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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ドア開閉制御システム
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/40 20150101AFI20220817BHJP
   E05F 15/73 20150101ALI20220817BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20220817BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20220817BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20220817BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20220817BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
E05F15/40
E05F15/73
E05F15/655
E05F7/00 G
B60J5/00 G
B60J5/06 A
B60J5/04 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019124288
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021008794
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】石垣 浩
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296777(JP,A)
【文献】特開2009-068265(JP,A)
【文献】特開2003-248882(JP,A)
【文献】特開2018-009386(JP,A)
【文献】特開2009-299387(JP,A)
【文献】特開2008-068714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/40
E05F 15/73
E05F 15/655
E05F 7/00
B60J 5/00
B60J 5/06
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉可能に支持されるスライドドアを電動で開閉可能なドア開閉装置と、
前記スライドドアを前記ドア開閉装置により開作動させる場合に操作される車内側の操作スイッチ及び車外側の操作スイッチと、
車室内に配置され、前記車室内における前記スライドドアの内張りトリムを基準面として、当該基準面から車室内側へ僅かに離れた位置との間の範囲に設定した所定のエリアを撮像可能な撮像部と、
前記撮像部で撮像した画像情報を基に、前記所定のエリア内に物体の有無を識別可能な物体検出部と、
前記車内側の操作スイッチ及び前記車外側の操作スイッチの操作を契機に、前記ドア開閉装置を駆動制御可能な制御部とを備え、
前記制御部は、前記スライドドアが全閉位置にあって、かつ前記撮像部で撮像した画像情報を基に、前記物体検出部が前記所定のエリア内に物体を識別して、当該識別した物体の画像情報が所定の大きさの範囲内で、かつ全体的に丸みがある人体の頭部を識別した場合には、前記車内側の操作スイッチの開操作を有効にする一方、前記車外側の操作スイッチの開操作を無効にして前記ドア開閉装置の開駆動制御を実行させないことを特徴とするドア開閉制御システム。
【請求項2】
前記撮像部は、3次元距離情報を含む画像情報を取得する距離画像カメラであることを特徴とする請求項記載のドア開閉制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスライドドアをモータ等の動力源により開閉可能なドア開閉装置を備えたドア開閉制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスライドドアをモータ等の動力源により開閉可能なドア開閉装置を備えた車両においては、安全性を確保するため、スライドドアの閉作動中、スライドドアの開閉軌道上に人体等の物体が存在することを検出した場合、スライドドアが物体に接触することを未然に回避し得るように、モータを停止制御して、スライドドアの閉作動を停止させるようにしている。
【0003】
スライドドアの開閉軌道上に物体が存在することを検出する方法としては、例えば、スライドドアの周囲を撮像可能な撮像部によって撮像された画像情報に基づいて、スライドドアに近接する物体を検出するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-009386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のドア開閉制御システムにおいては、撮像部がスライドドアの開閉軌道を撮像可能としているが、例えば、車室内の後部座席に座っている子供、幼児等の人体の状態を監視不能であるため、人体がスライドドアの内張りトリムに寄り掛かる等している場合、車外側から開操作で車室内の状況を確認しないでスライドドアを開作動させると、人体の一部が座席と車体との間の隙間に巻き込まれるような事態を未然に防止できない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、車室内の状況を監視可能とすることで、スライドドアの開作動時の安全性の向上を可能にしたドア開閉制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明におけるドア開閉制御システムは、車体に開閉可能に支持されるスライドドアを電動で開閉可能なドア開閉装置と、前記スライドドアを前記ドア開閉装置により開作動させる場合に操作される車内側の操作スイッチ及び車外側の操作スイッチと、車室内に配置され、前記車室内における前記スライドドアの内張りトリムを基準面として、当該基準面から車室内側へ僅かに離れた位置との間の範囲に設定した所定のエリアを撮像可能な撮像部と、前記撮像部で撮像した画像情報を基に、前記所定のエリア内に物体の有無を識別可能な物体検出部と、