(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/438 20060101AFI20220817BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220817BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220817BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220817BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
A61K31/438
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/14
A61K47/34
A61K9/14
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2021521050
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 CN2019105617
(87)【国際公開番号】W WO2020078154
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】201811200947.1
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519304240
【氏名又は名称】丹諾医薬(蘇州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 宇
(72)【発明者】
【氏名】徐 向毅
(72)【発明者】
【氏名】馬 振坤
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106860451(CN,A)
【文献】特表2013-532633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される構造を有するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料と、溶媒とを含む、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体であって、
前記高分子担体は、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンVA64、ヒドロキシプロピルセルロースL、ヒドロキシプロピルメチルセルロースE3、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポリメタクリレートの内の1種または複数種の組み合わせを含み、
前記機能性補助材料は、ラウリル硫酸ナトリウム、メグルミン、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、ツイーン80の内の1種または複数種の組み合わせを含み、
【化1】
好ましくは、前記ポリメタクリレートは、オイドラギットEPOを含む、
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体。
【請求項2】
図8
に示される1つまたは複数のXRPD
(ただし、前記図8中の「API噴霧乾燥対照」のXRPDを除く。)によって特徴付けられる、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
図14~
図19に示される1つまたは複数の熱分析図によって特徴付けられる、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項4】
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料との合計質量を100%とした場合に、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の使用量が23.8%~71.2%、高分子担体の使用量が23.8%~71.2%、機能性補助材料の使用量が3%~7%であることを特徴とし、
好ましくは、前記高分子担体は、ヒドロキシプロピルセルロースLおよび/またはオイドラギットEPOを含み、
好ましくは、前記機能性補助材料は、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステルおよび/またはツイーン80である、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項5】
前記溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンの内の1種または複数種の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項6】
40℃/75%RHまたは60℃/解放の条件下で4週間放置したときに、XRPDに準拠した非晶質状態を保っていることを特徴とする、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む、微粒子剤。
【請求項8】
請求項7に記載の微粒子剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体の使
用。
【請求項11】
ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項7に記載の微粒子剤の使用。
【請求項12】
ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体およびその使用に関するものであり、医薬技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性菌および微好気性菌感染症は、多くの一般的または重大な疾患に関連している。現在、嫌気性菌/微好気性菌に特化して開発された独特な作用メカニズムを有する新規抗菌薬は世界的に不足しており、臨床ではまだニトロイミダゾールなど60年以上発売されている抗菌薬に依存している。これらの薬物に対する耐性問題は日増しに深刻化し、一部の一般的または重大な疾患は再発率が上昇し、治癒率が低下する傾向が現れている。そのため、嫌気性菌/微好気性菌感染に特化する新規抗菌薬の開発は、満たされていない重要な臨床上の需要である。
【0003】
