(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】神経変性障害の治療に使用するための改変ペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 5/08 20060101AFI20220817BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220817BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07K5/08 ZNA
A61K38/06
A61P25/00 101
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
A61P25/18
(21)【出願番号】P 2019509482
(86)(22)【出願日】2017-08-16
(86)【国際出願番号】 GB2017052407
(87)【国際公開番号】W WO2018033724
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-08-14
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516008992
【氏名又は名称】ニューロ-バイオ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEURO-BIO LTD
【住所又は居所原語表記】Building F5,Culham Science Centre,Abingdon Oxfordshire OX14 3DB,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】グリーンフィールド,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ラテス,サラ
(72)【発明者】
【氏名】モラル,ジーザス
(72)【発明者】
【氏名】コサノ,ロージャー
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537699(JP,A)
【文献】特表2003-503312(JP,A)
【文献】特表2009-517376(JP,A)
【文献】特開2006-347951(JP,A)
【文献】特表2015-508406(JP,A)
【文献】特表2001-500492(JP,A)
【文献】国際公開第2002/092566(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0159362(US,A1)
【文献】国際公開第02/016408(WO,A2)
【文献】特表2003-506411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/08
A61K 38/06
A61P 25/00
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 25/14
A61P 25/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性障害の治療、改善、または予防に使用するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物は、式(I):
【化1】
の化合物、
式中、
R
1が、-NR
9R
10または-OHであり、
R
2が、
【化2】
であり、
R
3が、-H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
4が、
【化3】
であり、
R
5が、-H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
6が、
【化4】
であり、
R
7が、-Hまたは直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
8が、-H、直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【化5】
であり
、
前記または各R
9およびR
10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
11が
、アリール基であり
、
各nが、独立して0~10である、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは互変異性体を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
前記化合物が、式(Ia):
【化6】
を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
R
1が、-NH
2である;
R
3が、-Hである;
R
7が、-Hである;および/または
R
8が、
【化7】
である、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
R
2が、
【化8】
である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
R
4が、
【化9】
である;および/または
R
5が、-Hである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
R
6が、
【化10】
である、請求項
1~5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記化合物が、式(101)、(103)、(101a)、または(103a):
【化11】
【化12】
の化合物である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記神経変性障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患、脊髄小脳1型、2型、および3型、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、レビー小体型認知症、および前頭側頭型認知症からなる群から選択される、請求項1~
7のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項9】
式(I)の化合物:
【化13】
式中、
R
1が、-NR
9R
10または-OHであり、
R
2が、
【化14】
であり、
R
3が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
4が、
【化15】
であり、
R
5が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
6が、
【化16】
であり、
R
7が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
8が、-H、直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【化17】
であり、
R
9およびR
10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは互変異性体。
【請求項10】
式(I)の化合物:
【化18】
式中、
R
1が、-NR
9R
10または-OHであり、
R
2が、
【化19】
であり、
R
3が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
4が、
【化20】
であり、
R
5が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
6が、
【化21】
であり、
R
7が、H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R
8が、-H、直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【化22】
であり、
R
9およびR
10が、独立して-H、または直鎖もしくは分岐のC
1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは互変異性体。
【請求項11】
請求項
9または
10に記載の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、もしくは互変異性体と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経変性障害に関し、特に、かかる病態、例えばアルツハイマー病を治療するための新規ペプチド、ペプチド模倣薬、組成物、治療法、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、神経変性プロセスが異常に活性化された発生プロセスであることを以前に提案した。この仮説を支持して、脳幹「ハブ」ニューロンの肥大がアルツハイマー脳で実際に報告されている(Bowser et al.,1997,Brain Pathol.7:723-30)。このハブの大部分が損傷を受けると、よくあるが今のところ説明がつかない、アルツハイマー病とパーキンソン病の共通病理の症例で見られるように、複数の神経変性疾患が存在することになる。興味深いことに、グローバルニューロンの脆弱なハブ内のすべてのニューロンは、伝達物質の不均一性にもかかわらず、よく知られた酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)を含む。したがって、ノルアドレナリン作動性青斑核、ドーパミン作動性黒質、またはセロトニン作動性縫線核などの細胞のサブグループは、通常の基質であるアセチルコリンを含まないため、AChEはその正常な機能を果たすことができないニューロンに存在する。その通常の酵素的役割からのさらなる予想外の逸脱は、AChEが実際には、おそらくそれ自体がある種の細胞間メッセンジャーとしてグローバルニューロンから放出されることである。一般に、AChEは、神経組織および非神経組織の両方において多様な状況において栄養活性を有するシグナル伝達分子として広く確立されている。
【0003】
本発明者らは、その酵素作用とは無関係に栄養剤として作用するAChEが、確かにニューロンへのカルシウム流入を誘発することを以前に示した。したがって、グローバルニューロン内で、AChEは量、利用可能期間、最も重要なことには年齢に応じて、栄養-毒性の軸に沿った二重の非古典的作用を有することが可能である。脳卒中のように、成人期に標準ニューロンが損傷を受けた場合、他のニューロンが機能的に補うだろう。それとは対照的に、グローバルニューロンは再生するためにそれらの栄養資源を要求することによって反応するだろう。しかし、その後のカルシウム流入は、より古い成熟細胞では致命的になるため、結果として生じる損傷は、神経変性を特徴付ける有害サイクルを補うためのさらなる試みを引き起こすだろう。
【0004】
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は様々な形態で異なる発達段階で発現され、それらはすべて同一の酵素活性を有するが、非常に異なる分子構成を有する。「末端付加(tailed)」(T-AChE)はシナプスで発現され、本発明者らはC末端から切断されうる2つのペプチドを以前特定し、一方は「T14」と称され、他方は「T30」として知られ、両者はβアミロイドの相当領域と強い配列相同性を有する。AChEのC末端ペプチド「T14」は、非加水分解作用の領域を担うAChE分子の突出部として特定されている。合成14アミノ酸ペプチド類似体(すなわち「T14」)、続いて、それが埋め込まれたより大きく、より安定で、より強力なアミノ酸配列(すなわち「T30」)は、T30配列内の不活性残基(すなわち「T15」)が効果を有しない、「非コリン作動性」AChEとして報告されているものに相当する作用を示す。
【0005】
T14およびT30の急性作用は、それらが(i)数ミリ秒から数時間スケールにわたって脳切片におけるニューロンへのカルシウム流入を調節し、(ii)インビトロでのPC12細胞および神経器官型培養の細胞生存性を低下させ、(iii)ニューロンおよびPC12細胞からの「代償的」カルシウム誘導性AChE放出を調節し、(iv)脳切片の卵母細胞およびニューロンにおけるカルシウムの流れを活性化させ、(v)毒性作用においてアミロイドと相乗作用し、かつ(vi)アミロイド前駆体タンパク質の産出およびアミロイドベータ(Aβ)ペプチド放出に関与することである。T14およびT30の慢性作用は、それらが(i)ニューロンの成長を抑制し、(ii)アポトーシスを誘導し、(iii)AChE放出を増加させ、(iv)α7ニコチン性受容体(α-7nChR受容体)に結合して調節し、かつ(v)24時間にわたって細胞表面上のα7受容体の発現を増強し、それによりさらなる毒性に対するフィードフォワードメカニズムを提供することである。
