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特許7124949血管位置検出装置、および、血流量計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】血管位置検出装置、および、血流量計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220817BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B8/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021502297
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2020007609
(87)【国際公開番号】W WO2020175515
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-11
(31)【優先権主張番号】P 2019034027
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019194878
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 航介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敦士
(72)【発明者】
【氏名】池内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】長井 裕
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-017721(JP,A)
【文献】特開2006-034667(JP,A)
【文献】米国特許第06261233(US,B1)
【文献】特開平03-210249(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0038343(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが検査対象体に対して超音波を送信し該超音波のエコーを受信する送受波面を有し、該送受波面に略平行な第1方向に並ぶ複数のトランスデューサと、
前記複数のトランスデューサのエコーの振幅の時間特性の違いから、前記第1方向における前記検査対象体内の血管の位置を検出し、位置の補正情報を生成する演算部と、
前記複数のトランスデューサが前記第1方向に配列され、前記検査対象体に装着される検査用の筐体と、
を備え、
前記複数のトランスデューサは、前記送受波面から所定の指向性を有する超音波を送信し、
前記演算部は、
前記複数のトランスデューサのエコーの振幅がピークとなるピーク時刻と前記超音波の送信時刻との差が最小となるトランスデューサの位置によって、前記血管の延びる方向における特定位置を検出する、
血管位置検出装置。
【請求項2】
それぞれが検査対象体に対して超音波を送信し該超音波のエコーを受信する送受波面を有し、該送受波面に略平行な第1方向に並ぶ複数のトランスデューサと、
前記複数のトランスデューサのエコーの振幅の時間特性の違いから、前記第1方向における前記検査対象体内の血管の位置を検出し、位置の補正情報を生成する演算部と、
前記複数のトランスデューサが前記第1方向に配列され、前記検査対象体に装着される検査用の筐体と、
を備え、
前記筐体は、検査対象体に対向する検出面を有し、
前記複数のトランスデューサの前記送受波面は、前記検出面に配置され、
前記複数のトランスデューサは、それぞれが前記送受波面に直交する方向に強い指向性を有し、前記第1方向における前記指向性の中心の位置が異なり、前記第1方向に沿って一直線上に並ぶ第1の超指向性超音波、第2の超指向性超音波、および、第3の超指向性超音波を送信し、
前記第2の超指向性超音波の指向性の軸は、前記筐体の前記第1方向の略中心にあり、
前記演算部は、
前記複数の超指向性超音波のエコーの振幅が高くなる第1ピーク時刻および第2ピーク時刻の差を用いて、前記血管の位置を検出する
血管位置検出装置。
【請求項3】
前記位置の補正情報に応じた通知を行う通知部を備える、
請求項1または請求項2に記載の血管位置検出装置。
【請求項4】
前記複数のトランスデューサは、前記第1方向とともに、前記第1方向に直交する第2方向にも複数個が並んで配置されており、
前記第2方向に並ぶ複数のトランスデューサにおける前記ピーク時刻と前記送信時刻との差が最小のトランスデューサの位置によって、前記血管の延びる方向における特定位置を検出する、
請求項に記載の血管位置検出装置。
【請求項5】
前記演算部は、
前記第1ピーク時刻と前記第2ピーク時刻との差が最大となる超音波の指向性の中心の位置によって、前記血管の位置を検出する、
請求項に記載の血管位置検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の血管位置検出装置の各構成と、
第1の血流量計測用トランスデューサおよび第2の血流量計測用トランスデューサと、
前記第1の血流量計測用トランスデューサおよび前記第2の血流量計測用トランスデューサをドップラモードで駆動する信号制御部と、
を備え、
前記演算部は、
前記第1の血流量計測用トランスデューサの計測データおよび前記第2の血流量計測用トランスデューサの計測データから、血流量を計測する、
血流量計測装置。
【請求項7】
前記第1の血流量計測用トランスデューサおよび前記第2の血流量計測用トランスデューサは、前記第1方向において、前記複数のトランスデューサを挟んで配置されている、
請求項に記載の血流量計測装置。
【請求項8】
前記第1の血流量計測用トランスデューサおよび前記第2の血流量計測用トランスデューサは、前記第1方向に直交する第2方向において、前記複数のトランスデューサの配置位置を挟んで配置されている、
請求項に記載の血流量計測装置。
【請求項9】
前記第1の血流量計測用トランスデューサの送受波面および前記第2の血流量計測用トランスデューサの送受波面は、
前記複数のトランスデューサの送受波面に対して略45°で、前記複数のトランスデューサが配置される側に傾斜している、
請求項乃至請求項のいずれかに記載の血流量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血流量の計測対象の血管の位置を検出する血管位置検出装置、および、血流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、頸動脈の検査用のプローブを記載している。特許文献1に記載のプローブは、複数のトランスデューサを備える。複数のトランスデューサは、2次元で配列されている。
【0003】
頸動脈の検査を行う場合、例えば、技師は、患者の首にプローブを当て、頸動脈の撮像を行う。これにより、頸動脈のエコー画像は取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2016-525405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、検査に適する位置にプローブを配置することは、容易ではない。検査に適する位置とは、例えば、検査用のトランスデューサが、計測対象の血管の血流量をより正確に計測できる位置である。
【0006】
したがって、本発明の目的は、検査に最適な位置に検査用のトランスデューサを配置することを容易にできる血管位置検出装置、および、この血管位置検出装置を用いた血流量計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の血管位置検出装置は、複数のトランスデューサ、演算部、および、検査用の筐体を備える。複数のトランスデューサは、それぞれが検査対象体に対して超音波を送信し該超音波のエコーを受信する送受波面を有し、該送受波面に略平行な第1方向に並ぶ。演算部は、複数のトランスデューサのエコーの振幅の時間特性の違いから、第1方向における検査対象体内の血管の位置を検出し、位置の補正情報を生成する。検査用の筐体は、複数のトランスデューサが第1方向に配列され、検査対象体に装着される。
【0008】
この構成では、血管の位置の補正情報が分かる。このため、検査対象体(検査対象者)、同伴者、もしくは、医療従事者(看護師、技師、医師、救急救命士等)は、検査用のトランスデューサの位置と血管の位置との関係を、容易に把握できる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、検査用のトランスデューサを検査に最適な位置に配置することが、容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、血流量計測装置の機能ブロック図である。