本明細書の式Iに示されるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子は、リファマイシンとニトロイミダゾールの2つのファーマコフォアが安定な共有結合を介してカップリングして形成された新規多標的抗菌薬である。2つの母体抗菌薬の組み合わせよりも強い抗菌活性を有する。嫌気性菌と微好気性菌に対して比較的に強い体外、体内抗菌活性があり、特に薬剤耐性菌に対する活性が顕著である。薬剤耐性の発生の低減、殺菌速度、抗生物質投与後の効果およびファーマコフォア協同性などの多方面で、現在の治療薬物と比べて明らかな優位性がある。安全性薬理と毒性の研究により、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子は良好な安全性許容範囲を有することが示された。そのため、ピロリ菌関連消化管疾患、細菌性膣症、ディフィシル菌関連下痢症などの嫌気性菌/微好気性菌感染症の治療に応用できる可能性がある。しかし、従来の技術では、治療効果の信頼できるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の製剤が不足している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術の欠点に鑑みて、本発明の目的は、微生物感染症を治療するための医薬品の製剤として使用できるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体、およびその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下の技術的解決策を通じて達成される。
【0006】
式Iで示される構造を有するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料と、溶媒とを含む、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体である。
【0007】
前記高分子担体は、ポリビニルピロリドンK30(PVP K30)、ポリビニルピロリドンVA64(PVP-VA64)、ヒドロキシプロピルセルロースL(HPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースE3(HPMC E3)、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Soluplus)、ポリメタクリレート(オイドラギットEPO、Eudragit EPO)の内の1種または複数種の組み合わせを含む。
【0008】
前記機能性補助材料は、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、メグルミン、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル(VE-TPGSまたはTPGS)およびツイーン80(Tween-80)の内の1種または複数種の組み合わせを含む。
【0009】
【0010】
前記固体分散体において、好ましくは、前記ポリメタクリレートは、オイドラギットEPOを含むが、これに限定されない。
【0011】
前記固体分散体において、前記固体分散体は、好ましくは、実質的に
図8と類似した1つまたは複数のXRPDによって特徴付けられる。
【0012】
前記固体分散体において、前記固体分散体は、好ましくは、実質的に
図14~
図19と類似した1つまたは複数の熱分析図によって特徴付けられる。
【0013】
前記固体分散体において、好ましくは、前記高分子担体は、ヒドロキシプロピルセルロースLおよび/またはオイドラギットEPOを含む。
【0014】
前記固体分散体において、好ましくは、前記機能性補助材料は、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステルおよび/またはツイーン80である。
【0015】
前記固体分散体において、好ましくは、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料との合計質量を100%とした場合に、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の使用量が23.8%~71.2%、高分子担体の使用量が23.8%~71.2%、機能性補助材料の使用量が3%~7%(好ましくは4~6%)である。
【0016】
前記固体分散体において、前記溶媒は、当該分野で一般的に使用される試薬であってもよく、好ましくは、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンの内の1種または複数種の組み合わせを含む。
【0017】
前記固体分散体において、好ましくは、前記固体分散体は、40℃/75%RHまたは60℃/解放の条件下で4週間放置したときに、XRPDに準拠した非晶質状態を保っている。
【0018】
本発明はまた、前記リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む微粒子剤を提供する。
【0019】
本発明はまた、前記微粒子剤を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明はまた、前記リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
本発明はまた、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体の使用を提供する。
【0022】
本発明はまた、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記微粒子剤の使用を提供する。
【0023】
本発明はまた、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記医薬組成物の使用を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明が提供するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体は、微生物感染を治療するための医薬品の製剤として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施例におけるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の溶出試験の含有量分析の標準溶液クロマトグラム。
【
図2】実施例におけるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の安定性試験の不純物分析の標準溶液クロマトグラム。
【
図3】実施例におけるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の紫外吸収スペクトル。
【
図4】固体分散体薄膜のpH1.2人工胃液中の溶出挙動(25℃)図。
【
図5】固体分散体薄膜のpH4.5酢酸塩緩衝液中の溶出挙動(25℃)図。
【
図6】4種類の処方噴霧乾燥法により得られた固体分散体粉末の偏光顕微鏡の比較図。
【
図7】噴霧乾燥法により得られた固体分散体粉末と原薬リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子との走査電子顕微鏡の比較図。
【
図8】4種類の処方噴霧乾燥法により得られた固体分散体粉末のX線回折図。
【
図9】噴霧乾燥法により得られた固体分散体粉末のpH4.5酢酸塩緩衝液中の溶出挙動図。
【
図10】処方5~8の異なる担持量の固体分散体の偏光顕微鏡の比較図。
【
図11】処方5~8の異なる担持量の固体分散体粉末の走査電子顕微鏡の比較図。
【
図12】処方5~8の異なる担持量の固体分散体粉末のX線回折の比較図。
【
