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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】電子通貨管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20220817BHJP
   G06Q 40/02 20120101ALI20220817BHJP
   G06Q 20/08 20120101ALI20220817BHJP
【FI】
G06Q20/06
G06Q40/02
G06Q20/08 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018215902
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020086600
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000232818
【氏名又は名称】日本郵船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596088141
【氏名又は名称】株式会社日本カ-ドネットワ-ク
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 敏晃
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 良介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 嵩
(72)【発明者】
【氏名】山中 遼
(72)【発明者】
【氏名】本元 謙司
(72)【発明者】
【氏名】荻須 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】青木 芳憲
(72)【発明者】
【氏名】水野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 隆史
【審査官】松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-243400(JP,A)
【文献】特許第6363254(JP,B1)
【文献】特開2007-213399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションの要求に応じて増減する処理を行う第1の台帳管理システムと、
ユーザの通信装置が前記第1のネットワークに接続しないで使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションの要求に応じて増減する処理を行う第2の台帳管理システムと
を備え、
前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは、互いに通信可能なときに、前記第1の台帳管理システムの管理下の口座と前記第2の台帳管理システムの管理下の口座との間で電子通貨を移動する処理をトランザクションの要求に応じて行う
電子通貨管理システム。
【請求項2】
前記第1の台帳管理システムは、前記第2の台帳管理システムと通信不可能なときに前記第1の台帳管理システムに対し行われた、前記第1の台帳管理システムが管理する口座と前記第2の台帳管理システムが管理する口座の間で行われるトランザクションの要求、及び、前記第2の台帳管理システムが管理する2つの口座の間で行われるトランザクションの要求の少なくとも一方を蓄積し、
前記第2の台帳管理システムは、前記第1の台帳管理システムと通信不可能なときに前記第2の台帳管理システムに対し行われた、前記第1の台帳管理システムが管理する口座と前記第2の台帳管理システムが管理する口座の間で行われるトランザクションの要求、及び、前記第1の台帳管理システムが管理する2つの口座の間で行われるトランザクションの要求の少なくとも一方を蓄積し、
前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは、互いに通信可能なときに、蓄積している未処理のトランザクションの要求に応じて、口座間で電子通貨を移動する処理を行う
請求項1に記載の電子通貨管理システム。
【請求項3】
前記第1の台帳管理システムは分散台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する
請求項1又は2に記載の電子通貨管理システム。
【請求項4】
前記第1の台帳管理システムはブロックチェーンにより前記分散台帳を管理する
請求項3に記載の電子通貨管理システム。
【請求項5】
前記第1の台帳管理システムは中央管理台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する
請求項1又は2に記載の電子通貨管理システム。
【請求項6】
複数のユーザの各々に応じた前記第1の台帳管理システムを備え、
前記第1の台帳管理システムはユーザが用いる通信装置において動作し、当該ユーザの口座のみの電子通貨の残高を管理する
請求項1又は2に記載の電子通貨管理システム。
【請求項7】
前記第2の台帳管理システムは、ユーザの通信装置が前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理する
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子通貨管理システム。
【請求項8】
前記第2の台帳管理システムは分散台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する
請求項7に記載の電子通貨管理システム。
【請求項9】
前記第2の台帳管理システムはブロックチェーンにより前記分散台帳を管理する
請求項8に記載の電子通貨管理システム。
【請求項10】
前記第2の台帳管理システムは中央管理台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する
請求項7に記載の電子通貨管理システム。
【請求項11】
複数のユーザの各々に応じた前記第2の台帳管理システムを備え、
前記第2の台帳管理システムはユーザが用いる通信装置において動作し、当該ユーザの口座のみの電子通貨の残高を管理する
請求項7に記載の電子通貨管理システム。
【請求項12】
前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは同一のユーザの口座を管理し、
前記第1の台帳管理システムは自装置の管理下の一のユーザの口座の出納を管理する台帳に対応付けて前記一のユーザの前記第2の台帳管理システムの管理下の口座の出納を管理する台帳を記憶し、
前記第2の台帳管理システムは自装置の管理下の前記一のユーザの口座の出納を管理する台帳に対応付けて前記一のユーザの前記第1の台帳管理システムの管理下の口座の出納を管理する台帳を記憶する
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電子通貨管理システム。
【請求項13】
前記第1の台帳管理システムは管理下の口座の残高が不足しても当該口座に付与されている与信額の範囲内であればトランザクションに応じて当該口座の残高を減額する処理を行う
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電子通貨管理システム。
【請求項14】
前記第2の台帳管理システムは管理下の口座の残高が不足しても当該口座に付与されている与信額の範囲内であればトランザクションに応じて当該口座の残高を減額する処理を行う
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電子通貨管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子通貨を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば洋上を航行中の船上においては、通信装置がインターネットやWAN(Wide Area Network)に常時接続することは困難であるため、船上の乗組員等はオンライン銀行の利用やクレジットカード決済等の電子的な金銭取引を行うことが難しい。そのため、船上の乗組員等は現金を持ち歩く必要があり不便である。
【0003】
船上に限られず、通信装置がインターネットやWAN(Wide Area Network)に常時接続することが困難な環境下においては上述した不便が伴う。
【0004】
船内と陸上との間で通信を行うシステムを開示している特許文献として、例えば、特許文献1がある。特許文献1には、財務データ等を含む事務データを管理する陸上サーバと、航海関連データ等を管理する船内サーバと、陸上サーバから取得した事務データと船内サーバから取得した航海関連データを使用して各種処理を行うコンテキストエンジンとを備える船舶運航管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-222562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の船舶運航管理システムにおいては、船内サーバは通信衛星を介してコンテキストエンジンとの間で通信を行うが、通信衛星を介した通信は速度が遅く、費用が高く、天候や、通信衛星と船舶アンテナの位置関係などによって通信が不安定になる。そのため、船上の乗組員等が個々に行う電子的な金銭取引を通信衛星を介して即時実行することを前提とするシステムは現実的ではない。
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明は、通信装置がインターネットやWANに常時接続することが困難な環境下において電子的な金銭取引を可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションの要求に応じて増減する処理を行う第1の台帳管理システムと、ユーザの通信装置が前記第1のネットワークに接続しないで使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションの要求に応じて増減する処理を行う第2の台帳管理システムとを備え、前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは、互いに通信可能なときに、前記第1の台帳管理システムの管理下の口座と前記第2の台帳管理システムの管理下の口座との間で電子通貨を移動する処理をトランザクションの要求に応じて行う電子通貨管理システムを、第1の態様として提案する。
