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特許7125170再生セルロース繊維用第1処理剤、再生セルロース繊維用処理剤、再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法、再生セルロース繊維の処理方法、及び再生セルロース繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】再生セルロース繊維用第1処理剤、再生セルロース繊維用処理剤、再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法、再生セルロース繊維の処理方法、及び再生セルロース繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/53 20060101AFI20220817BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/262 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/256 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20220817BHJP
   D06M 13/02 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
D06M15/53
D06M13/224
D06M13/262
D06M13/17
D06M13/292
D06M13/256
D06M13/188
D06M13/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021165661
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2021-10-07
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大海 卓滋
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071013(JP,A)
【文献】特開2015-206128(JP,A)
【文献】特開2007-284818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時にヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI/100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有し、前記硫酸エステル塩(A)の含有量と前記非イオン界面活性剤(B1)の含有量との質量比が、硫酸エステル塩(A)/非イオン界面活性剤(B1)=50/50~99/1であることを特徴とする再生セルロース繊維用第1処理剤。
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
【請求項2】
前記非イオン界面活性剤(B1)が、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール又は炭素数8以上24以下の脂肪酸1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加させた化合物を含むものである請求項1に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤。
【請求項3】
前記油脂(a)が、ひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、及び鯨油から選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤。
【請求項4】
更に、下記のアニオン界面活性剤(C)及び下記の油(D)から選ばれる少なくとも1つを含有する請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤。
アニオン界面活性剤(C):炭素数8以上24以下の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、及び脂肪族8以上24以下の脂肪酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つ。
油(D):いずれも70℃で液状を呈する、炭化水素系化合物、油脂類、及びエステル化合物から選ばれる少なくとも1つ。
【請求項5】
ICP発光分光分析法により再生セルロース繊維用第2処理剤の不揮発分から検出されるカリウム濃度が5000ppm以下、ナトリウム濃度が1000ppm以下、カルシウム濃度が1000ppm以下、及びマグネシウムイオン濃度が1000ppm以下である請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤。
【請求項6】
短繊維用途の再生セルロース繊維に適用される請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤。
【請求項7】
使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、又は請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤とを含むセットであることを特徴とする再生セルロース繊維用処理剤。
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有することを特徴とする再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項9】
前記溶媒(S)が、水である請求項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物。
【請求項10】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物の全質量に対する前記溶媒(S)の含有割合が、10質量%以上50質量%以下である請求項又はに記載の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物。
【請求項11】
水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤又は請求項10のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを特徴とする再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項12】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤及び前記再生セルロース繊維用第2処理剤の質量比が、再生セルロース繊維用第1処理剤/再生セルロース繊維用第2処理剤=40/60~90/10であることを特徴とする請求項11に記載の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
【請求項13】
下記の工程1及び下記の工程2を経ることを特徴とする請求項11又は12に記載の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法。
工程1:第1の水に、前記再生セルロース繊維用第1処理剤又は前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、前記再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し、不揮発分濃度が2質量%超20質量%以下の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を調製する工程。
工程2:さらに第2の水に工程1で調製した再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を調製する工程。
【請求項14】
水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤又は請求項10のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し得られた再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を再生セルロース繊維に付与することを特徴とする再生セルロース繊維の処理方法。
