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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20220817BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20220817BHJP
   H01M 50/183 20210101ALI20220817BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220817BHJP
【FI】
F16J15/06 A
F16J15/10 B
H01M50/183
H01M50/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018189638
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020060200
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2020-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森 大
(72)【発明者】
【氏名】二塚 滋
(72)【発明者】
【氏名】後藤 隆介
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-250206(JP,A)
【文献】特開2005-299686(JP,A)
【文献】実開平08-001093(JP,U)
【文献】実開昭61-029165(JP,U)
【文献】特開2002-372152(JP,A)
【文献】実開昭62-038463(JP,U)
【文献】実開平05-087368(JP,U)
【文献】特開2012-219830(JP,A)
【文献】特開2003-156151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/06
F16J 15/10
H01M 50/183
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に合体される第1部材及び第2部材のそれぞれに形成される平面形状のフランジ部の合体面間に挟持され圧縮状態で介在されるガスケットであって、
前記第1部材の平面形状で係合溝を有しない、フランジ部である第1面及び前記第2部材の平面形状で係合溝を有しない、フランジ部である第2面の間に挟持される環状の本体部を含み、
前記本体部は、その周方向に直交する幅方向の寸法が高さ方向の寸法より小とされており、
前記本体部の側面には、当該側面から幅方向に突出し、且つ、高さ方向において前記第1面または前記第2面に近接または接触する倒れ防止用突起が一体に設けられており、
前記本体部と前記倒れ防止用突起との間には、前記ガスケットが前記フランジ部の合体面間に挟持された状態において前記本体部と、前記倒れ防止用突起と、前記第1面または前記第2面との間に空間を形成させる肉抜き部が形成され、前記倒れ防止用突起の前記肉抜き部が形成されている面は前記第1面または前記第2面に接触していることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記倒れ防止用突起は、前記第1面または前記第2面に近接または接触する平坦部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガスケットにおいて、
前記倒れ防止用突起における前記本体部からの突出基部の高さ方向の寸法は、前記本体部の高さ方向の寸法の1/3以上とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記倒れ防止用突起における前記本体部からの突出基部の周方向幅の寸法は、突出方向幅の寸法より大とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記倒れ防止用突起は、前記本体部の周方向に間隔を空けて複数個設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記本体部における前記第1面及び前記第2面に対向する面の少なくとも一方には、当該第1面または第2面に弾接する突条体が、前記本体部の全周に亘って設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記本体部における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面と、前記倒れ防止用突起における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面とは、前記肉抜き部を介して同一面域に位置付けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記本体部の外周側には、カラーを保持するためのカラー保持部が一体に設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項9】
