(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】工具システム、工具システム用プログラム及び調節工具
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
B25B23/14 640R
B25B23/14 620J
B25B23/14 620B
(21)【出願番号】P 2018191249
(22)【出願日】2018-10-09
【審査請求日】2021-09-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年10月3日~平成30年10月5日に第21回関西設計・製造ソリューション展にて展示。
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広
(72)【発明者】
【氏名】芳本 悠未
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0331831(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0046976(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示機器に接続された
調節工具と、前記調節工具とは別に設けられ、前記調節工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、
前記表示機器が、
設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部と、
ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記
調節条件表示部に設定する調節条件設定部と備え、
前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とする工具システム。
【請求項2】
前記表示機器が、タッチパネルディスプレイであり、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記目標値を入力するための目標値スライダを表示するスライダ表示部をさらに備え、
前記調節条件表示部が、前記タッチパネルディスプレイ上に前記目標値及び前記閾値を前記目標値スライダと共に表示するものであり、
前記調節条件設定部が、ユーザの前記目標値スライダに対する操作に基づいて新たな目標値が入力されるものである請求項1記載の工具システム。
【請求項3】
前記スライダ表示部が、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記閾値を入力するための閾値スライダを前記目標値スライダと共に表示するものであり、
前記調節条件設定部が、ユーザの前記閾値スライダに対する操作に基づいて新たな閾値が入力された場合に、当該入力前に設定した目標値を変更せず、前記新たな閾値を前記調節条件表示部に設定する請求項2記載の工具システム。
【請求項4】
前記スライダ表示部が、前記目標値スライダ及び前記閾値スライダを前記調節条件表示部に表示された前記目標値と前記閾値との差に応じた距離だけ離間させ、同一ラインに沿って移動するように表示する請求項3記載の工具システム。
【請求項5】
前記表示機器が、前記調節工具に応じて予め設定された所定範囲の調節値を前記ラインに対して長手方向に沿うように割り当てる調節値割当部をさらに備え、
前記調節条件設定部が、ユーザが前記目標値スライダ又は前記閾値スライダのいずれかを前記ラインに対して変位させる操作を行った場合に、当該変位後の位置に割り当てられた調節値又は当該変位前後の位置に割り当てられた調節値の変化量に基づいて定められた新たな目標値又は新たな閾値が入力されるものである請求項4記載の工具システム。
【請求項6】
前記表示機器が、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記目標値及び前記閾値を示す数値を入力するための数値入力領域を表示する数値入力領域表示部をさらに備え、
前記調節条件設定部が、ユーザの前記数値入力領域に対する操作に基づいて目標値が新たに入力されるものであり、
前記スライ
ダ表示部が、ユーザが前記数値入力領域に前記数値を入力する操作を行った場合に、前記目標値スライダ及び前記閾値スライダを前記ラインの前記調節条件表示部に表示された前記目標値及び前記閾値が割り当てられた位置に表示する請求項5記載の工具システム。
【請求項7】
調節工具とは別に設けられ、前記調節工具と有線又は無線により接続される表示機器に用いられるプログラムであって、
設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部、及び、ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記
調節条件表示部に設定する調節条件設定部としての機能を前記表示機器に発揮させるものであり、
前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とする工具システム用プログラム。
【請求項8】
表示装置を備えた調節工具であって、
前記表示装置が、
設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部と、
ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記
調節条件表示部に設定する調節条件設定部と備え、
前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とする調節工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具システム、これに用いられる工具システム用プログラム及び調節工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調節工具の一種である従来の締付工具として、例えば、締付トルクを測定する測定器を有し、この測定器で測定される締付トルクが当該締付トルクの目標値や当該締付トルクの許容範囲の上限又は下限を示す閾値に達したことを知らせる機構を備えたものがある。
【0003】
前記機構を備えた締付工具においては、目標値及び閾値を予め入力しておく必要があり、例えば、特許文献1には、締付工具に接続されたPCに対してキーボード等の入力手段から目標値及び閾値をそれぞれ別々にユーザが入力する構成のものが開示されている。
【0004】
ところで、締付工具によって複数の締付対象(例えば、ボルトやネジ等)を締め付ける締付作業を行う場合に、締付対象の種類や締付箇所に応じて前記目標値を変える必要があるものの、当該目標値に対する上限範囲及び下限範囲を変えなくてよい場合がある。例えば、いずれの締付対象も目標値に対して±10N・mの範囲で締め付ければよい場合である。
【0005】
ところが、この場合、目標値を変化させると、これに伴って閾値も変化するため、前記特許文献1に開示された締付工具においては、目標値を変える毎に閾値を再度入力し直す必要があり、ユーザの入力操作が増して人的ミスが生じ易かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、目標値及び閾値を入力する場合に、人的ミスが生じ難い工具システムを得ることを主な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明に係る工具システムは、表示機器に接続された調節工具と、前記調節工具とは別に設けられ、前記調節工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備え、前記表示機器が、設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部と、ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記表示制御部に設定する調節条件設定部と備え、前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とするものである。
【0009】
このようなものであれば、ユーザが新たな目標値を入力するだけで当該新たな目標値に応じた新たな閾値が自動的に表示されるようになる。これにより、調節対象毎に目標値に対する上限範囲及び下限範囲を変えなくてもよい場合に、目標値に応じて変化する閾値の入力操作を省略でき、ユーザの入力ミスが生じ難くなる。また、表示機器を調節工具とは別体にしてあるので、調節工具の小型化や軽量化を図れる。
【0010】
また、前記表示機器が、タッチパネルディスプレイであり、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記目標値を入力するための目標値スライダを表示するスライダ表示部をさらに備え、前記調節条件表示部が、前記タッチパネルディスプレイ上に前記目標値及び前記閾値を前記目標値スライダと共に表示するものであり、前記調節条件設定部が、ユーザの前記目標値スライダに対する操作に基づいて新たな目標値が入力されるものであってもよい。
【0011】
このようなものであれば、設定された目標値を目標値スライダの操作のみによって変更することができる。これにより、目標値スライダの変位量を参照しながら目標値を変更することができるため、目標値を意図しない変化量で変化させるような入力ミスが生じ難くなる。
【0012】
また、前記スライダ表示部が、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記閾値を入力するための閾値スライダを前記目標値スライダと共に表示するものであり、前記調節条件設定部が、ユーザの前記閾値スライダに対する操作に基づいて新たな閾値が入力された場合に、当該入力前に設定した目標値を変更せず、前記新たな閾値を前記調節条件表示部に設定するものであってもよい。
【0013】
このようなものであれば、目標値に対する上限範囲及び下限範囲を変える必要がある場合に、閾値スライダの変位量を参照しながら上限範囲及び下限範囲を示す閾値を変更することができるため、閾値を意図しない変化量で変化させるような入力ミスが生じ難くなる。
【0014】
また、前記スライダ表示部が、前記目標値スライダ及び前記閾値スライダを前記調節条件設定部によって設定された前記目標値と前記閾値との差に応じた距離だけ離間させ、同一ラインに沿って移動するように表示するものであってもよい。
【0015】
