(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】パルスエネルギー源を使用して生体組織を熱処理するための方法
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20220817BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20220817BHJP
A61N 7/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61F7/00 320Z
A61B18/18 100
A61N7/02
A61F7/00 322
(21)【出願番号】P 2018507578
(86)(22)【出願日】2016-08-08
(86)【国際出願番号】 US2016046043
(87)【国際公開番号】W WO2017074532
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-08-01
(32)【優先日】2016-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516120205
【氏名又は名称】オーハイ レチナル テクノロジー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ラトラル,ジェフリー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン,デイビッド ビー.
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリス,ベンジャミン ダブリュ.エル.
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-501960(JP,A)
【文献】特表2015-527176(JP,A)
【文献】特開平02-252469(JP,A)
【文献】特表2006-519784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0049180(US,A1)
【文献】特表2008-500846(JP,A)
【文献】特表2003-521305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61B 18/18
A61N 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3乃至6MHzの周波
数および、10%以下のデューティサイクルを含
み、1秒未満の全パルス列持続時間をもつエネルギーパラメーターを有する
無線周波数パルスエネルギー源(16)を特徴と
する生体組織を熱処理するのに適したシステムであって、前記
無線周波数パルスエネルギー源(16)は、1秒未満の全パルス列持続時間にわたって標的組織(18)に前記パルスエネルギー源(16)を少なくとも適用している間、標的の組織温度の上昇を摂氏6°Cから摂氏11°Cに維持し、
標的組織を永久的に破損しないように
、6分以下にわたる標的の組織の平均温度の上昇は摂氏1°C以下で維持され
てなる、
ことを特徴とする生体組織を熱処理するのに適したシステム。
【請求項2】
無線周波数パルスエネルギー源(16)は標的組織中の熱ショックタンパク質の活性化を刺激する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記無線周波数パルスエネルギー源(16)のエネルギーパラメーターは、およそ20~40ジュールのエネルギーが各立方センチメートルの標的組織に吸収されるように選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記無線周波数パルスエネルギー源を標的組織に適用するために身体の空洞へ挿入可能な装置(14)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記無線周波数パルスエネルギー源(16)は標的組織(18)の近くの血液供給に適用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記無線周波数パルスエネルギー源(16)は、およ
そ2.5%から5%の間のデューティサイクル、および、およそ0.2~0.4秒の間のパルス列持続時間を含み、好ましくは、およそ2~6mmのコイル半径とおよそ13~57のアンペア回数を有する装置で生成される、請求項1
乃至5のいずれか
1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、生体組織を熱処理するための方法を対象としている。特に、本発明は、組織を破損することなく、熱ショックタンパク質の活性化を刺激し、かつタンパク質修復を促すために、生体組織にパルスエネルギー源を適用する方法を対象としている。
【0002】
発明者らは、生体組織の温度を最大であらかじめ決められた温度範囲まで制御可能に引き上げつつ、標的組織を永久的に破損しないように生体組織の平均温度の上昇を数分間にわたってあらかじめ決められたレベル以下で維持することによって、生体組織に対して、とりわけ破損したあるいは病気の生体組織に対して治療効果があることを発見した。こうした制御された手法で組織温度を上昇させることは、熱ショックタンパク質の活性化および/またはタンパク質修復の産生と促進を選択的に刺激すると信じられており、これは組織を治療的に処置するためのメカニズムとして役立つ。
【0003】
熱ショックタンパク質(HSP)は、ストレスの多い条件への露出に応答して細胞によって生成されるタンパク質のファミリーである。高レベルの熱ショックタンパク質の産生は、感染、燃焼、運動、毒素への細胞の曝露、飢餓、低酸素症あるいは水の欠乏などの様々な種類の環境ストレス条件への暴露が引き金となって生じ得る。
【0004】
熱ショックタンパク質は、ウィルス感染、燃焼、悪性形質転換、酸化剤への暴露、細胞毒素、および酸素欠乏を含む、体組織の中の多くの異常状態に応答する際にある役割を果たすことが知られている。HSPファミリーの他のタンパク質およびメンバーのための細胞内シャペロンとしてのいくつかの熱ショックタンパク質の機能は、タンパク質の維持と、ストレスが多くない条件下での細胞のタンパク質のモニタリングとにおけるそれらの本質的な役割ゆえに、低~中程度のレベルで発現されるか、活性化される。こうした活性は、細胞のストレス応答あるいは熱ショック応答と呼ばれる細胞自体の修復システムの一部である。
【0005】
熱ショックタンパク質は典型的にはその分子量に従って名付けられる。例えば、Hsp60、Hsp70、およびHsp80は、それぞれサイズが約60、約70、および約80キロダルトンの熱ショックタンパク質のファミリーを指す。これらは多くの様々な方法で作用する。例えば、Hsp70は、折り畳まれていない、組み立て可能な状態のタンパク質構造を安定させる、ペプチド結合とATPアーゼドメインを有する。ミトコンドリアHsp60sは、タンパク質の組み立てを天然の状態へと促すリング状構造体を形成する。Hsp90は、細胞のチロシンキナーゼ、転写因子、およびグルココルチコイド受容体と結合することにより、抑制遺伝子の制御的な役割を果たす。Hsp27はタンパク質凝集を抑える。
【0006】
Hsp70熱ショックタンパク質は、抗原の結合とその抗原の免疫系への提示とに関与する、細胞外および膜結合型の熱ショックタンパク質のメンバーである。Hsp70は、インフルエンザA型ウィルスリボ核タンパクの活性を阻害し、ウィルスの複製を阻止することが分かっている。腫瘍に由来する熱ショックタンパク質は特定の防御免疫を誘発する。実験の観察と臨床的な観察によると、熱ショックタンパク質が自己免疫性関節炎、真性1型糖尿病、動脈硬化症、多発性硬化症、および他の自己免疫反応の制御に関与していることを示した。
【0007】
これに応じて、短時間、あらかじめ決められた温度範囲まで標的の組織温度を選択的かつ制御可能に上昇させ、一方でより長い時間にわたってあらかじめ決められた温度で標的組織の平均温度の上昇を維持することができることは有利であると信じられている。これは、感染あるいは他の異常に応じて体組織中の熱ショックタンパク質の数または活性を増加させるために熱ショック応答を引き起こすと信じられている。しかしながら、これは、処置されている組織あるいは身体の領域を破損したり破壊したりしないように制御されたやり方で行われなければならない。本発明はこうしたニーズを満たし、他の関連する利点を与える。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、標的組織を治療的に処置するために、標的組織にパルスエネルギー源を適用することにより、生体組織を熱処理するための方法を対象としている。パルスエネルギー源は、波長または周波数、デューティーサイクル、およびパルス列持続時間を含むエネルギーパラメーターを有する。エネルギーパラメーターは、治療効果を達成するために最大で11°Cまで標的の組織温度を上げるように選択され、ここで、数分にわたる組織の平均温度の上昇は、標的組織を永久的に破損しないようにあらかじめ決められたレベル以下で維持される。
【0009】
標的の組織温度が少なくとも標的組織へのパルスエネルギー源の適用中にほぼ6°C~11°Cの間に上げられるように、エネルギー源パラメーターは選択されてもよい。数分にわたる標的組織の平均温度の上昇は、数分間にわたって1°C以下などの6°C以下で維持される。
【0010】
およそ20~40ジュールのエネルギーが立方センチメートル毎の標的組織に吸収されるように、パルスエネルギー源エネルギーパラメーターは選択される。標的組織にパルスエネルギー源を適用することは、熱ショック応答を誘発し、標的組織を破損することなく、標的組織中の熱ショックタンパク質の活性化を刺激する。
【0011】
装置は組織にパルスエネルギーを適用するために身体の空洞へ挿入されてもよい。パルスエネルギーは、標的組織に隣接している身体の外側領域、あるいはその表面近くで血液供給がある身体の外側領域に適用されてもよい。
【0012】
パルスエネルギー源は無線周波数を含むこともある。無線周波数はおよそ3~6メガヘルツ(MHz)の間であってもよい。それはおよそ2.5%から5%の間のデューティーサイクルを有することもある。それはおよそ0.2~0.4秒の間のパルス列持続時間を有することもある。無線周波数はおよそ2~6mmのコイル半径とおよそ13~57のアンペア回数を有する装置で生成されてもよい。
【0013】