請求項8に記載のガスケットにおいて、
前記カラー保持部に金属環からなるカラーが保持されていることを特徴とするガスケット。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記倒れ防止用突起は、前記第1面または前記第2面に形成された孔に挿入される位置決め用突起を有していることを特徴とするガスケット。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のガスケットにおいて、
前記本体部及び前記倒れ防止用突起における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面がいずれも平坦面であることを特徴とするガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関し、例えば、自動車用の電池パックを収容するケースに用いられるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のような電池パックを収容するケースとしては、箱形のケース本体と、ケース本体の開口部を塞ぐ蓋体とからなる。そして、ケース本体の周辺部と蓋体の周辺部にはフランジ部が設けられ、両フランジ部間に環状のガスケットを介在させ、両フランジ部をボルト・ナットにより締結合体することにより、ケースの内部空間が密封され、内部空間内への雨水等の浸入が防止される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5760411号公報
【文献】特許第5879865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記のようなケースにおける両フランジ部の合体面は、平面形状とされていることが多い。そのため、ガスケットの断面形状によっては、ボルトでの締結時における圧縮応力を受けてガスケットが倒れたり、前記両フランジ部の相互の変位(ずれ)によって、ガスケットが倒れたりすることがある。このような倒れを防止するには、ガスケットの周方向に直交する幅方向の寸法を高さ方向の寸法より大とすることが有効である。しかし、ガスケットの幅方向の寸法は、ガスケットの設置スペース(フランジ部の幅)の関係上、大きくすることができない場合がある。また、ガスケットの幅方向の寸法を大きくすると、両フランジ部間にガスケットを介在させた状態でのボルト・ナットによる締結時における反力が大きくなり、これにより、ケースを変形させてしまうこともある。前記特許文献には、このような問題点を解決するような構成の示唆はなく、その改良が望まれるところであった。
【0005】
本発明は、前記実情に鑑みなされたもので、省スペースでありながら、シール対象2部材の締結時の倒れが生じ難く、且つ、圧縮反力の小さなガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスケットは、相互に合体される第1部材及び第2部材のそれぞれに形成される平面形状のフランジ部の合体面間に挟持され圧縮状態で介在されるガスケットであって、前記第1部材の平面形状で係合溝を有しない、フランジ部である第1面及び前記第2部材の平面形状で係合溝を有しない、フランジ部である第2面の間に挟持される環状の本体部を含み、前記本体部は、その周方向に直交する幅方向の寸法が高さ方向の寸法より小とされており、前記本体部の側面には、当該側面から幅方向に突出し、且つ、高さ方向において前記第1面または前記第2面に近接または接触する倒れ防止用突起が一体に設けられており、前記本体部と前記倒れ防止用突起との間には、前記ガスケットが前記フランジ部の合体面間に挟持された状態において前記本体部と、前記倒れ防止用突起と、前記第1面または前記第2面との間に空間を形成させる肉抜き部が形成され、前記倒れ防止用突起の前記肉抜き部が形成されている面は前記第1面または前記第2面に接触していることを特徴とする。
【0007】
本発明のガスケットによれば、本体部は、その周方向に直交する幅方向の寸法が高さ方向の寸法より小とされているから、第1部材の第1面及び第2部材の第2面の幅寸法が小さくてもよく、省スペース的である。そして、本体部の側面には、倒れ防止用突起が設けられているから、当該ガスケットを前記第1面及び前記第2面間に介在させて圧縮する際に、その圧縮応力や第1部材及び第2部材の変位によって当該ガスケットが倒れることが防止される。さらに、この圧縮の際の本体部の反力が小さく、第1部材或いは第2部材の変形が生じ難くなる。
【0008】
本発明のガスケットにおいて、前記倒れ防止用突起は、前記第1面または前記第2面に近接または接触する平坦部を有するものとしてもよい。
これによれば、前記第1面及び第2面間に当該ガスケットを介在させて第1部材及び第2部材を組付ける際の装着性がよく、また、組付け装着後の本体部が安定化する。
【0009】
