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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】裁断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/02 20060101AFI20220817BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20220817BHJP
   B26D 3/16 20060101ALI20220817BHJP
   B26D 1/14 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B26D7/02 E
B26D3/00 601D
B26D3/00 601E
B26D3/16 A
B26D3/16 G
B26D1/14 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018099010
(22)【出願日】2018-05-23
(65)【公開番号】P2019202384
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390034452
【氏名又は名称】ブリヂストンフローテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正裕
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101367141(CN,A)
【文献】英国特許出願公告第00916433(GB,A)
【文献】特開平04-294922(JP,A)
【文献】実開昭54-045480(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/02
B26D 3/00
B26D 3/16
B26D 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック本体と、
前記チャック本体の内部に挿通されるパイプを保持する保持部材と、
前記チャック本体に設けられ、前記パイプの半径方向に進出及び後退する複数のチャック爪と、
前記チャック爪に設けられ、前記パイプを切断する切断刃と、
前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出及び後退させることが可能であって、前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出させながら前記切断刃を前記パイプに押し付ける移動手段と、
前記チャック本体を複数の前記チャック爪と共に前記パイプの周方向に沿って回転させる回転手段と、
を有し、
前記移動手段は、
前記チャック爪における前記パイプと対向する側に設けられ、前記パイプの軸方向に対して交差する方向に配置された傾斜面と、
前記傾斜面よりも前記パイプの外周面側に設けられ、前記パイプの軸方向に沿って移動する移動部と、
前記移動部に設けられ、前記傾斜面と摺動して前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出及び後退させる摺動面と、
前記摺動面及び前記傾斜面の一方に設けられ、前記パイプの軸方向に沿って配置された溝部と、
前記摺動面及び前記傾斜面の他方に設けられ、前記溝部に挿入されると共に前記パイプの半径方向への前記傾斜面の移動を案内する突起部と、
を備え、
前記回転手段は、前記移動部を前記チャック本体と共に回転させる構成とされている裁断装置。
【請求項2】
前記切断刃は、周縁部に刃が形成された円形刃とされ、前記チャック爪に周方向に回転可能に支持されている請求項1記載の裁断装置。
【請求項3】
前記切断刃が前記パイプに押し付けられる位置で、前記パイプを内周面側から支持する芯部が設けられている請求項1又は請求項2に記載の裁断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、一対のレバーハンドルを備えたパイプカッタが開示されている。一方のレバーハンドルの先端側には、パイプの受部が設けられており、他方のレバーハンドルの先端側には、パイプを切断可能な切刃と、受部との間にパイプを固定する押え部材とが設けられている。そして、トーションバネにより押え部材が受部に近接する方向に付勢されてパイプを挟持しつつパイプを切断する。
【0003】
下記特許文献2には、パイプの軸線を中心に旋回可能に支持された旋回部材に、支持部材を介して切刃を移動可能に支持し、押圧用バネにより切刃をパイプの外周に向かって押圧するパイプカッタが開示されている。この構成では、切刃がパイプの外周に押圧接触された状態で、旋回部材を旋回させて、切刃によりパイプを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-87642号公報
