(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】偏光板およびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220817BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220817BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
(21)【出願番号】P 2020537683
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2019003561
(87)【国際公開番号】W WO2019190190
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0035682
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521241281
【氏名又は名称】杉金光電(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【氏名又は名称】長野 正
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】テ・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・チュル・イ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・チョル・シン
(72)【発明者】
【氏名】キ・チョン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ミン・チェ
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168306(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170211(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/167221(WO,A1)
【文献】特開2016-143046(JP,A)
【文献】特開2011-053271(JP,A)
【文献】特開2006-293331(JP,A)
【文献】特開2013-028755(JP,A)
【文献】特開2015-180912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ装置であって、
ディスプレイパネル、
前記ディスプレイパネルの視認側に配置され、第1保護フィルム、第1偏光子および第2保護フィルムを順に含む第1偏光板、および
前記ディスプレイパネルの視認側の反対側に配置され、第3保護フィルム、第2偏光子および第4保護フィルムを順に含む第2偏光板を含み、
前記第2および第3保護フィルムが前記ディスプレイパネル側に近く配置され、前記第1および第4保護フィルムが前記ディスプレイ装置の外側に配置され、
前記第1保護フィルムおよび前記第4保護フィルムはそれぞれ、その保護フィルムのTD(Transverse Direction)軸に対して遅相軸(Slow axis)がなす角度が0度~3.0度の範囲内である色相歪曲防止用保護フィルムであり、
前記色相歪曲防止用保護フィルムはポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2保護フィルムおよび前記第3保護フィルムはそれぞれ、TAC(Triacetyl cellulose)フィルムであり、
前記第1保護フィルムのTD軸と前記第4保護フィルムのTD軸は互いに
直交して
おり、
前記第1偏光板は、視認側に1/4波長板をさらに含み、
TD軸は、保護フィルムの幅方向を意味しており、
前記色相歪曲防止用保護フィルムは550nm波長の光に対して下記の数式1で計算される面内位相差値(Rin)が300nm~1000nm範囲内であり、
[数式1]
Rin=(nx-ny)×d
数式1で、nxおよびnyはそれぞれ色相歪曲防止用保護フィルムの550nm波長の光に対するx軸およびy軸方向の屈折率であり、dは色相歪曲防止用保護フィルムの厚さであり、x軸およびy軸はそれぞれ保護フィルムの遅相軸および進相軸を意味する、ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1保護フィルムおよび前記第4保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度の絶対値の差は3.5度以下である、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【請求項3】
前記ディスプレイパネルは液晶パネルを含む、請求項1に記載のディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は偏光板およびディスプレイ装置に関する。
【0002】
本出願は2018年3月28日付韓国特許出願第10-2018-0035682号に基づいた優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイ装置に使われる偏光子には偏光子を保護するための保護フィルムが使われる。偏光子の保護フィルムは外部からの偏光子の損傷を防ぐ役割をすることができる。偏光子は水分に接触する時に性能が低下する問題を有しているが、この時、偏光子の保護フィルムが水分を遮断する役割もすることになる。最近では偏光子の保護フィルムに水分遮断力が優秀な低透湿基材として、例えば、PET(polyethylene terephthalate)フィルムまたはアクリル(Acryl)フィルムなどを採択して使っている。
【0004】
低透湿基材のうちPETフィルムの場合、アクリルフィルム対比水分遮断性能が優秀であるものの、次のような問題点がある。生活水準の向上によりレジャー活動が多くなるこの頃、魚釣り、スキーなどの野外活動時に使われる偏光サングラスを着用した状態で、PET保護フィルムを適用した偏光子を観察すると、ディスプレイ装置が虹状に視認され、本来具現しようとするディスプレイ装置の色相の具現が妨げられる現象が発生し得る(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許出願公開第10-2015-0037448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、偏光子の保護フィルムにより外部環境、例えば、水分に対する耐久性が優秀であり、偏光サングラスを着用して観察時に色相歪曲を防止できる偏光板および前記偏光板を含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願は偏光板に関する。
図1は、本出願の偏光板を例示的に示す。
図1に示した通り、前記偏光板は第1保護フィルム102、偏光子101および第2保護フィルム103を順に含むことができる。すなわち、偏光子101の両面にはそれぞれ第1保護フィルム102および第2保護フィルム103が配置され得る。
【0008】
本明細書で用語偏光子は偏光機能を有するフィルム、シートまたは素子を意味する。偏光子は多様な方向に振動する入射光から一方向に振動する光を抽出できる機能性素子である。
【0009】
前記偏光子は吸収型偏光子であり得る。本明細書で吸収型偏光子は入射光に対して選択的透過および吸収特性を示す素子を意味する。前記偏光子は線偏光子であり得る。前記吸収型偏光子は多様な方向に振動する入射光からいずれか一方向に振動する光は透過し、残りの方向に振動する光は吸収することができる。
【0010】
