(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20220817BHJP
H01M 50/534 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220817BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20220817BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220817BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220817BHJP
H01M 50/176 20210101ALN20220817BHJP
H01M 50/178 20210101ALN20220817BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/545
H01M50/55 101
H01M50/55 301
H01M50/586
H01M50/103
H01M50/105
H01M50/119
H01M10/052
H01M10/0587
H01M50/176
H01M50/178
(21)【出願番号】P 2021516087
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016956
(87)【国際公開番号】W WO2020218214
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019084546
(32)【優先日】2019-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】秋月 直人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正博
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 守伯
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-272597(JP,A)
【文献】特開2004-164985(JP,A)
【文献】特開平08-007919(JP,A)
【文献】特開2001-325937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/10
H01M 10/04
H01M 10/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極および該正極と該負極との間に配置されたセパレータを含む電極組立体ならびに電解質が外装体に封入された二次電池であって、
前記電極組立体が、該電極組立体における同一の端面から突出する正極および負極の集電タブを有して成り、
前記電極組立体の平面視において、前記正極および負極の集電タブが突出している方向に沿った中心軸に対して、該正極および負極の集電タブがそれぞれ異なる距離に位置付けられ、
前記正極および負極の集電タブはそれぞれ、前記電極組立体の平面視において、前記中心軸に相対的に遠いほうの外側集電タブおよび該中心軸に相対的に近いほうの内側集電タブのいずれか一方であり、
前記内側集電タブの長さ寸法に対して、前記外側集電タブの長さ寸法が大きく、
前記正極および負極の集電タブが屈曲形状を成している、二次電池。
【請求項2】
前記屈曲形状が弓状に曲がる湾曲形状である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
相対的に長さ寸法が異なる前記内側集電タブと前記外側集電タブとの双方が、前記屈曲形状に起因して前記外装体内で蛇行するように延在している、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記内側集電タブと前記外側集電タブとの間でバネ弾性が異なっている、請求項1~3のいずれかに記載の二次電池。
【請求項5】
前記内側集電タブのバネ弾性に対して、前記外側集電タブのバネ弾性が高い、請求項1~3のいずれかに記載の二次電池。
【請求項6】
前記内側集電タブのヤング率に対して、前記外側集電タブのヤング率が高い、請求項1~5のいずれかに記載の二次電池。
【請求項7】
前記内側集電タブの引張強度に対して、前記外側集電タブの引張強度が高い、請求項1~6のいずれかに記載の二次電池。
【請求項8】
前記内側集電タブの厚み寸法に対して、前記外側集電タブの厚み寸法が大きい、請求項1~7のいずれかに記載の二次電池。
【請求項9】
前記内側集電タブの幅寸法に対して、前記外側集電タブの幅寸法が大きい、請求項1~8のいずれかに記載の二次電池。
【請求項10】
前記平面視において前記内側集電タブと前記外側集電タブとが互いに同じ方向に突出して並んでいる、請求項1~9のいずれかに記載の二次電池。
【請求項11】
前記電極組立体は、前記集電タブが突出する端面において、前記セパレータが前記正極および前記負極よりも外側に延在しているセパレータ延在部を有し、前記集電タブの前記屈曲形状を成す部分が前記セパレータ延在部と接している、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池。
【請求項12】
前記電極組立体が、前記正極、前記負極および前記セパレータが巻回されている巻回型電極組立体である、請求項1~11のいずれかに記載の二次電池。
【請求項13】
前記二次電池の断面視において、前記セパレータ延在部の少なくとも一部が、前記巻回の外周側に凸な屈曲形状を成している、請求項11に従属する請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記二次電池の断面視において、前記電極組立体は、前記セパレータ延在部が集束して成る集束部分を有しており、前記集電タブの前記屈曲形状を成す部分が前記集束部分と接している、請求項11に従属する請求項12または13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記集電タブにおいて少なくとも前記屈曲形状を成す部分に絶縁材が設けられている、請求項1~14のいずれかに記載の二次電池。
【請求項16】
前記外装体が、
正極および負極のいずれか一方の電極端子構造体をさらに有して成り、
導電性ハードケース型外装体であり、前記電極端子構造体と異極の電荷を帯びている、請求項1~15のいずれかに記載の二次電池。
【請求項17】
前記外装体が、樹脂材および金属材を含んで成るラミネートフィルムから成る、請求項1~16のいずれかに記載の二次電池。
【請求項18】
前記正極および前記負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能となっている、請求項1~17のいずれかに記載の二次電池。
【請求項19】
モバイル機器用途に用いられる、請求項1~18のいずれかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、いわゆる蓄電池ゆえ充電・放電の繰り返しが可能であり、様々な用途に用いられている。例えば、携帯電話、スマートフォンおよびノートパソコンなどのモバイル機器に二次電池が用いられている。
【0003】
二次電池は一般的に外装体内に電極組立体が収容された構造を有する。つまり、二次電池では、ケースとなる外装体に対して電極体が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、従前の二次電池では克服すべき課題があることに気付き、そのための対策を取る必要性を見出した。具体的には以下の課題があることを本願発明者は見出した。
【0006】
二次電池は、一般的に、正極、負極およびそれらの間に配置されたセパレータを含む電極組立体、ならびに電解質が外装体に封入された構造を有する。電極組立体は、当該電極組立体における同一の端面から突出する正極および負極の集電タブを有している。また、正極および負極は、正極および負極の集電タブを介して、外装体の電極端子に電気的に接続されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