【0009】
第1の態様に係る電子通貨管理システムによれば、通信装置がインターネットやWANに常時接続することが困難な環境下において電子的な金銭取引が可能となる。
【0010】
上記の第1の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムは、前記第2の台帳管理システムと通信不可能なときに前記第1の台帳管理システムに対し行われた、前記第1の台帳管理システムが管理する口座と前記第2の台帳管理システムが管理する口座の間で行われるトランザクションの要求、及び、前記第2の台帳管理システムが管理する2つの口座の間で行われるトランザクションの要求の少なくとも一方を蓄積し、前記第2の台帳管理システムは、前記第1の台帳管理システムと通信不可能なときに前記第2の台帳管理システムに対し行われた、前記第1の台帳管理システムが管理する口座と前記第2の台帳管理システムが管理する口座の間で行われるトランザクションの要求、及び、前記第1の台帳管理システムが管理する2つの口座の間で行われるトランザクションの要求の少なくとも一方を蓄積し、前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは、互いに通信可能なときに、蓄積している未処理のトランザクションの要求に応じて、口座間で電子通貨を移動する処理を行う、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザは第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信不可能なときであっても、第1の台帳管理システムの管理下の口座と第2の台帳管理システムの管理下の口座の間で行われるトランザクションを要求できる。
【0012】
上記の第1又は第2の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムは分散台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を管理する台帳がデータの破損等により消失するリスクが低い。
【0014】
上記の第3の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムはブロックチェーンにより前記分散台帳を管理する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨を特定の管理者が管理する必要がない。
【0016】
上記の第1又は第2の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムは中央管理台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0017】
第5の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の信用を、当該電子通貨の管理者により保証することができる。
【0018】
上記の第1又は第2の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、複数のユーザの各々に応じた前記第1の台帳管理システムを備え、前記第1の台帳管理システムはユーザが用いる通信装置において動作し、当該ユーザの口座のみの電子通貨の残高を管理する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続して行われた取引の内容が取引を行ったユーザ以外に知られることがない。
【0020】
上記の第1乃至第6のいずれかの態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第2の台帳管理システムは、ユーザの通信装置が前記第1のネットワークとは異なる第2のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0021】
第7の態様に係る電子通貨管理システムによれば、第2のネットワークを介して通信装置間で電子通貨による取引が可能となる。
【0022】
上記の第7の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第2の台帳管理システムは分散台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0023】
第8の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第2のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の残高を管理する台帳がデータの破損等により消失するリスクが低い。
【0024】
上記の第8の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第2の台帳管理システムはブロックチェーンにより前記分散台帳を管理する、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0025】
第9の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第2のネットワークに接続して使用可能な電子通貨を特定の管理者が管理する必要がない。
【0026】
上記の第7の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第2の台帳管理システムは中央管理台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理する、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
【0027】
第10の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第2のネットワークに接続して使用可能な電子通貨の信用を、当該電子通貨の管理者により保証することができる。
【0028】
上記の第7の態様に係る電子通貨管理システムにおいて、複数のユーザの各々に応じた前記第2の台帳管理システムを備え、前記第2の台帳管理システムはユーザが用いる通信装置において動作し、当該ユーザの口座のみの電子通貨の残高を管理する、という構成が第11の態様として採用されてもよい。
【0029】
第11の態様に係る電子通貨管理システムによれば、ユーザの通信装置が第1のネットワークに接続しないで行われた取引の内容が取引を行ったユーザ以外に知られることがない。
【0030】
上記の第1乃至第11のいずれかの態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムと前記第2の台帳管理システムは同一のユーザの口座を管理し、前記第1の台帳管理システムは自装置の管理下の一のユーザの口座の出納を管理する台帳に対応付けて前記一のユーザの前記第2の台帳管理システムの管理下の口座の出納を管理する台帳を記憶し、前記第2の台帳管理システムは自装置の管理下の前記一のユーザの口座の出納を管理する台帳に対応付けて前記一のユーザの前記第1の台帳管理システムの管理下の口座の出納を管理する台帳を記憶する、という構成が第12の態様として採用されてもよい。
【0031】
第12の態様に係る電子通貨管理システムによれば、各ユーザは通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な自分の電子通貨と通信装置が第1のネットワークに接続しないで使用可能な自分の電子通貨をシームレスに利用することができる。
【0032】
上記の第1乃至第12のいずれかの態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第1の台帳管理システムは管理下の口座の残高が不足しても当該口座に付与されている与信額の範囲内であればトランザクションに応じて当該口座の残高を減額する処理を行う、という構成が第13の態様として採用されてもよい。
【0033】
第13の態様に係る電子通貨管理システムによれば、各ユーザは通信装置が第1のネットワークに接続して使用可能な電子通貨に関し、自分の電子通貨の残高以上の金額の取引を行うことができる。
【0034】
上記の第1乃至第13のいずれかの態様に係る電子通貨管理システムにおいて、前記第2の台帳管理システムは管理下の口座の残高が不足しても当該口座に付与されている与信額の範囲内であればトランザクションに応じて当該口座の残高を減額する処理を行う、という構成が第14の態様として採用されてもよい。
【0035】
第14の態様に係る電子通貨管理システムによれば、各ユーザは通信装置が第1のネットワークに接続しないで使用可能な電子通貨に関し、自分の電子通貨の残高以上の金額の取引を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、通信装置がインターネットやWANに常時接続することが困難な環境下において電子的な金銭取引が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一実施形態に係る電子通貨管理システムの構成を示した図。
図2】一実施形態に係る電子通貨管理システムにおいて用いられる台帳の構成を示した図。
図3】一実施形態に係る電子通貨管理システムにおいて用いられる要求テーブルの構成を示した図。
図4】一実施形態に係る電子通貨管理システムを構成する通信装置に表示される画面を示した図。
図5】一実施形態に係る電子通貨管理システムを構成する通信装置に表示される画面を示した図。
図6】一実施形態に係る電子通貨管理システムを構成する通信装置に表示される画面を示した図。
図7】一変形例に係る電子通貨管理システムの構成を示した図。
図8】一変形例に係る電子通貨管理システムの構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施形態]
