(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】脳活動を利用した語学能力評価装置、及び語学能力評価システム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20220817BHJP
G09B 5/04 20060101ALI20220817BHJP
A61B 5/372 20210101ALI20220817BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B5/04
A61B5/372
(21)【出願番号】P 2018011431
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505026686
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 敦
(72)【発明者】
【氏名】井原 綾
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 康
(72)【発明者】
【氏名】尾島 司郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 順一
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201342(JP,A)
【文献】Ming Chang,Unconscious improvement in foreign language learning using mismatch negativity neurofeedback: A prel,PLoS ONE,カナダ,Aaron Jon Newman,2017年06月15日,12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
A61B 5/372
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象被験者が特定言語の音声を聴いた際に計測された前記評価対象被験者の脳活動の計測データを取得するデータ取得部と、
学習被験者が前記特定言語の音声を聴いた際に計測され
た前記学習被験者の脳活動の計測データであって、言語の理解に関する要素に対応する前記学習被験者の脳活動の計測データと、前記学習被験者の前記特定言語の
リスニングにおける習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて機械学習された学習結果を取得し、前記データ取得部が取得した前記評価対象被験者の脳活動の計測データと、前記学習結果とに基づいて、前記言語の理解に関する要素に対応する前記評価対象被験者の
リスニングにおける前記習得レベルを判定する判定部と
を備えることを特徴とする語学能力評価装置。
【請求項2】
前記言語の理解に関する要素には、
品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び前記音声の速度のうちの少なくとも1つが含まれ、
前記判定部は、前記評価対象被験者の脳活動の計測データから前記言語の理解に関する要素に対応する脳活動の要素成分データを抽出し、当該要素成分データと、前記学習結果とに基づいて、前記言語の理解に関する要素ごとの前記評価対象被験者の前記習得レベルを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の語学能力評価装置。
【請求項3】
前記言語の理解に関する要素は、複数の分類項目に分類されており、
前記判定部は、前記分類項目に対応する前記評価対象被験者の脳活動の計測データ及び前記学習結果に基づいて、前記分類項目ごとの前記習得レベルを判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の語学能力評価装置。
【請求項4】
前記教師付き学習データに基づいて、機械学習を実行し、前記学習結果を生成する学習部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の語学能力評価装置。
【請求項5】
前記脳活動の計測データが脳波データである
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の語学能力評価装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の語学能力評価装置と、
評価対象被験者に前記特定言語の音声を出力する音声出力装置と、
前記評価対象被験者の脳活動を計測する脳活動計測装置と
を備え、
前記評価対象被験者が前記音声出力装置からの音声を聴いた際の脳活動を前記脳活動計測装置で計測し、計測した当該計測データを前記語学能力評価装置に入力して前記特定言語の習得レベルを判定する