図10に示す例示態様でいえば、正極電極端子5
1および負極電極端子5
2は、外装体300の側面において離隔および絶縁されて位置付けられる。用途に応じた二次電池の設計自由度を担保するために、正極電極端子5
1および負極電極端子5
2は、二次電池400(または電極組立体200)の平面視における中心軸X
c-X
c’に対して異なる距離に位置付けることが考えられる。この場合、電極組立体200の正極集電タブ61および負極集電タブ62を、中心軸X
c-X
c’に対して異なる距離に位置付ける必要がある。
【0008】
このような構成の二次電池400では、衝撃および/または熱が加わった場合、外装体300内部で電極組立体200が周方向Rに移動する場合がある。このような移動に際しては、電極組立体200の平面視における中心軸Xc-Xc’に相対的に近いほうの内側集電タブ(例えば、正極集電タブ61)の移動距離R1に対して、中心軸Xc-Xc’に相対的に遠いほうの外側集電タブ(例えば、負極集電タブ62)の移動距離R2が大きくなり得る。よって、特に外側集電タブにより大きな力がかかることとなり、短絡および/または外側集電タブの破損が生じる虞がある。
【0009】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の主たる目的は、短絡防止および集電タブの破損防止の点でより好適な二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、正極、負極および正極と負極との間に配置されたセパレータを含む電極組立体ならびに電解質が外装体に封入された二次電池であって、電極組立体が、当該電極組立体における同一の端面から突出する正極および負極の集電タブを有して成り、電極組立体の平面視において、正極および負極の集電タブが突出している方向に沿った中心軸に対して、当該正極および負極の集電タブがそれぞれ異なる距離に位置付けられ、正極および負極の集電タブはそれぞれ、電極組立体の平面視において、中心軸に相対的に遠いほうの外側集電タブおよび当該中心軸に相対的に近いほうの内側集電タブのいずれか一方であり、内側集電タブの長さ寸法に対して外側集電タブの長さ寸法が大きく、正極および負極の集電タブが屈曲形状を成している二次電池に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る二次電池は、短絡防止および集電タブの破損防止の点でより好適な構造を有する。
【0012】
具体的には、本発明に係る二次電池の電極組立体の平面視において、正極および負極の集電タブが突出している方向に沿った中心軸に相対的に近いほうの内側集電タブの長さ寸法に対して、当該中心軸に相対的に遠いほうの外側集電タブの長さ寸法が大きくなっている。換言すると、電極組立体の中心軸から相対的に距離が小さく離れている内側集電タブの長さ寸法に対して、かかる中心軸から相対的に距離が大きく離れている外側集電タブの長さ寸法が大きくなっている。つまり、外装体内部で電極組立体が周方向に移動するように力が加わったとしても、移動距離が大きくなり得る外側集電タブの長さ寸法にバッファーを持たせることができる。よって、外側集電タブにかかる力を減じることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る二次電池の外側集電タブおよび内側集電タブは、屈曲形状を成している。つまり、各集電タブに弾性(例えば、バネ弾性)を持たせることができ、電極組立体と外装体とを弾接することができる。それによって、外装体内部で電極組立体が移動することを防ぐことができる。
【0014】
上述の通り、本発明に係る二次電池は、短絡および集電タブの破損防止をより好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図2は、本発明に係る二次電池の模式的平面透視図を示す。
【
図3】
図3は、
図2におけるX
I-X
I’線に沿った二次電池の模式的断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図2におけるX
O-X
O’線に沿った二次電池の模式的断面図を示す。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、本発明に係る集電タブのバネ弾性を評価する方法を説明するための模式的断面図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、本発明に係る二次電池を構成する電極組立体の種々の態様の模式的平面図を示す。
【
図8】
図8は、本発明に係る二次電池を構成する電極組立体の構成部材を説明するための模式的斜視図を示す。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは、本発明に係る二次電池を構成する電極の組立方法を説明するための模式的斜視図を示す。
【
図10】
図10は、従来技術に係る二次電池の模式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の一実施形態に係る二次電池をより詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図面における各種の要素は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したにすぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0017】
本明細書で直接的または間接的に説明される“厚み”の方向は、二次電池を構成する電極材の積層方向に基づいている。例えば扁平状電池などの「板状に厚みを有する二次電池」でいえば、“厚み”の方向は、かかる二次電池の板厚方向に相当する。
【0018】
本明細書において「断面視」は、二次電池の厚み方向に沿って切り取って得られる対象物の仮想断面に基づいている。例えば、二次電池を構成する電極層の積層方向に基づく厚み方向と、電極層が電極端子の位置する方向へと延在する長手方向とが構成する面に沿って切り取ったような断面に基づいている。端的にいえば、
図3などに示される二次電池の断面の形態に基づいている。
【0019】
本明細書で用いる「平面視」とは、かかる厚みの方向に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。例えば、二次電池の厚み方向に法線を有する平面の形態に基づいている。端的にいえば、
図2などに示される二次電池の平面の形態に基づいている。
【0020】
[本発明に係る二次電池の基本構成]
本発明は二次電池を提供する。本明細書中、「二次電池」という用語は充電・放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、「蓄電デバイス」などの電気化学デバイスも包含し得る。
【0021】
本発明に係る二次電池は、正極、負極およびセパレータを含む電極構成単位を有する電極組立体を備えている。
図1Aおよび
図1Bには電極組立体200を例示している。図示されるように、正極1と負極2とはセパレータ3を介して積み重なって電極構成単位100を成している。かかる電極構成単位が少なくとも1つ以上積層して電極組立体が構成されていたり(
図1A参照)、あるいは、電極構成単位が巻回することで電極組立体が構成されたりする(
図1B参照)。二次電池では、そのような電極組立体が電解質(例えば非水電解質)と共に外装体に封入されている。
【0022】
正極は、少なくとも正極材層および正極集電体(例えば層形態を成す正極集電体)から構成されている。正極では正極集電体の少なくとも片面に正極材層が設けられており、正極材層には電極活物質として正極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の正極は、それぞれ、正極集電体の両面に正極材層が設けられていてよいし、あるいは、正極集電体の片面にのみ正極材層が設けられていてよい。二次電池のさらなる高容量化の観点でいえば正極は正極集電体の両面に正極材層が設けられていることが好ましい。
