(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ワークの芯出し方法
(51)【国際特許分類】
B23B 25/06 20060101AFI20220817BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20220817BHJP
B23B 31/10 20060101ALI20220817BHJP
B23B 31/163 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B23B25/06
B23B3/30
B23B31/10 F
B23B31/163
(21)【出願番号】P 2018094470
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518172336
【氏名又は名称】有限会社高峰精機
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 邦夫
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-001306(JP,U)
【文献】実開平03-040007(JP,U)
【文献】特開2010-247308(JP,A)
【文献】特開2001-198786(JP,A)
【文献】特開昭58-186501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 25/06
B23B 3/16、3/30
B23B 31/10
B23B 31/163
B23Q 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸線を中心に回転する互いに対向した第1主軸チャックと第2主軸チャックとを備えた複合旋盤において前記第1主軸チャックに把握されたワークの芯出しを行う方法であって、
前記第1主軸チャック及び前記第2主軸チャックの各々は、互いに連動して径方向に進退可能な複数のチャック爪を備えたスクロールチャックであり、
前記ワークは、両端部に互いに同心の第1及び第2外径面を有し、
前記ワークの芯出しを行うにあたり、
前記ワークの一方の端部の前記第1外径面を前記第1主軸チャックで把握して、前記第1主軸チャックを仮締めする工程と、
前記ワークを前記第1主軸チャックで仮締めしたまま、前記ワークの他方の端部の前記第2外径面を前記第2主軸チャックで把握して締め付ける締付け工程、及び前記第2主軸チャックを緩める緩和工程を交互に繰り返す工程と、
前記ワークの前記他方の端部の前記第2外径面を前記第2主軸チャックで把握して、前記第2主軸チャックを仮締めする工程と、
前記ワークを前記第2主軸チャックで仮締めしたまま、前記ワークの一方の端部の前記第1外径面を前記第1主軸チャックで把握して締め付ける締付け工程、及び前記第1主軸チャックを緩める緩和工程を交互に繰り返す工程と、
前記第1主軸チャックを本締めして、前記第1主軸チャックで前記ワークを把握固定する工程と、
を有することを特徴とする、ワークの芯出し方法。
【請求項2】
前記チャック爪は、前記ワークの前記第1又は第2外径面を把握する把握面を有し、
前記把握面は、
前記複数のチャック爪の各々は、回転方向に互いに離間して配置された、前記ワークの前記第1又は第2外径面を把握したときに前記第1又は第2外径面と当接する2つの当接部と、
前記2つの当接部の間に配置された、前記ワークの前記第1又は第2外径面を把握したときに、前記第1又は第2外径面と当接しない、前記2つの当接部を分離する溝部と
を有することを特徴とする、請求項1記載のワークの芯出し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの芯出し方法及びチャック爪に係り、より詳細には、複合旋盤において主軸チャックに把握固定されるワークの芯出しを行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤の主軸チャックに把握されたワーク(加工対象物)の芯出しを行うにあたっては、ワークの偏心をダイアルゲージで測定し、ワークをハンマーで叩く作業が繰り返されていた。
また、特許文献1には、ワークをチャック装置にセットする際に、ワークをチャック爪における芯出し基準位置に押し付け、ワークのチャッキング姿勢を修正してから、ワークの外径面をチャッキング固定することにより、ワークの芯出し位置決めをする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ワークをハンマーで叩いてワークのチャッキング姿勢を修正する芯出し作業はリードタイムの増加要因となり、特に、多品種少量生産においては、リードタイムの増加がコストに大きく影響する。
