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特許7125174メッシュ位置特定装置、印刷版作製システム、印刷版パターン作成装置、記憶媒体、メッシュ位置特定方法、印刷版作製方法、および印刷版パターン作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】メッシュ位置特定装置、印刷版作製システム、印刷版パターン作成装置、記憶媒体、メッシュ位置特定方法、印刷版作製方法、および印刷版パターン作成方法
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/14 20060101AFI20220817BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20220817BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B41C1/14
B41C1/14 101
B41N1/24
H05K3/12 610P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021511203
(86)(22)【出願日】2020-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2020006302
(87)【国際公開番号】W WO2020202854
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2019065687
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145286
【氏名又は名称】株式会社写真化学
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 喜代治
(72)【発明者】
【氏名】法貴 哲夫
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-176490(JP,A)
【文献】特開2008-162277(JP,A)
【文献】特開2000-347424(JP,A)
【文献】特開平10-315648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0283904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/14
B41N 1/24
H05K 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷版の作製に用いられるスクリーンメッシュ張設体に張設されたスクリーンメッシュを構成する、複数のメッシュ糸の配置位置を、特定する装置であって、
前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュを撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による前記スクリーンメッシュの撮像画像に基づいて、前記スクリーンメッシュ張設体における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、前記繰り返し単位ごとに特定された前記配置位置の座標値を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序に再配列して記述したメッシュ位置データを生成する特定処理手段と、
前記メッシュ位置データと、前記撮像手段による撮像の対象とされた前記スクリーンメッシュ張設体を一意に識別可能な識別情報とを関連付ける、関連付け手段と、
を備え、
前記特定処理手段は、前記メッシュ位置データを、スクリーン印刷版作製用のパターンデータの作成に際して前記複数のメッシュ糸の配置位置を実質的に再現可能なデータ形式にて生成する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のメッシュ位置特定装置であって、
前記特定処理手段は、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの一対のエッジの位置を、前記配置位置として前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、かつ、前記メッシュ位置データにおいて、前記配置位置の座標値を前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序で記述する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のメッシュ位置特定装置であって、
前記特定処理手段は、
前記スクリーンメッシュの前記撮像画像において、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向と略平行な四辺を有する四辺形の内側を、前記撮像画像における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の特定範囲として設定し、
前記特定範囲内で同一の行あるいは列に属する前記メッシュ開口部の配列ごとに前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を特定するための線分を設定し、
前記線分が前記複数のメッシュ糸のそれぞれの前記一対のエッジと交差する位置を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置として特定する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のメッシュ位置特定装置であって、
前記特定処理手段が、
前記メッシュ位置特定装置に固有の装置座標系で記述されてなる座標値を、前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体に固有の版座標系における座標値に変換する座標変換手段、
を備え、
前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の座標値を前記装置座標系に基づいて特定し、当該特定された座標値を、前記座標変換手段において前記版座標系における座標値に変換したうえで、前記メッシュ位置データに記述する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のメッシュ位置特定装置であって、
前記撮像手段が、前記スクリーンメッシュ張設体にあらかじめ設けられてなる、前記スクリーンメッシュ張設体に前記版座標系の設定に利用可能な版座標系設定用マークを撮像し、
前記座標変換手段は、前記撮像手段による、前記装置座標系における前記版座標系設定用マークの撮像結果に基づいて前記装置座標系と前記版座標系との変換関係を特定し、前記変換関係に基づいて、前記装置座標系に基づいて特定された前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の座標値を前記版座標系における座標値に変換する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のメッシュ位置特定装置と、
前記スクリーン印刷版の作製に際して前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成装置と、
前記パターンデータに基づいて前記スクリーンメッシュ張設体に前記スクリーン開口部のパターンを形成することにより前記スクリーン印刷版を作製する印刷版作製装置と、
を備え、
前記印刷版パターン作成装置が、
前記メッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられ、かつ、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、
再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、
作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付けるようになっており、
前記印刷版作製装置においては、前記パターンデータと関連づけられてなる前記識別情報に対応する前記スクリーンメッシュ張設体に対し、前記パターンデータに基づいて前記スクリーン開口部のパターンを形成する、
ことを特徴とする印刷版作製システム。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷版作製システムであって、
前記印刷版パターン作成装置においては、前記表示手段に再現された前記スクリーンメッシュの配置位置に応じて、前記パターンデータの構成要素の配置位置および/またはサイズを調整可能である、
ことを特徴とする印刷版作製システム。
【請求項8】
スクリーン印刷版の作製に際してスクリーンメッシュ張設体のスクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成装置であって、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のメッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、
再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、
作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付ける、
ことを特徴とする印刷版パターン作成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の印刷版パターン作成装置であって、
前記表示手段に再現された前記スクリーンメッシュの配置位置に応じて、前記パターンデータの構成要素の配置位置および/またはサイズを調整可能である、
ことを特徴とする印刷版パターン作成装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のメッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データが格納されてなるともに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報が前記メッシュ位置データに記述されてなるかあるいは直接に付与されてなる、ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項11】
スクリーン印刷版の作製に用いられるスクリーンメッシュ張設体に張設されたスクリーンメッシュを構成する、複数のメッシュ糸の配置位置を、特定する方法であって、
前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュを所定の撮像手段によって撮像する撮像工程と、
前記撮像工程よって得られた前記スクリーンメッシュの撮像画像に基づいて、前記スクリーンメッシュ張設体における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、前記繰り返し単位ごとに特定された前記配置位置の座標値を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序に再配列して記述したメッシュ位置データを生成する特定処理工程と、
前記メッシュ位置データと、前記撮像手段による撮像の対象とされた前記スクリーンメッシュ張設体を一意に識別可能な識別情報とを関連付ける、関連付け工程と、
を備え、
前記特定処理工程においては、前記メッシュ位置データを、スクリーン印刷版作製用のパターンデータの作成に際して前記複数のメッシュ糸の配置位置を実質的に再現可能なデータ形式にて生成する、
ことを特徴とする、メッシュ位置特定方法。
【請求項12】
請求項11に記載のメッシュ位置特定方法によって前記メッシュ位置データを生成するメッシュ位置データ生成工程と、
所定の印刷版パターン作成装置を用いて、前記スクリーン印刷版の作製に際して前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成工程と、
所定の印刷版作製装置を用いて、前記パターンデータに基づいて前記スクリーンメッシュ張設体に前記スクリーン開口部のパターンを形成することにより前記スクリーン印刷版を作製する印刷版作製工程と、
を備え、
前記印刷版パターン作成工程においては、
前記メッシュ位置データ生成工程において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、
再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、
作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付けるようになっており、
前記印刷版作製工程においては、前記パターンデータと関連づけられてなる前記識別情報に対応する前記スクリーンメッシュ張設体に対し、前記パターンデータに基づいて前記スクリーン開口部のパターンを形成する、
ことを特徴とする、印刷版作製方法。
【請求項13】
スクリーン印刷版の作製に際してスクリーンメッシュ張設体のスクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターンの作成方法であって、
請求項11に記載のメッシュ位置特定方法によって生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現する再現工程と、
再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成する作成工程と、
作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付ける関連付け工程と、