このようなものであれば、目標値に対する上限範囲及び下限範囲を目標値スライダに対する閾値スライダの離間距離によって視覚的に確認できるようになる。これにより、目標値及び閾値の入力ミスを直感的に把握できるようになる。
【0016】
また、前記表示機器が、前記調節工具に応じて予め設定された所定範囲の調節値を前記ラインに対して長手方向に沿うように割り当てる調節値割当部をさらに備え、前記調節条件設定部が、ユーザが前記目標値スライダ又は前記閾値スライダのいずれかを前記ラインに対して変位させる操作を行った場合に、当該変位後の位置に割り当てられた調節値又は当該変位前後の位置に割り当てられた調節値の変化量に基づいて定められた新たな目標値又は新たな閾値が入力されるものであってもよい。
【0017】
このようなものであれば、所定範囲としてメーカーが予め定める保証範囲の調節値を設定することにより、目標値及び閾値を保証範囲よりも大きい数値に設定できなくなる。これにより、ユーザが工具システムを保証範囲外の調節値で使用することを防止できる。
【0018】
また、前記表示機器が、前記タッチパネルディスプレイ上にユーザが前記目標値及び前記閾値を示す数値を入力するための数値入力領域を表示する数値入力領域表示部をさらに備え、前記調節条件設定部が、ユーザの前記数値入力領域に対する操作に基づいて目標値が新たに入力されるものであり、前記スライド表示部が、ユーザが前記数値入力領域に前記数値を入力する操作を行った場合に、前記目標値スライダ及び前記閾値スライダを前記ラインの前記調節条件表示部に表示された前記目標値及び前記閾値が割り当てられた位置に表示するものであってもよい。
【0019】
また、本発明に係る工具システム用プログラムは、調節工具とは別に設けられ、前記調節工具と有線又は無線により接続される表示機器に用いられるプログラムであって、設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部、及び、ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記表示制御部に設定する調節条件設定部としての機能を前記表示機器に発揮させるものであり、前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とするものである。
【0020】
このように構成された工具システム用プログラムを既存の工具システムにインストールすることによって、上述した工具システムと同様の作用効果を奏し得る。なお、工具システム用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【0021】
また、本発明に係る調節工具は、表示装置を備えた調節工具であって、前記表示装置が、設定された調節値の目標値及び当該調節値の許容範囲の上限又は下限の少なくとも一方を示す閾値を表示する調節条件表示部と、ユーザの入力操作に基づいて入力された目標値及び閾値を前記表示制御部に設定する調節条件設定部と備え、前記調節条件設定部が、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、前記新たな目標値を前記調節条件表示部に設定すると共に、当該入力前に設定した閾値を、当該入力前に設定した目標値に対する前記新たな目標値の変化量に基づき変化させて前記調節条件表示部に設定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本願発明によれば、目標値及び閾値を入力する場合に、人的ミスが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態における工具システムの構成を示す模式図。
【
図2】同実施形態の表示機器の機能を説明するための機能ブロック図。
【
図3】同実施形態のディスプレイの表示態様(測定値表示画面)の一例を説明するための図。
【
図4】同実施形態のディスプレイの表示態様(締付条件設定画面)の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明に係る工具システムの一実施形態について説明する。
【0025】
本実施形態の工具システム100は、自動車、鉄道車両、航空機やその他の種々の装置の組み立て、解体、点検等の作業現場において用いられるものであり、
図1に示すように、締付工具10(調節工具)と、締付工具10に有線又は無線により接続される表示機器20と、を備えている。
【0026】
なお、この実施形態では、調節工具の一例として、ボルトやネジ等(締付対象)の締付トルク(調節値)を調節する締付工具10であるトルクレンチを例示して説明するが、締付工具10としてはドライバーやスパナ等の種々のものを用いて構わない。
【0027】
締付工具10は、締付トルクを測定する測定器11と、表示機器20と通信する通信手段12とを備えたものであり、この通信手段12が測定器11により測定された測定値を示す測定データを送信するデータ送信部13としての機能を有している。
【0028】
表示機器20は、CPU、メモリ、タッチパネルディスプレイD(以下、ディスプレイDともいう)などを有するものであり、ここでは締付工具10と無線により通信可能な例えばスマートフォンやタブレット端末等といった、作業者が携帯可能なモバイル端末である。そして、この表示機器20は、前記メモリに格納された工具システム用プログラムに基づいて、
図2に示すように、データ受信部21、表示制御部22等としての機能を発揮するように構成されている。