前記偏光子は線偏光子であり得る。本明細書で線偏光子は、選択的に透過する光がいずれか一方向に振動する線偏光であり、選択的に吸収する光が前記線偏光の振動方向と直交する方向に振動する線偏光である偏光子を意味する。
【0011】
前記偏光子としては、例えば、PVA延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨウ素を染着した偏光子または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向に沿って配列された異方性染料をゲストとするゲスト‐ホスト型偏光子を使用できるがこれに制限されるものではない。
【0012】
本出願の一実施例によると、前記偏光子としてはPVA延伸フィルムを使うことができる。前記偏光子の透過率乃至偏光度は、本出願の目的を考慮して適切に調節され得る。例えば前記偏光子の透過率は41.5%~55%であり得、偏光子の偏光度は65%~99.9999%であり得る。
【0013】
第1保護フィルムと第2保護フィルムのうち一つ以上の保護フィルムは、その保護フィルムのTD(Transverse Direction)軸に対して遅相軸(Slow axis)がなす角度が0度~4.5度の範囲内であり得る。このようなTD軸と遅相軸の関係を有する保護フィルムの使用を通じて、偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時、色相歪曲を防止することができる。本明細書で前記TD軸と遅相軸の関係を有する保護フィルムを「色相歪曲防止用保護フィルム」と呼称し得る。
【0014】
図2は、色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度の関係を例示的に示す。
図2で角度a(+)はTD軸(TD)に対して遅相軸(S(+))が時計回り方向になす角度を意味し、角度a(-)はTD軸(TD)に対して遅相軸(S(-))が反時計回り方向になす角度を意味する。
【0015】
本明細書で基準軸(例えば、TD軸)に対して遅相軸が時計回り方向になす角度は「+」符号で表示することができ、反時計回り方向になす角度は「-」符号で表示することができる。本明細書で角度について記載する時に、その角度の符号乃至方向を特に指定しない場合、時計回り方向または反時計回り方向になす角度をすべて含む意味であるかまたはその角度の大きさだけを意味し得る。
図2では、TD軸に対して遅相軸がなす角度の範囲を時計回り方向または反時計回り方向に説明するために便宜上遅相軸をS(+)およびS(-)で表示したが、一つの保護フィルムは面上において一つの遅相軸を有する。
【0016】
本明細書で遅相軸(Slow axis)は保護フィルムの面上で屈折率が最も高い方向の軸を意味し得る。本明細書で進相軸(Fast axis)は保護フィルムの面上で屈折率が最も低い方向の軸を意味し得、前記遅相軸と垂直となり得る。
【0017】
本明細書で縦方向(MD:Machine Direction)はフィルムを形成するための機械の進行方向またはフィルムの長さ方向を意味し得、横方向(TD:Transverse Direction)は前記機械の進行方向に垂直な方向またはフィルムの幅方向を意味し得る。通常的に、押出されたフィルムはTD軸がMD軸に比べて、引張強度がより高い傾向がある。したがって、保護フィルムの引張強度を測定することによって、TD軸を確認することもできる。
【0018】
一つの例として、色相歪曲防止用保護フィルムはTD軸に対して遅相軸がなす角度が例えば、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得る。このような角度範囲内で偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を防止することがさらに有利であり得る。
【0019】
一つの例として、色相歪曲防止用保護フィルムはTD軸に対して遅相軸がなす角度が時計回り方向に0度~4.5、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度であり得る。他の一つの例として、色相歪曲防止用保護フィルムはTD軸に対して遅相軸がなす角度が反時計回り方向に0度~4.5、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度であり得る。
【0020】
一つの例として、第1保護フィルムと第2保護フィルムのうちいずれか一つの保護フィルムは、色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。この場合、残りの一つの保護フィルムは偏光子の通常的な保護フィルムを使うことができる。偏光子の通常的な保護フィルムとしては、TAC(Triacetyl cellulose)フィルムなどのようなセルロースフィルム;PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムなどのようなポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム;ポリエーテルスルホンフィルム;アクリルフィルムおよび/またはポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロ系やノルボルネン構造を含むポリオレフィンフィルムまたはエチレン‐プロピレン共重合体フィルムなどのポリオレフィン系フィルムなどを使用できるが、これに制限されるものではない。偏光子の通常的な保護フィルムは光学等方性フィルムまたは光学異方性フィルムであり得る。光学異方性フィルムである場合、前記TD軸と遅相軸の関係を有さないか、後述する面内位相差値を有さなくてもよい。他の一つの例として、第1保護フィルムと第2保護フィルムは両方とも色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。この場合、第1保護フィルムのTD軸と第2保護フィルムのTD軸は互いに平行し得る。
【0021】
一つの例示において、色相歪曲防止用保護フィルムはポリエステルフィルムであり得る。一つの例として、前記ポリエステルフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であり得る。これを通じて、偏光子の保護フィルムにより外部環境、例えば、水分に対する耐久性が優秀であり、偏光サングラスを着用して観察時に色相歪曲を防止できる偏光板を提供することができる。
【0022】
前記PETフィルムとしては延伸PETフィルムを使うことができる。延伸PETフィルムとしては例えば、1種以上のPET系樹脂を溶融押出あるいは溶媒を利用した溶解押出によって製膜し、横に延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルム、または製膜後に縦および横延伸を利用してなる一層以上の二軸延伸フィルム、または斜線方向の延伸を利用した斜線延伸フィルムを使うことができる。
【0023】
PET系樹脂は繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他のジカルボン酸成分とジオール成分を含んでもよい。他のジカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えばイソフタル酸、p‐β‐オキシエトキシ安息香酸、4,4’‐ジカルボキシジフェニル、4,4’‐ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4‐カルボキシフェニル)エタン、アジフ酸、セバシン酸および1,4‐ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。他のジオール成分としては、特に限定されるものではないが、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これら他のジカルボン酸成分や他のジオール成分は必要に応じて2種以上を組み合わせて使うことができる。また、p‐オキシ安息香酸などのオキシカルボン酸を併用することもできる。また、他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合およびカーボネート結合などを含有するジカルボン酸成分、またはジオール成分が利用され得る。
