IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チャイロゲート インターナショナル インク.の特許一覧

特許7125156ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法
<>
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図1
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図2
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図3
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図4
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図5
  • 特許-ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】ベンズインデンプロスタグランジン中間体の結晶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 255/16 20060101AFI20220817BHJP
   C07C 253/34 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07C255/16 CSP
C07C253/34
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020162261
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2021176830
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】16/868,624
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512213583
【氏名又は名称】チャイロゲート インターナショナル インク.
【氏名又は名称原語表記】CHIROGATE INTERNATIONAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シ-イ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジアン-バン
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-047224(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103880801(CN,A)
【文献】特表2011-506599(JP,A)
【文献】MORIARTY,R.M. et al.,The Intramolecular Asymmetric Pauson-Khand Cyclization as a Novel and General Stereoselective Route to Benzindene Prostacyclins: Synthesis of UT-15 (Treprostinil),Journal of Organic Chemistry,2004年,Vol.69, No.6,pp.1890-1902,DOI:10.1021/jo0347720
【文献】芦澤 一英、他,医薬品の多形現象と晶析の科学,丸善プラネット株式会社,2002年09月20日,第305-317頁
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,2008年07月25日,pp.36-43
【文献】芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol.18, No.10,pp.81-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.6±0.2°、18.1±0.2°、20.0±0.2°及び21.3±0.2°においてその6つの最も強い特徴的なピークを含むX線粉末回折(XRPD)パターンを有することを特徴とする化合物(I)のI型結晶
【化1】
【請求項2】
前記XRPDパターンが、さらに以下の2θ反射角:9.7±0.2°、15.0±0.2°、16.6±0.2°、18.9±0.2°、19.7±0.2°、20.3±0.2°、22.2±0.2°、23.4±0.2°及び25.7±0.2°において特徴的なピークを含む、請求項に記載の化合物(I)のI型結晶
【請求項3】
さらにピーク開始温度が55.3±1℃であり、最大ピークが58.3±1℃である吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)熱記録パターンを有する、請求項に記載の化合物(I)のI型結晶
【請求項4】
エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される第1の溶媒中に化合物(I)を溶解して、均一溶液を形成する工程;
温度を下げる工程及び/又はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される第の溶媒を前記均一溶液に加える工程;並びに
沈殿物が形成されるまで撹拌する工程
