(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】魚の皮膚コラーゲンペプチドの組成および薬剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 1/12 20060101AFI20220817BHJP
C07K 1/36 20060101ALI20220817BHJP
C07K 1/20 20060101ALI20220817BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20220817BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20220817BHJP
C07K 1/34 20060101ALI20220817BHJP
C07K 1/18 20060101ALI20220817BHJP
C12P 21/06 20060101ALI20220817BHJP
A61K 38/39 20060101ALI20220817BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20220817BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220817BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220817BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220817BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20220817BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220817BHJP
A23J 3/34 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07K1/12
C07K1/36
C07K1/20
C07K14/46
C07K14/78
C07K1/34
C07K1/18
C12P21/06
A61K38/39
A61K35/60
A61P1/00
A61P29/00
A61K9/08
A23L17/00 Z
A23L33/18
A23J3/34
(21)【出願番号】P 2019521742
(86)(22)【出願日】2017-10-24
(86)【国際出願番号】 FR2017052932
(87)【国際公開番号】W WO2018078276
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-08-25
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519143188
【氏名又は名称】ゲラティン ワイアールト
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ-ボネット クリステル
(72)【発明者】
【氏名】オフレ ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ジョリマイトル-ロベール パスカル
(72)【発明者】
【氏名】コルビユ パトリス
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02720067(FR,A1)
【文献】国際公開第2007/090504(WO,A1)
【文献】特表2012-513461(JP,A)
【文献】特開2007-320946(JP,A)
【文献】PEPTIDES,2012年11月,Vol. 38, No. 1,pp. 13-21
【文献】JOURNAL OF FOOD SCIENCE AND TECHNOLOGY,2015年11月14日,Vol. 53, No. 2,pp. 1222-1229
【文献】JOURNAL OF FOOD SCIENCE,2010年,Vol. 75, No. 8,pp. H230-H238
【文献】J. Chem. Pharm. Res.,2015年,Vol. 7, No. 11,pp. 131-135
【文献】EUROPEAN JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,2016年05月13日,Vol. 91,pp. 216-224,COLITIS: A NEW TREATMENT STRATEGY
【文献】MICROBIOLOGY,1995年,Vol. 141,pp. 2681-2684
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド組成物の製造方法であって、
パンガシウス科から、および
シクリッド科から選択される温帯海域魚の皮膚を準備するステップと、
前記皮膚を洗浄する少なくとも1つのステップと、
コラーゲンの少なくとも一部を前記皮膚から抽出可能にするのに適した、前記皮膚の酸処理またはアルカリ処理の少なくとも1つのステップと、
カリカパパイア(Carica papaia)の少なくとも1つのプロテアーゼである植物起源の少なくとも1つのプロテアーゼによる、75℃未満の温度での前記コラーゲンの加水分解の少なくとも1つのステップと、
ペプチド組成物を生成するための、コラーゲン加水分解物を各プロテアーゼの変性温度より高い温度に加熱することによる酵素的加水分解の中断と、
を含み、
前記ペプチド組成物が、アミノグラムを有するペプチド組成物であって:
- 前記組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するグリシンのモル量の比が20.0%~24.5%であり;
- 前記組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するヒドロキシプロリンのモル量の比が6.0%~12.0%であり;
- 前記組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するプロリンのモル量の比が10.6%~14.6%であり;
前記ペプチド組成物が、前記ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによる解析の間に、1400Da未満の見かけの分子量のペプチドに対応する曲線下面積値を有するペプチドの溶出曲線を有し、この面積値の前記
曲線下面積値の合計値に対する比が40%未満であり;
前記ペプチド組成物の前記ペプチドが2500Da~3600Daの見かけの分子量値を有し;
前記
解析を、以下に記載するように実施する:
○多孔度5μmのシリカゲルから形成された固定相を含む寸法300×7.8mmの濾過カラムに;
○前記カラムを、40℃の温度に保持し;
○移動相として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸と(B)のアセトニトリルを含む超純水の生成した溶液(A)を用い、A/B体積比は、75/25であり;
○前記ゲル濾過カラムの上部に、前記ペプチド組成物を含む溶液の容量を導入し;
○前記カラム中の前記移動相の流量は、0.6ml/分であり;
○前記組成物の前記ペプチドを、214nmの波長での吸光度によって検出する、
製造方法。
【請求項2】
前記組成物の各ペプチドが200Da~12000Daの見かけの分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
陰イオン交換カラム上でのクロマトグラフィー分析により、前記ペプチド組成物の各ペプチドが、その電荷を表す保持時間でカラムから溶出され:
- アニオン性ペプチドに対応するピーク下の面積値;
- 中性ペプチドに対応するピーク下の面積値および;
- カチオン性ペプチドに対応するピーク下の面積値を有し;
前記アニオン性ペプチドに対応する前記ピーク下の面積値の、前記アニオン性ペプチドに対応するピーク下の前記面積値、前記組成物の前記中性ペプチドおよび前記カチオン性ペプチドに対する比は、27.0%~45%であり;
前記アニオン性ペプチドに対応する前記ピーク下の前記面
積値、前記カチオン性ペプチドに対応する前記ピーク下の前記面
積値、および前記中性ペプチドに対応する前記ピーク下の前記面
積値は、下記の条件下でのクロマトグラフィー分析により決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
○固定相として10μmの粒子径の第四級アンモニウム基で官能化した親水性アニオン交換樹脂を含む寸法100×7.8mmのクロマトグラフィーカラムを用い;
○前記カチオン性ペプチドおよび中性ペプチドの溶出のための第1の移動相として、pH8.35の5mM水溶液Tris緩衝液(C)を、前記カラムの上部で分析するべき前記組成物の導入から開始して7分の継続時間にわたり、次いでpH8.35の5mM Tris、5M NaClから形成される緩衝液(D)の体積の緩衝液(C)の体積に対する比が30分間で0~100%まで直線的に増加するアニオン性ペプチドの溶出のための第2の移動相を使用し;
○カラム中の移動相の流量は、1ml/分であり;
○解析を、25℃の温度で行い;ならびに