図2図2(A)は、血流量計測装置の概略的な外観図であり、図2(B)は、血流計測装置の装着状態を示す斜視図である。
図3図3(A)は、計測用パッチの表面を示す図であり、図3(B)は、計測用パッチの側面を示す図であり、図3(C)は、計測用パッチの裏面を示す図である。
図4図4(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図4(B)は、図4(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。
図5図5(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図5(B)は、図5(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。
図6図6(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図6(B)は、図6(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。
図7図7は、血管の延びる方向での位置合わせの概念を示す図である。
図8図8は、血流量の計測概念を説明するための図である。
図9図9は、計測用パッチにおける複数のトランスデューサの配置態様を示す図である。
図10図10(A)は、検査対象者に複数のトランスデューサを配置した状態を示す図であり、図10(B)は、第1の超音波を送信する場合の駆動状態を示し、図10(C)は、第2の超音波を送信する場合の駆動状態を示し、図10(D)は、第3の超音波を送信する場合の駆動状態を示す。
図11図11(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図11(B)は、図11(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。
図12図12(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図12(B)は、図12(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。
図13図13(A)、図13(B)、図13(C)は、計測用パッチの他の構成例を示す図である。
図14図14は、計測用パッチの他の構成例を示す図である。
図15図15(A)は、計測用パッチの他の構成例を示す図であり、図15(B)、図15(C)は、血管に対する計測用パッチの配置状態を示す図である。
図16図16は、血流量計測装置の機能ブロック図である。
図17図17は、血流量計測装置の機能ブロック図である。
図18図18(A)は、通知部の他の構成例を示す図であり、図18(B)、図18(C)、図18(D)は、通知部における通知例を示す図であり、図18(E)は、通知部のさらに派生の構成例を示す図である。
図19図19は、血流計測装置の他の装着状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る血管位置検出装置および血流量計測装置について、図を参照して説明する。図1は、血流量計測装置の機能ブロック図である。図2(A)は、血流量計測装置の概略的な外観図であり、図2(B)は、血流計測装置の装着状態を示す斜視図である。図3(A)は、計測用パッチの表面を示す図であり、図3(B)は、計測用パッチの側面を示す図であり、図3(C)は、計測用パッチの裏面を示す図である。なお、以下では、血管の検出および血流量の計測の検査対象体は人間(検査対象者)であり、対象の血管は総頸動脈である場合を例に説明する。
【0012】
(血流量計測装置の機能ブロックについて)
図1に示すように、血流量計測装置10は、信号制御部31、演算部32、複数のトランスデューサ、および、通知部60を備える。複数のトランスデューサは、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52を備える。また、血流量計測装置10は、バッテリ300を備える。
【0013】
信号制御部31、演算部32、および、バッテリ300は、本体30に装備されている。トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、トランスデューサ52、および、通知部60は、計測用パッチ20に装備されている。計測用パッチ20が、本発明の「計測用の筐体」に対応する。トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43が、それぞれ、本発明の「第1のトランスデューサ」、「第2のトランスデューサ」、および、「第3のトランスデューサ」に対応する。トランスデューサ51、および、トランスデューサ52が、それぞれ、本発明の「第1の血流量計測用トランスデューサ」、および、「第2の血流量計測用トランスデューサ」に対応する。なお、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52は、ドップラモードによる測定を行うため、それぞれ送信部と受信部を備える。
【0014】
信号制御部31および演算部32は、電子回路、IC等によって実現される。通知部60は、LED等の発光素子、スピーカ、振動素子等の外部に通知が可能な素子によって実現される。
【0015】
信号制御部31は、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52に接続する。信号制御部31は、演算部32に接続する。
【0016】
演算部32は、通知部60に接続する。
【0017】
バッテリ300は、信号制御部31および演算部32に接続し、信号制御部31および演算部32に電源を供給する。また、バッテリ300は、必要に応じて、通知部60に接続し、通知部60に電源を供給する。なお、外部からの電源供給が可能であれば、バッテリ300は、省略できる。ただし、バッテリ300を用いることによって、血流量計測装置10の持ち運びは容易になり、使用箇所の制限は緩和される。
【0018】
信号制御部31は、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52へ、送信制御信号を出力する。
【0019】
信号制御部31は、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43に対して、血管の位置の検出用の送信制御を行う。例えば、信号制御部31は、AモードまたはBモードで利用するエコー信号を得るように、超音波の送信制御を行う。
【0020】
また、信号制御部31は、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52に対して、血流量の計測用の送信制御を行う。例えば、信号制御部31は、ドップラモードで利用するエコー信号を得るように、超音波の送信制御を行う。
【0021】
なお、後述するように計測用パッチ20を適する位置に配置した後には、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43からのエコー信号は、AモードまたはBモードを用いた診断にも利用することは可能である。
【0022】
トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52は、信号制御部31からの送信制御信号を受けて励振し、超音波を送信する。
【0023】
トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52は、所定方向に指向性を有する。所定方向の指向性とは、例えば、送受波面から全方位に超音波が送信される指向性であり、その一例としては、単一指向性を採用することもできる。トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52の送受波面は、検査対象者側を向いている。そして、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52から送信された超音波は、検査対象者内で反射する。例えば、超音波は、総頸動脈の壁等、音響インピーダンスの不連続な位置で反射する。この反射によるエコー信号は、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52によって受信される。
【0024】
トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52は、エコー信号を電気信号に変換して、信号制御部31に出力する。
【0025】
信号制御部31は、エコー信号に対して、ノイズ除去等のフィルタ処理や、増幅処理等を行って、演算部32に出力する。
【0026】
