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特許7124996伸縮性配線基板及び生体貼り付けデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】伸縮性配線基板及び生体貼り付けデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
H05K1/02 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022537096
(86)(22)【出願日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2021040293
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020195163
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】勝 勇人
(72)【発明者】
【氏名】竹島 裕
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-143257(JP,A)
【文献】特開2016-219543(JP,A)
【文献】特開2017-152687(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0219696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性基材と、
前記伸縮性基材の一方主面側で長さ方向に延びる第1伸縮性配線と、
前記伸縮性基材の前記一方主面側で前記長さ方向に延び、かつ、一方端部側で前記第1伸縮性配線上に重なる第2伸縮性配線と、を備え、
前記第2伸縮性配線は、前記長さ方向において、前記一方端部側に位置する第1部分と、前記第1部分に隣接する第2部分と、を有し、
前記第2伸縮性配線の前記第1部分は、前記第1伸縮性配線及び前記第2伸縮性配線が重なる領域を少なくとも有し、
前記長さ方向に直交する幅方向における寸法を幅と定義したとき、前記第2伸縮性配線の前記第1部分の幅は、前記第1伸縮性配線の幅よりも小さ く、
前記第2伸縮性配線の前記第2部分の幅は、前記第2伸縮性配線の前記第1部分の幅よりも大きい 、ことを特徴とする伸縮性配線基板。
【請求項2】
前記長さ方向及び前記幅方向に直交する厚み方向における寸法を厚みと定義したとき、前記第1伸縮性配線及び前記第2伸縮性配線を一体化した状態において、前記第2伸縮性配線の前記第1部分が存在する領域での最大厚みは、前記第2伸縮性配線の前記第1部分が存在しない領域での最大厚みよりも大きい、請求項1に記載の伸縮性配線基板。
【請求項3】
前記第2伸縮性配線の前記第1部分は、前記第1伸縮性配線及び前記第2伸縮性配線が重なる領域と、前記第1伸縮性配線及び前記第2伸縮性配線が重ならない領域とにわたって存在している、請求項1又は2に記載の伸縮性配線基板。
【請求項4】
前記第2伸縮性配線の前記第1部分において前記長さ方向の中心位置で定められる幅と、前記第2伸縮性配線の前記第2部分の幅との差は、30μm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の伸縮性配線基板。
【請求項5】
前記第2伸縮性配線の前記第1部分において前記長さ方向の中心位置で定められる幅と、前記第1伸縮性配線の幅との差は、30μm以上である、請求項1~のいずれかに記載の伸縮性配線基板。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の伸縮性配線基板を備える、ことを特徴とする生体貼り付けデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性配線基板及び生体貼り付けデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配線基板を用いて生体情報を取得及び解析することにより、生体(例えば、人体)の状態等を管理することが行われている。
【0003】
このような配線基板では、2つの配線が、一部同士が重なるように設けられることがある。このような2つの配線を形成する際、例えば、まず、スクリーン印刷法により、一方配線用の導電性ペーストを印刷した後、熱処理を行うことにより、一方配線を形成する。その後、他方配線用の導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、一方端部側で一方配線上に重なるように印刷する。しかしながら、他方配線用の導電性ペーストを印刷する際、一方配線の段差の影響により、スクリーン印刷版の押さえが充分に働かず、他方配線用の導電性ペーストが幅方向に流れてしまう印刷ニジミが発生することがある。
【0004】
スクリーン印刷時の印刷ニジミを抑制する方法として、特許文献1には、多層配線板の製造方法において、絶縁基板上に2つの分離した絶縁体層を形成し、2つの絶縁体層間を充たすように抵抗体インクを塗布して幅が2つの絶縁体層によって規制される抵抗体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-353876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配線基板の製造時に、2つの配線を一部同士が重なるように形成する際、特許文献1に記載の方法を利用して、予め形成された2つの絶縁体層間に、一方配線を形成した後で他方配線用の導電性ペーストを印刷すると、他方配線用の導電性ペーストの印刷ニジミが2つの絶縁体層によって抑制される、と考えられる。