【0023】
負極は、少なくとも負極材層および負極集電体(例えば層形態を成す負極集電体)から構成されている。負極では負極集電体の少なくとも片面に負極材層が設けられており、負極材層には電極活物質として負極活物質が含まれている。例えば、電極組立体における複数の負極は、それぞれ、負極集電体の両面に負極材層が設けられていてよいし、あるいは、負極集電体の片面にのみ負極材層が設けられていてよい。二次電池のさらなる高容量化の観点でいえば負極は負極集電体の両面に負極材層が設けられていることが好ましい。
【0024】
正極および負極に含まれる電極活物質、即ち、正極活物質および負極活物質は、二次電池において電子の受け渡しに直接関与する物質であり、充放電、すなわち電池反応を担う正負極の主物質である。より具体的には、「正極材層に含まれる正極活物質」および「負極材層に含まれる負極活物質」に起因して電解質にイオンがもたらされ、かかるイオンが正極と負極との間で移動して電子の受け渡しが行われて充放電がなされる。正極材層および負極材層は特にリチウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、非水電解質を介してリチウムイオンが正極と負極との間で移動して電池の充放電が行われる非水電解質二次電池となっていることが好ましい。充放電にリチウムイオンが関与する場合、本発明に係る二次電池は、いわゆるリチウムイオン電池に相当し、正極および負極がリチウムイオンを吸蔵放出可能な層を有している。
【0025】
正極材層の正極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが正極材層に含まれていることが好ましい。更には、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が正極材層に含まれていてもよい。同様にして、負極材層の負極活物質は例えば粒状体から成るところ、粒子同士のより十分な接触と形状保持のためにバインダーが含まれることが好ましく、電池反応を推進する電子の伝達を円滑にするために導電助剤が負極材層に含まれていてもよい。このように、複数の成分が含有されて成る形態ゆえ、正極材層および負極材層はそれぞれ「正極合材層」および「負極合材層」などと称すこともできる。
【0026】
正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、正極活物質は例えばリチウム含有複合酸化物であることが好ましい。より具体的には、正極活物質は、リチウムと、コバルト、ニッケル、マンガンおよび鉄から成る群から選択される少なくとも1種の遷移金属とを含むリチウム遷移金属複合酸化物であってよい。つまり、本実施態様に係る二次電池の正極材層においては、そのようなリチウム遷移金属複合酸化物が正極活物質として好ましくは含まれている。例えば、正極活物質はコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、または、それらの遷移金属の一部を別の金属で置き換えたものである。そのような正極活物質は、単独種として含まれてよいものの、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。より好適な態様では正極材層に含まれる正極活物質がコバルト酸リチウムとなっていてもよい。
【0027】
正極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド-テトラフルオロチレン共重合体およびポリテトラフルオロチレンなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。正極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維などの炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀などの金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。ある例示態様では正極材層のバインダーはポリフッ化ビニリデンであり、また、別のある例示態様では正極材層の導電助剤はカーボンブラックである。さらに別の例示態様では、正極材層のバインダーおよび導電助剤が、ポリフッ化ビニリデンとカーボンブラックとの組合せとなっている。
【0028】
正極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下が好ましく、例えば5μm以上200μm以下である。正極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであって、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられてよい。
【0029】
負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出に資する物質であることが好ましい。かかる観点でいえば、負極活物質は例えば各種の炭素材料、酸化物、または、リチウム合金などであることが好ましい。
【0030】
負極活物質の各種の炭素材料としては、黒鉛(例えば天然黒鉛および/もしくは人造黒鉛)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ならびに/またはダイヤモンド状炭素などを挙げることができる。特に、黒鉛は電子伝導性が高く、負極集電体との接着性が優れる点などで好ましい。負極活物質の酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛および酸化リチウムなどから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。負極活物質のリチウム合金は、リチウムと合金形成され得る金属であればよく、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元、3元またはそれ以上の合金である。そのような酸化物は、その構造形態としてアモルファスとなっていてよい。結晶粒界または欠陥といった不均一性に起因する劣化が引き起こされにくくなるからである。ある例示態様では負極材層の負極活物質が人造黒鉛となっている。
【0031】
負極材層に含まれる得るバインダーとしては、特に制限されるわけではないが、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。より好適な実施態様では負極材層に含まれるバインダーはスチレンブタジエンゴムとなっている。負極材層に含まれる得る導電助剤としては、特に制限されるわけではないが、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックおよびアセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブおよび気相成長炭素繊維などの炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウムおよび銀などの金属粉末、ならびに、ポリフェニレン誘導体などから選択される少なくとも1種を挙げることができる。なお、負極材層には、電池製造時に使用された増粘剤成分(例えばカルボキシルメチルセルロース)に起因する成分が含まれていてもよい。
【0032】
ある例示態様では、負極材層における負極活物質およびバインダーが人造黒鉛とスチレンブタジエンゴムとの組合せとなっている。
【0033】
負極材層の厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上300μm以下が好ましく、例えば5μm以上200μm以下である。負極材層の厚み寸法は二次電池内部での厚みであって、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられてよい。
【0034】