また、特許文献1に記載の技術では、ワークの外径が真円であることが前提となっている。これに対し、鋳鉄製のワークの場合には、ワークの外径面が真円とは限らない。特に、鋳鉄製のワークの外径面には、鋳型の継ぎ目に沿った突起部が形成されていることが多い。このため、特許文献1に記載の技術鋳鉄製のワークを、鋳鉄製のワークに適用することは困難である。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、チャックで把握されるワークの外径面が真円でない場合であっても、簡単にワークの芯出しを行うことができるワークの芯出し方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワークの芯出し方法は、互いに対向した第1主軸チャックと第2主軸チャックとを備えた複合旋盤において前記第1主軸チャックに把握されたワークの芯出しを行う方法であって、前記第1主軸チャック及び前記第2主軸チャックの各々は、互いに連動して径方向に進退可能な複数のチャック爪を備えたスクロールチャックであり、前記ワークは、両端部に互いに同心の第1及び第2外径面を有し、前記ワークの芯出しを行うにあたり、前記ワークの一方の端部の第1外径面を前記第1主軸チャックで把握して、前記第1主軸チャックを仮締めする工程と、前記ワークを前記第1主軸チャックで仮締めしたまま、前記ワークの他方の端部の前記第2外径面を前記第2主軸チャックで把握して締め付ける締付け工程、及び前記第2主軸チャックを緩める緩和工程を交互に繰り返す工程と、前記ワークの前記他方の端部の前記第2外径面を前記第2主軸チャックで把握して、前記第2主軸チャックを仮締めする工程と、前記ワークを前記第2主軸チャックで仮締めしたまま、前記ワークの一方の端部の前記第1外径面を前記第1主軸チャックで把握して締め付ける締付け工程、及び前記第1主軸チャックを緩める緩和工程を交互に繰り返す工程と、前記第1主軸チャックを本締めして、前記第1主軸チャックで前記ワークを把握固定する工程と、を有することを特徴としている。
【0007】
主軸線を中心に回転する第1主軸チャックと第2主軸チャックとは、同一の主軸線上に配置されている。さらに、第1主軸チャック及び第2主軸チャックの各々がスクロールチャックであるため、チャックの締め付け、緩和を繰り返しても、チャック自身の芯出し精度が維持される。これにより、ワークの一端を第1主軸チャックで把握して仮締めしておき、ワークの他端を第2主軸チャックで把握して、第2主軸チャックによる締め付けと緩和とを繰り返すことにより、ワークの軸線が第1主軸チャック及び第2主軸チャックの主軸線に徐々に近づくようにワークのチャッキング姿勢が修正される。さらに、ワークの他端を第2主軸チャックで把握して仮締めしておき、ワークの一端を第1主軸チャックで把握して、第1主軸チャックによる締め付けと緩和とを繰り返すことにより、ワークの軸線が第1主軸チャック及び第2主軸チャックの主軸線に更に徐々に近づくようにワークのチャッキング姿勢が修正され、最終的には、主軸線と一致しする。これにより、第1主軸チャックに把握されたワークの芯出しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のワークの芯出し方法によれば、チャックで把握されるワークの外径面が真円でない場合であっても、簡単にワークの芯出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)は、本発明の実施形態によるワークの芯出し方法において使用する複合旋盤を構成する第1主軸チャック及び第2主軸チャックの断面模式図であり、(B)は、第1主軸チャックの正面図であり、(C)は、第2主軸チャックの正面図である。
【
図2】(A)は、チャック爪の正面図であり、(B)は、チャック爪の断面図である。
【
図3】ワークを把握したときのチャック爪の配置を示す模式図である。
【
図4】(A)~(C)は、本発明の実施形態によるワークの芯出し方法を利用したワークの加工工程の説明図である。
【
図5】(A)~(C)は、
図4に続く加工工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明のワークの芯出し方法及びチャック爪の実施形態を説明する。
【0014】
まず、
図1を参照して、本実施形態で使用する複合旋盤及びそのチャックを説明する。