【0007】
しかしながら、配線基板に上述した絶縁体層が設けられていると、絶縁体層が設けられた領域の面内剛性が高くなってしまう。配線基板が生体に貼り付けられた状態で用いられる場合、その配線基板には生体の動きに追従可能な伸縮性が求められるが、上述した絶縁体層が設けられた配線基板を伸縮させると、絶縁体層が設けられた領域の面内剛性が高いことに起因して、絶縁体層が設けられた領域に応力が集中してしまう。そのため、配線基板の伸縮時に、配線全体が均一に伸縮せず、配線の抵抗上昇が生じてしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、印刷ニジミによる影響が抑制されつつ、伸縮時の配線の抵抗上昇を抑制可能な伸縮性配線基板を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記伸縮性配線基板を有する生体貼り付けデバイスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の伸縮性配線基板は、伸縮性基材と、上記伸縮性基材の一方主面側で長さ方向に延びる第1伸縮性配線と、上記伸縮性基材の上記一方主面側で上記長さ方向に延び、かつ、一方端部側で上記第1伸縮性配線上に重なる第2伸縮性配線と、を備え、上記第2伸縮性配線は、上記一方端部側に位置する第1部分を有し、上記第2伸縮性配線の上記第1部分は、上記第1伸縮性配線及び上記第2伸縮性配線が重なる領域を少なくとも有し、上記長さ方向に直交する幅方向における寸法を幅と定義したとき、上記第2伸縮性配線の上記第1部分の幅は、上記第1伸縮性配線の幅よりも小さい、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の生体貼り付けデバイスは、本発明の伸縮性配線基板を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷ニジミによる影響が抑制されつつ、伸縮時の配線の抵抗上昇を抑制可能な伸縮性配線基板を提供できる。また、本発明によれば、上記伸縮性配線基板を有する生体貼り付けデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の伸縮性配線基板の一例を部分的に示す平面模式図である。
図2図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図3図1中の第1伸縮性配線の構成を説明するための平面模式図である。
図4図1中の第2伸縮性配線の構成を説明するための平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の伸縮性配線基板について説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0014】
図1は、本発明の伸縮性配線基板の一例を部分的に示す平面模式図である。図2は、図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、伸縮性配線基板1は、伸縮性基材10と、第1伸縮性配線20と、第2伸縮性配線30と、を有している。
【0016】
本明細書中、長さ方向、厚み方向、及び、幅方向を、図1及び図2に示すように、各々、L、T、及び、Wで定められる方向とする。長さ方向Lと厚み方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。図1及び図2において、長さ方向L及び幅方向Wは伸縮性基材10の一方主面11aに沿う方向であり、厚み方向Tは伸縮性基材10の一方主面11aに直交する方向である。
【0017】
本明細書中、長さ方向、厚み方向、及び、幅方向における寸法は、各々、長さ、厚み、及び、幅と定義される。また、各部の長さ、厚み、及び、幅は、特に断らない限り、伸縮性配線基板を伸縮させていない状態のものとして示される。各部の長さ、厚み、及び、幅は、各々、伸縮性配線基板を光学顕微鏡で平面視又は断面視することにより測定される。なお、各部の厚みは、接触式膜厚測定機又は非接触式膜厚測定機で測定されてもよい。
【0018】
伸縮性基材10は、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、及び、オレフィン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。ウレタン系樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が挙げられる。
【0019】
伸縮性配線基板1が生体に貼り付けられる場合、生体表面の伸縮を阻害しない観点から、伸縮性基材10の厚みは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。また、伸縮性基材10の厚みは、好ましくは10μm以上である。
【0020】
図3は、図1中の第1伸縮性配線の構成を説明するための平面模式図である。図3は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30のうち、第1伸縮性配線20に着目した状態を示している。以下では、図1及び図2に加えて図3も参照しつつ、第1伸縮性配線20について説明する。
【0021】