を備えることを特徴とする、印刷版パターン作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷版およびその作製に用いるスクリーンメッシュ張設体に関し、特に、スクリーンメッシュ張設体におけるメッシュ位置の形成位置の特定と、当該形成位置に応じたスクリーン印刷版の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷用の印刷版(スクリーン印刷版)は、金属またはナイロン線材からなるメッシュ糸(縦糸および横糸)が互いに交差するように製織された網目構造(メッシュ構造)のうえに乳剤が塗布され、係る乳剤によって形成された塗布膜のうち、印刷によって形成しようとするパターン(印刷パターン)の部分が開口部(スクリーン開口部)とされた構成を有する。スクリーン印刷で高精細な印刷を行う場合、例えば、電子デバイスの製造過程において行われる微細な配線パターンの印刷など、使用するスクリーン印刷版におけるこのような網目構造の状態が、最終製品の品質に影響を与えることがある。
【0003】
一例として、太陽電池の集電電極(バスバー電極およびフィンガー電極)の形成が挙げられる。係る集電電極は、コストメリットなどの観点から、導電性ペースト(電極ペースト)のスクリーン印刷により基板上に電極形状に応じた印刷パターン(ペースト膜)を形成し、その後焼成する、という手法にて形成されるが、どの位置においても均一な形状をなし、電気的な特性についても一定であることが求められる。
【0004】
しかしながら、そのような集電電極形成用のスクリーン印刷版において、電極パターンに対応させて設けられたスクリーン開口部が縦糸と横糸との交点上に位置する場合、係るスクリーン印刷版を用いた印刷によって形成される幅細のペースト膜に、太り細りなどの変形が生じてしまうことが知られている。係る場合、形成された集電電極において個々のバスバー電極およびフィンガー電極の導電特性に違いが生じ、極端な場合には、断線などの欠陥を生じることにも繋がる。それゆえ、太陽電池の集電電極の形成に関しては、スクリーン開口部がメッシュ糸の交点位置に重ならないようにパターン設計を行うことで、集電電極の特性ばらつきの回避が図られている。
【0005】
また、このような、スクリーン印刷による印刷パターンの形成に際しメッシュ糸の交点近傍においてパターンが変形するという課題に関し、縦糸と横糸と張設する際に版枠に対し所定の傾きを与えるバイアス張りを行い、かつ、印刷パターンに対応するスクリーン開口部の大きさをスクリーンメッシュの目開きサイズとメッシュ糸の直径のとの総和の整数倍としたスクリーンのスクリーン印刷版を用いることによって対応し、印刷パターン(具体的には認識マークのパターン)の形状精度を確保する態様が、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方で、メッシュ糸として芯材の周囲に除去可能な被覆層を形成したものが採用され、かつ、スクリーン開口部において露出するメッシュ糸の被覆層が除去されたパターン印刷版を用いることによって、印刷精度を確保しようとする態様も、すでに公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
近年、電子デバイスの小型化、高集積化、高効率化などの要請から、スクリーン印刷の際の印刷線幅の微細化が求められてきている。例えば、上述した太陽電池の集電電極の例であれば、発電効率の向上を目的として、電極線幅の微細化が求められてきている。
【0008】
一方で、スクリーン印刷版において網目構造をなすメッシュ糸の位置は、本来的に規則正しく等間隔であるべきところ、実際には、製織工程や版枠への張設接着工程の結果によりわずかではあるがばらつき得る。そのため、同一の条件で作製されたスクリーン印刷版の間においても、わずかに異なることがある。上述した印刷線幅の微細化を進めるうえにおいて、このようなメッシュ糸の位置ばらつきの影響が、無視できなくなってきている。しかしながら、係るばらつきは、規則性のないランダムな現象であって再現性がない。また、メッシュ糸にランダムな位置ばらつきがあるということは当然ながら、縦糸と横糸の交点位置にもランダムな位置ばらつきがあるということである。
【0009】
特許文献1および特許文献2のいずれにも、このようなメッシュ糸のランダムな位置ばらつきへの対処につき、何らの開示も示唆もなされてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2000-347424号公報
【文献】特開平10-315648号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、スクリーン印刷版の作製に用いるスクリーンメッシュ張設体に備わるメッシュ糸の配置位置を特定することができ、さらには、係る配置位置に応じてスクリーン印刷版を作製する際に、特定されたメッシュ糸の配置位置を参照可能な状態でスクリーン開口部のパターンデータを作成可能な技術を提供することを、目的とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、スクリーン印刷版の作製に用いられるスクリーンメッシュ張設体に張設されたスクリーンメッシュを構成する、複数のメッシュ糸の配置位置を、特定する装置であって、前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュを撮像する撮像手段と、前記撮像手段による前記スクリーンメッシュの撮像画像に基づいて、前記スクリーンメッシュ張設体における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、前記繰り返し単位ごとに特定された前記配置位置の座標値を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序に再配列して記述したメッシュ位置データを生成する特定処理手段と、前記メッシュ位置データと、前記撮像手段による撮像の対象とされた前記スクリーンメッシュ張設体を一意に識別可能な識別情報とを関連付ける、関連付け手段と、を備え、前記特定処理手段は、前記メッシュ位置データを、スクリーン印刷版作製用のパターンデータの作成に際して前記複数のメッシュ糸の配置位置を実質的に再現可能なデータ形式にて生成する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るメッシュ位置特定装置であって、前記特定処理手段は、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの一対のエッジの位置を、前記配置位置として前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、かつ、前記メッシュ位置データにおいて、前記配置位置の座標値を前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序で記述する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様は、第2の態様に係るメッシュ位置特定装置であって、前記特定処理手段は、前記スクリーンメッシュの前記撮像画像において、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向と略平行な四辺を有する四辺形の内側を、前記撮像画像における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の特定範囲として設定し、前記特定範囲内で同一の行あるいは列に属する前記メッシュ開口部の配列ごとに前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を特定するための線分を設定し、前記線分が前記複数のメッシュ糸のそれぞれの前記一対のエッジと交差する位置を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置として特定する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに係るメッシュ位置特定装置であって、前記特定処理手段が、前記メッシュ位置特定装置に固有の装置座標系で記述されてなる座標値を、前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体に固有の版座標系における座標値に変換する座標変換手段、を備え、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の座標値を前記装置座標系に基づいて特定し、当該特定された座標値を、前記座標変換手段において前記版座標系における座標値に変換したうえで、前記メッシュ位置データに記述する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様に係るメッシュ位置特定装置であって、前記撮像手段が、前記スクリーンメッシュ張設体にあらかじめ設けられてなる、前記スクリーンメッシュ張設体に前記版座標系の設定に利用可能な版座標系設定用マークを撮像し、前記座標変換手段は、前記撮像手段による、前記装置座標系における前記版座標系設定用マークの撮像結果に基づいて前記装置座標系と前記版座標系との変換関係を特定し、前記変換関係に基づいて、前記装置座標系に基づいて特定された前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置の座標値を前記版座標系における座標値に変換する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の態様は、印刷版作製システムであって、第1ないし第5の態様のいずれかに係るメッシュ位置特定装置と、前記スクリーン印刷版の作製に際して前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成装置と、前記パターンデータに基づいて前記スクリーンメッシュ張設体に前記スクリーン開口部のパターンを形成することにより前記スクリーン印刷版を作製する印刷版作製装置と、を備え、前記印刷版パターン作成装置が、前記メッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられ、かつ、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付けるようになっており、前記印刷版作製装置においては、前記パターンデータと関連づけられてなる前記識別情報に対応する前記スクリーンメッシュ張設体に対し、前記パターンデータに基づいて前記スクリーン開口部のパターンを形成する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第7の態様は、第6の態様に係る印刷版作製システムであって、前記印刷版パターン作成装置においては、前記表示手段に再現された前記スクリーンメッシュの配置位置に応じて、前記パターンデータの構成要素の配置位置および/またはサイズを調整可能である、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第8の態様は、スクリーン印刷版の作製に際してスクリーンメッシュ張設体のスクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成装置であって、第1ないし第5の態様のいずれかに係るメッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付ける、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第9の態様は、第8の態様に係る印刷版パターン作成装置であって、前記表示手段に再現された前記スクリーンメッシュの配置位置に応じて、前記パターンデータの構成要素の配置位置および/またはサイズを調整可能である、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第10の態様は、記憶媒体であって、第1ないし第5の態様のいずれかに係るメッシュ位置特定装置において生成された前記メッシュ位置データが格納されてなるともに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報が前記メッシュ位置データに記述されてなるかあるいは直接に付与されてなる、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の第11の態様は、スクリーン印刷版の作製に用いられるスクリーンメッシュ張設体に張設されたスクリーンメッシュを構成する、複数のメッシュ糸の配置位置を、特定する方法であって、前記複数のメッシュ糸の配置位置の特定対象である前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュを所定の撮像手段によって撮像する撮像工程と、前記撮像工程よって得られた前記スクリーンメッシュの撮像画像に基づいて、前記スクリーンメッシュ張設体における前記複数のメッシュ糸のそれぞれの配置位置を前記スクリーンメッシュにおける繰り返し単位ごとに特定し、前記繰り返し単位ごとに特定された前記配置位置の座標値を、前記複数のメッシュ糸のそれぞれの延在方向に沿った順序に再配列して記述したメッシュ位置データを生成する特定処理工程と、前記メッシュ位置データと、前記撮像手段による撮像の対象とされた前記スクリーンメッシュ張設体を一意に識別可能な識別情報とを関連付ける、関連付け工程と、を備え、前記特定処理工程においては、前記メッシュ位置データを、スクリーン印刷版作製用のパターンデータの作成に際して前記複数のメッシュ糸の配置位置を実質的に再現可能なデータ形式にて生成する、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第12の態様は、印刷版作製方法であって、第11の態様に係るメッシュ位置特定方法によって前記メッシュ位置データを生成するメッシュ位置データ生成工程と、所定の印刷版パターン作成装置を用いて、前記スクリーン印刷版の作製に際して前記スクリーンメッシュ張設体の前記スクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターン作成工程と、所定の印刷版作製装置を用いて、前記パターンデータに基づいて前記スクリーンメッシュ張設体に前記スクリーン開口部のパターンを形成することにより前記スクリーン印刷版を作製する印刷版作製工程と、を備え、前記印刷版パターン作成工程においては、前記メッシュ位置データ生成工程において生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現可能とされてなり、再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成可能であり、かつ、作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付けるようになっており、前記印刷版作製工程においては、前記パターンデータと関連づけられてなる前記識別情報に対応する前記スクリーンメッシュ張設体に対し、前記パターンデータに基づいて前記スクリーン開口部のパターンを形成する、ことを特徴とする。
