(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】貯湯給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20220817BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20220817BHJP
【FI】
F24H15/375
F24H15/212
(21)【出願番号】P 2018058839
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】稲本 辰巳
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031523(JP,A)
【文献】特開2009-257703(JP,A)
【文献】特開2003-056908(JP,A)
【文献】特開2003-287278(JP,A)
【文献】特開2010-054131(JP,A)
【文献】特開2018-011465(JP,A)
【文献】特開2009-287810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18-1/20
F24H 4/00-4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と凝縮熱交換器と膨張手段と蒸発熱交換器とを冷媒回路で接続してなるヒートポンプ熱源機と、このヒートポンプ熱源機によって加熱された湯水を貯留するための貯湯タンクと、こ
の貯湯タンクとヒートポンプ熱源機との間で湯水を循環させる循環ポンプ
を含む循環加熱通路と、貯湯タンクの湯水温度が低下した場合に再加熱して出湯するための補助熱源機とを備えた貯湯給湯装置であって、給湯の使用状況を学習記憶することによって将来の給湯使用量を予測し、その給湯使用前にヒートポンプ熱源機を駆動して予測給湯使用量に相当する熱量を貯湯タンクに貯留する貯湯給湯装置において、
前記貯湯タンク内の残留湯水の温度が次回の貯湯運転時までに放熱により温度低下する場合の温度を推定する残留温度推定手段を備え、
この残留温度推定手段によって推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度になる場合には、貯湯タンク内の湯水温度の均一化を図る均一化処理を行な
うと共に、外気温度が設定温度以下の場合には、前記循環加熱通路の凍結を予防する凍結予防運転として前記循環ポンプを駆動して湯水を循環させるように構成し、
前記均一化処理が行われている状態での凍結予防運転は、前記貯湯タンクを含む通路構成で前記循環加熱通路による循環を行い、前記均一化処理が行われていない状態での凍結予防運転は、前記貯湯タンクをバイパスする通路構成で前記循環加熱通路による循環を行なうことを特徴とする貯湯給湯装置。
【請求項2】
前記均一化処理は、前記ヒートポンプ熱源機を駆動しない状態で前記循環ポンプを駆動し貯湯タンク内を攪拌することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の貯湯給湯装置。
【請求項3】
前記次回貯湯運転時に残留湯水を前記ヒートポンプ熱源機により加熱しない場合には、前記残留温度推定手段によって推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度であっても前記均一化処理を行わないことを特徴とする請求項1又は2に記載の貯湯給湯装置。
【請求項4】
前記均一化処理は、次回貯湯運転開始の直前に行うことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の貯湯給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯給湯装置に関し、特に学習制御により予測した給湯使用量を貯湯する場合に予測誤差により貯湯タンク内に残留した残留湯水を有効利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧縮機と凝縮熱交換器と膨張手段と蒸発熱交換器とを冷媒回路で接続してなるヒートポンプ熱源機と、このヒートポンプ熱源機によって加熱された湯水を貯留するための貯湯タンクと、この貯湯タンクとヒートポンプ熱源機との間で湯水を循環させる循環ポンプと、貯湯タンクの湯水温度が低下した場合に再加熱するための補助熱源機とを備えた貯湯給湯装置は、広く実用に供されている。