第1伸縮性配線20は、伸縮性基材10の一方主面11a側で長さ方向Lに延びている。より具体的には、第1伸縮性配線20は、伸縮性基材10の一方主面11a上に設けられつつ、長さ方向Lに延びている。
【0022】
第1伸縮性配線20は、一方端部20a側で第2伸縮性配線30下に重なっている。より具体的には、第1伸縮性配線20は、一方端部20a側で、伸縮性基材10と第2伸縮性配線30との間に厚み方向Tに挟まれている。このような状態で、第1伸縮性配線20と第2伸縮性配線30とは接続されている。
【0023】
第1伸縮性配線20は、長さ方向Lにおいて、一方端部20a側に位置する第1部分21と、第1部分21に隣接する第2部分22と、を有している。
【0024】
第1伸縮性配線20の第1部分21は、図3に示すように、第2伸縮性配線30に重なる部分21aと、第2伸縮性配線30に重ならない部分21bと、を有している。より具体的には、第1伸縮性配線20の第1部分21は、後述する第2伸縮性配線30の第1部分31に重なる部分21aと、第2伸縮性配線30の第1部分31に重ならない部分21bと、を有している。
【0025】
第1伸縮性配線20の第1部分21のうちで、第2伸縮性配線30に重なる部分21aと、第2伸縮性配線30に重ならない部分21bとは、長さ方向Lにおける寸法が互いに同じである。言い換えれば、第1伸縮性配線20の第1部分21のうちで、第2伸縮性配線30に重なる部分21aと、第2伸縮性配線30に重ならない部分21bとは、長さ方向Lにおける寸法が、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重なる領域E1と同じである。
【0026】
図4は、図1中の第2伸縮性配線の構成を説明するための平面模式図である。図4は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30のうち、第2伸縮性配線30に着目した状態を示している。以下では、図1及び図2に加えて図4も参照しつつ、第2伸縮性配線30について説明する。
【0027】
第2伸縮性配線30は、伸縮性基材10の一方主面11a側で長さ方向Lに延びている。より具体的には、第2伸縮性配線30は、一部を除いて伸縮性基材10の一方主面11a上に設けられつつ、長さ方向Lに延びている。
【0028】
第2伸縮性配線30は、一方端部30a側で第1伸縮性配線20上に重なっている。より具体的には、第2伸縮性配線30は、一方端部30a側で、第1伸縮性配線20を伸縮性基材10との間で厚み方向Tに挟んでいる。
【0029】
第2伸縮性配線30が一方端部30a側で第1伸縮性配線20上に重なっていることは、伸縮性配線基板1を光学顕微鏡で平面視することにより分かる。
【0030】
第2伸縮性配線30は、一方端部30a側に位置する第1部分31を有している。
【0031】
第2伸縮性配線30の第1部分31は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重なる領域E1を少なくとも有している。また、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1は、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さい。
【0032】
従来の伸縮性配線基板の製造時に、第2伸縮性配線を一方端部側で第1伸縮性配線上に重なるように形成する際、例えば、まず、第1伸縮性配線用の導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、伸縮性基材の一方主面上に長さ方向に印刷した後、熱処理を行うことにより、第1伸縮性配線を形成する。次に、第2伸縮性配線用の導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、伸縮性基材の一方主面上に長さ方向に印刷しつつ、一方端部側で第1伸縮性配線上に重なるように印刷する。この際、第1伸縮性配線による段差が長さ方向に存在するため、その段差近傍の領域においてスクリーン印刷版と伸縮性基材とが密着しにくくなり、結果的に、第2伸縮性配線用の導電性ペーストの印刷ニジミが発生する。また、第1伸縮性配線による段差は幅方向にも存在するため、第2伸縮性配線用の導電性ペーストが幅方向にずれて印刷されると、長さ方向に存在する段差だけでなく、幅方向に存在する段差も影響することにより、第2伸縮性配線用の導電性ペーストの印刷ニジミが発生する。第2伸縮性配線用の導電性ペーストの印刷ニジミが発生すると、形成される第2伸縮性配線の幅が、第1伸縮性配線に重なる領域で大きくなりやすくなるため、周囲に存在する他の伸縮性配線に接触して短絡するおそれがある。
【0033】
これに対して、伸縮性配線基板1では、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1が、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さい。つまり、伸縮性配線基板1の製造時に第2伸縮性配線30を形成する際、第1伸縮性配線20による段差が影響することで、第2伸縮性配線30用の導電性ペーストの印刷ニジミが発生していたとしても、印刷ニジミによる影響が現れやすい第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1が、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さくなっている。そのため、伸縮性配線基板1では、印刷ニジミによる影響が抑制されていると言える。