パルスエネルギー源は10~20ギガヘルツ(GHz)のマイクロ波周波数を含むこともある。マイクロ波はおよそ0.2~0.6秒のパルス列持続時間を有することもある。マイクロ波はおよそ2%~5%のデューティーサイクルを有することもある。マイクロ波はおよそ8~52ワットの平均電力を有することもある。
【0014】
パルスエネルギー源は、レーザー光などのパルス光線を含むこともある。パルス光線はおよそ530nm~1300nm、より好ましくは800nm~1000nmの波長を有することもある。パルス光線はおよそ0.5~74ワットの電力を有することもある。パルス光線は10%未満の、好ましくは2.5%~5%のデューティーサイクルを有する。パルス光線はおよそ0.1~0.6秒のパルス列持続時間を有することもある。
【0015】
パルスエネルギー源はパルス超音波を含むこともある。超音波はおよそ1~5MHzの周波数を有する。超音波はおよそ0.1~0.5秒の列持続時間を有する。超音波はおよそ2%~10%のデューティーサイクルを有することもある。超音波はおよそ0.46~28.6ワットの電力を有する。
【0016】
本発明の他の特徴と利点は、例として、本発明の原則を例証する添付の図面と共に、以下の詳細な記載から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下の添付の図面は本発明を例証する。
【
図1A】レーザー源の半径とレーザーのパルス列持続時間と比較した、レーザー源の平均電力を例証するグラフである。
【
図1B】レーザー源の半径とレーザーのパルス列持続時間と比較した、レーザー源の平均電力を例証するグラフである。
【
図2A】レーザー源の半径と波長に応じて減衰する温度に関する時間を例証するグラフである。
【
図2B】レーザー源の半径と波長に応じて減衰する温度に関する時間を例証するグラフである。
【
図3】様々な無線周波数、デューティーサイクル、およびコイル型半径に関するピークアンペア回数を例証するグラフである。
【
図4】様々な無線周波数、デューティーサイクル、およびコイル型半径に関するピークアンペア回数を例証するグラフである。
【
図5】様々な無線周波数、デューティーサイクル、およびコイル型半径に関するピークアンペア回数を例証するグラフである。
【
図6】様々な無線周波数、デューティーサイクル、およびコイル型半径に関するピークアンペア回数を例証するグラフである。
【
図7】温度上昇が無線周波数コイル半径と比較して、減衰する温度上昇に関する時間を描くグラフである。
【
図8】マイクロ波周波数とパルス列の持続時間と比較した平均マイクロ波電力を描くグラフである。
【
図9】マイクロ波周波数とパルス列の持続時間と比較した平均マイクロ波電力を描くグラフである。
【
図10】様々なマイクロ波周波数について減衰する温度に関する時間を描くグラフである。
【
図11】周波数とパルス列持続時間と比較した、平均超音波源の電力を描くグラフである。
【
図12】様々な超音波周波数について温度減衰の時間を描くグラフである。
【
図13】様々な超音波周波数について温度減衰の時間を描くグラフである。
【
図14】超音波周波数と比較した、焦点の加熱領域の体積を描くグラフである。
【
図15】超音波エネルギー源に関して温度割るパルス持続時間の方程式を比較するグラフである。
【
図16】温度とパルス持続時間の関数として損傷とHSP活性化アレニウス積分の対数の振幅を例証するグラフである。
【
図17】温度とパルス持続時間の関数として損傷とHSP活性化アレニウス積分の対数の振幅を例証するグラフである。
【
図18】本発明に係る、時系列のパルスを生成する光生成ユニットであって、そこから伸びる光導波路を備える、光生成ユニットの概略図である。
【
図19】本発明に係る、標的組織に電磁エネルギーを送達する光刺激送達装置の断面図である。
【
図20】本発明に係る、レーザー光線を生成するために使用されるシステムを例証する概略図である。
【
図21】本発明に係る、レーザー光の幾何学パターンを生成するために使用される光学系の概略図である。
【
図22】本発明に係る、組織を処理するためのレーザー光線を生成するために使用されるシステムの代替的な実施形態を例証する概略図である。
【
図23】本発明に従って組織を処理するレーザー光線を生成するために使用されるシステムのさらに別の実施形態を例証する概略図である。
【
図24】本発明に従って、鼻腔に挿入されて、組織を処置する内視鏡の端部の断面概略図である。
【
図25】本発明に従って、気管を通って肺の気管支へ伸び、そこで処置を施す気管支鏡の概略的な部分断面図である。
【
図26】本発明に従って、身体の腸または結腸領域に光刺激を与える結腸内視鏡の概略図である。
【
図27】本発明に従って、胃に挿入され、そこに処置を施す内視鏡の概略図である。
【
図28】本発明に従って使用される、カプセル内視鏡の部分断面斜視図である。
【
図29】本発明に従って身体の内部の組織を処置するためのパルス高密度焦点式超音波高強度の概略図である。
【
図30】本発明に従って、耳たぶを通って患者の血流に治療を提供するための概略図である。
【
図31】本発明に従って、耳たぶを通って、血液に光刺激を送達する際に使用される本発明の刺激治療装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面で示されるように、および本明細書で十分に記載されるように、本発明は、治療効果を達成する十分なレベルにまで短時間に組織温度を上昇させ、その一方で、永久的な組織損傷を回避するべくあらかじめ決められたレベル未満で長時間にわたって平均組織温度を維持するために、組織中で熱的な時間経過を引き起こすように選択されるエネルギーパラメーターを有する、レーザー、超音波、紫外線無線周波数、マイクロ波無線周波数などのパルスエネルギー源を伝達するためのシステムと方法を対象としている。熱的な時間経過が形成されることで、いかなる損傷も引き起こすことなく、熱ショックタンパク質の活性化または生成を刺激し、かつタンパク質修復を促進すると信じられている。
【0019】
本発明の発明者らは、様々な波長のレーザー光の形態の電磁放射が、網膜の組織を破壊または破損しない方法で網膜組織に適用可能であり、一方で眼疾患に対する有益な効果を奏することが可能であるということを発見した。これは、熱ショックタンパク質の刺激と活性化、および網膜組織中のタンパク質修復の促進に、少なくとも部分的によるものであり得ると信じられている。これは、2015年1月28日に出願された米国特許出願番号14/607,959、2013年3月13日に出願された米国特許出願13/798,523、および2012年5月25日に出願された13/481,124に開示され、これらの文献の内容は、十分に参照されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
発明者は、治療的であるが、網膜組織の細胞に対して依然として致死量以下であり、ゆえに目の網膜組織の予防的かつ保護的な処置をもたらす網膜組織中の光凝固を破損しない、レーザー光線を生成できることを発見した。選択パラメーターの組み合わせが永久的に組織を破損することなく治療効果を達成するように、光線の各種パラメーターを考慮に入れて選択しなければならない。これらのパラメーターはレーザー波長、レーザー源の半径、平均的なレーザー電力、合計パルス持続時間、およびパルス列のデューティーサイクルを含む。
【0021】
これらのパラメーターの選択は、HSP活性化に関するアレニウス1よりも大きいことを要求することにより決定されることもある。アレニウス積分は生体組織に対する作用の影響を分析のために使用される。例えば、The CRC Handbook of Thermal Engineering, ed. Frank Kreith, Springer Science and Business Media (2000)を参照。同時に、選択されたパラメーターは永久的に組織を破損してはならない。したがって、損傷に関するアレニウス積分を用いることもあり、解かれたアレニウス積分は1未満である。あるいは、単位グラムの組織あたりのエネルギー沈着と、数分間にわたって測定されるような温度上昇とに対するFDA/FCCの制約は、永久的な組織損傷を回避するように満たされなければならない。例えば、エネルギー沈着と温度上昇に関するFDA/FCCの要件は一般に使用され、例えば、電磁気ソースについては、www.fda.gov/medicaldevices/deviceregulationandguidance/guidancedocuments/ucm073817.htm#attachaで、超音波ソースについては、Anastosio and P. LaRivero, ed., Emerging Imaging Technologies. CRC Press (2012)で参照され得る。概して言えば、6°C~11°Cの間での組織温度上昇は、熱ショックタンパク質を活性化するなどして治療効果を生み出すことができ、特定の環境下で、長時間にわたって、例えば、6分間などの数分間にわたって、あらかじめ決められた温度以下に、例えば、6°Cおよび1°C以下などに平均組織温度を維持することで、永久的に組織は損傷されない。
【0022】
発明者らは、あらかじめ定められた強度または電力と、あらかじめ定められたパルス幅または暴露期間で、532nmよりも大きな波長と10%未満のデューティーサイクルを有する、閾値以下で致死量以下のマイクロパルスレーザー光線を生成することで、目に見える熱傷領域あるいは組織破壊を伴うことなく望ましい網膜の光刺激が作成されることを発見した。具体的には、550nm-1300nmの波長、とりわけ、好ましい実施形態では、810nm-1000nmの波長を有し、ほぼ2.5%-5%のデューティーサイクル、およびあらかじめ定められた強度または電力(網膜で1平方センチメートル当たり100-590ワット、あるいは、網膜の各処置スポットに関して1つのレーザースポット当たりおよそ1ワット)、および、あらかじめ定められたパルス幅または暴露期間(100~600ミリ秒以下など)を有するレーザー光線は、致死量以下の「正確な閾値以下」の網膜光刺激を形成し、ここで、レーザー照射に露出された網膜色素上皮の領域はすべて保護され、治療的に貢献するために利用可能である。言い換えれば、発明者らは、網膜組織を破壊したり、燃焼させたり、あるいは他の方法で破損させたりすることなく、網膜組織を少なくとも治療レベルであるが、細胞または組織の致死レベル未満まで上昇させることにより、従来方法のハロー効果の利点が再形成されることを発見した。これは閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー療法(SDM)と本明細書では呼ばれる。
【0023】