図1は本発明の一実施形態に係る電子通貨管理システム1の構成を示した図である。電子通貨管理システム1は、複数の通信装置11(A)、11(B)、11(C)等(ただし、( )内の文字はユーザの識別情報)を備える。以下、通信装置11(A)、11(B)、11(C)等の各々を区別する必要がない場合、単に通信装置11という。通信装置11は、有線及び無線の少なくとも一方により他の通信装置との間で通信可能な装置であれば、その形態はいずれの装置であってもよい。つまり、通信装置11は、サーバ装置、ユーザ端末装置等のいずれであってもよい。
【0039】
また、通信装置11は、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、スレート型コンピュータ、スマートフォン等のコンピュータが本発明に係るプログラムに従う処理を実行することにより実現されてもよい。通信装置11のハードウェアとして用いられるコンピュータは、各種データを記憶するメモリと、メモリに記憶されているプログラムに従うデータ処理を行うプロセッサと、外部の装置との間で通信を行う通信インタフェースを備える。また、ユーザ端末装置として用いられる通信装置11のハードウェアとして用いられるコンピュータは、液晶ディスプレイ等の表示装置と、キーボード、タッチパネル等のユーザの操作を受け付ける操作装置を内蔵するか、それらの装置が接続されるインタフェースを備える。
【0040】
通信装置11には、個人ユーザ(以下、単にユーザという)が使用する端末装置、銀行等の金融機関の口座情報を管理するサーバ装置、クレジットカード等の電子決済を管理するサーバ装置等が含まれる。
【0041】
図1において、エリアLは、例えば陸上であり、エリアL内において通信装置11は概ね常時、インターネットI(第1のネットワークの一例)に接続可能であり、通信装置11はインターネットIを介して他の通信装置と通信することができる。
【0042】
一方、エリアSは、例えば船上であり、エリアS内においてはインターネットIに接続可能なときと接続不可能なときがある。例えば、船舶が陸から遠く離れた洋上を航行中は、エリアS内(つまり、船上)の通信装置11は、通信衛星を介してインターネットIに接続できるが、通信衛星を介した通信は速度が遅く、費用が高く、また、天候等の影響で通信接続が途切れる場合もあるため、インターネットIに常時接続することは非現実的である。
【0043】
図1において、通信装置11(X)がエリアLとエリアSの両方に示されているのは、ユーザにより携帯される通信装置11が、両矢印で示されるように、エリアLとエリアSの間を移動できるためである。なお、エリアLとエリアSの間を移動できる通信装置11は通信装置11(X)に限られない。
【0044】
エリアS内においては、LAN(Local Area Network)であるネットワークN(第2のネットワークの一例)が構築されており、通信装置11は無線又は有線でネットワークNに接続し、他の通信装置と通信することができる。
【0045】
電子通貨管理システム1は、主としてエリアLにおいて、通信装置11がインターネットIに接続して使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションに応じて増減する処理を行う第1の台帳管理システムを備える。第1の台帳管理システムは、ブロックチェーンにより分散管理される分散台帳である台帳R1を用いて、電子通貨の残高を口座毎に管理する。第1の台帳管理システムの実体は、インターネットIに接続し台帳R1を各々記憶する複数の通信装置11である。なお、複数の通信装置11の中には、台帳R1に含まれるトランザクションの記録が正当であることを保証するマイナーとしての役割を果たす複数の通信装置11が含まれている。
【0046】
また、電子通貨管理システム1は、主として船舶が洋上を航行中のエリアSにおいて、通信装置11がインターネットIに接続しないで使用可能な電子通貨の残高を口座毎に管理し、管理下の口座の残高をトランザクションに応じて増減する処理を行う第2の台帳管理システムを備える。第2の台帳管理システムは、管理装置の役割を果たす通信装置11により集中管理される分散台帳である台帳R2を用いて、電子通貨の残高を口座毎に管理する。第2の台帳管理システムの実体は、ネットワークNに接続し台帳R2を各々記憶する複数の通信装置11である。
【0047】
なお、複数の通信装置11の中には、台帳R2を集中管理する通信装置11(以下、マスター通信装置という)が含まれる。マスター通信装置は、台帳R2に含まれるトランザクションの記録が正当であることを保証する役割を第2の台帳管理システムの管理者から付与された通信装置11である。マスター通信装置は、故障等が生じた場合にも台帳R2の管理を継続できるように、冗長性を持たされていることが望ましい。
【0048】
また、マスター通信装置は、ネットワークNをインターネットIに接続するゲートウェイサーバ装置の役割を果たす。図1は、通信装置11(Z)がマスター通信装置である場合を示している。通信装置11(Z)は、船舶の陸への接近や通信衛星を介した通信の確立等によりインターネットIに接続可能となると、ネットワークNをインターネットIに接続する。なお、以下、その状態において、エリアS内の全ての通信装置11は通信装置11(Z)を介してインターネットIに接続可能となる。従って、エリアS内の通信装置11により実現される第2の台帳管理システムは、エリアL内の通信装置11により実現される第1の台帳管理システムと通信可能となる。
【0049】
台帳R1により管理される電子通貨と台帳R2により管理される電子通貨は同種の電子通貨である。すなわち、台帳R1により管理される電子通貨1単位と、台帳R2により管理される電子通貨1単位は常に等価であり、それらが区別されることはない。以下、台帳R1及び台帳R2により管理される電子通貨の単位を仮にMarCOと呼ぶ。
【0050】
台帳R1は、第1の台帳管理システムにより管理される全てのユーザの口座の台帳を含んでいる。以下、台帳R1に含まれる口座毎の台帳を台帳r1(A)、台帳r1(B)、台帳r1(C)等(ただし、( )内の文字はユーザの識別情報)という。また、台帳r1(A)、台帳r1(B)、台帳r1(C)等を区別する必要がない場合、それらの台帳を台帳r1という。
【0051】
台帳R2は、第2の台帳管理システムにより管理される全てのユーザの口座の台帳を含んでいる。以下、台帳R2に含まれる口座毎の台帳を台帳r2(A)、台帳r2(B)、台帳r2(C)等(ただし、( )内の文字はユーザの識別情報)という。また、台帳r2(A)、台帳r2(B)、台帳r2(C)等を区別する必要がない場合、それらの台帳を台帳r2という。同じユーザの口座の台帳r1と台帳r2は互いに対応付けられて、通信装置11に記憶されている。
【0052】
図2は、ユーザXの口座の管理に用いられる台帳r1(X)(上段)と台帳r2(X)(下段)の構成を示した図である。なお、図2において、台帳r1は便宜的に「陸上用台帳」と記載され、台帳r2は便宜的に「船上用台帳」と記載されている。図2に示されるように、台帳r1と台帳r2の構成は同じである。ユーザXの口座の管理に用いられる台帳r1(X)と台帳r2(X)は互いに対応付けられている。
【0053】
通信装置11の各々は、自装置のユーザの口座に関する台帳r1と台帳r2のみでなく、全てのユーザの口座に関する台帳r1を含む台帳R1と全てのユーザの口座に関する台帳r2を含む台帳R2を記憶している。
【0054】
ただし、エリアL内において、通信装置11が記憶する台帳R1はインターネットIを介した台帳R1の更新の所要時間分の遅延を除き、最新の情報を記録しているが、台帳R2は必ずしも最新の情報を記録しているとは限らない。図1において、エリアL内の通信装置11に記憶されているR2に「( )」が付されているのは、それらの台帳R2が必ずしも最新の情報を記録しているとは限らないことを意味する。エリアL内において、台帳R2は主として残高等の参照に用いられる。
【0055】
また、エリアS内において、通信装置11が記憶する台帳R2はネットワークNを介した台帳R2の更新の所要時間分の遅延を除き、最新の情報を記録しているが、台帳R1は必ずしも最新の情報を記録しているとは限らない。図1において、エリアS内の通信装置11に記憶されているR1に「( )」が付されているのは、それらの台帳R1が必ずしも最新の情報を記録しているとは限らないことを意味する。エリアS内において、台帳R1は主として残高等の参照に用いられる。
【0056】
エリアL内の通信装置11に記憶されている台帳R2と、エリアS内の通信装置11に記憶されている台帳R1は、船舶の陸への接近や通信衛星を介した通信の確立等によりエリアS内のマスター通信装置を介してネットワークNがインターネットIに接続され、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能なときに更新される。
【0057】
すなわち、インターネットIに接続可能となったマスター通信装置である通信装置11(Z)は、エリアL内のいずれかの通信装置11に最新の台帳R2を送信するとともに、エリアL内のいずれかの通信装置11から最新の台帳R1を受信する。通信装置11(Z)は、エリアL内の通信装置11から受信した最新の台帳R1の正当性を検証した後、エリアS内の他の通信装置11に拡散する。これにより、エリアS内の通信装置11が記憶する台帳R1が更新される。なお、台帳R1はブロックチェーン形式のデータであるため、通信装置11(Z)が台帳R1の正当性を検証する方法としては、例えば、台帳R1に含まれるブロック毎に所定の規則に従いハッシュ値を算出し、算出したハッシュ値がいずれも所定条件(例えば、所定値以下)を満たせば、その台帳R1は正当である、と判定する方法が挙げられる。
【0058】
また、エリアS内のマスター通信装置の役割を果たす通信装置11からエリアL内のいずれかの通信装置11に送信された最新の台帳R2は、エリアL内の他の通信装置11に拡散される。これにより、エリアL内の通信装置11が記憶する台帳R2が更新される。なお、エリアL内の通信装置11において拡散される最新の台帳R2の正当性はマイナーの役割を果たす通信装置11により検証される。なお、台帳R2はマスター通信装置である通信装置11(Z)によりその正当性が保証されているため、マイナーの役割を果たす通信装置11は、台帳R2の出所が通信装置11(Z)であることを検証すれば、台帳R2の正当性を検証したことになる。従って、マイナーの役割を果たす通信装置11は、例えば、台帳R2に対し通信装置11(Z)の秘密鍵により付加されている電子署名を、通信装置11(Z)の公開鍵を用いて検証することで、台帳R2の正当性を検証する。