を含む、請求項に記載のI型結晶を製造する方法(ただし、第1の溶媒としてメチルtert-ブチルエーテルを使用する場合、第1の溶媒の体積は、粗化合物(I)1g当たり20mL未満である)。
【請求項5】
第2の溶媒又は第1の溶媒と第2の溶媒との混合物を添加して沈殿をすすぐ工程;
沈殿物を濾別して化合物(I)のI型結晶を単離する工程;及び
任意に化合物(I)のI型結晶を乾燥する工程
をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、18.2±0.2°及び25.8±0.2°においてその6つの最も強い特徴的なピークを含むXRPDパターンを有することを特徴とする、化合物(I)のII型結晶
【化2】
【請求項7】
前記XRPDパターンが、さらに以下の2θ反射角:9.0±0.2°、9.8±0.2°、15.1±0.2°、17.7±0.2°、19.0±0.2°、20.1±0.2°、20.4±0.2°、21.4±0.2°及び22.2±0.2°において特徴的なピークを含む、請求項に記載の化合物(I)のII型結晶。
【請求項8】
5.6±1℃のピーク開始温度及び61.8±1℃の最大ピークを有する吸熱ピークを含むDSC熱記録パターンをさらに有する、請求項に記載の化合物(I)のII型結晶
【請求項9】
第3の溶媒メチルtert-ブチルエーテルに化合物(I)を溶解して均一溶液を形成する工程であって、第3の溶媒の体積は化合物(I)1g当たり約20mL以上である工程;
温度を下げる工程及び/又はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される第4の溶媒を前記均一溶液に加える工程;並びに
沈殿物が形成されるまで撹拌する工程
を含む、請求項に記載の化合物(I)のII型結晶を製造する方法。
【請求項10】
第4の溶媒又は第3の溶媒と第4の溶媒との混合物を添加して沈殿物をすすぐ工程;
沈殿物を濾別し、それによって化合物(I)のII型結晶を単離する工程;
任意に化合物(I)のII型結晶を乾燥する工程
を更に含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ベンズインデンプロスタグランジン類のための中間体の固体形状に関し、特に、結晶形の2-(((1R,2R,3aS,9aS)-2-ヒドロキシ-1-((S)-3-ヒドロキシオクチル)-2,3,3a,4,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[b]ナフタレン-5-イル)オキシ)アセトニトリル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-(((1R,2R,3aS,9aS)-2-ヒドロキシ-1-((S)-3-ヒドロキシオクチル)-2,3a,3a,4,9a-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[b]ナフタレン-5-イル)オキシ)アセトニトリル(以下、化合物(I))は、次のスキームAに示すように、トレプロスチニル、トレプロスチニルナトリウム、トレプロスチニルジエタノラミン、ヘキサデシルトレプロスチニル等のベンジンプロスタグランジン類を合成する重要な中間体である。
【0003】
【化1】
【0004】
スキームAの化合物(I)の合成プロセスは、特許文献1~3及び非特許文献1等に開示されている。しかしながら、先行文献によれば、製造中に化合物(I)の粘性液体のみが得られる。粘性液体は、有機化合物の非晶質形態であることがよく知られている。結晶性化合物と比較して、非晶性化合物の熱安定性、純度及び均一性は満足できるものではない。さらに、非晶質化合物は、その高粘性のために容器への粘着からの損失を回避するために、商業的取扱いが困難である。
【0005】
その結果、ベンズインデンプロスタグランジン類の合成中間体として使用するための安定な結晶形の化合物(I)の製造が緊急に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第103880801号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0053581号明細書
【文献】米国特許第8497393号明細書(((形式)))
【非特許文献】
【0007】
【文献】J. Org.Chem.,2004,69,1890-1902
【発明の概要】
【0008】
本発明者は、研究の上、化合物(I)の結晶形を製造するための結晶化方法を見出した。得られた化合物(I)の非晶質のものと比較してより高い純度を有する安定な結晶形は、一定の操作パラメーター、例えば、規則的な合成プロセスのための溶解度を提供することができる。さらに、化合物(I)の安定な結晶形はまた、貯蔵、製剤化、取り扱い及び輸送において、ならびに商業的考慮において利点を提示し得る。
【0009】
一態様において、本発明は、化合物(I)の結晶、及びその製造方法を提供する
【0010】
【化2】
【0011】