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【請求項15】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤及び前記再生セルロース繊維用第2処理剤の質量比が、再生セルロース繊維用第1処理剤/再生セルロース繊維用第2処理剤=40/60~90/10であることを特徴とする請求項14に記載の再生セルロース繊維の処理方法。
【請求項16】
水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、請求項1~のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤又は請求項10のいずれか一項に記載の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加して得られた再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を再生セルロース繊維に付着させる工程を含む再生セルロース繊維の製造方法。
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生セルロース繊維用第1処理剤、再生セルロース繊維用処理剤、再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法、再生セルロース繊維の処理方法、及び再生セルロース繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプ、コットンリンター等を原料とした再生繊維として、ビスコースレーヨン等の再生セルロース繊維が知られている。再生セルロース繊維は、生分解性に優れ、吸湿性及び吸水性に優れる観点から綿花の代替繊維として注目されている。一般に、再生セルロース繊維は、原料溶液を調製後、湿式紡糸され、紡績工程等を経て得られている。例えば紡績工程前に工程通過性を向上させるため再生セルロース繊維用の処理剤が付与されることがある。
【0003】
従来、特許文献1に開示されるビスコースレーヨン用処理剤が知られている。特許文献1は、平滑剤成分としてひまし油等の油脂の硫酸エステル、そのアミン塩、又はそのアルカリ金属塩を含有して成るビスコースレーヨン用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5630932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、再生セルロース繊維用処理剤の製剤安定性のさらなる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、所定の非イオン界面活性剤を含有する再生セルロース繊維用第1処理剤の構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の再生セルロース繊維用第1処理剤では、使用時にヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI/100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有し、前記硫酸エステル塩(A)の含有量と前記非イオン界面活性剤(B1)の含有量との質量比が、硫酸エステル塩(A)/非イオン界面活性剤(B1)=50/50~99/1であることを要旨とする。
【0007】
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
前記再生セルロース繊維用第1処理剤において、前記非イオン界面活性剤(B1)が、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール又は炭素数8以上24以下の脂肪酸1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加させた化合物を含むものであってもよい。
【0008】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤において、前記油脂(a)が、ひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、及び鯨油から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0009】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤において、更に、下記のアニオン界面活性剤(C)及び下記の油(D)から選ばれる少なくとも1つを含有してもよい。
アニオン界面活性剤(C):炭素数8以上24以下の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、及び脂肪族8以上24以下の脂肪酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つ。
【0010】
油(D):いずれも70℃で液状を呈する、炭化水素系化合物、油脂類、及びエステル化合物から選ばれる少なくとも1つ。
前記再生セルロース繊維用第1処理剤において、ICP発光分光分析法により再生セルロース繊維用第2処理剤の不揮発分から検出されるカリウム濃度が5000ppm以下、ナトリウム濃度が1000ppm以下、カルシウム濃度が1000ppm以下、及びマグネシウムイオン濃度が1000ppm以下であってもよい。
【0011】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤において、短繊維用途の再生セルロース繊維に適用されてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の再生セルロース繊維用処理剤では、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、又は上述した再生セルロース繊維用第1処理剤と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤とを含むセットであることを要旨とする。
【0012】
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物では、前記再生セルロース繊維用第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有することを要旨とする。
【0013】
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物において、前記溶媒(S)が、水であってもよい。
【0014】
前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物において、前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物の全質量に対する前記溶媒(S)の含有割合が、10質量%以上50質量%以下であってもよい。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法では、水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、上述した再生セルロース繊維用第1処理剤又は上述した再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にすることを要旨とする。
【0016】
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【0017】
前記再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法において、前記再生セルロース繊維用第1処理剤及び前記再生セルロース繊維用第2処理剤の質量比が、再生セルロース繊維用第1処理剤/再生セルロース繊維用第2処理剤=40/60~90/10であってもよい。
【0018】
前記再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法において、下記の工程1及び下記の工程2を経てもよい。
工程1:第1の水に、前記再生セルロース繊維用第1処理剤又は前記再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、前記再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し、不揮発分濃度が2質量%超20質量%以下の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を調製する工程。
【0019】