図1(A)に示すように、本発明のワークの芯出し方法において使用する複合旋盤は、主軸線Oを中心に回転する互いに対向した第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とを備えている。なお、
図1(A)では、第1及び第2主軸チャック1、2を支持する構造をはじめとする他の構造の図示を省略している。
【0015】
図1(A)に示す例では、両端部にフランジ状に周囲に張り出した互いに同心の第1及び第2外径面3a及び3bが形成されたワーク3を加工対象とする。そして、ワーク3の両端部の一方の第1外径面3aは、第1主軸チャック1のチャック爪11の把握面11aで把握される。また、ワーク3の両端部の他方の第2外径面3bは、第2主軸チャック2のチャック爪21の把握面21aで把握される。
【0016】
そして、
図1(B)に示すように、第1主軸チャック1は、互いに連動して径方向に進退可能な3つのチャック爪11を備えた3つ爪スクロールチャックである。また、
図1(C)に示すように、第2主軸チャック2も、互いに連動して径方向に進退可能な3つのチャック爪21を備えた3爪のスクロールチャックである。スクロールチャックは、チャックの締め付け、緩和を繰り返しても、チャック自身の芯出し精度が維持される。
【0017】
図2に、第1主軸チャック1を構成するチャック爪11を示す。なお、
図1では、
図2(B)に示したチャック爪11をチャック本体10に取り付けるボルト、及びそのボルトを挿入するボルト穴11bの図示を省略している。また、第2主軸チャック2を構成するチャック爪21も、チャック爪11と同様の構造を有している。
【0018】
図2に示すように、ワーク3の第1外径面3aを把握するチャック爪11の把握面11aは、チャック爪11の回転方向に互いに離間して配置された2つの当接部111と、2つの当接部111の間に配置されて2つの当接部111を分離する溝部112とを有する。2つの当接部111の各々は、チャック爪11がワーク3の第1外径面3aを把握したときに、第1外径面3aと当接する。一方、溝部112は、チャック爪11がワーク3の第1外径面3aを把握したときに、第1外径面3aとは当接しない。
なお、第2主軸チャック2を構成するチャック爪21も、チャック爪11と同様に、2つの当接部とその間に配置された溝部とを有する把握面を備えている。
【0019】
表1に、直径10インチの第1主軸チャック1を構成するチャック爪11の寸法例を示す。表1に示すように、ワーク3の外径φに応じて、
図2に示したチャック爪11の各部A~Hの寸法が決められている。
【表1】
【0020】
表2に、直径8インチの第2主軸チャック2を構成するチャック爪21の寸法例を示す。表1に示すように、ワーク3の外径φに応じて、
図2に示したチャック爪11の各部A~Hに対応するチャック爪21の各部A~Hの寸法が決められている。
【表2】
【0021】
ここで、
図3(A)に、ワーク3の第1外径面3aを把握したときのチャック爪11の要部の配置を示す。なお、第2主軸チャック2においても、同様である。
第1主軸チャック1は、3爪チャックであるため、3つのチャック爪11各々の2つの当接部111は、ワーク3の第1外径面3aに沿った円周上で、主軸線Oと一致する第1主軸チャック1の中心軸線から見て互いに等角度の60°の角度だけ離れた位置に配置される。
【0022】
図3(A)に示すように、各チャック爪11の把握面11aが2つの当接部111を有することによって、チャック爪11の数の2倍の当接部111によって、ワーク3が把握される。本実施形態では、3つのチャック爪11でワーク3を把握するので、合計6つの当接部111によって、ワーク3が把握される。
その結果、把握面111aに1箇所の当接部を有するチャック爪でワーク3を把握する場合と比較して、より多くの箇所でワーク3を把握することができるため、効果的にワーク3を把握することが可能となる。
また、
図3(A)に示すように、チャック爪11の把握面11aの2つの当接部111は、把握するワーク3の第1外径面3aと同一の曲率半径を有するとよい。これにより、当接部111が面全体で、第1外径面3aに当接することができる。
【0023】
なお、チャック爪11の把握面11aの2つの当接部111は、面で第1外径面3aに当接しなくてもよく、例えば、
図3(B)に示すように、チャック爪11の当接部113は、把握するワーク3の第1外径面3aよりも小さい曲率半径を有してもよい。その場合、当接部113は、把握面11aの両端の2箇所113a,113bで、主軸Oと平行な直線で、第1外径面3aと当接する。さらに、チャック爪11は、各当接部が3箇所以上でワーク3の第1外径面3aと当接する形状を有してもよい。