図13】原薬リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子粉末のMDSC特性曲線。
【
図14】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量23.8%)/EPO/TPGSの固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図15】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量23.8%)/EPO/ツイーン80の固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図16】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量47.6%)/EPO/TPGSの固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図17】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量47.6%)/EPO/ツイーン80の固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図18】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量71.4%)/EPO/TPGSの固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図19】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(担持量71.4%)/EPO/ツイーン80の固体分散体粉末のMDSC曲線。
【
図20】異なる担持量の固体分散体粉末のpH4.5酢酸塩緩衝液中の溶出挙動図。
【
図21】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(23.8%)/EPO/TPGSの50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図22】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(23.8%)/EPO/ツイーン80の50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図23】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(47.6%)/EPO/TPGSの50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図24】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(47.6%)/EPO/ツイーン80の50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図25】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(71.4%)/EPO/TPGSの50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図26】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(71.4%)/EPO/ツイーン80の50℃/オープンの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図27】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(23.8%)/EPO/TPGSの40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図28】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(23.8%)/EPO/ツイーン80の40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図29】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(47.6%)/EPO/TPGSの40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図30】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(47.6%)/EPO/ツイーン80の40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図31】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(71.4%)/EPO/TPGSの40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図32】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(71.4%)/EPO/ツイーン80の40℃/75%RHの条件下で5日間の安定性実験のMDSC曲線図。
【
図33】処方3により得られた固体分散体の異なる安定性条件下で2週間のXRPD図。
【
図34】処方3により得られた固体分散体の異なる安定性条件下で4週間のXRPD図。
【
図35】処方3により得られた固体分散体の25℃/60%RHの条件下で2週間のMDSC曲線。
【
図36】処方3により得られた固体分散体の40℃/75%RHの条件下で2週間のMDSC曲線。
【
図37】処方3により得られた固体分散体の60℃の条件下で2週間のMDSC曲線。
【
図38】処方3により得られた固体分散体の25℃/60%RHの条件下で4週間のMDSC曲線。
【
図39】処方3により得られた固体分散体の40℃/75%の条件下で4週間のMDSC曲線。
【
図40】処方3により得られた固体分散体の60℃の条件下で4週間のMDSC曲線。
【
図41】リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子カプセル(100mg規格)のpH4.5の条件下での溶出曲線(37℃)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の技術的特徴、目的および有益な効果をより明確に理解するために、ここで本発明の技術案について以下に詳細に説明するが、本発明の実施可能範囲に対する限定として解釈されるべきではない。特段の記載がない限り、下記の実施例に記載された実験方法はいずれも従来の方法である。特段の記載がない限り、下記の実施例に記載された試薬および材料は、商業的経路から入手することができる。
【0027】
本明細書において使用される「類似、相似」とは、例えばXRPD、IR、ラマンスペクトル、DSC、TGA、NMR、SSNMRなどと類似した特性を示す形態を指し、結晶多形体または共結晶体は、前記方法によって、類似からほぼ類似の範囲内で識別できることを指す。ただし、材料が前記方法によって(例えば、使用された計器、時刻、湿度、季節、圧力、室温などを含む実験的変化に基づいて)当業者が予測した変化性を有することが識別される場合に限る。