ことを特徴とする語学能力評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、語学能力評価装置、及び語学能力評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外国語などの言語の語学能力評価として、リスニングのテストが行われており、受験者は、例えば、英語の音声を聴いて選択肢で回答する手法が取られている。このような手法では、解答に対して正答か不正答かの二値でしか評価することができない。例えば、正答であっても、英語の音声の全てを聴き取れているとは限らず、どこが聴き取り不十分なのかを認識することは、効果的に特定の言語を学習する上で重要である。
また、ユーザの解答の正誤が提示されたときの脳波から期待外れ信号を抽出し、期待外れ信号の有無に基づいて、ユーザの理解度を判定する技術が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、例えば、ユーザに解答の正誤が提示される必要があり、言語のリスニング能力評価としては不十分であった。このように、従来技術では、言語のリスニング能力を適切に評価することは困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、特定の言語の能力を適切に評価することができる語学能力評価装置、及び語学能力評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、評価対象被験者が特定言語の音声を聴いた際に計測された前記評価対象被験者の脳活動の計測データを取得するデータ取得部と、学習被験者が前記特定言語の音声を聴いた際に計測された前記学習被験者の脳活動の計測データであって、言語の理解に関する要素に対応する前記学習被験者の脳活動の計測データと、前記学習被験者の前記特定言語のリスニングにおける習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて機械学習された学習結果を取得し、前記データ取得部が取得した前記評価対象被験者の脳活動の計測データと、前記学習結果とに基づいて、前記言語の理解に関する要素に対応する前記評価対象者のリスニングにおける前記習得レベルを判定する判定部とを備えることを特徴とする語学能力評価装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、上記の語学能力評価装置において、前記言語の理解に関する要素には、品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び前記音声の速度のうちの少なくとも1つが含まれ、前記判定部は、前記評価対象被験者の脳活動の計測データから前記言語の理解に関する要素に対応する脳活動の要素成分データを抽出し、当該要素成分データと、前記学習結果とに基づいて、前記言語の理解に関する要素ごとの前記評価対象被験者の前記習得レベルを判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の語学能力評価装置において、前記言語の理解に関する要素は、複数の分類項目に分類されており、前記判定部は、前記分類項目に対応する前記評価対象被験者の脳活動の計測データ及び前記学習結果に基づいて、前記分類項目ごとの前記習得レベルを判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の語学能力評価装置において、前記教師付き学習データに基づいて、機械学習を実行し、前記学習結果を生成する学習部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の語学能力評価装置において、前記脳活動の計測データが脳波データであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記に記載の語学能力評価装置と、評価対象被験者に前記特定言語の音声を出力する音声出力装置と、前記評価対象被験者の脳活動を計測する脳活動計測装置とを備え、前記評価対象被験者が前記音声出力装置からの音声を聴いた際の脳活動を前記脳活動計測装置で計測し、計測した当該計測データを前記語学能力評価装置に入力して前記特定言語の習得レベルを判定することを特徴とする語学能力評価システムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、言語の理解能力を適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態による英語能力評価システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態における音声データの一例を説明する図である。
【
