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特許7125114工具システム及び工具システム用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】工具システム及び工具システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20220817BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B25B23/14 620J
G05B19/418 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018199160
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020066074
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成30年5月17日に京都機械工具株式会社本社にて公開。 ・平成30年6月20日~平成30年6月22日に設計・製造ソリューション展にて展示。 ・平成30年6月25日に株式会社日立産業制御ソリューションズにて販売。
(73)【特許権者】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】田邉 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中田 祥吾
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-346274(JP,A)
【文献】特許第3836571(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具と、当該工具とは別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムであって、
前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、
作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、
作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部とを有し、
前記複数の表示モードが、作業手順毎の作業者或いは前記工具と前記表示機器との距離、作業手順毎の作業者或いは前記工具の位置、又は作業手順毎の作業場所の少なくとも1つに応じて設定されていることを特徴とする工具システム。
【請求項2】
前記表示モード受付部が、作業中にその作業内容の表示に用いられている表示モードとは別の表示モードを受け付けた場合に、前記表示制御部が、その作業中の作業内容を前記別の表示モードに切り替えて表示することを特徴とする請求項1記載の工具システム。
【請求項3】
前記表示モード記憶部が、近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードを前記表示モードとして記憶していることを特徴とする請求項1又は2に記載の工具システム。
【請求項4】
前記近距離モード、前記中距離モード、前記遠距離モードの順で表示される文字サイズが大きくなることを特徴とする請求項記載の工具システム。
【請求項5】
工具と、当該工具とは別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムであって、
前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、
作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、
作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部とを有し、
前記表示制御部が表示する作業内容には、前記工具である締付工具による締付トルクの測定値、作業の進捗、作業対象の映像又は画像、作業の順番を示す番号、又は作業内容に関連するコメントの少なくとも1つの表示項目が含まれていることを特徴とする工具システム。
【請求項6】
工具と、当該工具とは別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムに用いられるプログラムであって、
前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、
作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、
作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部としての機能を前記表示機器に発揮させ
前記複数の表示モードが、作業手順毎の作業者或いは前記工具と前記表示機器との距離、作業手順毎の作業者或いは前記工具の位置、又は作業手順毎の作業場所の少なくとも1つに応じて設定されていることを特徴とする工具システム用プログラム。
【請求項7】
工具と、当該工具とは別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムに用いられるプログラムであって、