【0028】
本明細書において使用される「多形現象」とは、異なる水和状態(例えば、いくつかの化合物および複合体の性質)で存在する単一化合物の異なる結晶形が出現することを指す。したがって、結晶多形体は同じ分子式を共有する異なる固体であるが、それぞれの結晶多形体は独特の物理的性質を有することができる。したがって、単一化合物は、溶解度曲線、融点温度、吸湿性、粒子形状、密度、流動性、圧縮性、および/またはX線回折ピークなどが異なり、かつ独特な物理的性質を有する複数の結晶多形体を生成することができる。各結晶多形体の溶解度は変化する可能性があるので、予測可能な溶解度曲線を有する薬物を提供するためには、医薬用結晶多形体の存在を特定することが必要である。必要なのは、すべての結晶多形体を含む薬物のすべての固体形態を調査・研究し、各結晶多形体の安定性、溶出度と流動性を測定することである。化合物の結晶多形体は、X線回折分光法、赤外分光法などの他の方法により実験室で区別することができる。
【0029】
本明細書の実施例において使用される材料、機器の条件、および関連するいくつかの方法は、以下のとおりである。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
機器パラメータ:
偏光顕微鏡(PLM)
ニコンLV100POL
対物レンズ倍率:10倍/20倍/50倍
粉末X線回折計(XRPD)
約5mgの試料をシリコン単結晶基板にタイリングし、実行試験方法は以下の通りである:
X線管:Cu:K-Alpha(λ=1.54179Å)、
発生器:電圧:40kV、電流:40mA、
スキャン角度:3から40度、
サンプル回転速度:0rpm、
スキャン速度:10度/分。
【0034】
示差走査熱量計(DSC)
標准方法:加熱範囲30℃~300℃、加熱速度10℃/分、
変調示差熱量法:加熱範囲0℃/30℃~200℃、加熱速度2℃/分、調整幅±1℃、調整サイクル60秒。
【0035】
熱重量分析計(TGA)
加熱範囲:周囲温度~300℃、加熱速度10℃/分。
【0036】
動的水分吸着測定装置(DVS)
10~20mgの試料をDVS試料皿に入れ、試験温度は25℃とする。
湿度サイクルパラメータを次のように設定する。平衡条件:重量%/分<0.01%(1回の平衡時間は最低10分、最高180分)、予備乾燥:0%RH平衡2時間、湿度平衡設定:0、10、20、30、40、50、60、70、80、90、80、70、60、50、40、30、20、10、0。
【0037】
走査型電子顕微鏡(SEM)
電圧:10KV、電流:Point、モード:BSC Full。
【0038】
かさ/タップ密度測定
器具:10mLメスシリンダー、
振動の高さ:14mm、
振動数:300回/分。
試料をふるい(1.0mm、No.18スクリーン)に通し、10mLメスシリンダーに入れる。初期体積を記録し、USPにより、以下のようにタップ密度の測定を行う。メスシリンダーを500回振動させ、体積Vaを測定する。メスシリンダーを再度750回振動させ、体積Vbを測定する。二つの体積差が2%未満であれば、Vbを最終タップ体積とする。体積差が2%を超える場合には、連続した体積測定値間の差が2%未満となるまで、1250回ずつ振動を繰り返し、最後の体積を最終タップ体積とする。
【0039】
pH1.2人工胃液の調製:
ピペットガンで400μLの12N濃塩酸を100mLのpH1.8人工胃液に入れる。pH計で測定した溶液のpHは1.21である。
【0040】
人工胃液(pH1.8):950mLの超純水を1Lメスフラスコに入れ、1.4mLの12N濃塩酸と2gの塩化ナトリウムを加え、均一に攪拌し、超純水で定容する。
【0041】
pH4.5酢酸塩緩衝液の調製:
869.05mgの水酸化ナトリウム固体粒子をとり、1Lの超純水を1Lのガラス瓶に入れ、ピペットガンで3.15mLの氷酢酸を瓶に入れる。pH計で測定した溶液のpHは4.53である。
【0042】
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の高速液体クロマトグラフィーによる測定方法:
高速液体クロマトグラフィーの含有量と不純物の検出方法を表4と表5に、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の紫外吸収スペクトルを
図3に、その標準溶液クロマトグラフィーを
図1と
図2に示す。2つの高速液体クロマトグラフィーによる測定方法において、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の保持時間はそれぞれ2.90分と16.77分であり、システム適応性検証と線形区間の結果を表6と表7に示す。この2種類の方法はそれぞれ溶出実験中の含有量の測定と安定性試験中の回収率・関連不純物の測定に用いられる。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
(実施例)
本実施例は、式Iで示される構造を有するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を提供し、その成分は、式Iで示される構造を有するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料と、溶媒とを含む。
【0048】
【0049】
本実施例におけるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子(式Iに示すもの、以下、「API」または「原薬」という)は、丹諾医薬(蘇州)有限公司により製造されたものである。
【0050】
本実施例では、まず、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンの内の1種または複数種の組み合わせを含む溶媒のスクリーニング測定が行われる。リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子約10mgを1.5mLオートサンプラー用バイアルに入れ、それぞれ適量の異なる溶媒を加え、完全に溶解しているか否かを観察し、その溶解度を大まかに判断する。
【0051】
結果を表8に示す。結果から、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子は各種の一般的噴霧乾燥用溶媒(>100mg/mL)に溶解しやすいことがわかった。また、ICHが定める有機溶媒の1日あたりの許容曝露量レベル(PDEレベル)を参考として示した。
【0052】
【0053】
本実施例において、高分子担体をスクリーニングする。
適切な速放性担体補助材料を決定するために、ポリビニルピロリドンK30(PVP K30)、ポリビニルピロリドンVA64(PVP-VA64)、ヒドロキシプロピルセルロースL(HPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースE3(HPMC E3)、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Soluplus)、ポリメタクリレート(オイドラギットEPO、Eudragit EPO)の6種類の高分子担体をそれぞれ担体補助材料として用い、溶媒揮発法により二成分固体分散体を調製し、バイアル溶出試験により溶出挙動を評価する。