本発明のガスケットにおいて、前記倒れ防止用突起における前記本体部からの突出基部の高さ方向の寸法は、前記本体部の高さ方向の寸法の1/3以上とされているものとしてもよい。
これによれば、第1部材及び第2部材の前記組付け時の当該ガスケットの倒れがより的確に防止される。因みに、前記高さ方向の寸法が、本体部の高さ方向の寸法の1/3より小さいと、倒れ防止機能が低下する傾向となる。
【0010】
本発明のガスケットにおいて、前記倒れ防止用突起における前記本体部からの突出基部の周方向幅の寸法は、突出方向幅の寸法より大とされているものとしてもよい。
これによれば、倒れ防止機能が的確に発揮されるとともに、必要なスペースも大きくなることがない。
【0011】
本発明のガスケットにおいて、前記倒れ防止用突起は、前記本体部の周方向に間隔を空けて複数個設けられているものとしてもよい。
これによれば、本体部の全周に亘り、倒れ防止機能を均等に近い状態で発現させるようにすることができる。
【0012】
本発明のガスケットにおいて、前記本体部における前記第1面及び前記第2面に対向する面の少なくとも一方には、当該第1面または第2面に弾接する突条体が、前記本体部の全周に亘って設けられているものとしてもよい。
これによれば、突条体が弾接する第1面及び第2面の少なくとも一方と本体部との間が確実にシールされる。
【0013】
本発明のガスケットにおいて、前記本体部における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面と、前記倒れ防止用突起における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面とは、前記肉抜き部を介して同一面域に位置付けられているものとしてもよい。
【0014】
本発明のガスケットにおいて、前記本体部の外周側には、カラーを保持するためのカラー保持部が一体に設けられているものとしてもよい。また、このカラー保持部に金属環からなるカラーが保持されているものとしてもよい。
これによれば、本体部にカラー保持部が一体に設けられていることによって、ガスケットを介在させて第1部材及び第2部材を組付ける際のガスケットの装着性がより向上する。また、カラー保持部に金属環からなるカラーが保持されるので、締結時の過度な締結が防止され、第1部材或いは第2部材の締結による変形が防止される。
【0015】
本発明のガスケットにおいて、前記倒れ防止用突起は、前記第1面または前記第2面に形成された孔に挿入される位置決め用突起を有しているものとしてもよい。
これによれば、第1部材及び第2 部材間への当該ガスケットの介在が所定位置に的確になされ、組付け装着性がより向上する。また、倒れ防止突起が位置決め用突起を有していることにより、倒れ防止機能がより確実に発揮され、組付け装着後の安定性も一層向上する。
本発明のガスケットにおいて、前記本体部及び前記倒れ防止用突起における、前記肉抜き部が形成されているほうの、前記第1面または前記第2面への対向面がいずれも平坦面であることとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガスケットによれば、省スペースでありながら、シール対象2部材の締結時の倒れが生じ難く、且つ、圧縮反力の小さなガスケットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るガスケットの第一の実施形態が適用されたケースの部分破断斜視図である。
図2】同実施形態のガスケットの全体平面図である。
図3】(a)は図2におけるA部の拡大図、(b)は(a)のB-B線矢示断面図である。
図4】本発明に係るガスケットの第二の実施形態を示す全体平面図である。
図5】(a)は図4におけるC-C線矢示断面図、(b)は(a)のD方向から見た図である。
図6図4におけるE-E線矢示断面図である。
図7】本発明に係るガスケットの第三の実施形態を示す図5(a)に対応する図である。
図8】前記実施形態のガスケットにおける倒れ防止突起が設けられている部位の変形例を示す概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1図3は、自動車用の電池パック(不図示)を収容するケース1に本発明に係るガスケットの第一の実施形態を適用した例を示している。ケース1は、上部が開口する箱形のケース本体(第1部材)2と、ケース本体2の開口部を覆う蓋体(第2部材)3とよりなる。ケース本体2及び蓋体3は、ともに金属製であり、それぞれの周辺部には、フランジ部21,31が形成されている。両フランジ部21,31間に、ガスケット5を介在させて、締結部材4(ボルト41、ナット42)を締結させることによって、両フランジ部21,31は相互に合体される。両フランジ部21,31の相互の合体面は、いずれも平面形状の第1面21a及び第2面31aとされる。
【0019】