【0024】
PET系樹脂の製造方法としては、テレフタル酸およびエチレングリコール(および必要に応じて他のジカルボン酸または他のジオール)を直接重縮合させる方法、テレフタル酸のジアルキルエステルおよびエチレングリコール(および必要に応じて他のジカルボン酸のジアルキルエステルまたは他のジオール)をエステル交換反応させた後に重縮合させる方法、およびテレフタル酸(および必要に応じて他のジカルボン酸)のエチレングリコールエステル(および必要に応じて他のジオールエステル)を重縮合させる方法などが採用される。
【0025】
それぞれの重合反応には、アンチモン系、チタン系、ゲルマニウム系またはアルミニウム系化合物を含む重合触媒、または前記複合化合物を含む重合触媒を使うことができる。
【0026】
前記重合反応条件は、使われる単量体、触媒、反応装置および目的とする樹脂の物性に応じて適切に選択することができ、特に制限されるものではないが、例えば反応温度は通常約150℃~約300℃、約200℃~約300℃または約260℃~約300℃であり得る。また、反応圧力は通常大気圧乃至約2.7Paであり得、その中でも反応の後半には減圧側であることが好ましい。
【0027】
重合反応はこのような高温・高減圧条件下で攪拌されることによって、ジオール、アルキル化合物または水などの離脱反応物を揮発させることによって進行され得る。
【0028】
また、重合装置は反応槽が一つで完結するものでもよく、または複数の反応槽を連結したものでもよい。この場合、通常、重合度により反応物は反応槽間を移送されながら重合される。また、重合後半に横型反応装置を具備し、加熱・混練しながら揮発させる方法も採用することができる。
【0029】
重合終了後の樹脂は、溶融状態で反応槽や横型反応装置から放出された後、冷却ドラムや冷却ベルトなどで冷却・粉砕されたフレーク状の形態で、または押出機に導入されて紐状に押出された後に裁断されたペレット状の形態で得られ得る。また、必要に応じて固相重合を行って、分子量を向上させるか低分子量成分を減少させてもよい。PET系樹脂に含まれ得る低分子量成分としては、環状3量体成分が挙げられるが、このような環状3量体成分の樹脂中での含量は5000ppm以下であることが好ましく、3000ppm以下であることがより好ましい。環状3量体成分が5000ppmを超過すると、フィルムの光学的物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0030】
PET系樹脂の分子量は、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒に樹脂を溶解させ、30℃で測定した極限粘度で表したとき、通常0.45~1.0dL/g、0.50~1.0dL/gまたは0.52~0.80dL/gの範囲内であり得る。極限粘度が0.45dL/g未満である場合、フィルム製造時の生産性が低下したりフィルムの機械的強度が低下したりし得る。また、極限粘度が1.0dL/gを超過する場合、フィルムの製造においての重合体の溶融押出安定性が劣悪となり得る。
【0031】
また、PET系樹脂は必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば潤滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤および耐衝撃性改良剤などが挙げられる。その添加量は光学物性に悪影響を及ぼさない範囲にすることが好ましい。
【0032】
PET系樹脂はこのような添加剤の配合のために、または後述するフィルム成形のために、通常押出機によって組み立てられたペレット状で利用され得る。ペレットの大きさや形状は特に制限されるものではないが、一般的に高さ、直径が共に5mm以下の円柱状、球状または扁平な球状であり得る。このようにして得られるPET系樹脂をフィルム状に成形し、延伸処理することによって、透明で均質な機械的強度が高いPETフィルムを得ることができる。その製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次に記載する方法が適用され得る。
【0033】
まず、乾燥させたPET樹脂からなるペレットを溶融押出装置に供給し、融点以上に加熱して溶融させる。次いで、溶融した樹脂をダイから押出、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度となるように急冷して固化させて、実質的に非結晶状態の未延伸フィルムを得ることができる。この溶融温度は使われるPET系樹脂の融点や押出機によって決定されるものであり、特に制限されるものではないが、通常250~350℃であり得る。また、フィルムの平面性を向上させるためには、フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法または液体塗布密着法を採用することができる。静電印加密着法とは、通常フィルムの上面側にフィルムの流れと直交する方向に線状電極を設置し、その電極に約5~10kVの直流電圧を印加することによってフィルムに静電荷を提供して、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラムの表面全体または一部(例えばフィルムの両端部と接触する部分のみ)に液体を均一に塗布することによって、回転冷却ドラムとフィルムとの密着性を向上させる方法である。必要に応じて両者を併用してもよい。使われるPET系樹脂は、必要に応じて2種以上の樹脂構造や組成が異なる樹脂を混合してもよい。例えば、ブロッキング防止剤としての粒状充填材、紫外線吸収剤または帯電防止剤などが配合されたペレットと、無配合のペレットを混合して利用するものなどが挙げられる。
【0034】
また、押出させるフィルムの積層数は必要に応じて2層以上としてもよい。例えば、ブロッキング防止剤への粒状充填材を配合したペレットと無配合のペレットを準備し、他の押出機から同じダイに供給して「充填材配合/無配合/充填材配合」の2種3層からなるフィルムを押出させるものなどが挙げられる。
【0035】
前記未延伸フィルムはガラス転移温度以上の温度で通常、優先押出方向に延伸される。延伸温度は通常70~150℃、80~130℃または90~120℃であり得る。また、延伸倍率は通常1.1~6倍または2~5.5倍であり得る。延伸倍率が1.1倍未満であると、延伸PETフィルムの機械的強度が足りない傾向がある可能性がある。延伸倍率が6倍を超過すると、横方向の強度が実際に使うのに不足し得る。この延伸は1回で終えてもよく、必要に応じて複数回に分けて行ってもよい。通常、複数回の延伸を行う場合にも、銃延伸倍率は前記範囲であることが好ましい。
【0036】
このようにして得られる縦延伸フィルムは、この後に熱処理を行うことができる。引き続き、必要に応じて弛緩処理を行ってもよい。子の熱処理温度は通常150~250℃、180~245℃または200~230℃であり得る。また、熱処理時間は通常1~600秒、1~300秒または1~60秒であり得る。弛緩処理温度は通常90~200℃または120~180℃であり得る。また、弛緩量は通常0.1~20%または2~5%であり得る。前記弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下となるように、その弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