SDMはレーザーにより誘発された網膜障害(光凝固)を生成せず、既知の有害な処置効果を有しておらず、多くの網膜障害(糖尿病性黄斑浮腫(DME)増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)による黄斑浮腫、中心性漿液性網脈絡膜症(CSR)、薬剤耐性の逆転、および乾燥した加齢黄斑変性、シュタルガルト病、錐体ジストロフィー、および網膜色素変性症などの進行性の変性網膜症の予防療法)の効果的な処置であることが報告されている。SDMの安全性は、それが、初期の窩を含むDMEによる視力喪失のリスクを減らすために、20/20の視力を備えた目の中で中心窩的に(transfoveally )使用され得るような状態である。
【0024】
SDMが作用し得る機構は、熱ショックタンパク質(HSP)の生成または活性化である。様々な起こり得る細胞の異常がほとんど無限にあるにもかかわらず、すべてのタイプの細胞は共通する高度に保存された修復のメカニズム:熱ショックタンパク質(HSP)を共有する。HSPは、ほとんどあらゆるタイプの細胞のストレスあるいは損傷によって、即座に、数秒から数分で誘発される。 致死的な細胞障害のない状態で、HSPは、生細胞をより正常な機能的状態へと修復および回復させるのに極めて有効である。HSPは、一時的なものであり、一般に数時間でピークに達し、数日間持続するが、その効果は長く永続することもある。HSPは多くの障害の共通因子である炎症を減らす。
【0025】
レーザー療法はHSPの生成または活性化を誘発し、サイトカイン発現を変更することがある。致死的でない細胞ストレス(レーザー照射など)が突発的かつ重度なものであればあるほど、HSP活性化はますます迅速かつ強固なものとなる。ゆえに、各SDM露光によってもたらされる非常に急速な変化速度(各々100μsのマイクロパルスで7°Cまでの上昇、あるいは70,000°C/秒)での突発的な反復的な低温の熱スパイクは、とりわけ、低い平均組織温度上昇のみを繰り返す(duplicate)こともある連続波レーザーによる閾値以下の処置に対する致死的ではない暴露と比較して、HSPの活性化を刺激する際に特に有効である。
【0026】
550nm未満のレーザー波長はますます細胞毒性の光化学効果を生み出す。810nmで、SDMは、光化学的というよりもむしろ、光熱的な細胞ストレスを生成する。したがって、SDMはそれを破損することなく、組織に影響を与えることができる。したがって、SDMの臨床的な利点は、病的以下の光熱的な細胞HSP活性化によって主として生成される。機能障害の細胞では、SDMによるHSP刺激は、標準化されたサイトカイン発現と、その結果として改善された構造と機能をもたらす。その後、この「低強度」レーザー/組織の相互作用の治療効果は、「高密度」レーザー適用によって増幅され、病状の領域をすべて含む大きな組織領域を密に/集密的に処置することによって、標的とされた組織領域のすべての機能障害の細胞を補充して、それによって処置効果を最大化する。これらの原則は、本明細書に記載されるSDMの処置戦略を定義する。
【0027】
正常に機能する細胞は修復を必要としないため、正常細胞中のHSP刺激は、顕著な臨床効果を有さない傾向がある。様々な細胞タイプに対する、病気の細胞に影響を及ぼすが正常な細胞には影響を及ぼさない、SDMなどの近赤外レーザー効果の「病原性-選択性(patho-selectivity)」は、SDMの臨床観察と一致している。SDMは、American National Standards Institute“Maximum Permissible Exposure”の予測と一致している、網膜レーザーモダリティの中で固有の臨床的に広範な治療領域を有することがと報告されている。SDMはエントロピー(entropic)タンパク質のアンフォールディングおよび脱凝集などの直接的な光熱効果を引き起こすこともあるが、SDMは、HSP媒介性の修復の臨床的に安全かつ有効な刺激のために最適化されているように思われる。
【0028】
上記のように、HSPのSDM刺激が疾患プロセスに関して非特異性である一方で、HSPを媒介とする修復の結果は機能不全の状態に特有のそれ自体の性質による。HSPは、間違いが何であってもそれを修復する傾向がある。したがって、BRVO、DME、PDR、CSR、年齢関連および遺伝学的な網膜症、ならびに薬物耐性のあるNAMDほど広範に異なる網膜の状態におけるSDMの観察された効果。概念的に、この能力は、SDM作用の「デフォルトにリセット(Reset to Default)」モードの一種とみなされ得る。細胞の機能が危機的である広範な障害について、SDMは、HSPを媒介とする細胞の修復によって、(「工場出荷時の設定(factory default settings)」に)「リセット(reset)」のトリガーを引くことにより細胞の機能を標準化する、
【0029】
発明者らは、加齢黄斑変性(AMD)に苦しむ患者のSDM処置が、進行を遅らせ、AMDの進行を止めることさえできるということを発見した。患者のほとんどで、SDM治療後にダイナミックな機能的logMARの薄明視の視力と薄明視の対比視力において有意な改善が見られた。SDMは網膜色素上皮(RPE)の機能を標的化し、保護し、および「標準化する」(正常に近づく)ことにより作用すると考えられている。
【0030】
SDMは、全身に真性糖尿病が持続しているにもかかわらず、治療に関連する損傷あるいは副作用を伴わずに、糖尿病性網膜症疾患状態の徴候を止めるか撤回させることも分かっている。これに基づき、SDMは、糖尿病に罹患したRPE細胞において、通常の細胞機能への復帰とサイトカイン発現を誘発することによって(工場出荷時の設定を回復するために電子デバイスの「リセット」ボタンを押すことに似ている)作用し得ると仮定される。上記の情報と研究に基づいて、SDM処置は、標的とされた組織における熱ショックタンパク質(HSP)活性化によってサイトカイン発現に直接影響を与えることもある。
【0031】
熱ショックタンパク質が目の組織以外に体組織の多くの異常状態に応答する際にある役割を果たすことから、そのような異常状態、感染などを処置する際に同様の系や方法を有利に使用できると信じられている。そのため、本発明は、内視鏡あるいは表面プローブのファイバーオプティクスや、焦点式電磁気/音波によって到達可能な炎症、自己免疫疾患、および癌を含む異常状態を処置するために、超音波または電磁放射の制御された適用を対象としている。例えば、転移する恐れが最も高い前立腺の表面の癌には、直腸鏡のファイバーオプティクスにより到達可能である。結腸腫瘍には、結腸内視鏡検査で使用されるもののような光ファイバーシステムによって到達可能である。
【0032】
上に示されるように、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)光刺激は、目の組織中のわずかにミスフォールドされたタンパク質の直接修復を刺激するのに効果的であった。HSP活性化に加えて、これは別の方法でも生じ得る。なぜなら、熱的な時間経過の形をしたマイクロパルスによって引き起こされた温度のスパイクがタンパク質内部の水の拡散を可能にし、これが、タンパク質がその天然の状態に戻るのを防ぐペプチド-ペプチド水素結合の切断を可能にするからである。タンパク質への水の拡散により、抑制的な水素結合の数が約1000倍増加する。したがって、このプロセスを他の疾患にも有利に適用することができると信じられている。
【0033】
上で説明されるように、標的組織に適用されるエネルギー源は、治療効果を達成しつつ、永久的に組織を破損しないように決定および選択されなければならない、エネルギーおよび動作パラメーターを有する。一例として、レーザー光線などの光線エネルギー源を使用して、レーザー波長、デューティーサイクル、および合計のパルス列持続時間パラメーターを考慮に入れなければならない。考慮できる他のパラメーターは、平均レーザー電力と同様にレーザー源の半径を含んでいる。こうしたパラメーターの1つを調節または選択することは、少なくとも1つの他のパラメーターに対する効果を有することもある。
【0034】
図1Aと
図1Bは、レーザー源の半径(0.1cm~0.4cmの間)とパルス列持続時間(0.1~0.6秒)とを比較して、平均電力をワットで示すグラフを例証している。
図1Aは880nmの波長を示し、
図1Bは1000nmの波長を有する。レーザー源の半径が減少し、合計の列持続時間が増大し、および波長が減少するにつれて、必要とされる電力が単調に減少することがこれらの図から見て取れる。レーザー源の半径の好ましいパラメーターは1mm~4mmである。880nmの波長については、電力の最小値は0.55ワットであり、レーザー源の半径は1mmであり、合計のパルス列持続時間は600ミリ秒である。レーザー源の半径が4mmであり、合計のパルス列持続時間が100ミリ秒である場合、880nmの波長のための電力の最大値は52.6ワットである。しかしながら、1000nmの波長を有するレーザーを選択する場合、最小限の電力値は0.77ワットであり、レーザー源の半径は1mmであり、合計のパルス列持続時間は600ミリ秒であり、および、レーザー源の半径が4mmであり、かつ合計のパルス持続時間が100ミリ秒である場合、最大の電力値は73.6ワットである。個々のパルスの間の対応するピーク電力は、デューティーサイクルによって割ることによって平均電力から得られる。
【0035】
加熱される組織部分の体積は、波長、関連する組織中の吸収長、およびビーム幅によって決定される。合計のパルス持続時間と平均レーザー電力は、組織を暖めるために送達された全エネルギーを決定し、パルス列のデューティーサイクルは関連するスパイクまたはピーク、平均レーザー電力に関連する電力を与える。好ましくは、およそ20~40ジュールのエネルギーが立方センチメートル毎の標的組織に吸収されるように、パルスエネルギー源エネルギーパラメーターは選択される。
【0036】
吸収長は、網膜の色素上皮中の薄いメラニン層では非常に小さい。身体の他の部分では、吸収長は一般にさほど小さくない。400nmから2000nmに及ぶ波長では、侵入深さと皮膚は0.5mm~3.5mmまでの範囲である。ヒト粘液組織への侵入深さ0.5mm~6.8mmの範囲である。これに応じて、加熱される体積は、放射線源が置かれる外側表面または内表面に限定され、そこでは、深さは侵入深さと等しく、横方向の寸法は放射線源の横方向の寸法に等しい。光線エネルギー源が外側表面の近く、あるいは内部接触可能な表面の近くの患部組織を処置するために使用されることから、1mm~4mmの半径を有し、かつ880nmの波長で動作するソースは、およそ2.5mmの侵入深さをもたらし、1000nmの波長で動作するソースはおよそ3.5mmの侵入深さをもたらす。