○カラム出口の波長214nmの吸光度で検出する
【請求項4】
前記ペプチド
組成物が、逆相液体クロマトグラフィー疎水性分析の間、16分~36分の保持時間を有し;
前記疎水性分析を、以下の条件下で実施する:
○粒径5μm、多孔度300Åのブチル基をグラフトしたシリカから生成した固定相を有する寸法250×4.6mmのクロマトグラフィーカラムを用い;
○親水性ペプチドの溶出のための第1の移動相として、前記カラムの上部で分析するべき前記組成物の導入から開始して7分の継続時間にわたって超純水中の0.1%のトリフルオロ酢酸の溶液(E)、次いで、40%アセトニトリルを含む水中の0.1%のトリフルオロ酢酸の溶液(F)の体積の、溶液(E)の体積に対する比が、30分間で0~40%まで直線的に増加する、疎水性ペプチドの溶出のための第2の移動相を使用し;
○カラム中の移動相の流量は、0.6ml/分であり;
○解析を、40℃の温度で行い;ならびに
○カラム出口の波長214nmの吸光度によって検出する
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記組成物が液体状態である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記組成物が分割状態で固体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記組成物が炭水化物を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が脂肪を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記組成物の前記ペプチドが水溶性であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記組成物が医薬としての使用のためのものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記組成物が消化器疾患の処置における使用のためのものである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記組成物が腸カンジダ症の処置における使用のためのものである、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記組成物が消化器炎症の処置における使用のためのものである、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記組成物が腸内微生物叢の維持における使用のためのものである、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項15】
前記組成物がヒト食品における使用のためのものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンペプチドの組成物に関する。本発明は、特に、魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンの酵素的加水分解によって得られるかかるペプチド組成物に関する。本発明はまた、薬剤としてのその使用のためのかかる組成物に関する。本発明は、したがって、ヒトまたは動物身体に影響を及ぼす疾患の治癒的または予防的処置のためのかかる組成物の使用に関する。本発明は、特に、ヒトもしくは動物における消化器カンジダ症の処置および/またはヒトもしくは動物における腸の炎症の処置における薬剤としてのその使用のためのかかる組成物に関する。本発明はまた、微生物叢刺激処置における薬剤としてのその使用のためのかかる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、魚類、軟体動物または甲殻類の皮膚または骨格に由来するコラーゲンに富む出発物質のパパインによる加水分解によって得られるペプチド粉末が開示されている。得られたペプチド粉末において、38%のペプチドは10 000Da~50 000Daの分子量を有する。特許文献1のペプチド組成は、広範囲の分子量、特に10 000Daより大きい分子量を有するペプチドの10%より大きい割合を有する。特許文献1のペプチド組成は、ペプチドのサイズによって不均一であり、80%~90%の間のみの水溶性ペプチドの画分を有する。10,000Daを超える高分子量のペプチドのかかる粉末は、完全には水溶性ではない。それらはまた、消化管によって完全に吸収可能ではなく、したがってそれらの生物学的利用率に関する問題をもたらす。
【0003】
また、特許文献1にはまた、非常に深い所に生息する魚から得られたかかるペプチド粉末の、競走馬の下肢の関節(膝、蹴爪および蹄)の腱の炎症の治癒的処置における使用が記載されている。かかる組成物を得ることは、問題である。それは、深海の魚類を除去する必要があるからである。さらに、かかる粉末は、その使用が関節の炎症の処置に制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、したがって、これらの欠点を克服することを目的とする。
【0006】
本発明は、温帯海域魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンの酵素的加水分解から生じる新規なペプチド組成物を提案することを目的とし、前記ペプチドは、水溶性-すなわち、100%水溶性-であり、消化管によって完全に吸収可能である。
【0007】
本発明はまた、温帯海域魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンの酵素的加水分解により生成する新規なペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、医薬として用いることが可能であるかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0009】
本発明は、特に、医薬として用いることが可能である温帯海域魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンの酵素的加水分解から生じるかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0010】
本発明は、約100~数千ダルトンの狭い範囲にわたる前記ペプチドの見かけの分子量の分布を有する、すなわち、高い見かけの分子量のペプチドを除外し、低い見かけの分子量のペプチドの低い割合を有するかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0011】
本発明は、腸カンジダ症の処置における医薬として用いることが可能であるかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、炎症性消化器疾患、特に炎症性腸疾患(IBD)の処置における医薬として用いることが可能であるかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0013】
本発明はまた、腸内フローラ(または微生物叢)の平衡および維持を促進するために用いることが可能であるかかるペプチド組成物を提案することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、温帯海域魚の皮膚(複数可)からのコラーゲンの酵素的加水分解から生じるかかるペプチド組成物の栄養補助食品としての使用を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、アミノグラムを有するペプチド組成物に関し、ここで:
- グリシンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が20.0%~24.5%であるようなモル量であり;
- ヒドロキシプロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が6.0%~12.0%、特に7.0%~11.0%であるようなモル量であり;
- プロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が10.6%~14.6%、特に11.6%~13.6%、特に12.1%~13.1%、好ましくは12.6%のオーダーであるようなモル量であり;
ペプチド組成物が、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによる解析の間に、1400Da未満の見かけの分子量のペプチドに対応する曲線下面積(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出曲線(すなわち、クロマトグラムの溶出曲線)を有し、この面積値のこの曲線下総面積(組成物の全ペプチドに対応する)に対する比が40%未満、特に38%未満、好ましくは30~38%、特に30~35%であるようにし;
前記分析を、以下に記載するように実施する:
○多孔度5μmのシリカゲルから形成された固定相を含む寸法300×7.8mmの濾過カラムに;
○カラムを、40℃の温度に保持し;
