップである場合には、一例として3Dモーションセンサ及び当該3Dモーションセンサによる検出値を無線で送信する送信装置を対象者の背中又は胸部に設ける。当該3Dモーションセンサによって得られた物理量を、送信装置を介して取得する。そして、この場合、取得した物理量が、プッシュアップを実施する際に好ましいとされるフォームの範囲内に含まれているか否かを判定することで、プッシュアップが成功したか否かを判定する形態を例示することができる。なお、この形態においては、上記実施形態に係るウェアラブル端末50はリストバンド型端末であるため適用することができない。ウェアラブル端末50に代えて、3Dモーションセンサ及び送信装置を対象者の衣類や肌等に貼り付け等によって直接設ける形態等とすればよい。但し、ウェアラブル端末50がリストバンド型端末であっても、センサ部分がバンドから取り外し可能なものであれば、当該センサ部分を胸部に巻き付け可能なサイズのベルトに取り付けて用いる形態としてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、運動プログラム情報を対象者の属性(上記実施形態では、性別及び年齢)を示す対象者属性別に用意しておき、適用する対象者に合致する運動プログラムを当該対象者に適用する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、全ての対象者に統一的に適用する単一の運動プログラム情報のみを用意しておき、当該運動プログラム情報を全ての対象者に適用する形態としてもよい。この場合、運動プログラム情報を選択するための処理の負荷をなくすることができ、かつ、運動プログラムデータベース13Dのための記憶容量を低減することができる。
【0106】
また、上記実施形態では、運動プログラム情報において、1~2週(第1期間)、3~4週(第2期間)、及び5~12週(第3期間)の3段階の各期間別に実施対象とする運動の種目及びセット数を変更する場合について例示しているが、これに限定されない。この場合の運動の種目及びセット数の変更の条件を以下に示すものとする形態としてもよい。
【0107】
すなわち、各週の各運動実施日毎に、運動プログラム情報に応じた運動の実施結果を評価し、その達成の度合いを点数化する。そして、当該点数が所定値以上となった場合、次の週の運動プログラムへと進むことができるものとする。
【0108】
また、上記実施形態では、運動プログラム情報を提供した際に、当該運動プログラム情報の提供に対する対価を対象者に課する場合について説明したが、これに限定されない。
【0109】
例えば、
図10に示す登録依頼処理を実行する前の段階で1ヶ月分の月額利用料を前金として課金し、運動開始から2ヶ月目以降は月額利用料を自動的に指定口座から引き落とす形態等としてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、前日の最後の1セット分の運動の実施状況に基づいて、2日目以降の強度を設定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、1日に複数セットの運動を実施する場合には、前回のセットの運動の実施状況に基づいて次回の運動の強度を、当該1日のなかで設定する形態としてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、ウェアラブル端末50として、加速度センサ及びジャイロセンサの双方を有する端末を適用した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、加速度センサ及びジャイロセンサの何れか一方のみを有する端末をウェアラブル端末50として適用する形態としてもよい。
【0112】
また、上記実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B、及び提示部11Cの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0113】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0114】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0115】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0116】
(付記)
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0117】
(付記項1)
メモリと、
前記メモリに接続された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、
前記プロセッサは、
予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得し、
取得した物理量を用いて、以降の前記運動の強度を導出し、
導出した強度を提示する、
運動支援装置。
【0118】
(付記項2)
運動支援処理を実行するようにコンピュータによって実行可能なプログラムを記憶した非一時的記憶媒体であって、
前記運動支援処理は、
予め定められた自重運動を示す運動プログラムによる運動の実施程度を示す物理量を取得し、
取得した物理量を用いて、以降の前記運動の強度を導出し、
導出した強度を提示する、
非一時的記憶媒体。
【0119】
日本出願2019-199835の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0120】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。