【0054】
二成分固体分散体(略称ASD)の製造:リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子約25mgと担体および補助材料約25mgを秤量し、同じ40mLガラス瓶に入れ、溶媒を加えて振とうし、表9に示すように完全に溶解させる。開いた40mLのガラス瓶を穴あきアルミホイルで覆って相互汚染を防ぎ、35℃の真空乾燥オーブンに入れて急速に揮発させる。40時間の十分な真空乾燥の後、二成分分散体は瓶の底に紫色薄膜を形成し、二成分固体分散体薄膜が得られる。
【0055】
【0056】
製造された二成分固体分散体薄膜に対して溶出実験を行う。
固体分散体の薄膜が入った40mLのガラス瓶の中で、それぞれ0.5mLのpH1.2人工胃液と1mLのpH4.5酢酸塩緩衝液を、溶出媒体(25℃)(目標濃度50mg/mL)として使用した。密閉して、5秒間ボルテックス処理し、100μLの液体を初期サンプリングポイント(0分)とし、その後揺動機で振とうして10分、30分、60分後、それぞれ100μLの溶液を遠心管に取り、14000回転/分で5分間遠心し、上清をオートサンプラー用バイアルに取り、アセトニトリルで適切な倍数に希釈し、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、外部標準法によりピーク面積で濃度を計算した。
【0057】
異なる補助材料を担体としたリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体のpH=1.2人工胃液媒体中での溶出結果を表10と
図4に示す。その結果は、HPC-Lを除くすべての固体分散体薄膜は、原薬薄膜対照を含め、5秒間のボルテックス後に5~13mg/mLの急速な薬物放出効果を示すことを示した。10分から60分では、PVP K30とPVP-VA64を担体とした系のみが原薬薄膜対照と同等の放出速度と度合を示し、HPC-L、HPMC E3、Soluplus、およびオイドラギットEPOを担体とした系は原薬薄膜の半分か半分以下の放出度合しか示さなかった。これは、PVP K30とPVP-VA64が濡れ性の強い担体補助材料であり、溶出媒体中で効果的かつ迅速に薬物を溶解して放出できるのに対し、HPC-L、HPMC、Soluplusは親水性が比較的劣るため、薬物放出に不利なためである。また、オイドラギットEPOも初期点では13mg/mLと非常に強い急速放出能力を示したが、その後5mg/mLまで低下した。オイドラギットEPO補助材料の特徴により、オイドラギットEPOの持続的な溶出はpH値を6.5(1時間)まで増加させたが、ソフトウェアの予測によると、薬物のpKaは約2.7であり、系のpHの変化は原薬の解離平衡の移動を招き、解離の度合が減少した。そこで、実験をより合理的に設計するために、後続実験ではオイドラギットEPO濃度が溶出媒体のpHに与える影響の度合についても検討した。
【0058】
pH4.5酢酸塩緩衝液溶出実験:リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子はpKaが2.7付近であるため、pH=4.5の酢酸塩緩衝液では解離が少なく、疎水性が強い。そのため、pH=1.2人工胃液に対して溶出速度と度合が著しく低下した。溶出結果を表11と
図5に示す。その結果は、オイドラギットEPOとHPC-Lを担体とする薄膜は薬物のpH=4.5系での溶出度を明らかに高めることができ、それぞれ原薬薄膜対照の6倍と3倍の放出度合を60分間まで有効に維持することができることを示した。また、実験現象によれば、HPC-Lを担体とした固体分散体薄膜溶出液が均一で安定な懸濁状態を示したので、オイドラギットEPOとHPC-Lを担体マトリックスとして次の噴霧乾燥分散体の検討を行った。
【0059】
【0060】
【0061】
溶液のpHおよび溶解度に及ぼすオイドラギットEPOの影響
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子のpH=1.2人工胃液中の溶出濃度が徐々に低下する挙動(表10参照)をさらに検討するために、異なる濃度のオイドラギットEPOを配置してオイドラギットEPO溶液のpH-濃度依存性を測定した。その結果を表12に示す。また、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/EPO(10/3)の固体分散体を製造して溶出実験を行い、EPO含量が溶出結果に与える影響を検証した。その結果を表13に示す。
【0062】
その結果、オイドラギットEPOの濃度が25mg/mLまで増加すると、溶液のpH値は2.57まで増加し、その後、オイドラギットEPOの溶解に伴い、溶液のpH値は次第に上昇し、同時に、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子は溶解媒体のpHの増加に伴って溶解度が急速に低下することが確認された。その結果、溶出系におけるオイドラギットEPOのpHへの影響は製剤の溶出挙動に重要な役割を果たしており、今後の処方設計において注意深く考慮すべきであることが明らかになった。
【0063】
【0064】
【0065】
本実施例において、機能性補助材料をスクリーニングする。
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の溶出性をさらに向上させるために、ラウリル硫酸ナトリウム、メグルミン、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステルまたはツイーン80をpH=1.2人工胃液またはpH=4.5酢酸緩衝液系にそれぞれ添加した。リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子を約100mg(または20mg)を秤量し、1.5mL高速オートサンプラー用バイアル中に置き、機能性補助材料を含むpH1.2人工胃液(或いはpH4.5酢酸塩緩衝液)1mLを加え、37℃の恒温混合器に入れて、回転速度を毎分700回転とし、120分後に500μLの液体を遠心管に取り、14000回転/分で5分間遠心分離し、上清を同じ条件で再び遠心分離し、二次遠心上清をオートサンプラー用バイアルに取り、適量の倍数のアセトニトリルで希釈して被測定溶液とし、高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、外部標準法によりピーク面積で濃度を計算した。
【0066】
その結果、VE-TPGSとTween-80は、pH1.2人工胃液とpH4.5酢酸塩緩衝液のいずれにおいてもリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の2時間溶出度を高めることができ、特にpH4.5系においては、原薬粉末対照と比較して、VE-TPGSとTween-80はそれぞれ2時間溶出度を6倍と4倍に高めることができることが明らかになった。