工程2:さらに第2の水に工程1で調製した再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を調製する工程。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の再生セルロース繊維の処理方法では、水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、上述した再生セルロース繊維用第1処理剤又は上述した再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加し得られた再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を再生セルロース繊維に付与することを要旨とする。
【0021】
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【0022】
前記再生セルロース繊維の処理方法において、前記再生セルロース繊維用第1処理剤及び前記再生セルロース繊維用第2処理剤の質量比が、再生セルロース繊維用第1処理剤/再生セルロース繊維用第2処理剤=40/60~90/10であってもよい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様の再生セルロース繊維の製造方法は、水に、使用時にヨウ素価が1gI /100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、使用時以外は、再生セルロース繊維用第2処理剤と別剤として構成され、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI /100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤、該再生セルロース繊維用第1処理剤と下記の溶媒(S)とを含有する再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物、上述した再生セルロース繊維用第1処理剤又は上述した再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物と、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と、を添加して得られた再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を再生セルロース繊維に付着させる工程を含むことを要旨とする。
【0024】
硫酸エステル塩(A):油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩。
溶媒(S):大気圧における沸点が105℃以下である溶媒。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば再生セルロース繊維用処理剤の製剤安定性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、本発明の再生セルロース繊維用第1処理剤(以下、第1処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、所定の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI/100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する。
【0027】
(硫酸エステル塩(A))
本実施形態の第1処理剤に供する硫酸エステル塩(A)は、油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩である。
【0028】
油脂(a)の具体例としては、例えばひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、鯨油等が挙げられる。これらの中で使用時における再生セルロース繊維用処理剤の機能性に優れる観点からひまし油、ごま油、トール油、パーム油、豚脂、及び牛脂から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0029】
中和塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。中和塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0030】
中和塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0031】
硫酸エステル塩(A)の具体例としては、例えば(1)ひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、及び鯨油から選ばれる油脂の硫酸エステルのアミン塩、(2)ひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、及び鯨油から選ばれる油脂の硫酸エステルのアルカリ金属塩、(3)ひまし油、ごま油、トール油、大豆油、菜種油、パーム油、豚脂、牛脂、及び鯨油から選ばれる油脂の硫酸エステルのアルカリ土類金属塩が挙げられる。これらの中でも使用時における再生セルロース繊維用処理剤の機能性に優れる観点からひまし油、ごま油、トール油、パーム油、豚脂、及び牛脂から選ばれる油脂の硫酸エステルのナトリウム塩又はカリウム塩が好ましい。
【0032】
これらの硫酸エステル塩(A)は、一種類の硫酸エステル塩を単独で使用してもよいし、又は二種以上の硫酸エステル塩を適宜組み合わせて使用してもよい。
第1処理剤中における硫酸エステル塩(A)の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、再生セルロース繊維用処理剤に平滑性等の機能性をより向上できる。硫酸エステル塩(A)の含有割合の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。かかる含有割合が90質量%以下の場合、製剤安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0033】
(非イオン界面活性剤(B1))
本実施形態の第1処理剤に供する非イオン界面活性剤(B1)は、ヨウ素価が1gI/100g未満である。非イオン界面活性剤100gと反応するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算して表したものである。ヨウ素価は、主に測定物質中に存在する二重結合の数に依存する。非イオン界面活性剤(B1)が複数の非イオン界面活性剤の混合物の場合は、混合物100gと反応するハロゲンの量を測定することによって得られたヨウ素価によって表される。また、ヨウ素価が既に求められた非イオン界面活性剤を複数混合する場合は、各成分の含有比率から計算してもよい。例えばヨウ素価1gI/100gの非イオン界面活性剤90質量部と、ヨウ素価0gI/100gの非イオン界面活性剤10質量部を使用する場合は、混合物のヨウ素価は0.9gI/100gとなる。
【0034】
非イオン界面活性剤(B1)は、ヨウ素価が1gI/100g未満のもの、又は複数の非イオン界面活性剤を使用する場合は混合物のヨウ素価が1gI/100g未満であれば、公知の非イオン界面活性剤から適宜選択して使用できる。
【0035】
非イオン界面活性剤(B1)に用いられる非イオン界面活性剤としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物としてアルキルアミン類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するもの、カルボン酸類と炭素数3以上6以下の環状構造を有する多価アルコール等との部分エステル化合物等が挙げられる。
【0036】
非イオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0037】
非イオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)レシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
非イオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上60モル以下、より好ましくは1モル以上40モル以下、さらに好ましくは2モル以上30モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中におけるアルコール類又はカルボン酸類1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。複数種類のアルキレンオキサイドが用いられる場合、ブロック付加物であってもランダム付加物であってもよい。