前記車内側の操作スイッチ及び前記車外側の操作スイッチの操作を契機に、前記ドア開閉装置を駆動制御可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記スライドドアが全閉位置にあって、かつ前記撮像部で撮像した画像情報を基に、前記物体検出部が前記所定のエリア内に物体を識別して、当該識別した物体の画像情報が所定の大きさの範囲内で、かつ全体的に丸みがある人体の頭部を識別した場合には、前記車内側の操作スイッチの開操作を有効にする一方、前記車外側の操作スイッチの開操作を無効にして前記ドア開閉装置の開駆動制御を実行させないことを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記撮像部は、3次元距離情報を含む画像情報を取得する距離画像カメラである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、車室内に設けた撮像部で撮像した画像情報に基づいて車室内の状況を監視し、かつ車室内の所定のエリアに物体を識別した場合には、操作スイッチの操作をキャンセルすることにより、車室内の物体が座席と車体との間の隙間に巻き込まれるような事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るドア開閉制御システムを搭載した車両Cの側面図である。
図2】ドア開閉制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
図3】車両と人体との位置関係を示す概略正面図である。
図4】車両と人体との位置関係を示す概略平面図である。
図5】車室内の状況を説明するための概略斜視図である。
図6】スライドドアが開作動して最中に、ユーザが車室内に乗り込もうとする模様を説明するための概略斜視図である。
図7】スライドドアが全閉位置にあって、車外側から開操作された場合のドア開作動、及びスライドドアの開作動時にスライドドアが半開位置に停止した場合のドア閉作動の流れを説明するためのフローチャート図である。
図8】スライドドアが全閉位置にあって、車室内から開操作された場合のドア開作動、及びスライドドアの開作動時にスライドドアが半開位置に停止した場合のドア閉作動の流れを説明するためのフローチャート図である。
図9】スライドドアが全開位置にあって、車外側から閉操作された場合のスライドドアの閉作動の流れを説明するためのフローチャート図である。
図10】スライドドアが全開位置にあって、車室内から閉操作された場合のスライドドアの閉作動を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るドア開閉制御システムを搭載した車両Cの側面図である。図2は、ドア開閉制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る車両Cは、車体前部の左右両側面に設けられた前部乗降口を開閉可能な左右のスイング式のサイドドアD1と、車体後部の左右両側面に設けられた後部乗降口Eを開閉可能な左右のスライドドアD2を備えるタイプの自動車であり、スライドドアD2を電動で開閉可能なドア開閉装置1と、車室内に配置されて、後部乗降口Eを含むスライドドアD2の周辺を撮像可能な撮像部2と、後述の各操作信号、検出信号及び撮像部2により撮像された画像情報に基づいてドア開閉装置1を制御する制御部3とを備えて、ユーザが後部乗降口Eを利用して車両Cに乗降するときの安全性及び利便性を高めたドア開閉制御システムを搭載している。
【0014】
スライドドアD2は、ドア開閉装置1の動力により後部乗降口Eを開閉し得るように、車体側面に前後方向へ移動可能に支持されると共に、車外側に配置されるアウトサイドハンドルOHと、車内側に配置されるインサイドハンドルIHと、内部に配置される全閉ドアロック装置CDR、全開ドアラッチ装置ODR及びクローザ装置CLとを備えている。
【0015】
ドア開閉装置1は、駆動源の開閉用モータ4と、開閉用モータ4の動力をスライドドアD2に伝達する図示略の動力伝達機構とを含んで構成され、開閉用モータ4の動力を動力伝達機構を介してスライドドアD2に伝達することによって、スライドドアD2を開方向(後方)及び閉方向(前方)へ移動させる。開閉用モータ4は、後述のようにして制御部3により制御される。ドア開閉装置1には、スライドドアD2におけるそのときの位置を検出するための図示略のセンサが設けられる。
【0016】
アウトサイドハンドルOHは、スライドドアD2を車外から開閉する際に把持操作されるものであって、ユーザの手の接触又は接近を検知可能な静電容量センサを有している。静電容量センサは、スライドドアD2が全閉位置にある場合には、ユーザの手を検知することで制御部3に開操作信号を送信し、スライドドアD2が全開位置にある場合には、ユーザの手を検知することで制御部3に閉操作信号を送信するアウトサイド操作スイッチ5を構成する。
【0017】
インサイドハンドルIHは、スライドドアD2の車内側に前後方向へ回転可能に枢支されて、スライドドアD2を車内から開閉する際に回転操作されるものであって、前方への回転操作が閉操作となり、後方への回転操作が開操作となるように構成される。インサイドハンドルIH自体又はその近傍には、インサイドハンドルIHの閉操作を検出するインサイド閉操作スイッチ6及び同じく開操作を検出するインサイド開操作スイッチ7が設けられる。インサイド閉操作スイッチ6及びインサイド開操作スイッチ7の各操作信号はそれぞれ、制御部3に送信される。
【0018】
全閉ドアラッチ装置CDRは、図示略の車体側のストライカに係合することによりスライドドアD2を全閉位置に保持するものであって、電動式のリリースアクチュエータACT1及び施解錠アクチュエータACT2を備える。
【0019】
リリースアクチュエータACT1は、制御部3により駆動制御されることにより全閉ドアラッチ装置CDRの図示略のリリース機構部を作動させて、全閉ドアラッチ装置CDRとストライカとの係合を解除して、全閉位置に保持されているスライドドアD2の開作動を可能にする。全閉ドアラッチ装置CDRのリリース機構部は、全開ドアラッチODRのリリース機構部に連結される。これにより、リリースアクチュエータACT1の動力は、全閉ドアラッチ装置CDRのリリース機構部を介して全開ドアラッチ装置ODRのリリース機構部にも伝達されて、全開ドアラッチ装置ODRとストライカとの係合を解除して、全開位置に保持されているスライドドアD2の閉作動を可能にする。