【0006】
T14およびT30は、毒性の誘発においてβアミロイドよりも選択的であり、またアミロイド増悪毒性とも相乗的であるため、T14またはT30の毒性作用を遮断するいかなる薬剤も、アミロイドの低選択性および後続する毒性作用を低減させるであろうと仮定された。本発明者は、T30およびT14ペプチドがα7ニコチン受容体上のアロステリック部位に結合して一連の栄養-毒性作用を誘発することを以前に示した。この受容体は、脳の発達の重要な時期にAChEと共発現しているだけでなく、成人の脳内でもほぼ平行分布を示しており、脳内で最も強力なカルシウムイオノフォアの1つである。コリン(食事由来)は代替の一次リガンドとして役立ち得るので、それはコリン作動性伝達とは無関係に機能することもできる。さらに、この受容体は既に、現在の治療法のガランタミン(Reminyl(RTM))の標的の1つとしてアルツハイマー病に関係があるとされており、ならびにアミロイドの作用に関連している。
【0007】
しかしながら、ガランタミンの有効性は限られていることが証明されており、他のα7ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬はまだ臨床試験中である。ガランタミンは他の受容体に非特異的作用を及ぼし、かつAChEを阻害するだけでなく、α7ニコチン性受容体に対して遥かに高い親和性(すなわち5nM)を有するT30およびT14のそれと比較して、α7ニコチン性受容体に対して低い親和性(すなわちわずか10μM)を有する。したがって、アルツハイマー病の脳において、T30ペプチドの内因性等価物が既にそれぞれの受容体部位を占めている場合、ガランタミンを、副作用が不可避であり、かつ最も重要なことには有効性が疑わしい非生理学的な高用量で与えることが必要となる。
【0008】
本発明者らは、WO2005/004430において、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)のC末端に由来するアミノ酸配列を含む環状ポリペプチドが、インビトロでのAChEおよび/またはその末端ペプチドの非古典的作用(すなわち、その酵素活性とは無関係のAChEの作用)を選択的に阻害し、したがって神経変性障害を治療するために使用することができることを以前に示している。例えば、「NBP14」と呼ばれる環状ペプチド(すなわち環状T14ペプチド)は、AChEペプチドおよびアミロイドベータの作用に拮抗するα7ニコチン性受容体のアロステリックモジュレーターとして作用するので、特に活性であることが示されている。これは直鎖状T14、T30、およびβアミロイドの毒性から細胞を保護することが示され、直鎖状T14およびT30の毒性によって誘発される代償的AChE放出を遮断する。さらに、単独で与えられた環状NBP14がラット脳切片中のCa2+濃度に有意な影響を及ぼさないが、βアミロイドの作用を遮断することを観察した。しかしながら、環状NBP14によって示される活性にもかかわらず、そのサイズのために、治療薬としての使用のために血液脳関門を通過するその能力に関していくつかの懸念がある。
【0009】
したがって、アルツハイマー病およびパーキンソン病などの神経変性障害の治療のための改善された薬剤を提供することに対する継続的な必要性がある。
【0010】
本発明者らは、環状NBP-14がT30毒性作用およびβアミロイド産生に対して保護することを実証した、WO2005/004430に記載された以前の研究を続けた。α-7nChR受容体に対する親和性を示し、したがって内因性の有毒なT30ペプチドによるその活性部位への結合を遮断するであろう新規ペプチドおよびペプチド模倣薬を設計するためにインシリコ研究を行った。膨大な数の可能性のある候補化合物を分析した後、受容体と環状NBP-14との間の相互作用を見ることによりT30毒性作用およびβアミロイド産生に対する保護に関連する化学的官能基を決定した。これらの実験に基づいて、本発明者らは、神経変性障害を治療するための驚くべき治療的有用性を有することが示されているいくつかの候補化合物を設計、合成、および試験した。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、治療法に使用するための、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であって、
【0012】
【0013】
式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0014】
【0015】
R3が、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0016】
【0017】
R5が、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に-OHまたは-NH2で置換された5員環を形成し、
R6が、
【0018】
【0019】
R7が、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0020】
【0021】
X1が、-NR9R10、-OH、または
【0022】
【0023】
該または各R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R11が、-NH2、-OH、またはアリール基であり、
該または各mが、独立して0~5であり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0024】
実施例に記載され、
図9、10および26に示されるように、本発明による化合物は、カルシウム流入および/またはアセチルコリンエステラーゼ活性を低下させることによって、該化合物で治療される対象をT30ペプチドの毒性作用から保護するように構成されることが好ましい。さらに、本発明による化合物は、βアミロイド産生に対して対象を保護するように構成されることが好ましい。したがって、本発明者らはまた、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、および(VI)の化合物が神経変性障害の治療に有用であることを見出した。
【0025】
したがって、第2の態様では、神経変性障害の治療、改善、または予防に使用するための、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、もしくは(VI)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0026】
さらに、第3の態様では、神経変性障害を治療、改善または予防する方法であって、そのような治療を必要とする対象に、治療有効量の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、もしくは(VI)の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相を投与することを含む方法が提供される。
【0027】
治療される神経変性障害は、好ましくは「グローバル」ニューロンの損傷または死を特徴とするものである。例えば、神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患、脊髄小脳1型、2型、および3型、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、統合失調症、レビー小体型認知症、ならびに前頭側頭型認知症からなる群から選択されてもよい。
【0028】
好ましくは、治療される神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、または運動ニューロン疾患である。最も好ましくは、第1の態様によるペプチド、その誘導体または類似体で治療される神経変性障害はアルツハイマー病である。
【0029】
「塩」という用語は、その生物学的特性を保持し、毒性ではなく、または薬学的用途に望ましくないものではない、本明細書に提供される化合物の任意の塩を指すと理解され得る。そのような塩は、当技術分野において既知の様々な有機および無機対イオンから誘導してもよい。このような塩には、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタン硫酸、エタンスルホン酸、1、2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、樟脳酸、樟脳スルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸などの有機もしくは無機酸で形成される酸付加塩、あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが、(a)金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオン、または水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、および水酸化バリウム、アンモニアなどのアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物により置換されている場合、または(b)アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレン-ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、N-メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの脂肪族アミン、脂環式アミン、もしくは芳香族有機アミンなどの有機塩基を配位結合させる場合のいずれかに形成される塩基付加塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
塩は、限定されるものではないが、例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどをさらに含むことができ、化合物が塩基性官能基を含む場合、ハロゲン化水素酸塩、例えば、塩酸塩および臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、桂皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩、1、2-エタン-ジスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸)、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホネート、4-トルエンスルホネート、カンホレート、カンファースルホネート、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボキシレート、グルコヘプトネート、3-フェニルプロピオネート、トリメチルアセテート、tert-ブチル酢酸塩、硫酸ラウリル、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キナ酸塩、ムコン酸塩などの無毒性の有機または無機酸の塩をさらに含むことができる。
【0031】
「溶媒和物」という用語は、非共有分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の溶媒をさらに含む、本明細書に提供される化合物またはその塩を指すことが理解されよう。溶媒が水の場合、溶媒和物は水和物である。
【0032】
アリール基は芳香環由来の置換基を意味することが理解され得る。アリール基は、C6-C12アリール基であり得る。好ましくは、アリール基はフェニル、ビフェニル、またはナフチルである。
【0033】
最も好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)、または(VIa)を有する。
【0034】
【0035】
あるいは、化合物は、式(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(IVb)、(Vb)または(VIb)を有していてもよい。
【0036】
【0037】
R1は、-OHであり得る。しかしながら、好ましくは、R1は-NR9R10であり、より好ましくはR1は-NR9Hであり、最も好ましくはR1は-NH2である。
【0038】
好ましくは、R2が
【0039】
【0040】
である実施形態では、nは、好ましくは1~5である。したがって、nは1、2、3、4または5であり得、最も好ましくはnは1である。
【0041】
好ましくは、R2が
【0042】
【0043】
である実施形態では、nは1~7であり、より好ましくは2~6である。したがって、nは2、3、4、5または6であり得、好ましくはnは3または4であり、最も好ましくは4である。