演算部32は、トランスデューサ41からのエコー信号、トランスデューサ42のエコー信号、トランスデューサ43のエコー信号を用いて、血管の位置を検出する。血管の位置の検出は、AモードまたはBモードのエコー信号によって行われる。血管の位置の検出の具体的な方法は、後述する。演算部32は、血管の位置の検出結果を用いて、計測用パッチ20の位置の補正情報を生成する。位置の補正情報とは、例えば、計測用パッチ20の移動方向、移動量、計測用パッチ20が最適な位置に配置されること等である。演算部32は、位置の補正情報を用いて、通知部60の通知態様を制御する。
【0027】
通知部60は、通知態様に応じて通知を行う。言い換えれば、通知部60は、位置の補正情報に基づいた通知を行う。
【0028】
演算部32は、トランスデューサ51からのエコー信号、トランスデューサ52のエコー信号を用いて、血流量を計測する。血流量の計測は、ドップラモードのエコー信号を用いて行われる。血流量の計測の具体的な方法は、後述する。演算部32は、計測した血流量を、図示しない記憶部に記憶したり、図示しない出力端子を介して、外部装置に出力する。
【0029】
なお、血流量計測装置10は、この血流量の計測を行わなければ、すなわち、血管の位置を検出するだけであれば、血管位置検出装置として機能する。
【0030】
(血流量計測装置の構造について)
血流量計測装置10は、計測用パッチ20と本体30とを備える。本体30は、例えば、図2(A)に示すように、U字形状の棒状体である。図2(B)に示すように、本体30は、例えば、検査対象者99の頸部990を囲むように、肩991に載せるように、装着される。したがって、本体30の外面には、緩衝部材が配置されていることが好ましい。これにより、検査対象者が装着しても痛くなく、使用感は向上する。
【0031】
計測用パッチ20は、ケーブル21によって、本体30に接続する。上述の複数のトランスデューサと信号制御部31とを接続する伝送線は、ケーブル21内に配置されている。なお、図2(A)、図2(B)では、計測用パッチ20は、2個であるが、1個であってもよい。2個の場合、図2(B)に示すように、頸部990における左右の総頸動脈に重なるように配置され、左右の総頸動脈の両方に対する血管の位置の検出および血流量の計測は、同時に行うことが可能になる。
【0032】
なお、血流量計測装置10の構成は、これに限らず、例えば本体30と計測用パッチ20とを一体化し、外部に露出したケーブルをなくした構成としてもよい。また、本体30と計測用パッチ20とが一体化したうえで、本体30が検査対象者の首に巻き付くようになっており、かつ本体30が検査対象者の首に一定の保持力を与えるもの等であってもよい。
【0033】
図2(A)、図2(B)、図3(A)、図3(B)、図3(C)に示すように、計測用パッチ20は、略直方体形状の筐体200を備える。筐体200が本発明の「検査用の筐体」に対応する。例えば、筐体200の厚み方向(Z方向)の寸法は、他の2方向の寸法(X方向およびY方向)よりも小さい。筐体200のX方向およびY方向の寸法は、例えば、約20mmから約30mmである。このような形状にできるのは、後述のように、筐体200には、複数のトランスデューサと通知部60だけを備えているからである。これにより、検査対象者または検査の同伴者(付添人または医療従事者(看護師、技師、医師、救急救命士等))は、計測用パッチ20を容易に扱える。また、計測用パッチ20を用いることによる検査対象者の違和感は、低減する。また、計測用パッチ20は裏面202側にジェル等の粘着層を設けてもよい。このような粘着層を設けることで検査対象者は計測用パッチ20を容易に脱着でき、また、検査時に計測用パッチ20の配置位置が変動することを抑制できる。また、粘着層を設ける代わりに計測用パッチ20を単に医療用のテープで検査対象者に取り付けたり、包帯やバンドなどの一定長さを有する布状部材で巻きつけるように首に固定したりしてもよい。
【0034】
より具体的には、計測用パッチ20は、次の構造を備える。筐体200は、表面201、裏面202、側面203、側面204、側面205、および、側面206を備える。表面201および裏面202は、Z方向に直交する面である。側面203および側面204は、X方向に沿って離間しており、X方向に直交する面である。側面205および側面206は、Y方向に沿って離間しており、Y方向に直交する面である。裏面202は、検査対象者の皮膚に対向して配置される面であり、本願発明の「検出面」に対応する。
【0035】
裏面202は、トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面、トランスデューサ51の送受波面、および、トランスデューサ52の送受波面を有する。トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面、トランスデューサ51の送受波面、および、トランスデューサ52の送受波面は、裏面202におけるY方向の略中心の位置に配置されている。トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面、トランスデューサ51の送受波面、および、トランスデューサ52の送受波面は、裏面202におけるX方向(第1方向に対応する。)に沿って、一直線上に配置されている。なお、トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面、トランスデューサ51の送受波面、および、トランスデューサ52の送受波面は、裏面202に露出していてもよいが、送受波面から超音波の送信方向には、後述する音響インピーダンスの整合層が配置されていることが好ましい。
【0036】
この際は、側面203から側面204に向かって、トランスデューサ51の送受波面、トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面、および、トランスデューサ52の送受波面の順で配置されている。
【0037】
トランスデューサ42の送受波面は、裏面202におけるX方向の中心、すなわち、裏面202の中心に配置されている。
【0038】
トランスデューサ42の送受波面の中心とトランスデューサ41の送受波面の中心との距離と、トランスデューサ42の送受波面の中心とトランスデューサ43の送受波面の中心との距離とは、同じであることが好ましい。これらの距離は、総頸動脈の平均的な直径に基づいて設定されている。例えば、これらの距離は、総頸動脈の平均的な直径(約6mmから約8mm)よりも短く、筐体200に収容される範囲で所定値に設定されている。
【0039】
トランスデューサ51の送受波面の中心とトランスデューサ52の送受波面の中心との距離は、検査対象者の表皮から総頸動脈までの距離の平均値の約2倍であることが好ましい。
【0040】
トランスデューサ41の送受波面、トランスデューサ42の送受波面、トランスデューサ43の送受波面は、裏面202に平行である。トランスデューサ51の送受波面およびトランスデューサ52の送受波面は、裏面に対して所定の角度(例えば、約45°)を有する。
【0041】
表面201には、発光素子611の出光部、発光素子6121の出光部、発光素子6122の出光部、発光素子6131の出光部、および、発光素子6132の出光部が配置されている。
【0042】
また、表面201には、スピーカの放音部620が形成されている。放音部620は、例えば、表面201におけるスピーカ(筐体200内に配置)の放音面に対向する位置に形成された貫通孔である。なお、計測用パッチ20は、複数の発光素子と放音部620のいずれか一方を最低限備えていればよい。
【0043】
発光素子611の出光部は、表面201におけるX方向およびY方向の中心に配置されている。発光素子6121の出光部、発光素子6122の出光部、発光素子6131の出光部、および、発光素子6132の出光部は、X方向に沿って、発光素子611の出光部とともに一直線上に配置されている。この際、側面203から側面204に向かって、発光素子6122の出光部、発光素子6121の出光部、発光素子611の出光部、発光素子6131の出光部、および、発光素子6132の出光部の順で配置されている。
【0044】
なお、出光部の形状は、図2(A)に示すように、円形であっても矩形であってもよい。
【0045】
これらの発光素子は、上述の位置の補正情報に応じて、発光制御される。例えば、計測用パッチ20が最適な位置にある場合、発光素子611が点灯し、他の発光素子は消灯する。また、例えば、計測用パッチ20を、X方向の-方向に移動させる補正が必要な場合、発光素子6121および発光素子6122が点灯し、他の発光素子は消灯する。また、例えば、計測用パッチ20を、X方向の+方向に移動させる補正が必要な場合、発光素子6131および発光素子6132が点灯し、他の発光素子は消灯する。なお、この際、移動の必要な長さに応じて、それぞれの場合で、発光強度や発光態様を調整してもよい。
【0046】
(血管の位置の検出方法)