【0034】
従来の伸縮性配線基板において、2つの伸縮性配線が重なる領域では、2つの伸縮性配線が重ならない他の領域よりも面内剛性が高くなりやすい。これに対して、伸縮性配線基板1では、領域E1全体に少なくとも存在する第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1が、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さくなっているため、領域E1で面内剛性が高くなることが抑制されている。よって、伸縮性配線基板1では、伸縮時に領域E1に応力が集中することが抑制されるため、伸縮時の第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の抵抗上昇を抑制できる。
【0035】
上述したように、第2伸縮性配線30の第1部分31は、領域E1を少なくとも有し、かつ、幅P1が第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さい部分である。第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1は、第2伸縮性配線30の第1部分31において種々の位置で定められてもよい。そのうち、図1に示すように、第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’は、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さいことはもちろんであるが、第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’と、第1伸縮性配線20の幅Qとの差は、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、第2伸縮性配線30の第1部分31の耐久性の観点から、第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’と、第1伸縮性配線20の幅Qとの差は、第1伸縮性配線20の幅Qの半分以下であることが好ましい。
【0036】
第1伸縮性配線20の幅Qは、第1伸縮性配線20の最小幅で定められる。第1伸縮性配線20の幅Qは、図1に示すように、第1伸縮性配線20の第1部分21で定められることが好ましい。一方、図1に示すように、第1伸縮性配線20の幅が、第1部分21と第2部分22とにわたってほぼ一定であるとみなせる場合は、第1伸縮性配線20の第1部分21と第2部分22との境界から第2部分22側に2mm離れた位置で定められる第1伸縮性配線20の幅Q’が、第1伸縮性配線20の幅Qとして代表的に定められてもよい。
【0037】
第2伸縮性配線30の第1部分31は、図1及び図2に示すように、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重なる領域E1と、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重ならない領域E2とにわたって存在していることが好ましい。この場合、印刷ニジミによる影響が、領域E1から領域E2にわたって広範囲で抑制されていると言える。また、第2伸縮性配線30の第1部分31のうち、領域E2に存在している部分の長さは、好ましくは100μm以上、300μm以下である。
【0038】
なお、第2伸縮性配線30の第1部分31は、領域E1のみに存在していてもよい。
【0039】
第2伸縮性配線30は、図1及び図2に示すように、長さ方向Lにおいて、第1部分31と、第1部分31に隣接する第2部分32と、を有していることが好ましい。この場合、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2は、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1よりも大きいことが好ましい。
【0040】
第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’は、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2よりも小さいことが好ましいのはもちろんであるが、第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’と、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2との差は、30μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。また、第2伸縮性配線30の第1部分31の耐久性の観点から、第2伸縮性配線30の第1部分31において長さ方向Lの中心位置で定められる幅P1’と、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2との差は、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2の半分以下であることが好ましい。
【0041】
第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2は、第1伸縮性配線20の幅Qと同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0042】
