(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】医療用シート
(51)【国際特許分類】
A61B 46/20 20160101AFI20220817BHJP
【FI】
A61B46/20
(21)【出願番号】P 2022070064
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】321005995
【氏名又は名称】上野 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100178179
【氏名又は名称】桐生 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】上野 浩二
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0298116(US,A1)
【文献】特開平06-169931(JP,A)
【文献】特開2006-051091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B46/00-46/20
A61B50/00
A61G13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の基部と、
前記基部の少なくとも3つの辺からそれぞれ外側方向に突出する3つの凸部と
を備え
、
前記基部には、被検査者の頭部を挿通することのできる切り込みを入れるためのくの字形状のミシン目が設けられていることを特徴とする医療用シート。
【請求項2】
前記3つの辺のうち、対向する2つの辺に挟まれた中央の辺の各端部の近傍には、孔が設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の医療用シート。
【請求項3】
前記孔は、前記近傍の端部に近づくに従って先細りとなる形状を有していることを特徴とする
請求項2に記載の医療用シート。
【請求項4】
前記孔は、中心角が60度の扇形形状を有していることを特徴とする
請求項3に記載の医療用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用シートに関し、より詳細には、医療機器や医療検査を受ける被検査者を被覆する医療用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機関においてCT装置、MRI装置、放射線装置等の医療機器を用いて被検査者の医療検査を行う際に、被検査者が頭部を載せる医療機器のヘッドホールドやヘッドレスト等のヘッド部分や、医療機器において医師や被検査者が手を触れる可能性のある部分の衛生状態を保つために、当該部分をタオルや専用のカバーで覆うことが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、マンモグラフィー等の医療検査を受ける際に被検査者が着用する専用の検査着も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3120152号公報
【文献】特開2020-169429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、医療機関において専用のカバーや検査着を揃えるには手間とコストがかかる。また、医療機器のヘッド部材を汎用的な布タオルで覆う場合にも、被検査者毎に布タオルを替えて洗濯をする必要があり、手間とコストがかかる。
一方、医療機器のヘッド部材を市販のペーパータオルで覆った場合は、当該ペーパータオルが小さすぎたり、或いは、被検査者が頭部を動かすと当該ペーパータオルの位置がずれてしまい、被検査者の咳や会話による口からの飛沫が医療機器に付着するのを十分に防ぐことができず、衛生状態が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、衛生状態を保つために汎用的に使用することができ、コストを削減することができる医療用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る医療用シートは、
矩形の基部と、
前記基部の少なくとも3つの辺からそれぞれ外側方向に突出する3つの凸部と
を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、例えば、被検査者の頭部を載せるヘッド部材を設けた医療機器において、当該医療機器のヘッド部材に被検査者が頭部を載せた際に医療用シートの3つの凸部が被検査者の頭部の左右及び上部に位置するように当該医療用シートをヘッド部材に敷くことで、被検査者がヘッド部材に頭部を載せた場合、当該ヘッド部材は被検査者の頭部にフィットするように凹形状を有しているものが多いため、医療用シートの3つの凸部が被検査者の頭部の左右及び上部に立ち上がり、被検査者の頭部を凸部で包み込むことができる。これにより、被検査者が会話や咳をしても飛沫等が周囲に飛散して医療機器等に付着するのを防ぐことができ、衛生状態を保つことができる。
また、医療用シートは形状がシンプルであるため、汎用的に使用することができ、医療機器の部位毎に専用のシートを準備する場合に比較して、コストを削減することができる。
【0008】
上記発明において、
前記3つの辺のうち、対向する2つの辺に挟まれた中央の辺の各端部の近傍には、孔が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、孔を設けたことで、医療用シートを孔の箇所で折れ曲がる等、変形し易くすることができるため、医療機器のヘッド部材に医療用シートを敷いて被検査者の頭部を載せた場合、被検査者の頭部の左右及び上部に医療用シートの凸部を容易に立ち上げて、被検査者の頭部を凸部で包み込むことができる。