【文献】特開2003-136326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のパイプカッタでは、一対のレバーハンドルを握り、手動により一対のレバーハンドルを接近させてパイプを切断するので、切断時に大きな力が必要であり、切断作業に手間がかかる。
【0006】
また、上記特許文献2に記載のパイプカッタでは、支持部材に支持された切刃をパイプに押し付けて切断する構成なので、切断作業に時間を要する。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、パイプを容易に切断することができる裁断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、第1態様に記載裁断装置は、チャック本体と、前記チャック本体の内部に挿通されるパイプを保持する保持部材と、前記チャック本体に設けられ、前記パイプの半径方向に進出及び後退する複数のチャック爪と、前記チャック爪に設けられ、前記パイプを切断する切断刃と、前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出及び後退させると共に、前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出させながら前記切断刃を前記パイプに押し付ける移動手段と、前記チャック本体を複数の前記チャック爪と共に前記パイプの周方向に沿って回転させる回転手段と、を有する。
【0009】
第1態様に記載の裁断装置によれば、チャック本体の内部に挿通されるパイプは、保持部材によって保持されている。チャック本体に設けられた複数のチャック爪は、移動手段によってパイプの半径方向に進出及び後退する。チャック爪には、パイプを切断する切断刃が設けられており、移動手段によって、チャック爪をパイプの半径方向に進出させながら切断刃をパイプに押し付ける。そして、チャック爪をパイプの半径方向に進出させながら、回転手段によって、チャック本体を複数のチャック爪と共にパイプの周方向に沿って回転させることで、切断刃によってパイプが切断される。これにより、パイプを容易に切断することができる。
【0010】
第2態様に記載の裁断装置は、第1態様に記載の裁断装置において、前記移動手段は、前記チャック爪における前記パイプと対向する側に設けられ、前記パイプの軸方向に対して交差する方向に配置された傾斜面と、前記傾斜面よりも前記パイプの外周面側に設けられ、前記パイプの軸方向に沿って移動する移動部と、前記移動部に設けられ、前記傾斜面と摺動して前記チャック爪を前記パイプの半径方向に進出及び後退させる摺動面と、を有する。
【0011】
第2態様に記載の裁断装置によれば、チャック爪におけるパイプと対向する側には、パイプの軸方向に対して交差する方向に配置された傾斜面が設けられている。傾斜面よりもパイプの外周面側には、移動部が設けられており、移動部がパイプの軸方向に沿って移動する。移動部には、傾斜面と摺動する摺動面が設けられており、移動部がパイプの軸方向に沿って移動することで、摺動面が傾斜面と摺動して、チャック爪をパイプの半径方向に進出及び後退させる。このため、移動部の移動により、チャック爪をパイプの半径方向に容易に進出及び後退させることができる。
【0012】
第3態様に記載の裁断装置は、第2態様に記載の裁断装置において、前記回転手段は、前記移動部を前記チャック本体と共に回転させる構成とされている。
【0013】
第3態様に記載の裁断装置によれば、回転手段は、移動部をチャック本体と共に回転させる構成とされており、摺動面と傾斜面とを相対的に回転させる必要がない。
【0014】
第4態様に記載の裁断装置は、第3態様に記載の裁断装置において、前記摺動面及び前記傾斜面の一方に設けられ、前記パイプの軸方向に沿って配置された溝部と、前記摺動面及び前記傾斜面の他方に設けられ、前記溝部に挿入されると共に前記パイプの半径方向への前記傾斜面の移動を案内する突起部と、を有する。
【0015】
第4態様に記載の裁断装置によれば、摺動面及び傾斜面の一方に設けられた溝部に、摺動面及び傾斜面の他方に設けられた突起部が挿入されている。これにより、突起部が溝部に挿入された状態で、突起部と溝部がパイプの軸方向に沿って相対的に移動することで、摺動面と摺動する傾斜面の移動が案内される。このため、チャック爪をパイプの半径方向にスムーズに進出及び後退させることができる。
【0016】
第5態様に記載の裁断装置は、第1態様から第4態様までのいずれか1に記載の裁断装置において、前記切断刃は、周縁部に刃が形成された円形刃とされ、前記チャック爪に周方向に回転可能に支持されている。