【0044】
好ましくは、R2は、
【0045】
【0046】
より好ましくは、R2は、
【0047】
【0048】
R2が
【0049】
【0050】
である実施形態では、mは0、1、2、3、4または5であり得ることが理解されよう。好ましくは、mは1である。好ましくは、X1はパラ位にある。
【0051】
好ましい実施形態では、R2は、
【0052】
【0053】
好ましくは、R2が
【0054】
【0055】
である実施形態では、R9またはR10の少なくとも一方が-Hであり、最も好ましくはR9またはR10の両方が-Hである。
【0056】
好ましくは、R2が
【0057】
【0058】
である実施形態では、R11がアリールであり、最も好ましくはフェニルである。
【0059】
好ましい実施形態では、R2が、
【0060】
【0061】
最も好ましい実施形態では、R2が、
【0062】
【0063】
R3は、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基であり得ることが理解されよう。好ましくは、R3はメチルである。しかしながら、より好ましい実施形態では、R3は-Hである。
【0064】
R4が
【0065】
【0066】
である実施形態では、nは好ましくは1~5である。したがって、nは1、2、3、4または5であり得、好ましくは、nは1である。
【0067】
R4が
【0068】
【0069】
である実施形態では、nは好ましくは1~7であり、より好ましくは2~6である。したがって、nは2、3、4、5または6であり得、好ましくはnは3または4である。
【0070】
一実施形態では、R4は、好ましくは
【0071】
【0072】
より好ましくは、R4は、
【0073】
【0074】
R4が
【0075】
【0076】
である実施形態では、mは0、1、2、3、4または5であり得ることが理解されよう。好ましくは、mは1である。好ましくは、X1はパラ位にある。
【0077】
好ましくは、R4は、
【0078】
【0079】
である。
【0080】
より好ましくは、R4は、
【0081】
【0082】
好ましくは、R4が
【0083】
【0084】
である実施形態では、R9またはR10の少なくとも一方が-Hであり、最も好ましくはR9またはR10の両方が-Hである。
【0085】
したがって、R4は、好ましくは
【0086】
【0087】
より好ましくは、R4は、
【0088】
【0089】
R5はメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基であり得ることが理解されよう。好ましくは、R5はメチルである。しかしながら、より好ましい実施形態では、R5は-Hである。
【0090】
別の実施形態では、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に、-OHまたは-NH2で置換された5員環を形成する。したがって、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に、以下の構造を定義することができ、
【0091】
【0092】
式中、X2が-OHまたは-NH2である。
【0093】
好ましくは、R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義することができる。
【0094】
【0095】
好ましくは、R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義することができる。
【0096】
【0097】
より好ましくは、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義することができる。
【0098】
【0099】
好ましくは、X2は-NH2である。
【0100】
さらにより好ましくは、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義する。
【0101】
【0102】
さらにより好ましくは、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義する。
【0103】
【0104】
最も好ましくは、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義する。
【0105】
【0106】
R6が
【0107】
【0108】
である実施形態では、nは好ましくは1~5である。したがって、nは1、2、3、4または5であり得、好ましくは、nは1である。
【0109】
R6が
【0110】
【0111】
である実施形態では、nは好ましくは1~7であり、より好ましくは2~6である。したがって、nは2、3、4、5または6であり得、好ましくはnは3または4であり、最も好ましくはnは3である。
【0112】
好ましくは、R6は、
【0113】
【0114】
より好ましくは、R6は、
【0115】
【0116】
R6が
【0117】
【0118】
である実施形態では、mは0、1、2、3、4または5であり得ることが理解されよう。好ましくは、mは0である。より好ましくは、mは1である。好ましくは、X1はパラ位にある。
【0119】
好ましい実施形態では、R6が、
【0120】
【0121】
好ましくは、R6が
【0122】
【0123】
である実施形態では、R9またはR10の少なくとも一方は-Hであり、最も好ましくはR9またはR10の両方が-Hである。
【0124】
好ましくは、R6が
【0125】
【0126】
である実施形態では、R11はアリールであり、最も好ましくはフェニルである。
【0127】
好ましい実施形態では、R6は、
【0128】
【0129】
最も好ましい実施形態では、R6は、
【0130】
【0131】
R7はメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基であり得ることが理解されよう。好ましくは、R7はメチルである。しかしながら、より好ましい実施形態では、R7は-Hである。
【0132】
好ましい一実施形態では、R8は-Hである。しかしながら、より好ましい実施形態では、R8は
【0133】
【0134】
好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0135】
【0136】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0137】
【0138】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0139】
【0140】
R6が、
【0141】
【0142】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0143】
好ましくは、R3がHであり、R7がHである。
【0144】
いくつかの実施形態では、R3はHであり、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0145】
【0146】
R7はHである。
【0147】
いくつかの別の実施形態では、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0148】
より好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0149】
【0150】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0151】
【0152】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R6が、
【0153】
【0154】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0155】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0156】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0157】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0158】
別のより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0159】
【0160】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0161】
【0162】
R6が、
【0163】
【0164】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物を提供する。
【0165】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0166】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0167】
好ましくは、R3がHであり、R7がHである。
【0168】
別のより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0169】
【0170】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0171】
【0172】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R6が、
【0173】
【0174】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0175】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0176】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0177】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0178】
さらにより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0179】
【0180】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0181】
【0182】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R6が、
【0183】
【0184】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0185】
好ましくは、化合物は式(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(IVb)、(Vb)または(VIb)の化合物である。
【0186】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ib)の化合物である。
【0187】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0188】
さらにより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0189】
【0190】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0191】
【0192】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R6が、
【0193】
【0194】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0195】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0196】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0197】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0198】
好ましくは、R1が-OHであり、R8がHである。より好ましくは、R1はNH2であり、R8は
【0199】
【0200】
さらにより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0201】
【0202】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0203】
【0204】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、あるいは
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0205】