【0003】
そして、この種の貯湯給湯装置において、給湯の使用状況を学習記憶することによって将来の給湯使用量を予測し、その給湯使用前にヒートポンプ熱源機を駆動して予測給湯使用量に相当する熱量を貯湯タンクに貯留することも広く行なわれている。
【0004】
ここで、前記予測給湯使用量よりも実際の給湯使用量が少ない場合には、1日の給湯使用終了後に、貯湯タンク内に残留湯水が残留する場合があり、この場合翌朝の最初の貯湯運転に際しては前記の残留湯水を加味して貯湯運転を行なうことが望ましい。しかし、残留湯水は放熱により温度低下するため翌日の給湯時に補助熱源機による再加熱が必要な再加熱必要 温度以上の温度を保持しているとは限らず、貯湯温度や残留湯水の湯量や外気温度によって翌日の貯湯運転時おける温度が異なる。そのため、翌日の貯湯運転時に前記の残留湯水をどのように加味して貯湯運転するのが有利であるのか難しい問題である。
【0005】
特許文献1の貯湯式給湯システムにおいては、貯湯タンク内に高温層と、追い焚き有効温度以上の中温層と、低温層とがある場合には、前記の高温層と中温層を混合させることにより、前記貯湯タンク内の上部の温度を低下させ、追い焚き湯切れに対する耐力を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、貯湯タンク内に残留湯水が残留した場合、その残留湯水は翌朝までに放熱により温度低下し、給湯設定温度よりも低温の中温水となる。その中温水をヒートポンプ熱源機で加熱する場合は、ヒートポンプ熱源機のCOPが低下するという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、残留湯水を加味した貯湯運転を行う場合のヒートポンプ熱源機のCOPを改善可能な貯湯給湯装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の貯湯給湯装置は、圧縮機と凝縮熱交換器と膨張手段と蒸発熱交換器とを冷媒回路で接続してなるヒートポンプ熱源機と、このヒートポンプ熱源機によって加熱された湯水を貯留するための貯湯タンクと、この貯湯タンクとヒートポンプ熱源機との間で湯水を循環させる循環ポンプを含む循環加熱通路と、貯湯タンクの湯水温度が低下した場合に再加熱して出湯するための補助熱源機とを備えた貯湯給湯装置であって、給湯の使用状況を学習記憶することによって将来の給湯使用量を予測し、その給湯使用前にヒートポンプ熱源機を駆動して予測給湯使用量に相当する熱量を貯湯タンクに貯留する貯湯給湯装置において、
前記貯湯タンク内の残留湯水の温度が次回の貯湯運転時までに放熱により温度低下する場合の温度を推定する残留温度推定手段を備え、この残留温度推定手段によって推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度になる場合には、貯湯タンク内の湯水温度の均一化を図る均一化処理を行なうと共に、外気温度が設定温度以下の場合には、前記循環加熱通路の凍結を予防する凍結予防運転として前記循環ポンプを駆動して湯水を循環させるように構成し、前記均一化処理が行われている状態での凍結予防運転は、前記貯湯タンクを含む通路構成で前記循環加熱通路による循環を行い、前記均一化処理が行われていない状態での凍結予防運転は、前記貯湯タンクをバイパスする通路構成で前記循環加熱通路による循環を行なうことを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、貯湯タンク内の残留湯水の次回貯湯運転時における温度を推定する残留温度推定手段を設け、この残留温度推定手段により推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度 になる場合には、貯湯タンク内の温水温度の均一化を図る均一化処理を行うため、貯湯タンク内の湯水温度を全体的に均一に低下させることができ、次回の貯湯運転時におけるヒートポンプ熱源機のCOPの低下を防ぐことができる。
前記均一化処理を行なう場合の凍結予防運転は、貯湯タンクを含む通路構成で循環加熱通路による循環を行なうため、凍結予防のためヒートポンプ熱源機を作動させる必要がないから省エネルギーになる。また、均一化処理を行なわない場合の凍結予防運転は、貯湯タンクをバイパスする通路構成で循環加熱通路による循環を行なうため、貯湯タンク内の温度成層を維持することができる。