正極および負極に用いられる正極集電体および負極集電体は電池反応に起因して活物質で発生した電子を集めたり供給したりするのに資する部材である。そのような集電体は、シート状の金属部材であってよく、多孔または穿孔の形態を有していてよい。例えば、集電体は金属箔、パンチングメタル、網またはエキスパンドメタルなどである。正極に用いられる正極集電体は、アルミニウム、ステンレス鋼およびニッケルなどから成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えばアルミニウム箔である。一方、負極に用いられる負極集電体は、銅、ステンレス鋼およびニッケルなどから成る群から選択される少なくとも1種を含んだ金属箔から成るものが好ましく、例えば銅箔である。
【0035】
セパレータは、正負極の接触による短絡防止および電解質保持などの観点から設けられる部材である。換言すれば、セパレータは、正極と負極との間の電子的接触を防止しつつイオンを通過させる部材であるといえる。好ましくは、セパレータは多孔性または微多孔性の絶縁性部材であり、その小さい厚みに起因して膜形態を有している。あくまでも例示にすぎないが、ポリオレフィン製の微多孔膜がセパレータとして用いられてよい。この点、セパレータとして用いられる微多孔膜は、例えば、ポリオレフィンとしてポリエチレン(PE)のみ又はポリプロピレン(PP)のみを含んだものであってよい。更にいえば、セパレータは、“PE製の微多孔膜”と“PP製の微多孔膜”とから構成される積層体であってもよい。セパレータの表面は無機粒子コート層および/または接着層などにより覆われていてもよい。セパレータの表面は接着性を有していてもよい。
【0036】
セパレータの厚み寸法は、特に制限されるわけではないが、1μm以上100μm以下が好ましく、例えば5μm以上20μm以下である。セパレータの厚み寸法は二次電池内部での厚み(特に正極と負極との間での厚み)であって、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられてよい。
【0037】
本発明に係る二次電池では、正極、負極およびセパレータを含む電極組立体が電解質と共に外装体に封入されている。電解質は電極(正極・負極)から放出された金属イオンの移動を助力する。電解質は有機電解質および有機溶媒などの“非水系”の電解質であってもよく、または水を含む“水系”の電解質であってもよい。ある例示態様において、本発明に係る二次電池は、電解質として“非水系”の溶媒と、溶質とを含む電解質が用いられた非水電解質二次電池となっている。
【0038】
具体的な非水電解質の溶媒としては、少なくともカーボネートを含んで成るものが好ましい。かかるカーボネートは、環状カーボネート類および/または鎖状カーボネート類であってもよい。特に制限されるわけではないが、環状カーボネート類としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)およびビニレンカーボネート(VC)から成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。鎖状カーボネート類としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジプロピルカーボネート(DPC)から成る群から選択される少なくも1種を挙げることができる。本発明の1つの例示態様では、非水電解質として環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組合せが用いられ、例えばエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物が用いられる。具体的な非水電解質の溶質としては、例えば、LiPF6および/またはLiBF4などのLi塩が用いられてよい。
【0039】
集電タブとしては、二次電池の分野で使用されているあらゆる集電タブが使用可能である。集電タブは、電子の移動が達成され得る材料から構成されればよく、通常は銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケル、および/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成される。集電タブの形態は特に限定されず、例えば、線状であってもよいし、または板状であってもよい。正極側および負極側の集電タブ(以下では総称的に「正負極の集電タブ」とも称する)は、電極組立体のいずれの面から突出していてよい。正負極の集電タブは、互いに電極組立体の別の面から突出していてよく、あるいはそれぞれ同一の面から突出していてもよい。二次電池のコンパクト化の観点から、正負極の集電タブは、同一の面から突出していることが好ましい。つまり、正極集電タブと負極集電タブとが、互いに電極組立体の同一の端面(すなわち同一側面)から突出するように延在していてよい。
【0040】
外装体は通常、ハードケースであり、本体部および蓋部などの2つの部材から成っていてよい。例えば、外装体が本体部および蓋部から構成される場合、本体部と蓋部とは、電極組立体、電解質および集電タブ、ならびに所望により電極端子などが収容された後、密封される。外装体の密封方法としては、特に限定されず、例えば、レーザー照射法などが挙げられる。
【0041】
外装体の本体部および蓋部を構成する材料としては、二次電池の分野でハードケース型外装体を構成し得るあらゆる材料が使用可能である。そのような材料は、電子の移動が達成され得る導電性材料であってもよいし、または電子の移動が達成され得ない絶縁材料であってもよい。外装体の材料は、電極取り出しの観点から、導電性材料であることが好ましい。
【0042】
導電性材料としては、例えば銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料が挙げられる。絶縁材料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料が挙げられる。
【0043】
上述した導電性および剛性の観点から、本体部および蓋部はともに、ステンレス鋼から構成されていてよい。なお、ステンレス鋼とは、「JIS G 0203 鉄鋼用語」に規定されている通り、クロムまたはクロムとニッケルとを含有させた合金鋼で、一般にはクロム含有量が全体の約10.5%以上の鋼をいう。そのようなステンレス鋼としては、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼および/または析出硬化系ステンレス鋼が挙げられる。
【0044】
外装体の本体部および蓋部の寸法は、主として電極組立体の寸法に応じて決定される。例えば、電極組立体を収容したとき、外装体内での電極組立体の移動が防止される程度の寸法を外装体が有していてよい。電極組立体の移動を防止することにより、衝撃などによる電極組立体の損傷を防止し、二次電池の安全性が向上し得る。
【0045】
外装体はラミネートフィルムからなるパウチなどのフレキシブルケースであってもよい。ラミネートフィルムとしては、少なくとも金属層(例えば、アルミニウムなど)と接着層(例えば、ポリプロピレンおよび/またはポリエチレンなど)とが積層される構成であり、付加的に保護層(例えば、ナイロンおよび/またはポリアミドなど)が積層される構成であってもよい。
【0046】
外装体の厚み寸法(すなわち、肉厚寸法)は、特に制限されるわけではないが、10μm以上200μm以下が好ましく、例えば50μm以上100μm以下である。外装体の厚み寸法は、任意の10箇所における測定値の平均値が用いられてよい。
【0047】
二次電池には、一般に電極端子が設けられている。かかる電極端子は、外装体の少なくとも1つの面に設けられてよい。例えば、外装体における同一面に正極の電極端子と負極の電極端子とが互いに離間して設けられてよい。または、正極の電極端子と負極の電極端子とが互いに外装体の別の面に正負極の電極端子がそれぞれ設けられてもよい。二次電池のコンパクト化の観点から、正極の電極端子および負極の電極端子が、正負極の電極端子は、同一の面から突出していてよい。具体的には、電極層が積層する方向に対して垂直な方向に突出するように、外装体の側面から正極側および負極側の電極端子が突出していてよい。