また、チャック爪11の把握面11aの当接部111は、把握するワーク3の第1外径面3aよりも小さい曲率半径を有してもよい。
【0024】
ところで、鋳鉄製のワーク3には、通常、その外径面上の直径の両側に、鋳型の継ぎ目に沿った突起部が形成されている。
図3(A)及び
図3(B)に示すように、3爪チャックにおいて鋳鉄製のワーク3を把握する場合、鋳鉄製のワーク3の第1外径面3a上の直径の両側に形成された、鋳型の継ぎ目に沿った2箇所の突起部3cのうちの一方を、把握面11aの溝部112に収納することができる。これにより、突起部が把握面の当接部111,113に当接することが回避される。その結果、より正確に、ワーク3の芯出しを行うことができる。
【0025】
次に、
図4及び
図5を参照して、
図1に示した複合旋盤における、本発明のワークの芯出し方法を利用したワークの加工例を説明する。
まず、
図4(A)に示すように、ワーク3の芯出しを行うにあたり、ワーク3の一方の端部の第1外径面3aを第1主軸チャック1で把握して、第1主軸チャック1を仮締めする。第1主軸チャック1を仮締めする際には、ワーク3をしっかりと固定する本締めの場合のチャック圧(例えば、10~20kgf/cm
2(=0.98~1.96MPa))よりも低いチャック圧(例えば、3~5kgf/cm
2(=2.94~4.90MPa))で、ワーク3を把握する。ワーク3を仮締めすることにより、第1主軸チャック1に把持されたワーク3が、芯出しのために僅かに変位することができる。仮締めしたときのチャック圧は、次工程で、ワークが芯出しのために変位可能な範囲であればよい。
【0026】
次に、
図4(B)に示すように、ワーク3の他方の端部の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握して締め付ける。主軸線Oを中心に回転する第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とは、同一の主軸線O上に配置されている。さらに、第1主軸チャック1及び第2主軸チャック2の各々がスクロールチャックであるため、チャックの締め付け、緩和を繰り返しても、チャック自身の芯出し精度が維持される。
【0027】
これにより、第1主軸チャック1に仮締めで把持されたワーク3を、第2主軸チャック2で把握することにより、同一の主軸線O上に配置された第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とで、ワーク3の両端部が把握される。その結果、ワーク3の軸線が主軸Oに対して傾いていた場合に、第1主軸チャック1に把握されて仮締めされているワーク3僅かに変位する。
かかる締付け工程に続いて、ワーク3の他方の端部の第2外径面3bを把握している第2主軸チャック2を緩める。
【0028】
かかる締め付け工程と緩和工程とを繰り返す。すなわち、再度、ワーク3の他方の端部の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握して締め付ける。続いて、再度、ワーク3の他方の端部の第2外径面3bを把握している第2主軸チャック2を緩める。
なお、締付け工程と前記緩和工程とを繰り返す繰り返し工程の繰り返し回数は、ワーク3の偏心の程度により、適宜選択するとよい。
【0029】
次に、ワーク3の他方の端部の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握して、第2主軸チャック2を仮締めする。第2主軸チャック2を仮締めする際にも、ワーク3をしっかりと固定する本締めの場合のチャック圧(例えば、10~20kgf/cm2(=0.98~1.96MPa))よりも低いチャック圧(例えば、3~5kgf/cm2(=2.94~4.90MPa))で、ワーク3を把握する。ワーク3を仮締めすることにより、第2主軸チャック2に把持されたワーク3が、芯出しのために僅かに変位することができる。仮締めしたときのチャック圧は、次工程で、ワークが芯出しのために変位可能な範囲であればよい。
【0030】
次に、
図4(C)に示すように、ワーク3の他方の端部の第1外径面3aを第1主軸チャック1で把握して締め付ける。主軸線Oを中心に回転する第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とは、同一の主軸線O上に配置されている。さらに、第1主軸チャック1及び第2主軸チャック2の各々がスクロールチャックであるため、チャックの締め付け、緩和を繰り返しても、チャック自身の芯出し精度が維持される。