【0206】
R6が、
【0207】
【0208】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルである、化合物が提供される。
【0209】
好ましくは、R3がHであり、R7がHである。
【0210】
いくつかの実施形態では、R3はHであり、R4およびR5はそれらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0211】
【0212】
R7はHである。
【0213】
いくつかの別の実施形態では、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0214】
より好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0215】
【0216】
R3が、Hであり、
R4が、
【0217】
【0218】
R5が、Hであり、または
R6が、
【0219】
【0220】
R7はHである、化合物が提供される。
【0221】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0222】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0223】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0224】
別のより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0225】
【0226】
R3が、Hであり、
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0227】
【0228】
R6が、
【0229】
【0230】
R7はHである、化合物が提供される。
【0231】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0232】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0233】
好ましくは、R3がHであり、R7がHである。
【0234】
別のより好ましい実施形態では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0235】
【0236】
R3が、Hであり、
R4が、
【0237】
【0238】
R5が、Hであり、または
R6が、
【0239】
【0240】
R7はHである、化合物が提供される。
【0241】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0242】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0243】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0244】
さらにより好ましい態様では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0245】
【0246】
R3が、Hであり、
R4が、
【0247】
【0248】
R5が、Hであり、または
R6が、
【0249】
【0250】
R7はHである、化合物が提供される。
【0251】
好ましくは、化合物は式(Ib)、(IIb)、(IIIb)、(IVb)、(Vb)または(VIb)の化合物である。
【0252】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ib)の化合物である。
【0253】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0254】
さらにより好ましい態様では、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R2が、
【0255】
【0256】
R3が、Hであり、
R4が、
【0257】
【0258】
R5が、Hであり、または
R6が、
【0259】
【0260】
R7はHである、化合物が提供される。
【0261】
好ましくは、化合物は式(Ia)、(IIa)、(IIIa)、(IVa)、(Va)または(VIa)の化合物である。
【0262】
好ましくは、化合物は式(I)の化合物、さらに好ましくは式(Ia)の化合物である。
【0263】
好ましくは、R3はHであり、R5はHであり、R7はHである。
【0264】
好ましくは、R1が-OHであり、R8がHである。より好ましくは、R1はNH2であり、R8は
【0265】
【0266】
好ましくは、化合物は、式(101)、(102)、(103)、(104)または(105)の化合物である。
【0267】
【0268】
【0269】
より好ましくは、化合物は式(101a)、(102a)、(103a)、(104b)または(105a)の化合物である。
【0270】
【0271】
【0272】
式(101a)、(102a)、(103a)、(104b)および(105a)の化合物はそれぞれ、実施例に記載されている化合物Tri02~06に対応することが理解されよう。
【0273】
該化合物はそれ自体新規であると考えられている。
【0274】
したがって、第4の態様によれば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(V)の化合物であって、式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0275】
【0276】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0277】
【0278】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R6が、
【0279】
【0280】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0281】
【0282】
R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0283】
第5の態様によれば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、または(VI)の化合物であって、式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0284】
【0285】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4およびR5が、それらが結合する窒素および炭素と共に以下の構造を定義し、
【0286】
【0287】
R6が、
【0288】
【0289】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0290】
【0291】
R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0292】
第6の態様によれば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であって、式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0293】
【0294】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0295】
【0296】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R6が、
【0297】
【0298】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0299】
【0300】
R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0301】
第7の態様によれば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であって、式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0302】
【0303】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0304】
【0305】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R6が、
【0306】
【0307】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0308】
【0309】
R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0310】
第8の態様によれば、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)または(VI)の化合物であって、式中、
R1が、-NR9R10または-OHであり、
R2が、
【0311】
【0312】
R3が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R4が、
【0313】
【0314】
R5が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R6が、
【0315】
【0316】
R7が、H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
R8が、-H、直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニル、または
【0317】
【0318】
R9およびR10が、独立して、-H、または直鎖もしくは分岐のC1-5アルキルもしくはアルケニルであり、
各nが、独立して0~10である、化合物、
またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相が提供される。
【0319】
第4、第5、第6、第7および第8の態様の化合物のR基および式の定義のいずれも、第1、第2および第3の態様に関して上述したようにさらに限定され得ることが理解されよう。
【0320】
さらなる態様では、治療に使用するための第4、5、6、7および8の態様による化合物が提供される。
【0321】
なおさらなる態様では、神経変性障害を治療、改善、または予防するのに使用するための、第4、5、6、7および8の態様による化合物が提供される。
【0322】
本発明による化合物は、アルツハイマー病などの神経変性障害を治療、改善、または予防するための、単剤療法(すなわち、第1の態様によって定義される化合物の使用)で使用され得る薬剤において使用され得ることが理解されよう。あるいは、本発明による化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤などのアルツハイマー病を治療、改善、または予防するための既知の療法の補助として、またはそれと組み合わせて使用してよい。
【0323】
本発明による化合物は、特に組成物の使用方法に応じて、いくつかの異なる形態を有する組成物に組み合わせることができる。したがって、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液剤、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル溶液、経皮パッチ、リポソーム懸濁液、または治療を必要とするヒトまたは動物に投与できる他の任意の適切な形態であり得る。本発明による薬剤のビヒクルは、それが与えられる対象によって十分に許容され、好ましくは血液脳関門を通過してペプチドの送達を可能にするものであるべきことが理解されよう。
【0324】
脳障害に対する任意の治療の効率は、候補治療化合物が血液脳関門(BBB)を通過する能力に依存することが理解されよう。しかしながら、アルツハイマー病の間、本発明の化合物が中枢神経系、理想では本発明の化合物が必要とされる変性部位のみに、すなわちBBBが損なわれているところに到達することを可能にし得る透過性を血液脳関門が増大させることは周知である。
【0325】
本発明のペプチドとBBBを通過するために、以下を含む、2つの主な戦略を適用することができる:(1)トランスポーターが特異的に脳を標的にし、活性化合物を送達するナノ粒子の使用(この方法は、ペプチド、タンパク質および抗癌剤を脳に送達するために首尾よく使用されてきた);および(2)カーゴペプチドの使用(BBBを通過して特異的に輸送されるそのようなペプチドの添加は、促進された方法による本発明の化合物の移動を可能にする)。
【0326】