【0037】
一軸延伸および二軸延伸フィルムを得る場合、通常縦延伸処理後に、または必要に応じて熱処理または弛緩処理を経た後に、テンターによって横延伸が行われ得る。この延伸温度は通常70~150℃、80~130℃または90~120℃であり得る。また、延伸倍率は通常1.1~6倍または2~5.5倍であり得る。横延伸においての延伸倍率が1.1倍未満であると、配向によるフィルム強度向上が不足し得る。また、6倍を超過する延伸倍率は製造技術上現実的ではない。
【0038】
この後、熱処理および必要に応じて弛緩処理を行うことができる。熱処理温度は通常150~250℃、180~245℃または200~230℃であり得る。熱処理時間は通常1~600秒、1~300秒または1~60秒であり得る。弛緩処理の温度は通常100~230℃、110~210℃または120~180℃であり得る。また、弛緩量は通常0.1~20%、1~10%または2~5%であり得る。この弛緩処理の温度および弛緩量は、弛緩処理後のPETフィルムの150℃での熱収縮率が2%以下となるように、その弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
【0039】
一軸延伸および二軸延伸処理においては、両者ともその延伸処理温度が250℃を超過すると、樹脂に熱劣化が発生したり、結晶化が過度に進行されたりするため、光学性能が低下する場合がある。また、延伸処理温度が70℃未満になると、延伸に過大なストレスがかかるか、フィルムが固化して延伸自体が不可能となり得る。
【0040】
また、一軸延伸および二軸延伸処理においては、横延伸後、ボーイングで代表されるような配向主軸の変形を緩和させるために、再度熱処理を行うか延伸処理を行うことができる。ボーイングによる配向主軸の延伸方向に対する変形の最大値は通常45°以内であるが、30°以内に緩和させることが好ましく、15°以内にすることがより好ましい。配向主軸の変形の最大値が45°を超過すると、以降の工程で偏光板を構成して枚葉化された時に、この枚葉間で光学特性の不均一が発生する場合がある。また、ここで延伸方向とは、縦延伸または横延伸においての延伸が大きい方向を指す。
【0041】
PETフィルムの二軸延伸では、通常横延伸倍率が縦延伸倍率より若干大きく行われるため、この場合、延伸方向とは、前記フィルムの長さ方向に対して垂直方向を意味し得る。また、一軸延伸では、通常前記したように横方向に延伸されるため、この場合、延伸方向とは、同様に長さ方向に対して垂直方向を意味する。
【0042】
また、ここで配向主軸とは、延伸PETフィルム上の任意の点での分子の配向方向を意味する。また、配向主軸の延伸方向に対する変形とは、配向主軸と延伸方向との角度差を意味する。また、その最大値とは、長さ方向に対して垂直方向上での値の最大値を意味する。
【0043】
前記配向主軸は、例えば位相差フィルム・光学材料検査装置RETS(大塚電子株式会社製造)または分子配向系MOA(王子計測機器株式会社製造)を利用して測定することができる。
【0044】
前記延伸PETフィルムが偏光板の視認側に利用される場合、防眩性(ヘイズ)が付与されていてもよい。防眩性を付与する方法は特に限定されるものではないが、例えば前記原料樹脂中に無機微粒子または有機微粒子を混合してフィルム化する方法、前記多層フィルムの製造方法に準じて、一側に無機微粒子または有機微粒子が混合された層を有する未延伸フィルムから延伸フィルム化する方法、または延伸PETフィルムの一側に、無機微粒子または有機微粒子を硬化性バインダー樹脂に混合してなる塗布液をコーティングし、バインダー樹脂を硬化して防眩層を設置する方法などが採用され得る。
【0045】
防眩性を付与するための無機微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、アルミノシリケート、アルミナ‐シリカ複合酸化物、カオリン、タルク、雲母、炭酸カルシウムおよびリン酸カルシウムなどが挙げられる。また、有機微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば架橋ポリアクリル酸粒子、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、シリコン樹脂粒子およびポリイミド粒子などが挙げられる。
【0046】
前記防眩性が付与された延伸PETフィルム上には、導電層、ハードコーティング層および低反射層などの機能層をさらに積層することができる。また、前記防眩層を構成する樹脂組成物として、これらのうちいずれか一つの機能を兼ね備える樹脂組成物を選択してもよい。
【0047】
一方、延伸PETフィルムが偏光板のバックライト側に利用される場合、防眩性はあえて付与しなくてもよい。この場合、そのヘイズ値は通常6%未満であり得る。しかし、防眩性を付与しなくても、前記機能層を積層することができる。
【0048】
前記ヘイズ値はJIS K 7136に準拠して、例えばヘイズ・透過率計HM-150(株式会社村上色彩技術研究所製造)を利用して測定することができる。
【0049】
前記延伸PETフィルムには、本発明の効果を妨げない限り、前記防眩層以外の機能層を一側面または両面に積層することができる。積層される機能層には、例えば導電層、ハードコーティング層、平滑化層、易滑化層、ブロッキング防止層および易接着層などが挙げられる。その中でも、延伸PETフィルムは偏光フィルムと接着剤層を通じて積層され得るため、易接着層が積層されていることが好ましい。
【0050】
易接着層を構成する成分は特に限定されるものではないが、例えば極性基を骨格に有し、比較的低分子量で低ガラス転移温度であるポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂またはアクリル系樹脂などが挙げられる。また、必要に応じて架橋剤、有機または無機充填材、界面活性剤および潤滑剤などを含有することができる。
【0051】
前記機能層を延伸PETフィルムに形成する方法は特に限定されるものではないが、例えばすべての延伸工程が終了したフィルムに形成する方法、PET系樹脂を延伸している工程中に、例えば縦延伸と横延伸工程の間に形成する方法、および偏光子と接着される直前または接着された後に形成する方法などが採用され得る。その中でも生産性の観点では、PET系樹脂を縦延伸した後に形成し、引き続き横延伸する方法が好ましく採用され得る。
【0052】
このようにして得られる延伸PETフィルムは市販品を容易に入手可能であり、例えばそれぞれ商品名で「ダイアホイル」、「ホスタファン」、「フュージョン」(以上、三菱樹脂株式会社製造)、「帝人テトロンフィルム」、「メリネックス」、「マイラー」、「テプレックス」(以上、帝人デュポンフィルム株式会社製造)、「東洋紡エステルフィルム」、「東洋紡エスペットフィルム」、「コスモシャイン」、「クリスパー」(以上、東洋紡績数式会社製造)、「ルミラー」(東レフィルム加工株式会社製造)、「エンブロン」、「エンブレッド」(ユニチカ株式会社製造)、「スカイロール」(エス・ケイ・シー社製造)、「コピル」(株式会社高合製造)、「瑞通ポリエステルフィルム」(株式会社瑞通製造)および「タイコポリエステルフィルム」(フタムラ化学株式会社製造)等が挙げられる。この中でも生産性や廉価性の観点で、二軸延伸品が使われ得る。
【0053】
色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸と遅相軸の関係を満足させるために、当業界に公知とされている、フィルムのTD軸と遅相軸を調節する方法を適用することができる。
【0054】