【0031】
これにより、第2主軸チャック2に仮締めで把持されたワーク3を、第1主軸チャック1で把握することにより、同一の主軸線O上に配置された第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とで、ワーク3の両端部が把握される。その結果、ワーク3の軸線が主軸Oに対して傾いていた場合に、第2主軸チャック2に把握されて仮締めされているワーク3僅かに変位する。
かかる締付け工程に続いて、ワーク3の一方の端部の第1外径面3aを把握している第1主軸チャック1を緩める。
【0032】
かかる締め付け工程と緩和工程とを繰り返す。すなわち、再度、ワーク3の一方の端部の第1外径面3aを第1主軸チャック1で把握して締め付け、続いて、再度、ワーク3の一方の端部の第1外径面3aを把握している第1主軸チャック1を緩める。
なお、締付け工程と前記緩和工程とを繰り返す繰り返し工程の繰り返し回数は、ワーク3の偏心の程度により、適宜選択するとよい。
【0033】
このように、ワーク3の一方の第1外径面3aを第1主軸チャック1で把握して仮締めておき、ワーク3の他方の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握して、第2主軸チャック2による締め付けと緩和とを繰り返す工程と、ワーク3の他方の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握して仮締めておき、ワーク3の一方の第1外径面3aを第1主軸チャック2で把握して、第1主軸チャック1による締め付けと緩和とを繰り返す工程とを経ることにより、ワーク3の軸線が第1主軸チャック1及び第2主軸チャック2の主軸線Oに徐々に近づくようにワーク3のチャッキング姿勢が修正され、最終的にワーク3の軸線が主軸線Oと一致しする。これにより、第1主軸チャック1に把握されたワーク3の芯出しを容易に行うことができる。
そして、芯出し後、ワーク3を把握している第1主軸チャック1を本締めして、芯出しされたワーク3を第1主軸チャック1でしっかりと把握固定する。
【0034】
次に、
図5(A)に示すように、第2主軸チャック2をワーク3から外し、ワーク3の他方の外周面3bのフランジ形状部分の背面3b2にタッチセンサ4を接触させて、フランジ形状部分の端面3b1と背面3b2との間の厚さt0をタッチセンサ4で測定し、所定の厚さt1にする為の削り代(t0-t1)を算出する。
【0035】
次に、
図5(B)に示すように、算出した削り代(t0―t1)だけ、ワーク3の端面3b1をバイト5で旋削する。
【0036】
次に、
図5(C)に示すように、ワーク3の他方の第2外径面3bを第2主軸チャック2で把握固定し、次いで、第1主軸チャック1をワーク3から外すことにより、ワーク3を掴み替える。第1主軸チャック1と第2主軸チャック2とは、同一の主軸O上に配置されているため、芯出しがされたワーク3を第2主軸チャック2で掴み替えても、ワーク3の芯出し状態が維持される。
【0037】
次に、
図6に示すように、ワーク3の端面3a1に対しても、ワーク3の端面3b1と同様にして削り代を算出し、ワーク3の端面3a1をバイト5aで旋削する。このようにして、ワーク3の両端面3a1及び3b1がそれぞれ旋削される。
【0038】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能である。上述した実施形態では、鋳鉄製のワーク3芯出しを行う例を説明したが、本発明では、加工対象のワークは、鋳鉄製のものに限定されない。
また、上述した実施形態では、両端部にフランジ状の外径面を有するワークを加工対象とした例を説明したが、本発明では、加工対象のワークの形状はこれに限定されず、両端部に外周面を有する形状であればよく、例えば、円柱形状であってもよいし、円筒形状であってもよい。また、ワークの両端部の外径は、互いに同じあってもよいし、異なってもよい。
また、上述した実施形態では、第1及び第2主軸チャックを3つ爪スクロールチャックとした例を説明したが、本発明では、第1及び第2主軸チャックは3つ爪のものに限定されず、例えば、4つ爪のスクロールチャックでもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 第1主軸チャック
2 第2主軸チャック
3 ワーク
3a 第1外径面
3b 第2外径面
3a1,3b1 端面
3c 突起部
4 タッチセンサ
5,5a バイト
10,20 チャック本体
11,21 チャック爪
11a 把握面
111,113 当接部
112 溝部