【0010】
上記発明において、
前記孔は、前記近傍の端部に近づくに従って先細りとなる形状を有していることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、孔と当該孔の近傍にある端部とを結ぶ線に沿って医療用シートを折れ曲がる等、変形し易くすることができるため、医療機器のヘッド部材に医療用シートを敷いて被検査者の頭部を載せた場合、被検査者の頭部の左右及び上部に医療用シートの凸部を容易に立ち上げて、被検査者の頭部を凸部で包み込むことができる。
【0012】
上記発明において、前記孔は、中心角が60度の扇形形状を有していることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、孔と当該孔の近傍にある端部とを結ぶ線に沿って医療用シートを折れ曲がり易くすることができるため、医療機器のヘッド部材に医療用シートを敷いて被検査者の頭部を載せた場合、被検査者の頭部の左右及び上部に医療用シートの凸部を容易に立ち上げて、被検査者の頭部を凸部で包み込むことができる。
【0014】
上記発明において、前記基部には、被検査者の頭部を挿通することのできる切り込みを入れるためのくの字形状のミシン目が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、医療用シートにミシン目に沿って切り込みを入れることで、当該切り込みに被検査者の頭部を通すことができ、被検査者の胸元を当該医療用シートで覆うことができる。したがって、当該医療用シートをX線マンモグラフィー検査時の検査着としても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る医療用シートの平面図である。
【
図2】同実施形態に係る医療用シートの上に被検査者の頭部の圧力をかける前の状態を示す模式図である。
【
図3】同実施形態に係る医療用シートの上に被検査者の頭部の圧力をかけた後の状態を示す模式図である。
【
図4】同実施形態に係る医療用シートを医療機器のヘッド部材に敷き、当該医療用シートの上に被検査者の頭部を載せた状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る医療用シート1の平面図である。
図1に示すように、医療用シート1は、中央に位置する矩形の基部10と、当該基部10の4つの辺11a、11b、12a、12bからそれぞれ外側方向に突出する4つの凸部21a、21b、22a、22bと、を備えている。なお、本実施形態では、医療用シート1は、例えば、1枚の不織布を型抜きすることにより形成されており、辺11a、11b、12a、12bは仮想的な辺である。
【0018】
この医療用シート1は、主に、検査等に用いる医療機器の衛生状態を保つために使用される。ここで、医療機器としては、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)装置、放射線治療装置、ガンマカメラ装置等がある。
【0019】
4つの辺11a、11b、12a、12bのうち、1組の対向する辺11a、11bそれぞれから外側に突出する1組の凸部21a、21bは、略台形形状を有している。辺11a、11bに直交する2辺12a、12bから突出するもう1組の凸部22a、22bは、略半円形状を有している。
隣り合う凸部21a、22a、21b、22bの輪郭線同士は、互いに滑らかな曲線で連結されている。
【0020】
辺12aの両端部13a、13b各々の近傍には、孔30a、30bが設けられている。すなわち、辺12aの端部13aの近傍には、孔30aが設けられており、辺12bの端部13bの近傍には、孔30bが設けられている。
孔30a、30bは、辺12aの中点を通り辺12aに直交する対称軸S1に対して、線対称に設けられている。
【0021】
当該孔30aは、近傍の端部13aに近づくに従って先細りとなる形状を有している。同様に、当該孔30bは、近傍の端部13bに近づくに従って先細りとなる形状を有している。
本実施形態では、当該孔30a、30bは中心角が60度の扇形形状を有している。
【0022】
孔30aは、扇形形状の対称軸S2の延長線上に端部13aが配置されるように設けられている。同様に、孔30bは、扇形形状の対称軸S3の延長線上に端部13bが配置されるように設けられている。
【0023】
このような孔30a、30bを医療用シート1上に設けることにより、医療機器のヘッドホールドやヘッドレスト等のヘッド部材に被検査者が頭部を載せた場合に医療用シート1の2つの凸部21a、21bが被検査者の頭部の左右に位置し、凸部22aが被検査者の頭部の上部に位置するように、当該医療用シート1を医療機器のヘッド部材に敷いた状態で、当該医療用シート1に被検査者の頭部を載せると、孔30a、30bの箇所や、孔30aの対称軸S2(孔30aと当該孔30aの近傍にある端部13aとを結ぶ線)、孔30bの対称軸S3(孔30bと当該孔30bの近傍にある端部13bとを結ぶ線)等に沿って、シート1が変形し、また、ヘッド部材は被検査者の頭部にフィットするように凹形状を有しているため、被検査者の頭部の左右及び上部に凸部21a、21b、22aが立ち上がり、被検査者の頭部を包み込む。これにより、被検査者の咳や会話による飛沫がヘッド部材に付着するのを防ぐことができ、衛生状態を保つことができる。また、凸部21a、21bは略台形形状を有しており、凸部22a、22bは略半円形状を有しているため、必要以上に被検査者の左右の視界を遮ることがない。
また、当該孔30a、30bの形状を中心角が60度の扇形形状としたことにより、医療用シート1を対称軸S2、S3で折れ曲がり易くすることができる。
【0024】
基部10には、被検査者の頭部を通すことのできる切り込みを入れるための「くの字」形状のミシン目15が設けられている。ミシン目15は、辺12aが伸びる方向に伸びている。