【0025】
本発明の第13の態様は、スクリーン印刷版の作製に際してスクリーンメッシュ張設体のスクリーンメッシュ上に形成されるスクリーン開口部のパターンを記述したパターンデータを作成する印刷版パターンの作成方法であって、第11の態様に係るメッシュ位置特定方法によって生成された前記メッシュ位置データの記述に基づいて、前記メッシュ位置データと関連付けられてなる、前記パターンデータに基づく前記スクリーン印刷版の作製対象となる前記スクリーンメッシュ張設体における前記スクリーンメッシュの配置位置を所定の表示手段に再現する再現工程と、再現された前記スクリーンメッシュを参照しつつ前記パターンデータを作成する作成工程と、作成した前記パターンデータに、前記メッシュ位置データと関連付けられた前記識別情報を関連付ける関連付け工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明の第1ないし第9および第11ないし第13の態様によれば、張設に際してランダムにばらつきが生じ得るスクリーンメッシュのメッシュ糸の配置位置が例えば個々のメッシュ開口部などの微細な繰り返し単位ごとに特定され、さらには、係る配置位置を鑑みたパターンデータの作成さらには印刷版の作製が可能となる。これにより、印刷精度の優れたスクリーン印刷版を作製することが可能となる。
【0027】
また、第10の態様によれば、パターンデータの作成を、メッシュ位置データの生成に続けて行う必要がなく、また、その後に行うスクリーン印刷版の作製も含め、それぞれの処理を遠隔した場所で行うことも可能となる。すなわち、パターンデータの作成さらにはその後工程である当該パターンデータを用いたスクリーン印刷版の作製を、メッシュ糸の配置位置の特定と時間的および空間的に分離することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】スクリーンメッシュ張設体(メッシュ張設体)10を示す図である。
図2】スクリーンメッシュ2の拡大図である。
図3】メッシュ位置特定装置100の概略的な構成を示す図である。
図4】メッシュ位置特定装置100においてメッシュ位置の特定に関わる機能的構成要素を示す、機能ブロック図である。
図5】開口部形成対象範囲RE1とカメラ111による撮像範囲RE2との関係を例示する図である。
図6】第1座標変換処理について説明するための図である。
図7】メッシュ位置特定処理における処理の手順を示す図である。
図8】開口部アドレスの付与とメッシュ糸番号の付与について例示する図である。
図9】特定対象範囲設定部162によるメッシュ位置特定対象範囲の設定について、説明するための図である。
図10】特定対象範囲設定部162によるメッシュ位置特定線群の設定について、説明するための図である。
図11】縦糸2yの左右のエッジの位置と、横糸2xの上下のエッジの位置とを、スクリーンメッシュ2と対応させて示す図である。
図12】メッシュ全位置データDDを表形式にて例示した図である。
図13】張設体メッシュ位置データDEを表形式にて例示した図である。
図14】張設体メッシュ位置データDEの記述内容に基づいて、メッシュ糸2mのエッジの位置を再現した輪郭像P2を示す図である。
図15】メッシュ糸2mを再現したメッシュ再現像P3を示す図である。
図16】メッシュ位置の特定から後工程であるスクリーン印刷版の作製に至るプロセスにおいて生成される種々のデータと、メッシュ張設体10との関連性を、示す図である。
図17】張設体メッシュ位置データDEの利用の一態様を例示するための図である。
図18】印刷版作製システム1000についての概略構成を、スクリーン印刷版の作製に供される印刷版作製対象メッシュ張設体10および最終的に作製されるスクリーン印刷版20との関係とともに示す図である。
図19】印刷版作製システム1000を用いて行われる、スクリーン印刷版の作製処理について、特に、識別情報付きメッシュ位置データDFが作成された後の処理について、その流れを示す図である。
図20】太陽電池用の基板W2の上に、電極ペースト膜Z2βを形成した状態を示す図である。
図21】電極ペースト膜Z2βの形成に使用するスクリーン印刷版を作製するための、初期設計パターンPT2βを示す図である。
図22】CAD200において、設計パターンPT2を与えるレイヤーの下地レイヤーとして、メッシュ位置パターンPT2mを与えるレイヤーを、重ね合わせた図である。
図23】設計パターンPT2に基づいて作製されたスクリーン印刷版20を例示する図である。
図24】太陽電池用の基板W2の上に電極ペースト膜Z2を形成した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<スクリーンメッシュ張設体>
図1は、本実施の形態に係る発明の処理対象であるスクリーンメッシュ張設体(以下、単にメッシュ張設体とも称する)10を示す図である。メッシュ張設体10は、図1(a)に示すように、アルミなどの金属からなる平面視矩形状の版枠1に、スクリーンメッシュ2が張設されたものである。
【0030】
スクリーンメッシュ2は概略、それぞれが金属またはナイロン線材からなるメッシュ糸2mである多数の横糸2xおよび多数の縦糸2yが互いに交差(直交)するように、かつ、等間隔に配置された横糸2xと縦糸2yのそれぞれの隣り合う2つによって略矩形状のメッシュ開口部MOが形成されるように製織された、網目構造(メッシュ構造)を有してなる。
【0031】
係るメッシュ張設体10は、スクリーン印刷を行う際に用いられる印刷版である、スクリーン印刷版の構成部材をなすものである。スクリーン印刷版は、概略、スクリーン印刷によって形成しようとする所定のパターン(印刷パターン)に対応する部分を開口部(スクリーン開口部)とする態様にて、乳剤からなる塗布膜がスクリーンメッシュ2の上に設けられることによって、構成される。換言すれば、メッシュ張設体10は、スクリーン印刷版を作製する一連のプロセスの途中において生成される半製品であるともいえる。
【0032】
通常、スクリーン開口部は、スクリーンメッシュ2の全面ではなく、略中央部分の所定範囲(以下、開口部形成対象範囲)RE1の中に設けられる。
【0033】
また、図1(b)は、図1(a)に示すメッシュ張設体10に設定されるxy座標系(以下、版座標系α)を示している。なお、版座標系αにおいては、座標値の単位をmmとする。
【0034】
版座標系αは、メッシュ張設体10あるいはさらにこれを用いて作製されるスクリーン印刷版に固有の座標系である。版座標系αは例えば、スクリーンメッシュ2を構成するメッシュ糸2mの位置を特定する際に用いられる。
【0035】
例えば、図1(b)に示すように、版枠1のスクリーンメッシュ2を挟んで対向する2つの部分に2つの座標設定用のマークM1とM2とをマーキングするとともに、マークM1、M2が形成された辺とは異なる辺にさらなる座標設定用のマークM3をマーキングした場合であれば、マークM1とM2を結ぶ線分LXと、マークM3を通り線分LXと直交する線分LYとの交点が、版座標系αの原点(x、y)=(0、0)となり、線分LXの延在方向がx軸方向となり、線分LYの延在方向がy軸方向となる。
【0036】
本実施の形態においては、横糸2xの延在方向が横軸となり、縦糸2yの延在方向が縦軸となるように、版座標系αが規定されるものとする。これは、線分LXが横糸2xの延在方向と略一致し、線分LYの延在方向が縦糸2yの延在方向と略一致するように、マークM1、M2、およびM3を設けることで、実現される。なお、図1(b)においては、開口部形成対象範囲RE1が第1象限(x、yの値がともに正となる範囲)に位置するように、版座標系αが定められているが、これは必須の態様ではない。
【0037】
また、本実施の形態においては便宜上、版枠1の互いに直交する2つの縁の一方の延在方向が、版座標系αのx軸方向が図面視左右方向と一致し、他方の縁の延在方向が、y軸方向が図面視上下方向と一致するものとする。これにより、x軸方向正の側を右側、x軸方向負の側を左側、y軸方向正の側を上側、y軸方向負の側を下側、などと称することがある。
【0038】
なお、版座標系αの設定の仕方は上述の態様に限られるものではない。例えば、マークM1~M3が版枠1のエッジ部分に設けられてもよいし、スクリーンメッシュ2内に設けられる態様であってもよい。
【0039】
図2は、スクリーンメッシュ2の拡大図である。スクリーンメッシュ2は、概略的には、上述したように横糸2xと縦糸2yとが等間隔で互いに直交するように設けられてなるものとみなせる。しかしながら、より厳密にいえば、個々の横糸2xと縦糸2yとは必ずしも厳密に直線をなしているわけではなく、互いを交互に上下させつつ交差させる製織の過程で、図2に示すように局所的に変位し、蛇行している。加えて、それぞれの横糸2x同士、縦糸2y同士の間隔も、必ずしも一定ではない。
【0040】
それゆえ、例えばメッシュ張設体10を作製するに際して本来意図されている横糸2xと縦糸2yの配置位置および間隔が既知であったとしても、それだけでは、このような局所的なずれが生じているメッシュ張設体10のメッシュ糸2mの実際の位置を特定したことにはならない。
【0041】
本実施の形態においては、後述する装置および手順を適用することによって、メッシュ開口部MOを構成する横糸2xの(図面視)上端位置Ex1および(図面視)下端位置Ex2と、縦糸2yの(図面視)左端位置Ey1および(図面視)右端位置Ey2との座標をそれぞれ求めることで、メッシュ張設体10における個々のメッシュ糸2m(横糸2xおよび縦糸2y)の位置を特定する。
【0042】
なお、一のメッシュ開口部MOをなす4つのメッシュ糸2mの位置を特定するということは、当該メッシュ開口部MOの位置を特定することでもある。この点も鑑み、以降においては、上述のような個々のメッシュ糸2mの特定を単に、メッシュ位置の特定、とも称する。
【0043】
<メッシュ位置特定装置>
図3は、本実施の形態においてメッシュ張設体10におけるメッシュ位置の特定を行う、メッシュ位置特定装置100の概略的な構成を示す図である。図4は、メッシュ位置特定装置100においてメッシュ位置の特定に関わる機能的構成要素を示す、機能ブロック図である。
【0044】
メッシュ位置特定装置100は、メッシュ張設体10が載置されるステージ101と、ステージ101に載置されたメッシュ張設体10を上方から撮像するカメラ(撮像手段)111を含む撮像部110(図4)と、カメラ111による撮像に際しステージ101の下方からスクリーンメッシュ2に対し照明光を照射する照明光源121を含む照明部120(図4)と、メッシュ位置特定装置100の各部の動作の制御とメッシュ位置の特定に必要な演算処理とを担う処理装置130とを、主として備える。
【0045】
なお、メッシュ位置特定装置100においては、装置座標系β(X,Y,Z)があらかじめ規定されてなり、ステージ101上の位置と、カメラ111および照明光源121の配置位置は、装置座標系β(X,Y,Z)によって記述されるようになっている。なお、装置座標系βにおいても、版座標系αと同様、座標値の単位をmmとする。
【0046】
ステージ101は、その上面にメッシュ張設体10を水平姿勢にて載置固定出来るように設けられてなる。加えて、係る載置固定がなされた状態で、下方に配置されてなる照明光源121からの照明光が少なくとも開口部形成対象範囲RE1の全体に照射されるよう、少なくとも当該開口部形成対象範囲RE1に対応する部分については、例えばガラスなどの透明な材料で構成される。
【0047】
撮像部110は、カメラ111と、カメラ111の移動を担う移動機構112とを備える。カメラ111は、移動機構112によって移動させられることにより、水平面内および鉛直方向における任意の撮像位置で、ステージ101に載置固定されたメッシュ張設体10を撮像することが可能となっている。
【0048】
図5は、開口部形成対象範囲RE1とカメラ111による撮像範囲RE2との関係を例示する図である。なお、説明の簡単のため、開口部形成対象範囲RE1の直交する2辺がそれぞれ、装置座標系βのX軸方向とY軸方向のそれぞれに一致するよう、メッシュ張設体10がステージ101に載置固定されてなるものとする。
【0049】
カメラ111の撮像範囲RE2は、撮像画像の解像度を確保するべく、メッシュ張設体10におけるスクリーンメッシュ2の開口部形成対象範囲RE1に比して小さく設定される。それゆえ、図5(a)に示すように、一の開口部形成対象範囲RE1を撮像する際は、X軸方向およびY軸方向において撮像範囲RE2をシフトさせつつ撮像が繰り返される。これにより、X軸方向およびY軸方向において、個々の撮像位置における撮像範囲RE2の中心(撮像中心)Oの位置が、等間隔に配列することになる。これは例えば、ある撮像位置における撮像が完了する都度、撮像中心Oが図5(b)に矢印AR0にて示すような順序で順次に移動するようにカメラ111を移動させることによって、実現される。なお、図5(b)においては、初期撮像位置から撮像中心OのX軸座標のみを違えY軸座標については同一に保つ態様にてカメラ111を移動させ、当該移動方向における全ての撮像位置における撮像を行った後、初期撮像位置から撮像中心OのY軸座標のみを違えた位置に移動し、当該位置から撮像中心OのX軸座標のみを違えY軸座標については同一に保つ態様にてカメラ111を移動させ、当該移動方向における全ての撮像位置における撮像を行う、ということを繰り返す態様にて、全ての撮像位置における撮像を行うようにしているが、これは必須の態様ではなく、撮像順序は違えられてよい。
【0050】