【0011】
請求項2の貯湯給湯装置は、請求項1の発明において、前記均一化処理は、前記ヒートポンプ熱源機を駆動しない状態で前記循環ポンプを駆動し貯湯タンク内を攪拌することにより行うことを特徴としている。
上記の構成によれば、循環ポンプを利用して貯湯タンク内を攪拌することができる。
【0012】
請求項3の貯湯給湯装置は、請求項1又は2の発明において、前記次回貯湯運転時に残留湯水を前記ヒートポンプ熱源機により加熱しない場合には、前記残留温度推定手段によって推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度であっても前記均一化処理を行わないことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、例えば残留湯水の量が少ない場合には、次回貯湯運転時に残留湯水が前記ヒートポンプ熱源機により加熱されないため、残留湯水温度が次回貯湯運転時に前記補助熱源機による再加熱が必要な温度であっても、前記均一化処理を行わない方が有利である。
【0014】
請求項4の貯湯給湯装置は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記均一化処理は、次回貯湯運転開始の直前に行うことを特徴としている。
上記の構成によれば、前記均一化処理を次回貯湯運転開始の直前に行うことで、貯湯時における貯湯タンク内の均一化状態を維持することできる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本願発明は種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯湯給湯装置の全体構成図である。
【
図2】給湯装使用量データ取得制御のフローチャートである。
【
図4】貯湯タンクに残留湯水発生時の均一化処理のフローチャートである。
【
図5】予測給湯使用量と貯湯運転湯量のタイムチャートである。
【
図6】貯湯タンク内に残留湯水発生時の次回貯湯運転までの待機時間を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
最初に、
図1に基づいてヒートポンプ給湯装置1の全体構成について説明する。
ヒートポンプ給湯装置1は、貯湯給湯ユニット2と、ヒートポンプ熱源機3とを有し、貯湯給湯ユニット2は、貯湯タンク4、ガス燃焼式の補助熱源機5、その他の機器(配管、バルブ、温度センサ等々)と、貯湯給湯ユニット2を覆う外装ケース2aとを備えている。この貯湯給湯ユニット2は、ヒートポンプ熱源機3を駆動して加熱した湯水を貯湯タンク4に貯留し、この貯留した湯水を給湯や浴槽6の湯張りに使用する。また、必要に応じて貯湯タンク4から取り出した湯水を補助熱源機5により加熱して給湯や風呂追焚等に使用可能である。
【0019】
貯湯タンク4の上部には、貯湯タンク4に貯留した湯水を出湯するための出湯通路7が接続されている。貯湯タンク4の下部には、貯湯タンク4に上水源から上水を供給するための給水通路8が接続されている。この給水通路8から分岐したバイパス通路9が出湯通路7に接続され、この接続部に出湯通路7の湯水とバイパス通路9の上水を混合する混合比率を調整可能な湯水混合弁10が介装されている。湯水混合弁10には給湯通路11が接続され、湯水混合弁10で混合された湯水は、給湯通路11を流通して図示外の給湯栓等に給湯可能であり、給湯通路11から分岐して追焚通路12に接続する湯張り通路13を介して浴槽6に湯張り可能である。湯張り通路13には、湯張り用の開閉弁13aが設けられている。
【0020】
貯湯タンク4の下部にはヒートポンプ熱源機3に湯水を供給する往き側湯水通路16が接続され、このヒートポンプ熱源機3で加熱された湯水を貯湯タンク4に供給する戻り側湯水通路17が貯湯タンク4の上部に接続されて、貯湯タンク4とヒートポンプ熱源機3の間で湯水が循環可能な循環加熱通路15が形成されている。
【0021】