ガスケット5は、ゴム等の弾性体による成型体からなり、環状の本体部6を含んでいる。本実施形態の本体部6は、周方向aに直交する断面形状が縦長の方形状をなし、周方向aに直交する幅方向bの寸法d1が高さ方向cの寸法d2より小とされている。また、本体部6におけるケース本体2の第1面21a及び蓋体3の第2面31aに対向する面(以下、対向面と言う)6a、6bはいずれも平坦面とされている。図例では、本体部6の下側の対向面6aがケース本体2の第1面21aに対向し、本体部6の上側の対向面6bが蓋体3の第2面31aに対向する。さらに、環状の本体部6の内外両側面6c,6dには、当該両側面6c,6dから幅方向bに突出し、且つ、高さ方向cにおいて、ケース本体2の第1面21aに接触するとともに、蓋体3の第2面31aに近接する倒れ防止用突起7,8が設けられている。本実施形態の倒れ防止用突起7,8は、その外形部7c,8cの平面形状が円弧形状とされ、本体部6の両側面6c,6dに左右対称に一体成型されている。倒れ防止用突起7,8の対は、本体部6の周方向に沿って間隔を空けて複数対(個)設けられている。倒れ防止用突起7,8の下面7a,8aは、ケース本体2の第1面21aに対して接触状態となるよう、本体部6の対向面6aに面一状に形成された平坦部とされている。また、倒れ防止用突起7,8の上面7b,8bは、蓋体3の第2面31aに非接触の近接状態となるよう、本体部6の対向面6bに段差状に形成された平坦部とされている。そして、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の高さ方向cの寸法d3は、本体部6の高さ方向cの寸法d2の1/3以上とされている。また、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の周方向a幅の寸法d4は、突出方向幅の寸法d5より大とされている。
【0020】
前記のように構成されるガスケット5を用いたケース1の密封構造を構成する要領を説明する。まず、ガスケット5を、その本体部6がケース本体2のフランジ部21上の締結部材4による締結部位より内周側(ケース1の内部空間側)に位置するように配置する。次いで、蓋体3を、そのフランジ部31が本体部6に乗るように配置し、締結部材4のボルト41をフランジ部21,31のそれぞれに形成されたボルト挿通孔(不図示)に挿通し、ボルト41とナット42とを締結する。このボルト41とナット42との締結により、ガスケット5は、フランジ部21の第1面21a及びフランジ部31の第2面31a間に挟持され、ケース本体2及び蓋体3間に圧縮状態で介在される。これによって、ケース本体2及び蓋体3で構成されるケース1の内部空間が密封される。したがって、外部から内部空間への雨水等の浸入が防止され、収容される電池パックが雨水等に晒されて腐食等の悪影響を被る懸念がない。
【0021】
前記のように、ガスケット5における本体部6の幅方向bの寸法d1が高さ方向cの寸法d2より小とされているから、ガスケット5がケース本体2及び蓋体3間に圧縮状態で介在される際に、本体部6の反力が小さく、ケース本体2及び蓋体3の変形が生じ難くなる。また、ケース本体2の第1面21a及び蓋体3の第2面31aの幅寸法が小さくてもよく、省スペース的である。さらに、本体部6の両側面6c,6dには、倒れ防止用突起7,8が設けられているから、本体部6を圧縮する際に、その圧縮応力やケース本体2及び蓋体3の変位によって当該ガスケット5が倒れることが防止される。
【0022】
そして、倒れ防止用突起7,8の下面7a,8aは、フランジ部21の第1面21aに接触する平坦部からなり、倒れ防止用突起7,8の上面7b,8bは、フランジ部31の第2面31aに近接する平坦部からなる。したがって、第1面21a及び第2面31a間での当該ガスケット5の装着性がよく、また、組付け装着後のガスケット5が安定化する。また、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の高さ方向cの寸法d3は、本体部6の高さ方向cの寸法d2の1/3以上とされているから、ケース本体2及び蓋体3の組付け時のガスケット5の倒れがより的確に防止される。さらに、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の周方向幅aの寸法d4は、突出方向幅の寸法d5より大とされているから、倒れ防止機能が的確に発揮されるとともに、必要なスペースも大きくなることがない。加えて、倒れ防止用突起7,8は、本体部6の周方向aに間隔を空けて複数個設けられているから、本体部6の全周に亘り、倒れ防止機能を均等に近い状態で発現させるようにすることができる。
【0023】
図4図5(a)(b)及び図6は、本発明に係るガスケットの第二の実施形態を示す。本実施形態のガスケット5では、第一の実施形態と同様の倒れ防止用突起7,8が本体部6の両側面6c,6dに複数個設けられている。これに加えて、本体部6における対向面(対向する面の一方)6bに、蓋体3の第2面31aに弾接する第1突条体9が、本体部6の全周に亘って設けられている。また、本体部6における対向面(対向する面の他方)6aに、ケース本体2の第1面21aに接触する第2突条体10が、本体部6の全周に亘って設けられている。さらに、本体部6の外周側には、カラー12を保持するためのカラー保持部11が一体に設けられている。