【0020】
施解錠アクチュエータACT2は、全閉ドアラッチ装置CDRをロック状態及びアンロック状態に切り替えるものである。全閉ドアラッチ装置CDRがアンロック状態の場合には、アウトサイド操作スイッチ5の操作で全閉ドアラッチ装置CDRとストライカとの係合を解除してスライドドアD2を開けることが可能である。全閉ドアラッチ装置CDRがロック状態の場合には、アウトサイド操作スイッチ5が操作されても、全閉ドアラッチ装置CDRとストライカとの係合を解除不能としてスライドドアD2を開けることができない。但し、ユーザがキーレスエントリシステム等のシステムのキー本体11を携帯している等して、ユーザの認証が成功している場合には、全閉ドアラッチ装置CDRがアンロック状態及びロック状態のいずれの状態であっても、アウトサイド操作スイッチ5の操作によりスライドドアD2を開けることは可能である。
【0021】
全開ドアラッチ装置ODRは、車体側の図示略のストライカに係合することによりスライドドアD2を全開位置に保持するものであって、スライドドアD2の全開時、アウトサイド操作スイッチ5又はインサイド閉操作スイッチ6の閉操作に基づくリリースアクチュエータACT1の作動により、ストライカとの係合を解除してスライドドアD2の全開位置からの閉作動を可能にする。
【0022】
クローザ装置CLは、モータ等の動力により全閉ドアラッチ装置CDRの図示略の噛合機構部をストライカに噛合する噛合方向に作動させる構成を備えて、スライドドアD2の閉作動時、スライドドアD2をハーフラッチ位置(半ドア位置)から全閉位置まで強制的に移動させるものである。
【0023】
撮像部2は、車室内天井に設置され、後部乗降口Eを含むスライドドアD2の周辺、具体的には、車室内の所定エリア、スライドドアD2のドア開閉軌道エリア、及び車外側の予め定めた所定エリア内に存在する物体を撮像することで、車室内を含むスライドドアD2の周辺の状況を監視する。
【0024】
撮像部2により撮像される物体は、以下の説明においては、人体として説明するが、これに限定されるものでなく、物体としては、例えば、荷物、動物等を例示することができる。
【0025】
好ましくは、撮像部2は、3次元距離情報を含む画像情報を取得する距離画像カメラとする。距離画像カメラは、例えばTOF(Time of Flight)カメラであることが望ましい。さらに、好ましくは、撮像部2は、車室内の所定エリア、ドア開閉軌道エリア及び車外側の所定エリア内に存在する人体を確実に撮像可能とするため、撮像基準を左側のスライドドアD2とする場合には、右側の後部乗降口の上方に設置される。撮像部2で撮像された画像情報(映像情報を含む)は、制御部2に送信される。但し、撮像部2は、車室内に配置される関係上、スライドドアD2が開いている場合のみ、ドア開閉駆動エリア及び車外側の所定エリアを撮像可能である。
【0026】
制御部3は、ECU(electronic control unit)により構成され、車両Cに設けられたCAN(Controller Area Network)に接続される。制御部3の入力インターフェイスには、CANを介して、撮像部2、アウトサイド操作スイッチ5、インサイド閉操作スイッチ6、インサイド開操作スイッチ7、シフトレバー検出スイッチ8、車速センサ9及び遠隔操作スイッチ10等が電気的に接続される。遠隔操作スイッチ10は、車両Cの運転席等に設けられ、スライドドアD2をドア開閉装置1により開閉作動させる際に操作される操作スイッチである。
【0027】
制御部3の出力インターフェイスには、ドア開閉装置1の開閉用モータ4、リリースアクチュエータACT1、施解錠アクチュエータACT2及びクローザ装置CLが電気的に接続される。さらに、制御部3には、キー本体11から送信される電波を受信可能な図示略の受信部が設けられる。
【0028】
制御部3は、ユーザの認証を行う認証部31と、撮像部2で撮像された画像情報を基に、人体の有無、人体の手の形及び手の動作を検出する物体検出部32と、開閉用モータ4、リリースアクチュエータACT1、施解錠アクチュエータACT2及びクローザ装置CLを制御する開閉制御部33とを備える。制御部3としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。
【0029】
認証部31は、キー本体11から送信される認証用の電波等の認証情報に基づいて、ユーザの認証を行う。
【0030】
図3は、車両Cと人体との位置関係を示す概略正面図である。図4は、車両Cと人体との位置関係を示す概略平面図である。図5は、車室内の状況を説明するための概略斜視図である。図6は、スライドドアD2が開作動している最中に、ユーザが車室内に乗り込もうとする模様を説明するための概略斜視図である。
【0031】
物体検出部32は、撮像部2が撮像した画像情報を基に、取得した画像情報が人体であるか否かを識別し、人体である場合にはその移動方向及び移動速度を検出可能であると共に、検出した人体が予め定めた複数の所定エリアのうち、いずれのエリアに位置するかを検出する。例えば、所定エリアとしては、図3、4に示すように、ドア開閉駆動エリアA1と、車外側の危険エリアA2及び危険予備エリアA3と、車室内側の危険エリアA4が設定される。
【0032】
人体の識別、移動方向及び移動速度は、撮像部2から取得した画像情報から一定距離範囲の物体のみを抽出し、認識した必要な部分(人体の形状特徴部分)のみを背景画像から分離して識別することで行われる。
【0033】
ドア開閉軌道エリアA1は、スライドドアD2が開閉する軌道に相当するエリアであって、図3に示すように、人体H1がドア開閉軌道エリアA1内に進入し、かつスライドドアD2が閉作動した場合、人体H1がスライドドアD2と乗降口Eの枠との間に挟み込まれてしまう危険なエリアである。
【0034】
危険エリアA2は、図3、4に示すように、ドア開閉軌道エリアA1から車外側へ例えば30cmの範囲に設定され、人体H2がドア開閉軌道エリアA1に極めて接近して少しでも乗降口E側へ向けて動くような動作を行った場合、閉作動しているスライドドアD2に接触したり挟み込まれたりする虞があるエリアである。
【0035】
危険予備エリアA3は、図3、4に示すように、例えばドア開閉軌道エリアA1から車外側へ100cmの範囲に設定され、人体H3が予期しない動作で乗降口E側へ向けて大きく動かない限り、安全なエリアである。