【0048】
電極端子は、導電率が大きい材料を用いることが好ましい。電極端子の材質としては、特に制限するわけではないが、銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよびステンレス鋼から成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0049】
電極端子は、単一の材料から構成されてよく、複数の材料から構成されてもよい。複数の材料から構成される電極端子(以下、「電極端子構造体」とも称す)は、リベット部、内側端子およびガスケット部から成る。
【0050】
リベット部および内側端子は、電子の移動が達成され得る材料から構成されていればよい。例えば、リベット部および内側端子は、それぞれ、銀、金、銅、鉄、スズ、プラチナ、アルミニウム、ニッケルおよび/またはステンレス鋼などの導電性材料から構成される。ガスケット部は、絶縁材料から構成されていればよい。例えば、ガスケット部は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料から構成される。
【0051】
正負極の集電タブは、電極端子または電極端子構造体に電気的に接続され、かかる電極端子または電極端子構造体を介して、外部へと電気的に導出されている。
【0052】
電極端子構造体は、特に限定されないが、例えば、外装体の貫通孔に、嵌合して挿通されていてもよい。電極端子構造体は、主として電極を外部に導出するための導電性のリベット部、かかるリベット部と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための外側ガスケット部、リベット部と集電タブとの電気的接続を確保するための内側端子、およびかかる内側端子と外装体との電気的な絶縁を確保しつつ、電解質の漏出を防止するための内側ガスケット部を含んでもよい。
【0053】
正負極の集電タブは、電極端子または電極端子構造体に接続されてよい。また、正負極の集電タブは、外装体に電気的に接続され、かかる外装体を介して外部に導出されるようになっていてもよい。例えば外装体が導電性ハードケース型外装体である場合、集電タブは外装体の内側と接触して電気的に接続されていてよく、かかる外装体を介して外部へと導出されるようになっていてもよい。換言すると、外装体が集電タブと接続されることで正極または負極の電荷を帯びてよく、また、外装体に設けられた電極端子から集電タブが外部へと電気的に導出されるようになっていてもよい。
【0054】
二次電池のコンパクト化および電圧バランス化の観点から、正負極いずれか一方の電極の集電タブが電極端子構造体に電気的に接続され、他方の電極の集電タブが導電性ハードケース型外装体の内側に電気的に接続されていてよい。
【0055】
スペーサとしては、二次電池の分野で使用されているあらゆるスペーサが使用可能である。スペーサは、例えば、電極組立体(特に電極)と外装体(特に電極端子)との間の電子的接触を防止する限り、特に限定されない。よって、スペーサは、電極組立体と外装体(特にその電極端子)との間の電子的接触を防止する絶縁部材と称すこともできる。スペーサは、全体として例えば板状となっていてよい。スペーサを構成する材料としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリピロピレンなど)、ポリスチレン、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレートおよび/もしくはポリブチレンテレフタレートなど)、ポリ塩化ビニル、アクリルポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレートなど)ならびに/またはポリカーボネートなどのポリマー材を挙げることができるほか、ニトリルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムおよび/またはシリコーンゴムなどのゴム材などの種々の絶縁性材料が挙げることができる。スペーサは電極組立体と外装体との接触が防止され得る限り、あらゆる形態を有していてもよく、例えば、フィルム、シート、ボードまたは生地(例えば不織布)の形態を有していてもよい。
【0056】
[本発明に係る二次電池の特徴]
本発明に係る二次電池は、電極組立体、およびそれを収容する外装体を有して成る電池であるところ、電極組立体から突出する集電タブの形態および配置の点で特徴を有する。
【0057】
具体的には、本発明に係る二次電池の電極組立体の平面視において、正極および負極の集電タブが突出している方向に沿った中心軸に相対的に近いほうの内側集電タブの長さ寸法に対して、当該中心軸に相対的に遠いほうの外側集電タブの長さ寸法が大きくなっている。換言すると、電極組立体の中心軸から相対的に距離が小さく離れている内側集電タブの長さ寸法に対して、かかる中心軸から相対的に距離が大きく離れている外側集電タブの長さ寸法が大きくなっている。
【0058】
図2に示す例示態様でいえば、電極組立体200の平面視において、正極集電タブおよび負極集電タブが電極組立体200から突出している。特に、正極集電タブ61および負極集電タブ62は、平面視において電極組立体の積層方向に直交する方向に延在している。例えば、平面視において正極集電タブ61と負極集電タブ62とが互いに並んでいる。平面視で捉えた場合、正極集電タブ61と負極集電タブ62とが互い平行に突出しているといえる。ここで、正負極の集電タブが突出している方向に沿った中心軸X
c-X
c’に対して、正極集電タブ61は相対的に近い(すなわち、中心軸X
c-X
c’との距離が小さい)内側に、負極集電タブ62は相対的に遠い(すなわち、中心軸X
c-X
c’との距離が大きい)外側に位置付けられている。正極集電タブ61および負極集電タブ62は、それぞれ、電極組立体200の平面視における中心軸X
c-X
c’に対して異なる距離に位置付けられた正極電極端子5
1および負極電極端子5
2に接している。
【0059】
本発明に係る二次電池400では、内側集電タブ(例えば、正極集電タブ61)の長さ寸法に対して、外側集電タブ(例えば、負極集電タブ62)の長さ寸法が大きくなっている。外側集電タブおよび内側集電タブは、後述するように屈曲状態で設けられているところ、本発明でいう「タブの長さ寸法」は、タブを伸ばした状態(すなわち、非屈曲状態)の長さのことを意味している。つまり、外側集電タブおよび内側集電タブの各々を伸ばした場合に電極組立体から突出する部分の長さのことを意味している。後述する
図7Aを参照すれば、平面視において電極組立体200の端面200’から突き出ている部分の長さが“タブの長さ寸法”に相当する。なお、ある好適な態様では、屈曲状態の外側集電タブおよび内側集電タブの平面視(例えば
図2に示すような平面視)における長さ寸法に関しても内側集電タブよりも外側集電タブの方が大きくなっていてよい。
【0060】
内側集電タブの長さ寸法が外側集電タブ長さ寸法よりも大きくなっていると、例えば外装体300内部で電極組立体200が周方向Rに移動した場合、移動距離が大きくなり得る外側集電タブ62の長さ寸法にバッファーを持たせることができる。よって、外側集電タブ62にかかる力を減じ、外側集電タブ62の破損を防止することができる。
【0061】
本開示における「電極組立体の平面視において、中心軸に対して、正極および負極の集電タブが異なる距離に位置付けられる」とは、電極組立体200の中心軸X
c-X
c’と、内側集電タブ61(または、内側電極端子5
1)の中心軸X
I-X
I’および外側集電タブ62(または、外側電極端子5
2)の中心軸X
O-X
O’とのそれぞれの距離D
IおよびD
Oが互いに異なっていることを指す(
図2参照)。ここで距離D
Oは、D
Iよりも大きくなっている。
【0062】
図2を参照した上記説明では、正極集電タブ61が内側集電タブに相当し、負極集電タブ62が外側集電タブに相当するものであったが、逆の態様であっても同様のことがいえる。つまり、本発明に係る二次電池では、正極集電タブが外側集電タブに相当し、負極集電タブが内側集電タブに相当していてもよい。