第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2は、第2伸縮性配線30の第2部分32の最小幅で定められる。一方、図1に示すように、第2伸縮性配線30の幅が、第2部分32において長さ方向Lに沿った各位置でほぼ一定であるとみなせる場合は、第2伸縮性配線30の第1部分31と第2部分32との境界から第2部分32側に2mm離れた位置で、第2伸縮性配線30の第2部分32の幅P2が代表的に定められてもよい。
【0043】
なお、第2伸縮性配線30は、第1部分31のみを有していてもよい。この場合、第2伸縮性配線30は、すべての領域にわたって、第1伸縮性配線20の幅Qよりも幅が小さい状態であると言える。
【0044】
伸縮性配線基板1では、上述したように、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1が、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さくなっている。そのため、第2伸縮性配線30の第1部分31の耐久性が低下することで、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30を一体化した状態において、第2伸縮性配線30の第1部分31が存在する領域F1での耐久性が低下するおそれがある。
【0045】
これに対して、伸縮性配線基板1では、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30を一体化した状態において、図2に示すように、第2伸縮性配線30の第1部分31が存在する領域F1での最大厚みRは、第2伸縮性配線30の第1部分31が存在しない領域F2(後述する領域F2a及び領域F2b)での最大厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1が第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さくなっていても、領域F1での耐久性の低下が抑制されるため、伸縮時に領域F1に応力が加わっても、伸縮時の第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の抵抗上昇が抑制される。
【0046】
第2伸縮性配線30が第1部分31及び第2部分32を有している場合、図1図2図3、及び、図4に示すように、第2部分32の存在により、耐久性の低下が懸念される領域F1の範囲が広くなり過ぎずに制限可能となる。そのため、伸縮性配線基板1において、領域F1での耐久性を極力確保しつつ、伸縮時の第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の抵抗上昇を抑制できる。
【0047】
第2伸縮性配線30が第1部分31及び第2部分32を有している場合、図1図2図3、及び、図4に示すように、領域F2は、第1伸縮性配線20のみが存在する領域F2aと、第2伸縮性配線30のみが存在する領域F2bと、を含んでいる。
【0048】
領域F2aは、図3及び図4に示すように、第1伸縮性配線20の第1部分21のうちで第2伸縮性配線30に重ならない部分21bと、第1伸縮性配線20の第2部分22とが存在する領域である。
【0049】
領域F2bは、図3及び図4に示すように、第2伸縮性配線30の第2部分32が存在する領域である。
【0050】
領域F2での最大厚みは、領域F2a及び領域F2bで定められる。つまり、領域F1での最大厚みRが領域F2での最大厚みよりも大きいとは、領域F1での最大厚みRが、領域F2aでの最大厚みS1及び領域F2bでの最大厚みS2よりも大きいことを意味する。
【0051】
領域F2aでの最大厚みS1と領域F2bでの最大厚みS2とは、互いに同じであることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。
【0052】
領域F2aでの最大厚みS1は、領域F2aにおける第1伸縮性配線20の最大厚みで定められる。一方、図2に示すように、第1伸縮性配線20の厚みが、領域F2aにおいて長さ方向Lに沿った各位置でほぼ一定であるとみなせる場合は、第1伸縮性配線20の第1部分21と第2部分22との境界から第2部分22側に2mm離れた位置で、領域F2aでの最大厚みS1が代表的に定められてもよい。
【0053】
領域F2bでの最大厚みS2は、領域F2bにおける第2伸縮性配線30の最大厚みで定められる。一方、図2に示すように、第2伸縮性配線30の厚みが、領域F2bにおいて長さ方向Lに沿った各位置でほぼ一定であるとみなせる場合は、第2伸縮性配線30の第1部分31と第2部分32との境界から第2部分32側に2mm離れた位置で、領域F2bでの最大厚みS2が代表的に定められてもよい。
【0054】
伸縮性配線基板1では、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30を一体化した状態において、領域F2bから領域F1に向かう方向で見たとき、図1及び図2に示すように、厚みが大きくなり始める位置Gが、領域F1と領域F2bとの境界に一致している。より具体的には、厚みが大きくなり始める位置Gは、第2伸縮性配線30の第1部分31と第2部分32との境界であって、第2伸縮性配線30の幅が小さくなり始める位置に一致している。
【0055】