【0036】
車内側の危険エリアA4は、図3、4に示すように、例えば、スライドドアD2の室内側の側面に設けられる内張りトリムD3を基準面として、基準面から車室内側へ例えば6cmの範囲に設定され、例えば図5に示すように、後部座席Sに座っている幼児等の人体H4が閉じているスライドドアD2に近接又は寄り掛かる等している状況において、スライドドアD2が開作動すると、人体H4の一部(例えば頭部)が後部座席Sの背凭れS1と車体との間の隙間に巻き込まれる虞があるエリアである。
【0037】
物体検出部32は、撮像部2で撮像した画像情報を基に、ドア開閉軌道エリアA1、危険エリアA2及び危険予備エリアA3においては、大人、子供を含む人体の全体像を識別し、車内側の危険エリアA4においては、例えば人体の頭部又は頭部の一部であるか否かを識別する。頭部を識別する方法としては、撮像部2で撮像した車室内の画像情報を基に人体であると識別した場合、識別した人体の部分毎の画像情報をもって、画像情報の高さ及び幅方向のピクセル数及び積算値のピクセル数が所定の範囲内、すなわち所定の大きさの範囲内で、かつ全体的に丸みがある形状であると識別した場合に頭部と識別する方法が考えられる。なお、ピクセル数は、撮像部2に撮像した画像情報の解像度により変化する。
【0038】
さらに、物体検出部32は、撮像部2で撮像した画像情報に基づいて、予め定めた所定のジェスチャーエリア内での人体の手の形及び動作を識別する。ジェスチャーエリア内は、例えば、車外側にあっては危険エリアA1内とし、車室内側にあってはスライドドアD2の内張りトリムD3から例えば30cmの範囲内とする。
【0039】
さらに、物体検出部32は、識別した手の形が、スライドドアD2を開ける意思を表す予め定めた所定の形で、かつスライドドアD2を開ける方向へ動いたことを検出した場合、すなわちユーザによる開ジェスチャを検出した場合には、開操作信号を開閉制御部33に送信し、また、スライドドアD2を閉める意思を表す予め定めた所定の形で、かつスライドドアD2を閉じる方向へ動いたことを検出した場合、すなわちユーザによる閉ジェスチャを検出した場合には、閉操作信号を開閉制御部33に送信する。
【0040】
開閉制御部33は、アウトサイド操作スイッチ5、インサイド閉操作スイッチ6、インサイド開操作スイッチ7、遠隔操作スイッチ10及びキー本体11の操作信号、物体検出部32により検出された人体の位置情報及び手の動作方向に基づいて、開閉用モータ4、リリースアクチュエータACT1及び施解錠アクチュエータACT2を制御する。
【0041】
開閉制御部33は、物体検出部32からドア開閉軌道エリアA1、危険エリアA2、A4及び危険予備エリアA3のいずれにも人体を検出しない旨の情報が送信されているときには、スライドドアD2の閉速度が高速度になるようにドア開閉モータ4を高速度閉制御し、物体検出部32から危険予備エリアA3に人体H3が存在する旨の情報が送信されているときには、スライドドアD2の閉速度が高速度よりも低速の通常速度になるように、開閉用モータ4を通常速度閉制御し、物体検出部32から危険エリアA2内に人体H2が存在する旨の情報が送信されているときには、スライドドアD2の閉速度が通常速度よりもさらに低速の低速度になるように、開閉用モータ4を低速度閉制御する可変速度制御を行う。可変速度制御は、遠隔操作スイッチ10及びキー本体11からの閉操作信号を入力した場合に実行され、アウトサイド操作スイッチ5及びインサイド閉操作スイッチ6からの閉操作信号を入力した場合には、原則として通常速度閉制御が実行される。
【0042】
開閉制御部33は、物体検出部32からドア開閉軌道エリアA1内に人体H1が存在する旨の情報が送信されているとき及び送信されたときには、スライドドアD2の閉作動を不能とする停止制御を行い、物体検出部32から車内側の危険エリアA4に人体H4が存在する旨の情報が送信されているときには、アウトサイド操作スイッチ5、遠隔操作スイッチ10及びキー本体11の開操作をキャンセルするキャンセル制御を行い、開閉用モータ4の開駆動制御を行わない。前述の停止制御は、アウトサイド操作スイッチ5、インサイド閉操作スイッチ6、遠隔操作スイッチ10及びキー本体11のいずれかの閉操作信号を入力した場合に実行される。前述のキャンセル制御は、インサイド操作スイッチから操作信号が送信された場合には実行しない。
【0043】
次に、図7~10に示すフローチャートを参照して、ドア開閉制御システムにより実行されるドア開閉制御処理について説明する。なお、以下の説明においては、認証部31がユーザの認証を成功した状態で、かつシフトレバー検出スイッチ8がシフトレバーのニュートラル位置又はパーキング位置を検出し、車速センサ9が車両Cの停止を検出している状態を前提としている。
【0044】
先ず、図7に示すフローチャートに基づいて、スライドドアD2が全閉位置にあって、車外側から開操作された場合のドア開作動、及びスライドドアD2の開作動時にスライドドアD2が半開位置に停止した場合のドア閉作動の流れについて説明する。
【0045】
制御部3は、ステップS101においてアウトサイド操作スイッチ5又はキー本体11(車外にいるユーザが所持)からの車外側の開操作信号を受信すると、ステップS102において撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32が車内側の危険エリアA4に人体H4が存在するか否かを識別し、車内側の危険エリアA4に人体H4を識別しない場合(NO)には、ステップS103においてリリース駆動制御を行い、危険エリアA4に人体H4を識別した場合(YES)には、ステップS112において車外側の開操作信号をキャンセルする。
【0046】
ステップS103において、制御部3は、開閉制御部33にリリース駆動制御信号を送信し、リリースアクチュエータACT1をリリース駆動制御する。これにより、全閉ドアラッチ装置CDRとストライカとの係合が解除される。次いで、ステップS104において、制御部3は、開閉制御部33に開駆動制御信号を送信し、開閉用モータ4を開駆動制御する。これにより、スライドドアD2は、全閉位置から開作動を開始する。この場合、開閉用モータ4は、スライドドアD2の開速度が通常速度になるように、開閉駆動部33により駆動制御される。
【0047】