【0037】
本発明の治療効果を生み出しつつ、標的組織の平均温度を、数分などの長時間にわたって6°C未満または1°C未満などの低い温度範囲に維持するために、1秒未満などの短時間にわたって最大で約11°Cに標的組織を加熱することができることが分かっている。デューティーサイクルと合計のパルス列持続時間の選択は、熱が消散し得る時間間隔を提供する。10%未満、好ましくは2.5%~5%の間のデューティーサイクルは、100ミリ秒~600ミリ秒の合計のパルス持続時間とともに、効果的であることが分かった。
図2Aと
図2Bは、波長が
図2Aで880nmであり、
図2Bで1000nmである、0.1cm~0.4cmの半径を有するレーザー源に関して10°C~1°Cまでに減衰する時間を例証する。880nmの波長を使用する場合、減衰する時間はより短いが、いずれかの波長は、永久的な組織損傷を引き起こすことなく本発明の利点を達成するための許容可能な要件と動作パラメーターの範囲に入る。
【0038】
総照射期間の間の、少なくとも6℃から最大11℃まで、および好ましくはおよそ10℃に増大する望ましい標的領域の平均温度上昇が、結果としてHSP活性化をもたらすことが分かった。標的組織温度の制御は、ソースおよび標的パラメーターを選ぶことによって判定され、それによって、HSP活性化に対するアレニウス積分は1より大きく、同時に損傷または1未満である損傷アレニウス積分を回避するための保守的なFDA/FCC要件を有するコンプライアンスを保証する。
【0039】
永久的な組織損傷を回避する保守的なFDA/FCC制約を満たすために、光線および他の電磁放射線源に関して、6分の期間にわたる標的組織の平均温度上昇は1℃以下である。上記の
図2Aおよび2Bは、加熱された標的領域における温度が、およそ10℃から1℃までの温度上昇から熱拡散によって減少するのに必要とされる典型的な減衰時間を例証し、
図2Aで見られるように、波長が880nmであり、ソース直径が1ミリメートルであるときに、温度減衰時間は16秒である。ソース直径が4mmであるときに、温度減衰時間は107秒である。
図2Bで示されるように、波長が1000nmであると、ソース直径が4mmであるときに温度減衰時間は18秒であり、ソース直径が1mmであるときに温度減衰時間は136秒である。これは、6分以下などの数分にわたって維持されている平均温度上昇の時間内に十分にある。標的組織の温度が、組織へのエネルギー源の適用の間に、1秒の何分の1など、非常に速く、およそ10℃などまで上昇されるが、比較的低いデューティーサイクルは、組織に適用されたエネルギーのパルス間の比較的長い期間を提供し、比較的短いパルス列持続時間は、永久的な組織損傷がない、6分以下などの数分を含む比較的短期間内の十分な温度の拡散および減衰を確かなものとする。
【0040】
パラメーターは、マイクロ波、赤外線レーザー、無線周波数および超音波を含む、個々のエネルギー源によって異なり、これは、組織の吸収特性がこれらの異なるタイプのエネルギー源によって異なるからである。組織の含水量は組織のタイプによって異なり得るが、処置を設計する際に臨床医によって広く使用される組織パラメーターの公開を可能にした正常条件または正常に近い条件で組織の特性の均一性が観察される。下記は、生体媒質における電磁波の特性を例証する表であり、表1は、高含水量を有する、筋肉、皮膚および組織に関し、表2は、低含水量を有する、脂肪、骨および組織に関する。
【0041】
【0042】
【0043】
体組織における無線周波数の吸収長さは、体尺と比較して長い。結果的に、加熱領域は、吸収長さによってではなくむしろ無線周波数エネルギー源であるコイルの寸法によって判定される。コイルからの長距離rでは、コイルからの磁(近接)場は、1/r3として減衰する(drops off)。より短い距離では、電場および磁場は、磁気ベクトルポテンシャルの点から発現され得、これは順に、第一種および第二種の楕円積分の点から閉形式で発現され得る。加熱は、コイル源自体の寸法にサイズで匹敵する領域においてのみ生じる。したがって、半径によって特徴付けられた領域を優先的に加熱することが望まれる場合、ソースコイル(source coil)は、類似した半径を有するように選ばれる。磁場の1/r3の減衰が原因で、加熱は、半径の半球領域の外側で非常に急速に減衰する。外部または内腔からのみ利用可能な患部組織において無線周波数を使用することが提案されているため、およそ2~6mmのコイル半径を考慮することが合理的である。
【0044】
ソースコイルの半径に加えて、ソースコイルにおけるアンペア回数(NI)は、磁場の大きさおよび空間範囲を与え、無線周波数は、電場の大きさを磁場の大きさに関連づける因子である。加熱は、伝導率の積および電場の二乗に比例する。外部または内部の表面近くにある対象の標的組織に関して、伝導率は、皮膚および粘液の組織についてのものである。パルス列のデューティーサイクルに加えて、パルス列の合計の列持続時間は、どれだけの全エネルギーが組織に送達されるかに影響を与える因子である。
【0045】
無線周波数エネルギー源に対する好ましいパラメーターは、2~6mmのコイル半径、3-6MHzの範囲の無線周波数、0.2~0.4秒の合計のパルス列持続時間、および2.5%から5%の間のデューティーサイクルになるように決定された。
図3-6は、これらのパラメーターが、HSP活性化に対しておよそ1のアレニウス積分をもたらす温度上昇を与えるために変更されると、アンペア回数がどれほど変化するかを示している。
図3に関連して、6MHzのRF周波数、0.2~0.4秒のパルス列持続時間、0.2~0.6cmの間のコイル半径、および5%のデューティーサイクルに関して、ピークアンペア回数(NI)は、0.2cmのコイル半径で13であり、0.6cmのコイル半径で20である。3MHzの周波数に関して、
図4で例証されるように、ピークアンペア回数は、パルス列持続時間が0.4秒、コイル半径が0.6cm、およびデューティーサイクルが5%であるときに、26である。しかしながら、同じ5%のデューティーサイクルでは、ピークアンペア回数は、コイル半径が0.2cmである及びパルス列持続時間が0.2秒であるときに、40である。2.5%のデューティーサイクルが、
図5および
図6において使用される。これは、
図5で例証されるように、0.6cmのコイル半径および0.4秒のパルス列持続時間を有する6MHzの無線周波数に対して18のアンペア回数をもたらし、コイル半径がわずか0.2cmであり、パルス列持続時間が0.2秒であるときに、29のアンペア回数をもたらす。
図6に関連して、2.5%のデューティーサイクルおよび3MHzの無線周波数では、ピークアンペア回数は、パルス列持続時間が0.4秒であり、コイル半径が0.6cmであるときに、36であり、パルス列持続時間が0.2秒であり、コイル半径が0.2cmであるときに、57である。
【0046】
0.2cmから0.6cmの間のコイル半径に対するおよそ10℃からおよそ1℃まで減衰する温度上昇に関する秒単位の時間が、
図7において無線周波数エネルギー源に関して例証されている。温度減衰時間は、無線周波数コイル半径が0.2cmであるときにおよそ37秒であり、無線周波数コイル半径が0.5cmであるときにおよそ233秒である。無線周波数コイル半径が0.6cmであるときに、減衰時間はおよそ336秒であり、これは、まだ減衰時間の許容域内にあるが、その上限である。
【0047】
マイクロ波は、本発明に従って利用することができる別の電磁エネルギー源である。マイクロ波の周波数は組織浸透距離を判定する。円錐のマイクロ波ホーンの利得は、マイクロ波波長と比較して大きく、これは、これらの状況下で、エネルギーが、たいてい狭い前方荷重で放射されることを示している。典型的に、本発明に従って使用されるマイクロ波源は、およそ1センチメートル以下の長さ寸法を有し、したがって、マイクロ波源は波長より小さく、その場合、マイクロ波源は、ダイポールアンテナとして近似する(approximated)ことができる。そのような小さなマイクロ波源は、内部の体腔に挿入するのがより容易であり、外部表面を放射するためにも使用され得る。その場合、加熱領域は、処置されている体組織におけるマイクロ波の吸収長さと等しい半径で半球だけ近似することができる。マイクロ波が、外部表面または内部空洞から利用可能な表面の近くの組織を処置するために使用されるため、10-20GHzの範囲の周波数が使用され、ここで対応する浸透距離は、およそ2mmから4mmの間のみである。
【0048】
マイクロ波エネルギー源を使用する組織の温度上昇は、マイクロ波の平均パワーおよび合計のパルス列持続時間によって決定される。パルス列のデューティーサイクルは、パルスの列での単一パルスにおけるピークパワーを決定する。エネルギー源の半径がおよそ1センチメートル未満であり、10~20GHzの間の周波数が典型的に使用されるため、結果として生じる0.2秒および0.6秒のパルス列持続時間が好ましい。
【0049】
列持続時間が増加し、マイクロ波周波数が増加するにつれ、必要とされる電力は単調に減少する。10GHzの周波数に関して、平均電力は、パルス列持続時間が0.6秒であるときに、18ワットであり、パルス列持続時間が0.2秒であるときに、52ワットである。20GHzのマイクロ波周波数に関して、8ワットの平均電力は、パルス列が0.6秒であるときに使用され、平均電力は、パルス列持続時間がわずか0.2秒であるときに、26ワットであり得る。対応するピーク電力は、平均電力を単にデューティーサイクルで割ることによって得られる。
【0050】
ここで
図8を参照すると、グラフは、10GHzの周波数および0.2秒から0.6秒の間のパルス列持続時間を有するマイクロ波のワットにおける平均マイクロ波パワーを示す。
図9は類似したグラフであるが、20GHzの周波数を有するマイクロ波に対する平均マイクロ波パワーを示している。したがって、合計の列車持続時間およびマイクロ波周波数が変化すると、平均マイクロ波源パワーが変化することが分かる。しかしながら、律則条件は、加熱領域におけるHSP活性化に対するアレニウス積分がおよそ1であるということである。
【0051】
図10を参照すると、グラフは、58MHzから20000MHzの間のマイクロ波周波数と比較した、およそ10℃からおよそ1℃まで減衰する温度に関する秒単位の時間を例証する。マイクロ波周波数の好ましい範囲に対する最小および最大の温度減衰は、マイクロ波周波数が20GHzであるときに、8秒であり、マイクロ波周波数が10GHzであるときに、16秒である。
【0052】