以上のような背景から、本発明の発明者は一連の研究を行い、驚くべきことに、エーテル系溶媒を用いることにより、化合物(I)の新規な結晶形を得ることができることを見出した。一方、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレン、アセトン、ジクロロメタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物などの商業的用途のための一般的な溶媒を使用する化合物(I)の結晶を得ることは非常に困難である。本発明は、少なくとも部分的には、化合物(I)の2つの結晶形に関する。結晶形の1つは、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、またはメチルtert-ブチルエーテル溶液から沈殿され、化合物(I)のI型結晶と呼ばれる。I型結晶の製造にメチルtert-ブチルエーテルを使用する場合、容量は、好ましくは、粗化合物(I)1g当たり約20mL未満である。他の結晶形は、メチルtert-ブチルエーテル溶液のみから沈殿し、化合物(I)のII型結晶と名付けられ、メチルtert-ブチルエーテルの体積は、好ましくは、粗化合物(I)1g当たり約20mL以上である。
【0012】
一実施形態において、本発明は、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.6±0.2°、18.1±0.2°、20.0±0.2°及び21.3±0.2°においてその6つの最も強い特徴的なピークを示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。
【0013】
一実施形態において、本発明は、55.3±1℃のピーク開始温度及び58.3±1℃最大ピークを有する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)熱記録パターンを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。
【0014】
一実施形態において、本発明は、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、18.2±0.2°及び25.8±0.2°においてその6つの最も強い特徴的ピークを示すXRPDパターンを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、55.6±1℃のピーク開始温度及び61.8±1℃の最大ピークを有する吸熱ピークを含むDSC熱記録パターンを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。
【0016】
本発明は、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶を提供し、これは、商業的取扱いにあたり、結晶形の変換なしに室温で貯蔵された場合に安定な状態を保つ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】化合物(I)のI型結晶のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図2】化合物(I)のI型結晶の示差走査熱量測定(DSC)熱記録パターンを示す。
図3】化合物(I)のI型結晶のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す。
図4】化合物(I)のII型結晶のX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
図5】化合物(I)のII型結晶の示差走査熱量測定(DSC)熱記録パターンを示す。
図6】化合物(I)のII型結晶のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0018】
化合物(I)のI型結晶及びその製造
【0019】
本発明の実施形態において、化合物(I)のI型結晶の製造方法は、以下の:
【0020】
【化3】
【0021】
(a)粗化合物(I)を、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択される第一の溶媒に溶解して、均一な溶液を形成する工程;
(b)温度を下げる及び/又はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される第4の溶媒を前記均一溶液に加える工程;
(c)沈殿が形成されるまで撹拌する工程;
(d)必要に応じて、第2の溶媒又は第1の溶媒と第2の溶媒との混合物を添加して沈殿物をすすぐ工程;
(e)任意に沈殿物を濾別して化合物(I)のI型結晶を単離する工程;
(f)任意に化合物(I)のI型結晶を乾燥する工程
を含む。
【0022】
第1の溶媒の選択は、化合物(I)のI型結晶が形成することができるか否かを決定するための重要な因子である。本発明者は、第1の溶媒として、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、トルエン、キシレン、アセトン、ジクロロメタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド及びそれらの混合物などの商業的用途のための一般的な溶媒を使用する化合物(I)の結晶を得ることが非常に困難であることを見出した。本発明において、粗化合物(I)を溶解するために使用される第1の溶媒は、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の溶媒の体積は、粗化合物(I)1g当たり約0.5mL~約100mL、好ましくは約1mL~約50mL、より好ましくは約2mL~約20mLであり得る。メチルtert-ブチルエーテルが第1の溶媒として使用される場合、体積は好ましくは約20mL未満、約15mL未満または約10mL未満である。いくつかの実施形態において、粗化合物(I)は、約0℃~約60℃、好ましくは約10℃~約50℃、より好ましくは室温~約40℃の範囲の温度で第1の溶媒に溶解することができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、均一溶液の温度は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度に下げられる。