次に、ステップS105において、制御部3は、スライドドアD2が開作動している最中、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)には、開閉用モータ4の開駆動制御をスライドドアD2が全開位置に達するまで継続し、スライドドアD2が全開位置に達した時点で開閉用モータ4の停止制御を行う(ステップS106)。これにより、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1が存在しない場合には、スライドドアD2は、全開位置に移動して全開ドアラッチ装置ODRがストライカに係合することで全開位置に保持される。
【0048】
前述のステップS102において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32が車内側の危険エリアA4内に人体H4を識別した場合(YES)には、制御部3は、ステップS112においてアウトサイド操作スイッチ5及びキー本体11の車外側の開操作信号をキャンセルし、リリースアクチュエータACT1及び開閉用モータ4の駆動制御を実行しない。
【0049】
車内側の危険エリアA4内に人体H4を識別したということは、図5に示すような状況下にあって、後部座席Sに座っていた子供、幼児等の人体H4がスライドドアD2の室内側の内張りトリムD3に寄り掛かる等して近接又は接触した危険な状況であると考えられる。したがって、このような状況で、車外側からの開操作でスライドドアD2が全閉位置から開作動すると、人体H4の一部、例えば頭部が車体と背凭れS1との間の隙間に巻き込まれる虞がある。これを未然に防止するため、本実施形態のドア開閉制御システムは、車内側の危険エリアA4内に人体H4を識別している場合には、車外側の開操作信号をキャンセルしてスライドドアD2を開作動させないようにしている。
【0050】
前述のステップS105において、スライドドアD2が開作動している最中、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1に人体H1を識別した場合(YES)には、制御部3は、スライドドアD2が全開位置に達する前であっても、ステップS107において開閉制御部33に停止制御信号を送信して開閉モータ4を停止制御する。これにより、開作動していたスライドドアD2は全開位置に達することなく半開位置に停止する。
【0051】
ステップS105において、スライドドアD2が開作動している最中、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別したということは、図3、6に示すように、スライドドアD2が開作動しているにも係らず、人体H1がドア開閉駆動エリアA1内に進入して車室内に乗り込もうとしている状況と考えられる。したがって、この場合には、半開位置で停止したスライドドアD2の開き量が人体H1の乗車に十分な開き量であれば、これ以上、スライドドアD2を開作動させることは必ずしも必要としない。このようにすることで、スライドドアD2を早期に停止させて、開閉用モータ4を無駄に開作動させる必要性が無くなる。
【0052】
好ましくは、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した際、開閉用モータ4を停止制御するタイミングは、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した時点において、スライドドアD2が人体H1の乗車に十分な開き量を有する半開位置の場合には、開閉用モータ4を即座に停止制御し、スライドドアD2が人体H1の乗車には狭い開き量の半開位置の場合には、スライドドアD2を人体H1の乗車に十分な開き量を有する予め定めた半開位置まで開作動させた時点で開閉用モータ4を停止制御する。
【0053】
ステップS107において、スライドドアD2を半開位置に停止させる半開停止制御を行った後、次のステップS108において、制御部3は、スライドドアD2が半開位置に停止している状態において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)、換言すると、人体H1の車室内への乗車が完了してドア開閉駆動エリアA1から退避した場合には、ステップS109に進んで車内側の閉操作信号を待ち、ドア開閉軌道エリアA1に人体H1を未だ識別している場合(YES)には、撮像部2で撮像した画像情報に基づいて人体H1の識別を継続する。
【0054】
ステップS109において、制御部3は、乗車した人体H5によるインサイド閉操作スイッチ6の閉操作信号を受信するか、又は撮像部2で撮影されたユーザの手の形及び動作の画像情報に基に、物体検出部32が閉ジェスチャを検出すると、開閉制御部33に閉駆動制御信号を送信して開閉用モータ4を閉駆動制御(ステップS110)し、スライドドアD2が全閉位置に達した時点で開閉用モータ4を停止制御する(ステップS111)。これにより、スライドドアD2は、ドア開閉装置1の閉駆動により半開位置から閉作動して全閉ドアラッチ装置CDRがストライカに係合することで全閉位置に保持される。
【0055】
上述のように、本実施形態のドア開閉制御システムは、スライドドアD2が開作動している最中にユーザが車室内に乗り込もうとする等して、ドア開閉駆動エリアA1内に人体を識別した場合には、スライドドアD2を半開位置に停止させ、その後、乗車が完了した時点でインサイドハンドルIHを閉操作するか、又は閉ジェスチャを行うことで、スライドドアを半開位置から閉作動させるものであるから、ユーザが乗車時に費やすスライドドアD2の開閉時間を短縮することが可能となり、ユーザの速やかな乗車を可能にする。
【0056】
次に、図8に示すフローチャートに基づいて、スライドドアD2が全閉位置にあって、車室内から開操作された場合のドア開作動、及びスライドドアD2の開作動時にスライドドアD2が半開位置に停止した場合のドア閉作動の流れについて説明する。
【0057】
制御部3は、ステップS201において後部座席Sに座っている車室内の人体H5によるインサイドハンドルIHの開操作によるインサイド開操作スイッチ7の開操作信号、又は撮像部2で撮影されたユーザの手の形及び動作の画像情報に基に、物体検出部32が車内側の開ジェスチャを検出すると、リリースアクチュエータACT1を駆動制御(ステップS202)し、次に、ドア開閉装置1の開閉用モータ4を開駆動制御する(ステップS203)。これにより、スライドドアD2は、全閉位置から開作動を開始する。この場合、開閉用モータ4は、スライドドアD2の開速度が通常速度になるように駆動制御される。