エネルギー源として超音波を利用することによって、表面組織、およびかなり深い組織を含む、体内で深さが変わる組織の加熱が可能になる。体内の超音波の吸収長さは、画像化のためのその広範囲の使用によって証拠づけられるように、かなり長い。したがって、超音波は、体内の深い標的領域に焦点を当てられ得、焦点式超音波ビームの加熱は、主としてビームの略円筒状の焦点領域に集中される。加熱領域は、エアリーディスクの焦点ウエスト、および共焦点パラメーターである、焦点ウエスト領域の長さによって決定された容積を有する。異なる角度でのソースからの複数のビームも使用することができ、加熱は重複する焦点領域で生じる。
【0053】
超音波に関して、組織温度を判定するための関連するパラメーターは、超音波振動子の焦点距離および直径が考慮されるときの、超音波の周波数、合計の列持続時間、およびトランスデューサーパワーである。周波数、焦点距離、および直径は、超音波エネルギーが集中した焦点領域の容積を決定する。処置のための組織の標的容積を含むのは、焦点容積である。直径がおよそ5cmであり、焦点距離がおよそ10cmであるトランスデューサーが、容易に利用可能である。超音波周波数が1~5MHzであり、合計の列持続時間が0.1~0.5秒であるときに、好都合な焦点寸法が達成される。例えば、10cmの焦点距離および5cmのトランスデューサー直径に関して、焦点容積は、5MHzで0.02ccであり、1MHzで2.36ccである。
【0054】
ここで
図11を参照すると、グラフは、周波数(1MHzから5MHzの間)およびパルス列持続時間(0.1~0.5秒)と比較した、ワットでの平均ソース電力を例証する。10cmのトランスデューサー焦点距離および5cmのソース直径が想定された。およそ1のHSP活性化に対するアレニウス積分を与えるのに必要とされる電力は、周波数が増加し、合計の列持続時間が増加するにつれて、単調に減少する。好ましいパラメーターを考慮して、1GHzの周波数および0.5秒のパルス列持続時間に対する最小電力は、5.72ワットであり、一方で1GHzの周波数および0.1秒のパルス列持続時間に対する最大電力は、28.6ワットである。5GHzの周波数に関して、0.5秒のパルス列持続時間に対しては0.046ワットが必要とされ、0.1秒のパルス列持続時間に対しては、0.23ワットが必要とされる。個々のパルスの間の対応するピーク電力は、単にデューティーサイクルで割ることによって得られる。
【0055】
図12は、超音波周波数が1~5MHzであるときに、およそ10℃からおよそ6℃まで拡散または減衰する温度に関する秒単位の時間を例証する。
図13は、1~5MHzの超音波周波数に対するおよそ10℃からおよそ1℃まで減衰する秒単位の時間を例証する。10cmの好ましい焦点距離および5cmのトランスデューサー直径に関して、温度減衰に対する最大時間は、超音波周波数が1MHzであるときに、366秒であり、最小温度減衰は、マイクロ波周波数が5MHzであるときに、15秒である。温度上昇が分単位の試験時間に対して6℃未満であることのみをFDAが要求するため、数分間にわたって1℃の上昇になる1MHzでの366秒の減衰時間が可能である。
図12および
図13で見られ得るように、6℃の上昇までの減衰時間は、1℃の上昇よりもおよそ70倍はるかに短い。
【0056】
図14は、1~5MHzの間の超音波周波数と比較した、立方センチメートルでの焦点加熱領域の容積を例証する。1~5MHzの範囲の超音波周波数を考慮すると、これらの周波数に対する対応する焦点サイズは、3.7mmから0.6mmの範囲であり、焦点領域の長さは、5.6cmから1.2cmの範囲である。対応する治療容積は、およそ2.4ccから0.02ccの間の範囲である。
【0057】
1を超える望ましいHSP活性化のアレニウス積分および1未満の損傷のアレニウス積分を考慮するパラメーターの例は、5.8-17ワットの合計の超音波電力、0.5秒のパルス持続時間、5秒のパルスの間隔であり、50秒の合計のパルス列時間内で合計10のパルス数を有している。標的の治療容積は一側面上でおよそ1mmとなる。複数の同時に適用された隣接しているが別々に間隔を置かれた列において超音波を適用することによって、より大きな治療容積が、レーザー回折された光学システムに類似した超音波システムにより処置可能であり得る。複数の焦点式超音波ビームは、身体内の非常に小さな処置標的に集まり、これによって、標的における重複するビーム以外における最小の加熱が可能になる。この領域は加熱され、一時的な高温スパイクによって、HSPの活性化を刺激し、タンパク質修復を促進する。しかしながら、本発明のパルス状の態様に加えて、与えられた時間で処置されている比較的小さな領域も考慮すると、処置は、長期間(分)の平均温度上昇<1Kに対するFDA/FCC要件に従っている。疼痛および筋肉緊張の既存の温熱療法での処置との本発明の重要な相違は、既存の技術には高いTスパイクがなく、細胞レベルでの治癒を提供するためにHSPを効率的に活性化する及びタンパク質修復を促進する必要があることである。
【0058】
治療上のHSPの活性化およびタンパク質修復の促進が関係する限り、エネルギー送達のパルス列モードは、エネルギー送達の単一パルスまたは段階的なモードとは異なる利点を有する。この利点については2つの考察がある:
まず、SDMエネルギー送達モードにおけるHSP活性化およびタンパク質修復に対する大きな利点は、およそ10℃のスパイク温度の生成から生じる。この大きな温度上昇は、活性化されるHSPの数を定量的に記述するアレニウス積分およびタンパク質修復を促進するタンパク質への水拡散の速度に対して大きな影響を与える。これは、温度が、大きな増幅効果を有する指数関数(exponential)に入るからである。
【0059】
温度上昇が長い間高値(10℃以上)でとどまらないことが重要であり、なぜなら、これは、分単位の期間にわたっては平均温度上昇が1℃(超音波の場合には6℃)未満でなければならない、FDAおよびFCCの要件に違反するためである。
【0060】
エネルギー送達のSDMモードは、パワー、パルス時間、パルス間隔、および処置される標的領域の容積の賢明な選択によって、これらの先の考察を両方とも一意的に満たす。長期間の平均温度上昇が、超音波周波数に対して6℃および電磁放射線エネルギー源に対して1℃以下の長期間のFDA/FCC限界を超えないように、温度が、かなり急速におよそ10℃のその高値から減衰しなければならないため、治療領域の容積が入る(enters)。
【0061】
長さ寸法Lの領域に関して、ピーク温度が組織中でe倍(e-fold)となるのにかかる時間は、およそL2/16Dであり、ここで、D=0.00143cm2/秒は、典型的な熱拡散係数である。例えば、L=1mmの場合、減衰時間はおよそ0.4秒である。したがって、側面上の1mmの領域に関して、5秒のパルスの間隔で、各々の持続時間が0.5秒である、10のパルスから成る列は、1℃の平均の長期間の温度上昇を超えることなく、望ましい瞬間的な高い温度上昇を達成することができる。これは以下でさらに実証される。
【0062】
RF電磁放射が、超音波として身体の深い領域でのSDMタイプの処置に対して良い選択ではない理由は、加熱量の制限である。長い表皮深さ(貫通距離)および表皮深さ全体に沿ったオーム加熱は、結果として大量の加熱量をもたらし、その熱慣性は、HSPを活性化する及びタンパク質修復を促進する高いスパイク温度の達成、および平均温度上昇に対する長期間のFDAおよびFCCの制限を満たす急速な温度減衰を両方とも許さない。
【0063】
超音波は、疼痛および筋肉緊張を緩和するべく、身体の領域を治療上加熱するために既に使用されている。しかしながら、加熱は、SDMタイプのプロトコルに従っておらず、HSPの励起の要因である温度スパイクを有していない。
【0064】
ここで、身体内の深い標的領域で配向される焦点式超音波ビームのグループを考慮されたい。計算を単純化するために、ビームが、球体の中心に焦点を当てられる球面形状を有する単一のソースと取り替えられると仮定する。超音波の吸収長さはかなり長くなり得る。下記の表3は、1MHzでの超音波に対する典型的な吸収係数を示す。吸収係数は、周波数にほぼ比例している。
【0065】
【0066】
集束による入射の幾何学的変形が、減衰による変形よりも優位である(dominates)と想定すると、焦点から距離rで入射する超音波の強度は、およそ以下のように計算され:
I(r)=P/(4πr2) [1]
式中、Pは合計の超音波電力を示す。rでの持続時間tpの短パルスの終端での温度上昇は以下であり、
dT(tp)=Pαtp/(4πCvr2) [2]
式中、αは吸収係数であり、Cvは比熱容量である。tpでの熱拡散距離がrに匹敵するようになるところまでrが達するまで、または集束ビームの回折限界に達するまで、これは当てはまる。より短いrについては、温度上昇は、rとは本質的に無関係である。一例として、回折限界が、熱拡散によって判定された距離より短い半径方向距離で到達されたと仮定する。ここで、
rdif=(4Dtp)1/2 [3]
であり、式中、Dが熱拡散係数であり、r<rdifに関して、tpでの温度上昇は以下である:
r<rdifである場合、dT(rdif,tp)=3Pα/(8πCvD)[4]
したがって、パルスの終端で、温度上昇を記録することができる:
dtp(r)={Pαtp/(4πCv}[(6/rdif
2)U{rdif-r)+(1/r2)U(r-rdif)] [5]
熱拡散方程式に関するグリーン関数:
G(r,t)=(4ΩDt)-3/2 exp[-r2/(4Dt)][6]
をこの初期の温度分布に適用すると、時間tの焦点r=0での温度dT(t)が、以下であることが分かった:
dT(t)=[dTo/{(1/2)+(π1/2/6)}][(1/2)(tp/t)3/2+(π1/2/6)(tp/t)] [7]
とともに
dTo=3Pα/(8πCvD) [8]
【0067】
方程式[7]に対する良い近似値は、
図15で見ることができるように、次によって提供され:
【0068】
【数1】
これは、標的処置ゾーンでのdT(t)/dT
oに対する方程式[7]と[9]の比較である。下の曲線は方程式[9]の近似式である。Nパルスの列に対するアレニウス積分は、ここで、方程式[9]によって与えられた温度上昇を用いて評価することができる。この式では、以下であり:
【0069】
【数2】
式中、dT(t-nt
I)は、tがt-nt
Iに取って代わり、t
Iがパルスの間隔を示している、方程式[9]の式である。
【0070】