本発明による化合物を含む薬剤は、いくつかの方法で使用することができる。例えば、経口投与が必要とされる場合があり、その場合、化合物は、例えば錠剤、カプセル剤または液剤の形態で経口摂取され得る組成物内に含まれ得る。鼻腔スプレーによるペプチド投与は、経口または静脈内投与方法よりも速くかつより効率的に脳に到達するので、化合物を投与するための別の選択肢は、鼻腔スプレーを使用することであろう(http://memoryzine.com/2010/07/26/nose-sprays-cross-blood-brain-barrier-faster-and-safer/参照)。したがって、本発明の化合物を含む組成物は、吸入によって(例えば鼻腔内に)投与することができる。組成物はまた、局所使用のためにも製剤化され得る。例えば、クリームまたは軟膏を例えば脳に隣接して皮膚に塗布することができる。
【0327】
本発明による化合物はまた、徐放型または遅延型放出デバイスに組み込まれてもよい。そのようなデバイスは、例えば、皮膚の上または下に挿入されてもよく、薬剤は数週間または数ヶ月にわたって放出されてもよい。デバイスは、治療部位、例えば頭部に少なくとも隣接して配置することができる。そのようなデバイスは、本発明に従って使用される化合物による長期治療が必要で、通常頻繁な投与を必要とする(例えば、少なくとも毎日の注射)場合に、特に有利であり得る。
【0328】
好ましい実施形態では、本発明による薬剤は、血流中への注射または治療を必要とする部位への直接注射によって対象に投与することができる。例えば、薬剤は少なくとも脳に隣接して注射することができる。注射は、静脈内(ボーラスまたは注入)、または皮下(ボーラスまたは注入)、または皮内(ボーラスまたは注入)であり得る。
【0329】
必要とされる化合物の量は、投与方法、ポリペプチドの生理化学的性質、および単独療法または併用療法で使用されるかどうかに依存する、化合物の生物学的活性および生物学的利用能によって決定されることが理解されよう。投与頻度はまた、治療される対象内の化合物の半減期によっても影響されるだろう。投与される最適投与量は、当業者によって決定されてよく、使用中の特定の化合物、薬学的組成物の強度、投与方法、および神経変性疾患の進行によって変わる。対象の年齢、体重、性別、食事、および投与時間を含む、治療される特定の対象によるさらなる要因は、投与量を調整する必要性をもたらすであろう。
【0330】
一般に、どのポリペプチドを使用するかに応じて、0.001μg/kg体重~10mg/kg体重の一日量の本発明による化合物を、神経変性疾患の治療、改善、または予防に使用することができる。より好ましくは、1日量は0.01μg/kg体重~1mg/kg体重、最も好ましくは約0.1μg/kg~10μg/kg体重である。
【0331】
化合物は、神経変性疾患の発症前、発症中または発症後に投与することができる。一日量は、単回投与(例えば、一日一回の注射または鼻腔スプレーの吸入)として与えられてよい。あるいは、化合物は1日に2回以上の投与を必要とし得る。一例として、化合物は、0.07μg~700mgの一日量(すなわち、体重70kgと仮定して)を2回(または治療される神経変性疾患の重症度に応じて2回以上)投与することができる。治療を受けている患者は、起床時に最初の用量を服用し、次に夕方に(2回投与計画の場合)またはその後3~4時間間隔に2回目の用量を服用することができる。あるいは、徐放放出デバイスを使用して、反復用量を投与する必要なく、本発明による化合物の最適用量を患者に提供することができる。
【0332】
製薬業界で慣用されているもの(例えば、インビボ実験、臨床試験など)のような既知の手順を用いて、本発明による化合物の具体的な製剤および正確な治療計画(例えば薬剤の一日量および投与頻度など)を形づくることができる。本発明者らは、本発明の化合物の使用に基づいて、抗神経変性疾患組成物を最初に示唆したと考える。
【0333】
したがって、本発明の第9の態様では、第1の態様による化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体もしくは多形相、および薬学的に許容されるビヒクルを含む薬学的組成物が提供される。
【0334】
薬学的組成物は、好ましくは抗神経変性疾患組成物、すなわち、アルツハイマー病などの対象における神経変性障害の治療的改善、予防または治療に使用される薬学的製剤である。
【0335】
本発明はまた、第10の態様では、治療有効量の第1の態様の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、互変異性体、もしくは多形相と、薬学的に許容されるビヒクルとを接触させることを含む、第9の態様による薬学的組成物の製造方法を提供する。
【0336】
好ましくは、化合物は、式(101)、(102)、(103)、(104)、または(105)の化合物である。
【0337】
より好ましくは、化合物は式(101a)、(102a)、(103a)、(104b)、または(105a)の化合物である。
【0338】
「対象」は、脊椎動物、哺乳動物、または家畜であり得る。したがって、本発明による薬剤は、任意の哺乳動物、例えば家畜(例えばウマ)、ペットを治療するために使用することができ、または他の獣医学的用途に使用することができる。しかしながら、最も好ましくは、対象はヒトである。
【0339】
化合物の「治療有効量」は、対象に投与したときに、神経変性障害病態を治療するため、または所望の効果を生み出すために必要とされる活性剤の量である任意の量である。
【0340】
例えば、使用される化合物の治療有効量は、約0.001mg~約800mg、好ましくは約0.01mg~約500mgであり得る。化合物の量は、約0.1mg~約100mgの量であることが好ましい。
【0341】
本明細書で言及される「薬学的に許容されるビヒクル」は、薬学的組成物を製剤するのに有用であることが当業者に知られている任意の既知の化合物または既知の化合物の組み合わせである。
【0342】
一実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは固体であってよく、組成物は粉末または錠剤の形態であってよい。固体の薬学的に許容されるビヒクルは、香味剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、染料、充填剤、流動促進剤、圧縮助剤、不活性結合剤、甘味剤、防腐剤、コーティング剤、または錠剤崩壊剤としても作用し得る1つ以上の物質を含んでもよい。ビヒクルは封入材料でもあり得る。粉末剤では、ビヒクルは、本発明による微粉化活性剤と混合されている微粉化固体である。錠剤では、活性剤を必要な圧縮特性を有するビヒクルと適切な割合で混合し、所望の形状およびサイズに圧縮することができる。粉末剤および錠剤は、好ましくは最大99%の活性剤を含有する。適切な固体ビヒクルとしては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。別の実施形態では、薬学的ビヒクルはゲルであってよく、組成物はクリームなどの形態であってもよい。
【0343】
しかしながら、薬学的ビヒクルは液体であってもよく、薬学的組成物は溶液の形態である。液体ビヒクルは、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、および加圧組成物を調製するのに使用される。本発明による活性剤は、水、有機溶媒、その両方の混合物、または薬学的に許容される油もしくは脂肪などの薬学的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁することができる。液体ビヒクルは、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味剤、香味剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤、または浸透圧調整剤などの他の適切な薬学的添加剤を含有することができる。経口および非経口投与のための液体ビヒクルの適切な例には、水(上記の添加剤、例えばセルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を部分的に含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)、およびそれらの誘導体、ならびに油(例えば分別ヤシ油および落花生油)が含まれる。非経口投与の場合、ビヒクルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルでもあり得る。滅菌液体ビヒクルは、非経口投与用の滅菌液体形態の組成物において有用である。加圧組成物用の液体ビヒクルは、ハロゲン化炭化水素または他の薬学的に許容される噴射剤であり得る。
【0344】
滅菌溶液または懸濁剤である液体薬学的組成物は、例えば、筋肉内、髄腔内、硬膜外、腹腔内、静脈内、および特に皮下注射によって利用することができる。化合物は、滅菌水、食塩水、または他の適切な滅菌注射用媒体を使用して投与時に溶解または懸濁することができる滅菌固体組成物として調製することができる。
【0345】
本発明の化合物および組成物は、他の溶質または懸濁剤(例えば、溶液を等張にするのに十分な食塩水またはグルコース)、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビタンモノレート、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステルおよびそのエチレンオキシドと共重合した無水物)などを含有する滅菌溶液または懸濁液の形態で経口投与され得る。本発明に従って使用される化合物は、液体または固体組成物形態のいずれかで経口投与することもできる。経口投与に適した組成物には、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、錠剤、および散剤などの固体形態、ならびに液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁剤などの液体形態が含まれる。非経口投与に有用な形態としては、滅菌溶液、乳剤、および懸濁剤が挙げられる。
【0346】
本明細書に記載のすべての特徴(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)、および/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合せを除き、任意の組み合わせで上記態様のいずれかと組み合わせてよい。
【0347】
本発明をよりよく理解するために、また本発明の実施形態がどのように実施され得るかを示すために、添付の図面を例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0348】
【
図1A】環状ペプチドNBP-14に結合するα7ニコチン性受容体のアロステリック結合ポケット(すなわち活性部位)における4つの重要な領域(領域1、2、3および4)の表示、およびNBP-14がT30(
図1a)またはアミロイド(
図1b)と競合するかどうかに応じて、これら4つの領域間のそれぞれの距離について異なる図を示す。
【
図1B】環状ペプチドNBP-14に結合するα7ニコチン性受容体のアロステリック結合ポケット(すなわち活性部位)における4つの重要な領域(領域1、2、3および4)の表示、およびNBP-14がT30(
図1a)またはアミロイド(
図1b)と競合するかどうかに応じて、これら4つの領域間のそれぞれの距離について異なる図を示す。
【
図2】極性に基づく色分けによるα7ニコチン性受容体結合ポケットの3D構造を示す。
【
図3】領域1~4を示すα7ニコチン性受容体結合ポケットの棒モデル図を示す。
【
図5A】α7ニコチン性受容体の各結合領域(領域1、2、3または4)での結合に関与するアミノ酸または化学機能の円グラフを示し、残基が不活性ペプチドを生じるかどうか、有毒なT30に対して活性であるか、またはAベータに対して活性であるかを示す。
【
図5B】α7ニコチン性受容体の各結合領域(領域1、2、3または4)での結合に関与するアミノ酸または化学機能の円グラフを示し、残基が不活性ペプチドを生じるかどうか、有毒なT30に対して活性であるか、またはAベータに対して活性であるかを示す。
【
図5C】α7ニコチン性受容体の各結合領域(領域1、2、3または4)での結合に関与するアミノ酸または化学機能の円グラフを示し、残基が不活性ペプチドを生じるかどうか、有毒なT30に対して活性であるか、またはAベータに対して活性であるかを示す。
【
図5D】α7ニコチン性受容体の各結合領域(領域1、2、3または4)での結合に関与するアミノ酸または化学機能の円グラフを示し、残基が不活性ペプチドを生じるかどうか、有毒なT30に対して活性であるか、またはAベータに対して活性であるかを示す。
【