往き側湯水通路16には、貯湯タンク4からヒートポンプ熱源機3に入水する湯水の入水温度を検知する入水温度センサ18と循環ポンプ19と切換弁20が接続されている。戻り側湯水通路17には、ヒートポンプ熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する加熱温度センサ21が接続され、往き側湯水通路16と戻り側湯水通路17とを接続するバイパス通路22が設けられ、往き側湯水通路16とバイパス通路22との接続部には切換弁20が接続されている。ヒートポンプ熱源機3の起動直後等の加熱温度が低い場合に、切換弁20を切換えてヒートポンプ熱源機3で加熱した湯水を再びヒートポンプ熱源機3に送って再加熱することができる。
【0022】
貯湯タンク4の外周には、貯留された湯水の温度を検知する複数の貯湯温度センサ4a~4dが上下方向に所定間隔おきに設けられている。これら貯湯温度センサ4a~4d及び貯湯タンク4は図示外の保温材により覆われている。出湯通路7には、湯水混合弁10に供給される湯水の出湯温度を検知するための出湯温度センサ7aが接続されている。給水通路8には、上水源から供給される上水の温度を検知するための給水温度センサ8aが接続されている。給湯通路11のうちの湯水混合弁10よりも下流側には、給湯する湯水の流量を検出する流量計11bと、給湯温度を検知するための給湯温度センサ11aが接続されている。
【0023】
貯湯タンク4の湯水を補助熱源機5で加熱するための補助加熱通路23が、出湯通路7から分岐して補助熱源機5に接続されている。補助熱源機5で加熱した湯水を出湯するための補助出湯通路24は、補助加熱通路23の分岐部より下流側の出湯通路7に調整弁25を介して接続されている。補助出湯通路24には温度センサ24aが設けられている。
調整弁25は、補助出湯通路24を通って出湯通路7に供給される湯水流量を調整する。補助加熱通路23には、三方弁26と補助熱源機5に湯水を送るためのポンプ27が介装されている。
【0024】
補助出湯通路24から分岐した熱交換通路28は、三方弁26に接続されている。三方弁26は、貯湯タンク4の湯水又は熱交換通路28の湯水を補助熱源機5に供給可能となるように切換えられる。熱交換通路28には熱交換器29と開閉弁30と温度センサ28aが介装されている。 熱交換器29は、追焚ポンプ31の作動により追焚通路12を流れる浴槽6の湯水を補助熱源機5で加熱した湯水との熱交換により加熱する追焚運転に使用される。
【0025】
給水通路8には、逆止弁32と、給水通路8から分岐して熱交換通路28に接続する分岐通路部33が接続されている。バイパス通路9には逆止弁34が介装され、バイパス通路9から分岐して給湯通路11に接続された高温出湯回避通路35には、高温出湯回避電磁弁36が介装されている。尚、以上説明した種々の機器(ポンプ、弁類、センサ類)は制御部43に電気的に接続され、制御部43により制御される。
【0026】
ヒートポンプ熱源機3は、圧縮機37と、凝縮熱交換器38と、膨張弁39と、蒸発熱交換器40とを冷媒配管41により接続してなるヒートポンプ回路を備えている。このヒートポンプ熱源機3は、冷媒配管41に封入された冷媒を圧縮機37で圧縮して昇温し、循環ポンプ19を駆動して循環加熱回路15を流通する湯水を凝縮熱交換器38において高温の冷媒との熱交換により加熱する。熱交換後の冷媒は、膨張弁39で膨張して外気より低温になり、蒸発熱交換器40において外気から吸熱した後、再び圧縮機37に導入される。
【0027】
蒸発熱交換器40は、外気温度を検知する外気温センサ40aと送風機40bを備えている。ヒートポンプ熱源機3は、圧縮機37、膨張弁39、送風機40b等を制御する補助制御部42を備えている。補助制御部42は、制御部43に通信可能に接続され、制御部43らの指令に従ってヒートポンプ熱源機3を制御する。外気温センサ40aで検知された外気温度は、補助制御部42を介して制御部43に送信される。
【0028】
次に、この貯湯給湯装置1に採用した種々の制御について説明する。
この貯湯給湯装置1においては、給湯の使用状況を学習記憶することによって将来の給湯使用量を予測し、その給湯使用前にヒートポンプ熱源機3を駆動して予測給湯使用量に相当する熱量を貯湯タンクに貯留する。尚、以下に説明するフローチャートは、制御部43に格納されており、フローチャート中の符号Si(i=1,2,・・・)は各ステップを示す。
【0029】
この学習記憶(給湯使用量データ取得制御)について、
図2、
図3、
図5に基づいて説明する。
図2において、給湯使用量データ取得制御は、貯湯給湯装置1の稼働中は常時実行される制御である。この給湯使用量データ取得制御が開始されると、S1においてセンサ類から各種信号が読み込まれ、次にS2において、60分毎の給湯使用量のデータが時系列にて演算される。