【0067】
【0068】
本実施例において、固体分散体は、噴霧乾燥法を用いて製造される。
補助材料のスクリーニング実験では、pH4.5溶出媒体においての固体分散体の溶出挙動と懸濁状態から、オイドラギットEPOとHPC-Lを噴霧乾燥用の担体として選択し、同時に製剤の溶出挙動をより高めるために、VE-TPGSまたはTween80を、機能性補助材料としてそれぞれ異なる固体分散体に添加した。固体分散体成分を表15に示し、噴霧乾燥溶媒としてアセトンを使用し、プロセスパラメータを表16に示す。噴霧乾燥で製造した固体分散体を35℃の真空乾燥炉で40時間真空乾燥し、-20℃の冷蔵庫に保存した。
【0069】
【0070】
【0071】
製造されて得られる非晶質固体分散体粉末の物理的特性評価
製造された噴霧乾燥固体分散体の物理的特性評価の結果を表17に、具体的な特性評価報告を
図6~
図8に示す。偏光顕微鏡写真(
図6に示す)とX線回折図(
図8に示す)の結果は、製造した噴霧乾燥分散体がすべて非晶質であることを示している。また、偏光顕微鏡写真(
図7)では背景に微量結晶の存在が観察されたが、原因は不明であった。オイドラギットEPO系走査電子顕微鏡の結果を
図11に示す。機能性補助材としてTPGSを用いた固体分散体は直径0.5~3μm程度の球形であることが多く、機能性補助材としてTween-80を用いた固体分散体は直径0.5~4μm程度のくぼみを有する球形であることが多い。また、未処理リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子原薬の物理的形態を参考として
図7に示す。
【0072】
【0073】
製造されて得られる非晶質固体分散体粉末の溶出実験
製造した固体分散体を約344mg秤量し、40mLのガラス瓶に入れて、pH4.5酢酸塩緩衝液20mL(37℃に予熱)を溶出媒体(リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子目標濃度4mg/mL)とした。密閉し、5秒間ボルテックス処理し、攪拌子を加え、37℃に加熱されたマグネチックスターラーの上に置いて、回転速度を毎分300回転にし、10分、20分、40分、60分、90分、120分、180分後、500μLの液体を遠心分離管に入れ、14000回転/分で3分間遠心分離し、上清をオートサンプラー用バイアルに入れ、アセトニトリルで10倍に希釈して被測定溶液とし、高速液体クロマトグラフに注入してクロマトグラムを記録し、外部標準法によりピーク面積から濃度を算出した。
【0074】
噴霧乾燥固体分散体の溶出結果を表18と
図9に示す。pH4.5酢酸塩緩衝液中では、オイドラギットEPOと、TPGSまたはTween-80を補助材料とする固体分散体は明らかにリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の溶出速度と度合を上昇させることができた。逆に、噴霧乾燥したリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/HPC-L/界面活性剤はリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の溶出を有意に上昇させなかった。機能性補助材料としてのVE-TPGSとTween-80の比較では、Tween80はリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子を10分以内に4mg/mLまで迅速に放出することがより顕著であったが、VE-TPGSは同様の放出効果を達成するのに40分を要し、10分濃度はわずか2.8mg/mLであった。そのため、Tween80は、急速放出効果がより強いと考えられている。また、噴霧乾燥したリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の2時間溶解度は、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子原薬の2時間溶解度(0.15mg/mL、表14)と類似しており、粒径が小さくなった噴霧乾燥原薬は平衡溶解度に有意な影響を及ぼさないことが示された。
【0075】
【0076】
本実施例において、固体分散物の処方担持量をスクリーニングする
噴霧乾燥分散体溶出実験の結果から、固体分散剤に用いる担体としてオイドラギットEPOを選択した。噴霧乾燥分散体への担持量の影響をさらに検討するために、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と担体の比率が1:1および1:3であり、VE-TPGSまたはTween80を5%(w/w)含有する固体分散体を製造した。成分を表19に示す。噴霧乾燥溶媒としてアセトンを使用し、プロセスパラメータを表20に示す。噴霧乾燥で製造した固体分散体を35℃の真空乾燥炉で40時間真空乾燥し、-20℃の冷蔵庫で保存した。
【0077】
【0078】
【0079】
処方5~8により得られた固体分散物の特性
異なる担持量の噴霧乾燥固体分散体の物理的特性評価の結果を表21に示し、具体的な特性評価を
図10~
図19に示す。同時に、噴霧乾燥分散体中の薬物および関連物質の含有量を高速液相法により分析した。
【0080】
偏光顕微鏡写真(
図10に示す)とX線回折図(
図12に示す)の結果は、製造された異なる量の噴霧乾燥分散体がすべて非晶質であることを示している。走査電子顕微鏡写真の結果(
図11に示す)は、担持量が50%を超えると噴霧乾燥粒子表面の陥没度が増加することを示しており、これは乾燥過程におけるリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子とオイドラギットEPOの拡散速度の違いが原因と推測される。MDSCの結果は、原薬リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子のガラス転化温度Tgが約145.0℃であることを示している(
図13)。API(23.8%)/EPO/TPGS噴霧乾燥分散体には2つのガラス転移温度が存在し、系が非単一相であることを示していることを除いて、残りの異なる担持量の噴霧乾燥分散体は単相固体分散体であり(
図14~
図19に示す)、Gordon-Taylorの法則にほぼ適合している。また、Tween-80系の固体分散体のTgは、全体としてVE-TPGS系の固体分散体より低い。高速液相含有量分析(表21)では、固体分散体の実際の含有量は理論的な含有量をわずかに上回っており、また噴霧乾燥過程では関連物質の増加は見られなかった。
【0081】
【0082】
得られた固体分散体に対する粉末溶出実験
それぞれ適量の固体分散体を取り、40mLのガラス瓶に置き、pH4.5酢酸塩緩衝液20mL(37℃に予熱)を溶出媒体(リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子目標濃度10mg/mL)として密閉し、5秒間ボルテックス処理し、攪拌子を入れ、37℃に加熱したマグネチックスターラー上に置き、回転速度を毎分300回転にした。10分、20分、40分、60分、90分、120分、180分経過した後、500μLの液体を遠心分離管に取り、14000回転/分で3分間遠心分離し、上清をオートサンプラー用バイアルに取り、アセトニトリルで10倍に希釈して被測定溶液とし、高速液体クロマトグラフに注入してクロマトグラムを記録し、外部標準法によりピーク面積から濃度を計算した。