【0017】
第5態様に記載の裁断装置によれば、切断刃は、円形刃とされ、チャック爪に周方向に回転可能に支持されており、チャック爪をパイプの半径方向に進出させながら切断刃をパイプに押し付けたときに、切断刃が回転する。このため、パイプを容易に切断することができる。
【0018】
第6態様に記載の裁断装置は、第1態様から第5態様までのいずれか1に記載の裁断装置において、前記切断刃が前記パイプに押し付けられる位置で、前記パイプを内周面側から支持する芯部が設けられている。
【0019】
第6態様に記載の裁断装置によれば、切断刃がパイプに押し付けられる位置で、パイプを内周面側から支持する芯部が設けられているため、パイプの半径方向内側への撓みが抑制され、パイプを容易に切断することができる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の裁断装置によれば、パイプを容易に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る裁断装置を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る裁断装置に用いられるチャック本体とチャック爪付近の構成であって、切断刃をパイプに対して後退させた状態を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る裁断装置に用いられるチャック本体とチャック爪を示す側面図である。
図4】第1実施形態に係る裁断装置に用いられるチャック本体とチャック爪付近の構成であって、切断刃を進出させてパイプに押し付けた状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る裁断装置を示す断面図である。
図6】比較例のパイプカッタを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
〔第1実施形態〕
図1図4を用いて、第1実施形態に係る裁断装置について説明する。
【0024】
図1には、第1実施形態に係る裁断装置10が断面図にて示されている。図2には、裁断装置10のチャック本体12及びチャック爪16付近が断面図にて示されている。図1及び図2に示されるように、裁断装置10は、ホースやチューブなどのパイプ102を裁断する(切断する)ための装置である。裁断装置10は、チャック本体12と、チャック本体12の内部に挿通されるパイプ102を保持する保持装置14と、を備えている。チャック本体12には、パイプ102の半径方向に進出及び後退する複数のチャック爪16が設けられている。チャック爪16の先端部(チャック本体12の半径方向内側)には、パイプ102を切断する切断刃(カッタ)18が設けられている。
【0025】
また、裁断装置10は、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出及び後退させると共に、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出させながら切断刃18をパイプ102に押し付ける移動手段としての移動装置20を備えている。さらに、裁断装置10は、チャック本体12を複数のチャック爪16と共にパイプ102の周方向に沿って回転させる回転手段としての回転装置22を備えている。
【0026】
チャック本体12は、筒状の部材からなり、パイプ102の軸方向に沿った断面視にて略クランク状に形成されている。より具体的には、チャック本体12は、パイプ102の外周面に沿って配置された筒状部12Aと、筒状部12Aの軸方向の一端部(チャック爪16側の端部)から半径方向外側に延びた縦壁部12Bと、縦壁部12Bの外側端部からチャック爪16側に延びた筒状部12Cと、を備えている。チャック本体12は、中心部に略円形状の開口部26を備えており、開口部26の内部にパイプ102が挿通されている。
【0027】
本実施形態では、図3に示されるように、チャック本体12の周方向に所定の間隔で3つのチャック爪16がチャック本体12の半径方向に沿って配置されている。チャック本体12には、略半径方向に沿ってチャック爪16の移動を案内する溝部28が設けられている。チャック爪16が溝部28に挿入された状態で移動することで、チャック爪16がパイプ102(図1参照)の半径方向に進出及び後退するようになっている。
【0028】
なお、図1及び図2では、裁断装置10の構成を分かりやすくするため、裁断装置10の鉛直方向に沿った断面図ではなく、裁断装置10の2つのチャック爪16の位置で切断した断面図とされている。
【0029】