【0024】
好ましい実施形態において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される第2の溶媒の体積は、第1の溶媒1mL当たり約0.1mL~約50mL、好ましくは約0.5mL~約20mL、より好ましくは約2mL~約10mLであり得る。いくつかの実施形態において、第2の溶媒は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度で添加することができる。
【0025】
本発明の一実施形態において、結晶析出は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度で行うことができる。
【0026】
本発明の一実施形態において、沈殿物を濾別する工程は、第2の溶媒、又は第1の溶媒と第2の溶媒との混合物を使用して沈殿物を洗浄する工程を含む。溶媒の混合において、第1の溶媒と第2の溶媒との比は、約1:1~約1:100、好ましくは約1:10~約1:50とすることができる。
【0027】
本発明の一実施形態において、化合物(I)のI型結晶は、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.6±0.2°、18.1±0.2°、20.0±0.2°、及び21.3±0.2°においてその6つの最も強い特徴的ピークを示すX線粉末回折(XRPD)パターンを有する。好ましい実施形態において、XRPDパターンは、以下の2θ反射角:9.7±0.2°、15.0±0.2°、16.6±0.2°、18.9±0.2°、19.7±0.2°、20.3±0.2°、22.2±0.2°、23.4±0.2°及び25.7±0.2°において特徴的なピークをさらに含む。より好ましくは、化合物(I)のI型結晶のXRPDパターンは、図1と一致する。化合物(I)のI型結晶の具体的なデータを表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
一実施形態において、本発明は、実質的に図1に示すようなXRPDパターンを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。
【0030】
一実施形態において、本発明は、55.3±1℃のピーク開始温度及び58.3±1℃のピーク最大値を有する吸熱ピークを含む示差走査熱量測定(DSC)熱記録パターンを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図2に示されるようなDSC熱記録パターンを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。
【0031】
本発明の方法において、有機溶媒系を用いることにより、化合物(I)の析出したI型結晶は、緻密な固体状の特徴を有するため、濾別が容易である。さらに、残留溶媒は、室温、高真空下で容易に除去することができる。粒状又は粉末状の特徴を有する化合物(I)の乾燥I型結晶は、高粘度を有する化合物(I)の液状形態と比較して、商業的に取り扱うにあたり、はるかに秤量が容易である。
【0032】
一実施形態において、本発明は、cm-1で、3255±4cm-1、3035±4cm-1、2963±4cm-1、2949±4cm-1、2927±4cm-1、2913±4cm-1、2856±4cm-1、1608±4cm-1、1582±4cm-1、1471±4cm-1、1456±4cm-1、1440±4cm-1、1373±4cm-1、1354±4cm-1、1317±4cm-1、1304±4cm-1、1289±4cm-1、1277±4cm-1、1257±4cm-1、1236±4cm-1、1210±4cm-1、1184±4cm-1、1169±4cm-1、1148±4cm-1、1134±4cm-1、1106±4cm-1、1092±4cm-1、1080±4cm-1、1049±4cm-1、1027±4cm-1、968±4cm-1、933±4cm-1、891±4cm-1、779±4cm-1、775±4cm-1、737±4cm-1及び702±4cm-1にピークを含む化合物(I)のI型結晶を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図3に示すような1% KBr FTIRスペクトルを有する化合物(I)のI型結晶を提供する。
【0033】
化合物(I)については、3359cm-1、3359cm-1、2931cm-1、2860cm-1、2249cm-1、929cm-1、745cm-1の、それぞれのピークからなる情報が非特許文献1に開示されている(これは、化合物(I)のI型結晶のFTIR特徴と明らかに異なる)。
【0034】
化合物(I)のII型結晶及びその製造
【0035】
本発明の実施形態において、化合物(I)のII型結晶の製造方法は、以下の工程:
【0036】
【化4】
(a)粗化合物(I)を第3の溶媒メチルtert-ブチルエーテルに溶解して、均一溶液を形成する工程;
(b)温度を下げる及び/又はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択される第4の溶媒を前記均一溶液に加える工程;
(c)沈殿が形成されるまで撹拌する工程;