【0059】
第1の台帳管理システムは、エリアL内の通信装置11が要求したトランザクションを実行する。また、第2の台帳管理システムは、エリアS内の通信装置11が要求したトランザクションを実行する。トランザクションとは、或る口座から別の口座へ電子通貨を移動する金銭的な取引を意味する。本実施形態において、第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムが実行するトランザクションは、電子通貨管理システム1により管理される口座の間の電子通貨の移動である。
【0060】
後述するように、電子通貨管理システム1を利用するユーザには、台帳r1により管理される口座と台帳r2により管理される口座の各々に関し与信額が付与されている。第1の台帳管理システムは、トランザクションの実行後に台帳r1により管理される口座の残高が不足する場合であっても、その不足額が台帳r1により管理される口座に付与されている与信額の範囲内であればそのトランザクションを実行し、不足額が与信額を超える場合はそのトランザクションを実行しない。同様に、第2の台帳管理システムは、トランザクションの実行後に台帳r2により管理される口座の残高が不足する場合であっても、その不足額が台帳r2により管理される口座に付与されている与信額の範囲内であればそのトランザクションを実行し、不足額が与信額を超える場合はそのトランザクションを実行しない。
【0061】
以下、「トランザクションの実行を試みる」という場合、トランザクションの実行後の口座の残高の不足額がその口座に付与されている与信額の範囲内であるか否かを確認し、残高の不足額がその口座に付与されている与信額の範囲内である場合に限りそのトランザクションを実行することを意味するものとする。
【0062】
エリアL内の通信装置11が要求したトランザクションが、台帳R1に含まれる2つの台帳r1により管理される口座の間におけるMarCOの移動に関するトランザクションであれば、そのトランザクションは第1の台帳管理システムにより速やかに実行が試みられる。一方、エリアL内の通信装置11が要求したトランザクションが、台帳R1に含まれるいずれかの台帳r1により管理される口座と台帳R2に含まれるいずれかの台帳r2により管理される台帳との間におけるMarCOの移動や、台帳R2に含まれる2つの台帳r2により管理される口座の間におけるMarCOの移動に関するトランザクションであれば、そのトランザクションは一時的に第1の台帳管理システムにおいて蓄積され、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能になったときに実行が試みられる。第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信不可能なときに第1の台帳管理システムに蓄積されるトランザクションの要求は、要求テーブルT1としてエリアL内の通信装置11の各々に記憶される。
【0063】
また、エリアS内の通信装置11が要求したトランザクションが、台帳R2に含まれる2つの台帳r2により管理される口座の間におけるMarCOの移動に関するトランザクションであれば、そのトランザクションは第2の台帳管理システムにより速やかに実行が試みられる。一方、エリアS内の通信装置11が要求したトランザクションが、台帳R1に含まれるいずれかの台帳r1により管理される口座と台帳R2に含まれるいずれかの台帳r2により管理される口座との間におけるMarCOの移動や、台帳R1に含まれる2つの台帳r1により管理される口座の間におけるMarCOの移動に関するトランザクションであれば、そのトランザクションは一時的に第2の台帳管理システムにおいて蓄積され、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能になったときに実行が試みられる。第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信不可能なときに第2の台帳管理システムに蓄積されるトランザクションの要求は、要求テーブルT2としてエリアS内の通信装置11の各々に記憶される。
【0064】
なお、電子通貨管理システム1において、第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムは、トランザクションの要求時ではなく、トランザクションの実行を試みる時に、そのトランザクションの実行後の残高の不足額が与信額を超えるか否かを確認し、その結果に応じてそのトランザクションを実行するか否かを決定する。従って、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムの間の通信が不可能な期間中に要求され蓄積されたトランザクションは、仮に要求時には残高の不足額が与信額の範囲内であっても、実行が試みられる時に残高が与信額を超えて不足する場合、実行されない。
【0065】
要求テーブルT1と要求テーブルT2は同じ構成のテーブルである。図3は、要求テーブルT1と要求テーブルT2の構成を示した図である。
【0066】
なお、トランザクションの実行において正常にコミットがされなければ、そのトランザクションはロールバックされ、台帳間に不整合が生じることはない。
【0067】
図2に示されるように、台帳r1と台帳r2の各々には、それらの台帳により管理される口座に対し付与されている与信額が記憶されている。第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムは、トランザクションの実行を試みる際、そのトランザクションを実行後の台帳r1又は台帳r2により管理される口座の残高が不足する場合であっても、その台帳により管理される口座の残高の不足額がその口座に対し付与されている与信額の範囲内であれば、そのトランザクションを実行する。
【0068】
また、図2に示されるように、台帳r1と台帳r2の各々には、それらの台帳により管理される口座が取引可能な状態か否かを示すステイタス情報が記憶されている。ユーザは、通信装置11がインターネットIに接続可能な場合、通信装置11を操作して、台帳r1により管理される口座を取引可能な状態(アンロックモード)とし、台帳r2により管理される口座を取引不可能な状態(ロックモード)とすることにより、エリアL内にいる間に台帳r2により管理される口座の取引を停止することができる。また、ユーザは、通信装置11がインターネットIに接続不可能な場合、通信装置11を操作して、台帳r1により管理される口座を取引不可能な状態(ロックモード)とし、台帳r2により管理される口座を取引可能な状態(アンロックモード)とすることにより、エリアS内にいる間に台帳r1により管理される口座の取引を停止することができる。
【0069】
上記のロックモードとアンロックモードの切り替えは、ユーザが通信装置11に対し行う操作に応じて行われる代わりに、例えば、通信装置11がインターネットIとの接続及び切断を検知したときに、ユーザの操作によらず自動的に行われてもよい。
【0070】
当然ながら、ユーザは、台帳r1により管理される口座と台帳r2により管理される口座の両方を同時に取引可能な状態(アンロックモード)にすることもできる。台帳r1と台帳r2により管理される口座の両方が取引可能な状態であれば、例えば、ユーザがエリアS内にいる間に、ユーザの家族が台帳r1により管理される口座を用いた取引や、自動引落による支払い等(いずれも、自分の台帳r1により管理される口座と他人の台帳r1により管理される口座の間のトランザクション)を行うことができる。
【0071】
図4は、例として、ユーザXが通信装置11(X)を使用して、ユーザAから商品を購入する際に通信装置11(X)と、ユーザAが使用する通信装置11(A)とに表示される画面を示した図である。なお、ユーザXとユーザAはエリアS内におり、通信装置11(X)と通信装置11(A)はインターネットIに接続できず、ネットワークNに接続しているものとする。この場合、商品の購入に伴うトランザクションは台帳r2(X)により管理される口座と台帳r2(A)により管理される口座の間で速やかに実行が試みられる。
【0072】
ユーザXが、例えば、ユーザAが管理する店舗のレジ台に提示されているQRコード(登録商標)を通信装置11(X)でスキャンすると、通信装置11(X)はWebブラウザを実行し、当該QRコードが示すURLが示すネットワークN上のアドレスからWebページを読み出し、図4の左側に示される購入画面を表示する。ユーザXは、購入画面において購入する商品の数量を入力し、「支払い」ボタンをタッチ等する。この操作に応じて、通信装置11(X)から第2の台帳管理システムに対し、台帳r2(X)により管理される口座から台帳r2(A)により管理される口座へ商品の代金を支払うトランザクションの要求が送信され、第2の台帳管理システムにおいて、このトランザクションの実行が試みられる。そして、このトランザクションが実行されると、台帳r2(X)により管理される口座の残高が商品の代金の分だけ減少し、台帳r2(A)により管理される口座の残高が商品の代金の分だけ増加する。
【0073】
上記のトランザクションが完了すると、通信装置11(A)において実行されているWebブラウザに、図4の右側に示される入金通知画面が表示される。ユーザAは、入金通知画面においてユーザXから自分の口座に商品の代金の入金があったことを確認すると、ユーザXに購入された商品を手渡す。
【0074】
なお、上記の例では、取引が2つの台帳r2により管理される口座の間で行われるが、このような取引が2つの台帳r1により管理される口座の間で行われもよい。すなわち、ユーザは陸上においてもMarCOにより商品を購入することができる。
【0075】
なお、上記の例では、取引の対象は商品であるものとしたが、取引の対象はサービスであってもよい。また、取引の対象がMarCO以外の通貨(例えば、円やドルなどの実通貨や、MarCOとは異なる種類の電子通貨)であってもよい。取引の対象がMarCO以外の通貨である場合、MarCOと他の通貨との間での換金が行われることになる。