厚みが大きくなり始める位置Gは、領域F1と領域F2bとの境界、より具体的には、第2伸縮性配線30の幅が小さくなり始める位置に対して、第1伸縮性配線20側にずれていてもよいし、第1伸縮性配線20と反対側にずれていてもよい。中でも、厚みが大きくなり始める位置Gが、領域F1と領域F2bとの境界に対して第1伸縮性配線20と反対側にずれていると、領域F1において厚みが大きい部分が増えるため、領域F1での耐久性の低下が充分に抑制される。
【0056】
第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30は、例えば、金属フィラー及び樹脂を含んでいる。
【0057】
第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30に含まれる金属フィラーとしては、例えば、銀フィラー、銅フィラー、ニッケルフィラー等が挙げられる。
【0058】
第1伸縮性配線20に含まれる金属フィラーと、第2伸縮性配線30に含まれる金属フィラーとは、金属の種類が互いに同じであることが好ましいが、金属の種類が互いに異なっていてもよい。
【0059】
第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30に含まれる金属フィラーの形状としては、例えば、板状、球状等が挙げられる。
【0060】
第1伸縮性配線20に含まれる金属フィラーと、第2伸縮性配線30に含まれる金属フィラーとは、形状が互いに同じであることが好ましいが、形状が互いに異なっていてもよい。
【0061】
第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30に含まれる樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー系樹脂であることが好ましい。
【0062】
第1伸縮性配線20に含まれる樹脂と、第2伸縮性配線30に含まれる樹脂とは、樹脂の種類が互いに同じであることが好ましいが、樹脂の種類が互いに異なっていてもよい。
【0063】
伸縮性配線基板1において、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の少なくとも一方は、図1及び図2に示した範囲以外の領域で、長さ方向L以外の方向に屈曲していてもよい。
【0064】
伸縮性配線基板1は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の少なくとも一方に接続された電極を更に有していてもよい。伸縮性配線基板1は、このような電極を介して生体に貼り付けられることにより、センサとして機能できる。
【0065】
電極は、ゲル電極であることが好ましい。ゲル電極を介することにより、伸縮性配線基板1の生体への貼り付けが容易になる。ゲル電極は、例えば、水、アルコール、保湿剤、電解質等を含む導電性のゲル材料から構成される。このようなゲル材料としては、例えば、ハイドロゲル等が挙げられる。
【0066】
伸縮性配線基板1には、電子部品が実装されていてもよい。より具体的には、伸縮性配線基板1に対して、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30の少なくとも一方には、電子部品が接続されていてもよい。
【0067】
電子部品としては、例えば、増幅器(オペアンプ、トランジスタ等)、ダイオード、集積回路(IC)、コンデンサ、抵抗器、インダクタ等が挙げられる。
【0068】
伸縮性配線基板1は、例えば、以下の方法で製造される。
【0069】
<第1伸縮性配線形成工程>
第1金属フィラー及び第1樹脂を含む第1導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、伸縮性基材10の一方主面11a上に長さ方向Lに印刷する。その後、第1導電性ペーストの印刷膜に対して熱処理を行うことにより、第1伸縮性配線20を形成する。
【0070】
第1金属フィラーとしては、例えば、銀フィラー、銅フィラー、ニッケルフィラー等が挙げられる。
【0071】
第1金属フィラーの形状としては、例えば、板状、球状等が挙げられる。
【0072】
第1樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー系樹脂であることが好ましい。
【0073】
第1導電性ペーストは、溶媒を更に含んでいてもよい。このような溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0074】
<第2伸縮性配線形成工程>
第2金属フィラー及び第2樹脂を含む第2導電性ペーストを、スクリーン印刷法により、伸縮性基材10の一方主面11a上に長さ方向Lに印刷しつつ、一方端部30a側で第1伸縮性配線20上に重なるように印刷する。この際、スクリーン印刷版のパターン、メッシュ等の仕様を調整することにより、第2導電性ペーストを、少なくとも第1伸縮性配線20上に重なる部分で、第1伸縮性配線よりも幅が小さくなるように印刷する。これにより、第1伸縮性配線20による段差が影響することで、第2導電性ペーストの印刷ニジミが発生したとしても、第2導電性ペーストの印刷後に、第2導電性ペーストにおける少なくとも第1伸縮性配線20上に重なる部分で、第1伸縮性配線よりも幅が小さくなるようにする。その後、第2導電性ペーストの印刷膜に対して熱処理を行うことにより、第2伸縮性配線30を形成する。
【0075】