(d)必要に応じて、沈殿物をすすぐための第4の溶媒又は第3の溶媒と第4の溶媒との混合物を添加する工程;
(e)任意に沈殿物を濾別して化合物(I)のII型結晶を単離する工程;
(f)任意に化合物(I)のII型結晶を乾燥する工程
を含む。
【0037】
本発明において、粗化合物(I)を溶解するために使用される第3の溶媒は、メチルtert-ブチルエーテルである。化合物(I)のII型結晶は、第3の溶媒としてエチルエーテル及びイソプロピルエーテルのような他の溶媒を使用して得ることができない。いくつかの実施形態において、第3の溶媒の体積は、化合物(I)のII型結晶が形成され得るかどうかを決定するための重要な因子である。いくつかの実施形態において、第3の溶媒の容量は、粗化合物(I)1g当たり、約20mL以上、約20mL~約200mL、約25mL~約100mL、または約30mL~約50mLであり得る。いくつかの実施形態において、粗化合物(I)は、約0℃~約60℃、好ましくは約10℃~約50℃、及びより好ましくは室温~約40℃の範囲の温度で第3の溶媒に溶解することができる。
【0038】
本発明の一実施形態において、均一溶液の温度は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度に低下させることができる。
【0039】
好ましい実施形態において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される第4の溶媒の体積は、第3の溶媒1mL当たり約10mL~約200mL、好ましくは約20mL~約150mL、より好ましくは約30mL~約100mLであり得る。いくつかの実施形態において、第4の溶媒は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度で添加することができる。
【0040】
本発明の一実施形態において、結晶析出は、約-30℃~約50℃、好ましくは約-20℃~約40℃、より好ましくは約-10℃~約30℃の範囲の温度で行うことができる。
【0041】
本発明の一実施形態において、沈殿物を濾別する工程は、第4の溶媒、又は第3の溶媒と第4の溶媒との混合物を使用して沈殿物を洗浄することを含む。溶媒の混合において、第3の溶媒と第4の溶媒との比は、約1:1~約1:100、好ましくは約1:10~約1:50とすることができる。
【0042】
本発明の一実施形態において、化合物(I)のII型結晶は、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、18.2±0.2°及び25.8±0.2°においてその6つの最も強い特徴的ピークを示すXRPDパターンを有する。好ましい実施形態において、XRPDパターンは、以下の2θ反射角:9.0±0.2°、9.8±0.2°、15.1±0.2°、17.7±0.2°、19.0±0.2°、20.1±0.2°、20.4±0.2°、21.4±0.2°、及び22.2±0.2°において特徴的なピークをさらに含む。より好ましくは、化合物(I)のII型結晶のXRPDパターンは、図4と一致する。化合物(I)のII型結晶の具体的なデータを表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
一実施形態において、本発明は、実質的に図4に示されるようなXRPDパターンを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。
【0045】
一実施形態において、本発明は、55.6±1℃のピーク開始温度及び61.8±1℃のピーク最大値を有する吸熱ピークを含むDSC熱記録パターンを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図5に示すようなDSC熱記録パターンを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。
【0046】
本発明の方法に有機溶媒系を用いることにより、化合物(I)の析出したII型結晶は、緻密な固体状の特徴を有するため、濾別が容易である。さらに残留溶媒は、室温、高真空下で容易に除去することができる。粒状又は粉末状特性を有する化合物(I)の乾燥II型結晶は、高粘度を有する化合物(I)の液状形態と比較して、商業的に取り扱うにあたり、はるかに秤量が容易である。
【0047】
一実施形態において、本発明は、cm-1で、3255±4cm-1、3035±4cm-1、2963±4cm-1、2949±4cm-1、2927±4cm-1、2913±4cm-1、2856±4cm-1、1608±4cm-1、1582±4cm-1、1471±4cm-1、1456±4cm-1、1440±4cm-1、1373±4cm-1、1354±4cm-1、1317±4cm-1、1304±4cm-1、1289±4cm-1、1277±4cm-1、1257±4cm-1、1236±4cm-1、1210±4cm-1、1184±4cm-1、1169±4cm-1、1148±4cm-1、1134±4cm-1、1106±4cm-1、1092±4cm-1、1080±4cm-1、1049±4cm-1、1027±4cm-1、968±4cm-1、933±4cm-1、891±4cm-1、779±4cm-1、775±4cm-1、737±4cm-1及び702±4cm-1のピークを含む化合物(I)のII型結晶を提供する。好ましい実施形態において、本発明は、実質的に図6に示すような1% KBr FTIRスペクトルを有する化合物(I)のII型結晶を提供する。
【0048】