○移動相として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸と(B)のアセトニトリルを含む超純水の生成した溶液(A)を用い、A/B体積比は、75/25であり;
○ゲル濾過カラムの上部に、ペプチド組成物を含む溶液の容量を導入し;
○カラム中の移動相の流量は、0.6ml/分であり;
○組成物のペプチドを、214nmの波長での吸光度によって検出する。
【0016】
本文中、「アミノグラム」とは、ペプチド鎖(または結合)によって、ペプチドの配列またはペプチドの混合物のペプチドの配列を形成する遊離アミノ酸のリストを意味することを意図する。かかるアミノグラムは、ペプチドまたはペプチドの混合物を構成するアミノ酸の解析-特に全体的な解析または配列解析-によって得られる。
【0017】
特に、本発明に従う組成物のペプチドを構成するアミノ酸の性質および量を、当業者にそれ自体公知の全体的分析の任意の方法によって決定する。特に、この分析を、基準ISO 13903:2005に従って、アミノ酸分析器を用いて、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を用いた遊離および全アミノ酸のアッセイにより行う。ヒドロキシプロリンを、連続フロー分析および比色検出によってアッセイする。
【0018】
本発明の組成物の全体的分析によって得られたアミノグラムは、温帯海域魚の皮膚からのコラーゲンのアミノ酸組成の代表である。本発明は、したがって、植物起源のシステインプロテアーゼ-特にクラスEC 3.4.22.2からのプロテアーゼ-による温帯海域魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から生じるかかるペプチド組成物に関する。本発明者らは、かかるシステインプロテアーゼの使用により、水溶性であり-すなわち、100%水溶性であり-、消化管によって完全に吸収可能であり、約100~数千ダルトンの狭い範囲にわたる見かけの分子量の分布を有し、すなわち、高い見かけの分子量のペプチドを除外し、また低い見かけの分子量のペプチドの低い割合を有するペプチドの組成物を得ることが可能になることを発見した。
【0019】
さらに、本発明のペプチド組成物のペプチドの分離を、ペプチド組成物をシラノール基の高い表面密度を有する多孔性シリカゲル濾過カラム(BioSep-SEC-S2000,Phenomenex,Le Peck、フランス)上での液体クロマトグラフィーによる分析的分離のステップに供することによって、それらの見かけの分子量の関数として行う。
【0020】
移動相として、(A)トリフルオロ酢酸(0.1体積%)を添加した超純水および(B)アセトニトリルを含む溶液(A/B;75/25;v/v)を、用いる。ゲルろ過カラムを、解析中は40℃の温度に保持する。固定相中の移動相の流量は、0.6ml/分である。ゲル濾過カラムの上部に導入した分析するべきペプチド組成物の体積は、25μlであり、検出を、214nmの波長の吸光度により連続的に行う。クロマトグラムを得、各ピークを、ピークの最大吸光度値で決定した継続時間または保持時間値(分析するべき混合物のカラムの上部での導入に続いての分で表す)によって特徴づける。各ピークの最大吸光度値におけるこの保持時間値に対応する各ペプチドの見かけの分子量を、-上記と同じクロマトグラフィー条件下で-決定した見かけの分子量のペプチドの分析によって得られる所定の較正曲線によって決定する。例えば、かかる較正曲線を、これらの同じクロマトグラフィー条件下で、100Da~30kDaの間の既知の見かけの分子量を有する参照ペプチド/タンパク質の混合物を分析することによって作成する。
【0021】
本発明のペプチド組成物のクロマトグラフィー分析の過程における214nmでの吸光度の変化を表すクロマトグラムを用いて、1400Da未満の見かけの分子量のペプチドの比率を、曲線下面積の値、すなわち、曲線全体の下の全面積の値、すなわち、曲線の各ピーク下の面積の合計の値に対する1400Da未満の見かけの分子量のペプチドに対応する曲線下の面積の和の値、およびペプチド組成物の全ペプチドに対応する比率を評価することによって決定する。
【0022】
本発明は、したがって、植物起源のシステインプロテアーゼによる温帯海域魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から生じるペプチドの組成物に関し、組成物の各ペプチドは、2~数十、好ましくは2~100アミノ酸の数のアミノ酸を有する。
【0023】
ある実施形態において、本発明の組成物は、グリシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が20.0%~22.4%、特に20.0%~21.9%、特に20.4%~21.4%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0024】
いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、グリシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が22.4%~24.9%、特に22.9%~24.4%、特に23.0%~24.0%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0025】
ある実施形態において、本発明の組成物は、ヒドロキシプロリンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が7.0%~9.0%、特に7.5%~8.5%、好ましくは7.7%~8.5%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0026】
いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、ヒドロキシプロリンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が9.5%~11.5%、特に10.0%~11.0%、好ましくは10.5%のオーダーであるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0027】
ある実施形態において、本発明の組成物は、グルタミン酸が組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が8.0%~13.0%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0028】
ある実施形態において、本発明の組成物は、グルタミン酸が組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が8.0%~10.0%、特に8.5%~9.5%、好ましくは9.0%~9.5%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0029】
いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、グルタミン酸が組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が10.5%~12.5%、特に11.0%~12.0%、好ましくは11.6%のオーダーであるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0030】
ある実施形態において、本発明の組成物は、アルギニンが組成物中のアミノ酸のモル量の計に対するこの量の比が6.9%~10.9%、特に7.9%~9.9%、特に8.0%~9.0%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0031】
ある実施形態において、本発明の組成物は、アラニンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が7.3%~11.5%、特に8.0%~10.0%、特に8.1%~9.6%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0032】
ある実施形態において、本発明の組成物は、アスパラギン酸が組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が3.1%~7.1%、特に4.1%~6.1%、特に4.6%~5.6%、好ましくは5.0%~5.5%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0033】
ある実施形態において、本発明の組成物は、リシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が1.5%~5.5%、特に2.5%~4.5%、特に3.0%~4.0%、好ましくは3.1%~3.6%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0034】
ある実施形態において、本発明の組成物は、セリンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が1.5%~5.5%、特に2.5%~4.5%、特に3.0%~4.0%、好ましくは3.2%~3.6%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0035】