より詳細には、図5(a)に示すように、開口部形成対象範囲RE1を対象とする撮像は、撮像範囲RE2の端縁部同士を重複させつつ異なる撮像位置で行われる。これは、個々の撮像位置における撮像によって得られる撮像データを統合する際に、位置合わせ(マッチング)を好適に行えるようにするためである。それゆえ、撮像位置を違える際のカメラ111の移動距離(シフト量)は、当該移動方向における撮像範囲RE2のサイズに比して小さい値に定められる。
【0051】
照明部120は、照明光源121と、照明光源121の移動を担う移動機構122とを備える。上述したように、一の開口部形成対象範囲RE1の撮像に際しては、撮像位置を違えつつ撮像が繰り返されるところ、照明光は、撮像位置によらず同じ条件で照射される必要がある。それゆえ、照明光源121は、移動機構122によって、カメラ111の移動に付随して移動させられる。なお、カメラ111の移動機構112と照明光源121の移動機構122とが一体となっていてもよい。換言すれば、一の移動機構に、カメラ111と照明光源121とが付設されてなる態様であってもよい。
【0052】
メッシュ位置特定装置100においては、ステージ101に載置固定されたメッシュ張設体10に対し、照明光源121が下方から照明光を照射した状態で、上方からカメラ111による撮像を行うことから、得られる撮像画像においては、メッシュ糸2mが暗部となり、メッシュ開口部MOが明部となる。
【0053】
処理装置130は、CPU131aと、ROM131bと、RAM131cとを含む処理制御部131と、例えばディスプレイなどからなる表示部132と、キーボードやタッチパネルなどからなる操作部133と、ハードディスクなどからなる記憶部134とを備える。処理装置130は、例えば汎用のコンピュータによって実現可能である。
【0054】
メッシュ位置特定装置100においては、記憶部134に記憶されてなる図示しない所定の処理プログラムが処理制御部131によって実行されることにより、図4に示す種々の機能的構成要素が、処理制御部131において仮想的な構成要素として実現されるようになっている。
【0055】
具体的には、撮像処理部140と、移動制御部145と、照明制御部150と、第1座標変換部155Aと、第2座標変換部155Bと、メッシュ位置情報処理部160と、データ統合処理部165と、関連付け処理部170とが、主として実現される。
【0056】
撮像処理部140は、カメラ111による撮像を制御するとともに、撮像の結果得られたデータ(撮像データ)をカメラ111から取得し、処理制御部131内における所定の処理に供する。
【0057】
具体的には、撮像処理部140は、カメラ111に、メッシュ張設体10の版枠1に設けられた3つのマークM1~M3に係る撮像を実行させ、それぞれのマークM1~M3についてのマーク撮像データDαを取得する。
【0058】
また、詳細は後述するが、撮像処理部140は、カメラ111に対し、図5に示すようにあらかじめ定められた複数の撮像位置のそれぞれにおいて、同じサイズの撮像範囲RE2での撮像を実行させる。本実施の形態においては、i番目の撮像位置における(i番目の撮像範囲RE2を対象とする)撮像により得られる撮像データを、第iメッシュ撮像データDAiと称する。
【0059】
なお、撮像処理部140は、カメラ111にて撮像される像(ライブビュー)を表示部132に表示させる役割も担う。
【0060】
移動制御部145は、カメラ111の移動機構112と照明光源121の移動機構122の動作を制御する。また、移動制御部145においては、カメラ111が撮像を行う際の撮像位置情報(撮像対象となっている範囲を特定する情報)が、当該撮像時の移動機構112の位置に基づいて生成される。係る撮像位置情報は、撮像処理部140によって取得されたマーク撮像データDαや第iメッシュ撮像データDAiに付加される。あるいは、カメラ111自体に例えばGPSなどの撮像位置特定機能が備わっており、撮像によって生成される撮像データに撮像位置特定機能に基づく撮像位置情報が付加される態様であってもよい。
【0061】
照明制御部150は、カメラ111による撮像の際の、照明光の照射を制御する。
【0062】
第1座標変換部155Aは、カメラ111による撮像画像(カメラ111によって生成された撮像データによって表現される画像)における、個々の画素の座標位置を、あらかじめ定められた第1座標変換情報IC1に基づき、装置座標系βにおける座標に変換する処理(第1画像変換処理)を担う。
【0063】
カメラ111によって得られる撮像データに記述されてなる画素位置はあくまで、当該撮像データによって表現される撮像画像における位置を表すに過ぎないため、撮像位置を違えつつ複数回の撮像を行う場合、実際の撮像位置は異なるにもかかわらず、それぞれの撮像画像の間で画素位置は区別されない。そのため、メッシュ位置特定装置100においては、撮像画像における個々の画素が、撮像対象物であるメッシュ張設体10のどの位置に対応するかを特定し、当該画素位置における画素値(色濃度値)を、装置座標系βで記述される画素位置における値として取り扱えるようにするべく、第1画像変換処理を行う。
【0064】
図6は、第1座標変換処理について説明するための図である。図6(a)は、カメラ111による撮像画像に設定された座標系であるカメラ座標系γ(Column(C):Row(R))を示している。カメラ111による撮像画像は、Column方向(C方向:横方向)にNc個、Row方向(R方向:縦方向)にNr個の画素が配列した矩形状の構成を有しており、カメラ座標系γは、係る撮像画像の左上端部を原点(0,0)とし、右下端部が(Nc,Nr)なる座標となるように定められてなる。それゆえ、撮像中心Oのカメラ座標系γにおける座標は(Nc/2,Nr/2)となる。また、図6(a)に示すように、カメラ座標系γにおける任意の画素位置を(C,R)と表現することとする。
【0065】
一方、図6(b)は、カメラ111の撮像範囲を装置座標系βによって示すものである。いま、装置座標系βによって表される撮像中心Oの座標を(Xc,Yc)とし、カメラ座標系γにおける任意の画素位置(C,R)を装置座標系βでは(X,Y)と表現することとする。
【0066】
換言すれば、図6は、装置座標系βにおいて(Xc,Yc)を撮像中心として撮像を行うことで得られる撮像画像における、カメラ座標系γにて表された任意の画素位置(C,R)を、装置座標系βにおける画素位置(X,Y)に変換する場合を対象としていることになる。
【0067】
係る場合、カメラ111の撮像画像における画素サイズがC方向についてSc(μm)、R方向についてSr(μm)であるとすると、
X=Xc+(C-Nc/2)・Sc/1000 ・・・(1)
Y=Yc-(R-Nr/2)・Sr/1000 ・・・(2)
が成り立つ。
【0068】
Nc、Nr、Sc、Srはカメラ111に固有の既知の値であり、これらの値を含む式(1)および式(2)が、あらかじめ第1座標変換情報IC1として記憶部134に記憶される。なおNc、Nr、Sc、Srの値は、カメラ111の仕様(使用するレンズ、解像度など)が変更されない限りは同じであることから、第1座標変換情報IC1は通常、メッシュ位置特定装置100の装置の使用に先立ってあらかじめ特定され、固定的に保持される。
【0069】
そして、第1座標変換部155Aは、ある撮像中心O(Xc,Yc)について撮像が行われることで生成された撮像データ(マーク撮像データDα、第iメッシュ撮像データDAi)につき、その画素位置を式(1)および式(2)に基づいて装置座標系βにおける座標位置(X,Y)に変換する。なお、座標変換がなされたマーク撮像データDαはさらに、次述する第2座標変換部155Bにおける座標変換に供される。一方、第iメッシュ撮像データDAiを対象とする第1座標変換処理がなされることで、第i処理対象データDBiが生成される。
【0070】
第2座標変換部155Bは、装置座標系βで表されている座標を、版座標系αで表される座標に変換する処理(第2座標変換処理)を担う。メッシュ張設体10は通常、メッシュ位置特定装置100とは異なる装置において印刷版の作製に用いられるものであることから、個々のメッシュ張設体10におけるメッシュ糸2mの位置座標は、当該メッシュ張設体10に固有の座標系である版座標系αにて表す方が実用的である。
【0071】
第2座標変換部155Bにおいては、まず、メッシュ張設体10に設けられた座標設定用のマークM1~M3の撮像データであるマーク撮像データDαに基づいて、上述した線分LX、LYの延在方向が装置座標系βのX軸、Y軸となす角(傾き角)θと、版座標系αにおける原点(x、y)=(0、0)の装置座標系βにおける座標(X0,Y0)が特定される。このとき、装置座標系βにおける任意の座標(X,Y)は、以下の式によって版座標系αの座標(x,y)に変換される。
【0072】
x=(X-X0)cosθ+(YーY0)sinθ ・・・(3)
y=-(X-X0)sinθ+(Y-Y0)cosθ ・・・(4)
【0073】
第2座標変換部155Bによって特定された傾き角θおよび座標(X0,Y0)の値と、式(3)および式(4)とが、第2座標変換情報IC2として記憶部134に記憶される。第2座標変換情報IC2は、個々のメッシュ張設体10に固有のものであり、相異なるメッシュ張設体10がメッシュ位置の特定対象とされる都度、生成される。
【0074】
そして、第2座標変換部155Bは、後述するメッシュ全位置データDDに装置座標系βを用いて記述された、一のメッシュ張設体10の開口部形成対象範囲RE1に存在する全てのメッシュ糸2mの座標位置を、第2座標変換情報IC2を用いて版座標系αを用いた記述に変換し、張設体メッシュ位置データDEとして出力する処理を行う。
【0075】
メッシュ位置情報処理部160は、第1座標変換部155Aによって生成された、装置座標系βを用いて記述されてなる第i処理対象データDBiを対象に、当該データによって表現される撮像画像におけるメッシュ糸2mの位置(装置座標系βにおける位置)を特定する処理を担う。
【0076】
メッシュ位置情報処理部160は、第i処理対象データDBiを取得すると、係る第i処理対象データDBiに対しエッジ検出処理や二値化処理などの公知の画像処理手法を適用し、第i処理対象データDBiによって表現される撮像画像において、メッシュ糸2mに含まれる画素領域とメッシュ開口部MOに含まれる画素領域とを判別する。上述したように、カメラ111による撮像によって得られる撮像画像においてはメッシュ糸2mが暗部となり、メッシュ開口部MOが明部となっているので、メッシュ位置情報処理部160における画像処理によっても、暗部がメッシュ糸2mに該当する画素領域として認識され、明部がメッシュ開口部MOに該当する画素領域として認識されることになる。
【0077】
メッシュ位置情報処理部160はさらに、アドレス付与部161と、特定対象範囲設定部162と、メッシュ位置座標特定部163とを備える。
【0078】
アドレス付与部161は、第i処理対象データDBiによって表現される撮像画像において、個々のメッシュ開口部MOを表す画素領域にアドレスを付与するとともに、メッシュ糸2mに該当すると認識された画素領域の形状に基づき、個々のメッシュ糸2mを表す画素領域にメッシュ糸番号を付与する。
【0079】
特定対象範囲設定部162は、第i処理対象データDBiによって表現される撮像画像を処理対象として、メッシュ位置を特定する範囲(位置座標特定対象範囲)を設定し、さらには、位置座標特定対象範囲においてメッシュ位置の特定に用いる線分(メッシュ位置特性線群)を設定する処理を担う。
【0080】
メッシュ位置座標特定部163は、第i処理対象データDBiによって表現される撮像画像と、特定対象範囲設定部162によって設定されたメッシュ位置特性線群とに基づいて、メッシュ糸2mの位置を特定する処理を担う。
【0081】
メッシュ位置情報処理部160におけるこれらの種々の処理の結果として、メッシュ張設体10におけるメッシュ位置の全特定対象範囲である開口部形成対象範囲RE1のうち、第i処理対象データDBiの生成元である撮像画像についての撮像範囲RE2に含まれるメッシュ糸2mの位置情報を記述してなる第i部分位置情報データDCiが、生成される。
【0082】
データ統合処理部165は、開口部形成対象範囲RE1の全ての撮像位置における撮像が行われ、かつ、それぞれの撮像データを対象に第1座標変換部155Aおよびメッシュ位置情報処理部160における処理が行われた結果として得られた、全ての第i処理対象データDBiを統合して、一の開口部形成対象範囲RE1の全体についてのメッシュ位置を記述してなるメッシュ全位置データDDを生成する。
【0083】
関連付け処理部170は、メッシュ位置特定装置100においてメッシュ位置の特定対象とされたメッシュ張設体10を一意に識別する情報である(処理対象)張設体識別情報IDを、第2座標変換部155Bによって生成された、実際に特定されたメッシュ位置を版座標系αにて記述してなる張設体メッシュ位置データDEに関連付けし、識別情報付きメッシュ位置データDFとして出力する処理を担う。
【0084】
張設体識別情報IDは、個々のメッシュ張設体10を区別可能な、当該メッシュ張設体10に固有の情報である。張設体識別情報IDは、所定の番号、記号、文字列、あるいはさらにこれらの組み合わせなどで設定される。
【0085】
<メッシュ位置特定処理>
次に、メッシュ位置特定装置100において実行されるメッシュ位置特定処理について説明する。以降においては、当該処理によってメッシュ位置が特定されたメッシュ張設体10を作製対象としてスクリーン印刷版が作製されることを想定して、説明を行う。
【0086】
図7は、メッシュ位置特定処理における処理の手順を示す図である。なお、以降の説明においては、スクリーンメッシュ2はメッシュ張設体10において横糸2xおよび縦糸2yが版枠1と略平行となるように張設されているものとする。また、カメラ111による撮像範囲RE2での撮像が、全Q箇所の撮像位置にて行われるものとする。すなわち、i=1~Qとする。また、メッシュ位置の特定対象とされ、さらにはスクリーン印刷版の作製処理に供されるメッシュ張設体10にはあらかじめ、(処理対象)張設体識別情報IDが設定されているものとする。
【0087】
図7に示すように、メッシュ位置特定処理においては、メッシュ位置の特定対象であるメッシュ張設体10が、メッシュ位置特定装置100のステージ101に載置される(ステップS1)と、まず、カメラ111が、係るメッシュ張設体10の版枠1に設けられた3つの座標設定用のマークM1~M3を順次に撮像し(ステップS2)、撮像処理部140が、それぞれについてマーク撮像データDαを生成する。
【0088】