【0076】
図5は、例として、ユーザXが自分の台帳r1(X)により管理される口座と自分の台帳r2(X)により管理される口座との間でMarCOの移動(口座間振替)を行う場合に通信装置11(X)に表示される口座間振替画面を示した図である。ここで、ユーザXはエリアSにおり、通信装置11(X)はインターネットIに接続不可能であるものとする。口座間振替画面において、ユーザXが振替元及び振替先の口座の指定と、振り替える金額の入力を行い、「実行」ボタンをタッチ等すると、その口座間振替のトランザクションの要求は、要求テーブルT2に蓄積される。
【0077】
その後、船舶が陸に近づき、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能となると、第2の台帳管理システムは、第1の台帳管理システムから要求テーブルT1を受信し、要求テーブルT1と自らが記憶している要求テーブルT2に蓄積されていた口座間振替の要求に応じたトランザクション(例えば、台帳r2により管理されている口座を送金元とするトランザクション)の実行を試みる。そして、トランザクションが実行されると、台帳r1(X)と台帳r2(X)の残高が変更される。このように実行されたトランザクションの要求は、要求テーブルT2から削除される。
【0078】
図6は、例として、ユーザXが自分の台帳r1(X)により管理される口座又は自分の台帳r2(X)により管理される口座から、他のユーザの台帳r1により管理される口座又は他のユーザの台帳r2により管理される口座に対し、MarCOの送金を行う場合に通信装置11(X)に表示される送金画面を示した図である。ここで、ユーザXはエリアLにおり、ユーザXは自分の台帳r1(X)により管理される口座から他のユーザの台帳r2により管理される口座に指定した金額を送金するものとする。送金画面において、ユーザXが送金元の口座と、送金先の口座の名義及び口座番号と、送金額を入力し、「実行」ボタンをタッチ等すると、その送金のトランザクションの要求は、要求テーブルT1に蓄積される。
【0079】
その後、船舶が陸に近づき、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能となると、第1の台帳管理システムは、第2の台帳管理システムから要求テーブルT2を受信し、要求テーブルT2と自らが記憶している要求テーブルT1に蓄積されていた送金の要求に応じたトランザクション(例えば、台帳r2により管理されている口座を送金元とするトランザクション)を試みる。そして、トランザクションが実行されると、ユーザXの台帳r1の残高が減少し、送金先のユーザの台帳r2の残高が増加する。このように実行されたトランザクションの要求は、要求テーブルT1から削除される。
【0080】
以下に、通信装置11が行う処理を説明する。通信装置11は、インターネットIに接続中は、インターネットIに接続している他の通信装置11との間で、既知のP2P(Peer to Peer)型ネットワークを構築する。また、通信装置11は、ネットワークNに接続中は、ネットワークNに接続している他の通信装置11との間で、既知のP2P型ネットワークを構築する。
【0081】
通信装置11は、インターネットIに接続中に以下の処理を行う。
(1a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(1b)上記(1a)において生成した要求データを、近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
(1c)近隣のノードを構成する他の通信装置11から送信されてくる各種データを、当該データの送信元ではない近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
(1d)マイナーの役割を果たす通信装置11から直接又は他の通信装置11を介して送信されてくる台帳R1、台帳R2及び要求テーブルT1を含む台帳データを受信し記憶する。
【0082】
マイナーの役割を果たす通信装置11は、上記の(1a)~(1d)に加え、以下の処理を行う。
(1e)他の通信装置11から送信されてくる要求データを受信し、受信した要求データを生成したユーザが、要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(1f)上記(1e)の判定において、生成したユーザとトランザクションの送金元の口座のユーザが一致すると判定された要求データに関し、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であるか否かを判定する。
(1g)上記(1f)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、ブロックにまとめられる前の要求データとして一時的に記憶する。
(1h)上記(1f)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座の少なくとも一方が台帳r2により管理される口座であると判定された要求データを、要求テーブルT1に追加する。
(1i)インターネットIに接続したマスター通信装置から直接又は他の通信装置11を介して送信されてくる台帳R2と要求テーブルT2を受信し、受信した台帳R2と要求テーブルT2の出所がマスター通信装置であるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(1j)上記(1i)の判定において、台帳R2の出所がマスター通信装置であると判定した場合、それまで記憶していた古い台帳R2を削除し、新たに受信した台帳R2を記憶する。
(1k)上記(1i)の判定において、要求テーブルT2の出所がマスター通信装置であると判定した場合、受信した要求テーブルT2と、その時点で記憶している要求テーブルT1とに含まれる要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、ブロックにまとめられる前の要求データとして一時的に記憶する。
(1l)インターネットIに接続したマスター通信装置から直接又は他の通信装置11を介して台帳R2と要求テーブルT2を受信したときに、その時点で記憶している台帳R1と要求テーブルT1をマスター通信装置に送信する。
(1m)上記(1g)及び(1k)において一時的に記憶した要求データが1ブロックの量に達したときに、それらの要求データを新たなブロックとしてブロックチェーン形式の台帳R1に追加するための処理を行う。なお、新たなブロックを台帳R1に追加するための処理は、例えば、既知のPoW(Proof of Work)等のコンセンサスアルゴリズムに従い実行されるため、その説明を省略する。
(1n)新たなブロックを既存の台帳R1に追加することに関し、他のマイナーの役割を果たす通信装置11の間でコンセンサスが得られた場合、その新たなブロックを既存の台帳R1に追加する。これにより、ブロックに含まれる要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(1o)記憶している台帳R1、台帳R2及び要求テーブルT1のいずれかが更新された場合、それらを含む台帳データを近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
【0083】
通信装置11は、ネットワークNに接続中に以下の処理を行う。
(2a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(2b)上記(2a)において生成した要求データを、近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
(2c)近隣のノードを構成する他の通信装置11から送信されてくる各種データを、当該データの送信元ではない近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
(2d)マスター通信装置から直接又は他の通信装置11を介して送信されてくる台帳R1、台帳R2及び要求テーブルT2を含む台帳データを受信し記憶する。
【0084】
マスター通信装置の役割を果たす通信装置11は、上記の(2a)~(2d)に加え、以下の処理を行う。
(2e)他の通信装置11から送信されてくる要求データを受信し、受信した要求データを生成したユーザが、要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(2f)上記(2e)の判定において、生成したユーザとトランザクションの送金元の口座のユーザが一致すると判定された要求データに関し、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r2により管理される口座であるか否かを判定する。
(2g)上記(2f)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r2により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、既存の台帳r2に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(2h)上記(2f)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座の少なくとも一方が台帳r1により管理される口座であると判定された要求データを、要求テーブルT2に追加する。
(2i)インターネットIに接続したときにマイナーの役割を果たす通信装置11から送信されてくる台帳R1と要求テーブルT1を受信し、受信した台帳R1と要求テーブルT1の正当性を判定する。例えば、台帳R1の正当性は、所定の規則に従い算出したハッシュ値が所定の条件を満たすか否かにより判定する。また、要求テーブルT1の正当性は、要求テーブルT1に含まれる要求データの各々の出所が、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであることを、当該要求データに付与されている電子署名を検証することで判定する。
(2j)上記(2i)の判定において、台帳R1が正当であると判定した場合、それまで記憶していた古い台帳R1を削除し、新たに受信した台帳R1を記憶する。