図1に示されるように、保持装置14は、基部30と、基部30に固定されると共にパイプ102が挿通されるフレーム32と、フレーム32の内部でパイプ102を保持する保持部材としてのクランプ34と、を備えている。フレーム32は、断面視にて略逆U字状に形成されており、パイプ102の軸方向に対向する壁部32A、32Bを備えている。壁部32A、32Bの下部は、基部30に固定されている。壁部32A、32Bの中央部には、開口部(図示省略)が形成されており、開口部にパイプ102が挿通されている。一例として、クランプ34は、パイプ102の両側に配置された一対のバンド36を備えている。一対のバンド36は、パイプ102を把持する爪(図示省略)を備えており、パイプ102に対してほぼ平行に開閉する構成とされている。そして、一対のバンド36の爪でパイプ102を両側から挟むことで、パイプ102を所定の位置に固定して保持するようになっている。
【0030】
一対のバンド36は、後述する送り装置42によるパイプ102の送り時に、パイプ102が下向きに撓まないようにするために、一対のバンド36がガイドとなるように開き量を調整できる機構を備えている。また、一対のバンド36は、電動バンドとしてもよい。
【0031】
なお、一対のバンド36に代えて、パイプ102を三方から把持する3爪型の開閉チャックを用いてもよい。また、3爪型の開閉チャックは、電動チャックとしてもよい。
【0032】
保持装置14は、パイプ102の先端部102Aが突き当てられる突き当て部38を備えている。突き当て部38は、基部30に立設された板材38Aと、板材38Aに対して回動可能に設けられたスイッチ部38Bと、を備えている。本実施形態では、スイッチ部38Bは、板材38Aの上部に回動可能に支持されており、スイッチ部36Bの下部側がパイプ102の軸方向に回動する。スイッチ部38Bは、パイプ102の先端部102Aが接触して板材38A側に回動することで、パイプ102の先端部102Aが突き当て部38まで送られたことを検出するようになっている。突き当て部38のスイッチ部38Bは、切断刃18からパイプ102の裁断長さの位置に配置されている。
【0033】
裁断装置10は、パイプ102の軸方向における保持装置14と反対側に、パイプ102を保持装置14側に送る送り装置42を備えている。送り装置42は、パイプ102の外周面に接触する一対のロール42A、42Bを備えている。一例として、ロール42A、42Bのいずれか一方は、モータで駆動されている。ロール42A、42Bのいずれか一方がモータにより回転駆動され、ロール42A、42Bの他方がパイプ102の移動に従動して回転することで、パイプ102が突き当て部38のスイッチ部38Bに当たるまで送られるようになっている。
【0034】
チャック爪16は、パイプ102の軸方向から見て略矩形状に形成されており(図3参照)、チャック爪16の半径方向内側の先端部であって、軸方向に沿った断面視(図1参照)にて保持装置14の側の先端部に切断刃18が設けられている。チャック爪16の構成については、後に説明する。
【0035】
切断刃18は、周縁部に刃18Aが形成された円形刃とされている。切断刃18の中心部には、チャック爪16に対して切断刃18を周方向に回転可能に支持する回転軸46が設けられている(図2参照)。本実施形態では、回転軸46には、モータなどの駆動源は設けられていない。このため、フリーの状態で、回転軸46により切断刃18が周方向に回転可能とされている。
【0036】
移動装置20は、図1及び図2に示されるように、チャック爪16におけるパイプ102と対向する側に設けられた傾斜面50と、傾斜面50よりもパイプ102の外周面側でパイプ102の軸方向に沿って移動する移動部としてのドローパイプ52と、を備えている。ドローパイプ52には、傾斜面50と摺動してチャック爪16をパイプ102の半径方向に進出及び後退させる摺動面54が設けられている。
【0037】
図2に示されるように、傾斜面50は、チャック爪16の切断刃18が設けられた位置よりもチャック本体12の側に、パイプ102の軸方向に対して交差する方向に配置されている。傾斜面50は、チャック爪16の切断刃18側の部位からチャック本体12側の部位に向かって内径が徐々に拡大するようなテーパ面とされている。傾斜面50には、パイプ102の軸方向に沿って配置された溝部としてのインロー溝56が設けられている。本実施形態では、インロー溝56は、T字状溝とされている。
【0038】
図示を省略するが、チャック爪16におけるチャック本体12側の縦壁面16Bには、半径方向に沿ってT字状溝が形成されている。また、チャック本体12の筒状部12Cの先端側に設けられた縦壁面12Dには、チャック爪16のT字状溝に挿入された状態で半径方向に移動可能なT字状突起が設けられている。これにより、チャック本体12の縦壁面12DのT字状突起がチャック爪16の縦壁面16BのT字状溝に挿入された状態で、チャック爪16がチャック本体12に対して半径方向に移動可能とされている。