好ましくは、メッシュ張設体10のステージ101の載置は、横糸2xが装置座標系βのX軸方向に概ね沿うように、かつ、縦糸2yがY軸方向に概ね沿うように、行われる。
【0089】
マークM1~M3の撮像は、それぞれの中心にカメラ111の撮像中心Oを位置させた状態で行われる。好ましくは、メッシュ張設体10におけるマークM1~M3の形成位置およびステージ101におけるメッシュ張設体10の載置位置を固定的に定めることで、マークM1~M3を撮像する際の撮像位置も固定的に定まっており、当該位置における撮像を行えば撮像範囲内にマークM1~M3が存在するように定められることで、マークM1~M3の撮像は自動処理にてなされる。係る場合、操作者が操作部133を操作することによって与えられた撮像実行指示に応答した移動制御部145が、移動機構112を駆動させてカメラ111をそれぞれのマークM1~M3の位置に移動させ、カメラ111が当該位置に到達する都度、撮像処理部140による制御のもとカメラ111が撮像を行う、という一連の動作が自動的に行われることになる。
【0090】
あるいは、メッシュ位置特定装置100の操作者が、表示部132に表示される撮像画像(ライブビュー)を視認することによってカメラ111の撮像位置を確認しながら、操作部133において所定の操作を行うことによってカメラ111の移動指示を与え、これに応答した移動制御部145が移動機構112を駆動させてカメラ111を当該位置に移動させる、という態様であってもよい。
【0091】
なお、照明光源121からの照明光は金属製の版枠1を透過しないため、係るマークM1~M3の撮像に際し、係る照明光の照射は必須ではない。それゆえ、係る撮像は、外光のみの状態でなされる態様であってもよいし、メッシュ位置特定装置100が図示しないマーク撮像用の落射照明光源を備えており、当該光源にてマークM1~M3を照明した状態で、なされる態様であってもよい。
【0092】
マークM1~M3のそれぞれについてマーク撮像データDαが生成されると、それらに基づいて、装置座標系βを版座標系αに変換するための変換関係を記述した第2座標変換情報IC2が特定される(ステップS3)。
【0093】
具体的には、まず、第1座標変換部155Aが、カメラ座標系γにて記述されてなるマーク撮像データDαをいったん装置座標系βによるデータに変換する。係る変換がなされると、第2座標変換部155Bが、当該変換後のマーク撮像データDαに基づいてマークM1~M3の座標位置を特定する。そして、特定されたそれらの座標位置から、線分LX、LYの延在方向が装置座標系βのX軸、Y軸となす角(傾き角)θと、版座標系αにおける原点(x、y)=(0、0)の装置座標系βにおける座標(X0,Y0)とを特定し、それらの値を含む式(3)および式(4)を、第2座標変換情報IC2として記憶部134に記憶する。
【0094】
好ましくは、第2座標変換部155Bは、傾き角θと座標(X0,Y0)を求めるために使用した3つのマークM1~M3の装置座標系βにおける座標値についても版座標系αの座標値に変換し、係る変換後の座標値についても、第2座標変換情報IC2に含まれるようにする。
【0095】
次に、i=1を初期値として(ステップS4)、i番目の撮像位置において、カメラ111によりスクリーンメッシュ2の撮像が行われる(ステップS5)。
【0096】
具体的には、移動制御部145が、移動機構112を駆動させてカメラ111をi番目の撮像位置に移動させる。そして、カメラ111が当該位置に到達すれば、撮像処理部140による制御のもと、カメラ111により撮像範囲RE2での撮像が行われ、撮像処理部140によって第iメッシュ撮像データDAiが生成される。さらには、第1座標変換部155Aが、係る第iメッシュ撮像データDAiにカメラ座標系γにて記述された各画素位置を第1座標変換情報IC1に基づいて装置座標系βにおける座標に変換し、第i処理対象データDBiとして出力する。
【0097】
係る撮像は例えば、操作者による操作部133の操作によって、i=1である1番目の撮像位置と、ある撮像位置における撮像が終了した後に次の撮像位置にカメラ111を移動させる際のシフト量とが、撮像範囲RE2のサイズに応じてあらかじめ設定されたうえで、自動処理にて行われる。
【0098】
あるいは、ステージ101におけるメッシュ張設体10の載置位置が固定的に定められることで、メッシュ位置の特定対象である開口部形成対象範囲RE1の位置も固定的に定められてなる場合であれば、i=1の場合も含め、開口部形成対象範囲RE1に比して小さい撮像範囲RE2での撮像を撮像位置をシフトさせつつ繰り返す際のi番目の撮像位置も、あらかじめ定めておくことが可能であるので、係る場合は、当該位置へのカメラ111の移動および当該位置における撮像を全て、自動処理にて行うことができる。
【0099】
第i処理対象データDBiが生成されると、メッシュ位置情報処理部160により公知の画像処理手法が適用され、第i処理対象データDBiによって表現される撮像画像において、メッシュ糸2mに対応する画素領域とメッシュ開口部MOに対応する画素領域とが判別されたうえで、アドレス付与部161により、第i処理対象データDBiによって表される撮像画像を対象に、開口部アドレスの付与(ステップS6)と、メッシュ糸番号の付与(ステップS7)とが行われる。
【0100】
図8は、ある第i処理対象データDBiによって表される撮像画像P1iを対象とした、開口部アドレスの付与とメッシュ糸番号の付与について例示する図である。なお、第i処理対象データDBiに対しては装置座標系βが適用されているので、撮像画像P1iにおける画素の位置も、装置座標系βにて表現されることになる。換言すれば、撮像画像P1iにおけるメッシュ開口部MOおよびメッシュ糸2mの像の位置座標は、第i処理対象データDBiの生成元となった第iメッシュ撮像データDAiがカメラ111による撮像にて得られた際の撮像範囲RE2における実際のメッシュ開口部MOおよびメッシュ糸2mの位置座標と同じとなっている。
【0101】
図8(a)は、開口部アドレスの付与の様子を示している。撮像画像P1iにおいては、略矩形状に視認される相対的に輝度が高い領域が開口部の像(開口部像)IMoとなっている。開口部像IMoは、スクリーンメッシュ2のメッシュ開口部MOの像であることから、当然ながら撮像画像P1iにおいて二次元的に配列している。アドレス付与部161は、撮像画像P1iに含まれるこれら開口部像IMoのうち、四方を相対的に輝度の低い領域からなるメッシュ糸2m(横糸2x、縦糸2y)の像(横糸像IMx、縦糸像IMy)に囲繞されているもののみを対象に、開口部アドレスを付与する。換言すれば、開口部アドレスは、撮像画像P1iの外周部分に不完全に(見切れて)写っているメッシュ開口部MOの開口部像IMoには付与されない。また、開口部アドレスが付与された開口部像IMoは矩形状に配列する。
【0102】
具体的には、X軸方向について開口部列番号A、B、C、・・・を付与し、Y軸方向について開口部行番号0、1、2、・・・を付与し、これら開口部列番号と開口部行番号との組み合わせで、それぞれの開口部像IMoのアドレスを定める。図8(a)に示す撮像画像P1iにおいては、X軸座標の小さい側からA~L(ただしIは不使用)の11個の開口部列番号が付与され、Y軸座標の小さい側から0~8の9個の開口部行番号が付与されている。すなわち、撮像画像P1iには11×9=99個の開口部像IMoが存在している。
【0103】
一方、図8(b)は、メッシュ糸番号の付与の様子を示している。メッシュ糸番号は、開口部アドレスが付与された開口部像IMoを囲繞する全ての横糸像IMxおよび縦糸像IMyを対象に付与される。
【0104】
具体的には、横糸像IMxについては、Y軸座標の小さい側から横糸番号h0、h1、h2・・・を付与し、縦糸像IMyについては、X軸座標の小さい側から縦糸番号v0、v1、v2、・・・を付与する。図8(b)に示す撮像画像P1iにおいては、Y軸方向において9本の横糸像IMxにより8個の開口部像IMoが区切られていることから、9個のメッシュ糸番号h0~h9が付与されている。また、X軸方向において12本の縦糸像IMyにより11個の開口部像IMoが区切られていることから、12個のメッシュ糸番号v0~v11が付与されている。
【0105】
なお、開口部アドレスおよびメッシュ糸番号はともに、異なる撮像位置において撮像されることで得られる全ての撮像画像において、通し番号として付与される。ただし、アルファベットで与えられる開口部列番号の場合、A~Zが全て(ただしIは除く)付与された後は、2A~2Z、3A~3Z、・・・が順次付与される。ただし、重複して撮像される開口部像IMoと横糸像IMxおよび縦糸像IMyには、同一の開口部アドレスまたはメッシュ糸番号が付与される。これはすなわち、開口部形成対象範囲RE1に含まれる全てのメッシュ開口部MOおよびメッシュ糸2mに、固有の識別情報が付与されることを意味する。
【0106】
開口部アドレスおよびメッシュ糸番号が付与されると、次に、特定対象範囲設定部162が、第i処理対象データDBiによって表される撮像画像P1iの一部を、メッシュ糸2mの特定を行う座標範囲(メッシュ位置特定対象範囲)として設定する(ステップS8)。概略的にいえば、撮像画像P1iにおいてメッシュ糸番号が付与されている範囲のうち、周縁部を除いた部分が、メッシュ位置特定対象範囲として設定される。図9は、特定対象範囲設定部162によるメッシュ位置特定対象範囲の設定について、説明するための図である。
【0107】
特定対象範囲設定部162は、図9(a)に示すように、撮像画像P1iにおいて2次元的に(矩形状に)位置してなる、開口部アドレスが付与された全ての開口部像IMoのうち、四隅の開口部像IMoのそれぞれに属する4つの点Q1~Q4からなる、四辺形Q1Q2Q4Q3を設定する。点Q1は4つの点のうちX座標、Y座標が最も小さい点であり、点Q2は、点Q1から延在する線分Q1Q2が横糸像IMxと略平行になるように設定される点であり、点Q3は、点Q1から延在する線分Q1Q3が縦糸像IMyと略平行になるように設定される点であり、点Q4は、線分Q2Q4が線分Q1Q3と平行でかつ線分Q3Q4が線分Q1Q2と平行となるように設定される点である。好ましくは、四辺形Q1Q2Q4Q3は矩形とされる。得られた四辺形Q1Q2Q4Q3の内側が、位置座標特定対象範囲となる。
【0108】
より詳細には、上述の四辺形Q1Q2Q4Q3は、開口部アドレスが付与された全ての開口部像IMoのうち、対角に位置しそれゆえに互いに最も遠い位置にある2つの開口部像IMoのそれぞれから選択される2点(点Q1と点Q4、または、点Q2と点Q3)を対角線とし、横糸像IMxと縦糸像Imyと略平行な四辺を有する四辺形として、特定される。
【0109】
図9(b)は、このように四辺形Q1Q2Q4Q3を設定したときの、線分Q1Q2に沿った輝度プロファイルPF1を示している。係る輝度プロファイルPF1においては、メッシュ開口部MOに相当する開口部像IMoのところで輝度が高く、メッシュ糸2m(具体的には縦糸2y)に相当する縦糸像IMyのところで輝度が低いという、輝度の高低が繰り返されてなる。そして、特定対象範囲設定部162は、前者の高輝度の範囲のそれぞれにおいて、中点(群)MP1を特定する。
【0110】
特定対象範囲設定部162はさらに、図9(a)に示すように、線分Q3Q4、線分Q1Q3、線分Q2Q4のそれぞれについても、上記と同様に、開口部像IMoのところで中点(群)MP2、中点(群)MP3、中点(群)MP4を特定する。
【0111】
中点(群)MP1~MP4が特定されると、続いて、特定対象範囲設定部162は、メッシュ位置特定線群を設定する(ステップS9)。図10は、特定対象範囲設定部162によるメッシュ位置特定線群の設定について、説明するための図である。
【0112】
具体的には、特定対象範囲設定部162は、中点群MP1と中点群MP2において開口部列番号が同じ中点MP1とMP2同士を結ぶ線分を特定する。より具体的には、これらの線分についての装置座標系βにおける直線の式を特定する。同様に、中点群MP3と中点群MP4において開口部行番号が同じ中点MP3とMP4同士を結ぶ線分を特定する。これらの線分が、メッシュ位置特定線群となる。図10(a)に示す場合であれば、対向する中点MP1とMP2同士を結ぶ9個の線分B0-B8、C0-C8、D0-D8、E0-E8、F0-F8、G0-G8、H0-H8、J0-J8、K0-K8、および、対向する中点MP3とMP4同士を結ぶ7個の線分A1-L1、A2-L2、A3-L3、A4-L4、A5-L5、A6-L6、A7-L7がメッシュ位置特定線群を構成する。
【0113】
メッシュ位置特定線群が設定されると、メッシュ位置座標特定部163がメッシュ位置特定線群を対象に、メッシュ糸2mの位置座標(部分メッシュ位置座標)を特定する(ステップS10)。これは、メッシュ位置特定線群をなすそれぞれの線分に沿った輝度プロファイルにおいて、輝度変化の顕著な箇所をメッシュ糸2mのエッジ(端部)として特定する処理である。
【0114】
例えば、開口部アドレスがA1とL1である開口部像IMoに定められた中点MP3とMP4とを結ぶ線分A1-L1における輝度プロファイルPF2においては、図10(b)のように、高輝度領域と低輝度領域とが交互に繰り返される。係る輝度プロファイルPF2において高輝度領域から低輝度領域へと変化する箇所が、縦糸2yの左端位置に相当し、低輝度領域から高輝度領域へと変化する箇所が、縦糸2yの右端位置に相当する。
【0115】
同様に、開口部アドレスがF0とF8である開口部像IMoに定められた中点MP1とMP2とを結ぶ線分F0-F8における輝度プロファイルPF3においても、図10(c)のように、高輝度領域と低輝度領域とが交互に繰り返され、係る輝度プロファイルPF3において、高輝度領域から低輝度領域へと変化する箇所が、横糸2xの下端位置に相当し、低輝度領域から高輝度領域へと変化する箇所が、横糸2xの上端位置に相当する。
【0116】
メッシュ位置座標特定部163は、メッシュ位置特定対象範囲に属する全てのメッシュ位置特定線群を対象に、このような輝度プロファイルにおける輝度変化から、縦糸2yの左右のエッジの位置と、横糸2xの上下のエッジの位置とを特定する。
【0117】