図3】本実施形態における要素及び分類項目の一例を説明する図である。
【
図4】本実施形態による英語能力評価装置の学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態による英語能力評価装置の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態による英語能力評価装置の判定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態による語学能力評価装置及び語学能力評価システムについて図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態による英語能力評価システム1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、英語能力評価システム1は、英語能力評価装置10と、音声出力部20と、脳波計30と、ヘッドギア31とを備えている。ここで、英語能力評価システム1は、語学能力評価システムの一例である。
【0016】
音声出力部20(音声出力装置の一例)は、例えば、スピーカやヘッドホンなどであり、英語能力評価装置10が出力する英語の音声信号を英語の音声に変換して、評価対象者U1(評価対象被験者)に出力する。
【0017】
脳波計30は、評価対象者U1が音声出力部20から出力された英語の音声を聴いた際の脳波を、評価対象者U1の頭部に装着されたヘッドギア31を用いて計測する。脳波計30は、計測した脳波を、脳波信号として英語能力評価装置10に出力する。ここで、脳波信号は、脳活動の計測結果の一例である。また、脳波計30は、評価対象者U1の脳活動を計測する脳活動計測装置の一例である。
ヘッドギア31は、評価対象者U1の頭部に装着可能であり、脳波を計測するための電極を有する。
【0018】
英語能力評価装置10(語学能力評価装置の一例)は、英語のリスニング能力を評価する装置であり、脳波計30によって計測された評価対象者U1の脳活動の計測データに基づいて、英語のリスニングにおける評価対象者U1の習得レベルを判定する。英語能力評価装置10は、記憶部11と、制御部12とを備えている。
【0019】
記憶部11は、英語能力評価装置10が利用する各種情報を記憶する。記憶部11は、音声データ記憶部111と、学習データ記憶部112と、学習結果記憶部113と、脳波データ記憶部114と、評価結果記憶部115とを備えている。
音声データ記憶部111は、評価対象者U1に聴かせる英語の音声データを記憶する。音声データ記憶部111は、例えば、英語の音声信号を示す英語音声データと、当該英語音声データに含まれる音素や単語などの種類とその開始時間とを対応付けて記憶する。音声データ記憶部111は、例えば、
図2に示すような音声データを記憶する。
【0020】
図2は、本実施形態における音声データの一例を説明する図である。
図2に示すように、音声データは、“I fell off my bike”などの英語の音声信号を示す英語音声データと、音声に含まれる“ay”、“f”などの音素情報、内容語・機能語の別、及び各音素と各単語のタイミング情報などとが対応付けられて、学習結果記憶部113に記憶されている。
【0021】
学習データ記憶部112は、学習被験者の英語の習得レベルと、学習被験者が英語の音声を聴いた際に計測された学習被験者の脳波データとが対応付けられた学習データを記憶する。ここで、学習被験者は、例えば、英語の習得度の高い熟達群(習得レベルの高いグループ)の100名程度と、英語の習得度の低い未熟達群(習得レベルの低いグループ)の100名程度とを含んでいる。また、学習データ記憶部112は、例えば、学習被験者の脳波信号を英語の理解に関する要素ごとにモデル化した要素成分データと、英語の習得レベルとを対応付けた教師付き学習データを記憶する。ここで、要素成分データは、脳波信号から要素に対応する要素成分を抽出したものであり、例えば、脳波信号と、英語音声に含まれる音素や単語などの種類とその開始時間などとに基づいて一般線形モデルや逆相関法などにより算出されたTRF(Time Response Function)である。
【0022】
また、言語の理解に関する要素には、
図3に示すように、「音素」、「品詞」、「単語レベル」(単語の難易度)、「文の長さ」、「文構造」、及び「スピード」の6つの要素が含まれる。また、各要素は、複数の分類項目に分類される。
【0023】
ここで、要素「音素」の「分類項目」には、例えば、“短母音”、“長母音”、“二重母音”、“破裂音”、“摩擦音”、“破擦音”などが含まれる。また、要素「品詞」の「分類項目」には、例えば、“名詞”、“動詞”、“形容詞”、“副詞”、“疑問詞”、“前置詞”などが含まれる。また、要素「単語レベル」(単語の難易度)の「分類項目」には、例えば、“CEFR A1”、“CEFR A2”、“CEFR B1”、“CEFR B2”などが含まれる。ここで、CEFR(Common European Framework of Reference)は、ヨーロッパで外国語の語学力の熟達度を測る基準であり、ここでは、単語レベル(単語の難易度)をA1~C2の6段階にレベル分けする。