【0039】
ドローパイプ52は、パイプ102の軸方向に沿って配置された筒状部52Aと、筒状部52Aの軸方向の一端部(チャック爪16側の端部)に設けられると共に筒状部52Aの外径よりも外径が拡大されたフランジ部52Bと、を備えている。
【0040】
ドローパイプ52の筒状部52Aは、チャック本体12の開口部26に挿通されている。筒状部52Aは、略円形状の貫通部58を備えており、貫通部58にパイプ102が挿通されている。筒状部52Aの外径は、チャック本体12の開口部26の内径よりも僅かに小さく、チャック本体12とドローパイプ52とが軸方向に相対的に移動可能とされている。本実施形態では、チャック本体12に対してドローパイプ52が軸方向に移動する構成とされている。
【0041】
移動装置20は、筒状部52Aの軸方向の他端部(送り装置42側の端部)にベアリング60を介して配置される支持部材62と、支持部材62をパイプ102の軸方向に沿って移動させるネジ64と、ネジ64を回転させるモータ66と、を備えている。
【0042】
支持部材62は、ドローパイプ52の軸方向に対して略直交する方向に配置された本体部62Aと、本体部62Aとネジ64との間に介在される筒状体62Bと、を備えている。筒状体62Bは、ネジ64に螺合されるネジ部を備えており、本体部62Aに固定されている。移動装置20では、ネジ64の回転に伴って、支持部材62がパイプ102の軸方向に移動する。これにより、支持部材62の移動と共に、ベアリング60を介して配置されたドローパイプ52がパイプ102の軸方向に移動するようになっている。また、図示を省略するが、ドローパイプ52の筒状部52Aの上部側は、ベアリング60を介して裁断装置10の筐体に支持されている。これにより、ドローパイプ52は、支持部材62及び裁断装置10の筐体に対して回転可能とされている。
【0043】
摺動面54は、ドローパイプ52のフランジ部52Bの外周側に形成されている。摺動面54は、チャック爪16の傾斜面50に沿って配置されており、筒状部52A側の部位から切断刃18側の部位に向かって外径が徐々に小さくなるテーパ面とされている。摺動面54は、ドローパイプ52がパイプ102の軸方向に移動することで、チャック爪16の傾斜面50と摺動してチャック爪16をパイプ102の半径方向に進出及び後退させるようになっている。すなわち、移動装置20は、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出させ(チャック爪16を閉じ)、また、チャック爪16をパイプ102の半径方向に後退させる(チャック爪16を開く)、チャック爪16の開閉用アクチュエータとして機能している。
【0044】
本実施形態では、ドローパイプ52が保持装置14(図1参照)の側に移動すると、チャック爪16がパイプ102に対して後退する(図2参照)。また、ドローパイプ52が保持装置14(図1参照)と反対側、すなわち送り装置42(図1参照)の側に移動すると、チャック爪16がパイプ102側に進出し、切断刃18がパイプ102の外周面に押し付けられるようになっている(図4参照)。
【0045】
摺動面54には、傾斜面50のインロー溝56に挿入される突起部70が設けられている。突起部70は、パイプ102の軸方向に沿って設けられている。本実施形態では、突起部70は、インロー溝56に挿入された状態でインロー溝56と相対的に移動可能なT字状の突起とされている。突起部70は、インロー溝56に挿入されることで、パイプ102の半径方向への傾斜面50の移動を案内するようになっている。
【0046】
本実施形態では、上述のように、チャック本体12の縦壁面12DのT字状突起がチャック爪16の縦壁面16BのT字状溝に挿入された状態で、チャック爪16がチャック本体12に対して半径方向に移動可能とされている。さらに、摺動面54のT字状の突起部70が摺動面54のT字状のインロー溝56に挿入された状態で、突起部70とインロー溝56とが相対的に移動可能とされている。これにより、ドローパイプ52の軸方向の移動に伴い、チャック爪16が半径方向に移動する(開閉する)ようになっている。
【0047】
回転装置22は、プーリ74と、プーリ74の軸部75に接続されてプーリ74を回転させるモータ76と、を備えている。さらに、回転装置22は、チャック本体12の筒状部12Aの外周面に固定されたプーリ78と、プーリ74とプーリ78に巻き掛けられる無端状のベルト80と、を備えている。チャック本体12の筒状部12Aの外周面側には、ベアリング82が設けられている。図示を省略するが、チャック本体12の筒状部12Aは、ベアリング82を介して裁断装置10の筐体に支持されている。これにより、チャック本体12は、裁断装置10の筐体に対して回転可能とされている。