図4(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図4(B)は、図4(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。図4(A)、図4(B)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されている場合を示す。
【0047】
図5(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図5(B)は、図5(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。図5(A)、図5(B)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が-X方向にずれて配置されている場合を示す。
【0048】
図6(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図6(B)は、図6(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。図6(A)、図6(B)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が+X方向にずれて配置されている場合を示す。
【0049】
血管の位置を検出する場合、図4(A)、図5(A)、図6(A)に示すように、トランスデューサ41、トランスデューサ42、およびトランスデューサ43が並ぶ計測用パッチ20のX方向が血管90の幅方向と略平行になるように、計測用パッチ20は、検査対象者の皮膚表面901に配置される。この際、トランスデューサ41、トランスデューサ42、およびトランスデューサ43と皮膚表面901との間には、音響インピーダンスの整合層400を配置することが好ましい。
【0050】
ここで、音響インピーダンスの整合層400は、人体(検査対象者)の音響インピーダンスとトランスデューサの音響インピーダンスの間の値を取るように設定される。このようにすることで、各トランスデューサで生じた超音波の、皮膚表面における反射を抑制することができ、感度を向上することができる。また、音響インピーダンスの整合層400は単層に限らず、複数層備えていてもよい。また、音響インピーダンスの整合層400は、公知の樹脂材料等から構成されるが、人体に計測用パッチ20を粘着するための粘着材(ジェル等)と兼ねていてもよい。
【0051】
計測用パッチの配置位置は、血管90に応じて容易に決められる。例えば、血管90が総頸動脈であれば、血管90の延びる方向は、首の周方向に直交する方向である。したがって、血管90が総頸動脈であれば、計測用パッチ20は、X方向が首の周方向と平行になるように配置すればよい。
【0052】
演算部32は、各トランスデューサが受信したエコー信号の振幅のピークを検出することによって、受信時刻(ピーク時刻)を検出する。
【0053】
(血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されている場合)
図4(A)に示すように、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されている場合、トランスデューサ42の送受波面と血管90との距離D42は、トランスデューサ41の送受波面と血管90との距離D41、および、トランスデューサ43の送受波面と血管90との距離D43よりも短くなる。また、トランスデューサ41の送受波面と血管90との距離D41、および、トランスデューサ43の送受波面と血管90との距離D43は、略同じになる。すなわち、D42<D41≒D43となる。
【0054】
したがって、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43が超音波を送信すると、トランスデューサ42のエコー信号が最も早く受信され、その後、ほぼ同時に、トランスデューサ41のエコー信号およびトランスデューサ43のエコー信号が受信される。
【0055】
このため、図4(B)に示すように、トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42は、トランスデューサ41のエコー信号の受信時刻t41と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt41よりも短い。同様に、トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42は、トランスデューサ43のエコー信号の受信時刻t43と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt43よりも短い。そして、時刻差Δt41と時刻差Δt43とは、略同じである。
【0056】
これにより、演算部32は、時刻差Δ42が、時刻差Δt41と時刻差Δt43よりも小さければ、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていると判定する。このように、本実施形態を用いれば、血流量計測装置10は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていることを、より正確に判定できる。
【0057】
そして、通知部60は、この結果に応じて、例えば、発光素子611を発光させる。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていることを、容易に判断できる。
【0058】
なお、演算部32は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていることを、受信時刻を用いて判定することも可能である。ただし、時刻差を用いることで、各トランスデューサの送信時刻が異なっていても、演算部32は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていることを、正確に判定できる。
【0059】
(血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されてない場合)
(第1の場合)
図5(A)に示すように、血管90の幅方向に対して、トランスデューサ41側に血管90がズレた状態で、計測用パッチ20が配置されている場合、トランスデューサ41の送受波面と血管90との距離D41は、トランスデューサ42の送受波面と血管90との距離D42よりも短くなる。さらに、トランスデューサ42の送受波面と血管90との距離D42は、トランスデューサ43の送受波面と血管90との距離D43よりも短くなる。すなわち、D41<D42<D43となる。
【0060】
したがって、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43が超音波を送信すると、トランスデューサ41のエコー信号が受信され、その後、トランスデューサ42のエコー信号が受信され、さらに、トランスデューサ43のエコー信号が受信される。
【0061】
このため、図5(B)に示すように、トランスデューサ41のエコー信号の受信時刻t41と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt41は、トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42よりも短い。トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42は、トランスデューサ43のエコー信号の受信時刻t43と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt43よりも短い。
【0062】
これにより、演算部32は、時刻差Δ41が、時刻差Δt42と時刻差Δt43よりも小さければ、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20がトランスデューサ41側にズレて配置されていると判定する。すなわち、計測用パッチ20は、血管90の幅方向に対して、-X方向にずれていると判定する。このように、本実施形態を用いれば、血流量計測装置10は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置からズレて配置されていることを、より正確に判定できる。
【0063】
そして、通知部60は、この結果に応じて、例えば、発光素子611に対して+X方向の発光素子6131および発光素子6132を発光させる。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20を+X方向にずらすことで、最適な位置に配置できることを、容易に判断できる。
【0064】
(第2の場合)