前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、
作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、
作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部としての機能を前記表示機器に発揮させ
前記表示制御部が表示する作業内容には、前記工具である締付工具による締付トルクの測定値、作業の進捗、作業対象の映像又は画像、作業の順番を示す番号、又は作業内容に関連するコメントの少なくとも1つの表示項目が含まれていることを特徴とする工具システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いる作業の作業者を補助するための工具システム及び工具システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の工具システムとしては、特許文献1に示すように、作業性の向上を図るべく、作業者の近くに配置されたディスプレイに、例えば作業手順などを表示するように構成されたものがある。
【0003】
他方、製品の品質等を管理する管理者は、例えばボルトの締付トルクなど種々の管理項目が所定の条件を満たしているかを確認して、作業の合否を判断する。
【0004】
このことから、上述したディスプレイには、作業性の向上を図る作業手順等の項目のみならず、管理者側が作業者に確認しながら作業を進めてもらいたい例えば締付トルクなどの管理項目をも表示することがあり、表示項目が多岐に亘る。
【0005】
しかしながら、例えばセル生産などの作業に応じて作業場所が異なる生産現場では、表示項目が多岐に亘ると、1つ1つの表示領域が小さくなり、作業者がディスプレイから離れた場合に、表示内容を読み取り難くなったり、読み取れなかったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3836571号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本願発明は、表示機器の表示モードを作業手順に沿った作業内容毎に柔軟に変更することができ、作業者にとって使い勝手の良い工具システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本願発明に係る工具システムは、工具と、当該工具とは別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムであって、前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
このように構成された工具システムであれば、例えば作業手順毎の作業場所とディスプレイとの距離などに基づいて、作業手順に沿った作業内容それぞれの表示モードを柔軟に選択することができ、その選択された表示モードによる作業内容の表示が作業手順毎に切り替わるので、作業者にとっての使い勝手を良くすることができる。
【0010】
ところで、例えば未熟な作業者の作業性を向上させるべく、多くの項目を表示させると、熟練者にとっては、不要な項目が表示されるうえ、必要な情報の表示領域が小さくなって、読み取り難くなってしまう。
そこで、作業者が作業中に表示モードを変更できるようにするためには、前記表示モード受付部が、作業中にその作業内容の表示に用いられている表示モードとは別の表示モードを受け付けた場合に、前記表示制御部が、その作業中の作業内容を前記別の表示モードに切り替えて表示することが好ましい。
【0011】
作業者と表示機器との距離に応じて表示モードを変更するためには、前記複数の表示モードが、作業手順毎の作業者或いは前記工具と前記表示機器との距離、作業手順毎の作業者或いは前記工具の位置、又は作業手順毎の作業場所の少なくとも1つに応じて設定されていることが好ましい。
【0012】
具体的な実施態様としては、前記表示モード記憶部が、近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードを前記表示モードとして記憶している態様が挙げられる。
【0013】
各表示モードにおける使い勝手を良くするためには、前記近距離モード、前記中距離モード、前記遠距離モードの順で、少なくとも1つの表示項目の文字サイズが大きくなることが好ましい。
【0014】
作業性の向上を図るためには、前記表示制御部が表示する作業内容には、前記工具である締付工具による締付トルクの測定値、作業の進捗、作業対象の映像又は画像、作業の順番を示す番号、又は作業内容に関連するコメントの少なくとも1つの表示項目が含まれていることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る工具システム用プログラムは、工具と、当該工具は別に設けられ、前記工具と有線又は無線により接続された表示機器とを備える工具システムに用いられるプログラムであって、前記工具を用いた作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶する表示モード記憶部と、作業手順に沿った作業内容それぞれに対して、前記複数の表示モードの中から選択された表示モードを受け付ける表示モード受付部と、作業内容を、前記表示モード受付部が受け付けた表示モードで、作業手順毎に切り替えて表示する表示制御部としての機能を前記表示機器に発揮させることを特徴とするものである。