【0039】
非イオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0040】
非イオン界面活性剤の原料として用いられるアルキルアミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも使用時における再生セルロース繊維用処理剤の機能性に優れる観点及び製剤安定性に優れる観点から、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール又は炭素数8以上24以下の脂肪酸1モルに対し、炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加させた化合物が好ましい。
【0042】
非イオン界面活性剤(B1)の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(2モル:アルキレンオキサイドの付加モル数を示す(以下同じ))ラウリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(5モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(8モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(15モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(5モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(8モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(10モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(5モル)ベヘニルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(10モル)ベヘニルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(5モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)、ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル(ヨウ素価:0)等が挙げられる。
【0043】
これらの非イオン界面活性剤(B1)は、ヨウ素価が1gI/100g未満の一種類の非イオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は混合物のヨウ素価が1gI/100g未満となるよう二種以上の非イオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0044】
第1処理剤中における非イオン界面活性剤(B1)の含有割合の下限は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかる含有割合が1質量%以上の場合、製剤安定性をより向上できる。非イオン界面活性剤(B1)の含有割合の上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。かかる含有割合が60質量%以下の場合、製剤安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0045】
第1処理剤において、硫酸エステル塩(A)の含有量と、非イオン界面活性剤(B1)の含有量との質量比が、硫酸エステル塩(A)/非イオン界面活性剤(B1)=50/50~99/1であることが好ましく、55/45~95/5であることがより好ましい。かかる範囲に規定されることにより製剤安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0046】
第1処理剤は、更に平滑成分として下記のアニオン界面活性剤(C)及び下記の油(D)から選ばれる少なくとも1つを含有してもよい。これらの平滑成分を含有する場合であっても、第1処理剤の製剤安定性を維持できる。
【0047】
(アニオン界面活性剤(C))
アニオン界面活性剤(C)は、炭素数8以上24以下の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩、炭素数8以上24以下の脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、及び脂肪族8以上24以下の脂肪酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1つである。
【0048】
アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。
炭素数8以上24以下の脂肪酸は、炭素数8以上24以下の脂肪酸を含む動物・植物油由来の脂肪酸から得られる硫酸エステルであってもよい。炭素数8以上24以下の脂肪酸の硫酸エステルのアルカリ金属塩の具体例としては、例えばひまし油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、ごま油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、トール油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、大豆油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、菜種油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、パーム油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、豚脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、牛脂脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩、鯨油脂肪酸の硫酸エステルのナトリウム塩等が挙げられる。
【0049】
炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールの硫酸エステルのアルカリ金属塩の具体例としては、例えばラウリル硫酸エステルのナトリウム塩、セチル硫酸エステルのナトリウム塩、オレイル硫酸エステルのナトリウム塩、ステアリル硫酸エステルのナトリウム塩等が挙げられる。
【0050】
炭素数8以上24以下の脂肪族アルコール1モルに対し炭素数2以上3以下のアルキレンオキサイドを合計で1モル以上20モル以下の割合で付加したものの硫酸エステルのアルカリ金属塩の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(5モル)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3モル)ポリオキシプロピレン(3モル)ラウリルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3モル)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテルの硫酸エステルのナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3モル)牛脂アルコール硫酸エステルのナトリウム塩等が挙げられる。
【0051】
炭素数8以上24以下の脂肪族アルコールのリン酸エステルのアルカリ金属塩の具体例としては、例えばラウリルリン酸エステルのカリウム塩、セチルリン酸エステルのカリウム塩、オレイルリン酸エステルのカリウム塩、ステアリルリン酸エステルのカリウム塩等が挙げられる。
【0052】
炭素数8以上24以下の脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩の具体例としては、例えばラウリルスルホン酸のナトリウム塩、ミリスチルスルホン酸のナトリウム塩、セチルスルホン酸のナトリウム塩、オレイルスルホン酸のナトリウム塩、ステアリルスルホン酸のナトリウム塩、テトラデカンスルホン酸のナトリウム塩、二級アルキルスルホン酸(C13~15)のナトリウム塩等が挙げられる。
【0053】
脂肪族8以上24以下の脂肪酸のアルカリ金属塩の具体例としては、例えばラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等が挙げられる。