【0058】
次に、ステップS204において、制御部3は、スライドドアD2が開作動している最中、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)には、開閉用モータ4の開駆動制御をスライドドアD2が全開位置に達するまで継続し、スライドドアD2が全開位置に達した時点で開閉用モータ4の停止制御を行う(ステップS205)。これにより、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合には、スライドドアD2は、ドア開閉装置1の開駆動により全開位置に移動して全開ドアラッチ装置ODRがストライカに係合することで全開位置に保持される。
【0059】
前述のステップS204において、スライドドアD2が開作動している最中、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した場合(YES)には、ステップS206において、制御部3は、スライドドアD2が全開位置に達する前であっても、開閉制御部33に停止制御信号を送信して開閉モータ4を停止制御する。これにより、開作動していたスライドドアD2は半開位置に停止する。
【0060】
ステップS204において、スライドドアD2が開作動している最中、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別したということは、スライドドアD2が開作動しているにも係らず、ユーザである人体H1がドア開閉駆動エリアA1内に進入して車室内から降りようとしている状況と考えられる。したがって、この場合には、半開位置で停止したスライドドアD2の開き量がユーザの降車に十分な開き量であれば、これ以上、スライドドアD2を開作動させることは必ずしも必要としない。このようにすることで、ユーザが降車する際、スライドドアD2を早期に停止させて開閉用モータ4を無駄に開作動させる必要がない。
【0061】
好ましくは、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した際、開閉用モータ4を停止制御するタイミングは、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した時点において、スライドドアD2がユーザが降車するに十分な開き量を有する半開位置の場合には、人体H1を識別した時点で開閉用モータ4を即座に停止制御し、スライドドアD2がユーザが降車するには狭い開き量の半開位置の場合には、スライドドアD2がユーザの降車に十分な開き量を有する予め定めた半開位置まで開作動させた時点で開閉用モータ4を停止制御する。
【0062】
次に、ステップS207において、制御部3は、スライドドアD2が半開位置に停止している状態において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別している場合(YES)には、撮像部2で撮像した画像情報に基づいて人体H1の識別の監視を継続し、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1から人体H1が除去されたことを識別した場合(NO)、換言すると、乗員である人体H1の降車が完了した場合には、車外側の閉操作信号を待つ。
【0063】
次に、ステップS208において、制御部3は、アウトサイド操作スイッチ5の操作信号を入力するか、又は撮像部2で撮影されたユーザの手の形及び動作の画像情報に基に、物体検出部32が閉ジェスチャを検出すると、開閉制御部33に閉駆動制御信号を送信して開閉用モータ4を閉駆動制御し(ステップS209)、スライドドアD2が全閉位置に達することで開閉用モータ4を停止制御する(ステップS210)。これにより、スライドドアD2は、ドア開閉装置1の閉駆動により半開位置から閉作動して全閉ドアラッチ装置CDRがストライカに係合することで全閉位置に保持される。
【0064】
上述のように、本実施形態のドア開閉制御システムは、車室内から開操作された場合には、スライドドアD2が開作動している最中に、ドア開閉駆動エリアA1内に人体H1を識別した場合には、スライドドアD2を半開位置に停止させる半開停止制御を行い、そして、ユーザがドア開閉軌道エリアA1から退避した後に車外から閉操作されると、スライドドアD2を半開位置から閉作動させる制御を行うものであるから、ユーザが降車時に費やすスライドドアD2の開閉時間を短縮することが可能となり、ユーザの速やかな降車を可能にする。
【0065】
なお、車内からスライドドアD2を開ける場合には、乗員がスライドドアD2の内張りトリムD3に近接した姿勢であるが、運転席からの遠隔操作スイッチ10の開操作は、運転席から後方の乗員を視認しにくいため、車内側の危険エリアA4に人体H4を識別しているときには、車内側の開操作のキャンセル制御を行うのが望ましい。
【0066】
次に、図9に示すフローチャートに基づいて、スライドドアD2が全開位置にあって、車外側から閉操作された場合のスライドドアD2の閉作動の流れについて説明する。
【0067】
制御部3は、ステップS301においてアウトサイド操作スイッチ5又はキー本体11からの車外側の閉操作信号を受信するか、又は撮像部2で撮影された車外にいるユーザの手の形及び動作の画像情報に基に、物体検出部32が車外側の閉ジェスチャを検出すると、ステップ302において撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)には、ステップS303における制御を行い、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した場合(YES)には、ステップS308において車外側の閉操作信号をキャンセルするキャンセル制御を行う。
【0068】
ステップS303において、制御部3は、車外側の閉操作信号に基づいて、リリースアクチュエータACT1をリリース駆動制御する。これにより、全開ドアラッチ装置ODRとストライカとの係合が解除される。次いで、ステップS304において、制御部3は、開閉用モータ4を閉駆動制御する。これにより、スライドドアD2は、全開位置から閉作動を開始する。