粘性液体である化合物(I)については、cm-1で、3359cm、2931cm、2860cm-1、2249cm-1、929cm-1及び745cm-1におけるピークを含むFTIRの結果は、非特許文献1に開示されているが、これは化合物(I)のII型結晶のFTIRの特徴と明らかに異なる。
【0049】
本開示によれば、化合物(I)のI型結晶についてのXRPDパターンの6つの最も強い特徴的ピークは、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.7±0.2°、16.6±0.2°、18.2±0.2°及び25.8±0.2°に位置し、化合物(I)のII型結晶についてのXRPDパターンの6つの最も強い特徴的ピークは、以下の2θ反射角:4.5±0.2°、8.3±0.2°、11.6±0.2°、18.1±0.2°、20.0±0.2°及び21.3±0.2°に位置する。化合物(I)のI型結晶についてのXRPDパターンの特徴的ピークの位置は、化合物(I)のII型結晶についてのものと類似しているが、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶についての特徴的ピークの相対強度は、明らかに互いに異なる。さらに、XRPDパターンの特徴的なピークの相対強度は、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶について、15~25°付近(d値約6.5~3Åは分子内秩序化の距離に属する)で差を示し、図1及び図4に示すように、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶の分子内配置が異なることを示す。一方、DSC熱記録パターンの融点(最大ピーク)は、化合物(I)のI型結晶では58.3±1℃、化合物(I)のII型結晶では61.8±1℃であり、化合物(I)のI型結晶II型結晶の結晶構造が異なることを示している。上記の議論によれば、本発明者は、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶は、2つの異なる結晶形であることを同定した。
【0050】
さらに、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶の結晶は、両方とも安定な結晶形であり、良好な安定性を示し、他の結晶形または不純物の分解生成物を室温で6ヶ月間伴わない。さらに、化合物(I)のI型結晶及びII型結晶のアッセイは、通常の貯蔵温度(5℃及び-20℃)下で6ヶ月の貯蔵後であっても、98.0%~102.0%の間を維持することができる。しかしながら、化合物(I)のII型結晶は、単に室温で約10分間粉砕することによって、I型結晶に変換される。
【0051】
本明細書中に記載される特定の実施形態は、例示として示され、本発明の限定として示されないことが理解されるであろう。本発明の主な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態で使用することができる。当業者は、日常的な実験を用いて、本明細書中に記載される特定の手順に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができる。このような均等物は、本発明の範囲内であると考えられ、特許請求の範囲によってカバーされる。
【0052】
明細書において言及された全ての刊行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者の技能レベルを示すものである。全ての刊行物及び特許出願は、各個々の刊行物又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
用語「a」又は「an」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において「含む」という用語と併せて使用される場合、「1」を意味することができるが、「1以上」、「少なくとも1」及び「1又はそれ以上」の意味とも一致する。特許請求の範囲中の用語「又は」は、選択肢のみを指すことが明示的に示されていない限り、或いは選択肢が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味する。ただし、本開示は、選択肢及び「及び/又は」のみを指す定義を裏付ける。本出願全体を通じて、用語「約」は、装置の内在的な誤差の変動を含む値を表すのに用いられ、その方法は試験対象間に存在する値又は変動を決定するために使用される。
【0054】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるように、用語「含んでいる」(及び「含む」及び「含む」などのいかなる活用形も)、「有している」(及び「有する」及び「有する」などのいかなる活用形も)、「含有している」(及び「含有する」及び「含有する」などのいかなる活用形も)又は「含んでいる」(及び「含む」及び「含む」などのいかなる活用形も)は、包含的又は開放的であり、追加の、非記載の要素又は方法ステップを除外するものではない。
【0055】
本明細書に開示及び特許請求される化合物及び/又は方法の全ては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく作製及び実行することができる。本発明の化合物及び方法を好ましい実施形態に関して説明したが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法の組成物及び/又は方法並びに工程又は工程の順序に変形を適用することができることは、当業者には明らかであろう。当業者に明らかな全てのそのような同様な置換及び修飾は、添付の請求の範囲によって定義される本発明の精神、範囲及び概念内にあるとみなされる。