ある実施形態において、本発明の組成物は、トレオニンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0.7%~4.7%、特に1.7%~3.7%、特に2.2%~3.2%、好ましくは2.4%~2.8%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0036】
ある実施形態において、本発明の組成物は、ロイシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0.6%~4.6%、特に1.6%~3.6%、特に2.1%~3.1%、好ましくは2.4%~2.9%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0037】
ある実施形態において、本発明の組成物は、フェニルアラニンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0.3%~4.3%、特に1.3%~3.3%、特に1.8%~2.8%、好ましくは1.8%~2.4%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0038】
ある実施形態において、本発明の組成物は、バリンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~4.0%、特に1.0~3.0%、特に1.5~2.5%、好ましくは1.8~2.5%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0039】
ある実施形態において、本発明の組成物は、イソロイシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~3.5%、特に0.5%~2.5%、特に0.9%~2.0%、好ましくは0.9%~1.6%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0040】
ある実施形態において、本発明の組成物は、ヒドロキシリシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~3.5%、特に0.5~2.5%、特に1.0~2.0%、好ましくは1.5%のオーダーであるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0041】
ある実施形態において、本発明の組成物は、ヒスチジンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~3.3%、特に0~2.3%、特に0.5~1.5%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0042】
ある実施形態において、本発明の組成物は、メチオニンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~2.5%、特に0~2.0%、特に0.5~1.8%、好ましくは0.7~1.6%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0043】
ある実施形態において、本発明の組成物は、チロシンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~1.5%、特に0~1.0%、特に0~0.9%、好ましくは0.2~0.8%であるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0044】
ある実施形態において、本発明の組成物は、システインおよびシスチンが組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が0~2%、特に0~1.0%、特に0~0.5%、好ましくは0.03%のオーダーであるようなモル量であるアミノグラムを有する。
【0045】
本発明の組成物は、必須アミノ酸(リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンおよびヒスチジン)が一緒に15%~20%であるアミノグラムを有する。
【0046】
有利には、本発明によるいくつかの実施形態において、ペプチド組成物のペプチドの少なくとも90%-特に少なくとも95%は、15,000Da(ダルトン)未満、特に200~15,000Da、好ましくは200Da~14,000Da、特に200Da~13,000Daの見かけの分子量を有する。有利には、本発明によるいくつかの実施形態において、組成物のペプチドの少なくとも90%は、200Da~12,000Daの見かけの分子量を有する。
【0047】
本発明の組成物のペプチドは、見かけの分子量の厳密な分布を有し、約100~数千ダルトンの狭い範囲にわたり、すなわち、100以上のアミノ酸を有し、また低い見かけの分子量のペプチドの低い割合を有する高い見かけの分子量のペプチドを除外する。
【0048】
有利には、本発明に従ういくつかの実施形態において、組成物のペプチドは、2500Da~3600Da、特に2700Da~3600Daの平均の見かけの分子量値を有する。本発明に従うペプチド組成物の各ペプチドによって組成物に対する重量寄与がなされるので、組成物のペプチドの平均の見かけの分子量値は、組成物中の各ペプチドの重量寄与を表す値による、各重量ペプチドの見かけの分子量の、重量値と称する各値の平均に対応する。組成物中の各ペプチドまたはペプチドの群の重量寄与を表す値を、組成物のすべてのペプチドに対応する曲線下の合計の面積の値に対する、前記ペプチドまたは前記ペプチドの群に対応する曲線下面積の値の百分率として表す。
【0049】
実際には、クロマトグラムの同じピークに対応する一群のペプチドの重み付けされた見かけの分子量値は、クロマトグラムのこのピークの最上部(最大)で読み取られた見かけの分子量値に、クロマトグラムの曲線下の(合計の)面積に対するこのピークの曲線下面積の値の比を乗じたものに対応する。「曲線下面積」または「ピーク下面積」は、クロマトグラムのピークを追跡する曲線とクロマトグラムのベースラインとの間の空間の面積を意味することを意図する。特に、クロマトグラムのピークの一方の下の面積は、クロマトグラムの曲線の2つの最小値の間に広がり、クロマトグラムの曲線の最上部(または最大値)を包囲する。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、本発明のペプチド組成物は、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによるその解析中に、この曲線下面積の値(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出を表す曲線(すなわち、クロマトグラム)を有し、10,000Daより大きい-特に10,000Da~50,000Daの見かけの分子量のペプチドに相当し、したがってこの面積値対曲線下総面積(組成物の全ペプチドに対応する)の比は、15%未満、特に10%未満である。いくつかの特定の実施形態によると、この比率は、2.5%~8.5%である。
【0051】
他の特定の態様によれば、本発明のペプチド組成物は、高分子量のいかなるペプチドも欠いていてもよい。これらの他の特定の実施形態によると、本発明に従うペプチド組成物は、水溶性ペプチドから形成される。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本発明のペプチド組成物は、その解析中に、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーにより、1800Da~10,000Daの見かけの分子量のペプチドに対応するこの曲線下面積の値(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出を表す曲線(すなわち、クロマトグラム)を有し、したがってこの面積値の曲線下の総面積(組成物の全ペプチドに対応する)に対する比は、35%より大きく-特に35%~70%、特に45%~65%である。いくつかの特定の実施形態によると、この比は、49%~55%である。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、本発明に従うペプチド組成物は、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによるその分析の間に、600Da~1800Daの見かけの分子量のペプチドに対応するこの曲線下面積の値(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出を表す曲線(すなわち、クロマトグラム)を有し、したがってこの面積値の曲線下の総面積(組成物の全ペプチドに対応する)に対する比は、15%~45%-特に20%~40%、特に25%~35%である。いくつかの特定の実施形態によると、この比は、27%~32%である。
【0054】