【0029】
以下、各部の説明を兼ねて、表示機器20の動作を説明する。
【0030】
データ受信部21は、上述したデータ送信部13から送信された測定データを受信して、表示制御部22に出力する。
【0031】
表示制御部22は、表示機器20のディスプレイD(画面)の表示内容を制御するものである。具体的には、測定値表示部22a、締付条件表示部22b(調節条件表示部)、スライダ表示部22c、締付トルク割当部22d(調節値割当部)、数値入力領域表示部22e、締付条件設定部22f(調節条件設定部)等としての機能を発揮する。なお、本実施形態の表示機器20は、ユーザの操作によって
図3に示す測定値表示画面D1と
図4に示す締付条件設定画面D2とを切り替えて表示できるようになっている。
【0032】
測定値表示部22aは、測定値表示画面D1上に、データ受信部21から受信した測定データの測定値を表示する。なお、測定値表示部22aは、締付工具10の測定器11によって測定された測定値をリアルタイムで表示する。本実施形態の測定値表示部22aは、測定値表示画面D1の中央に設けられた測定値表示領域Sに測定値を表示する。
【0033】
締付条件表示部22bは、締付条件設定画面D2(調節条件設定画面)上に、設定された締付トルクの目標値と、設定された締付トルクの許容範囲の上限値(閾値)及び下限値(閾値)と、を表示する。本実施形態の締付条件表示部22bは、締付条件設定画面D2の右側に設けられた目標値表示領域S1、上限値表示領域S2及び下限値表示領域S3にそれぞれ目標値、上限値及び下限値(以下、これら三つの数値をまとめて各締付条件値(調節条件値)ともいう)を表示する。なお、上限値表示領域S2及び下限値表示領域S3は、目標値表示領域S1を挟んでその両側に設けられている。
【0034】
また、本実施形態の締付条件表示部22bは、締付条件設定画面D2に表示する目標値を、測定値表示画面D1の締付条件表示領域S7にも表示するように構成されている。なお、締付条件設定画面D2に表示する上限値及び下限値を、測定値表示画面D1の締付条件表示領域S7に表示してもよい。
【0035】
スライダ表示部22cは、締付条件設定画面D2上に、ユーザが目標値を入力するための目標値スライダSD1と、ユーザが上限値を入力するための上限値スライダSD2と、ユーザが下限値を入力するための下限値スライダとSD3と、を表示する。なお、本実施形態においては、スライダ表示部22cは、締付条件設定画面D2上に、目標値スライダSD1、上限値スライダSD2及び下限値スライダSD3(以下、これら三つのスライダをまとめて各スライダSDともいう)をガイドする直線状のガイドラインGをさらに表示する。なお、スライダ表示部22cは、ユーザが最後にタップしたアクティブなスライダSDのみを異なる色に変化させて表示する。
【0036】
また、スライダ表示部22cは、上限値スライダSD2及び下限値スライダSD3を目標値スライダSD1に対して両側に表示する。また、スライダ表示部22cは、各スライダSDがガイドラインG上を移動するように表示する。さらに、スライダ表示部22cは、各スライダSDがガイドラインGを越えて移動できないように表示する。
【0037】
また、スライダ表示部22cは、目標値スライダSD1及び上限値スライダSD2を締付条件表示部22bに表示された目標値と上限値との差に応じた距離だけ離間させて表示すると共に、目標値スライダSD1及び下限値スライダSD3を締付条件表示部22bに表示された目標値と下限値との差に応じた距離だけ離間させて表示する。これにより、ユーザは、締付条件表示部22bによって表示された各締付条件値間の間隔を各スライダSD間の距離によって視覚的に認識できるようになる。
【0038】
締付トルク割当部22dは、ガイドラインGに対し、締付工具10に応じて予め設定された所定範囲の締付トルクを長手方向に沿うように割り当てる。具体的には、締付トルク割当部22dは、ガイドラインGに対し、所定範囲の締付トルクをガイドラインGの一端側(
図4中、下端側)から他端側(
図4中、上端側)に向かって増加するように割り当てる。例えば、所定範囲の締付トルクが、2N・m~10N・mであった場合には、ガイドラインGの一端に2N・mを割り当てると共に、他端に10N・mを割り当て、一端から他端に向かって締付トルクが徐々に増加するように割り当てる。
【0039】
ここで、所定範囲の締付トルクは、締付工具10によって締付対象を適正に締め付けることができる範囲の締付トルクであり、具体的には、メーカーが締付工具10に対して予め設定している締付トルクの保証範囲である。なお、所定範囲の締付トルクを示す所定範囲データは、締付工具に内蔵されたメモリに予め記憶されている。そして、締付工具10が、表示機器20に接続されると、メモリに記憶された所定範囲データが通信手段12を介して締付トルク割当部22dへ送信され、締付トルク割当部22dによってガイドラインGに割り当てられるように構成されている。
【0040】
数値入力領域表示部22eは、締付条件設定画面D2上に、ユーザが目標値、上限値及び下限値を入力するための数値入力領域S4を表示する。本実施形態の数値入力領域S4は、目標値表示領域S1、上限値表示領域S2及び下限値表示領域S3がその役割を果たしている。すなわち、ユーザが、目標値表示領域S1、上限値表示領域S2及び下限値表示領域S3のいずれかをタップすると、当該領域に対応する数値入力パネルが表示され、この数値入力パネルを利用してユーザが当該領域に締付条件値を入力できるように構成されている。