【0024】
第1突条体9の幅方向中央部には、本体部6の全周に亘る凹溝9aが形成され、これにより第1突条体9が2条に分断されている。また、第2突条体10の幅方向中央部には、本体部6の全周に亘る凹溝10aが形成され、これにより第2突条体10も2条に分断されている。第1突条体9は、本体部6より高さ方向に突出するよう形成され、凹溝9aを含む第1突条体9の表面が本体部6の対向面6bを構成する。これに対し、第2突条体10は、本体部6より凹溝10aを高さ方向cに凹ませるよう形成することによって、凹溝10aの幅方向bの両側部分を実質的に突条としている。したがって、凹溝10aを含む第2突条体10の表面が本体部6の対向面6aを構成する。倒れ防止用突起7,8の下側の平坦部である下面7a,8aと第2突条体10との間には、肉抜き部10b,10bが形成されている。倒れ防止用突起7,8の下面7a,8aと、第2突条体10の頂面とは、肉抜き部10b,10bを介して同一面域に位置付けられている。本実施形態でも、本体部6の幅方向bの寸法d1と高さ方向cの寸法d2との大小関係、及び、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の周方向幅の寸法d4と突出方向幅の寸法d5との大小関係は、いずれも第一の実施形態と同様とされている。また、倒れ防止用突起7,8における本体部6からの突出基部の高さ方向cの寸法d3は、第一の実施形態と同様、本体部6の高さ方向cの寸法d2の1/3以上とされている。
なお、第1突条体9及び第2突条体10の先端部の形状は、本実施形態では平坦であるが、その他の形状であってもよく、例えば、丸みを帯びた形状、尖った山型形状であってもよい。また、本実施形態では、第1突条体9及び第2突条体10は、凹溝9a,10aによって2条に分断されているが、凹溝のない突条体も適用可能である。
【0025】
カラー保持部11は、本体部6における周方向aに隣接する倒れ防止用突起7,8間の各中間部分に、本体部6の外側面6dより突出するように本体部6に成型一体に設けられている。カラー保持部11には、カラー12を圧入し得る貫通孔11aが本体部6の高さ方向に沿って設けられている。カラー12は、不図示のボルトの軸部が挿通し得る内筒部12aを有し、カラー12の軸方向(高さ方向c)長さは、ケース本体2のフランジ部21及び蓋体3のフランジ部31の間隔を適正に規定する長さに設計される。
【0026】
本実施形態のガスケット5を用いたケース1の密封構造も第一の実施形態と同様に構成される。本実施形態では、各カラー保持部11の貫通孔11aに金属環からなるカラー12を圧入して所定位置に保持させた後に、ガスケット5を、ケース本体2のフランジ部21上に配置し、蓋体3を、そのフランジ部31が本体部6に乗るように配置する。次いで、締結部材4のボルト41の軸部を、フランジ部31に形成されたボルト挿通孔31b、カラー12の内筒部12a及びフランジ部21に形成されたボルト挿通孔21bに挿通させ、ボルト41とナット42とを締結する。この締結部材4の締結により、ガスケット5は、フランジ部21の第1面21a及びフランジ部31の第2面31a間に挟持され、ケース本体2及び蓋体3間に圧縮状態で介在される。これによって、ケース本体2及び蓋体3で構成されるケース1の内部空間が密封される。したがって、外部から内部空間への雨水等の浸入が防止され、収容される電池パックが雨水等に晒されて腐食等の悪影響を被る懸念がない。
【0027】
また、第一の実施形態と同様に、ガスケット5における本体部6の幅方向bの寸法d1が高さ方向cの寸法d2より小とされているから、ガスケット5がケース本体2及び蓋体3間に圧縮状態で介在される際に、本体部6の反力が小さく、ケース本体2及び蓋体3の変形が生じ難くなる。また、ケース本体2の第1面21a及び蓋体3の第2面31aの幅寸法が小さくてもよく、省スペース的である。さらに、第一の実施形態と同様に、本体部6の両側面6c,6dには、倒れ防止用突起7,8が設けられているから、本体部6を圧縮する際に、その圧縮応力やケース本体2及び蓋体3の変位によって当該ガスケット5が倒れることが防止される。
【0028】
本実施形態では、本体部6の対向面6bには、蓋体3の第2面31aに弾接する第1突条体9が設けられているから、この第1突条体9の弾性変形によって、本体部6の対向面6bと蓋体3の第2面31aとの間が確実にシールされる。また、本体部6の対向面6aにはケース本体2の第1面21aに接触する第2突条体10が設けられているから、本体部6の対向面6aとケース本体2の第1面21aとの間がシールされ、第1突条体9のシール機能とも相俟って、よりシール機能が向上する。そして、倒れ防止用突起7,8の形成部位では、倒れ防止用突起7,8と第2突条体10との間に肉抜き部10bが形成されていることにより、第2突条体10が的確に圧縮され、シール性が確保される。このような肉抜き部10bが存在しない場合、第2突条体10の圧縮性が倒れ防止用突起7,8によって減退するので、この部分のシール性が低下する懸念がある。さらに、第1突条体9及び第2突条体10は、ともに幅方向中央部に凹溝9a,10aを有しているので、第2面31a、第1面21aに対する接触面積が第一の実施形態よりも小さくなり、シール性を維持しながらも、圧縮反力が低く抑えられる。