【0069】
ステップS304の開閉用モータ4の閉駆動制御において、開閉制御部33は、アウトサイド操作スイッチ5による閉操作信号及び閉ジェスチャの検出に基づく場合には、開閉用モータ4を通常速度駆動制御し、車外にいるユーザが所持しているキー本体11からの閉操作信号に基づく場合には、次のような速度可変駆動制御を行う。
(A)撮像部2で撮像した画像情報に基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1、危険エリアA2、予備危険エリアA3及び危険エリアA4のいずれにも人体を識別しない場合には、スライドドアD2が高速で閉作動するように、開閉用モータ4を高速閉駆動制御する。
(B)撮像部2で撮影した画像情報に基に、物体検出部32が危険予備エリアA3に人体H3を識別しているときには、スライドドアD2が通常速度で閉作動するように、開閉用モータ4を通常速度閉駆動制御する。
(C)撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32が車内外の危険エリアA1に人体H1を識別している場合には、スライドドアD2が低速度で閉作動するように、開閉用モータ4を低速閉駆動制御する。
すなわち、車外の人体が乗降口Eに接近するにしたがって、スライドドアD2の閉速度が遅くなるように速度制御され、車外の人体が乗降口Eから遠ざかるにしたがって、スライドドアD2の閉速度が速くなるように速度制御される。
【0070】
次に、ステップS305において、制御部3は、スライドドアD2が閉作動している最中、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(YES)には、開閉用モータ4の閉駆動制御をスライドドアD2が全閉位置に達するまで継続し、スライドドアD2が全閉位置に達した時点で開閉用モータ4の停止制御を行う(ステップS306)。これにより、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合には、スライドドアD2は、全閉位置に移動して全閉ドアラッチ装置CDRがストライカに係合することで全閉位置に保持される。
【0071】
前述のステップS302において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、スライドドアD2が閉作動する前に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体Hを識別した場合(YES)には、ステップS308においてアウトサイド操作スイッチ5、閉ジェスチャ及びキー本体11の車外側の閉操作をキャンセルし、リリースアクチュエータACT1及び開閉用モータ4の駆動制御を実行しない。
【0072】
また、前述のステップS305において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、スライドドアD2が閉作動している最中、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した場合(YES)には、制御部3は、ステップS307において開閉用モータ4の停止制御を行う。これにより、ドア開閉軌道エリアA1内に存在する人体H1を無接触で検出して、閉作動しているスライドドアD2が人体に接触するような事態を未然に防止できる。
【0073】
次に、図10に示すフローチャートに基づいて、スライドドアD2が全開位置にあって、車室内から閉操作された場合のスライドドアD2の閉作動制御の流れについて説明する。
【0074】
ステップS401において、制御部3は、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)には、ステップS402以降の制御を行い、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別している場合(YES)には、ステップS421以降の制御を行う。
【0075】
ステップS402に移行した場合には、制御部3は、車室内の人体H5によるインサイドハンドルIHの閉操作によるインサイド閉操作スイッチ6の閉操作信号、又は撮像部2で撮影されたユーザの手の形及び動作の画像情報に基に、物体検出部32が車内側の閉ジェスチャを検出するか、若しくは遠隔操作スイッチ10からの車内側の閉操作信号を受信すると、車内側の閉操作信号に基づいて、開閉制御部33にリリース駆動制御信号を送信してリリースアクチュエータACT1のリリース駆動制御を行い(ステップS403)、次に、開閉用モータ4を閉駆動制御する(ステップS404)。これにより、全開ドアラッチ装置ODRとストライカとの係合が解除されて、スライドドアD2が全開位置から閉作動を開始する。
【0076】
ステップS404の開閉用モータ4の閉駆動制御において、開閉制御部33は、インサイド閉操作スイッチ6による閉操作信号又は閉ジェスチャの検出に基づく場合には、開閉用モータ4の通常速度閉駆動制御を行い、遠隔操作スイッチ11からの閉操作信号に基づく場合には、前述のような速度可変駆動制御を行う。
【0077】
次に、ステップS405において、制御部3は、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合(NO)には、開閉用モータ4の閉駆動制御をスライドドアD2が全閉位置に達するまで継続し、スライドドアD2が全閉位置に達した時点で開閉用モータ4の停止制御を行う(ステップS406)。これにより、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合には、スライドドアD2は、全閉位置に移動して全閉ドアラッチ装置CDRがストライカに係合することで全閉位置に保持される。
【0078】
ステップS405において、撮像部2で撮像した画像情報を基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別した場合(YES)には、ステップS408において、制御部3は、閉作動しているスライドドアD2が人体H1に接触する危険性を未然に回避するため、非接触で人体H1を識別した時点で、即座に開閉用モータ4を停止制御する。これにより、閉作動しているスライドドアD2は、人体H1に接触する前に半開位置に停止し、人体H1を挟み込むことはない。