アレニウス積分は、積分間隔を温度スパイクが生じる部分および温度スパイクがない部分へと分割することによって、近似的に評価され得る。温度スパイクの寄与(contribution)に対する合計は、Laplaceのエンドポイント式(Laplace’s end point formula)を温度スパイクに対する積分に適用することにより単純化され得る。さらに、スパイクがないときの部分に対する積分は、スパイクのない温度上昇が、漸近値に非常に急速に達し、その結果、変化する時間上昇をその漸近値と交換することにより良い近似値が得られることに留意することによって単純化され得る。これらの近似値が得られるときに、方程式[10]は以下となり:
Ω=AN[{tp(2kBTo
2/(3EdTo)}exp[-(E/kB)1/(To+dTo+dTN(NtI))]
+exp[-(E/kB)1/(To+dTN(NtI))]] [12]
式中、以下である:
【0071】
【数3】
(方程式[13]中の2.5は、(N-n)
-3/2のnに対する合計から生じ、対象の典型的なNに対する調和数(N,3/2)の大きさである。)
【0072】
この発現を網膜に適用されたSDMに対する発現と比較することは興味深い。最初の条件(term)は、有効なスパイク間隔がこの3D集束ビームの場合に3倍縮小される以外は、網膜の場合におけるスパイク寄与からの条件に非常に類似している。第2の条件は、dTN(NtI)を含むことが、網膜の場合におけるよりもはるかに少ないことである。ここで、バックグラウンドの温度上昇は、その規模がスパイク温度の上昇に匹敵していた。しかし、ここで集束ビームの場合では、バックグラウンドの温度上昇は、比率(tp/tI)3/2によってはるかに小さいものである。連続的な超音波加熱の場合における上昇に類似しているバックグラウンドの温度上昇が、スパイク寄与と比較して有意でないため、これは、HSPの活性化または生成およびタンパク質修復の促進に対するスパイク寄与の重要性を強調している。パルス列の終端に、この低バックグラウンドの温度上昇でさえ、熱拡散によって急速になくなる。
【0073】
図16および
図17は、パルス持続時間t
p=0.5秒(sec)、パルス間隔t
I=10秒、およびパルスの総数N=10に対するdT
oに応じた、損傷に対する及びHSPの活性化または生成に対するアレニウス積分の対数の大きさを示す。パルス持続時間t
p=0.5秒、パルス間隔t
I=10秒、および超音波パルスの総数N=10に対する、単一パルスdT
oからのケルビン度での温度上昇に応じた、損傷に対する及びHSP活性化に対するアレニウスの積分[方程式12]の対数。
図16は、アレニウス定数A=8.71x10
33 sec
-1およびE=3.55x10
-12 ergsでの損傷積分の対数を示す。
図17は、アレニウス定数A=1.24x10
27 sec
-1およびE=2.66x10
-12 ergsでのHSP活性化積分の対数を示す。
図16および
図17におけるグラフは、dT
oが11.3Kを超過するまでΩ
damageが1を超過せず、一方でΩ
hspが、示される全体の間隔にわたって1を超えることを示し、これは損傷なしでの細胞修復に対する望ましい条件である。
【0074】
方程式[8]は、α=0.1cm-1であるときに、11.5KのdToが、5.8ワットの合計の超音波電力とともに達成され得ることを示している。これは容易に達成可能である。αが2または3倍増加される場合でも、結果として生じる電力はまだ容易に達成可能である。温度上昇が一定である領域の容積(つまりr=rd=(4Dtp)1/2に対応する容積)は、0.00064ccである。これは、一側面が0.86mmである立方体に相当する。
【0075】
この単純な例は、焦点式超音波が、容易に達成可能な装備とともに身体内の深部の修復のHSPを刺激するために使用可能であるべきであることを実証している:
合計の超音波電力: 5.8ワット-17ワット
パルス時間 0.5秒
パルス間隔 5秒
合計の列持続時間(N=10) 50秒
より大きな内容積の処置を促進するために、SAPRAシステムを使用することができる。
【0076】
パルスエネルギー源は身体の外側領域に向けられてもよく、身体の外側領域は、標的組織に隣接している、又はその表面近くに血液供給がある。代替的に、標的組織にパルスエネルギー源を適用するために、装置を身体の腔に挿入してもよい。エネルギー源を身体の外側又は内側に適用するか、及びどのタイプの装置を利用するかは、標的組織を処置するために選択且つ使用されるエネルギー源に依存する。
【0077】
光刺激は、本発明に従って、気管支鏡、直腸鏡、結腸内視鏡などの内視鏡を利用して、身体の内部表面領域又は組織へと効果的に伝達され得る。これらの各々は、自身で1以上の内部チューブを含む可撓性チューブから実質的に成る。典型的に、内部チューブのうち1つは、対象の領域を照らし且つ医師による照らされた端部にあるものの確認を可能にするために、光を内視鏡の下に導く、光パイプ又は多モード光ファイバーを含む。別の内部チューブは、医師による照らされた組織の焼灼を可能にするために電流を運ぶワイヤーから成り得る。また別の内部チューブは、医師が照らされた組織を切り取り且つそれを持ち続けることを可能にする、生検ツールから成り得る。
【0078】
本発明において、これら内部チューブのうち1つは、医師が保持している端部に内視鏡を送り込むSDM又は他の電磁放射パルスを伝達させるために、多モード光ファイバーなどの電磁放射パイプとして使用される。ここで
図18を参照すると、望ましい波長及び/又は周波数を有するレーザーなどの、光生成ユニット(10)は、身体へと挿入される、
図19に例証される内視鏡(14)の遠位端部へと光チューブ又は光パイプ(12)を通って送達される、制御され且つパルス状の方法で、レーザー光などの電磁的放射線を生成するために使用され、レーザー光又は他の放射線(16)は、処置される標的組織(18)に送達される。
【0079】
ここで
図20を参照すると、SDMを含む、レーザー光などの電磁エネルギー放射線を生成するためのシステムの概略図が示される。参照符号(20)によって全体的に言及されるシステムは、例えば、好ましい実施形態における810nmの近赤外線マイクロパルスダイオードレーザーなどの、レーザーコンソール(22)を含む。レーザーは、光学レンズ又はマスク、或いは必要に応じて複数の光学レンズ又はマスク(24)などの光学素子(optics)に通されるレーザー光線を生成する。レーザープロジェクター光学素子(24)は、患者の標的組織上にレーザービームを投射するために、形成された光線を内視鏡などの送達装置(26)に通す。(26)として標識されたボックスは、レーザービームプロジェクター又は送達装置の他に、内視鏡などの視認システム/カメラの両方を表わすことができ、或いは、使用時に2つの異なるコンポーネントを含み得ることが理解される。視認システム/カメラ(26)は、レーザー(22)、光学素子(24)、及び/又は投射/視認コンポーネント(26)を操作するために、必要なコンピューター化されたハードウェア、データ入力部、及び制御部なども含み得る、ディスプレイモニター(28)にフィードバックを提供する。
【0080】
ここで
図21を参照すると、一実施形態において、レーザー光線(30)は、コリメータレンズ(32)に通され、その後マスク(34)に通され得る。特に好ましい実施形態において、マスク(34)は回折格子を含む。マスク/回折格子(34)は、幾何オブジェクト、又はより典型的には同時に生成された複数のレーザースポットの幾何パターン、或いは他の幾何オブジェクトをもたらす。これは、参照符号(36)を付けられた複数のレーザー光線によって表わされる。代替的に、複数のレーザースポットは、複数のファイバー光導波路によって生成され得る。レーザースポットを生成する方法はいずれも、非常に広い治療照射野にわたって大多数のレーザースポットを同時に生成することを可能にする。実際に、何百、何千、又はそれ以上もの数の大多数のレーザースポットが、標的組織の与えられた領域、又は潜在的に標的組織全体をもカバーするために同時に生成され得る。大きなレーザースポットの適用に関連すると知られる特定の欠点及び処置リスクを回避するなどのために、広い一連の同時に適用された小さく分離されたレーザースポットの適用が、望ましい場合もある。
【0081】
利用されるレーザーの波長と同等の形状サイズを有する光学的特徴を使用して、例えば、回折格子を使用して、非常に大きな標的領域のための大多数のレーザースポットの同時の適用を可能にする量子力学的効果を活用することが可能である。そのような回折格子によって生成された個々のスポットは全て、各スポットに対するパワー変動が最小である、入射ビームに類似した光学的形状である。結果として、十分な照射量を有する複数のレーザースポットは、大きな標的領域にわたって同時に、無害である上に有効な処置応用をもたらす。本発明はまた、他の幾何オブジェクト、及び他の回折光学素子によって生成されたパターンの使用を熟考する。
【0082】
マスク(34)を通るレーザー光は回折し、
図21において(36)として標識されたレーザービームによって示される、マスク(34)とは距離が置かれた周期的パターンをもたらす。単一レーザービーム(30)は故に、スポット又は他の幾何オブジェクトの望ましいパターンを作り出すように、何百又は何千もの個々のレーザービーム(36)へと形作られた。これらのレーザービーム(36)は、レーザー光線を伝送し且つ望ましいパターンを形成するために、追加のレンズ、コリメーターなど、(38)及び(40)に通され得る。そのような追加のレンズ、コリメーターなど、(38)及び(40)は更に、必要に応じてレーザービーム(36)を変換し、及びその向きを変えることができる。
【0083】
光学マスク(34)の形状、間隔、及びパターンを制御することによって、恣意的なパターンを構築することができる。パターン及び露光のスポットは、光工学分野の専門家による適用要件に従って、望まれるように恣意的に作成且つ変更され得る。フォトリソグラフィー技術、特に半導体製造の分野で開発された技術は、スポット又は他のオブジェクトの同時の幾何パターンを作成するために使用することができる。
【0084】
図22は、複数の光源を、上記のパターンを生成する光学サブアセンブリへと連結するシステムを図式で例証する。具体的には、このシステム(20’)は、上記の
図20に記載されたシステム(20)に類似している。代替的なシステム(20’)及び前述のシステム(20)の主な違いは、複数のレーザーコンソールを包含することであり、その出力は各々、ファイバカプラ(42)に供給される。ファイバカプラは、前のシステムに記載されるようなレーザープロジェクター光学素子(24)へと通される単一出力を生み出す。複数のレーザーコンソール(22)の単一の光ファイバーへの連結は、当該技術分野で知られるようにファイバカプラ(42)を用いて達成される。複数の光源を組み合わせるための他の既知の機構も利用可能であり、本明細書に記載されるファイバカプラと交換するために使用されてもよい。