(2k)上記(2i)の判定において、要求テーブルT1が正当であると判定した場合、受信した要求テーブルT1と、その時点で記憶している要求テーブルT2とに含まれる要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、台帳r2に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(2l)インターネットIに接続したときに、その時点で記憶している台帳R2と要求テーブルT2を、インターネットIにおいてP2P型ネットワークを構築しているいずれかの通信装置11に送信する。
(2m)記憶している台帳R1、台帳R2及び要求テーブルT2のいずれかが更新された場合、それらを含む台帳データを近隣のノードを構成する他の通信装置11に送信する。
【0085】
上述した電子通貨管理システム1によれば、ユーザは船上において通信装置11がインターネットIに接続不可能な状態においても、電子通貨による取引を行うことができる。従って、船上で現金を所持する必要はなく、紛失する等の不都合も生じにくい。また、船上における取引に伴うコスト(手間等)が軽減される。また、船上における商品やサービスの取引の内容が台帳R2に記録されるため、例えば、船上で店舗を運営するユーザは、台帳R2から在庫管理等のための情報を得ることができる。
【0086】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。上述した実施形態及び以下の変形例のうちの2以上が組み合わされてもよい。
【0087】
(1)上述した電子通貨管理システム1において、第1の台帳管理システムはブロックチェーンを用いて分散台帳を管理し、第2の台帳管理システムはマスター通信装置により分散台帳を集中管理するものとしたが、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムの両方がブロックチェーンを用いて分散台帳を管理してもよいし、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムの両方が分散台帳を集中管理してもよいし、第2の台帳管理システムがブロックチェーンを用いて分散台帳を管理し、第1の台帳管理システムが分散台帳を集中管理してもよい。
【0088】
(2)上述した電子通貨管理システム1において、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムは共に分散台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理するものとしたが、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムの少なくとも一方が、中央管理台帳を用いて電子通貨の残高を口座毎に管理してもよい。
【0089】
図7は、この変形例に係る電子通貨管理システム2の構成を示した図である。電子通貨管理システム2は、エリアLにおいて中央管理台帳である台帳R1を管理するサーバ装置21と、エリアSにおいて中央管理台帳である台帳R2を管理するサーバ装置22を備える。サーバ装置21は、故障等が生じた場合にも台帳R1の管理を継続できるように、冗長性を持たされていることが望ましい。また、サーバ装置22は、故障等が生じた場合にも台帳R2の管理を継続できるように、冗長性を持たされていることが望ましい。電子通貨管理システム2においては、エリアL内の通信装置11はインターネットIを介してサーバ装置21にトランザクションの要求を行い、エリアS内の通信装置11はネットワークNを介してサーバ装置22にトランザクションの要求を行う。
【0090】
電子通貨管理システム2において、第1の台帳管理システムの実体はサーバ装置21であり、第2の台帳管理システムの実体はサーバ装置22である。サーバ装置21は台帳R1及び台帳R2と要求テーブルT1を記憶する。また、サーバ装置22は台帳R1及び台帳R2と要求テーブルT2を記憶する。電子通貨管理システム2において、通信装置11はいずれの台帳も記憶しなくてよい。例えばユーザが自分の口座のMarCOの残高を閲覧したい場合、通信装置11はエリアL内にいればサーバ装置21から、また、エリアS内にいればサーバ装置22から、残高情報を受信して表示する。
【0091】
また、船舶の陸への接近や通信衛星を介した通信の確立等によりサーバ装置22がインターネットIに接続すると、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能となり、サーバ装置21が記憶している台帳R2とサーバ装置22が記憶している台帳R1が更新されるとともに、サーバ装置21に記憶されている要求テーブルT1及びサーバ装置22に記憶されている要求テーブルT2に蓄積されている要求に応じたトランザクションの実行が試みられる。
【0092】
電子通貨管理システム2において、通信装置11は、インターネットIに接続中に以下の処理を行う。
(1a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(1b)上記(1a)において生成した要求データを、サーバ装置21に送信する。
【0093】
また、通信装置11は、ネットワークNに接続中に以下の処理を行う。
(2a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(2b)上記(2a)において生成した要求データを、サーバ装置22に送信する。
【0094】
サーバ装置21は以下の処理を行う。
(3a)通信装置11から送信されてくる要求データを受信し、受信した要求データを生成したユーザが、要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(3b)上記(3a)の判定において、生成したユーザとトランザクションの送金元の口座のユーザが一致すると判定された要求データに関し、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であるか否かを判定する。
(3c)上記(3b)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、既存の台帳r1に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(3d)上記(3b)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座の少なくとも一方が台帳r2により管理される口座であると判定された要求データを、要求テーブルT1に追加する。
(3e)インターネットIに接続したサーバ装置22から送信されてくる台帳R2と要求テーブルT2を受信し、受信した台帳R2と要求テーブルT2の出所がサーバ装置22であるか否かを、台帳R2と要求テーブルT2に付与されている電子署名を検証することで判定する。
(3f)上記(3e)の判定において、台帳R2の出所がサーバ装置22であると判定した場合、それまで記憶していた古い台帳R2を削除し、新たに受信した台帳R2を記憶する。
(3g)上記(3e)の判定において、要求テーブルT2の出所がサーバ装置22であると判定した場合、受信した要求テーブルT2と、その時点で記憶している要求テーブルT1とに含まれる要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、台帳r1に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(3h)インターネットIに接続したサーバ装置22から台帳R2と要求テーブルT2を受信したときに、その時点で記憶している台帳R1と要求テーブルT1をサーバ装置22に送信する。
【0095】
サーバ装置22は以下の処理を行う。
(4a)通信装置11から送信されてくる要求データを受信し、受信した要求データを生成したユーザが、要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(4b)上記(4a)の判定において、生成したユーザとトランザクションの送金元の口座のユーザが一致すると判定された要求データに関し、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r2により管理される口座であるか否かを判定する。
(4c)上記(4b)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r2により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、既存の台帳r2に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(4d)上記(4b)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座の少なくとも一方が台帳r1により管理される口座であると判定された要求データを、要求テーブルT2に追加する。
(4e)インターネットIに接続したときにサーバ装置21から送信されてくる台帳R1と要求テーブルT1を受信し、受信した台帳R1と要求テーブルT1の出所がサーバ装置21であるか否かを、台帳R1と要求テーブルT1に付与されている電子署名を検証することで判定する。
(4f)上記(4e)の判定において、台帳R1の出所がサーバ装置21であると判定した場合、それまで記憶していた古い台帳R1を削除し、新たに受信した台帳R1を記憶する。
(4g)上記(4e)の判定において、要求テーブルT1の出所がサーバ装置21であると判定した場合、受信した要求テーブルT1と、その時点で記憶している要求テーブルT2とに含まれる要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、台帳r2に追加する。これにより、要求データにより要求されるトランザクションが実行されたことになる。
(4h)インターネットIに接続したときに、その時点で記憶している台帳R2と要求テーブルT2をサーバ装置21に送信する。
【0096】
なお、上述した電子通貨管理システム2において、第1の台帳管理システム又は第2の台帳管理システムが、中央管理台帳に代えて、電子通貨管理システム1の第1の台帳管理システムで採用されているようなブロックチェーンを用いて管理される分散台帳や、電子通貨管理システム1の第2の台帳管理システムで採用されているような集中管理される分散台帳を用いて口座の残高の管理を行ってもよい。