【0024】
また、要素「文の長さ」の「分類項目」には、例えば、“5ワード以下”、“5~10ワード以下”、“10~20ワード以下”、“20ワード以上”が含まれる。また、要素「文構造」の「分類項目」には、例えば、“肯定文”、“否定文”、“疑問文”、“命令文”などが含まれる。また、要素「スピード」の「分類項目」には、例えば、“110wpm(SLOW)”、“160wpm(NATURAL)”、“210wpm(FAST)”などが含まれる。ここで、wpm(word per minute)は、1分間の単語数を示し、英文を読むスピードを示している。
学習データ記憶部112は、各分類項目に対応する要素成分データと、習得レベルとを対応付けた教師付き学習データを記憶する。
【0025】
学習結果記憶部113は、学習被験者が英語の音声を聴いた際に計測され、英語の理解に関する要素に対応する学習被験者の脳活動の計測データ(脳波信号)と、学習被験者の英語の習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて機械学習された学習結果を記憶する。ここで、学習結果は、上述した学習データ記憶部112が記憶する教師付き学習データに基づいて、評価対象者U1が英語の音声を聴いた際に計測された脳活動の計測データ(脳波信号)から、英語の習得レベルを推定する機械学習が行われた結果である。また、学習結果は、後述する学習処理部122によって生成される。
なお、学習結果記憶部113は、各要素の分類項目に対応する学習結果を記憶する。
【0026】
脳波データ記憶部114は、評価対象者U1が英語の音声を聴いた際に脳波計30が計測した脳波データを記憶する。
評価結果記憶部115は、後述する判定処理部123が判定した評価対象者U1の英語の習得レベルの判定結果を記憶する。評価結果記憶部115は、各要素の分類項目ごとに、判定結果を記憶する。
【0027】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、英語能力評価装置10を統括的に制御する。制御部12は、脳波信号取得部121と、学習処理部122と、判定処理部123とを備えている。
【0028】
脳波信号取得部121(データ取得部の一例)は、評価対象者U1が英語の音声を聴いた際に計測された評価対象者U1の脳活動の計測データを取得する。すなわち、脳波信号取得部121は、音声データ記憶部111が記憶する英語音声データを、音声信号として、音声出力部20に出力して、音声出力部20から当該英語の音声を評価対象者U1に聴かせた際に脳波計30が計測した脳波信号を脳波計30から取得する。脳波信号取得部121は、所得した脳波信号を脳波データとして、脳波データ記憶部114に記憶させる。
【0029】
学習処理部122(学習部の一例)は、学習データ記憶部112が記憶する教師付き学習データに基づいて、機械学習を実行し、学習結果を生成する。学習処理部122は、例えば、音声データ記憶部111が記憶する英語音声データを、音声信号として、音声出力部20に出力して、音声出力部20から当該英語の音声を学習被験者に聴かせた際に脳波計30が計測した脳波信号から一般線形モデルや逆相関法などを用いて抽出した各要素の各分類項目に対応する要素成分データ(TRF)と、習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて、新たな要素成分データから習得レベルを推定する機械学習を実行する。
【0030】
ここで、学習処理部122は、例えば、サポートベクターマシンやリッジ回帰を利用した機械学習を実行する。学習処理部122は、機械学習を実行した学習結果を生成し、当該学習結果を学習結果記憶部113に記憶させる。学習処理部122は、各要素の各分類項目に対応する学習結果を学習結果記憶部113に記憶させる。
【0031】
判定処理部123(判定部の一例)は、学習結果記憶部113が記憶する学習結果を取得し、脳波信号取得部121が取得した評価対象者U1の脳波データと、当該学習結果とに基づいて、各要素に対応する評価対象者U1の習得レベルを判定する。ここで、要素には、例えば、音素、品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び音声の速度のうちの少なくとも1つが含まれている。判定処理部123は、評価対象者U1の脳波データから各要素の各分類項目に対応する脳活動の要素成分データを抽出し、当該要素成分データと、学習結果とに基づいて、各要素の分類項目ごとの評価対象者U1の習得レベルを判定する。