一つの例として、TD軸と遅相軸がなす角度を調節する方法で、主に作用する因子はTD延伸の正確性であり得る。保護フィルムの製造工程のうちTD延伸工程では、テンター(tenter)がフィルムを掴んでTD方向(フィルムの外側)に張力を加えて延伸することになるが、この時、両側のテンターが作用する位置の正確性と両側の張力とがどれほどよく一致するかによってTD軸と遅相軸がなす角度を0度に近く調節することができる。
【0055】
他の一つの例として、TD延伸後に高張力の応力(stress)を解消するためのアニーリング(annealing)工程を遂行することができる。この時、TD軸と遅相軸がなす角度の調節はアニーリング工程で熱の供給量を調節することによって遂行することができる。例えば、熱供給量を減少させるとTD軸に対して遅相軸がなす角度を0度に近く維持することができる。これは、フィルム延伸後の工程であるアニーリング工程で熱の供給が多くなるとフィルムの軟化作用により、TD軸方向の遅相軸の角度が0度から相当に外れ得るためである。
【0056】
色相歪曲防止用保護フィルムは面内位相差値を有する位相差フィルムであり得る。一つの例示において、前記色相歪曲防止用保護フィルムは、550nm波長の光に対する面内位相差値(Rin)が10nm~7500nmであり得る。本明細書で面内位相差値(Rin)は下記の数式1で計算され得る。前記面内位相差値は、具体的には、10nm以上、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上または900nm以上であり得、7500nm以下、7000nm以下、6500nm以下、6000nm以下、5500nm以下、5000nm以下、4500nm以下、4000nm以下、3500nm以下、3000nm以下、2500nm以下、2000nm以下、1500nm以下、1000nm以下、750nm以下、500nm以下または350nm以下であり得る。本出願の一実施例によると、前記面内位相差値は10nm~1000nm範囲内であり得る。このような面内位相差値の範囲内で、偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を効果的に防止することができる。
【0057】
[数式1]
Rin=(nx-ny)×d
【0058】
数式1で、nxおよびnyはそれぞれ色相歪曲防止用保護フィルムの550nm波長の光に対するx軸およびy軸方向の屈折率であり、dは色相歪曲防止用保護フィルムの厚さである。前記x軸およびy軸はそれぞれ保護フィルムの遅相軸および進相軸を意味する。
【0059】
一つの例示において、前記色相歪曲防止用保護フィルムの厚さは35μm~85μmであり得る。第1および第2保護フィルムのうちいずれか一つの保護フィルムが色相歪曲防止用保護フィルムである場合、他の保護フィルムも前記厚さ範囲を満足することができる。前記厚さ範囲内で偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時、色相歪曲を効果的に防止するのに有利であり得る。
【0060】
一つの例示において、前記色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸は偏光子の光吸収軸と80.5度~99.5度の角度をなし得る。このような軸関係を通じて偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を効果的に防止することができる。
【0061】
一つの例示において、第1保護フィルムおよび第2保護フィルムはそれぞれ偏光子に接着剤層を媒介として付着され得る。前記接着剤層としては、該当分野で偏光子と保護フィルムの付着に使われ得るものとして公知とされている接着剤層を使用することができ、例えば、アクリル系、シリコン系、エポキシ系などの接着剤などを使うことができる。前記接着剤層としては、光硬化型または熱硬化型の接着剤層を使用することができ、前記光硬化型接着剤層としては例えばUV(Ultraviolet)硬化型接着剤層を使うことができる。
【0062】
本出願は、また、ディスプレイ装置に関する。
図3は、本出願のディスプレイ装置を例示的に示す。
図3に示した通り、ディスプレイ装置はディスプレイパネル30、前記ディスプレイパネルの視認側に配置される第1偏光板10および前記ディスプレイパネルの視認側の反対側に配置される第2偏光板20を含むことができる。第1偏光板10は第1保護フィルム102、第1偏光子101および第2保護フィルム103を順に含むことができる。第2偏光板20は第3保護フィルム202、第2偏光子201および第4保護フィルム203を順に含むことができる。前記第1および第2偏光子についての具体的内容は、前記偏光板の項目で記述した内容が同様に適用され得る。
【0063】
第1~第4保護フィルムのうち一つ以上の保護フィルムは、その保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度が0度~4.5度の範囲内である色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。これを通じて、偏光サングラスを着用して観察時に色相歪曲を防止することができる。前記色相歪曲防止用保護フィルムについての具体的な内容は、前記偏光板の項目で記述した内容が同様に適用され得る。第1~第4保護フィルムのうち色相歪曲防止用保護フィルムではない保護フィルムについては、前記偏光板の項目で記述した偏光子の通常的な保護フィルムについての内容が同様に適用され得る。
【0064】
一つの例として、第1~第4保護フィルムのうち、少なくとも2個の保護フィルムが色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。以下、説明の便宜のために、前記少なくとも2個の保護フィルムにおいて、2個の保護フィルムをそれぞれ第1色相歪曲防止用保護フィルムおよび第2色相歪曲防止用保護フィルムと呼称し得る。
【0065】
図4および
図5はそれぞれ前記第1および第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸と遅相軸の関係を例示的に示す。
図4の第1色相歪曲防止用保護フィルムについて、角度a
1(+)はTD軸TD
1に対して遅相軸(S
1(+))が時計回り方向になす角度を意味し、角度a
1(-)はTD軸TD
1に対して遅相軸(S
1(-))が反時計回り方向になす角度を意味する。
図5の第2色相歪曲防止用保護フィルムについて、角度a
2(+)はTD軸TD
2に対して遅相軸(S
2(+))が時計回り方向になす角度を意味して、角度a
2(-)はTD軸TD
2に対して遅相軸(S
2(-))が反時計回り方向になす角度を意味する。
【0066】
一つの例として、前記少なくとも2個の色相歪曲防止用保護フィルムについて、各保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度の絶対値の差は3.5度以下であり得る。
【0067】
具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a1と第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a2の絶対値の差(|a1|-|a2|)は3.5度以下であり得る。前記角度の絶対値の差は具体的には、3度以下、2度以下、1度以下、0.5度以下であるか、または前記角度a1およびa2の大きさが互いに同じでもよい。このようなTD軸と遅相軸の関係を通じて、偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を効果的に防止することができる。
【0068】
一つの例として、前記少なくとも2個の色相歪曲防止用保護フィルムについて、各保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度はそれぞれ独立的に時計回り方向に0度~4.5度または反時計回り方向に0度~4.5度の範囲内であり得る。