図6(A)に示すように、血管90の幅方向に対して、トランスデューサ43側に血管90がズレた状態で、計測用パッチ20が配置されている場合、トランスデューサ43の送受波面と血管90との距離D43は、トランスデューサ42の送受波面と血管90との距離D42よりも短くなる。さらに、トランスデューサ42の送受波面と血管90との距離D42は、トランスデューサ41の送受波面と血管90との距離D41よりも短くなる。すなわち、D43<D42<D41となる。
【0065】
したがって、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43が超音波を送信すると、トランスデューサ43のエコー信号が受信され、その後、トランスデューサ42のエコー信号が受信され、さらに、トランスデューサ41のエコー信号が受信される。
【0066】
このため、図6(B)に示すように、トランスデューサ43のエコー信号の受信時刻t43と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt43は、トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42よりも短い。トランスデューサ42のエコー信号の受信時刻t42と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt42は、トランスデューサ41のエコー信号の受信時刻t41と超音波の送信時刻t0との時刻差Δt41よりも短い。
【0067】
これにより、演算部32は、時刻差Δ43が、時刻差Δt42と時刻差Δt41よりも小さければ、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20がトランスデューサ43側にズレて配置されていると判定する。すなわち、計測用パッチ20は、血管90の幅方向に対して、+X方向にずれていると判定する。このように、本実施形態を用いれば、血流量計測装置10は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置からズレて配置されていることを、より正確に判定できる。さらに、図6(A)に示すように、平面視において、血管90と計測用パッチ20とが重なっていなくても、血管90と計測用パッチ20との位置ズレを、正確に判定できる。
【0068】
そして、通知部60は、この結果に応じて、例えば、発光素子611に対して-X方向の発光素子6121および発光素子6122を発光させる。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20を-X方向にずらすことで、最適な位置に配置できることを、容易に判断できる。
【0069】
さらに、図6(A)に示すようにズレ量が大きい場合、例えば、通知部60は、発光素子6121および発光素子6122の輝度を高くする。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20を-X方向に大きくずらすことで、最適な位置に配置できることを、容易に判断できる。なお、例えば、通知部60は、発光素子6121および発光素子6122の輝度を高くする代わりに、発光素子6121および発光素子6122の色を変化させてもよい。すなわち、ズレ量が小さい場合は青色、ズレ量が大きい場合は赤色等に変化することによって検査対象者および検査の同伴者にズレ量の大きさを認識させることとしてもよい。
【0070】
なお、演算部32は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置からズレて配置されていることを、受信時刻を用いて判定することも可能である。ただし、時刻差を用いることで、各トランスデューサの送信時刻が異なっていても、演算部32は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置からズレて配置されていることを、正確に判定できる。
【0071】
以上のような構成によって、計測用パッチ20は、血管90の幅方向において、血管90とトランスデューサ42とが重なるように、容易に配置される。この状態で、計測用パッチ20は、平面視において、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52が血管の長さ方向(Y方向)に並ぶように、典型的には90°回転させられる。回転は、例えば、手動でも可能であるが自動であってもよい。自動の場合、例えば、計測用パッチ20の裏面202側であって裏面202と皮膚表面901との間に回転用治具を配置し、計測用パッチ20に回転用の駆動機構を備えればよい。この回転用治具によって、計測用パッチ20は、例えば90°回転する。計測用パッチ20が例えば90°回転することによって、トランスデューサ41、トランスデューサ42、トランスデューサ43、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52は、血管90の延びる方向に沿って配置され、且つ、平面視において血管90に重なる。この状態でも、血流量は計測できる。しかしながら、計測用パッチ20を、血管90延びる方向における血流量の計測に最適な位置に配置することで、血流量の計測は、さらに高精度になる。次に、その位置を合わせる方法について説明する。
【0072】
(血管90の延びる方向の特定位置へ配置方法)
図7は、血管の延びる方向での位置合わせの概念を示す図である。図7に示すように、血管90の延びる方向における特定位置へ計測用パッチ20を配置する場合、計測用パッチ20は、X方向と血管90の延びる方向とが平行になる。そして、上述の幅方向の位置合わせが行われていることによって、トランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43は、血管90の延びる方向におけるそれぞれに異なる位置と重なっている。
【0073】
ここで、血管90は、血管91および血管92に分岐して接続している。例えば、血管90が総頸動脈の場合、血管91は、外頸動脈であり、血管92は、内頸動脈である。この特徴を利用することで、計測用パッチ20は、血管90の延びる方向における特定位置に配置可能である。
【0074】
一般的に、総頸動脈の場合、血流量の計測の最適点PDは、総頸動脈と外頸動脈および内頸動脈との分岐点PJから総頸動脈側に所定の距離の位置(例えば、分岐点PJから約1cmだけ離れて位置)とされている。したがって、最適点PDと分岐点PJとの距離を、トランスデューサ42の送受波面の中心とトランスデューサ43の送受波面の中心との距離と同じにする。
【0075】
ここで、分岐点PJを基準として、総頸動脈と反対側には、外頸動脈(血管91)と内頸動脈(血管92)とが存在する。したがって、トランスデューサ43の超音波によって、2個の血管のエコーが得られる場合、トランスデューサ42の送受波面の中心は、最適点PDよりも分岐点PJよりに配置されると判断できる。そして、血管の延びる方向において、トランスデューサ43の超音波によって2個の血管のエコーが得られる状態から1個の血管のエコーが得られる状態に切り替わる位置を検出すれば、トランスデューサ42の送受波面の中心は、最適点PDに重なる。これにより、計測用パッチ20は、血流の計測に適した位置に配置される。
【0076】
この検出結果によって、演算部32は、血管90の延びる方向においても、計測用パッチ20が血流量の計測に適した位置に配置されたと判定できる。
【0077】
また、例えば、演算部32は、全ての受信時刻が略同じ、または、全ての時刻差が略同じであると、計測用パッチ20は、適した位置に対して、より血管90側にズレていると判定できる。この場合、通知部60は、+X方向に計測用パッチ20を移動させるように発光する。これにより、血管90の延びる方向においても、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、計測用パッチ20を+X方向にずらすことで、適した位置に配置できることを、容易に判断できる。
【0078】
なお、上述の説明では、発光により通知する場合を示したが、上述のように、放音部620を備えていれば、血流量計測装置10は、音によって通知を行うことができる。例えば、「上方向に1cm移動させてください」等のガイダンスを発信することができる。これにより、例えば、検査対象者は、発光状態を見られなくても、適した位置に計測用パッチ20を移動させることができる。
【0079】
(血流量の計測方法)
図8は、血流量の計測概念を説明するための図である。
【0080】
上述のように、血管90の最適点PDに対して計測用パッチ20が配置されると、信号制御部31は、トランスデューサ51およびトランスデューサ52を、ドップラモードで駆動する。そして、信号制御部31は、そのエコー信号を、演算部32に出力する。演算部32は、継続的に得られるエコー信号からドップラ成分(計測データ)を算出し、ドップラ成分から血流量を計測する。なお、この駆動の開始トリガは、例えば、最適点PDへの配置の検出結果が演算部32から信号制御部31に出力されることによって実現可能である。