【0032】
判定処理部123は、判定した判定結果(習得レベル)を、各要素の分類項目ごとに評価結果記憶部115に記憶させる。また、判定処理部123は、判定した当該判定結果(習得レベル)を英語能力評価装置10の外部に出力する。
【0033】
次に、図面を参照して、本実施形態による英語能力評価システム1の動作について説明する。
図4は、本実施形態による英語能力評価装置10の学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図4に示すように、まず、脳波計30は、学習被験者が英語の音声を聴いた際の脳波データを計測する(ステップS101)。例えば、制御部12の学習処理部122は、音声データ記憶部111が記憶する英語音声データを、音声信号として、音声出力部20に出力し、音声出力部20から当該英語の音声を学習被験者に出力させる。学習処理部122は、音声出力部20から当該英語の音声を学習被験者に聴かせた際に脳波計30が計測した脳波信号を脳波計30から取得する。
【0035】
ここで、学習被験者は、例えば、英語の習得度の高い熟達群(習得レベルの高いグループ)の100名程度と、英語の習得度の低い未熟達群(習得レベルの低いグループ)の100名程度とである。学習処理部122は、取得した脳波信号を、例えば、一般線形モデルや逆相関法を利用して要素ごとの要素成分データ(TRF)を抽出する。学習処理部122は、要素ごとに抽出した要素成分データと、英語の習得レベルとを対応付けた教師付き学習データを、学習データ記憶部112に記憶させる。
【0036】
次に、学習処理部122は、各要素に対応する脳波データと、習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて機械学習する(ステップS102)。学習処理部122は、例えば、学習データ記憶部112が記憶する学習データを取得し、例えば、サポートベクターマシンやリッジ回帰などの学習手法を利用して、習得レベルを推定(判定)する基準を機械学習する。なお、学習処理部122は、例えば、各要素の分類項目ごとに、習得レベルを推定(判定)する基準を機械学習する。
【0037】
次に、学習処理部122は、学習結果を学習結果記憶部113に記憶させる(ステップS103)。学習処理部122は、例えば、各要素の分類項目ごとに機械学習した学習結果を学習結果記憶部113に記憶させる。ステップS103の処理後に、学習処理部122は、学習処理を終了する。
【0038】
次に、
図5を参照して、本実施形態による英語能力評価装置10の判定処理について説明する。
図5は、本実施形態による英語能力評価装置10の判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
図5に示すように、まず、脳波計30は、評価対象者U1が英語の音声を聴いた際の脳波データを計測する(ステップS201)。例えば、制御部12の脳波信号取得部121は、音声データ記憶部111が記憶する英語音声データを、音声信号として、音声出力部20に出力し、音声出力部20から当該英語の音声を評価対象者U1に出力させる。脳波計30は、評価対象者U1の頭部に装着されたヘッドギア31を用いて、評価対象者U1の脳波を計測して、脳波信号として出力する。
【0040】
次に、脳波信号取得部121は、評価対象者U1の脳波データを取得する(ステップS202)。脳波信号取得部121は、音声出力部20から当該英語の音声を評価対象者U1に聴かせた際に脳波計30が計測した脳波信号を脳波計30から取得する。脳波信号取得部121は、取得した脳波信号を脳波データとして、脳波データ記憶部114に記憶させる。
【0041】
次に、制御部12の判定処理部123は、脳波データから各要素に対応する要素成分データを抽出する(ステップS203)。判定処理部123は、例えば、脳波データ記憶部114が記憶する脳波データと、音声データ記憶部111が記憶する英語音声データ及び音素・単語情報とに基づいて、一般線形モデルや逆相関法を利用して、各要素の分類項目に対応する要素成分データ(TRF)を抽出する。
【0042】
次に、判定処理部123は、各要素に対応する要素成分データと学習結果とに基づいて
各要素の習得レベルを推定する(ステップS204)。判定処理部123は、例えば、各要素の分類項目に対応する要素成分データから、学習結果記憶部113が記憶する各要素の分類項目に対応する学習結果を用いて、各要素の分類項目ことの評価対象者U1の習得レベルを推定する。判定処理部123は、推定した各要素の分類項目ことの評価対象者U1の習得レベルを評価結果記憶部115に記憶させる。
【0043】
次に、判定処理部123は、推定した各要素の習得レベルを評価判定結果として出力する(ステップS205)。判定処理部123は、例えば、