【実施例1】
【0056】
X線粉末回折(XRPD)解析:XRPDパターンを、固定発散スリット及び1D LYNXEYE検出器を有するBruker D2 PHASER回折計で収集した。試料(約100mg)を試料台上に平らに置いた。製造した試料を、10mA及び30kVの電力でCuKα照射を使用して、0.02度のステップサイズ及び1秒のステップ時間で、2°~50°の2θ範囲にわたって分析した。CuKβ照射は発散ビームニッケルフィルターにより除去した。
【0057】
示差走査熱量測定(DSC)分析:DSC熱記録パターンをTA DISCOVERY DSC25装置で収集した。試料(約5mg)を、クリンプ閉鎖アルミニウム蓋を有するアルミニウムパン中に秤量した。製造した試料を、窒素流下(約50mL/分)、10℃/分の走査速度で10℃~100℃で分析した。融解温度及び融解熱は、測定前にインジウム(In)によって較正した。
【0058】
フーリエ変換赤外(FTIR)分析:FTIRスペクトルをPerkin Elmer SPECTRUM 100装置で収集した。試料を、メノウ乳鉢及び乳棒を用いて約1:100の割合(w/w)で臭化カリウム(KBr)と混合した。混合物をペレットダイ中で約10~13トンの圧力で2分間圧縮した。得られたディスクは、4cmの解像度で4000cm-1から650cm-1まで収集したバックグラウンドに対して、4回スキャンした。データをベースライン補正し、正規化した。
【0059】
実施例1 粗化合物(I)の製造
【0060】
乾燥アセトン(200mL)中の(1R,2R,3aS,9aS)-1-((S)-3-ヒドロキシオクチル)-2,3,3a,4,9,9a-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[b]ナフタレン-2,5-ジオール(20.00g、0.06モル)を、炭酸カリウム(20.70g、0.15モル)、クロロアセトニトリル(6.40mL、0.10モル)及び臭化テトラブチル(3.20g、0.01ミリモル)で処理した。混合物を30℃で終夜加熱した。次に、反応混合物をセライトパッドで濾取した。濾取物を真空下で蒸発させた。粗生成物を、勾配溶離剤としてヘキサンと酢酸エチルの混合物を使用してシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、16.4gの粘稠な液体(粗化合物(I))を得た。
【0061】
実施例2 化合物(I)のI型結晶の製造
【0062】
粗化合物(I)(1.00g、実施例1より)及びイソプロピルエーテル(15mL)を、40℃に加熱して溶解し、次いで室温に冷却した。n-ヘプタン(17mL)を徐々に滴下し、混合物を氷水浴中で20時間撹拌し、固体沈殿が生じた。その後、得られた懸濁液を濾別し、すすいだ後、室温、高真空下で24時間乾燥することにより、0.90gの化合物(I)のI型結晶を得た。XRPD、DSC及びFTIRの結果は、図1図2及び図3と同様である。
【0063】
実施例3 化合物(I)のI型結晶の製造
【0064】
粗化合物(I)(1.01g、実施例1より)及びエチルエーテル(10mL)を、40℃に加熱して溶解し、次いで室温に冷却した。n-ペンタン(11mL)を徐々に滴下し、混合物を氷水浴中で24時間撹拌し、固体沈殿が生じた。その後、得られた懸濁液を濾別し、すすいだ後、室温、高真空下で24時間乾燥することにより、0.91gの化合物(I)のI型結晶を得た。XRPD、DSC及びFTIRの結果は、図1図2及び図3と同様である。
【0065】
実施例4 化合物(I)のI型結晶の製造
【0066】
粗化合物(I)(1.00g、実施例1より)及びメチルtert-ブチルエーテル(10mL)を、40℃に加熱して溶解し、次いで室温に冷却した。n-ヘキサン(10mL)を徐々に滴下し、混合物を氷水浴中で24時間撹拌し、固体沈殿が生じた。その後、得られた懸濁液を濾別し、すすいだ後、室温、高真空下で24時間乾燥し、0.90gの化合物(I)のI型結晶を得た。XRPD、DSC及びFTIRの結果は、図1図2及び図3と同様である。
【0067】
実施例5 化合物(I)のII型結晶の製造
【0068】
粗化合物(I)(1.00g、実施例1より)及びメチルtert-ブチルエーテル(20mL)を、40℃に加熱して溶解し、次いで室温に冷却した。n-ヘキサン(25mL)を徐々に滴下し、混合物を氷水浴中で24時間撹拌し、固体沈殿が生じた。その後、得られた懸濁液を濾別し、すすいだ後、室温、高真空下で24時間乾燥し、0.53gの化合物(I)のII型結晶を得た。XRPD、DSC及びFTIRの結果は、図4図5及び図6と同様である。
【0069】
実施例6 化合物(I)のII型結晶の製造
【0070】
粗化合物(I)(1.00g、実施例1より)及びメチルtert-ブチルエーテル(30mL)を、40℃に加熱して溶解し、次いで室温に冷却した。n-ヘプタン(40mL)を徐々に滴下し、混合物を氷水浴中で24時間撹拌し、固体沈殿が生じた。その後、得られた懸濁液を濾別し、すすいだ後、室温、高真空下で24時間乾燥し、0.51gの化合物(I)のII型結晶を得た。XRPD、DSC及びFTIRの結果は、図4図5及び図6と同様である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6