いくつかの実施形態によれば、本発明のペプチド組成物は、その解析中に、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによるその分析の間に、600Da未満の見かけの分子量のペプチドに対応するこの曲線下面積の値(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出を表す曲線(すなわち、クロマトグラム)を有し、したがってこの面積値の曲線下の総面積(組成物の全ペプチドに対応する)に対する比は、10%未満である。いくつかの特定の実施形態によると、この比は、8.5%~14.5%である。
【0055】
有利には、本発明の組成物は、陰イオン交換カラム上でのクロマトグラフィー分析により、ペプチド組成物の各ペプチドが、その電荷を表す保持時間でカラムから溶出される。
- アニオン性ペプチドに対応するピーク下の面積値;
- 中性ペプチドに対応するピーク下の面積値および;
- カチオン性ペプチドに対応するピーク下の面積値;
したがって、アニオン性ペプチドに対応するピーク下のこの面積値の、アニオン性ペプチドに対応するピーク下の面積値、中性ペプチドおよびカチオン性ペプチドに対する組成物の面積値の合計との比は、27.0%~45%、特に30%~45%、特に35%~43%、好ましくは35%~40%であり;
アニオン性ペプチドに対応するピーク下面積の値、カチオン性ペプチドに対応するピーク下面積の値、および中性ペプチドに対応するピーク下面積の値を、下記の条件下でのクロマトグラフィー分析により決定する。
○固定相として10μmの粒子径の第四級アンモニウム基で官能化した親水性アニオン交換樹脂を含む寸法100×7.8mmのクロマトグラフィーカラムを用いる;
○カチオン性ペプチドおよび中性ペプチドの溶出のための第1の移動相として、pH8.35の5mM水溶液Tris緩衝液(C)を、カラムの上部で分析するべき組成物の導入から開始して7分の継続時間にわたり、次いでpH8.35の5mM Tris、5M NaClから形成される緩衝液(D)の体積の緩衝液(C)の体積に対する比が30分間で0~100%まで直線的に増加するアニオン性ペプチドの溶出のための第2の移動相を使用する;
○カラム中の移動相の流量は、1ml/分である;
○解析を、25℃の温度で行う;
○カラム出口の波長214nmの吸光度で検出する。
【0056】
有利には、本発明によれば、本発明に従う組成物のペプチドは、逆相液体クロマトグラフィー疎水性分析の間、16分~36分の保持時間を有し;
上記疎水性分析を、以下の条件下で実施する:
○粒径5μm、多孔度300Åのブチル基をグラフトしたシリカから生成した固定相を有する寸法250×4.6mmのクロマトグラフィーカラムを用いる;
○親水性ペプチドの溶出のための第1の移動相として、カラムの上部で分析するべき組成物の導入から開始して7分の継続時間にわたって超純水中の0.1%のトリフルオロ酢酸の溶液(E)、次いで、40%アセトニトリルを含む水中の0.1%(体積による)のトリフルオロ酢酸の溶液(F)の体積の、溶液(E)の体積に対する比が、30分間で0~40%まで直線的に増加する、疎水性ペプチドの溶出のための第2の移動相を使用する;
○カラム中の移動相の流量は、0.6ml/分である;
○解析を、40℃の温度で行う;
○カラム出口の波長214nmの吸光度で検出する。
【0057】
ある実施形態において、本発明に従う組成物は、12%~38%のアセトニトリルの百分率に相当する保持時間で、上に述べたカラムから、および上に特定した条件下で溶出される、本質的に疎水性であるペプチドを含む。本発明の組成物のペプチドの保持時間の中央値は26分であり、溶出液中の25%のアセトニトリルの百分率に相当する。
【0058】
有利には、本発明によれば、ペプチド組成物は液体状態である。それは、液体溶媒に溶解した、特に水性溶媒に溶解した本発明のペプチド組成物の溶液であってよい。
【0059】
有利には、本発明によれば、ペプチド組成物は固体状態である。ペプチド組成物は、分割状態の固体の形態であってよい。それは、特に、少なくとも部分的に脱水された状態の固体であり得る。本発明のペプチド組成物は、粉末形態であってよい。
【0060】
有利には、本発明によれば、ペプチド組成物は炭水化物を含まない。
【0061】
有利には、本発明によれば、ペプチド組成物は脂肪を含まない。
【0062】
有利には、本発明によれば、ペプチド組成物の固体は、重量比で95%超、特に99%超のコラーゲンペプチドを含む。したがって、ペプチド組成物は、ペプチド組成物の固体のコラーゲンペプチド対ペプチド組成物の固体の重量比が95%より大きく、特に99%より大きいような量のコラーゲンペプチドを有する。
【0063】
遊離には、本発明によれば、組成物のペプチドは水溶性である。有利には、ペプチド組成物のペプチドは、100%水溶性である。有利には、ペプチド組成物は、ハイドロコンパチブル(hydrocompatible)である。
【0064】
有利には、本発明に従って、ペプチド組成物のペプチドは、パンガシディア科-特にパンガシウス ヒポフタルムス(Pangasius hypophtalmus)(またはパンガシノドン ヒポフタルムス(Pangasianodon hypophtalmus))、パンガシウス パンガシウス(Pangasius pangasius)、パンガシウス ボコルティ(Pangasius bocourti)-からの、およびカワスズメ科-特にOreochromis属、特にナイルティラピアまたはティラピア属からの魚から形成される群から選択される少なくとも1つの魚の皮膚からのコラーゲンの制御された酵素的加水分解から生じる。有利には、ペプチド組成物のペプチドは、温帯地域の温帯海域中に見出される少なくとも1つの魚の皮膚からのコラーゲンの制御された酵素的加水分解から生じる。
【0065】
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体についての治療的処置におけるかかるペプチド組成物の使用に及ぶ。本発明は、したがってまた、医薬としての使用のためのかかるペプチド組成物に及ぶ。本発明は、したがって、ヒトまたは動物の身体の少なくとも1つの疾患の予防的または根治的治療における医薬としてのその使用のためのかかるペプチド組成物に及ぶ。
【0066】
本発明はまた、特に、以下の処置のうちの少なくとも1つにおける医薬としてのその使用のためのペプチド組成物に及ぶ:
- 消化器疾患の処置;
- 腸カンジダ症の処置;
- 消化器炎症の処置;
- 腸内微生物叢の維持。
【0067】
本発明はまた、ヒト食品における本発明のペプチド組成物の任意の用途に及ぶ。いくつかの実施形態によれば、本発明はまた、医薬としての任意の用途を除いて、ヒト食品における本発明のペプチド組成物の任意の用途に及ぶ。特に、本発明の組成物を、有利には、栄養補助食品として使用する。
【0068】
本発明はまた、以下のプロセスによって得られるペプチド組成物に及ぶ。
- 温帯海域魚の皮膚は、特にパンガシウス科から、および/またはシクリッド科から選択され、次いで;
-以下を連続して実施する。
・皮膚を洗浄する少なくとも1つのステップ、次いで;
・コラーゲンの少なくとも一部の皮膚からの抽出を可能にするのに適した、皮膚の酸またはアルカリ処理の少なくとも1つのステップ;
・植物起源の少なくとも1つのシステインプロテアーゼ-特にカリカパイア(Carica papaia)の少なくとも1つのプロテアーゼによるコラーゲンの、少なくとも75℃未満の温度での加水分解の少なくとも1つのステップ、次いで;
・ペプチド組成物を生成するために、コラーゲン加水分解物を各システインプロテアーゼの変性温度より高い温度に加熱することによる酵素的加水分解の中断。
【0069】
有利には、本発明の方法において、皮膚の酸またはアルカリ処理のステップの後、コラーゲンの少なくとも1回の液体/固体抽出を、60℃~98℃の温度にした水中で行う。有利には、本発明の方法において、分離のステップ、特に固体(および脂肪)を含む画分および抽出したコラーゲンを含む溶液を沈殿させることによって分離するステップを、次に実施し、次いで、抽出したコラーゲンを含む溶液を、例えば土上での濾過および/またはイオン交換樹脂上での脱塩によって、精製工程に供し、コラーゲンを含む精製した溶液を生成するのに適し、精製した溶液の固体は、少なくとも99%、特に少なくとも99.5%、特に少なくとも99.8%のコラーゲンの重量比を含む。実質的に純粋なコラーゲンを含むコラーゲンの精製した溶液が、生成する。特に、コラーゲンのかかる精製した溶液は、実質的に無色に生成する。特に、エラスチンを実質的に-特に完全に-含まないコラーゲンのかかる精製した溶液が、生成する。精製した溶液を濃縮して、精製したコラーゲンゲルを生成し、精製したコラーゲンゲルを次いでコラーゲンの加水分解のステップに供する。
【0070】
かかる方法により、実質的に無色である本発明のペプチド組成物を得ることが可能になる。かかる方法により、エラスチンを実質的に含まない本発明のペプチド組成物を得ることが可能になる。特に、それによって、ペプチド組成物の精製のクロマトグラフィーステップを何ら伴わずに、本発明によるかかるペプチド組成物を得ることが可能になる。
【0071】