【0097】
(3)上述した電子通貨管理システム1及び電子通貨管理システム2において、第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムは各々1つであり、それらの台帳管理システムが、全てのユーザの台帳を管理する。これに代えて、第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムのいずれか一方が、複数のユーザの各々に応じて設けられ、各ユーザが用いる通信装置11において動作し、各ユーザの口座のみの電子通貨の残高を管理する構成が採用されてもよい。
【0098】
図8は、この変形例に係る電子通貨管理システム3の構成を示した図である。電子通貨管理システム3は、エリアL内に第1の台帳管理システムの実体であるサーバ装置21を備える。サーバ装置21は、中央管理台帳である台帳R1を記憶し、台帳R1を用いて、全てのユーザの口座のMarCO(通信装置11がインターネットIに接続して利用可能なMarCO)の残高を管理する。
【0099】
電子通貨管理システム3において、複数のユーザの各々が使用する通信装置11は、自装置のユーザに応じた台帳r2を記憶し、自装置のユーザの口座のみのMarCO(通信装置11がインターネットIに接続せずに利用可能なMarCO)の残高を管理する第2の台帳管理システムの役割を果たす。
【0100】
電子通貨管理システム3において、各ユーザの台帳r2は、各ユーザの通信装置11のみに記憶されている。
【0101】
電子通貨管理システム3において、通信装置11は自装置のユーザの台帳r2に加え、自装置のユーザの台帳r1を記憶している。この台帳r1は主としてエリアS内において残高等の参照に用いられる。
【0102】
ユーザXは、例えば、エリアLにおいて、図5に示される口座間振替画面において、自分の台帳r1(X)により管理される口座の残高から、希望する金額のMarCOを自分の台帳r2(X)により管理される口座に振り替える操作を行う。この操作は、通信装置11(X)に対するMarCOのチャージを意味する。
【0103】
その後、ユーザXがエリアSに移動し、例えば、エリアS内でユーザAから商品購入を行う場合、図4に示される購入画面において、購入を希望する商品の数量を入力した後、「支払い」ボタンをタッチ等すると、通信装置11(X)に記憶されている台帳r2(X)の残高が商品の代金分だけ減少し、通信装置11(A)に記憶されている台帳r2(A)の残高が商品の代金分だけ増加する。ユーザAが通信装置11(A)に表示される入金通知画面を見て商品の代金の支払いを確認した後、商品をユーザXに手渡す点は、電子通貨管理システム1における場合と同様である。
【0104】
電子通貨管理システム3において、エリアSで2つの台帳r2により管理される口座の間で行われるトランザクションは、図8に示されるように、ネットワークNを介さず、トランザクションによるMarCOの移動元及び移動先のユーザが使用する通信装置11の間の1対1通信により行われてもよい。
【0105】
電子通貨管理システム3においては、台帳r1により管理される口座と台帳r2により管理される口座の間のトランザクションは、それらの口座のユーザが同じ場合にのみ許可されるものとする。また、電子通貨管理システム3は、異なるユーザの台帳r2により管理される口座の間のトランザクションは、それらのユーザの通信装置が互いに通信可能な場合にのみ許可されるものとする。
【0106】
電子通貨管理システム3においては、台帳r2が各通信装置11により管理されるため、ユーザはエリアLにおいてもエリアSにおける場合と同様に、通信装置11の台帳r2にチャージされているMarCOを使用することができる。すなわち、ユーザは、エリアLにおいても、自分の通信装置11の台帳r2により管理されているMarCOを、通信可能な他のユーザの通信装置11の台帳r2に移動するトランザクションの実行を試みることができる。
【0107】
電子通貨管理システム3においては、エリアL内の通信装置11が要求するトランザクションは全て速やかに実行が試みられる。そのため、サーバ装置21は要求テーブルT1を記憶しない。しかしながら、エリアS内の通信装置11が要求するトランザクションのMarCOの移動元がトランザクションを要求したユーザの台帳r1により管理される口座である場合や、MarCOの移動先がそのユーザ又は他のユーザの台帳r1により管理される口座である場合は、それらのトランザクションは通信装置11がインターネットIに接続不可能なエリアSにおいては実行が試みられない。そのため、それらのトランザクションの要求は、要求元の通信装置11に記憶される要求テーブルt2(A)等(ただし、( )内の文字はユーザの識別情報)に蓄積される。なお、要求テーブルt2(A)等の構成は、図3に示される要求テーブルT1及び要求テーブルT2の構成と同じである。
【0108】
例えば、ユーザXが使用する通信装置11(X)がエリアS内において記憶する要求テーブルt2(X)には、ユーザXの台帳r1(X)又は台帳r2(X)により管理される口座をMarCOの移動元とする要求のみが記憶される。要求テーブルt2(X)に蓄積されている要求に応じたトランザクションは、船舶が陸に接近したり、ユーザXが通信装置11(X)を携帯して上陸したりして、通信装置11(X)がインターネットIに接続したときに実行が試みられる。
【0109】
なお、電子通貨管理システム3において、台帳r2により管理される口座の残高が不足するトランザクションが要求された場合、その不足額が台帳r2により管理される口座に付与されている与信額以下であれば、その要求に応じてトランザクションが実行される点は、電子通貨管理システム1における場合と同様である。従って、ユーザは、通信装置11にチャージされているMarCOの残高以上の金額を使用することができる。
【0110】
また、ユーザは、自分の台帳r2により管理される口座から自分の台帳r1により管理される口座へのMarCOの移動を伴うトランザクションも要求できる。従って、ユーザは、通信装置11にチャージされているMarCOを台帳r1により管理されている自分の口座に振り替えることができる。
【0111】
電子通貨管理システム3において、通信装置11は、エリアLにおいて以下の処理を行う。
(1a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(1b)上記(1a)において生成した要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の少なくとも一方が台帳r1により管理される口座である要求データを、サーバ装置21に送信する。
(1c)サーバ装置21から、送金先の口座が自装置に記憶している台帳r2により管理される口座であるトランザクションを要求する要求データを受信したときに、当該要求データを自装置に記憶している台帳r2に追加する。これにより、台帳r1により管理される自装置のユーザ又はそれ以外のユーザの口座から、台帳r2により管理される自装置のユーザの口座へのMarCOのチャージが行われたことになる。
【0112】
また、通信装置11は、エリアLにおいて、自装置のユーザの台帳r2により管理されている口座と、通信可能な他の通信装置11のユーザの台帳r2により管理されている口座との間のトランザクションに関し、以下の処理を行う。
(1d)上記(1a)において生成した要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の両方が台帳r2により管理される口座である要求データを、送金先の口座のユーザが使用する通信装置11に送信し、当該要求データを、自装置に記憶している台帳r2に追加する。これにより、自装置のユーザの台帳r2により管理される口座にチャージされていたMarCOが使用されたことになる。
(1e)他の通信装置11から送信されてくる要求データであって、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の両方が台帳r2により管理される口座である要求データを受信したときに、当該要求データの出所がトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、当該要求データに付与されている電子署名を検証することで判定する。
(1f)上記(1e)の判定において、要求データの出所が送金元の口座のユーザであると判定した場合、当該要求データを自装置に記憶している台帳r2に追加する。これにより、自装置のユーザではないユーザの台帳r2により管理される口座から、自装置のユーザの台帳r2により管理される口座へのMarCOのチャージが行われたことになる。
【0113】
また、通信装置11は、エリアSにおいて以下の処理を行う。
(2a)ユーザの操作に応じて、トランザクションの要求を示す要求データを生成する。
(2b)上記(2a)において生成した要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の少なくとも一方が台帳r1により管理される口座である要求データを、要求テーブルt2に追加する。
【0114】
また、通信装置11は、エリアSにおいて、自装置のユーザの台帳r2により管理されている口座と、通信可能な他の通信装置11のユーザの台帳r2により管理されている口座との間のトランザクションに関し、以下の処理を行う。
(2c)上記(2a)において生成した要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の両方が台帳r2により管理される口座である要求データを、送金先の口座のユーザが使用する通信装置11に送信し、当該要求データを、自装置に記憶している台帳r2に追加する。これにより、自装置のユーザの台帳r2により管理される口座にチャージされていたMarCOが使用されたことになる。
(2d)他の通信装置11から送信されてくる要求データであって、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元と送金先の口座の両方が台帳r2により管理される口座である要求データを受信したときに、当該要求データの出所がトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、当該要求データに付与されている電子署名を検証することで判定する。