【0048】
回転装置22では、モータ76の作動によりプーリ74が回転し、プーリ74の回転力がベルト80によりプーリ78に伝達され、プーリ78が回転する。プーリ78の回転により、チャック本体12がパイプ102の周方向に回転し、チャック本体12と共にチャック爪16とドローパイプ52がパイプ102の周方向に回転する。チャック爪16のパイプ102の周方向への回転により、パイプ102に押し付けられた切断刃18が公転する(パイプ102周りに回る)ようになっている。
【0049】
図1に示されるように、裁断装置10は、裁断装置10の動作を制御する制御装置90を備えている。制御装置90は、モータ66、モータ76、及び送り装置42の動作を制御する。また、突き当て部38によるスイッチ部38Bの検出信号は、制御装置90に入力される。また、制御装置90は、保持装置14のクランプ34の動作を制御する。例えば、制御装置90は、パイプ102の先端部102Aが突き当て部38に当たったことがスイッチ部38Bにより検出されたときに、保持装置14のクランプ34を動作させてパイプ102を保持するような制御を行う。
【0050】
モータ66には、サーボモータが使用されている。これにより、サーボモータのトルク制御機能を活かし、モータ66の過負荷から早期に切断刃18の破損を感知することが可能となる。また、制御装置90は、サーボモータのトルク設定又は電流値設置で閾値を設けておくことで、パイプ102のサイズ毎にモータ76の回転数を設定しなくても、上記閾値以下となったら、パイプ102の裁断が終了したと判定することが可能となる。
【0051】
また、パイプ102として、補強層のあるゴムホースを裁断する(切断する)場合、モータ66の負荷が一定となるように、チャック爪16の進出スピードを制御すれば、柔らかいゴムの部分を高速で裁断でき、サイクルタイムを短縮することができる。
【0052】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0053】
裁断装置10によりパイプ102を裁断する(切断する)際には、突き当て部38を切断刃18に対して裁断長さの位置にセットする。また、図2に示されるように、移動装置20のモータ66の作動によりドローパイプ52を保持装置14の側に移動させることで、3つのチャック爪16をチャック本体12の中心部に対して後退した位置に移動させておく(チャック爪16を開いておく)。さらに、送り装置42によりパイプ102を保持装置14の方向(矢印A方向)に送る(図1参照)。このとき、パイプ102をチャック本体12及びドローパイプ52の内部に挿通させ、パイプ102を突き当て部38に当たるまで送る。そして、パイプ102の先端部102Aが突き当て部38に当たったことがスイッチ部38Bにより検出されたときに、保持装置14のクランプ34が作動される。これにより、パイプ102がクランプ34により把持され、パイプ102が所定の位置に保持される(図1参照)。
【0054】
次いで、図4に示されるように、移動装置20のモータ66の作動によりドローパイプ52を送り装置42の側(矢印B方向)に移動させることで、チャック爪16をパイプ102の半径方向(矢印C方向)に進出させ、切断刃18をパイプ102の外周面に押し付ける。そして、モータ66の作動により、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出させながら(チャック爪16を閉じながら)、回転装置22のモータ76の作動により、チャック本体12を3つのチャック爪16と共にパイプ102の周方向に沿って回転させる。これにより、切断刃18によってパイプ102が裁断される(切断される)。
【0055】
本実施形態では、移動装置20は、モータ66のトルク制御機能により、切断刃18を所定のトルクでパイプ102に押し付けるようにモータ66を作動させる。これにより、切断刃18のよるパイプ102の裁断(切断)深さに応じて、モータ66の作動によりチャック爪16をパイプ102の半径方向(矢印C方向)に進出させながら(チャック爪16を閉じながら)、切断刃18によりパイプ102を裁断する。そして、制御装置90は、モータ66のトルクが閾値以下となったとき、パイプ102の裁断が終了したと判定する。
【0056】
パイプ102の裁断が終了した後、移動装置20のモータ66の作動によりドローパイプ52を保持装置14の側(矢印Bと反対方向)に移動させることで、3つのチャック爪16をパイプ102に対して後退させる(チャック爪16を開く)。さらに、保持装置14のクランプ34を開き、パイプ102を排出する。パイプ102は、手動で取り出してもよいし、クランプ34を開いたときに、下方に落下させるようにしてもよい。