かかる方法において、有利には、本発明に従って、ペプチド組成物の濾過のその後のステップを実施する。有利には、ペプチド組成物の低温殺菌のステップをまた、少なくとも85℃~90℃の低温殺菌温度で、少なくとも2分の継続時間にわたって行う。
【0072】
かかる方法において、有利には、本発明に従って、ペプチド組成物を乾燥するステップを実施する。この乾燥ステップを、噴霧乾燥によって行い、したがって実質的に脱水し、粉末形態である本発明の組成物が生成する。
【0073】
本発明は、したがって、以下の方法によって得られるペプチド組成物に及ぶ:
- 温帯海域魚の皮膚は、特にパンガシウス科から、および/またはシクリッド科から選択され、次いで;
-以下を連続して実施する。
・皮膚を洗浄する少なくとも1つのステップ、次いで;
・コラーゲンの少なくとも一部の皮膚からの抽出を可能にするのに適した、皮膚の酸処理の少なくとも1つのステップ、次いで;
・植物起源の少なくとも1つのシステインプロテアーゼ-特にカリカパイアの少なくとも1つのプロテアーゼによるコラーゲンの、75℃未満の温度での加水分解の少なくとも1つのステップ、次いで;
・ペプチド組成物を生成するために、コラーゲン加水分解物を各システインプロテアーゼの変性温度より高い温度に加熱することによる酵素的加水分解の中断;
前記ペプチド組成物は、以下のアミノ酸の全体的分析を有する:
- グリシンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が20.0%~24.5%であるようなモル量である;
- ヒドロキシプロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が6.0%~12.0%であるようなモル量である;
- プロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が10.6%~14.6%であるようなモル量である;
ペプチド組成物が、ペプチド組成物の各ペプチドがこのペプチドの見かけの分子量を表す保持時間で溶出される排除クロマトグラフィーによる解析の間に、1400Da未満の見かけの分子量のペプチドに対応する曲線下面積(すなわち、ペプチドの重量による量を表す面積値)を有するペプチドの溶出曲線(すなわち、クロマトグラムの溶出曲線)を有し、この面積値のこの曲線下総面積(組成物の全ペプチドに対応する)に対する比が40%未満であるようにし;
前記解析を、以下に記載するように実施する:
○多孔度5μmのシリカゲルから形成された固定相を含む寸法300×7.8mmの濾過カラムに;
○カラムを、40℃の温度に保持し;
○移動相として、0.1体積%のトリフルオロ酢酸および(B)のアセトニトリルを含む超純水の生成した溶液(A)を用い、A/B体積比は、75/25であり;
○ゲル濾過カラムの上部に、ペプチド組成物を含む溶液の容量を導入し;
○カラム中の移動相の流量は、0.6ml/分であり;
○組成物のペプチドを、214nmの波長での吸光度によって検出する。
【0074】
本発明はまた、ペプチド組成物、例えば医薬としての使用のためのペプチド組成物、かかるペプチド組成物を得るための方法、および上記または下記の特性の全部または一部によって組み合わせて特性付けられる、上記ペプチド組成物を得るためのかかる方法によって得られるかかるペプチド組成物に関する。
【0075】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、非限定的に与えられ、添付の図面を参照する以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、ゲル濾過による本発明のペプチド組成物の分析を表すクロマトグラムである。
【
図2】
図2は、陰イオン交換樹脂上での本発明のペプチド組成物のHPLC分析を表すクロマトグラムである。
【
図3】
図3は、逆相クロマトグラフィーによる本発明のペプチド組成物の分析を表すクロマトグラムである。
【
図4】
図4は、結腸炎症がデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発されたマウスの体重の変化を示すグラフ表示である。
【
図5】
図5は、ELISA法によるマウスの結腸におけるIL-1βアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図6】
図6は、ELISA法によるマウスの結腸におけるIL-6アッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図7】
図7は、ELISA法によるマウスの結腸におけるTNF-αアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図8】
図8は、ELISA法によるマウスの結腸におけるTGF-βアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図9】
図9は、マウスの結腸における真菌叢のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図10】
図10は、マウスの結腸におけるサッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図11】
図11は、マウスの結腸における腸内細菌科のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図12】
図12は、マウスの結腸におけるファーミキューテス門のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図13】
図13は、マウスの結腸におけるバクテロイデス門のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図14】
図14は、マウスの結腸におけるフィーカリバクテリウム プラウスニッツィのPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図15】
図15は、マウスの結腸におけるラクトバチルス ムリナス(Lactobacillus murinus)のPCRによるアッセイの結果のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図16】
図16は、マウスの結腸におけるTGF-βのメッセンジャーRNAの定量的RT-PCRによる分析のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図17】
図17は、マウスの結腸における誘導性NOシンターゼ(iNOS)のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCRによる分析のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図18】
図18は、マウスの結腸におけるFizz1のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCRによる分析のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図19】
図19は、マウスの結腸における5-LOXのメッセンジャーRNAの定量的RT-PCRによる分析のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【
図20】
図20は、マウスの結腸における12/15-LOXのメッセンジャーRNAの定量的RT-PCRによる分析のヒストグラムにおけるグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明の組成物の調製方法
温帯海域魚の皮膚を、特にパンガシウス科の魚、特にパンガシウス ヒポフタルムス(Pangasius hypophtalmus)(またはパンガシアンドン ヒポフタルムス(Pangasianodon hypophtalmus))、パンガシウス パンガシウス(Pangasius pangasius)、パンガシウス ボコリチ(Pangasius bocouriti)、および/またはナマズもしくはカワスズメ科、特にOreochromis属、特にナイルティラピアまたはTilapia属から除去または購入する。
【0078】
皮膚の洗浄、洗浄した皮膚の酸処理およびコラーゲンの抽出と精製のステップの連続を、実施する。こうして得られた魚の皮膚からコラーゲンを酵素的に加水分解するステップを、次いで実施して、本発明の組成物を生成する。このために、水を、70℃~75℃の温度に加熱する。魚の皮膚からのコラーゲンの重量を、水中のコラーゲンの重量比が45%であるように、撹拌しながら高温水中に徐々に注ぎ、溶液のpHを、pH6.0に調整する。ある量の植物起源のシステインプロテアーゼを、次いで再融解したコラーゲンの溶液に添加する。システインプロテアーゼとして、少なくとも1種のカリカパイアのプロテアーゼ、特に乾燥状態のリパイン(Lypaine(登録商標)、LYVEN、Collombelles、フランス)を、選択する。コラーゲンの重量に対するシステインプロテアーゼの重量比を、所望の加水分解条件に依存して適応させる。例えば、コラーゲンの重量に対するシステインプロテアーゼの重量比は、0.2%である。溶液の温度を、65℃~70℃の値に保持し、コラーゲン加水分解物の粘度が加水分解時間とともに低下するという事実を考慮して、システインプロテアーゼの酵素活性を促進し、コラーゲン加水分解物の最適な流動性を維持するように適応させる。当該溶液を、この温度で45分間程度の継続時間にわたって保持する。