【0083】
異なる担持量の噴霧乾燥固体分散体の溶出結果を表22と
図20に示す。溶出試験の結果は、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/オイドラギットEPO/Tween-80(47.5%/47.6%/4.8%)の噴霧乾燥分散体が最も優れた溶出挙動を示し、10分後には3mg/mL、3時間後には7mg/mLまで溶出した。リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/オイドラギットEPO/Tween-80(23.8%/71.4%/4.8%)噴霧乾燥分散体は、すべての割合の処方において最も急速放出効果が高い。しかし、オイドラギットEPOの持続的な溶出に伴い、溶液系のpHが上昇し、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の溶解度が抑制され、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子を安定した高濃度に維持することができなくなった。しかし、71.4%の担持量の系は溶出挙動が悪く、補助材料の割合が低いため、濡れ性および過飽和維持性が悪い可能性がある。総合的に考慮し、47.6%の担持量を最適な処方薬剤含有割合として選択した。
【0084】
【0085】
処方1、3、5~8により得られた固体分散体の短期物理安定性の研究
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/EPO/TPGS(またはTween-80)の噴霧乾燥固体分散体を1.5mLオートサンプラー用バイアルに適量とり、50℃と40℃/75%RHの安定性試験器に入れ、穴あきアルミホイルで光を避け、相互汚染を防止した。5日後、MDSCの特性評価を行い、結果を表23と
図21~
図32に示す。
【0086】
50℃および40℃/75%RHの条件下で、異なる担持量の非晶質固体分散体(ASD)粉末のTg値は多少変化したが、依然として1つのTg、すなわち単一固体溶液相しかなく、しかも明らかな発熱転晶シグナルがなく、固体分散体系の短期加速条件の物理安定性が良好であることを示した。
【0087】
【0088】
処方3に従って得られた固体分散体の長期物理安定性の研究
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/EPO/Tween-80噴霧乾燥固体分散体を40mLガラス瓶に適量とり、それぞれ25℃/60%RH、40℃/75%RH、60℃の安定性試験器に入れ、穴あきアルミホイルで光を避け、相互汚染を防止する。それぞれ2週間後、4週間後にXRPD、MDSCの特性評価を行い、結果を
図33~
図40に示す。
【0089】
X線回折スペクトルは、4週間後も固体分散体は同じで均一分布非晶質系であることを示し、MDSCは、ガラス転移温度(Tg)がわずかに低下していることを示している。実験結果によると、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子/オイドラギットEPO/Tween 80(47.6%/47.6%/4.8%)のASD粉末は、物理的安定性がより優れている。
【0090】
本実施例において、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体製剤と他の従来の剤形(例えばカプセル剤)との比較実験も提供される。
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の通常のカプセルは、固体粒子を乾式造粒プロセスにより製造して得、対応するカプセルシェルに充填して含有量100mg規格のカプセル(ロット番号D-1709FP2300-05-HPMCおよびD-1709FP2300-05-HG)を得る。造粒プロセスは、混合、乾式造粒、潤滑を含む。使用される補助材料は、一般的に市販されている薬用補助材料であり、充填剤/希釈剤、崩壊剤、流動補助材料、界面活性剤、潤滑剤を含む。カプセルシェルとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルシェル(HPMC)とゼラチンカプセルシェル(HG)を用いる。リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体カプセルは、前記の好ましい拡大ロットの噴霧乾燥固体分散体(ロット番号FR00057-3-180203-SDDEPO-50)を、対応するカプセルシェルに直接充填して、含有量100mg規格のカプセル(ロット番号FR00057-3-180203-SDDEPO-50-HPMCおよびFR00057-3-180203-SDDEPO-50-HG)を得る。
【0091】
得られたリフォマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子カプセル(100mg規格)の溶出実験を行った。
中国薬局方の要求に適合する溶出度測定器(パドル法)を使用し、pH4.5酢酸塩緩衝液(37℃に予熱)を溶出媒体とし、回転速度は毎分75回転とした。10分、15分、20分、30分、45分、60分でそれぞれサンプリングし、さらに毎分250回転で30分間経過した後にサンプリングした。5mLの液体を0.45μmのPTFEフィルターで濾過した。高速液体クロマトグラフに注入し、クロマトグラムを記録し、ピーク面積から外部標準法により濃度を算出した。
【0092】
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子固体分散体カプセルと通常の乾式法顆粒カプセルの溶出結果を表24と
図41に示す。溶出試験の結果は、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子固体分散体カプセルが最も優れた溶出挙動を示し、ロット番号FR00057-3-180203-SDDEPO-50-HG固体分散体カプセルは10分で72%、15分で96%の溶出度を示した。通常の乾式造粒カプセル(ロット番号D-1709FP2300-05-HG、10分溶出度31%、15分溶出度39%)よりはるかに優れていた。
【0093】
【0094】
本明細書の具体的な実施形態では、前記のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む微粒子剤も提供される。造粒機は、通常の造粒機であってもよく、粒子内放出制御剤であってもよく、これは、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を顆粒剤に製造する。いずれも微粒子剤の崩壊により有効成分リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子を放出する。
【0095】
本明細書の具体的な実施形態では、前記微粒子剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0096】