尚、給湯使用量は、温度センサ24a,7a,11a,28aや流量計11bの検出データを用いて熱量計算を介して演算される。次にS3において上記の60分毎の給湯使用量のデータが、年月日、曜日、時間帯と対応付けて所定のメモリに格納され、上記のS1~S3が繰り返し実行される。
【0030】
次に、貯湯運転制御について
図3、
図5に基づいて説明する。
この貯湯運転制御が開始されると、S10において、先週の対応する曜日の1日分の給湯使用量データがメモリから読み込まれ、次にS11において、S10で読み込んだ給湯使用量データに基づいて、60分毎の予測給湯使用量を時間帯別に1日分演算する。例えば、
図5に示すように、給湯使用量と同様の予測給湯使用量が演算される。
【0031】
次に、S12において、60分毎の予測給湯使用量に基づいて1日分の60分毎の貯湯運転スケジュールが作成される。これは、各60分毎の予測給湯使用量を給湯直前(例えば、1時間前倒し)に貯湯しておくための貯湯運転スケジュールである。
【0032】
例えば、
図5に示すように、予測給湯使用量を1時間前倒しした貯湯運転湯量のスケジュールが演算される。次に、S13では、前記の貯湯運転スケジュールに基づいて、貯湯運転のタイミングか否か判定し、その判定がYesのときはS14において貯湯運転スケジュールに基づく貯湯運転が実行される。次に、S15において時刻は24時か否か判定し、その判定がNoのときはS13~S15を繰り返し、S15の判定がYesになると制御は終了する。尚、24時に制御を終了しないで、翌日の0時からの貯湯運転制御を開始してもよい。
【0033】
次に、各日の給湯終了時(例えば、24時)の時点において貯湯タンク4内に残留湯水が発生した場合に行う均一化処理について、
図4に基づいて説明する。
この均一化処理は、貯湯タンク4内の残留湯水の温度が次回の貯湯運転時までに放熱により温度低下する場合の温度を推定し、この推定された残留湯水温度が次回貯湯運転時に補助燃料による再加熱が必要な温度になる場合には、貯湯タンク4内の温水温度の均一化を図る処理である。
【0034】
この制御が開始されると、S20において24時の時点(各日の給湯終了時)で貯湯タンク 内に残留湯水が有りか否か判定する。この判定は貯湯タンク4の温度センサ4a~4dの検出信号に基づいて判定する。S20の判定がNoの場合は制御が終了し、S20の判定がYesのときは、S21において残留湯水温度Trが貯湯タンク4の温度センサ4a~4dの検出信号に基づいて検出される。
【0035】
次に、S22においては、翌朝の最初の貯湯運転までの待機時間を演算すると共に、その待機時間と貯湯タンク4に設定されている放熱特性に基づいて翌朝の残留湯水温度Tyが推定演算される。
図6は、待機時間と、翌朝の最初の貯湯運転を示すタイムチャートである。
尚、S22のステップと制御部43が残留温度推定手段に相当する。
【0036】
次に、S23において、残留湯水温度Tyが補助熱源機5による再加熱が必要な再加熱必要温度(例えば、36°C以下)以下か否か判定し、その判定がYesの場合は、S24においては、ポンプ19を駆動し、貯湯タンク4内の湯水を循環加熱通路15に循環させて貯湯タンク4内の湯水を攪拌し、湯水温度を均一化させる(これが湯水温度の均一化を図る均一化処理である)。尚、この均一化処理は、例えば、貯湯タンク4内の湯水の全量の約半分を循環加熱通路15に循環させる位の時間行なう。
【0037】
上記のように、貯湯タンク4内の湯水を攪拌し、その温度を均一化して温度低下させておくと、翌朝にヒートポンプ熱源機3を作動させて貯湯運転する際に、ヒートポンプ熱源機3のCOPを高めることができる。
【0038】
すなわち、貯湯タンク4の上部に残留湯水がある場合、仮に攪拌しない場合は、翌朝の貯湯運転時に、最初貯湯タンク4内の下部の低温の湯水をヒートポンプ熱源機3に供給できるためCOPを高く維持できるものの、その後中温の残留湯水をヒートポンプ熱源機3に供給する際にはヒートポンプ熱源機3のCOPが著しく低下し、全体としてヒートポンプ熱源機3のCOPが低下することになるため、上記のような均一化処理を行う方が有利になる。
【0039】