【0041】
よって、本実施形態においては、各締付条件値を各スライダSDから入力できると共に、数値入力領域S4から入力できるようになっている。
【0042】
締付条件設定部22fは、ユーザの入力操作に基づいて入力された締付条件値を締付条件表示部22bに設定する。具体的には、締付条件設定部22fは、ユーザの入力操作に基づいて新たな目標値が入力された場合に、当該新たな目標値を締付条件表示部22bに設定すると共に、当該入力前に設定した上限値又は下限値を、当該入力前に設定した目標値に対する新たな目標値の変化量に基づき変化させて締付条件表示部22bに設定する。また、締付条件設定部22fは、ユーザの入力操作に基づいて上限値又は下限値が新たに入力された場合に、当該入力前に設定した目標値を変更せず、新たな上限値又は新たな下限値を締付条件表示部22bに設定する。
【0043】
なお、締付条件設定部22fは、ユーザが各スライダSDをスライド操作によってガイドラインGに沿って変位させた場合に、各スライダSDが変位後に位置するガイドラインGの位置に割り当てられた締付トルクを各締付条件値とし、前記のような演算を行って各締付条件値を締付条件表示部22bに設定する。
【0044】
また、締付条件設定部22fは、ユーザが各数値入力領域を操作して各締付条件値を示す数値を入力した場合に、当該数値を各締付条件値とし、前記のような演算を行って各締付条件値を締付条件表示部22bに設定する。
【0045】
この場合、スライダ表示部22cは、ユーザが数値入力領域S4に締付条件値を入力する操作を行った場合に、各スライダSDをガイドラインGの締付条件表示部22bに表示された締付条件値と一致する締付トルクが割り当てられた位置に変位させて表示するように構成されている。
【0046】
ここで、締付条件設定部22fが最初に設定する各締付条件値の初期値を示す初期値データは、締付工具10に内蔵されたメモリに予め記憶されている。そして、締付工具10が、表示機器20に接続されると、メモリに記憶された初期値データが通信手段12を介して締付条件設定部22fへ送信され、締付条件表示部22bに初期値として設定する。
【0047】
また、本実施形態においては、スライダ操作領域表示部をさらに備えている。なお、スライダ操作領域表示部は、ガイドスライドGに対し、一端側(上端側)に各スライダSDを締付トルクが上昇する方向に向かってまとめて変位させるスライダ操作領域S5を表示すると共に、他端側(下端側)に各スライダSDを締付トルクが下降する方向に向かってまとめて変位させるスライダ操作領域S6を表示する。なお、締付条件設定部22fは、ユーザのスライダ操作領域S5,S6に対する操作に基づいて入力された場合も、締付条件値を締付条件表示部22bに設定する。
【0048】
このようなものであれば、ユーザが新たな目標値を入力するだけで当該新たな目標値に応じた新たな閾値が自動的に表示されるようになる。これにより、締付対象毎に目標値に対する上限範囲及び下限範囲を変えなくてもよい場合に、目標値に応じて変化する閾値の入力操作を省略できる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0050】
前記実施形態においては、調節工具として締付工具10を例示して説明したが、調節工具としては、例えば、タイヤの空気圧を調節するタイヤインフレータであってもよい。この場合、調節値は空気圧となる。すなわち、調節工具とは、調節対象に係る調節値を許容範囲内に含まれる所定の調節値に調節するための工具である。
【0051】
また、前記実施形態においては、締付トルクの許容範囲の上限値及び下限値を閾値として表示するように構成したが、上限値のみを閾値として表示するようなものであってもよい。また、この閾値を、許容範囲の上限値及び下限値ではなく、目標値に対する上限範囲及び下限範囲を示す閾値(例えば、目標値に対して±5N・mの範囲を締付トルクの許容範囲とした場合に±5N・m、目標値に対して±10%の範囲を締付トルクの許容範囲とした場合に±10%等)を表示するものであってもよい。
【0052】
さらに、表示機器20としてはポータブル端末に限らず、例えば作業者が装着可能なゴーグル型のものであっても良い。この場合、作業者はディスプレイDを介して手元を見るので、表示態様の変化をより感じ取り易くなる。加えて、表示機器20としては、プロジェクタを用いて構成されていても良く、この場合は例えば壁面やスクリーンなどが締付トルクを表示する画面である。なお、本発明は、表示装置を備えた締付工具10にも適用することができる。
【0053】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
100・・・工具システム
10 ・・・締付工具
11 ・・・測定器
12 ・・・通信手段
13 ・・・データ送信部
20 ・・・表示機器
21 ・・・データ受信部
22 ・・・表示制御部
22a・・・測定値表示部
22b・・・締付条件表示部
22c・・・スライダ表示部
22d・・・締付トルク割当部
22e・・・数値入力領域表示部
22f・・・締付条件設定部
D ・・・ディスプレイ
S1 ・・・目標値表示領域
S2 ・・・上限値表示領域
S3 ・・・下限値表示領域
S4 ・・・数値入力領域