(2e)上記(2d)の判定において、要求データの出所が送金元の口座のユーザであると判定した場合、当該要求データを自装置に記憶している台帳r2に追加する。これにより、自装置のユーザではないユーザの台帳r2により管理される口座から、自装置のユーザの台帳r2により管理される口座へのMarCOのチャージが行われたことになる。
【0115】
また、通信装置11は、エリアSからエリアLに移動し、インターネットIに接続したとき、以下の処理を行う。
(3a)記憶していた要求テーブルt2をサーバ装置21に送信する。
(3b)サーバ装置21に自装置のユーザの口座を管理する台帳r1を要求し、その応答として送信されてくる台帳r1を受信し、それまで記憶していた古い台帳r1を削除し、新たに受信した台帳r1を記憶する。
【0116】
電子通貨管理システム3において、サーバ装置21は以下の処理を行う。
(4a)通信装置11から送信されてくる要求データ及び要求テーブルt2を受信し、受信した要求データ及び受信した要求テーブルt2に含まれる要求データの各々に関し、当該要求データを生成したユーザが、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元の口座のユーザであるか否かを、既知の電子署名を用いた検証により判定する。
(4b)上記(4a)の判定において、生成したユーザとトランザクションの送金元の口座のユーザが一致すると判定された要求データに関し、当該要求データにより要求されるトランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であるか否かを判定する。
(4c)上記(4b)の判定において、トランザクションの送金元及び送金先の口座がいずれも台帳r1により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、既存の台帳R1に追加する。これにより、2つの台帳r1により管理される口座間におけるMarCOの送金が実行されたことになる。
(4d)上記(4b)の判定において、トランザクションの送金元が台帳r2により管理される口座であり、送金先の口座が台帳r1により管理される口座であると判定された要求データを、送信先の口座を管理する台帳r1に追加する。これにより、台帳r2により管理される口座にチャージされていたMarCOが台帳r1により管理される口座に入金されたことになる。
(4e)上記(4b)の判定において、トランザクションの送金元が台帳r1により管理される口座であり、送金先の口座が台帳r2により管理される口座であると判定された要求データのうち、当該要求データにより要求されるトランザクションの実行後の送金元の口座の残高が、当該口座に付与されている与信額を超えては不足しない要求データのみを、既存の台帳R1に追加するとともに、その要求データを送金先の口座のユーザが使用している通信装置11に送信する。これにより、台帳r1により管理される口座から台帳r2により管理される口座へのMarCOのチャージが行われたことになる。
(4f)通信装置11からの要求に応じて、要求元の通信装置11のユーザの口座を管理する台帳r1を要求元の通信装置11に送信する。
【0117】
なお、上述した電子通貨管理システム3において、第1の台帳管理システムが、中央管理台帳に代えて、電子通貨管理システム1の第1の台帳管理システムで採用されているようなブロックチェーンを用いて管理される分散台帳や、電子通貨管理システム1の第2の台帳管理システムで採用されているような集中管理される分散台帳を用いて、各口座の残高の管理を行ってもよい。
【0118】
また、上述した電子通貨管理システム3において、台帳r1により管理される口座と、その口座のユーザと異なるユーザの台帳r2により管理される口座との間のトランザクションは許可されないものとしたが、それらのトランザクションが許可される構成が採用されてもよい。また、上述した電子通貨管理システム3において、異なるユーザの台帳r2により管理される口座の間のトランザクションは、それらのユーザの通信装置が互いに通信不可能な場合は許可されないものとしたが、それらのトランザクションが許可される構成が採用されてもよい。これらのトランザクションが許可される場合、サーバ装置21は、例えばエリアS内に存在する等の理由で通信不可能な通信装置のユーザの台帳r2により管理される口座を送金先とするトランザクションの要求データを蓄積するための要求テーブルT1を記憶する。そして、要求テーブルT1に蓄積されている要求データにより要求されるトランザクションの送金先のユーザの通信装置がサーバ装置21と通信可能となったとき、そのトランザクションの実行が試みられる。
【0119】
(4)上述した電子通貨管理システム1において、台帳R2の管理を行うマスター通信装置が、ネットワークNをインターネットIに接続させるゲートウェイサーバ装置の役割を果たす。これに代えて、電子通貨管理システム1が、マスター通信装置とは別のゲートウェイサーバ装置を備えてもよい。
【0120】
(5)上述した電子通貨管理システム1及び電子通貨管理システム2の説明において、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能となる状況として、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムの間に通信衛星を介した通信が確立される状況を例示した。第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信衛星を介して通信可能となる場合としては、船舶アンテナと通信衛星の位置関係等が改善し船舶アンテナと通信衛星の間で電波による信号の送受信が不可能な状態から可能な状態へと変化する場合に限られず、例えば、通信料金の削減等のために人為的に切断されていた通信接続が再確立される場合等も含まれる。例えば、設定された所定の時間(例えば24時間)の経過毎に、通信衛星を介してエリアS内のマスター通信装置(電子通貨管理システム1の場合)又はサーバ装置22(電子通貨管理システム2)がインターネットIに接続してもよい。
【0121】
(6)上述した電子通貨管理システム1~電子通貨管理システム3の説明において、即時実行できないトランザクションの要求は要求テーブルに蓄積され、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能なときに実行される。即時実行できないトランザクションの要求を蓄積する点は必須ではない。例えば、第1の台帳管理システム及び第2の台帳管理システムが、即時実行できないトランザクションの要求は受け付けず、そのような要求に関しては、第1の台帳管理システムと第2の台帳管理システムが通信可能なときに再要求するようにユーザに促してもよい。
【0122】
(7)上述した実施形態及び変形例において、エリアLは陸上であり、エリアSは船上であるものとしたが、エリアLとエリアSはどのようなエリアであってもよい。例えば、エリアSが特定のイベント会場内のエリアであり、エリアLがエリアS以外の全てのエリアであってもよい。
【0123】
この場合、例えば、イベント会場内でのMarCOの使用を促すために、イベントの開催前又はイベントの開催中は、エリアLで用いられる台帳(実施形態における台帳r1)により管理される口座からエリアSで用いられる台帳(実施形態における台帳r2)により管理される口座へ口座間振替を行う場合には、通常より有利なレートで振替が行われ、イベントの終了後にエリアSで用いられる台帳(実施形態における台帳r2)により管理される口座からエリアLで用いられる台帳(実施形態における台帳r1)により管理される口座へ口座間振替を行う場合には、通常より不利なレートで振替が行われるようにしてもよい。
【0124】
(8)各ユーザの台帳r1により管理される口座と、台帳r2により管理される口座に付与される与信額が、電子通貨管理システム1により自動的に設定されてもよい。この変形例において、電子通貨管理システム1は、例えば、船員であるユーザの各々にMarCOで支払われる給与額を示すデータを格納しているデータベースを記憶しているサーバ装置を備える。以下、このサーバ装置を「与信額設定サーバ装置」という。
【0125】
与信額設定サーバ装置が記憶しているデータベースに格納されているデータが示す給与額は、過去に支払われた給与額、将来支払われる予定の給与額のいずれであってもよい。
【0126】
与信額設定サーバ装置はインターネットIに接続されている。例えば船員に給与を支払う事業者の職員等によって、データベースに記憶されているデータが更新されると、与信額設定サーバ装置は、更新後のデータベースに格納されているデータが示す各船員の給与額に基づき、所定の規則に従い、各船員の台帳r1により管理される口座と、台帳r2により管理される口座の各々に関し、それらの口座に付与される与信額を決定する。
【0127】
例えば、ユーザXに翌月支払われる予定の給与額の総額が50万MarCOであり、ユーザXの台帳r1(X)により管理される口座に40万MarCOが振り込まれ、ユーザXの台帳r2(X)により管理される口座に残りの10万MarCOが振り込まれる予定であるものとする。そして、それらの金額の30%が与信額として各口座に付与される、という規則が定められているものとする。この場合、台帳r1(X)により管理される口座には、12万MarCOが与信額として付与され、台帳r2(X)により管理される口座には、3万MarCOが与信額として付与されることになる。
【0128】
与信額設定サーバ装置には、台帳R1及び台帳R2の与信額に関するデータを更新する権限が付与されており、新たに決定した与信額を速やかに台帳R1に反映するとともに、第2の台帳管理システムがインターネットIに接続可能となったときに、その時点で最新の与信額を台帳R2に反映する。
【0129】
この変形例によれば、ユーザに支払われる給与額に応じて変動する与信額の設定が容易に行われる。
【符号の説明】
【0130】
1…電子通貨管理システム、2…電子通貨管理システム、3…電子通貨管理システム、11…通信装置、21…サーバ装置、22…サーバ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8