次に、S25において、温度センサ40aにより検出される外気温度が設定温度Ts(例えば、0°C)以下か否か判定し、その判定がNoの場合は制御を終了し、S25の判定がYesの場合は、貯湯タンク4内の中温の湯水を循環加熱通路15に間欠的に循環させて加熱通路15の配管の凍結を予防する凍結予防運転を行う。次に、S27において翌朝の最初の給湯運転が終了したか否か判定し、その判定がNoのうちはS25へ戻ってS25~S27を繰り返し、S27の判定がYesになるとこの制御が終了する。
【0040】
他方、翌朝の残留湯水温度Tyが再加熱必要温度より高温で、S23の判定がNoの場合は、S28において外気温度が設定温度Ts以下か否か判定し、その判定がNoのときは制御を終了し、S28の判定がYesのときは、往き側湯水通路16とバイパス通路22が連通するように切換弁20が切換えられ、ヒートポンプ熱源機3及びポンプ19を間欠的に駆動し、加熱した湯水を凝縮熱交換器38と戻り側湯水通路17とバイパス通路22と往き側湯水通路16とに循環させる凍結予防運転を行う。次に、S30において翌朝の最初の給湯運転が終了したか否か判定し、その判定がNoのうちはS28へ戻ってS28~S30を繰り返し、S30の判定がYesになるとこの制御が終了する。
【0041】
上記の貯湯給湯装置1の作用、効果について説明する。
図4に示すように、貯湯タンク4内の残留湯水の次回貯湯運転時における温度を推定し、この推定された残留湯水温度Tyが次回貯湯運転時に再加熱必要温度になる場合には、貯湯タンク4内の温水温度の均一化を図る均一化処理を行うため、貯湯タンク内の湯水の温度を全体的に均一に低下させ、次回の貯湯運転時におけるヒートポンプ熱源機3のCOPの低下を防ぐことができる。尚、前記均一化処理は、ヒートポンプ熱源機3を駆動しない状態で循環ポンプ19を駆動し貯湯タンク4内を攪拌することにより行う。
【0042】
また、
図4のS26に示すように、外気温が低い場合には、貯湯タンク4内の均一化された温度の中温水を循環させることで配管の凍結を予防する凍結予防運転を行うため、凍結予防のためにヒートポンプ熱源機3を作動させる必要がないから省エネルギーになる。
【0043】
また、残留湯水温度Tyが次回貯湯運転時に再加熱必要温度にならない場合には、前記均一化処理を省略することで貯湯タンク4内の温度成層を維持することができる。
この場合、S29において説明したように、ヒートポンプ熱源機3を間欠的に駆動し、バイパス通路22を利用して湯水を循環させるような凍結予防運転を行うため、貯湯タンク4内の温度成層を維持することができる。
【0044】
次に、前記実施形態を部分的に変更する例について説明する。
1]
図4の均一化処理においては、凍結予防運転を行う関係上、S24のステップを24時の直後に実行した。しかし、この特定運転実行後に数時間経過すると、高温水が上部へ移動し、低温水が下部に移動して湯水温度が不均一化する。
そこで、翌朝の最初の貯湯運転開始の直前の時点において、S24と同様のステップを繰り返して、貯湯タンク4内の湯水温度の均一化を図るようにしてもよい。
【0045】
2]S24を実行する条件として、残留湯水の量が所定量(例えば、貯湯タンク4の容積の1/3)以上の場合にのみS24を実行するようにし、残留湯水の量が所定量以下の場合には、S23の判定がYesであっても均一化処理を実行しないようにする。
【0046】
即ち、残留湯水の量が所定量以下の場合は、次回貯湯運転時に残留湯水が前記ヒートポンプ熱源機3により再加熱されない。即ち、均一化処理により貯湯タンク4内の湯水温度を均一化させたとしても、均一化による温度低下が小さく、ヒートポンプ熱源機3のCOP低下防止の効果を余り期待できないことに鑑みて、均一化処理を実行しないものとする。
【0047】
3]貯湯タンク4内の湯水を攪拌可能な攪拌手段(例えば、モータで回転駆動される攪拌翼等)を設ける場合には、その攪拌手段を駆動することで前記特定運転を行うことができる。
4]その他、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態を部分的に変更して本発明を実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0048】
1 貯湯給湯装置
2 貯湯給湯ユニット
3 ヒートポンプ熱源機
4 貯湯タンク
5 補助熱源機
15 循環加熱通路
19 循環ポンプ
37 圧縮機
38 凝縮熱交換器
39 膨張手段
40 蒸発熱交換器
43 制御部