図6に示すように、評価結果記憶部115が記憶する、各要素の分類項目ことの評価対象者U1の習得レベルを、評価判定結果として出力する。ステップS205の処理後に、判定処理部123は、判定処理を終了する。
【0044】
図6は、本実施形態による英語能力評価装置10の判定結果の一例を示す図である。
図6に示すように、英語能力評価装置10は、評価対象者U1の脳波データと、学習結果記憶部113が記憶する学習結果とに基づいて、評価対象者U1の習得レベルを、各要素の分類項目ことの評価判定結果として出力する。
【0045】
図6に示す例では、要素「音素」の“短母音”の評価対象者U1の習得レベルが、“H”(習得度が高い)であることを示し、“長母音”の評価対象者U1の習得レベルが、“M”(習得度が中程度)であることを示している。まお、習得レベルは、“H”、“L”(習得度が低い)の2レベルでなく、3以上のレベルであってもよく、この図に示す例では、英語能力評価装置10は、“H”、“M”、“L”の3レベルに判定した場合の一例を示している。
【0046】
以上説明したように、本実施形態による英語能力評価装置10(語学能力評価装置)は、脳波信号取得部121(データ取得部)と、判定処理部123(判定部)とを備える。脳波信号取得部121は、評価対象者U1(評価対象被験者)が英語の音声を聴いた際に計測された評価対象者U1の脳活動の計測データ(例えば、脳波データ)を取得する。判定処理部123は、機械学習された学習結果を取得し、脳波信号取得部121が取得した評価対象者U1の脳活動の計測データと、学習結果とに基づいて、言語の理解に関する要素に対応する評価対象者U1の習得レベルを判定する。ここで、学習結果は、学習被験者が英語の音声(スピーチ)を聴いた際に計測され、言語の理解に関する要素(例えば、音素、品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び音声の速度など)に対応する学習被験者の脳活動の計測データと、学習被験者の英語の習得レベルとを対応付けた教師付き学習データに基づいて機械学習されたものである。
【0047】
これにより、本実施形態による英語能力評価装置10は、脳活動の計測データ(例えば、脳波データ)から英語の理解に関する要素に対応する評価対象者U1の習得レベルを判定するため、定量的且つ客観的に英語のリスニング能力を評価することができる。すなわち、本実施形態による英語能力評価装置10は、例えば、ユーザに解答の正誤を提示する必要なく、英語のリスニング能力を評価することができる。よって、本実施形態による英語能力評価装置10は、英語のリスニング能力を適切に評価することができる。さらに、本実施形態による英語能力評価装置10は、例えば、正答であっても、英語の音声(スピーチ)をどの程度、聴き取れているのか、どこが聴き取り不十分なのか、等を認識することができ、効果的に英語を学習することが可能になる。
【0048】
また、本実施形態では、言語の理解に関する要素には、音素、品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び音声の速度のうちの少なくとも1つが含まれる。判定処理部123は、評価対象者U1の脳活動の計測データから言語の理解に関する要素に対応する脳活動の要素成分データを抽出し、当該要素成分データと、機械学習された学習結果とに基づいて、言語の理解に関する要素ごとの評価対象者U1の習得レベルを判定する。
これにより、本実施形態による英語能力評価装置10は、要素ごとのより詳細な評価が可能になる。
【0049】
また、本実施形態では、言語の理解に関する要素は、複数の分類項目に分類されている。判定処理部123は、分類項目に対応する評価対象者U1の脳活動の計測データ及び学習結果に基づいて、分類項目ごとの習得レベルを判定する。
これにより、本実施形態による英語能力評価装置10は、分類項目ごとの習得レベルを判定することが可能になり、聴き取り出来ている分類項目と、聴き取り不充分な分類項目を明確にあることができる。このことから、本実施形態による英語能力評価装置10は、さらに効果的に英語の語学学習をすることが可能になる。
【0050】
また、本実施形態による英語能力評価装置10は、上述した教師付き学習データに基づいて、機械学習を実行し、学習結果を生成する学習処理部122(学習部)を備える。
これにより、本実施形態による英語能力評価装置10は、新たに機械学習を実行し、学習結果を生成することが可能になり、再学習により学習結果を更新することができる。
【0051】
また、本実施形態による英語能力評価方法は、データ取得ステップと、判定ステップとを含む。データ取得ステップにおいて、脳波信号取得部121が、評価対象者U1が英語の音声を聴いた際に計測された評価対象者U1の脳活動の計測データを取得する。判定ステップにおいて、判定処理部123が、上述した機械学習された学習結果を取得し、データ取得ステップによって取得された評価対象者U1の脳活動の計測データと、学習結果とに基づいて、言語の理解に関する要素に対応する評価対象者U1の習得レベルを判定する。