このように構成された工具システム用プログラムであれば、上述した工具システムと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、表示機器の表示モードを作業手順に沿った作業内容毎に柔軟に変更することができ、作業者にとって使い勝手の良い工具システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における工具システムの全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態の表示機器の機能を説明するための機能ブロック図。
図3】同実施形態の表示手順記憶部の記憶しているデータを説明するための図。
図4】同実施形態の表示モード選択画面を説明するための図。
図5】同実施形態の近距離モードの表示例を説明するための図。
図6】同実施形態の中距離モードの表示例を説明するための図。
図7】同実施形態の遠距離モードの表示例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る工具システムの一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の工具システム100は、自動車、鉄道車両、航空機やその他の種々の装置の組み立て、解体、点検等の作業現場において、ネジやボルト等を対象の装置等に取り付ける又は取り外すために用いられるものであり、図1に示すように、工具10と、工具10とは別に設けられて、当該工具10に有線又は無線により接続された表示機器20とを備えている。
なお、この実施形態では、工具10として締付工具たるトルクレンチを用いた場合について説明するが、ドライバーやスパナ等の種々の締付工具を用いて構わないし、工具10としてノギスやデプスゲージ等の測定工具を用いても構わない。
【0020】
締付工具10は、ネジやボルト等の締付トルクを測定する測定器11と、測定器11の測定値などを表示するディスプレイ12と、表示機器20との間で種々のデータを送受信する通信手段13とを備えたものである。なお、種々のデータとしては、測定器11の測定値を示す測定データや、締付トルクの設定値を示す設定データなどが挙げられる。また、締付工具10は、必ずしもディスプレイ12を備えたものである必要はない。
【0021】
表示機器20は、CPU、メモリ、ディスプレイD、入力手段などを有するものであり、ここでは締付工具10と無線により通信可能な例えば汎用乃至専用のパソコンやタブレット端末等である。そして、この表示機器20は、前記メモリに格納された工具システム用プログラムに基づいて、図2に示すように、作業手順記憶部21、表示モード記憶部22、表示モード受付部23、表示制御部24としての機能を発揮するように構成されている。なお、工具システム用プログラムは、電子的に配信されるものであっても良いし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであっても良い。
以下、各部の説明を兼ねて、表示機器20の動作を説明する。
【0022】
作業手順記憶部21は、前記メモリの所定領域に設定されており、装置の組み立て、解体、点検等の作業全体に含まれる複数の作業手順(作業工程)を記憶するものである。なお、手順記憶部21は、必ずしも前記メモリに設定されている必要はなく、例えばファイルサーバやクラウドサーバに設定されていても良い。
【0023】
これらの作業手順の少なくとも1つには、締付工具10を用いた作業が含まれている。かかる作業としては、例えばボルトの締め付け作業が挙げられる。なお、複数の作業手順には、締付工具10を用いた作業としてボルトの取り外し作業が含まれていても良いし、締付工具10が用いられない作業が含まれていても良い。
【0024】
本実施形態の作業手順には、互いに異なる作業場所において締付工具10を用いる第1作業及び第2作業が含まれている。かかる第1作業としては、例えば航空機の前方において複数のボルトを締め付ける作業が挙げられ、第2作業として、例えば同航空機の後方において複数のボルトを締め付ける作業が挙げられる。
【0025】
この作業手順記憶部21には、図3に示すように、1つの作業手順を示す作業データが複数記憶されている。
作業データには、図3及び図4に示すように、それぞれの作業手順を識別するための作業名(例えば翼の締結やポンプの位置固定など)と、各作業手順における開始から終了までに必要とされる複数の手順を識別するための手順名(例えば、翼の締結、その他、管理項目、測定など)とが少なくとも含まれており、ここでは各手順において予め定められている複数の表示項目の表示モード(詳細は後述する)のデフォルトデータをさらに含んでいる。
【0026】
表示モード記憶部22は、前記メモリの所定領域に設定されており、作業内容の表示の仕方であって、予め設定された複数の表示モードを記憶するものである。なお、表示モード記憶部22は、必ずしも前記メモリに設定されている必要はなく、例えばファイルサーバやクラウドサーバに設定されていても良い。