【0079】
酵素的加水分解反応を、コラーゲン加水分解物をシステインプロテアーゼの変性温度よりも高い温度、例えば85℃~90℃の温度に20分間加熱することによって停止する。魚皮膚からのコラーゲンの加水分解物を、任意にろ過のステップに、次いで、少なくとも85℃~90℃の低温殺菌温度で少なくとも2分間の継続時間にわたって低温殺菌のステップに供する。
【0080】
コラーゲンまたはコラーゲンペプチドの加水分解物を、次いで、所定の粒子サイズの粉末から形成される、本発明に従う組成物を生成するのに適した条件下で乾燥するステップに供する。
【0081】
本発明の組成物のペプチドの構造的特徴
アミノ酸組成
本発明による温帯海域魚の皮膚からのコラーゲンの加水分解から生じるペプチドの組成物の特徴付けを、標準ISO 13903:2005に従って、遊離アミノ酸および全アミノ酸をアミノ酸分析器を用いて、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)装置を用いてアッセイすることによって行う。比較として、ベーリング海(アラスカ)の深海から採取した冷水魚(スケトウダラ)の皮膚からのコラーゲンの加水分解物のアミノ酸組成を、決定する。比較結果を、以下の表6に提示する。
【0082】
【0083】
ペプチドの見かけの分子量の分布、ペプチドの極性、およびペプチドの疎水性による、本発明のペプチド組成物の特徴付けもまた、行う。
【0084】
ペプチドの見かけの分子量の分析
本発明の組成物を構成するペプチドの見かけの分子量の分布を、固定相が5μmの多孔性を有するシリカベースのゲル(BioSep-SEC-S2000、Phenomenex、Le Peck、フランス)からなる寸法300×7.8mmの液体クロマトグラフィーカラムでのゲル浸透によって分析する。ろ過カラムを、40℃の温度に保持する。移動相は、(A)トリフルオロ酢酸(0.1体積%)を加えた超純水および(B)アセトニトリルを含む混合物(A/B;75/25;v/v)からなる。移動相の流量を、0.6ml/分に保持する。分析するべきペプチド組成物を含む溶液の容量は、25μlである。検出を、ゲル透過カラムの出口で、214nmの波長での吸光度を測定することにより行う。並行して、保持時間の関数として見かけの分子量を決定するための検量線を、作成する。この検量線を作成するために、分子量100Da~30kDaの既知のペプチドを、選択する。既知の標準は、それぞれ見かけの分子量が115Da、307Da、13.7kDaおよび28.2kDaのプロリン、グルタチオン、リボヌクレアーゼAおよびトリプシンである。
【0085】
標準の見かけの分子量および分で表す保持時間を、以下の表1に示す:
【0086】
【0087】
ペプチドは、それらの見かけの分子量の減少の関数としてカラムから連続的に溶出する。クロマトグラム上のピークに対応する、分析するべき組成物のペプチドの各ファミリーの保持時間値を、クロマトグラムの各ピークの最上部で読み取り、検量線との比較によって見かけの分子量値に換算する。ペプチドの各ファミリーの量の相対値は、クロマトグラムの各ピークに対応する曲線下面積の値に対応する。これらの値を、ペプチドの各ファミリーの面積値の合計に対する、ペプチドのファミリーに対応する曲線下面積の値の比によって表す。
【0088】
図1に示すクロマトグラムのペプチドの各ファミリーに対応する保持時間(分)、対応する見かけの分子量(Da)および曲線下面積の百分率(曲線下の全面積の百分率として表す)の値を、下記の表2に示す。クロマトグラム上のピークに対応するペプチドの各群を、クロマトグラム上のこのピークの最大値に対応する見かけの分子量値によって同定する。
【0089】
【0090】
本発明の組成物のペプチドの割合-クロマトグラムを
図1に示し、その値を表2に示す-は、見かけの分子量が1400Da未満である場合について、組成物の全ペプチドに対して31.2%(値983Daおよび333Daを有する見かけの分子量)である。
【0091】
本発明の組成物のペプチドの平均の見かけの分子量は、3442Daであり、その見かけの分子量の値を、表2に示す。組成物のペプチドの平均の見かけの分子量を、クロマトグラム上の同じピークに対応する組成物のペプチドの各群に対応する重み付けした見かけの分子量の平均として定義する。クロマトグラム上の同じピークのペプチドの群の重み付けした見かけの分子量値は、ピークの最上部(最大)の見かけの分子量値に対応し、クロマトグラムの曲線下(総)面積に対する対応するピークの曲線下面積の値の比によって重み付けする。「曲線下面積」または「ピーク下面積」は、クロマトグラムのピークを追跡する曲線とクロマトグラムのベースラインとの間の空間の面積を意味することを意図する。特に、クロマトグラムのピークの一方の下の面積は、クロマトグラムの曲線の2つの最小値の間に広がり、クロマトグラムの曲線の最上部(または最大値)を包囲する。
【0092】
一般化のために、以下の表3は、保持時間(分)、対応する見かけの分子量(Da)およびペプチドの各ファミリーについての曲線下面積の百分率の平均値を提示し、本発明に従う3つのペプチド組成物の別々の分析に対応する。
【0093】
【0094】
本発明に従う組成物のペプチドの平均の比率-その値を表3に示す-および分子量が1400Da未満である比率は、35.2%(本質的には983Daおよび340Daの見かけの分子量に対応する)である。
【0095】
構成ペプチドの極性の解析
見かけの分子量の分布を表2に示す本発明の組成物中のアニオン性ペプチドの割合、すなわちpH8.35で負電荷を有するペプチドの割合を、分析する。本発明の組成物中の中性および/またはカチオン性ペプチドの比率、すなわち、pH8.35で全体的な中性電荷を有する、またはpH8.35で正電荷を有するペプチドの比率をまた、分析する。かかる分析を、イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行い、そこでは固定相は、10μmの粒子径を有する陰イオン交換樹脂(水相HP-SAX,Interchim,Montlucon、フランス)である。イオン交換HPLCクロマトグラフィーカラムの寸法は、100×7.8mmである。
【0096】
HPLCクロマトグラフィーカラムを、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝液中で、5mMの水中濃度で、pHを8.35の値に調整して、イオン交換により調整する。
【0097】
カラムの温度を、25℃の温度に保持する。カラム内の移動相の流量は、1ml/分である。分析するべきペプチド組成物の試料を、その濃度が超純水での希釈によって2g/lであるように調製する。分析するべきこの溶液の90μlの容積を、カラムの上部に導入する。検出を、214nmの吸光度を連続的に測定することにより行う。
【0098】
カラムの上部における試料の導入から開始して、移動相は、pH8.35の5mMトリス(溶液A)から7分間の継続時間、次いで、5mMトリス、5M NaCl、pH8.35から形成される溶液Bが30分間で溶液A中で0から100%まで直線的に増加する移動相からなる。溶出を、次いで溶液Bにより2分間維持する。
【0099】
得られたクロマトグラムを、
図2に示す。アニオン性ペプチドは、0.5M~1.7MのNaCl濃度に相当する10分~17.5分の保持時間でカラムを出る。分析を
図2に示す本発明のペプチド組成物中のアニオン性ペプチドの比率は、36.9%である。中性およびカチオン性ペプチドは、1分~8分の保持時間でカラムを出る。分析を
図2に示す本発明のペプチド組成物中の中性およびカチオン性ペプチドの比率は、57.5%である。
【0100】
一般化のために、この分析を、本発明に従う3つのペプチド組成物に関して再現する。本発明に従うこれらの組成物中のアニオン性ペプチドの平均比率は、27.9%~42.5%であり、本発明に従うこれらの組成物中の中性およびカチオン性ペプチドの平均比率は、57.5%~72.1%である。
【0101】
構成ペプチドの疎水性の分析
本発明の組成物の構成ペプチドの疎水性を、寸法250×4.6mmのブチル基をグラフトしたシリカのカラム(Vydac 214TP(商標)C4、Grace,Epernon、フランス)上での逆相液体クロマトグラフィーにより分析する。シリカの粒径は5μmであり、その多孔度は300Åである。
【0102】
カラムを、0.1%のトリフルオロ酢酸で酸性化した超純水中でコンディショニングする。カラムの温度を、40℃の温度に保持する。カラム内の移動相の流量は、0.6ml/分である。分析するべきペプチド組成物の試料を、その濃度が超純水での希釈によって2g/lであるように調製する。分析するべきこの溶液の100μlの容積を、カラムの上部に導入する。検出を、214nmの吸光度を連続的に測定することにより行う。
【0103】
カラムの上部における試料の導入から開始して、移動相は、7分間の継続時間酸性化水(溶液A)からなり、次いで0.1%(容量による)のトリフルオロ酢酸で酸性化し、40%のアセトニトリルを含む水から生成した溶液Bが、30分間で溶液A中で0から100%まで直線的に増加する移動相からなる。