【0079】
前述のステップS401において、スライドドアD2が全開位置にあって、かつ撮像部2に撮像した画像情報に基に、物体検出部32がドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別している状況としては、先に降車した大人である人体H1が、車室内の幼児を降車させるため車室内に身を乗り入れているか、又は大きな荷物等を取り出すため車室内に身を乗り入れている等の状況が考えられる。したがって、ステップS421に移行した場合には、制御部3は、インサイドハンドルIHの閉操作によるインサイド閉操作スイッチ6の閉操作信号を入力しても、開閉制御部33に閉駆動指令信号を送信しないで、インサイド閉操作スイッチ6による閉操作信号を一時的に記憶する。
【0080】
次に、ステップS422において、制御部3は、ドア開閉軌道エリアA1内から人体H1が除去されたか否かを識別し、人体H1の除去を識別した場合(YES)には、ステップS403に移行し、人体H1の除去を識別しない場合には、人体H1の除去の識別を繰り返す。
【0081】
ステップS403に移行した場合には、制御部3は、人体H1の除去を識別した時点から所定時間経過後、ステップS403以降の処理を実行する。これにより、スライドドアD2は、全開位置においてインサイドハンドルIHを閉操作したときには直ぐに閉作動しないが、人体H1がドア開閉軌道エリアA1から除去されると、それを契機に自動的に全開位置から閉作動を開始し、その後、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別しない場合には全閉位置まで移動する。この場合、スライドドアD2の閉作動がインサイド閉操作スイッチ6による閉操作信号の記憶に基づくものであれば、スライドドアD2の全閉位置において、施解錠アクチュエータACT2を駆動制御して、全閉ドアラッチ装置CDRが自動的にアンロック状態からロック状態に切り替えられる。
【0082】
上述のように、スライドドアD2の全開位置において、ドア開閉軌道エリアA1内に人体H1を識別している状態で、インサイドハンドルIHを閉操作した場合、インサイド閉操作スイッチ6の閉操作を記憶して、その後、ドア開閉軌道エリアA1から人体の除去を契機に、ドア開閉装置1を閉作動させて、スライドドアD2を自動的に閉作動させるようにしたことにより、例えば、乗員が降車した際、乗員の両手がふさがって、スライドドアD2の閉操作ができない場合には、予め車外側からインサイドハンドルIHを閉操作することで、降車が完了した後、スライドドアD2が自動的に閉作動するため、極めて好都合である。スライドドアD2の全開位置において、ドア開閉軌道エリアA1内に人体が存在する状況としては、車外にいる大人が室内にいる幼児を降車させるため、又は室内の大きな荷物を取り出すために、室内に身を乗り入れていること等が考えられる。また、降車した乗員の両手がふさがっている状況としては、乗員が幼児等を抱っこしてたり、大きな荷物等を抱えている等の状況が考えられる。
【0083】
以上のように、本実施形態のドア開閉制御システムにおいては、安全性として、次に定義される非接触挾み込み防止機能、車室内の人体の巻き込み防止機能及びドア閉速度可変機能を有し、利便性として、次に定義される予約ドア自動閉機能、ジェスチャードア開閉機能、乗降時間短縮機能を有する。
【0084】
非接触挾み込み防止機能とは、スライドドアD2の閉作動時、撮像部2で撮像した画像情報を基に、ドア開閉軌道エリアA1内に人体を識別した場合、人体の挾み込みを未然に防止するため、スライドドアD2の閉作動を停止させる機能をいう。
【0085】
車室内の人体巻き込み防止機能とは、例えば、車室内にいる幼児等の人体がスライドドアD2の内張りトリムD3に寄り掛かる等している状況において、スライドドアD2を外側から開けた場合、人体の一部が座席と車体との間の隙間に巻き込まれるような事態を未然に防止するため、車内側の危険エリアA4内に人体を識別している場合、外側からのドア開操作をキャンセル(無効)にする機能をいう。
【0086】
ドア閉速度可変機能とは、スライドドアD2の閉作動において、車外の人体が後部乗降口Eに接近するにしたがって、スライドドアD2の閉速度が遅くなるように、スライドドアD2の閉速度を変化させる機能をいう。
【0087】
予約ドア自動閉機能とは、スライドドアD2の全開位置において、ユーザが降車する際、ユーザが子供を抱っこしたり、大きな荷物を持つ等して、ユーザの両手がふさがって、スライドドアD2の閉操作が困難な場合、ユーザの両手がふさがる前に、予め車外側からインサイドハンドルを閉操作することで、ユーザと共に幼児の降車が終える等して挾み込みエリア内に物体を識別しないことを確認した後に、スライドドアD2を自動で閉作動させる機能をいう。
【0088】
ジェスチャードア開閉機能とは、ユーザのジェスチャーに基づいて、スライドドアD2を自動で開閉作動させる機能を言う。
【0089】
乗降時間短縮機能とは、スライドドアD2の開作動時において、スライドドアD2が全開位置に達する前であっても、ユーザの乗降が完了した場合には、スライドドアD2を半開位置に停止させ、その後、ユーザにより閉操作されると、半開位置から閉作動させることで、ユーザが乗降する際に費やすスライドドアD2の開閉時間の短縮を図り、ユーザの乗降を迅速に行うことができるようにした機能をいう。
【符号の説明】
【0090】
1 ドア開閉装置 2 撮像部
3 制御部 31 認証部
32 物体検出部 33 開閉制御部
4 開閉用モータ 5 アウトサイド操作スイッチ
6 インサイド閉操作スイッチ 7 インサイド開操作スイッチ
8 シフトレバー検出スイッチ 9 車速センサ
10 遠隔操作スイッチ 11 キー本体
A1 ドア開閉軌道エリア A2 車外側の危険エリア
A3 車外側の危険予備エリア A4 車内側の危険エリア
ACT1 リリースアクチュエータ ACT2 施解錠アクチュエータ
C 車両 CDR 全閉ドアラッチ装置
CL クローザ装置 D1 サイドドア
D2 スライドドア D3 内張りトリム
E 後部乗降口 IH インサイドハンドル
OH アウトサイドハンドル ODR 全開ドアラッチ装置
S 後部座席 S1 背凭れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10