【0057】
上記のような裁断装置10では、パイプ102を容易に切断することができる。
【0058】
また、移動装置20には、チャック爪16におけるパイプ102と対向する側に、パイプ102の軸方向に対して交差する方向に配置された傾斜面50が設けられている。傾斜面50よりもパイプ102の外周面側には、ドローパイプ52が設けられており、モータ66の作動によりドローパイプ52がパイプ102の軸方向に沿って移動する。ドローパイプ52には、傾斜面50と摺動する摺動面54が設けられており、ドローパイプ52がパイプ102の軸方向に沿って移動することで、摺動面54が傾斜面50と摺動して、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出及び後退させる。このため、ドローパイプ52の移動により、チャック爪16及び切断刃18をパイプ102の半径方向に容易に進出及び後退させることができる。
【0059】
また、回転装置22は、ドローパイプ52をチャック本体12と共に回転させる構成とされている。このため、摺動面54と傾斜面50とを相対的に回転させる必要がない。
【0060】
また、移動装置20では、傾斜面50には、パイプ102の軸方向に沿ってインロー溝56が設けられ、摺動面54には、インロー溝56に挿入されると共にパイプ102の半径方向への傾斜面50の移動を案内する突起部70が設けられている。これにより、突起部70がインロー溝56に挿入された状態で、突起部70とインロー溝56がパイプ102の軸方向に沿って相対的に移動することで、傾斜面50の移動が案内される。このため、チャック爪16をパイプ102の半径方向にスムーズに進出及び後退させることができる。
【0061】
また、切断刃18は、周縁部に刃18Aが形成された円形刃とされ、チャック爪16に周方向に回転可能に支持されている。これにより、チャック爪16をパイプ102の半径方向に進出させながら切断刃18をパイプに押し付けたときに、切断刃18が回転する。このため、パイプ102を容易に切断することができる。
【0062】
一般的に切断刃自体が回転してパイプを裁断する場合は、切粉が発生するが、本実施形態では、切断刃18をパイプ102に押し付けて裁断する押切となるので、切粉の発生を抑えることができる。
【0063】
図6には、比較例のパイプカッタ200が示されている。図6に示されるように、パイプカッタ200は、略C字状に形成された本体部202と、本体部202の一端部202Aに並べて配置された2つのロール206と、を備えている。2つのロール206は、それぞれ本体部202に支持された回転軸208により回転可能とされている。また、パイプカッタ200は、本体部202の他端部202Bに一端部202Aの方向に沿って進出及び後退可能に設けられた支持部210と、支持部210の先端に設けられた切断刃(カッター)212と、を備えている。切断刃212は、周縁部に刃を備えた回転刃とされており、回転軸214により本体部202に対して回転可能とされている。切断刃212は、フリーの状態で回転可能とされており、切断刃212を回転駆動するためのモータは設けられていない。
【0064】
また、パイプカッタ200は、本体部202の他端部202Bに支持部210と反対側に配置されたハンドル204を備えている。切断刃212は、ハンドル204の正方向又は逆方向への回転により、ハンドル204の内部のネジを正方向又は逆方向に回転させることで、ロール206の方向に沿って進出又は後退する。
【0065】
パイプカッタ200を使用する際には、パイプ102を2つのロール206と切断刃212との間に挿入する。そして、ハンドル204のネジを、正方向(例えは矢印D方向)に回転することで、支持部210を2つのロール206の側(矢印E方向)に進出させ、切断刃212をパイプ102の切断位置に合わせる。そして、ハンドル204のネジを正方向(例えは矢印D方向)に回転させながら、ハンドル204をパイプ102の円周方向(矢印F方向)に回す。これにより、切断刃212は、パイプ102の周りを自転しながら公転する。これにより、切断刃212によりパイプ102が裁断される。
【0066】
上記のパイプカッタ200では、手動により、ハンドル204のネジを回転させながら、ハンドル204をパイプ102の円周方向(矢印F方向)に回す必要があり、裁断作業(切断作業)に手間がかかる。
【0067】
これに対して、上記の裁断装置10では、パイプ102の裁断作業(切断作業)を自動で行うことができ、裁断作業の手間が少なくなる。また、裁断装置10では、移動装置20のモータ66の作動によりチャック爪16を進出させ、回転装置22のモータ76の作動によりチャック本体12及びチャック爪16をパイプ102の周方向に沿って回転させる。このため、裁断装置10では、パイプ102を容易に切断することができる。