これにより、本実施形態による英語能力評価方法は、上述した英語能力評価装置10と同様の効果を奏し、英語のリスニング能力を適切に評価することができる。
【0052】
また、本実施形態による英語能力評価システム1(語学能力評価システム)は、上述した英語能力評価装置10(語学能力評価装置)と、音声出力部20(音声出力装置)と、脳波計30(脳活動計測装置)とを備える。音声出力部20は、評価対象者U1に英語の音声を出力する。脳波計30は、評価対象者U1の脳活動を計測する。英語能力評価システム1は、評価対象者U1が音声出力部20からの音声を聴いた際の脳活動を脳波計30で計測し、計測した当該計測データを英語能力評価装置10に入力して英語の習得レベルを判定する。
これにより、本実施形態による英語能力評価システム1は、上述した英語能力評価装置10と同様の効果を奏し、英語のリスニング能力を適切に評価することができる。
【0053】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記の実施形態において、英語能力評価装置10は、音声出力部20又は脳波計30の一部又は全部を含む形態であってもよい。また、音声出力部20と脳波計30とヘッドギア31は、英語能力評価装置10と異なる場所に置かれてもよく、その場合クラウドコンピューティングの形態でも利用できる。また、記憶部11の一部又は全部を英語能力評価装置10の外部に備える形態であってもよい。また、英語能力評価装置10は、学習処理部122を備えない形態であってもよいし、外部に学習処理部122と同様の処理を実行する学習装置を備えるようにしてもよい。また、脳波計30は、ヘッドギア31を用いない形態であってもよい。また、評価対象者U1に聴かせる音声は、学習被験者に聞かせる音声とは異なるものであってもよい。また、言語の理解に関する要素に対応する評価対象者U1の習得レベルを判定した後、例えば、聴き取り不充分な要素を多く含む音声を選択するまたは音声の速度を変更して再生するなどして評価対象者U1に聴かせ、再度習得レベルを判定する構成とした場合、評価対象者U1個々人の習得レベルを精緻に判別することができる。
【0054】
また、上記の実施形態において、語学能力評価システム及び語学能力評価装置の一例として、英語能力評価システム1及び英語能力評価装置10を説明したが、これに限定されるものではなく、英語以外の日本語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、ヒンディー語、中国語、韓国語などの特定言語に適用してもよい。
また、上記の実施形態において、脳活動の計測データの一例として、脳波データを計測する例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)などによる脳活動の計測データでもよいし、他の脳活動の計測データでもよい。
【0055】
また、上記の実施形態において、言語の理解に関する要素が、音素、品詞、単語の難易度、文の長さ、文の構造、及び音声の速度である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、なまり、リンキング(単語の最後の音と次の単語の最初の音の連結)、アクセント、文の複雑さなどを含めてもよい。
また、上記の実施形態において、脳活動の要素成分データの抽出に一般線形モデル・逆相関法を利用する例を説明したが、これに限定されるものではなく、脳波データから各要素に対応する脳活動の要素成分データが抽出できれば、他の手法を用いてもよい。機械学習の一例として、サポートベクターマシンやリッジ回帰を利用する機械学習などの例を説明したが、これに限定されるものではなく、ニューラルネットワークを用いるものなど、他の手法を用いた機械学習を適用してもよい。
【0056】
なお、上述した英語能力評価システム1及び英語能力評価装置10が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した英語能力評価システム1及び英語能力評価装置10が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した英語能力評価システム1及び英語能力評価装置10が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 英語能力評価システム、10 英語能力評価装置、11 記憶部、12 制御部、20 音声出力部、30 脳波計、31 ヘッドギア、111 音声データ記憶部、112 学習データ記憶部、113 学習結果記憶部、114 脳波データ記憶部、115 評価結果記憶部、121 脳波信号取得部、122 学習処理部、123 判定処理部、U1 評価対象者