本明細書の具体的な実施形態では、前記のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散物を含む医薬組成物も提供する。すなわち、同組成物は、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体および他の補助材料を含む組成物であり、薬学的に許容される担体を含むこともできる。さらに、補助材料は、希釈剤、接着剤、潤滑剤、粒子内放出制御剤、崩壊剤、着色剤、味料または甘味剤のうちの1つまたは複数の賦形剤を含む。これらの組成物は、コーティングされた錠剤とコーティングされていない錠剤、硬ゼラチンカプセルと軟ゼラチンカプセル、糖衣錠、トローチ剤、ウエハース、小丸薬、密封されたパック中の粉剤などの製造に配合することができる。前記組成物は、軟膏剤、ポマード、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤などの局所使用用製剤を製造するために配合することができる。「薬学的に許容される担体」には、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル材料のような薬学的に許容される材料、組成物または媒介物が含まれ、このような材料は、生体の1つの器官または部分から生体の別の器官または部分への本発明の化学物質の運搬または輸送に関与する。各担体は、製剤の他の成分と適合可能であり、被験体に無害であるという意味で、好ましくは「許容可能」である。薬学的に許容される担体として使用できる材料のいくつかの例には、(1)乳糖、ブドウ糖及蔗糖のような糖、(2)コーンスターチおよび馬鈴薯スターチ等のデンプン類、(3)セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、(4)粉末状のトラガカンス、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバターおよびサポジトリーワックス等の賦形剤、(9)油類、例えば落花生油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油、(10)プロピレングリコール等のジオール類、(11)グリセロール、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロジェンフリー水、(17)等張塩水、(18)リンゲル溶液、(19)エタノール、(20)リン酸塩緩衝液、(21)医薬製剤用の他の非毒性で適合可能な物質、が含まれる。
【0097】
本明細書の具体的な実施形態では、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記微粒子剤の使用も提供する。
【0098】
本明細書の具体的な実施形態では、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記医薬組成物の使用も提供する。
【0099】
本明細書はまた、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における前記リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体またはその組成物の使用を提供する。
【0100】
(付記1)
式Iで示される構造を有するリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料と、溶媒とを含む、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体であって、
前記高分子担体は、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンVA64、ヒドロキシプロピルセルロースL、ヒドロキシプロピルメチルセルロースE3、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポリメタクリレートの内の1種または複数種の組み合わせを含み、
前記機能性補助材料は、ラウリル硫酸ナトリウム、メグルミン、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステル、ツイーン80の内の1種または複数種の組み合わせを含み、
【化3】
好ましくは、前記ポリメタクリレートは、オイドラギットEPOを含む、
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体。
【0101】
(付記2)
実質的に
図8に類似した1つまたは複数のXRPDによって特徴付けられる、付記1に記載の固体分散体。
【0102】
(付記3)
実質的に
図14~
図19に類似した1つまたは複数の熱分析図によって特徴付けられる、付記1に記載の固体分散体。
【0103】
(付記4)
リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子と、高分子担体と、機能性補助材料との合計質量を100%とした場合に、リファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の使用量が23.8%~71.2%、高分子担体の使用量が23.8%~71.2%、機能性補助材料の使用量が3%~7%であることを特徴とし、
好ましくは、前記高分子担体は、ヒドロキシプロピルセルロースLおよび/またはオイドラギットEPOを含み、
好ましくは、前記機能性補助材料は、ビタミンEポリエチレングリコールコハク酸エステルおよび/またはツイーン80である、付記1に記載の固体分散体。
【0104】
(付記5)
前記溶媒は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、塩化メチレンの内の1種または複数種の組み合わせを含むことを特徴とする、付記1に記載の固体分散体。
【0105】
(付記6)
40℃/75%RHまたは60℃/解放の条件下で4週間放置したときに、XRPDに準拠した非晶質状態を保っていることを特徴とする、付記1に記載の固体分散体。
【0106】
(付記7)
付記1~6のいずれか1つに記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む、微粒子剤。
【0107】
(付記8)
付記7に記載の微粒子剤を含む、医薬組成物。
【0108】
(付記9)
付記1~6のいずれか1つに記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体を含む、医薬組成物。
【0109】
(付記10)
ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、付記1~6のいずれか1項に記載のリファマイシン-ニトロイミダゾールカップリング分子の固体分散体の使用、
好ましくは、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、付記7に記載の微粒子剤の使用、
好ましくは、ヒトの微生物感染に起因する疾患を治療するための医薬品の製造における、付記9に記載の医薬組成物の使用。