【0081】
ここで、上述のように、トランスデューサ51の送受波面およびトランスデューサ52の送受波面は、計測用パッチ20の裏面202に対して平行でない。より具体的には、図8に示すように、トランスデューサ51の送受波面は、裏面202に平行な面と送受波面に直交する方向とが角度θ51を成すように傾いている。また、トランスデューサ52の送受波面は、裏面202に平行な面と送受波面に直交する方向とが角度θ52を成すように傾いている。
【0082】
さらに、トランスデューサ51の送受波面およびトランスデューサ52の送受波面は、それぞれトランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43の配置領域側、すなわち、計測用パッチ20のX方向の中心側に傾いている。
【0083】
そして、角度θ51と角度θ52との合計した角度は、略90°である。特に、角度θ51と角度θ52とは、ともに略45°であるとよりよい。
【0084】
また、トランスデューサ51の送受波面の中心と、トランスデューサ52の送受波面の中心との距離は、皮膚表面901と血管90の最適点PDとの距離の約2倍に設定されている。皮膚表面901と血管90の最適点PDとの距離は、人によって若干異なるものの殆ど変わらない。したがって、トランスデューサ51の送受波面の中心と、トランスデューサ52の送受波面の中心との距離は、一意に設定可能である。
【0085】
このような構成とすることによって、トランスデューサ51のエコー信号のドップラ成分と、トランスデューサ52のエコー信号のドップラ成分との二乗和を用いて、容易に血流量を計測できる。
【0086】
なお、ここでは、最適点PDを例にしているが、血管90における計測対象点が他に決定されていれば、この計測対象点を上述の最適点PDに置き換えて、トランスデューサ51とトランスデューサ52の配置態様は、調整すればよい。
【0087】
(第2実施形態)
第2の実施形態に係る血流量計測装置について、図を参照して説明する。図9は、計測用パッチにおける複数のトランスデューサの配置態様を示す図である。
【0088】
第2の実施形態に係る血流量計測装置の機能的な構成は同じであり、計測用パッチ20Aの複数のトランスデューサの配置態様、超音波の態様、および、血管の位置の検出概念において、第1の実施形態に係る血流量計測装置10と異なる。第2の実施形態に係る血流量計測装置における血流量計測装置10と同様の箇所は、説明を省略する。
【0089】
計測用パッチ20Aは、11個のトランスデューサ401-411と、トランスデューサ51、および、トランスデューサ52とを備える。これらは、X方向に沿って一直線上に配置されている。11個のトランスデューサ401-411は、側面203から側面204に向けて、トランスデューサ401、トランスデューサ402、トランスデューサ403、トランスデューサ404、トランスデューサ405、トランスデューサ406、トランスデューサ407、トランスデューサ408、トランスデューサ409、トランスデューサ410、トランスデューサ411の順に並んでいる。トランスデューサ51とトランスデューサ52とは、11個のトランスデューサ401-411を挟むように配置されている。11個のトランスデューサ401-411の配置間隔は、上述の第1の実施形態に示したトランスデューサ401-403の配置間隔よりも短い。なお、トランスデューサの個数は、11個に限るものではなく、適宜設定が可能である。
【0090】
図10(A)は、検査対象者に複数のトランスデューサを配置した状態を示す図であり、図10(B)は、第1の超音波を送信する場合の駆動状態を示し、図10(C)は、第2の超音波を送信する場合の駆動状態を示し、図10(D)は、第3の超音波を送信する場合の駆動状態を示す。なお、これらの駆動状態の一例であり、各超音波の送信時に駆動するトランスデューサの個数は、超音波の指向性の形状に応じて適宜設定できる。これらの超音波が、本発明の「超指向性超音波」に対応する。
【0091】
図10(B)に示すように、トランスデューサ401-407を駆動し、トランスデューサ408-411を駆動しないことによって、超音波S1は、例えば、トランスデューサ404の直下に強い指向性を有する超指向性の超音波となる。また、図10(C)に示すように、トランスデューサ403-409を駆動し、トランスデューサ401、402、410、411を駆動しないことによって、超音波S2は、例えば、トランスデューサ406の直下に強い指向性を有する超指向性の超音波となる。また、図10(D)に示すように、トランスデューサ405-411を駆動し、トランスデューサ401-404を駆動しないことによって、超音波S3は、例えば、トランスデューサ408の直下に強い指向性を有する超指向性の超音波となる。
【0092】
このように、駆動するトランスデューサを切り替えることによって、計測用パッチ20は、送受波面に直交する方向に強い指向性を有する超指向性し、指向性の軸の位置がX方向において異なる複数個の超音波を送信できる。そして、この制御を行うことによって、超音波S1、超音波S2、および、超音波S3の間隔は、上述の第1の実施形態に示したトランスデューサ41、トランスデューサ42、および、トランスデューサ43の間隔よりも短くできる。
【0093】
(血管の位置の検出方法)
図11(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図11(B)は、図11(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。図11(A)、図11(B)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置に配置されている場合を示す。
【0094】
図12(A)は、血管と各トランスデューサとの位置関係の一例を示す図であり、図12(B)は、図12(A)の位置関係における各エコー信号の振幅の時間特性の一例を示すグラフである。図12(A)、図12(B)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが-X方向にずれて配置されている場合を示す。
【0095】
血管90の位置を検出する場合、図11(A)、図12(A)に示すように、複数のトランスデューサ401-411が並ぶ計測用パッチ20AのX方向が血管90の幅方向と略平行になるように、計測用パッチ20は、検査対象者の皮膚表面901に配置される。
【0096】
超音波S1、超音波S2、および、超音波S3は、超指向性である。したがって、超音波S1のエコー信号の振幅、超音波S2のエコー信号の振幅、および、超音波S3のエコー信号の振幅は、それぞれに指向性の軸と血管90の壁とが交わる部分からのエコー信号の強度に大きく依存する。これを利用することによって、以下のように、血管90の位置は、検出できる。
【0097】
時刻t411は、超音波S1が血管90における皮膚表面901側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻であり、時刻t412は、超音波S1が血管90における皮膚表面901側と反対側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻である。そして、時刻差ΔtS1は、時刻t411と時刻t412の時刻差である。
【0098】
時刻t421は、超音波S2が血管90における皮膚表面901側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻であり、時刻t422は、超音波S2が血管90における皮膚表面901側と反対側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻である。そして、時刻差ΔtS2は、時刻t421と時刻t422の時刻差である。
【0099】
時刻t431は、超音波S3が血管90における皮膚表面901側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻であり、時刻t432は、超音波S2が血管90における皮膚表面901側と反対側の壁に当たってエコー信号が受信される時刻である。そして、時刻差ΔtS3は、時刻t431と時刻t432の時刻差である。
【0100】
(血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されている場合)
図11(A)に示すように、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置に配置されている場合、時刻差ΔtS2は、時刻差ΔtS1および時刻差ΔtS3よりも大きい。そして、時刻差ΔtS1と時刻差ΔtS3とは、略同じである。