図6A】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図6B】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図6C】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図6D】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図6E】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図6F】異なる領域(領域1~4)で結合するアミノ酸間の距離を比較する。
【
図7】T30毒性に対する保護を提供するのに特に関連性がある領域1、2、3および4のそれぞれに結合するための化学的官能基のリストである。
【
図8】βアミロイド産生に対する保護を提供するのに特に関連性がある領域1、2、3および4のそれぞれに結合するための化学的官能基のリストである。
【
図9】ペプチド模倣化合物1(すなわち、Tri02)についての細胞培養データ(すなわち、アセチルコリンエステラーゼ活性)を示す。
【
図10】ペプチド模倣化合物1(すなわち、Tri02)についての細胞培養データ(すなわち、カルシウムイオン流入)を示す。
【
図11】対照の環状ペプチドNBP-14についての脳切片上の電位感受性色素イメージング(VSDI)の結果を示す。
【
図12】ペプチド模倣化合物1(すなわち、Tri02)についての脳切片上の電位感受性色素イメージング(VSDI)の結果を示す。
【
図13A】脳切片に対する電位感受性色素イメージング(VSDI)を使用した、それぞれのベースライン応答振幅に対するペプチドの添加によって誘発された変化の相関分析を示す。T30によって誘発された応答振幅の変化は、それらのそれぞれのベースラインの振幅と負の相関があることがわかった(A)。したがって、外因性ペプチドを灌流した各実験について次の相関分析を実施した。B)T15、C)NBP14、D)Tri02、E)NBP14の存在下でのT30、およびF)Tri02の存在下でのT30。y軸上の単位=ΔF/F0、x軸上の単位=ΣδF/F0
【
図13B】脳切片に対する電位感受性色素イメージング(VSDI)を使用した、それぞれのベースライン応答振幅に対するペプチドの添加によって誘発された変化の相関分析を示す。T30によって誘発された応答振幅の変化は、それらのそれぞれのベースラインの振幅と負の相関があることがわかった(A)。したがって、外因性ペプチドを灌流した各実験について次の相関分析を実施した。B)T15、C)NBP14、D)Tri02、E)NBP14の存在下でのT30、およびF)Tri02の存在下でのT30。y軸上の単位=ΔF/F0、x軸上の単位=ΣδF/F0
【
図13C】脳切片に対する電位感受性色素イメージング(VSDI)を使用した、それぞれのベースライン応答振幅に対するペプチドの添加によって誘発された変化の相関分析を示す。T30によって誘発された応答振幅の変化は、それらのそれぞれのベースラインの振幅と負の相関があることがわかった(A)。したがって、外因性ペプチドを灌流した各実験について次の相関分析を実施した。B)T15、C)NBP14、D)Tri02、E)NBP14の存在下でのT30、およびF)Tri02の存在下でのT30。y軸上の単位=ΔF/F0、x軸上の単位=ΣδF/F0
【
図14】Tri02およびT30の添加によって媒介される作用の定量化を示す。
【
図15】基底前脳内の活性に対するT30の作用を遮断する際に、T30およびNBP14の同時適用をTri02およびT30のそれと比較したグラフを示す。NBP14の同時適用はT30誘発作用を完全に遮断することができたが、Tri02とT30の同時適用は同様であるが弱められた調節応答を引き起こした。
【
図16】ラット血液中の環状NBP-14についての薬物動態データを示す。
【
図17】ヒト血液中の環状NBP-14についての薬物動態データを示す。
【
図18】ラット血液中のペプチド模倣化合物1(すなわち、Tri02)についての薬物動態データを示す。
【
図19】ヒト血液中のペプチド模倣化合物1(すなわち、Tri02)についての薬物動態データを示す。
【
図20】ラット血液中のペプチド模倣化合物3(すなわちTri04)についての薬物動態データを示す。
【
図21】ヒト血液中のペプチド模倣化合物3(すなわちTri04)についての薬物動態データを示す。
【
図22】ラット血液中のプロカインについての薬物動態データを示す。
【
図23】ヒト血液中のプロカインについての薬物動態データを示す。
【
図24】ペプチド模倣化合物1(すなわちTri02)からの血液分解生成物を示す。
【
図25】ペプチド模倣化合物3(すなわちTri04)からの血液分解生成物を示す。
【
図26】ペプチド模倣化合物3(すなわちTri04)についての細胞培養データ(すなわち、カルシウムイオン流入)を示す。
【
図27A】(A)脳切片に対する電位感受性色素イメージング(VSDI)を用いたベースライン応答振幅に対するペプチド(T30およびTri04)の添加によって誘発された基底前脳の活性変化の時空マップを示す。(B)では、T30およびTri04(2μM)を用いた記録についての基底前脳の誘発活性を、基底前脳におけるT30単独の活性と比較したグラフを示す。
【
図27B】(A)脳切片に対する電位感受性色素イメージング(VSDI)を用いたベースライン応答振幅に対するペプチド(T30およびTri04)の添加によって誘発された基底前脳の活性変化の時空マップを示す。(B)では、T30およびTri04(2μM)を用いた記録についての基底前脳の誘発活性を、基底前脳におけるT30単独の活性と比較したグラフを示す。
【
図28】ベースライン条件と比較した、T30単独の存在下、またはT30とその遮断剤であるTri04の同時適用後に行われた記録についての蛍光分数変化(応答時系列、n=29)を示す。
【
図29】4μMの濃度で遮断剤Tri04を用いた基底前脳の活性の棒グラフを示す。Tri04の同時適用によって、ラットの基底前脳におけるT30誘発作用を完全に遮断することができた。
【実施例】
【0349】
本発明者らは、α-7nChR受容体に対する親和性を示し、そのため内因性の有毒なT30ペプチド(KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL-配列番号1)によるその活性部位への結合を遮断すると思われる新規ペプチドおよびペプチド模倣薬を設計するためにインシリコ研究を行った。インシリコ研究は、受容体と環状NBP-14(すなわちAEFHRWSSYMVHWK-配列番号2)との間の相互作用を見ることによって、T30毒性作用およびβアミロイド産生に対する保護に関連する化学的官能基を決定するのに役立ち、以前の研究(WO2005/004430参照)で証明されているように、それはこの保護を提供することが知られている。以下の実施例は、インシリコ研究、ならびにインビトロで同定および試験されている様々なペプチドおよびペプチド模倣物の構造を記載する。
【0350】
実施例1-α-7nChR受容体を阻害する新規ペプチドを設計するためのインシリコ研究
薬物標的受容体に対するNBP-14の親和性についてコンピューター分析を使用することにより、および構造に基づく研究により、本発明者らはNBP-14と同様のインビトロ特性を有する一連のより小さな直鎖状ペプチド(配列番号2)を同定した。598個のこれらのより小さい直鎖状ペプチドと標的目的のα-7nChR受容体との間の理論的相互作用が調べられている。NBP-14および前述のコンピューター分析から導かれた168個の直鎖状ペプチドを化学合成した。NBP-14および168個のペプチドのすべてをインビトロでPC12細胞においてスクリーニングした。これは神経分化および神経分泌研究のためのモデル系として日常的に使用されている。毒性および神経変性生物活性についてインビトロでスクリーニングを行い、後者はアセチルコリンエステラーゼ活性および細胞内カルシウムレベルをモニターすることによりスクリーニングを行った。これから、受容体への結合に関与する主要な化学的官能基を決定するためにPC12細胞上でインビトロで試験されたペプチドのインシリコ分析を用いて、T30に対する神経変性保護特性を有する一連の新規分子の第二世代が同定された。
【0351】
これらの化合物のドッキングは、α-7nChR受容体のアロステリック部位で行われた。受容体中の結合ポケットは、
図1~4に示されるように表すことができる4つの領域(領域1、2、3および4と示される)を含む。
【0352】
インシリコ分析は、ペプチド間の比較を含み、T30毒性およびβアミロイド産生に対する保護に特異的な化学的特徴/官能基を決定し、不活性な化学的特徴から区別する。
図2~4は、極性に基づく色分けを用いてα-7nChRの結合ポケットの3D構造について要約している。
【0353】
従った工程、ならびにその結果を以下にまとめる。
工程1:受容体の各特定領域に結合するアミノ酸の比較
この分析において、各領域は別々に考慮され、その領域に結合しているアミノ酸のみが考慮された。結合に関与するアミノ酸または化学的機能の円グラフを提示する、
図5に示されるように、この工程は異なる領域で特異的に結合するアミノ酸を明らかにしなかった。
【0354】
工程2:異なる領域で結合するアミノ酸間の距離の比較
この分析において、アミノ酸間の距離は、結合に関与する化学的官能基を考慮に入れて測定される。
図6に示されるこれらのデータは、不活性変異体と、T30毒性に対する活性およびβアミロイド活性を有する変異体との間の距離の有意な変化を示さない。
【0355】
工程3:結合に関与するアミノ酸の組み合わせの比較
この工程は、T30毒性およびβアミロイド産生に対する保護に必要なアミノ酸の組み合わせとして、結合に関与するアミノ酸の分析を必要とする。
【0356】
以下の表1および2に示す結果は、18個のアミノ酸の組み合わせがT30毒性に対する保護に必要であると思われ、31個のアミノ酸の組み合わせがβアミロイド産生に対する保護に必要であると思われることを示す。
【0357】
【0358】
【0359】
これらの結果を考慮して、次に、本発明者らは、受容体の各領域(領域1~4)内の結合に関与するアミノ酸残基のランク付け、すなわちT30毒性およびβアミロイド産生の両方に対する保護を提供するのに特に関連する化学的官能基を決定することができた。それぞれ
図7および8を参照のこと。
【0360】
本発明者らは、各領域が表3にまとめられている特定の化学的官能基を必要とすると結論付けることができた。
【0361】
【0362】
したがって、これらの知見を考慮して、本発明者らは、ニコチン性受容体の活性部位を優先的に遮断することによって内因性T30の毒性作用を遮断すると思われる適切なペプチドを実証した。
【0363】
実施例2-ペプチド模倣薬の設計および製造
次いで、(実施例2に記載のペプチドと同様に)ニコチン性受容体のアロステリック活性部位についてT30を上回る可能性がある新規のペプチド模倣化合物を設計および単離するために別のアプローチを使用した。そこで、α-7nChR受容体のアロステリック部位の開始初期X線構造について溶媒マッピングを実施した計算において、さらなるインシリコ研究を行った。この分析は、結合部位における優先的な溶媒相互作用を解明すること、ならびにホットスポット(疎水性、芳香族、極性または荷電)の存在を突き止めることを目的とした。この方法によって、活性になるためにリガンドによって必要とされる予想される化学的特徴を同定した。
【0364】
IPRO溶媒分析は、結合部位の高い疎水性を明らかにした。IPRO溶媒マッピング予測とT14ペプチドドッキングとの間の完全な重複が観察された。
【0365】
溶媒マッピング分析に基づいて、T14構造を用いてトリペプチドおよびテトラペプチドの直鎖状ライブラリーを生成した。この段階で、さらなる評価のために50万を超えるペプチド模倣薬を生成した。次に、ペプチド模倣薬をAutoDock Vinaドッキングエンジンによって評価した。理論的親和性ならびにリガンドの混同性(すなわち、低いイントラRMSDによって示される、複数の結合部位または異なる結合様式で結合する傾向)を分析に考慮した。この分析の結果、以下に示す5つの候補ペプチド模倣化合物が得られた。ここで、スコアが高い(絶対値)ほど、親和性が良くなり、化合物が活性である可能性が高くなる。
【0366】
化合物1-Tri02(スコア:-10.2)
【0367】
【0368】
化合物2-Tri03(スコア:-9.8)
【0369】
【0370】
化合物3-Tri04(スコア:-9.4)
【0371】
【0372】
化合物4-Tri05(スコア:-9.6)
【0373】
【0374】
化合物5-Tri06(スコア:-8.9)
【0375】
【0376】
実施例3-同定された化合物の合成
材料および方法
実施例2の化合物1および3をGenosphere Biotechnologiesによって合成し、RP-HPLC(>99%純度)を用いて純度について、および質量分析法によって質量について分析した(Tri02の平均MS604.79、およびTri04の平均MS628.83)。