【0085】
このシステム(20’)において、複数の光源(22)は、前のシステム(20)に記載されたものと同様の経路に従うものであり、即ち、コリメートされ、回折され、再びコリメートされ、及びプロジェクター装置及び/又は組織へと配向される。この代替的なシステム(20’)において、回折素子は、通過する光の波長に依存して、前に記載されたものとは異なって機能しなければならず、これは、結果としてパターンのわずかな変化をもたらす。変化は、回折されている光源の波長と直線状になっている。一般に、回折角の差は、異なる重複パターンが、処置のためにプロジェクター装置(26)を通って組織に向かう同じ光路に沿って配向されるのに、十分な小さな差である。
【0086】
結果として生じるパターンが各波長に対してわずかに変化するため、完全な適用範囲を達成するための連続するオフセット(offsetting)は、各波長に対して異なる。連続するオフセットは2つのモードで達成され得る。第1のモードでは、光の波長は全て、同一の適用範囲なしで同時に適用される。複数の波長の1つに対する完全な適用範囲を達成するためのオフセットのステアリングパターンが使用される。故に、選択された波長の光は、組織の完全な適用範囲を達成しているが、他の波長の適用は、組織の不完全な適用範囲又は重複する適用範囲のいずれかを達成する。第2のモードは、その特定の波長に対する組織の完全な適用範囲を達成するために、適切なステアリングパターンを用いて、変化する波長の各光源を連続して適用する。このモードは、複数の波長を使用する同時の処置の可能性を除外するが、光学的方法によって各波長に対する同一の適用範囲を達成することを可能にする。これは、光学波長のいずれに対する不完全な適用範囲及び重複する適用範囲も回避する。
【0087】
これらのモードはまた、組み合わされ、一致されてもよい。例えば、2つの波長が同時に適用され、1つの波長が完全な適用範囲を達成し、もう1つの波長が不完全な又は重複する適用範囲を達成してもよく、その後、第3の波長が連続して適用され、完全な適用範囲を達成してもよい。
【0088】
図23は、本発明のシステム(20’’)の更に別の代替的な実施形態を図式で例証している。このシステム(20’’)は、
図20に描写されたシステム(20)と略同じように構成されている。主な違いは、光源の特定の波長に合わせられた複数のパターンを生成するサブアセンブリチャネルを包含することである。複数のレーザーコンソール(22)が平行に配され、その各々1つは、それ自体のレーザープロジェクター光学素子(24)に直接繋がっている。各チャネル(44a)、(44b)、(44c)のレーザープロジェクター光学素子は、上記
図21に関連して記載されるように、コリメーター(32)、マスク、又は回折格子(34)、及びリコリメーター(recollimators)(38)、(40)を含み、光学素子の全セットは、対応するレーザーコンソール(22)によって生成された特定の波長のために調整される。その後、光学素子(24)の各セットからの出力は、他の波長との組み合わせのためにビームスプリッター(46)に向けられる。逆に使用されるビームスプリッターが複数のビームを単一出力へと組み合わせるために用いられ得ることは、当業者に知られている。その後、最終のビームスプリッター(46c)からの組み合わせたチャネル出力は、プロジェクター装置(26)を介して配向される。
【0089】
このシステム(20’’)において、各チャネルに対する光学素子は、そのチャネルの波長に対する正確な指定されたパターンを生成するように調整される。結果的に、チャネルが全て組み合わせられ、適切に位置合わせされると、単一のステアリングパターンが使用されて、全ての波長に対する組織の完全な適用範囲が達成され得る。
【0090】
システム(20’’)は、処置に使用されている光の波長と同じくらい多くのチャネル(44a)、(44b)、(44c)など、及びビームスプリッター(46a)、(46b)、(46c)などを使用し得る。
【0091】
システム(20’’)の実施には、位置合わせの制約の数を減らすために異なる対称性が活用され得る。例えば、提案された格子パターンは、二次元において周期的であり、完全な適用範囲を達成するために二次元で操作される。結果として、各チャネルに対するパターンが指定されたパターンと同一である場合、各チャネルの実際のパターンは、全ての波長に対する完全な適用範囲を達成するために同じステアリングパターンに対して位置合わせさせる必要はない。各チャネルは、効率的な組み合わせを達成するために光学的に位置合わせさせる必要があるだけである。
【0092】
システム(20’’)において、各チャネルは光源(22)と共に開始し、光源(22)は、パターンを生成するサブアセンブリの他の実施形態などにおける光ファイバーからのものであり得る。この光源(22)は、コリメーション、回折、リコリメーション、及び、チャネルを主出力と組み合わせるビームスプリッターへの配向のために、光学アセンブリ(24)に配向される。
【0093】
図20-23に例証されるレーザー光生成システムは典型的なものであることが理解される。典型的に光パイプなどを有する内視鏡の形態で、プロジェクター装置に動作自在に通され得るSDMレーザー光のソースを生成するために、他の装置及びシステムを利用することができる。予め決められた波長で、紫外波、マイクロ波、他の無線周波数波、及びレーザー光を含む電磁的放射線の他の形態も生成され、使用されてもよい。更に、標的組織自体を損傷させることなく標的組織の細胞中の熱ショックタンパク質を活性化又は生成するのに十分な標的組織において、熱的な時間経過の温度スパイクをもたらすために、超音波も生成され且つ使用されてもよい。そのために、典型的に、超音波的又は電磁的放射エネルギーのパルス状のソースが提供され、及び、数分間などの長時間にわたって、標的組織の温度を6℃から11℃、一時的にほんの6℃又は1℃以下などの温度に上げる方法で、標的組織に適用される。
【0094】
内部開口部に近くにはない深部組織に関して、光パイプは、パルスエネルギーを送達する有効な手段ではない。その場合、標的組織において一連の温度スパイクを引き起こすために、パルス状低周波電磁的エネルギー又は好ましくはパルス状超音波が使用され得る。
【0095】
故に、本発明に従って、パルス状超音波又は電磁放射線のソースは、HSPの生成又は活性化を刺激し、且つ生きている動物組織のタンパク質修復を促進するために、標的組織に適用される。一般に、電磁放射線は、予め決められた波長などでの、紫外波、マイクロ波、他の無線周波数波、レーザー光であり得る。一方、電磁的エネルギーが、天然開口部から離れた深部組織の標的に使用される場合、吸収長は、標的組織の深度に依存して、波長をマイクロ波又は無線周波数波の波長に制限する。しかし、超音波は、天然開口部から離れた深部組織の標的に対して長波長の電磁的放射線よりも好まれる。
【0096】
超音波的又は電磁的放射線は、組織において熱的な時間経過をもたらすことで、処置されている細胞及び組織に損傷を引き起こすことなく、HSPの生成又は活性化を刺激し、且つタンパク質修復を促進するようにパルス状にされる。処置された組織の領域及び/又は体積も、FDAが定めた1℃の限界未満に長期的な温度上昇を維持しながら、温度スパイクが数程度、例えばおよそ10℃となるように、制御され、最小限にされる。処置される組織の領域又は体積が大きすぎる場合、上昇した組織の温度は、FDA要件を満たすほど十分には速く拡散され得ないことが分かった。しかし、処置された組織の領域及び/又は体積を制限することに加えて、エネルギーのパルス状ソースを作り出すことによって、処置された細胞及び組織が、生成される余剰熱を許容限界内で逃がすことを可能にしながら、細胞及び組織を加熱する又はストレスをかけることにより、HSPの活性化又は生成を刺激するという、本発明の目的が達成される。
【0097】
本発明に従ったHSP生成の刺激は、広範囲の組織の異常、病気、及び感染さえをも処置する際に有効に利用され得ると考えられている。例えば、風邪を引き起こすウイルスは、主として、鼻通路及び鼻咽頭における呼吸上皮の小さな部分に影響を及ぼす。網膜と同様に、呼吸上皮は薄く透明な組織である。
図24を参照すると、ヒトの頭(48)の断面図が示されており、内視鏡(14)は鼻腔(50)に挿入され、レーザー光などのエネルギー(16)が鼻腔(50)内で処置される組織(18)に配向されている。処置される組織(18)は、鼻通路及び鼻咽頭を含む、鼻腔(50)内にあり得る。
【0098】
レーザーエネルギー、又は他のエネルギー源の吸収を確かなものとするために、波長が水の赤外線(IR)吸収ピークに調節され得、又はアジュバント色素(adjuvant dye)が光増感剤として機能するために使用され得る。そのような場合、処置はその後、アジュバントを飲むこと、又はそれを局所に適用すること、アジュバントが表面組織に浸透するのを数分待つこと、及びその後に、
図24で示されるように内視鏡(14)中の光ファイバーなどを介して数秒間にわたりレーザー光又は他のエネルギー源(16)を標的組織(18)に投与することから成る。患者に快適さを提供するために、内視鏡(14)は局所麻酔剤の適用後に挿入され得る。必要ならば、上記手順は、1日~2日など、定期的に繰り返され得る。
【0099】
処置は、処置されている細胞及び組織を損傷させることなく、熱ショックタンパク質の活性化又は生成を刺激し、且つタンパク質修復を促進する。上に議論されるように、特定の熱ショックタンパク質は、免疫応答の他に、標的とされた細胞及び組織の健康にも重要な役割を果たすことが分かった。エネルギー源は、810nmの波長のレーザー光などの、単色レーザー光であり得、上記引用文献の特許出願に記載される方法と同様の方法で投与され得るが、
図24で示されるように、内視鏡などによっても投与され得る。アジュバント色素は、レーザー光吸収を増大させるように選択される。これは、本発明を実行する特に好ましい方法及び実施形態を含むが、本発明に従って同じ目的を達成するために、他のタイプのエネルギー及び送達手段も使用され得ることが認識される。
【0100】
ここで
図25を参照すると、インフルエンザウイルスに対して同様の状況が存在し、ここで、主要な標的は、約3.3mmより大きな直径を持つセグメントにおいて、上気道樹(upper respiratory tree)の上皮、即ち、上気道樹の上部の6世代である。粘性の薄層によって、標的とされた上皮細胞を気道内腔と分離し、この層において、抗原と抗体との相互作用が生じて、結果的にウイルスの不活性化がもたらされる。
【0101】