【0101】
これにより、演算部32は、時刻差ΔtS2が、時刻差ΔtS1と時刻差ΔtS3よりも大きく、時刻差ΔtS1と時刻差ΔtS3が略同じであれば、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が最適な位置に配置されていると判定する。このように、本実施形態を用いれば、血流量計測装置は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置に配置されていることを、より正確に判定できる。
【0102】
そして、通知部60は、この結果に応じて、例えば、発光素子611を発光させる。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置に配置されていることを、容易に判断できる。
【0103】
(血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置に配置されていない場合)
図12(A)に示すように、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aがトランスデューサ51側にズレている(-X方向にずれている)場合、時刻差ΔtS1は、時刻差ΔtS2よりも大きい。さらに、図12(A)の場合、超音波S3は、血管90に当たらないので、超音波S3に対する時刻差は検出されない。この場合、時刻差ΔtS3は、0とみなすことができる。
【0104】
これにより、演算部32は、時刻差ΔtS1が、時刻差ΔtS2および時刻差ΔtS3よりも大きければ、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20が-X方向にずれていると判定する。
【0105】
このように、本実施形態を用いれば、血流量計測装置は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20Aが最適な位置からズレて配置されていることを、より正確に判定できる。
【0106】
そして、通知部60は、この結果に応じて、例えば、発光素子611に対して+X方向の発光素子6131および発光素子6132を発光させる。これにより、検査対象者および検査の同伴者(付添人または医療従事者)は、血管90の幅方向に対して、計測用パッチ20を+X方向にずらすことで、最適な位置に配置できることを、容易に判断できる。
【0107】
さらに、このような構成では、位置の検出の分解能は、向上する。これにより、血流量計測装置は、血管90の位置を、より高精度に検出できる。なお、本実施形態では、超音波を3本送信する態様を示した。しかしながら、送信する超音波の本数は、3本に限らない。例えば、血流量計測装置は、超音波の間隔がさらに短い、より多くの超音波を送信してもよい。これにより、血管90の検出は、さらに高精度になる。
【0108】
(計測用パッチの他の構成例)
図13(A)、図13(B)、図13(C)、および、図14は、計測用パッチの他の構成例を示す図である。以下では、上述の各計測用パッチ20および計測用パッチ20Aに対して異なる箇所のみを説明し、同様の箇所の説明は省略する。
【0109】
(第1の派生の構成例)
図13(A)に示すように、計測用パッチ20Bは、計測用パッチ20に対して、トランスデューサ44およびトランスデューサ45を追加した点で異なる。トランスデューサ44およびトランスデューサ45は、X方向の中心に配置され、トランスデューサ42とともに、Y方向(第2方向に対応する。)に平行な一直線上に配置されている。
【0110】
この構成では、血流量計測装置は、トランスデューサ42、トランスデューサ44およびトランスデューサ45を、血管90の幅方向における計測用パッチ20Bの位置の検出および補正に用いる。そして、血流量計測装置は、トランスデューサ41、トランスデューサ42およびトランスデューサ43を、血管90の延びる方向における計測用パッチ20Bの位置の検出および補正に用いる。
【0111】
これにより、計測用パッチ20Bを回転させることなく、計測用パッチ20Bは、血管90における最適点PDに対して最適な位置に配置される。
【0112】
なお、この構成の場合、X方向とY方向の補正情報を同時に計算できるので、2次元での補正の通知が可能である。したがって、計測用パッチ20Bは、第1の実施形態に示した発光素子6121、発光素子6122、発光素子6131、および、発光素子6132に加えて、図13(A)に示すように、Y方向に並ぶ発光素子6141、発光素子6142、発光素子6151、および、発光素子6152を備えて、通知を行うことが可能である。これらY方向に並ぶ複数の発光素子6141、発光素子6142、発光素子6151、および、発光素子6152の配列は、X方向に並ぶ発光素子6121、発光素子6122、発光素子6131、および、発光素子6132の配列を90°回転させることによって実現できる。さらに、通知部は、斜め方向(計測用パッチ20Bの表面201における対角線に平行な方向)に移動させる補正情報を通知してもよい。
【0113】
(第2の派生の構成例)
図13(B)に示すように、計測用パッチ20Cは、計測用パッチ20に対して、トランスデューサ42を、複数のトランスデューサ403-409に置き換えた点で異なる。複数のトランスデューサ403-409は、X方向に沿って配列されている。
【0114】
このような構成では、血流量計測装置は、複数のトランスデューサ403-409を一つのトランスデューサとして、トランスデューサ41およびトランスデューサ43とともに用いることによって、計測用パッチ20Cの血管90に対する概略的な位置を検出できる。さらに、血流量計測装置は、複数のトランスデューサ403-409によって、X方向の異なる位置に複数の超音波を形成することで、計測用パッチ20Cの血管90に対するより詳細な位置を検出できる。
【0115】
(第3の派生の構成例)
図13(C)に示すように、計測用パッチ20Dは、計測用パッチ20Cに対して、トランスデューサ41Dおよびトランスデューサ43Dを備える点で異なる。
【0116】
トランスデューサ41Dは、トランスデューサ41から置き換えられるものであり、トランスデューサ43Dは、トランスデューサ43から置き換えられるものである。
【0117】
トランスデューサ41Dの送受波面の面積は、トランスデューサ41の送受波面の面積よりも大きい。トランスデューサ43Dの送受波面の面積は、トランスデューサ43の送受波面の面積よりも大きい。
【0118】
このような構成でも、計測用パッチ20Dは、計測用パッチ20Cと同様の作用効果を得られる。さらに、計測用パッチ20Dは、トランスデューサ41Dおよびトランスデューサ43Dから送信される超音波の指向性を絞ることができる。
【0119】
(第4の派生の構成例)
図14に示すように、計測用パッチ20Eは、計測用パッチ20Bに対して、複数のトランスデューサ401-411、トランスデューサ41E、および、トランスデューサ43Eを備える点で異なる。複数のトランスデューサ401-411は、X方向の中心で、且つ、Y方向に沿って配列されている。トランスデューサ41Eの送受波面の面積は、トランスデューサ41の送受波面の面積よりも大きい。トランスデューサ43Eの送受波面の面積は、トランスデューサ43の送受波面の面積よりも大きい。
【0120】
この構成では、血流量計測装置は、複数のトランスデューサ401-411を、血管90の幅方向における計測用パッチ20Eの位置の検出および補正に用いる。そして、血流量計測装置は、トランスデューサ41Eの超音波、複数のトランスデューサ401-411における所定個のトランスデューサを用いた超音波、および、トランスデューサ43Eの超音波を、血管90の延びる方向における計測用パッチ20Eの位置の検出および補正に用いる。
【0121】
これにより、計測用パッチ20Eを回転させることなく、計測用パッチ20Eは、血管90における最適点PDに対して最適な位置に配置される。
【0122】
(第5の派生の構成例)
図15(A)は、計測用パッチの他の構成例を示す図であり、図15(B)、図15(C)は、血管に対する計測用パッチの配置状態を示す図である。
【0123】
図15(A)に示すように、計測用パッチ20E2は、計測用パッチ20Eに対して、トランスデューサ41Eおよびトランスデューサ43Eを省略し、複数のトランスデューサ401-411を筐体200のX方向に配列し、トランスデューサ51およびトランスデューサ52を筐体200のY方向に配列した点で異なる。
【0124】
この構成では、図15(B)に示すように、計測用パッチ20E2が血管90に対して正しい位置に配置されていれば、すなわち、トランスデューサ51とトランスデューサ52とが血管90に重なっていれば、血流量(血流速)を計測できる。一方、図15(C)に示すように、トランスデューサ51とトランスデューサ52との配列方向と血管90の延びる方向とが平行でなく、トランスデューサ51とトランスデューサ52とが血管90に重なっていなければ、血流量(血流速)を計測できない。