【0025】
このように、基部10にミシン目15を設けたことで、ミシン目15に沿って切り込みを入れることで、当該切り込みから被検査者の頭部を通すことができ、被検査者の胸元を医療用シート1で覆うことができる。したがって、当該医療用シート1をX線マンモグラフィー検査時の検査着としても利用することができる。また、ミシン目15を「くの字」形状とすることで、切り込みに被検査者の頭部を通し易くなる。
【0026】
図2は、クッション性のあるベッドや又は凹部のあるヘッド部材等に医療用シート1を敷き、当該医療用シート1の上に被検査者の頭部の圧力をかける前の状態を示す模式図である。この状態では、被検査者の頭部の左右の凸部21a、21b、上部の凸部22aは水平に配置されている。
【0027】
図3は、クッション性のあるベッドや又は凹部のあるヘッド部材等に医療用シート1を敷き、当該医療用シート1の上に被検査者の頭部の圧力をかけた後の状態を示す模式図である。この状態では、被検査者の頭部の左右の凸部21a、21b、上部の凸部22aは、上方に立ち上がっている。
【0028】
図4は、医療用シート1を医療機器のヘッド部材40に敷き、当該医療用シート1の上に被検査者の頭部を載せた状態を示す模式図である。この状態では、被検査者の頭部の左右の凸部21a、21b、上部の凸部22aは、ヘッド部材40の形状に沿って、孔30a、30bの効果により滑らかに上方に立ち上がっている。
このように、医療用シート1に被検査者が頭部を載せると、凸部21a、21b、凸部22aが被検査者の頭部を包み込む形となるため、被検査者が咳をしたり、施術者と会話をしたとしても、ヘッド部材40に飛沫が付着するのを防ぐことができる。
【0029】
以上説明したように、被検査者の頭部を載せるヘッド部材40を有する医療機器において、当該医療機器のヘッド部材40に被検査者が頭部を載せた場合に、医療用シート1の対向する2つの凸部21a、21bが被検査者の左右に位置し、2つの凸部21a、21bに挟まれた凸部22aが被検査者の頭部の上部に位置するように当該医療用シート1を医療機器のヘッド部材40に敷くことで、被検査者が当該ヘッド部材40に頭部を載せた場合、医療用シート1の3つの凸部21a、21b、22aが被検査者の頭部の左右及び上部に立ち上がり、被検査者の頭部を包み込む状態となる。これにより、被検査者の飛沫等が周囲に飛散して医療機器等に付着するのを防ぐことができ、衛生状態を保つことができる。
また、医療用シート1は形状がシンプルであるため、汎用的に使用することができ、医療機器の部位毎に専用のシートを用いる場合に比較して、コストを削減することができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、医療用シート1は不織布で形成されているとして説明したが、厚手の布であってもよいし、和紙であってもよい。また、上述した実施形態では、医療用シート1は、1枚の不織布を型抜きすることにより形成されているとして説明したが、基部10と、凸部21a、21b、22a、22bとが別の部材で形成されており、これらが縫製等により結合されていてもよい。
また、孔30a、30bの形状は、中心角が60度の扇形に限らず、当該孔30a、30bは、各々近傍の端部13a、13bに近づくに従って先細りとなる形状であればよく、例えば、3角形であってもよい。また、中心角は、60度に限られることはないが、対称軸S2、S3に沿って折れ曲がり易いように、60度未満が好ましい。
また、ミシン目15は、くの字形状に限らず、例えば、辺12aと平行に伸びる直線であってもよいし、楕円弧形状であってもよい。
【0031】
また、医療用シート1を検査着として使用する際には、孔30a、30bを塞ぐことができるカバー部材等を備えた孔開閉機構を医療用シート1に設けてもよい。また、医療用シート1にミシン目15で切り込みを入れた後に、当該医療用シート1を医療機器のヘッド部材14に敷く等の別用途に使用する場合には、ホックや面ファスナー等の当該切り込みを閉じる機構を医療用シート1に設けてもよい。
【0032】
また、上述した実施形態における医療用シート1を医療機器のヘッド部材40に敷いた状態で、被検査者がヘッド部材40に頭部を載せた場合、3つの凸部21a、21b、22aは上方に立ち上がり被検査者の頭部を包み込む役割を果たすが、凸部22bは被検査者の体の下に敷かれて立ち上がることはない。したがって、凸部22bを設けずに、3つの凸部21a、21b、22aのみを設けてもよい。
図5は、3つの凸部21a、21b、22aのみを設けた場合の変形例に係る医療用シート1Aの平面図である。この場合には、3つの辺11a、11b、12aのうち、対向する2つの辺11a、11bに挟まれた中央の辺12aの各端部13a、13bの近傍であって、対称軸S1に対して対称となる位置に、孔30a、30bが配置されることとなる。
【0033】
また、医療機器にヘッドホールドやヘッドレスト等のヘッド部材40を使用せずに、一般的な枕にて患者頭部を固定する場合は、当該枕を医療用シート1で包み込むことができる。この際に、医療用シート1の対向する1組の凸部21a、21bは略台形形状を有しており、もう1組の凸部22a、22bは略半円形状を有しているため、医療用シート1で枕を包み込み易い。
【符号の説明】
【0034】
1、1A 医療用シート
10 基部
11a、11b、12a、12b 辺
13a、13b 端部
15 ミシン目
21a、21b、22a、22b 凸部
30a、30b 孔
S1、S2、S3 対称軸
【要約】
【課題】衛生状態を保つために汎用的に使用することができ、コストを削減することができる医療用シートを提供する。
【解決手段】医療用シート1は、矩形の基部10と、基部10の少なくとも3つの辺からそれぞれ外側方向に突出する3つの凸部21a、21b、22aとを備える。
【選択図】
図1