なお、以降においては、メッシュ位置特定対象範囲に属するメッシュ糸番号v1~v10の縦糸2yとメッシュ位置特定線群とが交差する箇所のうち、Y軸方向における値が小さい側からp番目の左側のエッジをv1(p)L~v10(p)Lと表し、右側のエッジをv1(p)R~v10(p)Rと表すこととする。また、メッシュ糸番号h1~h8の横糸2xとメッシュ位置特定線群とが交差する箇所のうち、X方向における値が小さい側からp番目の下側のエッジをh1(p)D~h8(p)Dと表し、上側のエッジをh1(p)U~h8(p)Uと表すこととする。ここで、(p)を点番号と称する。
【0118】
そして、係る場合においては、例えば、v1(p)LのX座標をX1pL、Y座標をY1pLなどと表し、v1(p)RのX座標をX1pR、Y座標をY1pRなどと表すこととする。さらに、h1(p)DのX座標をX1pD、Y座標をY1pDなどと表し、h1(p)UのX座標をX1pU、Y座標をY1pUなどと表すこととする。例えば、図10(b)に示すように、v5(1)L=(X51L,Y51L)であり、図10(c)に示すように、h4(5)U=(X45U,Y45U)である。当然ながら、実際のそれぞれの座標値は具体的な数値として特定される。
【0119】
これらv1(p)L~v10(p)L、v1(p)R~v10(p)R、h1(p)D~h8(p)D、h1(p)U~h8(p)Uのような、第i処理対象データDBiの表す撮像画像P1iに基づき定められたメッシュ位置特定対象範囲に含まれる、縦糸2yの左右のエッジの位置と横糸2xの上下のエッジの位置のそれぞれの座標を、i番目の撮像範囲についての部分メッシュ位置座標と称し、そして、撮像画像P1iに基づき特定された部分メッシュ位置座標を記述してなるデータセットを、第i部分位置情報データDCiと称する。すなわち、メッシュ位置座標特定部163は、第i部分位置情報データDCiの生成を担っているともいえる。
【0120】
図11は、第i部分位置情報データDCiに記述された、縦糸2yの左右のエッジの位置と、横糸2xの上下のエッジの位置とを、スクリーンメッシュ2と対応させて示す図である。ただし、図11においては、メッシュ糸2mの蛇行が誇張されている。
【0121】
図11に示すように、第i部分位置情報データDCiに記述された個々の座標は、それぞれのメッシュ開口部MOをなす2つの横糸2xおよび2つの縦糸2yの位置(代表値)となっている。
【0122】
部分メッシュ位置座標が特定され、第i部分位置情報データDCiが生成されると、i番目の撮像範囲に対応する撮像画像P1iに基づく処理は終了する。
【0123】
他の撮像範囲に対応する撮像画像を対象とする部分メッシュ位置座標の特定が残っており、全ての撮像範囲(つまりは開口部形成対象範囲RE1全体)に対する処理の終了には至っていない(つまりはi=Qではない)場合(ステップS11でNO)、i=i+1とされ(ステップS12)、移動制御部145の制御による移動機構112の駆動により、カメラ111による撮像位置がシフトさせられたうえで、ステップS5以降の処理が繰り返される。
【0124】
ただし、X軸方向に撮像位置をシフトさせる場合においては、従前の撮像範囲の少なくとも2列のメッシュ開口部MOが新たな撮像範囲において重複するようにカメラ111の移動が行われ、Y軸方向に撮像位置をシフトさせる場合においては、従前の撮像範囲の少なくとも2行のメッシュ開口部MOが新たな撮像範囲において重複するようにカメラ111の移動が行われる。好ましくは、ひとたび定められたそれぞれの軸方向における重複範囲は、全ての撮像範囲に対する撮像が完了するまでの間、変更されることなく維持される。係る場合、あらかじめ(例えば、1番目の撮像画像P11に基づき)当該重複範囲を見越してカメラ111の移動量を設定すれば、その後は、自動的に撮像位置を移動させつつ全ての撮像位置において撮像を行うことが出来る。
【0125】
全ての撮像範囲に対する、撮像から部分メッシュ位置座標の特定に至るまでの処理が終了した(つまりはi=Qである)場合(ステップS11でYES)、データ統合処理部165が、全ての(全Q個の)第i部分位置情報データDCiを統合して、一のメッシュ全位置データDDを生成する(ステップS13)。
【0126】
具体的には、1=1~Qの全ての第i部分位置情報データDCiにおいてはメッシュ位置特定線群を構成する線分ごとに記述されていた、縦糸2yの左右のエッジの位置座標と横糸2xの上下のエッジの位置座標とを、縦糸2yについてはメッシュ糸番号が同じものについての左側のエッジの位置座標および右側のエッジの位置座標にグルーピングし、横糸2xについてはメッシュ糸番号が同じものについての上側のエッジの位置座標および下側のエッジの位置座標にグルーピングする。
【0127】
図12は、メッシュ全位置データDDを表形式にて例示した図である。図12においては、開口部形成対象範囲RE1にn本の縦糸2yとm本の横糸2xとが存在している場合を想定している。すなわち、それぞれの縦糸2yにはv1~vmのメッシュ糸番号(縦糸番号)が対応し、それぞれの横糸2xにはh1~hmのメッシュ糸番号(横糸番号)が対応している。また、点番号は、縦糸2yについては開口部形成対象範囲RE1においてY座標の小さい方から数えたメッシュ開口部MOの数(行数)に相当し、横糸2xについては開口部形成対象範囲RE1においてX座標の小さい方から数えたメッシュ開口部MOの数(列数)に相当する。
【0128】
図12においては、例えば、縦糸番号v2が付された縦糸の、X座標の小さい方から(j)番目の開口部における左側のエッジの座標が(X2jL,Y2jL)であり、右側のエッジの座標が(X2jR,Y2jR)と表されている。横糸についても同様である。
【0129】
メッシュ全位置データDDは、開口部形成対象範囲RE1に含まれる全てのメッシュ糸2mについての、メッシュ開口部MOの存在箇所ごとのエッジの位置座標を、換言すれば、スクリーンメッシュ2における繰り返し単位ごとのエッジの位置座標を、当該メッシュ糸2mの延在方向に沿った順序で、装置座標系βにて記述したデータとなっている。
【0130】
係る態様にてメッシュ全位置データDDが生成されると、第2座標変換部155Bが、第2座標変換情報IC2を用いてメッシュ全位置データDDに記述された全ての座標値を、版座標系αにおける座標値に変換する(ステップS14)。係る変換により生成されるデータを張設体メッシュ位置データDEと称する。
【0131】
図13は、係る張設体メッシュ位置データDEを、メッシュ全位置データDDと同じ表形式にて例示した図である。それゆえ、図13に示す張設体メッシュ位置データDEの形式は図12に示したメッシュ全位置データDDと同一であるが、それぞれのメッシュ糸2mのエッジの位置を与える座標値の具体的な値は、両者において異なっている。
【0132】
例えば、図13においては、縦糸番号v2が付された縦糸の、X座標の小さい方から(j)番目の開口部における左側のエッジの座標が(x2jL,y2jL)であり、右側のエッジの座標が(x2jR,y2jR)と表されているが、これらの具体的な座標値はそれぞれ、同じ縦糸の同じ位置についての左側のエッジの座標(X2jL,Y2jL)および右側のエッジの座標(X2jR,Y2jR)の具体的な値とは異なっている。
【0133】
張設体メッシュ位置データDEは、開口部形成対象範囲RE1に含まれる全てのメッシュ糸2mについての、メッシュ開口部MOの存在箇所ごとのエッジの位置座標を、換言すれば、スクリーンメッシュ2における繰り返し単位ごとのエッジの位置座標を、当該メッシュ糸2mの延在方向に沿った順序で、版座標系αにて記述したデータとなっている。
【0134】
メッシュ糸2mのエッジの位置が版座標系αにて表されているということは、張設体メッシュ位置データDEにおいては、メッシュ糸2mのエッジの位置が、当該データの生成元となった撮像画像の撮像対象とされたメッシュ張設体10に固有の座標系にて記述されているということを意味する。また、スクリーン印刷版の作製という観点からみれば、張設体メッシュ位置データDEは、スクリーン印刷版の作製対象とされるメッシュ張設体10に基づいて作成された、当該メッシュ張設体10に固有のデータとなっている。
【0135】
このことは、張設体メッシュ位置データDEの記述内容を読み出すことで、その作成元となったメッシュ張設体10において開口部形成対象範囲RE1に含まれる全てのメッシュ糸2mのエッジの位置を、把握できることを意味する。
【0136】
一方、図14は、張設体メッシュ位置データDEの記述内容に基づいて、メッシュ糸2mのエッジの位置(つまりは輪郭の位置)を、図11に示された範囲に対応させて再現した輪郭像P2を示す図である。具体的には、張設体メッシュ位置データDEに記述された、メッシュ糸番号(縦糸番号または横糸番号)が同じで左側のエッジ(L)または右側のエッジ(R)の位置を与える座標点を点番号順につなぐことで形成される連続線が、図示されている。図14においては例えば、縦糸番号v2の左側のエッジに相当する連続線をLv2L、縦糸番号v7の右側のエッジに相当する連続線をLv7R、などと称している。同様に、横糸番号h2の上側のエッジに相当する連続線をLh2U、横糸番号h8の下側のエッジに相当する連続線をLh8D、などと称している。
【0137】
係る連続線は、実際のメッシュ糸2mのエッジの位置を、近似的に再現するものとなっている。しかも、その生成過程上、全てのメッシュ開口部MOの位置が、反映されたものとなっている。このことは、張設体メッシュ位置データDEの記述内容を参照することで、スクリーン印刷版の作製対象たるメッシュ張設体10におけるメッシュ糸2mの具体的な張設位置を、把握できることを意味する。換言すれば、張設体メッシュ位置データDEは事実上、メッシュ張設体10のメッシュ位置を記述したデータとして用いることができる。
【0138】
図15は、図14に示した輪郭像P2に基づき、左右あるいは上下で対になった連続線の間を塗りつぶす(低輝度領域とする)ことで、メッシュ糸2mを再現したメッシュ再現像P3を示す図である。メッシュ再現像P3に示すように、張設体メッシュ位置データDEを用いることで、メッシュ糸2mとメッシュ開口部MOとが好適に再現される。なお、連続線に対しスムージング処理を行うことで、より実際のメッシュ糸2mの形状に近づけることも可能である。
【0139】
ただし、張設体メッシュ位置データDEそのものには作成元となったメッシュ張設体10を特定する情報は含まれていない。張設体メッシュ位置データDEは、作成元のメッシュ張設体10に固有のものであることから、両者が関連付けられることで初めて、存在意義を有する。そこで、張設体メッシュ位置データDEは、関連付け処理部170において、その作成元となったメッシュ張設体10を特定する(処理対象)張設体識別情報IDと関連付けられる(ステップS15)。本実施の形態においては、張設体メッシュ位置データDEと張設体識別情報IDが関連付けられたデータを特に、識別情報付きメッシュ位置データDFと称する。係る関連付けがなされることで、メッシュ位置特定装置100におけるメッシュ位置特定処理は終了する。関連付けの詳細については次述する。
【0140】
作成された張設体メッシュ位置データDEあるいは識別情報付きメッシュ位置データDFは、記憶部134に格納されるか、あるいは、装置外部の記憶装置(ハードディスク、メッシュ位置特定装置100とネットワークで接続されたサーバーなど)や、可搬性のある所定の記憶媒体(例えば、DVD-RAM、DVD-RW、USBメモリ、SDカードなど)に記憶(格納)される。
【0141】
なお、上述したように、3つのマークM1~M3の版座標系αの座標値が第2座標変換情報IC2に含まれてなる場合は、係る座標値についても張設体メッシュ位置データDEに記述される。
【0142】
<関連付けの詳細>
張設体識別情報IDは、上述したように、所定の番号、記号、文字列、あるいはさらにこれらの組み合わせなど、種々の形式にて設定されるが、関連付け処理部170による張設体メッシュ位置データDEと張設体識別情報IDとの関連付けの具体的な態様についても、種々のものがある。
【0143】
例えば、番号や記号にて設定された張設体識別情報IDがそのまま、張設体メッシュ位置データDE内にデータ項目の1つとして書き加えられることで、識別情報付きメッシュ位置データDFが生成される態様であってもよいし、張設体識別情報IDがあくまで独立のデータとして保持され、当該データと張設体メッシュ位置データDEとを関連付ける情報が、識別情報付きメッシュ位置データDFとして設定される態様であってもよい。また、張設体メッシュ位置データDEのデータファイル名として張設体識別情報IDが付される態様であってもよい。
【0144】
あるいはさらに、張設体メッシュ位置データDEが可搬性のある記憶媒体に格納され、メッシュ位置特定装置100の外部において、格納された記憶媒体そのものに、張設体識別情報IDが印刷、貼付などの態様にて物理的に付される態様であってもよい。その場合、張設体識別情報IDは、文字や記号そのままのかたちで付されてもよいし、あるいは、バーコードあるいは二次元コードのような暗号化されたかたちで付される態様であってもよい。係る場合、メッシュ位置特定装置100において関連付け処理部170は必須の構成要素ではない。
【0145】
詰まるところ、識別情報付きメッシュ位置データDFは、それ自体が所定の形式で記述された一のデータである必要はなく、あるメッシュ張設体10についての張設体識別情報IDと、当該メッシュ張設体10に基づいて作成された張設体メッシュ位置データDEとが何らかの態様にて1対1で関連付けられたものであればよい。
【0146】
図16は、メッシュ位置の特定から後工程であるスクリーン印刷版の作製に至るプロセスにおいて生成される種々のデータと、メッシュ張設体10との関連性を、示す図である。
【0147】
メッシュ張設体10を用いてスクリーン印刷版を作製するにあたって、当該メッシュ張設体に基づいて作成された張設体メッシュ位置データDEを参照するには、図16に示すように、張設体メッシュ位置データDEのみならず、その生成元となったメッシュ張設体10そのものにも、他のメッシュ張設体10との区別のために、換言すれば、メッシュ張設体10と張設体メッシュ位置データDEとが一対一に対応するように、張設体識別情報IDが付与される必要がある。本実施の形態においては、印刷版の作製に供されるに先立って、このように張設体識別情報IDが付与されたメッシュ張設体10を特に、識別情報付きメッシュ張設体10Aと称する。
【0148】
メッシュ張設体10への張設体識別情報IDの付与についても、印刷、貼付、刻印など、種々の態様が想定される。その場合、張設体識別情報IDは、文字や記号そのままのかたちで付されてもよいし、あるいは、バーコードあるいは二次元コードのような暗号化されたかたちで付される態様であってもよい。