これらのアニオン界面活性剤(C)は、一種類のアニオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は二種以上のアニオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0054】
(油(D))
本実施形態の第1処理剤に供する油(D)は、いずれも70℃で液状を呈する、炭化水素系化合物、油脂類、及びエステル化合物から選ばれる少なくとも1つである。
【0055】
70℃で液状である炭化水素の具体例としては、例えば鉱物油、パラフィンワックス等が挙げられる。70℃で液状である油脂類の具体例としては、例えばひまし油、ごま油、トール油、豚脂、牛脂等が挙げられる。70℃で液状であるエステル化合物の具体例としては、例えばブチルステアラート、オクチルステアラート、オレイルラウラート、イソトリデシルステアラート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノステアラート等が挙げられる。
【0056】
これらの油(D)は、一種類の油を単独で使用してもよいし、又は二種以上の油を適宜組み合わせて使用してもよい。
(再生セルロース繊維用第2処理剤(以下、第2処理剤という))
第1処理剤は、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する第2処理剤と併用される。第1処理剤は、保存時又は流通時等において第2処理剤と別剤として構成され、使用時に第2処理剤と混合された混合物として用いられる。以下、第2処理剤について説明する。
【0057】
(非イオン界面活性剤(B2))
本実施形態の第2処理剤に供する非イオン界面活性剤(B2)は、ヨウ素価が1gI/100g以上である。非イオン界面活性剤(B2)が複数の非イオン界面活性剤の混合物の場合は、混合物100gと反応するハロゲンの量を測定することによって得られたヨウ素価によって表される。また、ヨウ素価が既に求められた非イオン界面活性剤を複数混合する場合は、各成分の含有比率から計算してもよい。
【0058】
非イオン界面活性剤(B2)の具体例としては、第1処理剤に配合される非イオン界面活性剤(B1)において例示したものの中から適宜選択できる。
非イオン界面活性剤(B2)の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(3モル)オレイルエステル(ヨウ素価:61)、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエステル(ヨウ素価:51)、ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル(ヨウ素価:35)、ポリオキシエチレン(13モル)オレイルエステル(ヨウ素価:30)、ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(5モル)オレイルエステル(ヨウ素価:25)、ポリオキシエチレン(25モル)オレイルエステル(ヨウ素価:18)、ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテル(ヨウ素価:36)等が挙げられる。
【0059】
これらの非イオン界面活性剤(B2)は、ヨウ素価が1gI/100g以上の一種類の非イオン界面活性剤を単独で使用してもよいし、又は混合物のヨウ素価が1gI/100g以上となるよう二種以上の非イオン界面活性剤を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0060】
(無機イオン濃度)
ICP発光分光分析法(誘導結合プラズマ発光分光分析法)により第2処理剤の不揮発分から検出される以下の無機イオン濃度は、以下の範囲にあることが好ましい。かかる数値範囲に規定されることにより、第2処理剤の製剤安定性をより向上できる。
【0061】
第2処理剤の不揮発分から検出されるカリウム濃度は、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下である。第2処理剤の不揮発分から検出されるナトリウム濃度は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。第2処理剤の不揮発分から検出されるカルシウム濃度は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは700ppm以下である。第2処理剤の不揮発分から検出されるマグネシウムイオン濃度は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
【0062】
各無機イオン濃度の測定方法は、第2処理剤を蒸留水に添加し、濃度0.01質量%水溶液を調製する。この0.01質量%水溶液に含まれるカリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウム濃度をICP発光分光分析装置を使用して測定する。
【0063】
不揮発分は、対象物を105℃で2時間熱処理して揮発性物質を十分に除去した絶乾物の質量から求められる(以下、同じ)。
(再生セルロース繊維用第1処理剤含有組成物(以下、第1処理剤含有組成物という))
第1処理剤は、溶媒と混合することにより第1処理剤含有組成物を調製し、第1処理剤含有組成物の形態で、保存又は流通させてもよい。
【0064】
第1処理剤含有組成物は、上述した第1処理剤及び下記の溶媒(S)を含有する。溶媒(S)は、大気圧における沸点が105℃以下である溶媒である。溶媒(S)としては、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等、ヘキサン等の低極性溶媒が挙げられる。これらの溶媒(S)は、一種類の溶媒を単独で使用してもよいし、又は二種以上の溶媒を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中で、第1処理剤と第2処理剤とが混合された混合物をエマルション形態とする観点から水、低級アルコール等の極性溶媒が好ましく、取り扱い性に優れる観点から水がより好ましい。
【0065】
第1処理剤含有組成物中において、第1処理剤含有組成物の全質量に対する溶媒(S)の含有割合は、好ましくは10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。かかる範囲により、第1処理剤含有組成物の製剤安定性をより向上できる。
【0066】
第1実施形態の第1処理剤及び該第1処理剤から得られる第1処理剤含有組成物の効果について説明する。
(1-1)上記実施形態の第1処理剤では、硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI/100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有する構成とした。したがって、再生セルロース繊維用処理剤を構成する第1処理剤及び第2処理剤の製剤安定性、特に保存安定性を向上できる。それにより、第1処理剤及び第2処理剤の外観を向上できる。また、第1処理剤及び第2処理剤に配合される各成分によって得られる機能を十分に発揮できる。
【0067】
(1-2)第1処理剤含有組成物は、第1処理剤及び溶媒(S)を含有する。第2処理剤が別剤として構成されるため、第1処理剤含有組成物の製剤安定性を向上できる。また、第1処理剤含有組成物は、溶媒(S)を含有するため、使用時においてさらに溶媒を用いて希釈する際、混合性を向上できる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明の再生セルロース繊維用処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第2実施形態を説明する。
【0069】
第1処理剤は、使用時に第2処理剤と混合され、使用時の処理剤としての混合物が調製された後、必要により溶媒を用いて希釈され、再生セルロース繊維に適用される。第1処理剤は、使用前、特に保存時又は流通時においては、第2処理剤とは別剤として構成される。そのため、使用前の処理剤、特に保存時又は流通時の処理剤は、上述した第1処理剤と、上述した第2処理剤とを含むセットとして構成してもよい。
【0070】
第2実施形態の処理剤の効果について説明する。