Tri02の合成の簡単な段階的説明-配列:[アセチル]-[2Nal][4nh2-F]-Trp-[アミド]
1)Boc-Trp-OH+ClooEt+NH3・H2O------Boc-Trp-NH2、THF中で反応させ、酢酸エチルで抽出した。
【0377】
2)Boc-Trp-NH2、4NHcl、Boc-を除去し、H-Trp-NH2.Hclを得て、ジエチルエーテルによって沈殿反応させた。
【0378】
3)(2-ナフチル)-Ala+酢酸無水物----Ac-(2-ナフチル)-Ala-OH、THF/H2Oで反応させ、酢酸エチルで抽出した。
【0379】
4)Boc-(4-NH2)-Phe-OH+H-Trp-NH2.Hcl----Boc-(4-NH2)-Phe-Trp-NH2、DMF中で反応させ、酢酸エチルで抽出した。
【0380】
5)Boc-(4-NH2)-Phe-Trp-NH2、4NHcl、Boc-を除去し、H-(4-NH2)-Phe-Trp-NH2.Hclを得て、ジエチルエーテルによって沈殿反応させた。
【0381】
6)Ac-(2-ナフチル)-Ala-OH+H-(4-NH2)-Phe-Trp-NH2.Hcl--Ac-(2-ナフチル)-Ala-(4-NH2)-Phe-Trp-NH2をDMF中で反応させ、酢酸エチルで抽出した。
【0382】
7)精製
Tri04の合成の簡単な段階的説明-配列:[アセチル]-[bpa]R[4NH2-F]-[アミド]
1)Rink Amide MBHAレジンをDCM中に30分間浸漬し、ポンプで乾かし、DMFで3回洗浄し、ポンプで乾かした。
【0383】
2)Fmoc-(4-NH2)Phe-OH、DIEA、HBTU、DMF、N2を加え、30分間反応させ、ポンプで乾かし、DMFで6回洗浄し、ポンプで乾かした。
【0384】
3)ピペリジン/DMFを添加してFmoc-を除去し、20分間反応させ、ポンプ乾燥させ、DMFで3回洗浄し、ポンプ乾燥させた。
【0385】
4)Fmoc-Arg(Pbf)-OH、DIEA、HBTU、DMF、N2を加え、30分間反応させ、ポンプで乾かし、DMFで6回洗浄し、ポンプで乾かした。
【0386】
5)工程3を繰り返す。
【0387】
6)Fmoc-Bpa-OH、DIEA、HBTU、DMF、N2を添加し、30分間反応させ、ポンプで乾燥させ、DMFで6回洗浄し、ポンプで乾燥させた。
【0388】
7)工程3を繰り返す。
【0389】
8)無水酢酸/DMF、N2を加え、30分間反応させ、ポンプ乾燥し、3回DMFで洗浄し、ポンプ乾燥し、DCMで3回洗浄し、ポンプ乾燥し、MeOHで3回洗浄し、ポンプ乾燥する。
【0390】
9)ペプチドを樹脂から切断し、ポンプ乾燥し、ジエチルエーテルで沈殿反応させ、粗ペプチドを得て、遠心乾燥する。
【0391】
10)精製
実施例4-細胞培養における化合物1(Tri02)および化合物3(Tri04)の評価
本発明者らは、細胞培養試験において、T30、NBP-14、およびTri02を試験して、アセチルコリンエステラーゼ活性およびカルシウム流入に対するそれらの作用、ならびにカルシウム流入に対するTri04の作用を調べた。
【0392】
材料および方法
1.AChE活性アッセイ
AChE活性は、AChE活性の結果としてチオール基の存在を測定するエルマン試薬を用いて測定した。G4実験の場合、AChE(G4)活性を単独で試験し、またNBP14またはトリペプチドのいずれかと共に試験した。細胞生存アッセイに関しては、実験の前日にPC12細胞をプレーティングした。細胞をT30(1μM)単独で、またはNBP14もしくはトリペプチド(0.5μM)と組み合わせて処理した。処理後、各処理の上清(灌流液)を収集し、各条件の25μLを新しい平底96ウェルプレートに添加し、続いて175μlのエルマン試薬(溶液A:139mMのKH2PO4および79.66mMのK2HPO4、pH7.0;溶液B(基質):11.5mMのヨウ化アセチルチオコリン;溶液C(試薬):8mMの5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)および15mMのNaHCO3)を添加した。エルマン試薬は、33(A):3(B):4(C)の比で3つの溶液の混合物として調製した。吸光度測定は、Vmaxプレートリーダー(Molecular devices、Wokingham,UK)において405nmで実験の間、60分の間隔で行った。
【0393】
2.カルシウム蛍光測定
実験前日に、96ウェルプレートにおいてPC12細胞を、200μlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)+2mMのL-グルタミン培地に入れた。実験の日に、9mlのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)および1mlのプルロニックF127プラスを含むアッセイ緩衝液中に20μlのFluo-8を添加することによって、供給者によリ記載されるようにFluo-8溶液(Abcam)を調製した。その後、100μlの増殖培地を除去し、100μlのFluo-8溶液を添加した。NBP14またはトリペプチドと組み合わせたT30による処理を加え、インキュベーター内で30分間および室温で30分間インキュベートした。1時間後、プレートを蛍光プレートリーダー(Fluostar、Optima、BMG Labtech、Ortenberg、Germany)に入れた。蛍光を読み取る前に、ニコチン性受容体のα7特異的アゴニストである1μMのPNU282987を調製し、Fluostar注射器に入れた。各ウェルについて、基礎蛍光の読みによって、続いてニコチン受容体を介してカルシウムの増加を誘発するPNU282987注射によって読みを形成した。
【0394】
3.データ分析
異なる細胞技術のそれぞれにおいて、3回以上の実験の百分率値の平均を用いて統計分析を行った。GraphPAD Instat(GraphPAD software、San Diego,CA)を用いた一元配置分散分析(ANOVA)およびテューキーの事後検定により、複数の処置群と同じ対照との比較を行った。統計学的有意性は、p値<0.05で得た。
結果
Tri02についての結果を
図9および10に示し、後続のグラフに示すn値はいくつかの反復実験を指す。見てわかるように、1μMのT30はカルシウム流入およびAChE活性を増加させ、そして以前の研究(WO2005/004430参照)に示されるように、1μMのNBP14はこれらの毒性作用に対して保護する。
【0395】
さらに、図に見られるように、Tri02はまた、カルシウム流入およびAChE活性の両方を低下させることによってT30の毒性作用に対して明らかに保護する。このように、本発明者らは、Tri02が神経保護的であり、そのNBP-14よりも小さいサイズのために、血液脳関門を通過する可能性がはるかに高いと確信している。
【0396】
Tri04の結果を
図26に示す。見てわかるように、Tri04はカルシウム流入を減らすことによってT30の毒性作用も保護する。
実施例5-脳切片中の化合物1の評価
本発明者らは、電位感受性色素イメージング(VSDI)を用いて脳切片研究においてNBP-14およびTri02を試験した。
【0397】
材料および方法
1.脳切片の調製
オスのウィスターラット(14日齢)をイソフルラン(約15ml、100%w/w)を用いて麻酔した。イソフルランを麻酔容器(ガラス箱20×15×15cm)の底の綿床に適用し、次いでそこにラットを完全な麻酔に達するまで約45秒間置いた。各麻酔ラットの後足をつまんで適切な麻酔深度を調べた。麻酔を確認した後、ラットを素早く断頭し、脳を素早く取り出し、氷冷酸素添加「スライス」人工脳脊髄液に浸漬した。(aCSF、mmol換算:120 NaCl、5 KCL、20 NaHCO3、2.4 CaCl2 2 MgSO4、1.2 KH2PO4、10グルコース、6.7 HEPES塩および3.3 HEPES酸;pH=7.1)。次に冠状切片(厚さ400μm)を、前脳基底核、すなわちMS-dBB複合体(両耳間+9.20~+9.48mmからブレグマ+0.48~+0.2mmの間、
図4A)および体性感覚バレル野皮質(S1BF、両耳間+8.08~+7.20mmからブレグマ-0.92mm~-1.80mmの間)(Paxinos and Watson,1998)を含む脳のブロックからVibratome(Leica VT1000S)を使用して採取した。次に、VSDI(電圧感受性色素イメージング)記録で使用したものと同一の切片を室温で酸素化aCSFを含有するバブラーポットに移した(mmolでaCSFを記録:124 NaCl、5 KCL、20 NaHCO3、2.4 CaCl2 2 MgSO4、1.3 KH2PO4、10グルコース;pH=7.4)。次に、切片をVSD染色用に調製する前に約1~1.5時間放置した。
【0398】
2.VSDセットアップ
切片を、95%のO2、5%のCO2でバブリングされたaCSFで満たされた暗くて高湿度の容器に入れた。そこに入ったら、染料溶液(48%aCSF、48%ウシ胎児血清、3.5%DMSO、および0.4%クレモフォアEL中、4%の0.2mMスチリル染料ピリジニウム4-[2-[6-(ジブチルアミノ)-2-ナフタレニル]-エテニル]-1-(3-スルホプロピル)水酸化物(ジ-4-NEPPS)、Invitrogen、Paisley、UK)(Tominaga et al.,2000)を酸素化したaCSFを含むバブラーポットに戻す前に20~25分間切片に適用し、30分間室温に保った。
【0399】
VSDI記録を開始するとき、切片の下側に酸素化したaCSFの流れを可能にし、それを生かしておくために、切片を小片の濾紙上の記録槽内に置いた。次に、切片の上に置かれた自家製のプラスチックグリッドによってスライスの重さを量った。灌流浴溶液をステージヒーターで30±1℃に加熱した。同心両極性刺激電極(FHC、Maine,USA)を刺激を30Vに設定して基底前脳の腹側対角線帯に配置した。VSDデータの取得のために、88×60ピクセルに相当する2次元画像を、BV_Analyzeイメージングソフトウェアを有するMiCam02高解像度カメラ(Brain Vision、Japan)を使用して記録した。Micro1401MkII(CED Ltd、Cambridge、UK)により、画像キャプチャを刺激プロトコル(28秒おきに30回繰り返し)に合わせるために、画像の取得は、Spike2 V4.23ソフトウェア(CED Ltd、Cambridge,UK)に接続した。オスラムハロゲンキセノフォト64634HLX EFRディスプレイ/光学ランプを使用して光を発生させ、MiCam02高解像度画像システムに接続したMHF-G150LR(Moritex Corporation)を使用して、緑色(530±10nm)の光を放出するように濾過し、590nmを超えるハイパスフィルターを通して放出された蛍光を濾過した。
【0400】
3.薬の調製と適用
アセチルコリンエステラーゼ(AChE)C末端30アミノ酸ペプチド(T30、配列:‘N’-KAEFHRWSSYMVHWKNQFDHYSKQDRCSDL-配列番号1)、T30の活性14アミノ酸領域の環状バージョン(NBP14;配列:c[AEFHRWSSYMVHWK]-配列番号2:c[]=環状、N末端からC末端)、およびT30配列内に含まれる不活性15アミノ酸ペプチド(T15、配列:‘N’-NQFDHYSKQDRCSDL-配列番号3)を純度99%以上で特注合成し、Genosphere Biotechnologies(Paris,France)から購入した。直鎖状ペプチド模倣薬である、Tri02は、Iproteos(Barcelona,Spain)によってインシリコで設計され、合成され、99%以上の純度でGenosphere Biotechnologiesから購入された。実験前に、すべての薬物およびペプチドストックを凍結アリコートで調製した。灌流溶液の製造のために、保存溶液を解凍し、必要に応じてaCSFを記録するために加え、Minipulse3蠕動ポンプ(Gilson Scientific Ltd.、Bedfordshire,UK)を使用して1.5ml/分の一定灌流でバス適用した。各実験試行は52分続き、ベースライン記録(aCSF記録のみを伴う灌流)を確立するために20分、薬液を浴中に灌流させ、ならびに染料分子を細胞膜に再配置させるために12分間、最後に、薬液の存在下での応答を測定する記録時間に20分間かかった。
【0401】
4.データ分析と統計