また、ここでいう作業内容とは、複数の作業手順のうちの1つの作業において、開始から終了までに必要な複数の項目からなるものであり、上述した複数の表示項目により表される内容である。つまり、作業内容の表示とは、1つの作業において必要な複数の項目を表示することである。こうした表示項目としては、例えば締め付けるボルトの本数、締め付ける順番、締め付けトルクの設定値、締め付けトルクの測定値、作業対象である締め付けトルクの映像又は画像、作業に関連するコメントなどが挙げられる。
【0027】
具体的に表示モード記憶部22は、作業内容の表示の仕方である表示モードとして、例えば作業者或いは締付工具10と表示機器20との距離(以下、作業距離ともいう)に応じて予め設定されており、ここでは近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードを記憶しており、これらの表示モードは云わば上述した表示項目の表示レイアウトである。
【0028】
より具体的に説明すると、図5図7に示すように、近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードが、この順で少なくとも1つの表示項目の文字サイズが大きくなるように設定されている。
【0029】
近距離モードは、図5に示すように、作業距離が短い場合の作業者に作業内容を表示する表示の仕方であり、全体的に文字サイズが小さく設定されている。
具体的にこの近距離モードでは、作業名を表示する作業名表示欄S1、作業者を表示する作業者表示欄S2、締付トルクの設定値(上限値、目標値、下限値)を表示する設定トルク表示欄S3、締付トルクの測定値を表示する測定トルク表示欄S4、表示された設定値及び測定値の単位を表示する単位表示欄S5、ボルトの予め定められた締付方向を表示する判定方向表示欄S6、作業中のボルトの締付方向を表示する締付方向表示欄S7、使用工具の識別番号を表示する使用工具表示欄S8、作業対象の映像又は画像を表示する作業対象表示欄S9、作業内容に関するコメントを表示するコメント表示欄S10などが設定されている。
その他、この近距離モードでは、締付トルクの設定値を再設定するための再設定ボタンB1や、表示内容の種々切り替えるための種々の表示切替ボタンB2も表示されている。
【0030】
本実施形態では、設定トルク表示欄S3に表示された設定値は、例えばマウスやキーボードやタッチパネルなどの入力手段を介して作業者が変更できるように構成されており、ここでは変更された設定値を示す設定データが締付工具10に送信されるようにしてある。
これにより、例えば締付トルクが設定値に達した場合に、締付工具10が音や光を発することで、そのことを作業中の作業者に報知させることなどができ、作業性の更なる向上を図れる。
【0031】
また、本実施形態の測定トルク表示欄S4には、締付工具10の通信手段13から送信された測定データを示す測定値が測定トルク表示欄にリアルタイムで表示されるように構成されているが、作業者が例えばマウスやキーボードやタッチパネルなどの入力手段を用いて入力した測定値が表示されても良い。
【0032】
この近距離モードでは、作業対象表示欄S9の表示領域が最も大きく、この作業対象表示欄S9には、作業対象となる複数のボルトの映像とともに、作業の順番、すなわちボルトの締め付ける順番が、各ボルトの近傍に表示されている。ここでは、作業対象となるボルト、すなわち締め付けるべきボルトを識別できるように、作業対象となるボルトに付された数字と、その他のボルトに付された数字とを異なる表示態様(例えば色や大きさなど)で表示するようにしてある。
【0033】
中距離モードは、図6に示すように、作業距離が近距離モードより長い場合の作業者に作業内容を表示する表示の仕方であり、少なくとも1つの表示項目の文字サイズが近距離モードより大きく設定されている。その一例として、ここでは設定トルク表示欄S3及び測定トルク表示欄S4の文字サイズが近距離モードよりも大きいサイズに設定されている。
具体的にこの中距離モードでは、上述した近距離モードのうち、コメント表示欄S10が削除されており、近距離モードに加えて、作業の進捗が表示される進捗表示欄S11が設けられている。ここでの進捗表示欄S11は、締め付け作業において締め付けるボルトの数(作業数)及びそのうちの合格数を表示する合格数/作業数表示欄S11である。なお、この中距離モードにおいても、近距離モードと同様、再設定ボタンB1や表示切替ボタンB2が表示されている。
【0034】
この中距離モードでは、近距離モードと同様、作業対象表示欄S9の表示領域が最も大きく、この作業対象表示欄S9の表示内容も近距離モードと同様である。
【0035】
遠距離モードは、図7に示すように、作業距離が中距離モードよりは長い場合の作業者に作業内容を表示する表示の仕方であり、少なくとも1つの表示項目も文字サイズが中距離モードより大きく設定されている。その一例として、ここでは合格数/作業数表示欄S11の文字サイズが中距離モードよりも大きく設定されている。
具体的に遠距離モードでは、上述した近距離モードのうち、作業対象表示欄S9が削除されており、中距離モードと同様に合格数/作業数表示欄S11が設けられている。