【0063】
さらに、本発明に係る二次電池における正極および負極の集電タブ(すなわち、外側集電タブおよび内側集電タブ)は、屈曲形状を成している。つまり、外側集電タブおよび内側集電タブの各々が、折り返されるように大きく曲げられた形態で設けられている。
【0064】
図3および
図4に示す例示態様でいえば、内側集電タブ61(すなわち、正極集電タブ61)および外側集電タブ62(すなわち、負極集電タブ62)が断面視にて屈曲形状を成している。なお、図示する断面視から分かるように、相対的に長さ寸法が異なる内側集電タブと外側集電タブとの双方が外装体内で蛇行するように延在しているといえる。このような屈曲形状に起因して、各集電タブはバネ弾性を有することができる。
【0065】
ここで「バネ弾性」とは、ある部材にかかる外力(例えば、かかる部材を縮めようとする外力)に対して反発する特性を指す。集電タブがそのようなバネ弾性を有することで、電極組立体と外装体とを集電タブを介して弾接することができる。つまり、外装体内部で電極組立体に生じ得る外力に対して、集電タブに反力が生じるため、外装体内部における電極組立体の移動(例えば、中心軸X
c-X
c’を基準とした軸方向移動および周方向移動/
図2参照)を防ぐことができる。したがって、二次電池における短絡および集電タブの破損を防止することができる。
【0066】
本開示における「屈曲形状」とは、広義には、断面視において、凸状を成すように大きく曲がる集電タブの形態を指している。狭義には、「屈曲形状」は、断面視において、電極組立体から突出する集電タブが折り返すように曲がって延在する形態を指している。
図3に示す例示態様でいえば、集電タブ6は外装体内側面300’から電極組立体200に向かって曲がる屈曲形状を成す部分K
1を有する。より具体的には、K
3を始点としてみた場合、電極組立体200からスペーサ4に向かい、その後屈曲形状を成す部分K
1を境に、スペーサ4から電極組立体200に向かって曲がっている。また、
図3に示す例示態様では、集電タブ6は電極組立体200から外装体内側面300’に向かって曲がる屈曲形状を成す部分K
2を有する。このような例示態様から分かるように、電極組立体から突出する集電タブは、外装体と電極組立体との間(好ましくは、外装体の内部に設けられたスペーサと電極組立体と間の空間)において蛇行するように延在している。
【0067】
本開示における「屈曲形状」は、湾曲状および/または折曲状に代表される屈曲形状を包含し得る。「湾曲状」とは、
図3におけるK
1およびK
2に示すように、断面視において、湾状(または弓状)に曲がること(すなわち略曲線的に曲がること)であって、丸みを帯びた曲がりをもたらし、撓曲も包含する。「折曲状」は、断面視において、鋭角に折れ曲がること(すなわち略直線的に曲がること)である。衝撃吸収性の向上を図り易くなる観点から、「屈曲形状」は湾曲状を成していることが好ましい。つまり、集電タブの屈曲形状は、弓状に曲がる湾曲形状であってよい。
図3に示す例示態様でいえば、屈曲形状を成す部分K
1およびK
2における屈曲形状が湾曲状を成している。
【0068】
なお、図示する態様から分かるように、本開示における「屈曲形状」は、「折返し形状」、「略U字(または略V字)形状」、「極大点を有する曲線形状」または「鋭角を成して曲がる形状」などと称すことも可能である。
【0069】
集電タブ6は、電極組立体200と外装体内側面300’との間で少なくとも1つの屈曲形状を成していてよく、複数(例えば、2つ)成していてもよい(
図3および
図4参照)。好ましくは、集電タブの屈曲形状を成す部分が少なくとも2つ設けられている。集電タブ6において屈曲形状を成す部分が少なくとも2つ設けられることで、集電タブ6のバネ弾性を向上させ、外装体内部における電極組立体の移動をより効果的に防ぎ易くなる。二次電池のコンパクト化の観点から、かかる集電タブ6における屈曲形状は5つ以下であってよい(例えば、正極集電タブまたは負極集電タブは、断面視において好ましくは2以上5以下の屈曲部を有していてよい)。また、内側集電タブにおける屈曲形状を成す部分の個数と、外側集電タブにおける屈曲形状を成す部分の個数とが異なっていてよい。例えば、外側集電タブにおける屈曲形状を成す部分の個数の方が、内側集電タブにおける屈曲形状を成す部分の個数よりも多くてよい。このような屈曲形状を成す部分の個数の違いによって集電タブのバネ弾性をより好適なものにしてもよい。
【0070】
例えば、二次電池400の断面視において、集電タブ6は、厚み方向に凸となるように屈曲形状を成す部分K
0を有していてよい(
図5A参照)。また、集電タブ6は、電極組立体200の最外層における電極から突出してよい(
図5A参照)。例えば、電極組立体200の最外層から当該組立体の積層方向に直交する方向に外側へと集電タブ6が突出していてよい。さらには、電極組立体200の内層における電極から突出してもよい(
図5B参照)。つまり、電極組立体200において最外層を成していない非最外層の電極から外側に向けて集電タブ6が突出していてよい。集電タブ6が電極組立体200の内層における電極から突出している場合、3つの屈曲形状を成す部分(すなわち、K
0、K
1およびK
2)を有していてもよい(
図5C参照)。電極組立体200は平面積層型電極組立体であってよく、その場合、各電極から突出したサブ集電タブを結束して集電タブ6を成していてよい(
図5D参照)。このような平面積層型の電極組立体200が用いられる場合(
図1A参照)、正極および負極の各々において、電極間を電気的に接続するタブとは別個に集電タブ6が設けられてもよい。
【0071】
図2に示す態様から分かるように、平面視において内側集電タブ61と外側集電タブ62とが互いに同じ方向に突出して並んで延在していることが好ましい。図示するように、平面視において内側集電タブ61と外側集電タブ62とが互いに略平行に突出していることが好ましい。このようになっていると、内側集電タブと外側集電タブとの相対的な長さの違いおよびそれらの屈曲形状と相俟って、外装体内部における電極組立体の移動をより効果的に防ぎ易くなる。
【0072】
一実施形態では、電極組立体は、集電タブが突出する端面において、セパレータが正極および負極よりも外側に延在しているセパレータ延在部を有し、集電タブの屈曲形状を成す部分がかかるセパレータ延在部と接している。セパレータ延在部は、特に電極組立体の積層方向に直交する方向において、正極層および負極層よりも外側に延在している。正極層および負極層の電極層の端部を超えてセパレータが延在する部分がセパレータ延在部に相当するといえる。
図3に示す例示態様でいえば、電極組立体200は、集電タブ6が突出する端面200’において、セパレータ3が正極1および負極2よりも延在しているセパレータ延在部30を有している。ここで、集電タブ6の屈曲形状を成す部分K
2がセパレータ延在部30と接している。
図3に示すように、集電タブ6の屈曲形状を成す部分のうち折返し箇所がセパレータ延在部30と接していてよい。
【0073】
上述のような構成とすることで、屈曲形状を成す部分K
2が支点となり、集電タブ6の弾性を向上させることができる。また、セパレータ延在部30が緩衝材として働き、集電タブ6に生じ得る衝撃を吸収し易くなる。セパレータ延在部30は、複数のセパレータ3が互いに集束した構造を有していてよい(
図3、
図4および
図5A~D参照)。あるいは、セパレータ延在部30は、そのような集束を有していなくてもよい(
図5E参照)。
【0074】
一実施形態では、電極組立体200は、正極、負極およびセパレータが巻回されている巻回型電極組立体である(
図1B参照)。電極組立体200が巻回されて成ることで、セパレータ延在部30を巻回軸に向かって集束した構造とすることができる(
図3など参照)。また、各セパレータ3が中空部分(例えば空気層)を介して積層することで、セパレータ延在部30によりクッション性をよりもたせることができる。それによっても、かかるセパレータ延在部30が、集電タブ6に生じ得る衝撃をより効果的に吸収し易くなる。
【0075】