【0125】
したがって、計測用パッチE2の構成を備えることによって、血流速の計測結果から、計測用パッチ20E2が血管90に対して正しい位置に配置されているか否かを、容易に判断できる。
【0126】
(血流量計測装置の機能構成の他の構成例)
図16図17は、血流量計測装置の機能ブロック図である。
【0127】
(第1の派生の機能構成例)
図16に示すように、血流量計測装置10Fは、血流量計測装置10に対して、通知部60の配置位置において異なる。血流量計測装置10Fの他の構成は、血流量計測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0128】
通知部60は、本体30Fに備えられている。このような構成によって、計測用パッチ20Fは、更に小さくすることが可能になる。また、通知部60を、計測用パッチ20よりも形状の制限が少ない本体30Fに備えることで、より多様な通知方法を採用できる。
【0129】
(第2の派生の機能構成例)
図17に示すように、血流量計測装置10Gは、血流量計測装置10に対して、通信制御部33、および、アンテナ330を備える点で異なる。血流量計測装置10Gの他の構成は、血流量計測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0130】
血流量計測装置10Gは、本体30Gを備える。本体30Gは、通信制御部33、および、アンテナ330を備える。通信制御部33は、演算部32に接続する。アンテナ330は、通信制御部33に接続する。
【0131】
通信制御部33は、演算部32で計測した血流量を、アンテナ330を介して外部のコンピュータ(PC、スマートフォン、タブレット型デバイス等)やサーバ装置等に送信する。なお、通信制御部33は、エコー信号を外部のコンピュータやサーバ装置等に送信してもよい。また、接続された外部のコンピュータにX方向とY方向の補正情報を出力し、外部のコンピュータが検査対象者または検査の同伴者(付添人または医療従事者)に補正情報を通知することにしてもよい。
【0132】
(通知部の他の構成例)
図18(A)は、通知部の他の構成例を示す図であり、図18(B)、図18(C)、図18(D)は、通知部における通知例を示す図であり、図18(E)は、通知部のさらに派生の構成例を示す図である。
【0133】
図18(A)に示すように、計測用パッチ20Gは、発光素子611、発光素子616A、発光素子616B、発光素子616C、発光素子616D、発光素子616E、発光素子616F、発光素子616G、発光素子616H、発光素子616I、発光素子616J、発光素子616K、および、発光素子616Lを備える。計測用パッチ20Gの筐体200は、これらの発光素子611、616A-616Lのそれぞれに対する出光部を備える。発光素子611、616A-616Lのそれぞれと、発光素子611、616A-616Lのそれぞれに対する出光部とは、筐体200の表面211を正面視して重なるように配置されている。なお、計測用パッチ20Gの他の構成は、計測用パッチ20と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0134】
図18(A)に示すように、発光素子611の出光部は、筐体200の表面211における中央に配置されている。複数の発光素子616A-616Lのそれぞれに対する出光部は、発光素子611の出光部を中心(原点)とする円周上に、等間隔(この例では約30°)で順に配置されている。
【0135】
このような構成の発光素子611、616A-616Lのそれぞれに対する出光部を備える。発光素子611、616A-616Lとその出光部を備えることによって、計測用パッチ20Gは、筐体200の回転量を通知できる。
【0136】
例えば、図18(B)の場合、4個の発光素子616A-616Dが発光し、他の発光素子が発光していない。この場合、計測用パッチ20Gは、71°から105°の回転を示す。また、例えば、図18(C)の場合、3個の発光素子616A-616Cが発光し、他の発光素子が発光していない。この場合、計測用パッチ20Gは、36°から70°の回転を示す。また、例えば、図18(D)の場合、2個の発光素子616A、616Bが発光し、他の発光素子が発光していない。この場合、計測用パッチ20Gは、0°から35°の回転を示す。
【0137】
なお、発光対象の発光素子を全て同時に点灯してもよいが、例えば、616A起点として、円弧に沿って(配置順に沿って)、順に発光させてもよい。さらには、発光させた発光素子を順に消光させてもよい。
【0138】
ここでいう回転量とは、適切な計測のために計測用パッチ20Gを回転させるべき角度であっても、回転させた角度であってもよい。回転させるべき角度の場合、例えば、超音波の計測結果や姿勢センサ等を用いて、計測用パッチ20Gの計測時の正常な位置に対してのずれ量を検出し、このずれ量から、回転量を決定すればよい。この場合、検査対象者または検査の同伴者は、正常な位置への回転量を容易に認識できる。また、回転させた角度の場合、姿勢センサ等を用いて、計測用パッチ20Gの筐体200の回転量を計測すればよい。この場合、検査対象者または検査の同伴者は、筐体200の回転量を容易に認識できる。
【0139】
なお、図18(E)に示すような構成からなる計測用パッチ20GAによっても、同様の作用効果が得られる。計測用パッチ20GAは、計測用パッチ20Gに対して、複数の発光素子616E-616Lを省略した点で異なる。すなわち、計測用パッチ20GAは、発光素子611と、90°の円弧上に配置された複数の発光素子616A、616B、616C、616Dを備える。
【0140】
(血流量計測装置の検査対象者への他の装着例)
図19は、血流計測装置の他の装着状態を示す斜視図である。図19に示す場合、計測用パッチ20のみが、検査対象者99の頸部990に装着される。すなわち、上述の図2(B)に示した場合と比較して、図19の構成は、本体30、および、ケーブル21を備えない。このような構成は、例えば、計測用パッチ20に、本体30の機能部を内蔵すること、計測用パッチ20と本体30とを無線通信等によって接続すること、計測用パッチ20に記憶部を備えておき、この記憶部にエコー信号を一時記憶し、後にエコー信号を出力できる通信ポート等を備えておくこと、によって実現できる。そして、このような構成を備えることによって、検査対象者99への血流量計測装置の装着時の負荷、違和感等を軽減できる。計測用パッチ20は、最低1個頸部に装着することで、血流計測を行うことができる。
【0141】
なお、図19および上述の図2(B)に示すように、2個の計測用パッチ20を検査対象者99の頸部990に対して、略左右対称で装着することによって、次の効果が得られる。この構成では、狭窄の程度、左右の差を判定できる。また、この構成では、計測の精度を向上できる。また、この構成では、例えば、手術中に使用する人工心肺の送血量を把握できる。
【0142】
また、上述の各実施形態および派生の構成では、通知部は、光または音によって検査対象者または検査の同伴者(付添人または医療従事者)に通知する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、振動などの触覚によって検査対象者または検査の同伴者(付添人または医療従事者)に通知する構成としてもよい。
【0143】
また、上述の各実施形態および派生の構成は、適宜組み合わせることができ、それぞれの組合せに応じた作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0144】
10、10F、10G:血流量計測装置
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20GA:計測用パッチ
21:ケーブル
30、30F、30G:本体
31:信号制御部
32:演算部
33:通信制御部
41、41D、41E、42、43、43D、43E、44、45、51、52、401-411:トランスデューサ
60:通知部
90、91、92:血管
99:検査対象者
200:筐体
201:表面
202:裏面
203、204、205、206:側面
300:バッテリ
330:アンテナ
400:整合層
611、6121、6122、6131、6132、6141、6142、6151、6152、616A、616B、616C、616D、616E、616F、616G、616H、616I、616J、616K、61611:発光素子
620:放音部
901:皮膚表面
990:頸部
991:肩
PD:最適点
PJ:分岐点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図19