【0069】
具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a1と第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a2はそれぞれ独立的に時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得る。
【0070】
具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a1と第2色相歪曲防止用2保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a2はそれぞれ独立的に反時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得る。
【0071】
具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a1は時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得、第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a2は反時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得る。
【0072】
具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a1は反時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得、第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対して遅相軸がなす角度a2は時計回り方向に0度~4.5度、0度~4度、0度~3.5度または0度~3度の範囲内であり得る。
【0073】
一つの例として、前記少なくとも2個の色相歪曲防止用保護フィルムについて、各保護フィルムのTD軸は互いに直交し得る。具体的な例として、第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸TD1と第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸TD2は互いに直交し得る。このような配置を通じて、偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を効果的に防止することができる。
【0074】
一つの例として、第1保護フィルムと第2保護フィルムのうちいずれか一つの保護フィルムと第3保護フィルムと第4保護フィルムのうちいずれか一つの保護フィルムが、それぞれ前記色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。具体的な例として、第1保護フィルムと第4保護フィルムがそれぞれ前記色相歪曲防止用保護フィルムであり得る。このような配置を通じて、偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する時に色相歪曲を効果的に防止することができる。
【0075】
図6は、偏光サングラスとディスプレイ装置の構造を例示的に示す。
図6に示した通り、偏光サングラス40は左眼レンズ401および右眼レンズ402を含むことができ、前記右眼レンズおよび左眼レンズはそれぞれ偏光子を含むことができる。一つの例示において、前記右眼レンズおよび左眼レンズの偏光子の光吸収軸は互いに平行し得る。前記ディスプレイ装置の第1偏光板に含まれる偏光子の光吸収軸と偏光サングラスに含まれる偏光子の光吸収軸は輝度向上の観点で互いに平行し得る。
【0076】
前記第1偏光板は、必要に応じて、視認側に1/4波長板をさらに含むことができる。一つの例示において、1/4波長板の遅相軸と偏光板の光吸収軸は互いに40度~50度、43度~47度、好ましくは45度をなし得る。ディスプレイ装置を偏光サングラスを着用して観察する場合、ディスプレイ装置の偏光板に含まれる偏光子の光吸収軸と偏光サングラスに含まれる偏光子の光吸収軸の関係により、観察者が観察する画面の輝度が低下したり、場合によっては画面が観察されない場合がある。ディスプレイ装置の偏光板が1/4波長板をさらに含む場合、光吸収軸の関係による輝度の低下を防止するという側面で有利であり得る。
【0077】
一つの例として、前記ディスプレイパネルは液晶パネルであり得る。液晶パネルは、対向配置された第1基板と第2基板の間に配置された液晶層を含むことができる。前記液晶層は液晶分子を含むことができる。前記液晶分子の種類、物性などは、目的とする液晶パネルの駆動モードにより適切に選択され得る。前記液晶分子としては例えば、ネマチック(nematic)相、スメクチック(smectic)相またはコレステリック(cholesteric)相を示すことができる液晶分子を使うことができる。
【0078】
前記液晶パネルの駆動モードとしては、DS(Dynamic Scattering)モード、ECB(Electrically Controllable Birefringence)モード、IPS(In‐Plane Switching)モード、FFS(Fringe‐Field Wwitching)モード、OCB(Optially Compensated Bend)モード、VA(Vertical Alignment)モード、MVA(Multi‐domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードなどを例示することができるが、これに制限されるものではない。
【0079】
前記第1基板と第2基板の内側にはそれぞれ第1および第2電極層が形成されていてもよい。前記電極層は液晶層の整列状態を切換できるように、液晶層に電界を印可することができる。前記電極層としては透明電極層を使うことができる。透明電極層としては、例えば、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤーまたはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物などを蒸着して形成したものを使うことができる。その他にも透明電極を形成できる多様な素材および形成方法が公知とされており、これを制限なく適用することができる。必要な場合、前記電極層は、適切にパターン化されていてもよい。
【0080】
前記第1および第2電極層の内側には前記液晶層の配向のための第1および第2配向膜が形成されていてもよい。前記配向膜としては垂直配向膜、水平配向膜、または斜線配向膜を使うことができる。前記配向膜としてはラビング配向膜のように接触式配向膜または光配向膜化合物を含めて、直線偏光の照射などのような非接触式方式によって配向特性を示し得る光配向膜を使うことができる。
【0081】