(2-1)本実施形態において、使用前の処理剤、特に保存時又は流通時の処理剤は、上述した第1処理剤と、上述した第2処理剤とを含むセットとして構成される。そのため、処理剤の保存時又は流通時における製剤安定性を向上できる。よって、使用時において処理剤を構成する各成分の機能を十分に発揮できる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、本発明の再生セルロース繊維用処理剤の希釈液の調製方法(以下、「処理剤の希釈液の調製方法」という)を具体化した第3実施形態を説明する。
【0072】
本実施形態の希釈液の調製方法は、水に、上述した第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、上述した第2処理剤とを添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にする方法である。
【0073】
水に、第1処理剤及び第2処理剤を添加する方法は、公知の方法を適宜採用できるが、下記の工程1及び下記の工程2を経ることが好ましい。かかる方法により、第1処理剤及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性をより向上できる。
【0074】
工程1は、第1の水に、上述した第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、上述した第2処理剤と、を添加し、不揮発分濃度が2質量%超20質量%以下の処理剤の希釈液の母液を調製する工程である。第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と第2処理剤の第1の水への添加順は、特に限定されず、先に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物を水に添加し、次に第2処理剤を水に添加してもよく、先に第2処理剤を水に添加し、次に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物を水に添加してもよい。また、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と第2処理剤を同時に水に添加してもよい。エマルジョンの安定性の向上の観点から、先に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物を第1の水に添加し、次に第2処理剤を第1の水に添加することが好ましい。また、希釈する水の温度は、特に限定されない。
【0075】
工程2は、第2の水に工程1で調製した再生セルロース繊維用処理剤の希釈液を添加し、不揮発分濃度が0.01質量%以上2質量%以下の処理剤の希釈液を調製する工程である。
【0076】
処理剤の希釈液の調製方法において、第1処理剤及び第2処理剤の質量比が、第1処理剤/第2処理剤=40/60~90/10であることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、混合性を向上でき、均質性に優れた処理剤を得ることができる。なお、第1処理剤として第1処理剤含有組成物が用いられる場合は、溶媒希釈前の第1処理剤換算の質量を示す。
【0077】
上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法の効果について説明する。
(3-1)上記実施形態の処理剤の希釈液の調製方法は、水に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、第2処理剤とを添加し、不揮発分濃度を0.01質量%以上20質量%以下にする方法である。したがって、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物及び第2処理剤の混合物がエマルション形態の場合、エマルションの安定性を向上できる。また、予め調製された第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と第2処理剤を水に混合することにより、繊維付与形態である処理剤の希釈液を調製できるため、使用時に試薬から調合する方法に比べて処理剤の希釈液を簡易に調製できる。
【0078】
(3-2)また、水に、第1処理剤又は第1処理剤含有組成物及び第2処理剤を添加し、不揮発分濃度が2質量%超20質量%以下の処理剤の希釈液の母液を調製する工程を経る場合、エマルションの安定性をより向上できる。それにより、成分の繊維への均一な付着性を向上できるため、各成分による効能をより有効に発揮できる。
【0079】
<第4実施形態>
次に、本発明の再生セルロース繊維の処理方法(以下、繊維の処理方法という)を具体化した第4実施形態を説明する。
【0080】
本実施形態の繊維の処理方法では、水に、上述した第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、上述した第2処理剤と、を添加し得られた処理剤の希釈液を再生セルロース繊維に付与することを特徴とする。処理剤の希釈液の調製方法は、第3実施形態の処理剤の希釈液の調製方法を採用できる。
【0081】
第1処理剤と第2処理剤とを併用する形態では、第1処理剤と第2処理剤の混合比率を任意に変更できる。そのため、製造設備の違い又は温湿度等の気候の違い等の製造条件が異なる条件下においても、配合比率を微調整して常に最適な機能性を得るための処理剤又は希釈液を調製することが容易になる。それにより安定した繊維製造が可能となる。第1処理剤及び第2処理剤の質量比は、第1処理剤/第2処理剤=40/60~90/10であることが好ましい。かかる範囲に規定されることにより、混合性及び操作性を向上できる。なお、第1処理剤として第1処理剤含有組成物が用いられる場合は、溶媒希釈前の第1処理剤換算の質量を示す。
【0082】
再生セルロース繊維の種類としては、特に限定されず、例えばビスコースレーヨン繊維、レーヨン繊維、キュプラ、ポリノジックレーヨン、ライオセル繊維等が挙げられる。
付着方法としては、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、シャワー法、滴下・流下法等を適用できる。また、付着させる工程としては、特に限定されないが、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等が挙げられる。特に精錬工程の後工程、つまり紡績工程の前において紡績用原綿に用いるものであることが好ましい。処理剤の希釈液は、再生セルロース繊維に対し、溶媒を含まない固形分として0.01~1質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる割合で付与することにより、再生セルロース繊維、特にレーヨン繊維に優れた紡績特性を付与できる。
【0083】
繊維の用途は、特に限定されず、例えば短繊維、紡績糸、不織布等が挙げられる。短繊維及び長繊維のいずれの繊維用途としても適用できるが、短繊維に適用されることが好ましい。短繊維は、一般にステープルと呼ばれるものが該当し、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維を含まないものとする。また、短繊維の長さは、本技術分野において短繊維に該当するものであれば特に限定されないが、例えば100mm以下であることが好ましい。
【0084】
希釈液が付与された再生セルロース繊維は、公知の方法を用いて乾燥処理してもよい。乾燥処理により水等の溶媒が揮発され、第1処理剤及び第2処理剤中に含有される成分が付着している再生セルロース繊維が得られる。
【0085】
本実施形態の繊維の処理方法の効果について説明する。
(4-1)本実施形態の繊維の処理方法では、希釈液を、例えば精錬工程の後工程、紡績工程等において再生セルロース繊維に付与する方法である。特に、水に第1処理剤又は第1処理剤含有組成物と、第2処理剤とを添加して調製した希釈液の場合、乳化安定性に優れる希釈液が得られる。したがって、紡績特性、各成分による短繊維、紡績糸、不織布等に対する効能を有効に発揮できる。
【0086】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の第1処理剤、第2処理剤、第1処理剤含有組成物、又は処理剤の希釈液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、各剤、組成物、又は希釈液の品質保持のため、その他の溶媒、安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機酸、上記以外の界面活性剤等の通常処理剤等に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例
【0087】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0088】
試験区分1(第1処理剤の調製)