一実施形態では、セパレータ延在部30の少なくとも一部が、巻回の外周側に凸な屈曲形状を成している(
図3など参照)。より具体的には、セパレータ延在部30の少なくとも一部で、巻回の外周側に凸な屈曲形状を成す部分K
3を有している。それによって、各セパレータ3間により多くの中空部分を介在させることができ、セパレータ延在部30に特にクッション性をもたせ易くなる。ここで、「外周側に凸な屈曲形状」とは、断面視において、巻回方向の内周側から外周側に向かって突き出た屈曲形状を指す。
【0076】
一実施形態では、電極組立体200は、セパレータ延在部30が集束して成る集束部分30Bを有しており、集電タブ6の屈曲形状を成す部分K
2が集束部分30Bと接している(
図5F参照)。ここで、「集束部分30B」とは、セパレータ3が電極組立体200の巻回軸に向かって集束されている部分であり、電極組立体の端面200’の中心部に位置付けられる。屈曲形状を成す部分がかかる集束部分と接することによって、電極組立体の中心部分に支点が形成されるため、電池構成部材間の構造安定性をより高めることができる。
【0077】
オプションとして、二次電池400には、電極組立体200と外装体内側面300’との間に、それら部材間の絶縁のためのスペーサ4が設けられていてもよい(
図3など参照)。かかる場合、相対的に長さ寸法が異なる内側集電タブと外側集電タブとの双方が、外装体内部においてスペーサ4を介して蛇行するように延在していてよい。例えばスペーサが集電タブのための開口部または凹部を有しており、そのような開口部または凹部を介して集電タブ6がスペーサ4を跨ぐように延在していてよい。
【0078】
一実施形態では、集電タブにおいて少なくとも屈曲形状を成す部分に絶縁材が設けられている。そのような構成とすることで、絶縁材の弾性により集電タブの弾性が向上し、衝撃をより吸収することができる。また、集電タブ、電極組立体および外装体間の絶縁性をより高めることができる。例えば、断面視において、集電タブの屈曲部の内側部分および/または外側部分に絶縁材の部材(特にタブと共に層状を成す絶縁材の部材)が設けられてよい。絶縁材としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ならびに/またはポリオレフィン(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)などの絶縁ポリマー材料が挙げられる。より意図した屈曲形状を持たせる観点から、絶縁材はポリプロピレンから成ることが好ましい。
【0079】
本発明に係る二次電池400では、内側集電タブと外側集電タブとの間でバネ弾性が異なっていてよい。つまり、内側集電タブ61のバネ弾性と外側集電タブ62のバネ弾性とは互いに異なっていてよい。集電タブ間でバネ弾性が異なっていると、外装体内部における電極組立体の移動をより効果的に防ぎ易くなる。
【0080】
一実施形態では、内側集電タブのバネ弾性に対して、外側集電タブのバネ弾性が高い。内側集電タブのバネ弾性に対して外側集電タブのバネ弾性が高いことで、外装体内部で電極組立体に生じ得る特に周方向の外力に対して、集電タブに生じ得る反力をより高めることができる。それによって、外装体内部で電極組立体が特に周方向に移動することを防ぐことができる。
【0081】
上述した態様における内側集電タブのバネ弾性と外側集電タブのバネ弾性との比較は、バネ定数を基準としてよい。換言すると、内側集電タブのバネ定数に対して、外側集電タブのバネ定数が大きくなっていてよい。
【0082】
集電タブのバネ定数とは、電極組立体から突出する集電タブの端部に変位を加えた場合に生じる荷重をかかる変位で割った比例定数である。より具体的には、バネ定数は、以下の手順で求めてもよい(
図6参照)。
・電極組立体200から突出する集電タブ6の端部に、電極組立体200の端面200’に略平行に位置付けた板状材7を位置付ける(Y
0の位置に相当)。
・端面200’からの距離が1mmの位置(Y
1の位置に相当)まで板状材7を変位させる。
・上述のように加えた変位yから生じる荷重Pを検出し、変位yおよび荷重Pを以下の式(1)に代入することで求めることができる。
k(N/mm)=P(N)/y(mm) 式(1)
【0083】
集電タブのバネ定数は、電極組立体から突出する集電タブの端部に荷重を加えた場合に生じる変位をかかる荷重で割った比例定数として求めてもよい。
【0084】
一実施形態では、集電タブのバネ定数は、0.1N/mm以上3.0N/mm以下である。かかるバネ定数がそのような範囲内であると、集電タブのハンドリング性を保持しつつ、バネ弾性に優れたものとすることができる。内側集電タブのバネ定数は、0.1N/mm以上1.5N/mm以下であり、外側集電タブのバネ定数は、0.2N/mm以上3.0N/mm以下であることが好ましい。
【0085】
内側集電タブに対して外側集電タブの剛性が高いことが好ましい。内側集電タブに対して外側集電タブの剛性が高いことで、外側集電タブの特に周方向の移動距離を減じ、かかるタブの位置ズレおよび/または破損をより効果的に防止することができる。
【0086】
また、内側集電タブに対して外側集電タブの耐破断性が高いことが好ましい。内側集電タブに対して外側集電タブの耐破断性が高いことで、より移動距離が長くなり得る外側集電タブが破損することをより効果的に防止することができる。
【0087】
集電タブの剛性および耐破断性は、集電タブの材料特性および/または形状によって調整することができる。
【0088】
一実施形態では、内側集電タブのヤング率に対して、外側集電タブのヤング率が高い。集電タブのヤング率は、50GPa以上300GPa以下であることが好ましい。かかるヤング率がそのような範囲内であると、集電タブのハンドリング性を保持しつつ、弾性および剛性に優れたものとすることができる。内側集電タブのヤング率は、50GPa以上200GPa以下であることが好ましく、例えば50GPa以上150GPa以下である。外側集電タブのヤング率は、100GPa以上300GPa以下であることが好ましく、例えば150GPa以上250GPaである。
【0089】
集電タブのヤング率は、JIS規格(JIS R 1602)に則った手法により測定した値を指してよい。ヤング率の測定には卓上形精密万能試験機(島津製作所製 型番AGS-5kNX)を使用してもよい。
【0090】
一実施形態では、内側集電タブの引張強度に対して、外側集電タブの引張強度が高い。集電タブの引張強度は、50N/mm2以上1000N/mm2であることが好ましい。かかるヤング率がそのような範囲内であると、集電タブのハンドリング性を保持しつつ、より破断し難い集電タブとすることができる。内側集電タブの引張強度は、50N/mm2以上600N/mm2以下であり、外側集電タブの引張強度は、300N/mm2以上1000N/mm2以下であることが好ましい。
【0091】
集電タブの引張強度は、JIS規格(JIS Z 2241)に則った手法により測定した値を指してよい。
【0092】
本発明に係る二次電池において、内側集電タブ61の長さ寸法L
Iに対して、外側集電タブ62の長さ寸法L
Oが大きい(
図7A参照)。集電タブの長さ寸法は、タブを伸ばした状態(すなわち、非屈曲状態)において、1mm以上30mm以下であることが好ましい。長さ寸法が1mm以上であると、より長さ寸法にバッファーを持たせることができ、またより容易に屈曲形状(特に、複数の屈曲形状)を形成することができる。長さ寸法が30mm以下であると、二次電池をよりコンパクト化することができる。また、集電タブのハンドリング性をより向上させることができる。内側集電タブの長さ寸法は、1mm以上10mm以下であり、外側集電タブの長さ寸法は、5mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0093】
一実施形態では、内側集電タブ61の幅寸法W
Iに対して、外側集電タブ62の幅寸法W
Oが大きい(