図25を続けて参照すると、気管支鏡(14)の可撓性光チューブ(12)が、個体の口(52)から喉及び気管(54)を通って気道樹の気管支(56)へと挿入されている。ここで、レーザー光又は他のエネルギー源(16)は、
図24に関して上述された方法と同じ方法で、組織及び領域を処置するために、最上部のセグメントのこの領域における組織に投与され、且つ送達される。レーザー又は他のエネルギーの波長が、その付随する恩恵とともに、組織を加熱し、HSPの活性化又は生成を刺激し、及びタンパク質修復を促進するために、粘液中に存在する水のIR吸収ピークと一致するように選択されることが熟考される。
【0102】
ここで
図26を参照すると、例証されるように、大腸内視鏡(14)は、処置される領域及び組織に、選択されたレーザー光又は他のエネルギー源(16)を送達するように、肛門及び直腸(58)へと、且つ大腸(60)又は小腸(62)のいずれかへと挿入される可撓性光チューブ(12)を有し得る。これは、結腸癌の処置に加えて、他の胃腸の問題を支援するために使用され得る。
【0103】
典型的に、上記手順は、腸から全ての便が除去され、患者が横向きに寝て、医師が大腸内視鏡(14)の長く薄い光チューブ部分(12)を直腸へと挿入し、それを、処置される領域の結腸、大腸(60)又は小腸(64)の領域へと移動させるという点で、大腸内視鏡検査に類似して実行され得る。医師は、モニターを介して、挿入された可撓性部材(12)の経路を見ることができ、且つ、処置される領域を見るために、腸内の大腸内視鏡(14)の先端部における組織を見ることもできた。他の光ファイバー又は光チューブの1つを使用すると、内視鏡の先端部(64)は処置される組織に配向され、レーザー光又は他の放射線(16)のソースは、組織(18)中でHSPの活性化又は生成を刺激するために、上記のように、処置される組織の領域を処置するべく大腸内視鏡(14)の光チューブの1つに通して送達される。
【0104】
ここで
図27を参照すると、本発明を好都合に使用することができる別の例は、炎症及び他の代謝機能不全によって示される胃腸(GI)管の疾病である「リーキーガット」症候群と頻繁に呼ばれるものである。GI管は、網膜と同様に代謝機能不全に弱いため、本発明の処置に十分に反応することが予想される。これは、上に議論されるような、閾値以下のダイオードマイクロパルスレーザー(SDM)処置、又は、本明細書で議論されるような及び当該技術分野で既知の他のエネルギー源及び手段によって行われ得る。
【0105】
図27を続けて参照すると、内視鏡などの可撓性光チューブ(12)は、患者の口(52)から喉及び気管領域(54)を通って胃(66)へと挿入され、ここで、可撓性光チューブ(12)の先端部又は端部(64)は、処置される組織(18)に向けて配向され、レーザー光又は他のエネルギー源(16)は、組織(18)に配向される。大腸内視鏡も使用され、直腸(58)を通って胃(66)又は胃と直腸との間の任意の組織へと挿入され得ることが、当業者によって理解される。
【0106】
必要ならば、放射線の吸収を可能にするために、発色団色素がGI組織へと経口送達され得る。例えば、レーザーダイオード又はLEDからの焦点の合っていない810nmの放射線が使用される場合、色素は810nmの又はその付近の吸収ピークを有する。代替的に、エネルギー源の波長は、水の吸収ピークでわずかに長い波長に調節され得、その結果、発色団を外部から適用する必要はなくなる。
【0107】
図28に示されるものなどの、カプセル内視鏡(68)が、本発明に従って放射線及びエネルギーのソースを与えるために使用され得ることも、本発明によって熟考される。そのようなカプセル内視鏡は、患者に呑み込まれるように、長さがおよそ1インチといったように、比較的小さなサイズである。カプセル又は丸剤(68)が呑み込まれ、胃に入り、GI管を通ると、適切な位置で、カプセル又は丸剤(68)は、レーザーダイオード及び関連する回路類などのエネルギー源(72)を活性化するように、アンテナ(70)などを介して電力及び信号を受け取ることができ、適切なレンズ(74)は、生成されたレーザー光又は放射線を、放射線用透明カバー(76)に通して、処置される組織へと集束させる。カプセル内視鏡(68)の位置が、外部画像化、信号追跡などの様々な手段によって、又は、その時点で丸剤或いはカプセル(68)が通るGI管の画像を医師が確認する照明付き小型カメラによっても、判定され得ることが理解される。カプセル又は丸剤(68)には、バッテリーなどによってそれ自体の電力源が供給され得るか、又は、アンテナを介して外部から電力を供給され得、その結果、処置される組織及び領域を処置するために、レーザーダイオード(72)又は他のエネルギー発生ソースは、望ましい波長及びパルスエネルギー源を作り出す。
【0108】
以前の出願における網膜の処置におけるように、放射線は、マイクロパルスの温度スパイク及び関連する安全性を活用するためにパルス状にされ、電力は、処置が組織に対し完全に無害となるように調整され得る。これは、FDAが定めた1℃の限界未満に長期的な温度上昇を維持しながら、およそ10℃のスパイク温度の上昇をもたらすために、ピーク電力、パルス時間、及び繰返し率を調整することを含み得る。送達の丸剤形態(68)が使用される場合、装置は、小型充電式電池又は無線の誘導励起(inductive excitation)などによって電力が供給され得る。加熱した又はストレスをかけた組織は、HSPの活性化又は生成を刺激し、タンパク質修復を促進して、それらに付随する利益を提供する。
【0109】
先の例から、本発明の技術は、ファイバーオプティクス又は他の光送達手段によって容易に利用可能である、体表面近く又は内表面における疾病の処置に限定される。HSP活性を活性化するためのSDMの適用が、身体の表面近く又は光学的に利用しやすい領域に限定される理由は、身体におけるIR放射線又は可視光線の吸収長が非常に短いことにある。しかし、本発明から利益を得るのは、組織又は身体内の深部にある疾病である。故に、本発明は、体組織中で比較的長い吸収長を有するマイクロ波などの、超音波及び/又は無線周波(RF)及び更に短い波長の電磁的(EM)放射線の使用を熟考している。表面のSDMなどに利用できない異常な組織において治療上のHSP活性を活性化するために、パルス状超音波の使用がRF電磁的放射よりも好ましい。パルス状超音波のソースも、表面又はその近くにある異常に使用され得る。
【0110】
ここで
図29を参照すると、超音波を用いることで、身体中の深部の特定領域は、標的部位に各々焦点を当てられる1以上のビームを使用することによって具体的に標的とされ得る。その後、パルス状の加熱は、標的とされた領域のみに大部分が適用され、そこではビームが集束され且つ重複される。
【0111】
図29に例証されるように、超音波振動子(78)などは、複数の超音波ビーム(80)を生成し、これらは、音響インピーダンス整合のゲルを介して皮膚に連結され、ビーム(80)の焦点の前で皮膚(82)及び損傷していない組織を通って、例証された肝臓などの標的臓器(84)、及び具体的には超音波ビーム(80)が集束している処置される標的組織(86)へと浸透する。上に言及されるように、パルス状の加熱はその後、集束ビーム(80)が重複する、標的とされた集束領域(86)にのみ適用される。集束領域(86)の前及び後ろにある組織は、認知できるほどには加熱されず又は影響を受けない。
【0112】
本発明は、レーザー光などを使用した表面組織又は表面近くの組織の処置や、例えば、集束された超音波ビームなどを使用する深部組織の処置だけでなく、敗血症などの血液疾患の処置も熟考している。上に示されるように、集束された超音波処置は、表面の他に深部の体組織でも使用され得、この血液疾患(blood)を処置する場合にも適用され得る。しかし、SDM、及び、上皮細胞などの表面又はその付近の処置に典型的に限定される同様の処置選択肢が、耳たぶなどの組織の比較的薄い層を通って血液にアクセス可能な領域において血液疾患を処置する際に使用されるべきことも、熟考されている。
【0113】
ここで
図30と31を参照すると、血液障害の処置には単純に、耳たぶ(88)へのSDM又は他の電磁的放射線或いは超音波パルスの伝達が必要とされ、ここで、SDM、又はエネルギーの他の放射線ソースは、耳たぶ組織を通って、耳たぶを流れる血液へと進み得る。このアプローチは、血流が比較的高い身体の他の領域にて、及び/又は、指先、口又は喉の内部などの組織表面の近くにて行われ得ることが、認識されるだろう。
【0114】
ここで
図30と31を参照すると、耳たぶ(88)は、SDM放射線などを伝達するように構成されたクランプ装置(90)に隣接して示される。これは、例えば、所望のパルス及びパルス列で所望の周波数を耳たぶ(88)に伝達する、1以上のレーザーダイオード(92)によるものであり得る。例えば、ランプドライブ(94)によって電力が提供され得る。代替的に、ランプドライブ(94)は、適切な光学素子及び電子装置を通って耳たぶ(88)に伝達される、レーザー光の実際のソースであり得る。クランプ装置(90)は単に、患者の耳たぶ(88)上にクランプする(clamp)ために、及び放射線を患者の耳たぶ(88)に抑制させるために使用されるだけである。これは、ミラー、反射鏡、ディフューザーなどによって行われ得る。これは、キーボード(98)などによって操作される、制御コンピューター(96)によって制御され得る。システムはまた、必要ならば、例えば上記の手順が患者から離れてオペレーターによって実行される場合に、ディスプレイ及びスピーカー(100)を含んでもよい。
【0115】
電磁パルス又は超音波パルスの列による、提案された治療には、単一の短パルス又は維持(長)パルスの何れかを組み込む初期の治療以上の、2つの主要な利点がある。第1に、列における短い(好ましくは秒以下の)個々のパルスは、より長い(分又は時)時間スケールで作動するものよりも大きな反応速度定数で、HSP活性化のような細胞のリセット機構を活性化する。第2に、処置において繰り返されたパルスは、細胞の修復システムが、機能障害の細胞状態を所望の機能状態から分離する活性化エネルギー障壁をより急速に乗り越えることを可能にする、大きなサーマルスパイク(約10,000)を提供する。最終結果は、より低い適用された平均パワー及び合計の適用されたエネルギーが、所望の処置目標を達成するために使用され得るという意味で、「治療閾値の低下」である。
【0116】
様々な実施形態が図示の目的を詳細に記載してきたが、様々な修正が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく行われてもよい。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲以外には、限定されない。