(第1処理剤(1-1))
第1処理剤(1-1)は、表1に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。表1に示されるように、硫酸エステル塩(A)としてひまし油硫酸エステルのナトリウム塩(A-1)70部(%)、非イオン界面活性剤(B1)としてポリオキシエチレン(8モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)(B-3)5部(%)及びポリオキシエチレン(10モル)ベヘニルエステル(ヨウ素価:0)(B-10)5部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてラウリルスルホネートナトリウム塩(C-7)15部(%)、油(D)として40℃での動粘度が約20mm/sの鉱物油(D-3)5部(%)を含む第1処理剤(1-1)を調製した。
【0089】
(第1処理剤(1-2)~(1-18)、(r1-19))
第1処理剤(1-2)~(1-18)、(r1-19)は、第1処理剤(1-1)と同様にして硫酸エステル塩(A)、非イオン界面活性剤(B1)、アニオン界面活性剤(C)、及び油(D)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0090】
硫酸エステル塩(A)の種類と含有量、非イオン界面活性剤(B1)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、油(D)の種類と含有量を、表1の「硫酸エステル塩(A)」欄、「非イオン界面活性剤(B1)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄、「油(D)」欄にそれぞれ示す。また、硫酸エステル塩(A)の含有量と非イオン界面活性剤(B1)の含有量との質量比を、表1の「質量比(硫酸エステル塩(A)/非イオン界面活性剤(B1))」欄に示す。
【0091】
【表1】
表1に記載する硫酸エステル塩(A)、非イオン界面活性剤(B1)、後述する非イオン界面活性剤(B2)、アニオン界面活性剤(C)、及び油(D)の詳細は以下のとおりである。
【0092】
(硫酸エステル塩(A))
A-1:ひまし油硫酸エステルのナトリウム塩
A-2:ごま油硫酸エステルのカリウム塩
A-3:トール油硫酸エステルのカリウム塩
A-4:大豆油硫酸エステルのナトリウム塩
A-5:菜種油硫酸エステルのカリウム塩
A-6:パーム油硫酸エステルのナトリウム塩
A-7:豚脂硫酸エステルのカリウム塩
A-8:牛脂硫酸エステルのナトリウム塩
A-9:ごま油硫酸エステルのジエタノールアミン塩
(非イオン界面活性剤(B1)及び非イオン界面活性剤(B2))
B-1:ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)
B-2:ポリオキシエチレン(5モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)
B-3:ポリオキシエチレン(8モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)
B-4:ポリオキシエチレン(15モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)
B-5:ポリオキシエチレン(2モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)
B-6:ポリオキシエチレン(5モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)
B-7:ポリオキシエチレン(8モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)
B-8:ポリオキシエチレン(10モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)
B-9:ポリオキシエチレン(5モル)ベヘニルエステル(ヨウ素価:0)
B-10:ポリオキシエチレン(10モル)ベヘニルエステル(ヨウ素価:0)
B-11:ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(5モル)ラウリルエステル(ヨウ素価:0)
B-12:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル(ヨウ素価:0)
B-13:ポリオキシエチレン(3モル)オレイルエステル(ヨウ素価:61)
B-14:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエステル(ヨウ素価:51)
B-15:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル(ヨウ素価:35)
B-16:ポリオキシエチレン(13モル)オレイルエステル(ヨウ素価:30)
B-17:ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(5モル)オレイルエステル(ヨウ素価:25)
B-18:ポリオキシエチレン(25モル)オレイルエステル(ヨウ素価:18)
B-19:ポリオキシエチレン(10モル)オレイルエーテル(ヨウ素価:36)
(アニオン界面活性剤(C))
C-1:トール油脂肪酸硫酸エステルのナトリウム塩
C-2:ラウリル硫酸エステルのナトリウム塩
C-3:ポリオキシエチレン(3モル)オレイルエーテル硫酸エステルのナトリウム塩
C-4:ポリオキシエチレン(3モル)ラウリルエーテル硫酸エステルのナトリウム塩
C-5:ポリオキシエチレン(3モル)牛脂アルコール硫酸エステルのナトリウム塩
C-6:ラウリルホスフェートのカリウム塩
C-7:ラウリルスルホネートのナトリウム塩
C-8:オレイン酸カリウム塩
(油(D))
D-1:20℃での動粘度が約10mm2/sの鉱物油
D-2:40℃での動粘度が約10mm2/sの鉱物油
D-3:40℃での動粘度が約20mm2/sの鉱物油
D-4:40℃での動粘度が約90mm2/sの鉱物油
D-5:牛脂
D-6:ソルビタンモノオレアート
D-7:ステアリルステアラート
D-8:パラフィンワックス(融点55℃)
試験区分2(第1処理剤含有組成物の調製)
(第1処理剤含有組成物(X1-1))
第1処理剤含有組成物(X1-1)は、表2に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。表2に示されるように、第1処理剤(1-1)80部(%)、溶剤(S)として水20部(%)を含む第1処理剤含有組成物(X1-1)を調製した。
【0093】
(第1処理剤含有組成物(X1-2)~(X1-18)、(rX-19))
第1処理剤含有組成物(X1-2)~(X1-18)、(rX-19)は、第1処理剤含有組成物(X1-1)と同様にして第1処理剤及び溶剤(S)を表2に示した割合で含むように調製した。第1処理剤の種類と含有量、溶剤(S)の種類と含有量を、表2の「第1処理剤」欄、「溶剤(S)」欄にそれぞれ示す。
【0094】
【表2】
試験区分3(第2処理剤の調製)
(第2処理剤(2-1))
第2処理剤(2-1)は、表3に示される各成分を使用し、下記調製方法により調製した。表3に示されるように、非イオン界面活性剤(B2)として非イオン界面活性剤(B-13)100部(%)を含む第2処理剤(2-1)を調製した。
【0095】
(第2処理剤(2-2)~(2-10))
第2処理剤(2-2)~(2-10)は、第2処理剤(2-1)と同様にして非イオン界面活性剤(B2)を表3に示した割合で含むように調製した。非イオン界面活性剤(B2)の種類と含有量を、表3の「非イオン界面活性剤(B2)」欄に示す。
【0096】
また、第2処理剤の不揮発分から検出される金属イオン濃度は、表3の「第2処理剤の不揮発分から検出される金属イオン濃度」欄に示す。また、不揮発分から検出される金属イオン濃度は、下記に示されるICP発光分光分析法により測定した。
【0097】
・ICP発光分光分析法
第2処理剤を蒸留水に添加し、濃度0.01質量%水溶液を調製する。この0.01質量%水溶液に含まれるカリウム・ナトリウム・カルシウム・マグネシウム濃度をICP発光分光分析装置(島津製作所社製ICPE-9000)を使用して測定した。
【0098】
【表3】
試験区分4(処理剤の調製1)
試験区分1で得られた第1処理剤と試験区分3で得られた第2処理剤とを表4に示される比率で下記に示される方法で混合し、最終的にエマルジョン形態の処理剤を調製した。
【0099】
(実施例1)