前記第1基板および第2基板としては、例えば、ガラス基板、結晶性または非結晶性シリコンフィルム、石英またはITO(Indium Tin Oxide)フィルムなどの無機系フィルムやプラスチックフィルムなどを使うことができる。前記基板としては、また、光学的に等方性である基材または位相差層のように光学的に異方性である基材を使うことができる。プラスチックフィルム基材の具体的な例として、TAC(triacetyl cellulose);ノルボルネン誘導体などのCOP(cyclo olefin copolymer);PMMA(poly(methyl methacrylate);PC(polycarbonate);PE(polyethylene);PP(polypropylene);PVA(polyvinyl alcohol);DAC(diacetyl cellulose);Pac(Polyacrylate);PES(poly ether sulfone);PEEK(polyetheretherketon);PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide);PEN(polyethylenemaphthatlate);PET(polyethyleneterephtalate);PI(polyimide);PSF(polysulfone);PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂などを含む基材フィルムが例示され得るがこれに制限されるものではない。基材には、必要に応じて金、銀、二酸化ケイ素または一酸化ケイ素などのケイ素化合物のコーティング層や、反射防止層などのコーティング層が存在してもよい。
【0082】
前記ディスプレイ装置は液晶パネルの視認側の反対側に光源をさらに含むことができ、前記光源と液晶パネルの間に第2偏光板が配置され得る。前記光源としては通常のバックライトユニットを使用することができ、前記バックライトユニットは発光ランプが配置される方式によりエッジ(edge)方式と直下方式に区別され得る。
【0083】
前記液晶パネルを含むディスプレイ装置(液晶表示装置)は、例えば、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置または投射型液晶表示装置であり得る。また、液晶表示装置は2次元画像を表示する表示装置であるかまたは3次元画像を表示する立体映像表示装置でもよい。
【0084】
前記において本出願の偏光板の用途として液晶表示装置を例にして説明したが、本出願の偏光板の用途は前記装置に制限されるものではなく、ディスプレイ装置に偏光板を適用できる多様なディスプレイ装置に適用され得る。他のディスプレイ装置の例としては無機発光表示装置、電界放出表示装置(FED;Field Emission Display)、表面電界放出表示装置(SFED;Surface Field Emission Display)、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子)を利用した表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置[例えば、回折光バルブ(GLV;grating light valve)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Light Processing)を有する表示装置および圧電セラミックス表示装置などがある。また、前記ディスプレイ装置を構成する方式は特に制限されず、本出願の偏光板がディスプレイ装置に含まれる限り、この分野に知られている構成方式に多様に変更され得る。
【発明の効果】
【0085】
本出願は偏光子の保護フィルムにより外部環境、例えば、水分に対する耐久性が優秀であり、偏光サングラスを着用して観察時に色相歪曲を防止できる偏光板および前記偏光板を含むディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【
図2】色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対する遅相軸の関係を例示的に示す図面。
【
図3】本出願のディスプレイ装置を例示的に示す図面。
【
図4】第1色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対する遅相軸の関係を例示的に示す図面。
【
図5】第2色相歪曲防止用保護フィルムのTD軸に対する遅相軸の関係を例示的に示す図面。
【
図6】偏光サングラスを着用してディスプレイ装置を観察する構造を例示的に示す図面。
【発明を実施するための形態】
【0087】
以下、実施例および比較例を通じて前記の内容をより具体的に説明するが、本出願の範囲は下記に提示された内容によって制限されるものではない。
【0088】
実施例1
第1保護フィルムとして、550nm波長の光に対する面内位相差値が315nmであり、TD軸(0度基準)に対して時計回り方向に1度の角度をなす遅相軸を有するPETフィルムを準備した。第2および第3保護フィルムとして、それぞれTD軸に対して遅相軸がなす角度が0度であるTACフィルムを準備した。第4保護フィルムとして、550nm波長の光に対する面内位相差値が315nmであり、TD軸(0度基準)に対して反時計回り方向に1度の角度をなす遅相軸を有するPETフィルムを準備した。第1および第2偏光子として、それぞれ偏光特性が99.995%であるPVA系偏光子を準備した。
【0089】
第1偏光子の両面に第1および第2保護フィルムをそれぞれ付着して第1偏光板を製造した。また、第2偏光子の両面に第3および第4保護フィルムをそれぞれ付着して第2偏光板を製造した。前記偏光子と保護フィルムの付着はUV硬化方法によって遂行された。この時、第1保護フィルムのTD軸と第1偏光子の光吸収軸が互いに90度をなすように付着し、第4保護フィルムのTD軸と第2偏光子の光吸収軸が互いに90度をなすように付着した。
【0090】
実施例2
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に3度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に3度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0091】
実施例3
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に3度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に3度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0092】
実施例4
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に3度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に3度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0093】
比較例1
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に4.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に4.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0094】
比較例2
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に4.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に4.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0095】
比較例3
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に4.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に4.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0096】
比較例4
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0097】