【0068】
〔第2実施形態〕
次に、図5を用いて、第2実施形態に係る裁断装置について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0069】
図5に示されるように、第2実施形態に係る裁断装置110は、パイプとしてのホース104の内部に挿入される芯部としての芯金112と、芯金112をホース104の軸方向に沿って移動させるシリンダ114と、を備えている。本実施形態の保持装置14には、第1実施形態の突き当て部38(図1参照)は設けられておらず、突き当て部38(図1参照)に代えて、シリンダ114が設けられている。
【0070】
芯金112の外径は、ホース104の内径よりも僅かに小さく、ホース104の先端部104Aからホース104の内部に挿入可能とされている。シリンダ114は、基部116に設置される本体部118と、本体部118に対してクランプ34に接近又は離れる方向に移動する移動体120と、を備えている。移動体120には、芯金112が着脱可能に保持されている。芯金112は、ホース104のサイズに応じて交換可能とされている。シリンダ114は、移動体120をクランプ34に接近する方向(矢印H方向)に移動させることで、芯金112がホース104の内部に挿入される。そのとき、芯金112は、切断刃18によるホース104の裁断位置を含む位置まで挿入されている。制御装置90は、シリンダ114の動作を制御する。
【0071】
また、裁断装置110は、ホース104をクランプ34の側(矢印G方向)に送る送り装置122を備えている。送り装置122は、ホース104の両側に配置された一対の搬送ベルト124A、124Bを備えている。搬送ベルト124A、124Bは、無端状のベルトからなり、間隔をおいて配置された一対のロール126、128に巻き掛けられている。ロール126、128の一方が回転駆動されることで、搬送ベルト124A、124Bがそれぞれ矢印方向に周回移動し、ホース104がクランプ34の側(矢印G方向)に送られるようになっている。一方の搬送ベルト124Aの隣には、ホース104に接触するようにエンコーダ130が設けられている。エンコーダ130は、送り装置122によるホース104の送り出し量を検出する。エンコーダ130の検出信号は、制御装置90に入力され、制御装置90により送り装置122の動作が制御される。これにより、ホース104の先端部104Aがクランプ34を超える適切な位置まで送られる。
【0072】
上記の裁断装置110では、第1実施形態の裁断装置10(図1参照)と同じ構成による作用及び効果に加えて、以下の作用及び効果が得られる。ホース104の内部には、切断刃18によるホース104の裁断位置を含むように芯金112が挿入されている。すなわち、切断刃18がホース104に押し付けられる位置で、ホース104を内周面側から支持する芯金112が設けられているため、ホース104の半径方向内側への撓みが抑制され、ホース104を容易に裁断する(切断する)ことができる。
【0073】
例えば、ホース104が柔らかいゴムホースの場合は、芯金112が無いと、ホース104の肉厚部は内周側に逃げて裁断できなくなる可能性がある。上記の裁断装置110では、ホース104が柔らかいゴムホースの場合でも、ホース104の内部に芯金112が挿入されていることで、ホース104を容易に裁断する(切断する)ことができる。
【0074】
なお、第1及び第2実施形態では、傾斜面50にパイプ102の軸方向に沿って配置されたインロー溝56が設けられ、摺動面54にインロー溝56に挿入される突起部70が設けられていたが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、摺動面にパイプの軸方向に沿って配置された溝部を設け、傾斜面に溝部に挿入される突起部を設ける構成でもよい。
【0075】
また、第1及び第2実施形態では、回転装置22によりチャック本体12と共にドローパイプ52が回転する構成であるが、本発明はこの構成に限定するものではない。例えば、回転装置によりチャック本体が回転し、ドローパイプなどの移動部が回転しない構成でもよい。
【0076】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0077】
10 裁断装置
12 チャック本体
16 チャック爪
18 切断刃
18A 刃
20 移動装置
22 回転装置
34 クランプ(保持部材)
50 傾斜面
52 ドローパイプ(移動部)
54 摺動面
56 インロー溝(溝部)
70 突起部
102 パイプ
104 ホース(パイプ)
110 裁断装置
112 芯金(芯部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6