各薬物条件で生成された2次元画像から、活性化の時間経過、強度および全体の蛍光シグナルの広がりなどの重要なデータを抽出した。これらのデータをカスタムスクリプトを使用して使用可能なMatLab(Mathworks Inc.Massachusetts,US)ファイルに変換し、次いでVSDIデータ分析用に特別に作られたMatLabツールボックスを使用して分析した(Bourgeois et al.,2014)。このツールボックスでは、各実験で使用されるすべてのスライスにわたって同一のROIからデータを抽出して照合するために、すべての切片に適用できる固定関心領域(ROI)ジオメトリを選択できる。基底前脳切片については、使用されるROIはMSdBB複合体であり、それはMS(内側中隔核)、VDB(腹側対角帯)およびHDB(水平対角帯)を含むように選択される。さらに重要なことに、このROIは誘発反応全体を含めるために選択された。この反応は、データの定性的記述を提供するために、単一の平均化された時系列として、または「時空間マップ」の時空間にわたってプロットできる。しかしながら、定量化可能な値を生成するために、刺激の瞬間(t=0)とその後の156msとの間の時系列の下の面積を計算した(合計蛍光分数変化)。各個々の切片間に見られる反応の変動性のために、各実験から生成された生データをそれ自体のベースラインに関して正規化して正規化蛍光値を得た。この定量方法は、VSDIによって生成されたシグナルの複数の成分(Chemla and Chavane,2010)、すなわち即時ピークおよび長潜時反応を説明するために選択された(Badin et al.,2016)。統計は、Prism Graphpad6で行った。
【0402】
5.調節ペプチドの分析
T30を使用した実験を通して、シグナルの増加または減少が観察された。したがって、これらの結果を平均しても、変化は検出されなかった。過去に観察された様々な調製物におけるこのペプチドの調節作用(BonおよびGreenfield、2003、Day and Greenfield,2004、Greenfield et al.,2004、Badin et al.,2013)、およびこの種の調製物におけるT30の適用によって誘発された変化という事実が、ベースラインの反応振幅とやや負の相関(r=-0.4286、p=0.0257、スピアマンの順位相関、n=27、
図13A)があることを考慮して、これらの結果は、増加または減少が見られるかどうかで、二分されるべきであると決定された。
【0403】
続いて、外因性化合物を添加した各実験について同様の相関分析を行った(
図13)。有意な相関関係が決定したら、データを増加または減少が見られるかどうかに基づいて分類した。
【0404】
結果
図2、11および12を参照すると、4μMのTri02を添加すると、4μMのNBP14を適用した場合に見られる結果が再現される。
【0405】
図11を参照すると、灌流液へのNBP14(4μM)の添加は、誘発反応の大きさ(合計蛍光)への小さくて有意ではない変化を誘発した。重要ではないが、これらの小さな誘発変化はベースライン反応の大きさと逆相関することがわかった。その結果、データは、実際のデータ形式(上)と正規化されたデータ形式(下)の両方で、わずかな減少を引き起こした試験(左側のヒストグラム)と増加を引き起こした試験(右側のヒストグラム)に分けられた。一緒に考えれば、データセットはベースラインからの変化を示さないと思われるが(増加と減少は互いに打ち消し合うので)、それでも、蛍光変化を別々に考慮したとしても、NBP14によって有意な作用が引き起こされないことを確認することは重要だった。
【0406】
図12に示すように、灌流液へのTri02(4μM)の添加は、誘発反応の大きさ(合計蛍光)に対する小さな変化を誘発し、誘発された減少(合計11のうちn=8)は正規化ベースラインレベル(左下のヒストグラム、p<0.05)からの有意な偏差を示した。これらの変化はベースライン反応の大きさと逆相関することもわかった。その結果、データは、実際のデータ形式(上)と正規化されたデータ形式(下)の両方で、減少を引き起こした試験(左側のヒストグラム)と増加を引き起こした試験(右側のヒストグラム)に分けられた。一緒に考えれば、データセットはベースラインからの変化を示さないと思われるが(増加と減少は互いに打ち消し合うので)、それでも、蛍光変化を別々に考慮したとしても、NBP14によって有意な作用が引き起こされないことを確認することは重要だった。
【0407】
調節ペプチド模倣薬の分析
図13を参照すると、Tri02(4μM)およびT30(2μM)のデータ(n=15)についての相関分析が示されており、それらの共灌流は誘発反応の大きさにいくらかの変化を引き起こし、ほとんどがわずかな減少を示した(n=9)が、いくつかの切片では活性においてわずかに増加を示した(n=6)。この相関は有意であることが判明し(p=0.0405;r
2=-0.534)、NBP14およびTri02の追加に対して行ったように(それぞれ
図11および12)、データをTri02およびT30適用の結果として誘発活性の増加および減少を示すものに分割する正当性を提供した。
【0408】
図14を参照すると、Tri02およびT30の添加によって媒介される作用の定量化が示されている。誘発された増加および減少の両方の場合において、Tri02はベースラインからのT30誘導偏差に対して保護することが見出されず、有意な減少(左パネル、p<0.01、n=9)および増加(右パネル、p<0.05、n=6)が全体の効果において報告されている。
【0409】
図15に示すように、正常aCSF(黒色線)、2μMのT30(赤色線)、T30(2μM)および4μMのNBP14(青色線)、T30(2μM)および4μMのTri02、対照NBP14(4μM)実験(
図11、オレンジ色の線)、対照Tri02(4μM)実験(
図12、紫色の線)の作用を試験する実験についてのベースラインに対する正規化作用の全体的な線グラフ。このグラフは、ベースラインおよび互いに対する正規化減少を示し、T30単独が最大の偏差を誘導し、Tri02がそれらのT30誘導偏差を遮断することにいくらかの有効性を示すが、それらの共灌流において有意な変化が依然としてある状態を示す。
【0410】
実施例6-薬物動態
本発明者らは、ラットおよびヒトの血液中のNBP-14、Tri-02、およびTri-04の分解生成物を調べた。
【0411】
手順
試験化合物を、PBSまたはPBSで希釈した血液(雄ウィスターラットまたはヒト)のいずれかに10μg/mlでスパイクし、一連のサンプルを以下のスキームに従って採取した。
【0412】
【0413】
血中で不安定であることが知られている化合物、プロカインは、陽性対照として含まれていた(5倍希釈血液のみで実行)。サンプリング手順は、氷冷アセトニトリルにアリコートを加え、遠心分離し、分析まで上清をドライアイス上に保存することであった。インキュベーションが行われたのと同じ日に、エレクトロスプレーイオン化を使用するUHPLC-TOF質量分析による分析を行った。
結果
プロカインは、5倍希釈のラットおよびヒトの血液においてそれぞれ60%および100%の代謝回転を示し、
図22および23に示すように、使用した血液について許容可能な代謝能力を示した。
【0414】
ラットおよびヒトの血液中のNBP-14、Tri-02、およびTri-04についての安定性データを
図16~21にプロットする。NBP-14は良好な安定性を示し、分解物は検出されなかった。Tri-02は、5倍および20倍希釈したラットおよびヒトの血液の両方においていくらかの不安定性を示し、
図24に示されるように様々な分解物が検出された。Tri-04はTri-02よりも優れた安定性を示したが、それでもなお、
図25に示すように、5倍希釈のラット血液中に若干の分解物が検出された。したがって、Tri-02およびTri-04は安定しており、優れた薬物候補である。
【0415】
実施例7-脳切片中の化合物3の評価
本発明者らは、電位感受性色素イメージング(VSDI)を用いて脳切片研究においてTri04を試験した。
【0416】
材料および方法
1.脳切片の調製
実施例5と同様にして脳切片を調製した。
【0417】
2.VSDセットアップ(設定)
切片を、95%O2、5%CO2をバブリングしたaSCFで満たした暗くて高湿度の容器に入れた。入れた後、染料溶液(aCSF48%、ウシ胎児血清48%、DMSO3.5%、およびクレモフォアEL0.4%中、4%の0.2mMスチリル染料ピリジニウム4-[2-[6-(ジブチルアミノ)-2-アフェレニル]-エテニル]-1-(3-スルホプロピル)水酸化物(ジ-4-ANEPPS、Invitrogen、Paisley,UK)(Tominaga et al.,2000))をaCSFバブラーポット(室温、22℃+/-1.5℃)に1時間戻す前に、20~25分間切片に適用し、過剰の染料を洗い流して回収した。
【0418】
VSD記録を開始するとき、切片を生きたままに保つために切片を小さな濾紙上の記録槽内に置き、切片の上に置いた自家製プラスチックグリッドを用いて適切に秤量した。灌流浴溶液をステージヒーターで30+/-1℃に加熱した。同心両極性刺激電極(FHC、Maine,USA)を刺激を30Vに設定して基底前脳の腹側対角線帯に配置した。VSDデータを取得するために、Spike2 V6.0(CED Ltd、Cambridge,UK)と結合したUltima2004/08画像ソフトウェア(Brain Vision)を備えたデジタルカメラ(Brain Vision MiCAM Ultima R3-V20 Master)を用いて1ms解像度で16ビット画像を記録し、適切なISIに関して刺激を引き起こすために使用された。オスラムハロゲンキセノフォト64634HLX EFRディスプレイ/光学ランプを使用して光を発生させ、MiCAM Ultima超高速イメージングシステムに接続したMHF-G150LR(Moritex Corporation)を使用して、緑色(530±10nm)の光を放出するように濾光し、590nmを超えるハイパスフィルターを通して放出された蛍光を濾光した。
【0419】
3.薬の調製と適用
直鎖状ペプチド模倣薬Tri04は、Iproteos(Barcelona、Spain)によってインシリコで設計され、合成され、99%以上の純度でGenosphere Biotechnologiesから購入された。実験前に、すべての薬物およびペプチドストックを凍結アリコートで調製した。灌流溶液の製造のために、保存溶液を解凍し、必要に応じてaCSFを記録するために加え、Minipulse3蠕動ポンプ(Gilson Scientific Ltd.、Bedfordshire,UK)を使用して1.5ml/分の一定灌流でバス適用した。各実験試行は52分続き、ベースライン記録(aCSF記録のみを伴う灌流)を確立するために20分、薬液を浴中に灌流させ、ならびに染料分子を細胞膜に再配置させるために12分間、最後に、薬液の存在下での応答を測定する記録時間に15分間かかった。
【0420】
5.調節ペプチドの分析
T30が使用された実験の大部分を通して、シグナルの減少が観察された。T30は、p14ラットの基底前脳において記録されたVSDIシグナルにおいて正味の阻害(n=21)を誘発し、この値は実際にT30灌流中にごくわずかまたはわずかにポジティブな効果が見られた少数の例を含む(Badin et al,2016)。
【0421】
結果および考察
図27、28および29を参照すると、4μMのTri04の添加は4μMのNBP14の適用で以前に見られた結果を再現しているが、灌流溶液中の2μMのTri04は基底前脳の集団活性に対する有意な作用を決定する。
【0422】
調節ペプチド模倣薬の分析
図27Aを参照すると、2μMのT30(n=29)を含有する灌流液中に2μMのTri04が存在するために、時空間マップが基底前脳の活性の回復を示すことが示される。より具体的には、2μMのTri04は、ラット基底前脳の直接刺激によって測定された活性に対するT30の阻害作用の逆転を決定する。
【0423】
図27Bを参照すると、3つの記録エポックに対する棒グラフは、Tri04適用後の誘発反応の変化を示し、2μMのTri04共灌流が、T30誘発作用の阻害によって引き起こされる、ネットワーク活性の増加を引き起こすことを確認する(n=29、p=0.06、両側対t検定)。
【0424】
図28を参照すると、3つの記録条件(ベースライン、人工脳脊髄液(aCSF)へのT30適用、およびaCSFへのT30およびTri04の同時適用)にわたる反応時系列が、最初の100ミリ秒のT30記録およびT30+Tri04について、同様の活性化プロファイルを示し、一方、Tri04存在下で記録されるより高い活性はその後検出可能であることが示され、T30に対するTri04の保護的役割を確認する。
【0425】
図29を参照すると、3つの記録条件に対する棒グラフが示されている。2μMのT30を含有する人工脳脊髄液(aCSF)中の4μMのTri04の共灌流は、T30活性を逆転させる有意な作用を決定する。特に、Tri04は、T30単独の存在下での記録と比較して、基底前脳の活性の有意な増加(n=20、p<0.05、両側対t検定)を伴うベースラインからのT30誘導偏差に対して保護的であることが見出された。したがって、Tri04は、中規模ネットワーク活動に対するT30の毒性作用を遮断する若干の有効性を示す。
【配列表】