比較例5
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0098】
比較例6
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0099】
比較例7
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に12度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に12度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0100】
比較例8
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に12度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に12度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0101】
比較例9
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に12度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に12度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0102】
比較例10
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に17度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に17度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0103】
比較例11
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に17度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に17度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0104】
比較例12
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に17度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に17度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0105】
比較例13
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に27度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に27度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0106】
比較例14
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に27度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に27度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0107】
比較例15
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に27度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に27度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0108】
比較例16
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に40.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に40.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0109】
比較例17
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に40.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して時計回り方向に40.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0110】
比較例18
第1保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に40.6度をなし、第4保護フィルムの遅相軸がTD軸に対して反時計回り方向に40.6度をなすようにしたことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0111】
実施例5~8および比較例19~36
実施例1~4および比較例1~18でそれぞれ、第1保護フィルムと第2保護フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差値を720nmに変更したことを除いては、実施例1~4および比較例1~18と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0112】
実施例9~12および比較例37~54
実施例1~4および比較例1~18でそれぞれ、第1保護フィルムと第2保護フィルムの550nm波長の光に対する面内位相差値を954nmに変更したことを除いては、実施例1~4および比較例1~18と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0113】
参考例1
第1、第2、第3および第4保護フィルムについてそれぞれ、TD軸に対して遅相軸がなす角度が0度であるTAC保護フィルムを使ったことを除いては実施例1と同様にして第1および第2偏光板を製造した。
【0114】
評価例1.視感評価
実施例1~12、比較例1~54および参考例1で製造された第1偏光板と第2偏光板を、それぞれ液晶表示パネル(AUO社の製品)の両側に付着してディスプレイ装置を準備した。この時、第1保護フィルムのTD軸と第4保護フィルムのTD軸が互いに直交し、また、第2および第3保護フィルムが液晶表示パネル側に近く配置され、第1および第4保護フィルムがディスプレイ装置の外側に配置されるように付着した。
【0115】
偏光サングラスを着用していない状態および偏光サングラス(Luxen社の製品)を着用した状態でそれぞれディスプレイ装置を観察して視感を評価し、その結果を下記の表1~表3に記載した。評価結果は「色相歪曲なし」、「色相歪曲発生」および「色相歪曲強い(虹現象観察)」に区分した。色相歪曲の発生の有無は参考例1の第1偏光板と第2偏光板を前記液晶表示パネルの両側に付着して製造されたディスプレイ装置との色相差で分類した。
【0116】
【0117】
【0118】
【符号の説明】
【0119】
10:第1偏光板
20:第2偏光板
30:ディスプレイパネル
101:第1偏光子
102:第1保護フィルム
103:第2保護フィルム
201:第2偏光子
202:第3保護フィルム
203:第4保護フィルム
TD、TD1、TD2:TD軸
S(+)、S(-)、S1(+)、S1(-)、S2(+)、S2(-):遅相軸
a(+)、a(-)、a1(+)、a1(-)、a2(+)、a2(-):TD軸に対して遅相軸がなす角度
40:偏光サングラス
401:左眼レンズ
402:右眼レンズ
V:視認軸