【0029】
さらに、本実施形態では、本体部6にカラー保持部11が一体に設けられていることによって、ガスケット5を介在させてケース本体2及び蓋体3を組付ける際のガスケット5の装着性がより向上する。また、カラー保持部11に金属環からなるカラー12が保持されるので、締結時の過度な締結が防止され、ケース本体2(フランジ部21)及び蓋体3(フランジ部31)の締結による変形が防止される。さらに、カラー保持部11が、シール機能の主体となる環状の第1突条体9及び第2突条体10の外側に存在するから、カラー保持部11回りに特にシール機能部を設ける必要がなく、また、カラー保持部11によって第1突条体9及び第2突条体10が分断されることがない。
その他の構成は第一の実施形態と同様であるので共通部分に同一の符号を付しその説明を割愛する。
【0030】
図7は、本発明に係るガスケットの第三の実施形態を示し、第二の実施形態のガスケット5における倒れ防止用突起7,8の変形例に相当する。本実施形態のガスケット5における倒れ防止用突起7,8のうち、外側の倒れ防止用突起8は、さらに外側に出っ張った形状とされ、当該倒れ防止用突起8の下面に、第1面21a側に向く下向きの位置決め用突起80を有している。第1部材2のフランジ部21には、当該位置決め用突起80を挿通し得る大きさの孔21cが、当該位置決め用突起80に対応する位置に形成されている。本実施形態のガスケット5を第1部材2のフランジ部21上に配置する際、本体部6の外周側の各倒れ防止用突起8に設けられた位置決め用突起80を前記孔21cに挿入することによってフランジ部21上の正規の位置に的確に位置決めを行うことができる。したがって、ケース本体2及び蓋体3間への当該ガスケット5の介在が所定位置に的確になされ、組付け装着性がより向上する。また、倒れ防止突起8が位置決め用突起80を有していることにより、位置決め用突起80のアンカー効果も付加され、倒れ防止機能がより確実に発揮され、組付け装着後の安定性も一層向上する。しかも、位置決め用突起80は、本体部6の外側で、シール機能に関与しない位置に設けられているから、ケース1内部への水の浸入の恐れがないため、位置決め用突起80の回りに特にシール機能部を設ける必要がない。
【0031】
図8は、前記各実施形態のガスケットにおける倒れ防止突起が設けられている部位の変形例を示す。本変形例では、本体部6の内側の側面6cがフランジ部21の内周線21dに沿い、倒れ防止用突起7,8が設けられている部位では、本体部6が外周側に屈曲するよう屈曲され、倒れ防止用突起7,8がフランジ部21の幅内に収まるように設定されている。このように構成することにより、ガスケット5の周長が短くなり、圧縮反力が小さくなる。
【0032】
なお、前記各実施形態では、ケース本体2を第1部材、蓋体3を第2部材としたが、ケース本体2を第2部材、蓋体3を第1部材としてもよく、これら第1部材及び第2部材とガスケット5の各構成部との関係も、特許請求の範囲を逸脱しない限り適宜互換し得るものである。また、第1部材及び第2部材を自動車用の電池パックを収容するケースの構成部材としたが、これに限らず、ガスケットが介在される部位が平面形状である2部材であれば、本発明のガスケットが好ましく適用される。さらに、倒れ防止用突起7,8の外形部7c,8cの形状は、円弧形状に限らず他の形状とすることも可能であり、本体部6の内外両側面6c,6dに限らずどちらか一方の側面に設けることも可能である。加えて、カラー保持部11における貫通孔11aの内面形状も図例のような高さ方向に直状のものに限らず、内面に嵌合代を大きくする環状突部を設けるようにしてもよい。特に、このような環状突部を設けることは、ガスケットにカラーも保持させた状態で保管、搬送及び納品等がなされる場合に、これらの過程でカラーが脱落することを防止するために有効である。
【符号の説明】
【0033】
2 ケース本体(第1部材)
21a 第1面
21c 孔
3 蓋体(第2部材)
31a 第2面
5 ガスケット
6 本体部
6a 対向面(対向する面の他方)
6b 対向面(対向する面の一方)
6c,6d 内外両側面(側面)
7,8 倒れ防止用突起
7a,8a 下面(平坦部)
7b,8b 上面(平坦部)
9 第1突条体
10 第2突条体
10b 肉抜き部
11 カラー保持部
12 カラー
a 周方向
b 幅方向
c 高さ方向
d1 本体部の幅方向の寸法
d2 本体部の高さ方向の寸法
d3 突出基部の高さ方向の寸法
d4 突出基部の周方向幅の寸法
d5 突出方向幅の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8