このようにして形成された第2伸縮性配線30は、一方端部30a側に位置する第1部分31を有している。第2伸縮性配線30の第1部分31は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重なる領域E1を少なくとも有している。更に、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1は、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さくなっている。
【0076】
第2金属フィラーとしては、例えば、銀フィラー、銅フィラー、ニッケルフィラー等が挙げられる。
【0077】
第1金属フィラーと第2金属フィラーとは、金属の種類が互いに同じであることが好ましいが、金属の種類が互いに異なっていてもよい。
【0078】
第2金属フィラーの形状としては、例えば、板状、球状等が挙げられる。
【0079】
第1金属フィラーと第2金属フィラーとは、形状が互いに同じであることが好ましいが、形状が互いに異なっていてもよい。
【0080】
第2樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及び、シリコーン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエラストマー系樹脂であることが好ましい。
【0081】
第1樹脂と第2樹脂とは、樹脂の種類が互いに同じであることが好ましいが、樹脂の種類が互いに異なっていてもよい。
【0082】
第2導電性ペーストは、溶媒を更に含んでいてもよい。このような溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0083】
第1導電性ペースト及び第2導電性ペーストが溶媒を含む場合、第1導電性ペーストに含まれる溶媒と、第2導電性ペーストに含まれる溶媒とは、溶媒の種類が互いに同じであることが好ましいが、溶媒の種類が互いに異なっていてもよい。
【0084】
上述した方法では、第1導電性ペーストの印刷と、第1導電性ペーストの印刷膜に対する熱処理とを順に行うことにより、第1伸縮性配線20を形成した後、第2導電性ペーストの印刷と、第2導電性ペーストの印刷膜に対する熱処理とを順に行うことにより、第2伸縮性配線30を形成している。つまり、上述した方法では、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30を異なるタイミングで形成している。
【0085】
これに対して、上述した方法と異なり、第1導電性ペーストの印刷と、第2導電性ペーストの印刷とを順に行った後、第1導電性ペーストの印刷膜及び第2導電性ペーストの印刷膜に対する熱処理を行うことにより、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30を同じタイミングで形成してもよい。
【0086】
以上により、伸縮性配線基板1が製造される。
【0087】
本発明の生体貼り付けデバイスは、本発明の伸縮性配線基板を有する。本発明の生体貼り付けデバイスの一例としては、図1等に示す伸縮性配線基板1を有する生体貼り付けデバイスが挙げられる。このような生体貼り付けデバイスによれば、伸縮性配線基板1を生体に貼り付けることで生体情報を取得及び解析できる。
【符号の説明】
【0088】
1 伸縮性配線基板
10 伸縮性基材
11a 伸縮性基材の一方主面
20 第1伸縮性配線
20a 第1伸縮性配線の一方端部
21 第1伸縮性配線の第1部分
21a 第1伸縮性配線の第1部分のうちで第2伸縮性配線に重なる部分
21b 第1伸縮性配線の第1部分のうちで第2伸縮性配線に重ならない部分
22 第1伸縮性配線の第2部分
30 第2伸縮性配線
30a 第2伸縮性配線の一方端部
31 第2伸縮性配線の第1部分
32 第2伸縮性配線の第2部分
E1 第1伸縮性配線及び第2伸縮性配線が重なる領域
E2 第1伸縮性配線及び第2伸縮性配線が重ならない領域
F1 第2伸縮性配線の第1部分が存在する領域
F2 第2伸縮性配線の第1部分が存在しない領域
F2a 第2伸縮性配線の第1部分が存在しない領域のうち、第1伸縮性配線のみが存在する領域
F2b 第2伸縮性配線の第1部分が存在しない領域のうち、第2伸縮性配線のみが存在する領域
G 厚みが大きくなり始める位置
L 長さ方向
P1 第2伸縮性配線の第1部分の幅
P1’ 第2伸縮性配線の第1部分において、長さ方向の中心位置で定められる幅
P2 第2伸縮性配線の第2部分の幅
Q、Q’ 第1伸縮性配線の幅
R 第2伸縮性配線の第1部分が存在する領域での最大厚み
S1 第2伸縮性配線の第1部分が存在しない領域のうち、第1伸縮性配線のみが存在する領域での最大厚み
S2 第2伸縮性配線の第1部分が存在しない領域のうち、第2伸縮性配線のみが存在する領域での最大厚み
T 厚み方向
W 幅方向
【要約】
伸縮性配線基板1は、伸縮性基材10と、伸縮性基材10の一方主面11a側で長さ方向Lに延びる第1伸縮性配線20と、伸縮性基材10の一方主面11a側で長さ方向Lに延び、かつ、一方端部30a側で第1伸縮性配線20上に重なる第2伸縮性配線30と、を備え、第2伸縮性配線30は、一方端部30a側に位置する第1部分31を有し、第2伸縮性配線30の第1部分31は、第1伸縮性配線20及び第2伸縮性配線30が重なる領域E1を少なくとも有し、長さ方向Lに直交する幅方向Wにおける寸法を幅と定義したとき、第2伸縮性配線30の第1部分31の幅P1は、第1伸縮性配線20の幅Qよりも小さい。
図1
図2
図3
図4