【0149】
一般に、メッシュ張設体10を用いてスクリーン印刷版を作製する場合、CADなどの印刷版パターン作成装置により、スクリーン印刷によって形成しようとする所定のパターン(印刷パターン)に対応するスクリーン開口部の、当該メッシュ張設体10に対する配置パターンを記述したパターンデータDPが作成されるが、従来手法では、メッシュ張設体10に張設されてなる個々のメッシュ糸2mの位置があらかじめ特定されることはなく、それゆえ通常は、パターンデータDPの作成に際しメッシュ糸2mの位置が考慮されることはない。せいぜい、メッシュ張設体10を作製する際に選択・設定される、メッシュ糸2mのサイズや、メッシュ開口部MOの設計上のサイズが把握できるに過ぎない。すなわち、メッシュ張設体10における個々のメッシュ糸2mの実際の位置が、特定されることはなかった。
【0150】
これに対し、本実施の形態においては、図16に示すように、メッシュ位置特定装置100によって、スクリーン印刷版の作製対象とされるメッシュ張設体10に張設されたスクリーンメッシュ2をなす個々のメッシュ糸2mの位置があらかじめ特定された張設体メッシュ位置データDEが生成され、かつ、個々のメッシュ張設体10を識別可能な、当該メッシュ張設体に固有の張設体識別情報IDが張設体メッシュ位置データDEと関連付けられる。これにより、スクリーン開口部の配置パターンを定めるパターンデータDPの作成に際して、張設体メッシュ位置データDEに基づきメッシュ糸2mの配置を参照することが出来る。
【0151】
係る参照は例えば、パターンデータDPの作成に際して張設体メッシュ位置データDEに基づき図14に示したような個々のメッシュ糸2mの輪郭位置を示す連続線を記述したレイヤーを設け、係るメッシュ糸2mの輪郭位置を参照しつつ他のレイヤーにおいてパターン設計を行う、という態様によって実現される。図14に示した連続線は、張設体メッシュ位置データDEに記述された座標を順につないだ、ベクターデータとして表現されるものであることから、例えば、CADなどの一般的な印刷版パターン作成装置において十分に利用可能なものである。
【0152】
以上のような態様にて張設体メッシュ位置データDEを利用して作成されたパターンデータDPに対しても、張設体識別情報IDが関連付けられる。このように関連付けがなされたパターンデータDPを、識別情報付きパターンデータDPAと称する。識別情報付きパターンデータDPAにおける関連付けのパターンデータDPと張設体識別情報IDとの関連付けは、張設体メッシュ位置データDEと張設体識別情報IDとの関連付けと同様になされればよい。
【0153】
そして、スクリーン印刷版を作製するに際しては、ある張設体識別情報IDが付与されたメッシュ張設体10に対し、同じ張設体識別情報IDが関連付けられたパターンデータDPに基づいて、スクリーン開口部が設けられる。
【0154】
図17は、張設体メッシュ位置データDEの利用の一態様を例示するための図である。いま、図17(a)に示すように、ある印刷対象物(ワーク)W1に対し、ある印刷パターンZ1(図17(a)においては略矩形状)をペーストのスクリーン印刷により形成したい場合を考える。係る印刷パターンZ1については、破線にて示す公差範囲TR1があらかじめ設定されているとする。すなわち、印刷パターンZ1は、公差範囲TR1の中であれば、形成位置の自由度がある(位置ずれが許容されている)ということになる。
【0155】
一方、図17(b)には、印刷パターンZ1の形成に用いるスクリーン印刷版を作製するためのパターンデータDPの作成に際して、印刷パターンZ1を形成するためのスクリーン開口部OP1βを印刷パターンZ1の設計位置通りに設けた、初期パターンPT1βを示している。ただし、図17(b)においては、初期パターンPT1βを、係る作成に供するメッシュ張設体10と関連付けられた張設体メッシュ位置データDEが読み込まれた下地パターンPT1mの上に、重ね合わせて示している。下地パターンPT1mには、メッシュ糸2mの輪郭線が示されている。
【0156】
図17(b)に示す場合においては、スクリーン開口部OP1βの図面視右端部が、例えば矢印AR1およびAR2にて指し示す縦糸2yの輪郭線と横糸2xの輪郭線との交点と重複している。このままの配置にてスクリーン開口部が設けられたスクリーン印刷版を用いてスクリーン印刷を行った場合、印刷パターンZ1が所望する形状から変形して形成されてしまうおそれがある。
【0157】
従来手法におけるパターンデータDPの作成プロセスでは、このようなメッシュ糸2mの配置状態を示す下地パターンPT1mの情報を得てはいなかったため、仮に図17(b)に示すような配置関係にてスクリーン開口部が設けられるような場合であっても、これを防ぐことは困難であった。
【0158】
これに対し、本実施の形態では、実際に図17(b)に示すような重ね合わせの状態を実現することが可能であり、それゆえ、パターンデータDPの作成プロセスの過程で、下地パターンPT1mにおけるメッシュ糸2mの輪郭線の配置を参照することができ、さらには、初期パターンPT1βにおいて図17(b)に示すような縦糸2yと横糸2xとの交点とスクリーン開口部OP1βとの重なりがあったとしても、例えば図17(c)において矢印AR3にて示すように、公差範囲TR1内において当該交点と重ならないようにスクリーン開口部OP1の形成位置をシフトさせたものを、印刷版形成用のパターンPT1とすることもできる。
【0159】
このようなスクリーン開口部OP1の形成位置のシフトは、配置位置については所定の公差範囲が許容されている一方で、形状について設計通りであることが求められる印刷対象物を、スクリーン印刷版を用いたスクリーン印刷によって形成する場合に適している。
【0160】
<印刷版作製システム>
図18は、上述したスクリーン印刷版の作製を行うための印刷版作製システム1000についての概略構成を、スクリーン印刷版の作製に供される印刷版作製対象メッシュ張設体10および最終的に作製されるスクリーン印刷版20との関係とともに示す図である。
【0161】
印刷版作製システム1000は、すでに詳述したメッシュ位置特定装置100と、印刷版パターン作成装置である印刷版パターン作成CAD200と、印刷版作製装置300とを備える。
【0162】
メッシュ位置特定装置100は、印刷版作製対象メッシュ張設体10について、上述した態様にてその開口部形成対象範囲RE1におけるメッシュ位置を特定し、その結果を記述した張設体メッシュ位置データDEを出力する。係る張設体メッシュ位置データDEには、当該メッシュ張設体10に固有の張設体識別情報IDが関連付けられる。
【0163】
また、印刷版パターン作成CAD200は、例えば、汎用のコンピュータに所定のCAD用ソフトウェアが読み込まれ、実行されることにより実現されるものである。
【0164】
印刷版パターン作成CAD200においては、図17に示したように、張設体メッシュ位置データDEに基づきメッシュ糸2mの輪郭線を下地レイヤーに読み込んだ状態で、印刷版用のパターンを設計することができ、スクリーン開口部とメッシュ糸2mの輪郭線との重なり方によっては、スクリーン開口部の配置を調整することも可能となっている。
【0165】
印刷版作製装置300は、メッシュ張設体10のスクリーンメッシュ2に対する乳剤のコーティングと、印刷版パターン作成CAD200によって作成されたパターンデータDPに基づくスクリーン開口部の形成(露光)とを行えるものであり、公知の装置を適用可能である。
【0166】
図19は、印刷版作製システム1000を用いて行われる、スクリーン印刷版の作製処理について、特に、識別情報付きメッシュ位置データDFが作成された後の処理について、その流れを示す図である。
【0167】
まず、スクリーン印刷版の作製に使用する(作製対象とされる)、あらかじめ識別情報付きメッシュ位置データDFが作成されてなる印刷版作製対象メッシュ張設体10の張設体識別情報IDが特定され(ステップS101)、印刷版パターン作成CAD(以下、CADとする)200に、当該張設体識別情報IDと関連付けられた張設体メッシュ位置データDEが読み込まれることで、CAD200の図示しない表示手段(表示画面)上に、印刷版作製対象メッシュ張設体10のメッシュ位置が視認可能に再現される(ステップS102)。張設体メッシュ位置データDEは、図13に例示したように、メッシュ糸2mのエッジの座標点を所定の配置順序で記述してなるデータであるので、CAD200において係るデータに基づき、図14に例示したような連続線としてメッシュ糸2mのエッジの位置を再現することは、容易である。なお、図13においては、表形式にて張設体メッシュ位置データDEを示しているが、係る形式はあくまで例示であり、実際の張設体メッシュ位置データDEは、CAD200における読み込みに適したデータ形式にて記述されていてよい。
【0168】
好ましくは、メッシュ位置の再現は下地レイヤーにおいてなされる。なお、係るメッシュ位置の再現は、図14に示すような輪郭線を用いて行われもよいし、図15に示すような、実際のスクリーンメッシュ2の撮像画像に類似した明暗像が、用いられてもよい。
【0169】
メッシュ位置が再現されると、CAD200の作業者が、表示画面に示されたメッシュ位置の再現像を参照しつつ、スクリーン開口部のパターンを設計し、パターンデータDPを作成する(ステップS103)。なお、ここでいうスクリーン開口部のパターンの設計とは、新規な設計を行う場合のみならず、あらかじめ作製された初期パターンデータDPを、メッシュ位置の再現像に応じて調整する場合も含まれる。
【0170】
係るパターンデータDPの作成の際には、上述のように、パターンデータDPを構成するスクリーン開口部用のパーツ(パターンデータの構成要素)の端部が縦糸2yと横糸2xとの交点と重なる場合など、そのままの配置にてスクリーン印刷版を作製した場合には実際の印刷時に不具合が生じる可能性があると判断される場合には、必要に応じて、パターンデータDPを構成するパーツの配置やサイズの微調整などが行われる。
【0171】
なお、このような微調整が、CAD200において画像処理により自動的に行われる態様であってもよい。これは例えば、パターンデータDPを構成するスクリーン開口部用のパーツの端部と、縦糸2yと横糸2xとの交点との重なり度合いが所定の閾値を超える場合に、当該パーツの配置をあらかじめ定めた公差範囲内でシフトさせる、といった処理をCAD200に行わせることによって実現される。
【0172】
作成されたパターンデータDPは、メッシュ張設体10の張設体識別情報IDと関連付けられ、識別情報付きパターンデータDPAが作成される(ステップS104)。
【0173】
作成された識別情報付きパターンデータDPAは、印刷版作製装置300に受け渡される。印刷版作製装置300の作業者は、係る識別情報付きパターンデータDPAに含まれる張設体識別情報IDと同じ張設体識別情報IDが付されたメッシュ張設体10を、印刷版の作製対象として取得する(ステップS105)。
【0174】
印刷版作製装置300においては、取得したメッシュ張設体10に対し、張設体識別情報IDと関連付けられたパターンデータDPを用いたスクリーン印刷版の作製、具体的には、当該メッシュ張設体10のスクリーンメッシュ2に対する乳剤のコーティングと、パターンデータDPの記述内容に基づくスクリーン開口部の形成箇所の露光などが行われる(ステップS106)。これにより、スクリーン印刷版20が完成する。印刷版作製装置300におけるスクリーン印刷版の作製処理については、公知技術を適用可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0175】
なお、上述したように、3つのマークM1~M3の版座標系αの座標値が張設体メッシュ位置データDEに記述されてなる場合には、CAD200において生成されるパターンデータDPにも係る座標値が記述される。そして、当該座標値は、印刷版作製装置300におけるスクリーン印刷版20の作製に際して、印刷版作製対象メッシュ張設体10に形成されたマークM1~M3がパターンデータDPに記述された座標位置と一致するように、印刷版作製対象メッシュ張設体10の位置決めを行う。これにより、印刷版作製対象メッシュ張設体10に設定された版座標系αが、印刷版作製装置300において再現されることになる。
【0176】
本実施の形態に係る印刷版作製システム1000においては、メッシュ位置特定装置100における、ある一の印刷版作製対象メッシュ張設体10を対象としたメッシュ位置の特定と、CAD200における、当該メッシュ張設体10をスクリーン印刷版の作製対象とすることを前提としたパターンデータDPの作成と、印刷版作製装置300における、当該パターンデータDPの作成対象とされた印刷版作製対象メッシュ張設体10を対象とするスクリーン印刷版の作製とを、必ずしも連続的に行う必要はない。
【0177】
これは、上述したように、それぞれの印刷版作製対象メッシュ張設体10を一意に識別する固有の張設体識別情報IDが、全てのメッシュ張設体10に対し定められ、かつ、張設体メッシュ位置データDEおよびパターンデータDPと関連付けられていることによる。すなわち、CAD200および印刷版作製装置300においては、処理を行おうとする適宜のタイミングで、対象となるメッシュ張設体10についての張設体メッシュ位置データDEあるいはパターンデータDPを、それらに関連付けられた張設体識別情報IDに基づき所定の格納場所から容易に取り出す(読み出す)ことが可能となっている。
【0178】
このことは、印刷版作製システム1000を構成するメッシュ位置特定装置100とCAD200と印刷版作製装置300とが、一体である必要はなく、ネットワークを通じて、あるいは可搬性の記憶媒体を用いて、データの受け渡しが可能であるのならば、張設体識別情報IDを介して一のメッシュ張設体10とこれに基づいて作成された張設体メッシュ位置データDEとパターンデータDPとが関連付けられている限り、それぞれが別体に設けられていてもよいことを意味している。係る場合においては、各装置が互いに遠隔した場所に設けられることも許容される。
【0179】