【0036】
この遠距離モードでは、合格数/作業数表示欄S11の表示領域が最も大きい。ここでの合格数/作業数表示欄S11の文字サイズは、他の表示欄の文字サイズよりも大きく、近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードにおける全ての表示欄のうち、最も大きい文字サイズに設定されている。
【0037】
表示モード受付部23は、表示モード記憶部22に記憶されている複数の表示モードの中から例えば作業者が選択した表示モードを受け付けるものである。
ここでは、作業手順毎に作業者が表示モードを選択できるように構成されている。具体的には、図4に示すように、ディスプレイDに表示されたモード選択画面に、作業モードを選択するためのモード選択ボタンB3が表示されており、作業者は例えばマウスやキーボードやタッチパネルなどの入力手段を用いて何れか1つのモード選択ボタンB3を選択することで、作業手順毎に表示モードを設定することができる。
なお、ここでのモード選択ボタンには、は近距離モードを示す識別子をモード1、中距離モードを示す識別子をモード2、遠距離モードを示す識別子をモード3が記載されている。
【0038】
この表示モード受付部23は、作業手順毎に選択された表示モードを受け付けると、その作業手順と選択された表示モードとを紐付けて上述した作業手順記憶部21に記憶させる。これにより、作業手順記憶部21には、図3に示すように、1つの作業データに含まれる複数の手順名それぞれに表示モードが紐付けられて記憶されている。
【0039】
ここでの作業手順記憶部21は、少なくとも作業前に紐付けられた作業手順と表示モードとの組み合わせをデフォルトデータとして記憶している。このデフォルトデータは、変更可能なものであり、例えば作業者が作業中にその作業内容の表示に用いられている表示モードとは別の表示モードを入力した場合、表示モード受付部23がその別の表示モードを受け付け、デフォルトデータが更新されて作業手順記憶部21に記憶される。
【0040】
表示制御部24は、作業開始後に作業内容を作業手順毎に切り替えてディスプレイDに表示するものである。ここでの表示制御部24は、作業手順記憶部21に記憶されている作業手順と表示モードとの組み合わせを参照して、作業手順毎の作業内容を選択された表示モードで表示する。
【0041】
より具体的に説明すると、図4に示す作業手順と表示モードとの組み合わせが作業手順記憶部21に記憶されている場合、表示制御部24は、第1作業である翼の締結の作業内容を近距離モードで表示し、この第1作業が終了すると、次の第2作業であるその他の作業内容を遠距離モードで表示し、この第2作業が終了すると、次の第3作業である管理の作業内容を近距離モードで表示し、この第3作業が終了すると、次の第4作業である測定の作業内容を中距離モードで表示する。
【0042】
このように構成された工具システム100によれば、作業手順毎の作業距離に応じて表示モードを近距離モード、中距離モード、又は遠距離モードの中から柔軟に選択することができ、その選択された表示モードによる作業内容が作業手順毎に切り替わるので、作業者にとっての使い勝手を良くすることができる。
【0043】
また、作業中に表示モードを変更できるように構成されているので、例えば作業者の熟練度合いなどに応じて、表示モードをより柔軟に選択することができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0045】
例えば、前記実施形態では、ボルトの締め付け作業における近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードについて説明したが、これらの表示モードは、例えば設定トルクを入力する設定画面や、装置の寸法測定をする寸法測定画面など、種々の作業において適用可能である。
【0046】
また、表示モードの選択は、必ずしも近距離モード、中距離モード、及び遠距離モードに限定されるものではなく、4つ以上の表示モードの中から選択できるようにしても良いし、2つの表示モードの中から選択できるようにしても良い。
【0047】
さらに、作業者や工具10と表示機器20との距離、又は、作業者や工具10の位置に応じて、表示モードが自動的に切り替わるように構成されていても良い。具体的には、作業者が表示機器20から離れた場合に、表示モードを近距離モードから中距離モード、或いは、中距離モードから遠距離モードに切り替えたり、作業者が表示機器20に近づいた場合に、表示モードを遠距離モードから中距離モード、或いは、中距離モードから近距離モードに切り替えるようにしても良い。
【0048】
加えて、表示機器20は作業内容をディスプレイDに表示するものに限らず、スクリーンや壁面に表示するものであっても良い。
【0049】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
100・・・工具システム
10 ・・・工具
20 ・・・表示機器
21 ・・・作業手順記憶部
22 ・・・表示モード記憶部
23 ・・・表示モード受付部
24 ・・・表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7