図7B参照)。集電タブの幅寸法は、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。幅寸法が0.5mm以上であると、集電タブを弾性および剛性により優れたものとすることができる。幅寸法が10mm以下であると、二次電池をよりコンパクト化することができる。また、集電タブのハンドリング性をより向上させることができる。内側集電タブの幅寸法は、0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、外側集電タブの幅寸法は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0094】
一実施形態では、内側集電タブ61の厚み寸法T
Iに対して、外側集電タブ62の厚み寸法T
Oが大きい(
図7C参照)。集電タブの厚み寸法は、10μm以上3mm以下であることが好ましい。厚み寸法が10μm以上であると、集電タブをより弾性および剛性に優れたものとすることができる。厚み寸法が3mm以下であると、二次電池をよりコンパクト化することができる。また、集電タブのハンドリング性をより向上させることができる。内側集電タブの厚み寸法は、10μm以上1mm以下であり、外側集電タブの厚み寸法は、50μm以上3mm以下であることが好ましい。
【0095】
上述する集電タブの形状に関連するパラメータ(すなわち、長さ寸法、幅寸法および厚み寸法)は、マイクロメータ(Mitsutoyo社製 型番MDH-25MB)、またはハイトゲージを用いて測定した寸法、またはその寸法から算出した値を指してよい。
【0096】
集電タブの長さ寸法は、電極組立体200の平面視において、端面200’(例えば、セパレータ延在部)をベースラインBとして測定してよい(
図7A参照)。また、集電タブに絶縁材が設けられている場合、絶縁材を除して測定してよい。
【0097】
一実施形態では、本発明に係る二次電池における集電タブは、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅および金から成る群から選択される少なくとも一種を含んで成る。そのような構成とすることで、導電性および弾性により優れたものとすることができる。内側集電タブは、アルミニウムから成っていてよい。外側集電タブは、銅および/またはニッケルから成っていてよい。
【0098】
[本発明に係る二次電池の製造方法]
本発明に係る二次電池は、以下の工程を含む製造方法により、製造することができる。つまり、本発明に係る二次電池の製造方法は、正極、負極および該正極と該負極との間に配置されたセパレータを、正負極の集電タブの平面視配置が非対称となるように積層または巻回し、電極組立体の前駆体を得る工程(電極の組立工程)、ならびに電極組立体およびスペーサを外装体に収容させつつ、電極組立体と外装体内側面との間で屈曲形状を成すように集電タブを形成し、外装体内に電解質を注入する工程(収容工程)を含む。
【0099】
(電極の組立工程)
本工程においては、
図8に示すように、正極1、負極2および矩形状を有するセパレータ3を所定の順序で配置して積層または巻回することで電極組立体の前駆体を得る。
図9Aに示すように、電極組立体の前駆体は、正極1、負極2およびセパレータ3を厚み方向に積層した平面積層型電極組立体200(
図1A参照)としてよい。または
図9Bのように、電極組立体の前駆体は、正極1、負極2およびセパレータ3を巻回して巻回型電極組立体200(
図1B参照)としてもよい。以下では、巻回型電極組立体の組立工程について説明する。
【0100】
まずは、正極集電体11の一方の側に正極集電タブ61が取り付けられた正極1、負極集電体21の一方の側に負極集電タブ62が取り付けられた負極2および2枚の矩形状を有するセパレータ3を所定の順序で配置して巻き回す(
図9B参照)。巻回時において、セパレータ3に所定のテンションを印加することにより、セパレータ延在部においてセパレータ3がその先端に向かって巻回軸Pへ向かって集束する(または互いに接近する)電極組立体の前駆体が得られる。巻回時にセパレータ3に印加されるテンションは通常、0.1N以上10N以下であり、集束の観点から、好ましくは0.5N以上3.0N以下である。
【0101】
使用されるセパレータ3の寸法は、所望の電極組立体が得られる限り特に限定されない。例えば、セパレータ3の幅手方向rの長さ寸法w1は通常、正極1または負極の巻回軸方向長さに対して、105%以上400%以下であることが好ましく、例えば120%以上200%以下である(
図8参照)。また例えば、セパレータ3の長手方向sの長さ寸法w2は、目的とする二次電池の寸法(特に電極組立体の巻回数)に応じて、適宜決定されてよい。
【0102】
本工程の後に、巻回型電極組立体の前駆体を、所望により、巻回体の直径方向にプレスすることにより、略偏平柱形状に成形してもよい。
【0103】
(収容工程)
先の工程において得られた電極組立体200およびスペーサを外装体300に収容させつつ、集電タブ61および62を電極端子5
1および5
2にそれぞれ溶着し、外装体300内に注入口を介して電解質を注入する(
図2参照)。以下、外装体300が外装体本体部および外装体蓋部から構成され、外装体300の1の面に電極端子5および電極端子構造体5’が設けられている場合について詳細に説明する。
【0104】
まずは、
図3および
図4に示すように、集電タブ6(すなわち、正極集電タブ61および負極集電タブ62)が、外装体内側面300’から電極組立体200に向かって曲がる屈曲形状を成す部分K
1、および電極組立体200から外装体内側面300’に向かって曲がる屈曲形状を成す部分K
2を成すように、集電タブ6を予め仮曲げして形状を整える。
【0105】
次いで、電極組立体200(および、オプションとしてスペーサ4)を外装体本体部へと収容する。正極集電タブ61の外装体内側面300’側に延在する一端を電極端子構造体5’(すなわち、正極端子)の内側端子51に溶着させる(
図3参照)。同様に、負極集電タブ62の外装体300側に延在する一端を、外装体300内側の負極端子5
2に対応する位置に溶着させる(
図4参照)。
【0106】
次いで、外装体本体部と外装体蓋部とを溶着する。最後に、電解質を注入口から注入し、注入口を封止プラグで閉塞すればよい。溶着は、二次電池の分野で公知のあらゆる方法によって達成されてもよく、例えば、レーザー照射法を用いてもよい。
【0107】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを当業者は容易に理解されよう。
【0108】
例えば、上記説明においては、主に外装体が導電性ハードケースである二次電池を中心にして説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されない。本発明に係る二次電池の外装体は、ラミネートフィルムからなるパウチなどのフレキシブルケースであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る二次電池は、蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、二次電池は、電気・電子機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパー、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【0110】
本発明に係る二次電池は、特に衝撃または熱が電池に加えられた場合に生じ得る短絡を防止することができる。したがって、本発明に係る二次電池は、全方位から衝撃または熱がかかり得るモバイル機器用途に特に好ましく利用できる。
【符号の説明】
【0111】
1:正極
11:正極集電体
12:正極材層
2:負極
21:負極集電体
22:負極材層
3:セパレータ
30:セパレータ延在部
30B:セパレータ集束部分
4:スペーサ
5:電極端子
51:正極端子
52:負極端子
5’:電極端子構造体
50:リベット部
51:内側端子
52:ガスケット部
6:集電タブ
61:正極集電タブ(内側集電タブ)
62:負極集電タブ(外側集電タブ)
63:絶縁材
7:板状材
100:電極構成単位
200:電極組立体
200’:集電タブが突出する端面
300:外装体
300’:外装体内側面
400:二次電池