まず、イオン交換水を95g計り取り、80℃の湯煎にて500rpmにてプロペラ撹拌羽を用いて3分撹拌する。ビーカーの中に、第1処理剤1-1の2.5gをスポイトで滴下し、次いで、第2処理剤2-1の2.5gをスポイトを用いて滴下し、5分間撹拌して得られた処理剤の希釈液を、実施例1の5%エマルジョン(不揮発分5%)とした。
【0100】
(実施例2~34)
実施例2~34は、実施例1と同様にして第1処理剤と第2処理剤を表4に示した割合で混合することで処理剤の希釈液としての5%エマルジョンを調製した。
【0101】
第1処理剤の種類と含有量、第2処理剤の種類と含有量を、表4の「第1処理剤」欄、「第2処理剤」欄にそれぞれ示す。また、第1処理剤及び第2処理剤の質量比を、表4の「質量比(第1処理剤/第2処理剤)」欄に示す。
【0102】
【表4】
試験区分5(処理剤の調製2)
第1処理剤と第2処理剤を調製する工程を経ずに、表5に示される各成分を所定の比率で混合して処理剤を調製した。
【0103】
(処理剤(r3-1))
処理剤(r3-1)は、表5に示されるように、硫酸エステル塩(A)として豚脂硫酸エステルのカリウム塩(A-7)9部(%)、非イオン界面活性剤(B2)としてポリオキシエチレン(5モル)ステアリルエステル(ヨウ素価:0)(B-6)9部(%)及びポリオキシエチレン(10モル)オレイルエステル(ヨウ素価:35)(B-15)40部(%)、アニオン界面活性剤(C)としてトール油脂肪酸硫酸エステルのナトリウム塩(C-1)3部(%)及びポリオキシエチレン(3モル)牛脂アルコール硫酸エステルのナトリウム塩(C-5)3部(%)、油(D)として20℃での動粘度が約10mm2/sの鉱物油(D-1)15部(%)及び牛脂(D-5)21部(%)を含む、当初より混合物として調製した処理剤(r3-1)を得た。
【0104】
(処理剤(r3-2)~(r3-4))
処理剤(r3-2)~(r3-4)は、処理剤(r3-1)と同様にして硫酸エステル塩(A)、非イオン界面活性剤(B2)、アニオン界面活性剤(C)、及び油(D)を表5に示した割合で含むように調製した。
【0105】
硫酸エステル塩(A)の種類と含有量、非イオン界面活性剤(B2)の種類と含有量、アニオン界面活性剤(C)の種類と含有量、油(D)の種類と含有量を、表5の「硫酸エステル塩(A)」欄、「非イオン界面活性剤(B2)」欄、「アニオン界面活性剤(C)」欄、「油(D)」欄にそれぞれ示す。また、硫酸エステル塩(A)の含有量と非イオン界面活性剤(B2)の含有量との質量比を、表5の「質量比(硫酸エステル塩(A)/非イオン界面活性剤(B2))」欄に示す。
【0106】
【表5】
試験区分6(ビスコースレーヨン繊維への処理剤の希釈液の付着)
試験区分4で得られた各例の処理剤の希釈液をさらに希釈して処理剤の1%エマルジョンを調製した。各水性エマルジョンを繊度1.3×10-4g/m(1.2デニール)で繊維長38mmのビスコースレーヨン繊維に、付着量(溶媒を除く)が0.3質量%となるようスプレー給油で付着させ、80℃の熱風乾燥機で2時間乾燥した。その後、25℃×40%RHの雰囲気下に一夜調湿して、処理剤を付着させた処理済みビスコースレーヨンを得た。得られたビスコースレーヨン繊維について、高速カード工程におけるウェブ均一性、練条工程におけるローラー巻き付き、スカム防止性、及びコイルフォーム、高速ローター式オープンエンド紡績工程におけるスカム防止性、渦流空気精紡における操業性、リング精紡工程におけるローラー巻き付きについて評価した。
【0107】
試験区分7(製剤安定性)
試験区分2で得られた第1処理剤含有組成物、試験区分3で得られた第2処理剤、試験区分5で得られた第1処理剤と第2処理剤の調製する工程を経ずに調製された処理剤について、製剤安定性を評価した。
【0108】
各製剤を調製後、各製剤が液体状態を保つ状態で24時間放置した後、外観を目視で以下の基準で評価した。その結果を表2,3,5の「製剤安定性」欄に示す。
・製剤安定性の評価基準
◎(良好):うるみや分離がみられず均一である場合
○(可):若干粒子がみられるが問題にならない場合
×(不可):外観うるみや製品分離がはげしく問題である場合
試験区分8(高速カード工程におけるウェブ均一性の評価)
処理済みビスコースレーヨン繊維10kgを用い、30℃×70%RHの雰囲気下でフラットカード(豊和工業社製)に供し、紡出速度=140m/分の条件で通過させた。紡出されるカードウェブの均一性を以下の基準で評価した。その結果を表4の「ウェブ均一性」欄に示す。
【0109】
・ウェブ均一性の評価基準
◎(良好):斑が全くなく、優れて均一である場合
○(可):僅かな斑が認められるが、問題にならない場合
×(不可):斑が確認でき、問題である場合
試験区分9(練条工程におけるローラー捲きつき回数、スカム防止性、コイルフォームの評価)
ビスコースレーヨン繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーを30℃×70%RHの雰囲気下でPDF型練条機(石川製作所社製)に供し、紡出速度=250m/分の条件で5回繰り返して通過させた。PDF型練条機のゴムローラーへの捲付き回数を以下の基準により評価した。また、ゴムローラー、レジューサー、及びトランペットの各部分におけるスカムの程度及びカードスライバーのコイルフォームを目視にて以下の基準で評価した。各結果を表4の「練条工程」欄にそれぞれ示す。
【0110】
・ゴムローラー捲付き回数の評価基準
◎(良好):0~4回
○(可):5~9回
×(不可):10回以上
・スカム防止性の評価基準
◎(良好):スカムがほとんど認められない場合
○(可):スカムが少し認められる場合
×(不可):スカムが多く認められる場合
・コイルフォームの評価基準
◎(良好):良好である場合
○(可):可である場合
×(不可):不良である場合
試験区分10(高速ローター式オープンエンド紡績工程におけるスカム防止性の評価)
処理済みビスコースレーヨン繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーをPDF型練条機(石川製作所製)に供して練条スライバーを得た。得られた練条スライバーを用い、高速ローター式オープンエンド紡績機(シュラホースト社製)を使用して、25℃×65%RHの雰囲気下、ローター回転数130,000rpmで1時間運転した。オープンエンド紡績機のローター内のスカム堆積を目視にて以下の基準で評価した。その結果を表4の「高速ローター式オープンエンド紡績工程」欄に示す。
【0111】
・スカム防止性の評価基準
◎(良好):スカム堆積が殆ど認められない場合
○(可):僅かなスカム堆積が認められるが、問題にならない場合
×(不可):スカム堆積が認められ、問題である場合
試験区分11(渦流空気精紡操業性の評価)
処理済みビスコースレーヨン繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーをPDF型練条機に供して練条スライバーを得た。得られた練条スライバーを渦流空気精紡機に供し、紡出速度400m/分で2時間操業し、断糸回数を測定した。その結果を表4の「渦流空気精紡」欄に示す。
【0112】
・渦流空気精紡操業性の評価基準
◎(良好):断糸回数0回
○(可):断糸回数1~3回
×(不可):断糸回数4回以上
試験区分12(リング精紡工程におけるローラー巻き付き回数の評価)
処理済みビスコースレーヨン繊維10kgを用い、フラットカード(豊和工業社製)に供してカードスライバーを得た。得られたカードスライバーをPDF型練条機(石川製作所製)に供して練条スライバーを得た。得られた練条スライバーを粗紡機(豊田自動織機製)に供して粗糸を得た。得られた粗糸をリング精紡機に供し、スピンドル回転数18000rpmで操業した際のゴムローラー巻き付き回数を測定した。その結果を表4の「リング精紡工程」欄に示す。
【0113】
・ゴムローラー捲付き回数の評価基準
◎(良好):0~4回
○(可):5~9回
×(不可):10回以上
本発明の第1処理剤、第2処理剤、及び第1処理剤含有組成物は、製剤安定性を向上できる。またかかる第1処理剤等から得られた処理剤が付与された繊維は、ウェブ均一性等の機能を向上できる。
【要約】
【課題】製剤安定性を向上させた再生セルロース繊維用第1処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明は、ヨウ素価が1gI/100g以上である非イオン界面活性剤(B2)を含有する再生セルロース繊維用第2処理剤と併用される再生セルロース繊維用第1処理剤であって、下記の硫酸エステル塩(A)と、ヨウ素価が1gI/100g未満である非イオン界面活性剤(B1)とを含有することを特徴とする。硫酸エステル塩(A)は、油脂(a)及び硫酸の反応物と、アミン、アルカリ金属、及びアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも1つと、の中和塩である。
【選択図】なし