また、別の見方をすれば、このことは、張設体識別情報IDによる個々のメッシュ張設体10と張設体メッシュ位置データDEとパターンデータDPとの関連付けがなされている限り、それぞれのメッシュ張設体10についてのメッシュ位置特定装置100における張設体メッシュ位置データDEと、パターンデータDPと、印刷版作製装置300におけるスクリーン印刷版20の作製とが、独立のタイミングで繰り返されてもよいということでもある。
【0180】
例えば、あらかじめ多数のメッシュ張設体10についてメッシュ位置を特定し、これに基づき作製される張設体メッシュ位置データDEあるいは識別情報付きメッシュ位置データDFを、所定の格納場所にまとめて、あるいは、可搬性の記憶媒体に個別に、記憶しておくことも可能である。係る場合、後段の処理を行う必要が生じた段階で、スクリーン印刷版20の作製対象とされるメッシュ張設体10の張設体識別情報IDと関連付けられた張設体メッシュ位置データDEが読み出され、パターンデータDPの作成に用いられることになる。
【0181】
以上、説明したように、本実施の形態に係るメッシュ位置特定装置100およびこれを含む印刷版作製システム1000によれば、メッシュ位置特定装置100において、スクリーン印刷版の作製対象とされるメッシュ張設体10に張設されたスクリーンメッシュ2のメッシュ位置があらかじめ特定される。加えて、特定されたメッシュ位置を記述した張設体メッシュ位置データDEが、個々のメッシュ張設体10を識別可能な、当該メッシュ張設体に固有の張設体識別情報IDと関連付けられる。
【0182】
これにより、印刷版パターン作成CAD200においてスクリーン開口部の配置パターンを定めるパターンデータDPを作成するに際して、張設体メッシュ位置データDEに基づき、当該パターンデータDPを用いたスクリーン開口部のパターンの形成対象とされるメッシュ張設体10について、メッシュ配置を参照することができる。一般に、メッシュ糸2mの張設に際してはその配置位置にランダムにばらつきが生じ得るが、本実施の形態によれば、メッシュ位置を参照しつつパターンデータDPを作成できるので、当該ばらつきを考慮したパターンデータDPの作成が可能である。
【0183】
特に、あるスクリーン開口部の端部がメッシュ糸の交点と重なるような場合、必要に応じて、当該スクリーン開口部に相当するパターンデータDP上のパーツの配置位置を、適宜にシフトさせることも出来る。係る場合、スクリーン印刷版においてスクリーン開口部の端部がメッシュ糸の交点位置に形成されてしまうことに起因した、印刷パターンの変形を、抑制することが出来る。
【0184】
すなわち、本実施の形態に係るメッシュ位置特定装置100およびこれを含む印刷版作製システム1000は、印刷精度の優れたスクリーン印刷版の作製に資するものである。
【0185】
また、張設体メッシュ位置データDEとメッシュ張設体10とは張設体識別情報IDにより関連付けられているので、パターンデータDPの作成さらには印刷版作製装置300におけるスクリーン印刷版の作製は、メッシュ位置の特定に連続して行う必要はない。
【0186】
例えば、上述のように張設体メッシュ位置データDEがあらかじめ可搬性の記憶媒体に格納されてなり、かつ、張設体メッシュ位置データDEと張設体識別情報IDとが関連付けられているような場合であれば、張設体メッシュ位置データDEの作成から相当の時間が経過した、印刷版パターン作成CAD200においてパターンデータDPの作成を行う任意のタイミングで、印刷版パターン作成CAD200の作業者が当該記憶媒体を取得して格納されている張設体メッシュ位置データDEを読み出し、パターンデータDPの作成に際して参照することも可能である。
【0187】
あるいは、張設体識別情報IDと関連付けられた張設体メッシュ位置データDEがあらかじめ所定のサーバー等の外部からアクセス可能な記憶装置に格納されている場合であれば、スクリーン印刷版20の作製対象とするメッシュ張設体10の張設体識別情報IDを取得した印刷版パターン作成CAD200の作業者が、当該サーバーにアクセスして、取得した張設体識別情報IDと関連付けられてなる張設体メッシュ位置データDEを読み出し、パターンデータDPの作成に用いることも可能である。
【0188】
しかもこれらの対応は、メッシュ位置特定装置100と印刷版パターン作成CAD200と印刷版作製装置300とが、互いに遠隔しているような場合においても、行い得るものである。係る場合においては、メッシュ張設体10の受け渡しと、張設体メッシュ位置データDEの受け渡しとを、別個に行うこともできる。
【0189】
すなわち、パターンデータDPの作成さらにはその後工程である当該パターンデータDPを用いたスクリーン印刷版の作製を、メッシュ位置の特定と時間的および空間的に分離することが出来る。
【0190】
また、これは例えば、張設体メッシュ位置データDEが生成されたメッシュ張設体10を第三者に販売するような場合にも適用可能である。すなわち、あらかじめメッシュ位置が特定され張設体メッシュ位置データDEが生成されたメッシュ張設体10を、当該張設体メッシュ位置データDEとメッシュ張設体10を特定するための張設体識別情報IDとが関連付けられた識別情報付きメッシュ位置データDFが格納された記憶媒体とセットで販売する対応が可能となる。あるいはまた、あらかじめメッシュ位置が特定され張設体メッシュ位置データDEが生成されたうえで所定のサーバーに格納されてなるメッシュ張設体10を、メッシュ張設体10を特定するための張設体識別情報IDに基づくアクセス権とともに販売する対応も、可能となる。
【0191】
<太陽電池の電極印刷用印刷版への適用例>
以下においては、印刷版作製システム1000を用いたスクリーン印刷版20の作製の一例として、太陽電池の集電電極となる電極ペースト膜の印刷形成に用いられるスクリーン印刷版20を作製する場合について説明する。
【0192】
集電電極は、太陽電池用の基板の一方主面に設けられる電極であり、一の方向に延在する幅太のバスバー電極と、それぞれが係るバスバー電極から垂直に延在してなり、かつ、バスバー電極の延在方向において離間しつつ繰り返し設けられた多数の幅細のフィンガー電極とから、構成されるものである。係る集電電極は、バスバー電極とフィンガー電極のそれぞれに対応した部分を有する電極ペースト膜のパターンが太陽電池用の基板に印刷形成された後、基板ともども焼成されることによって、形成される。なお、フィンガー電極については、集電効率等の観点から、均一な形状(幅)を有することが望ましいとされる一方、形成位置については、等間隔であることを理想としつつも、個々には多少の変位(公差)が認められているものとする。
【0193】
図20は、太陽電池用の基板W2の上に、電極ペースト膜Z2βを形成した状態を示す図である。図20に示す電極ペースト膜Z2βは、バスバー電極に対応する一のバスバー部Z2βbと、それぞれがフィンガー電極に対応する多数のフィンガー部Z2βfとを備えている。なお、図示および説明の都合上、図20に示すバスバー部Z2βbとフィンガー部Z2βfの幅は実際のものよりも大きく、また、フィンガー部Z2βfの個数についても実際のものに比して相当に少ない。
【0194】
フィンガー電極は設計上、バスバー電極の延在方向において等間隔に繰り返し配置されるのが理想的である。以降、集電電極において係る等間隔の配置が実現されるよう、集電電極となる電極ペースト膜においてフィンガー部Z2βfが等間隔に配置されることを、理想配置と称する。図20に示す電極ペースト膜Z2βにおいては、フィンガー部Z2βfがこの理想配置にて形成されてなる。
【0195】
ただし、個々のフィンガー部Z2βfについては、個々のフィンガー電極の公差に対応した、所定の公差範囲内における理想配置からの変位は、許容されているものとする。
【0196】
図21は、図20に示した電極ペースト膜Z2βの形成に使用するスクリーン印刷版を作製するための、初期設計パターンPT2βを示す図である。初期設計パターンPT2βは、バスバー部Z2βbを形成するためのスクリーン開口部となるバスバー部用パーツPAbと、フィンガー部Z2βfを形成するためのスクリーン開口部となるフィンガー部用パーツPAfとを備える。初期設計パターンPT2βにおいては、フィンガー部Z2βfにおいて理想配置が実現されるよう、フィンガー部用パーツPAfが等間隔に配置されてなる。
【0197】
図22は、印刷版作製システム1000を構成するCAD200において、設計パターンPT2を与えるレイヤーの下地レイヤーとして、メッシュ位置パターンPT2mを与えるレイヤーを、重ね合わせた図である。設計パターンPT2は、初期設計パターンPT2βの一部を修正したものである。なお、図22においては図示の都合上、両者の端部をずらしているが、実際には、両者のサイズは同じである。
【0198】
メッシュ位置パターンPT2mは、スクリーン印刷版20の作製対象たるメッシュ張設体10に基づいて作成された張設体メッシュ位置データDEに記述されてなるメッシュ位置を、CAD200に読み込むことで形成されてなる。
【0199】
図22に示す場合においては、初期設計パターンPT2βに設けられていたある一のフィンガー部用パーツPAfaについて、その一方の側部が、メッシュ位置パターンPT2mにおける横糸の存在する箇所を表す横糸線Lhaと横糸の存在する箇所を表す縦糸線Lvaとの交点Caと近接あるいは交差している様子を示している。また、同じく初期設計パターンPT2βに設けられていたある別のフィンガー部用パーツPAfbについて、その一方の端部が、メッシュ位置パターンPT2mにおける横糸線Lhbと縦糸線Lvbとの交点Cbと近接あるいは交差している。
【0200】
それゆえ、理想配置の初期設計パターンPT2βのままでスクリーン印刷版20を作製した場合、それらフィンガー部用パーツPAfaおよびPAfbに対応させて形成されたスクリーン開口部が形成されることになる。係る場合、それらのスクリーン開口部に対応する箇所においては印刷膜の変形が生じてしまい、図20に示したような形状のフィンガー部Z2βfを有する電極ペースト膜Z2βを実際に得ることは、難しいと考えられる。
【0201】
このような不具合を回避するには、図22において矢印AR4およびAR5にて示すように、端部が縦糸2yと横糸2xとの交点と近接あるいは交差するフィンガー部用パーツPAfaおよびPAfbの配置位置について、(公差範囲内で)係る近接あるいは交差が解消されるようにシフトさせた設計パターンPT2を用いることが好ましい。
【0202】
図23は、CAD200においてこのようなシフトがなされた設計パターンPT2を用いて、印刷版作製装置300において作製された、スクリーン印刷版20を例示する図である。スクリーン印刷版20においては、図示を省略しているスクリーンメッシュ2の上に、乳剤膜3が形成され、かつ、設計パターンPT2において設定された態様にて、スクリーン開口部OPzが形成されてなる。図23に示すスクリーン印刷版20のスクリーン開口部OPzの形状は、図22に示したフィンガー部用パーツPAfaおよびPAfbのシフトを反映し、これらに対応するフィンガー開口部OPfaおよびOPfbの位置が他の開口部のなす等間隔の配置からシフトしている。
【0203】
図24は、太陽電池用の基板W2の上に、図23に示したスクリーン印刷版20を用いて電極ペースト膜Z2を形成した状態を、示す図である。係る電極ペースト膜Z2においては、フィンガー開口部OPfaおよびOPfbのシフトに応じて、単位フィンガー部ZfaおよびZfbの形成位置が、他の単位フィンガー部のなす等間隔の配置からシフトしている。ただし、単位フィンガー部ZfaおよびZfbのそれぞれの形状は、均一に保たれる。
【0204】
<変形例>
上述の実施の形態においては、メッシュ位置特定装置100が、メッシュ糸2m(横糸2xおよび縦糸2y)のうち、メッシュ開口部MOを形作っている箇所の座標を特定することで、張設体メッシュ位置データDEを生成していたが、これに代わり、横糸2xと縦糸2yの交点(両者の交差する箇所の中心点)の座標を特定し、当該座標を記述したデータとして、張設体メッシュ位置データDEを生成する態様であってもよい。係る場合も、スクリーンメッシュ2における繰り返し単位ごとの位置座標を、メッシュ糸2mの延在方向に沿った順序で記述することが出来る。
【0205】
あるいは、縦糸2yの左右のエッジの座標および横糸2xの上下のエッジの座標から、メッシュ糸2mの中心線の座標と、線幅とを導出し、これらを記述したデータとして、張設体メッシュ位置データDEを生成する態様であってもよい。
【0206】
上述の実施の形態においては、撮像画像P1iにおいて開口部アドレスが付与されてなる全ての開口部像IMoのうち、対角に位置しそれゆえに互いに最も遠い位置にある2つの開口部像IMoのそれぞれから選択される2点を対角線とし、横糸像IMxと縦糸像Imyと略平行な四辺を有する四辺形の内側を、メッシュ位置を特定するための位置座標特定対象範囲として設定しているが、これは必須の態様ではない。例えば、対角の位置からずれた位置の開口部像IMoを選択して四辺形を特定し、その内側を位置座標特定対象範囲として設定する態様であってもよい。少なくとも、開口部アドレスが付与された開口部像IMoを横糸2xの延在方向と縦糸2yの延在方向のそれぞれにおいて3個以上含む四辺形の内側が、位置座標特定対象範囲として設定されればよい。ただし、このように位置座標特定対象範囲を定めた場合、当該範囲に基づいてメッシュ位置が特定されるメッシュ糸2は、撮像画像P1iに写っているメッシュ糸2mの一部に過ぎず、同様の特定を、異なる位置座標特定対象範囲を特定しつつ繰り返す必要が生じる。それゆえ、効率の点からは、上述の実施の形態の手法が優れているといえる。
【0207】
上述の実施の形態においては、乳剤によるコーティングが施される前のメッシュ張設体10におけるメッシュ位置が、メッシュ位置特定装置100による特定の対象とされているが、これに代わり、あらかじめスクリーンメッシュ2に対し乳剤によるコーティングが施されたメッシュ張設体(コーティング済みメッシュ張設体)の当該スクリーンメッシュ2が、メッシュ位置特定装置100によるメッシュ位置の特定の対象とされてもよい。その際には、カメラ111により撮像を行う際の照明光源121による照明光の設定を、専用のものとすることで、上述の実施の形態と同様の態様にて、撮像画像に基づきメッシュ位置の特定を行うことができる。その場合、図19のステップS106としては、パターンデータDPの記述内容に基づくスクリーン開口部の形成箇所の露光のみが行われる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24