【0104】
得られたクロマトグラムを、
図3に示す。本発明の組成物のペプチドは、溶出液中の12%~38%のアセトニトリルの百分率に相当する16分~36分の保持時間でカラムを出る。本発明の組成物のペプチドの保持時間の中央値は26分であり、溶出液中のアセトニトリルの百分率25%に相当する。
【0105】
本発明の組成物の生物学的効果
カンジダ アルビカンス(Candida albicans)によるコロニー形成および消化器カンジダ症に対する効果
8週齢および20~25gの重量の雌C57BL/6マウスにおいて誘発された消化器カンジダ症に対する本発明の組成物の効果を、分析する。これらのマウスに、4g/kg/日の量で本発明の組成物を21日の継続期間にわたって給餌する。21日目に、消化器カンジダ症を、各マウスに5×107の量の酵母細胞を強制的に与えることによって誘発する。誘導後2日(D2)~7日(D7)の間に、マウスの糞便を採取し、酵母負荷量を発色媒体で評価する(CFU/mg糞便)。結果を、消化器カンジダ症が誘発されるが、本発明の組成物で処置していないマウスに関して測定した値と比較して、以下の表4に示す。
【0106】
【0107】
本発明の組成物によって、カンジダ アルビカンスの負荷の減少が誘発される。
【0108】
本発明の抗炎症ペプチド組成物
炎症性1型マクロファージ(M1)受容体および/または抗炎症性2型マクロファージ(M2)受容体の発現の刺激について、温水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から得られる本発明に係るペプチドの組成物による、および冷水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から得られるペプチドの組成物(本発明外)による比較分析を、実施する。
【0109】
健康なヒト被験体からのマクロファージ/単球を、100μg/mlの培養培地の濃度で、前処理組成物(コラーゲンペプチドを含まない対照、本発明、本発明外、表7)の存在下で24時間培養した。1型マクロファージの特性受容体(M1、炎症性)の発現および2型マクロファージの特性受容体(M2、抗炎症性)の発現に対するこの前処理の効果を、100μMの濃度のホルボールエステル(「12-ミリステート-13-アセテート-ホルボール、TPA」)によって特異的に刺激した1型マクロファージの受容体による、または100μg/mlの濃度の非オプソニン化ザイモサン(NOZ)によって特異的に刺激した2型マクロファージの受容体による酸素フリーラジカル(活性酸素種、ROS)の産生のレベルによって評価する。酸素フリーラジカルの産生のレベルを、66μMの濃度のルミノールの存在下で化学発光により測定する。以下の表7に提示する結果は、3つのアッセイで得られた平均値を表す。
【0110】
【0111】
NOZおよびTPAによって処理していない(誘発していない)マクロファージ/単球は、前処理の性質に依存して実質的に一定である酸素フリーラジカルの産生のレベルを有することが観察される(コラーゲンなし、本発明による、および本発明外)。
【0112】
本発明のペプチドの組成物で前処理した、すなわち、温水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から得られるマクロファージ/単球は、NOZによって誘発された化学発光強度(5.06×108AU)によって明らかにされる抗炎症性2型マクロファージ(M2)の受容体の発現が、本発明外のペプチドの組成物で前処理したマクロファージ/単球、すなわち、冷水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解(3.91×108AU)から得られるマクロファージ/単球と比較して増加している。
【0113】
本発明のペプチドの組成物で前処理した、すなわち、温帯海域魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から得られるマクロファージ/単球は、本発明外のペプチドの組成物で前処理した、すなわち、冷水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解(1.49×109AU)から得られるマクロファージ/単球と比較して、TPAによって誘発される化学発光強度(6.75×108AU)によって明らかにされる炎症性1型マクロファージ(M1)の受容体の発現が低下している。
【0114】
本発明のペプチド組成物は、本発明外のペプチドの組成物と比較して抗炎症表現型を有し、すなわち、冷水魚の皮膚からのコラーゲンの酵素的加水分解から、抗炎症性2型マクロファージ(M2)の受容体の発現のレベルの増加により、および炎症性1型マクロファージ(M1)の受容体の発現のレベルの減少により生じる。
【0115】
温帯海域魚の皮から生じ、アミノグラムを有する、本発明のペプチドの組成物の調製:
- グリシンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が20.0%~24.5%であるようなモル量である。
- ヒドロキシプロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が6.0%~12.0%であるようなモル量である。
- プロリンは、組成物中のアミノ酸のモル量の合計に対するこの量の比が10.6%~14.6%であるようなモル量である。
マウスモデルの結腸炎症アッセイにより確認されたかかる抗炎症表現型を有するが、これは冷水魚の皮膚から生じ、表6に記載されるアミノグラムを有するペプチドの組成物では見出されない。
【0116】
マウスモデルにおける結腸炎症
本発明のペプチド組成物の抗炎症作用を、体重減少および血性下痢によって特徴づけられるデキストラン硫酸ナトリウム(DSS、MP Biomedical LLC、カナダ)によって誘発される薬理学的炎症のマウスモデルにおいて例証する。
【0117】
DSSで処置したマウスの体重減少を制限する本発明のペプチド組成物の効果を、研究した。10~11週齢および重量20~25グラムの雌C57BL/6実験マウスを、マウスの飲料水に1.5%(重量/体積)の量で溶解したDSSで7日間(D1~D7)処理した。これらのマウスをまた、0.1g/kg/日;1g/kg/日および4g/kg/日の量で、12日間(D1~D12)本発明の組成物で処理する。この量の本発明の組成物を、マウスの飲料水中に分注する。D12に、マウスを安楽死させる。
【0118】
5つのバッチのマウスを調製し、各バッチは10匹のマウスを含有する:
- バッチ1をDSSで7日間処理する;
- バッチ2をDSSで7日間、および0.1g/kg/日の量で12日間、本発明の組成物で処理する。
- バッチ3をDSSで7日間、および本発明の組成物で1g/kg/日の量で12日間処理する。
- バッチ4をDSSで7日間、および4g/kg/日の量で12日間、本発明の組成物で処理する。
- バッチ5をDSSで7日間、および0.1g/kg/日の量の本発明でない加水分解したカゼインで12日間処理する。
【0119】
並行して、対照を、DSSで処理せず、炎症が誘発されず、かつ本発明のペプチド組成物で処理していない5匹のマウスで実施する。
【0120】
1.
体重の研究
各マウスの重量を毎日測定し、各バッチから各マウスが受けた重量減少を計算する。結果を
図4に提示し、対照を空丸(○)によって表し、バッチ1を黒丸(●)によって表し、バッチ2を空四角(□)によって表し、バッチ3を黒四角(■)によって表し、バッチ4を空三角(△)によって表し、バッチ5を黒三角(▲)によって表す。0.1g/kg/日(バッチ2、□)から、本発明の組成物によってマウスの体重減少が制限されることが観察される。この制限はまた、1g/kg/日(バッチ3、■)および4g/kg/日(バッチ4、Δ)について観察される。それは、加水分解したカゼイン(バッチ5、▲)での処理については観察されず、その体重減少はバッチ1(●)からのマウスの体重減少に匹敵する。
【0121】
本発明の組成物によって、マウスにおいてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)によって誘発される炎症によって引き起こされる体重減少を制限すること、またはさらに実質的に完全に排除することが可能になる。本発明の組成物は、医薬として、特に結腸炎症の処置のために用いることができる。
【0122】
2.組織学
DSS単独で処理したマウスからの結腸の横断組織切片によって、ヘマトキシリンおよびエオジンで二色染色した後に、粘膜および粘膜下における炎症細胞の有意な浸潤が示される。上皮の厚さは、減少する。上皮は、広範な潰瘍化を示す。DSSで、ならびに0.1g/kg/日、1g/kg/日および4g/kg/日の量で本発明の組成物で処理したマウスからの結腸の横断組織切片は、ヘマトキシリンおよびエオジンで二色染色した後に、健康かつ機能的な上皮を代表する密に詰まったまっすぐな管状腺を示す。
【0123】
3.肉眼的スコア
各処置条件について、Wallaceスケールに従って、糞便の外観、結腸の損傷した外観、結腸の重量および結腸の長さに関してWallaceスケールに従って作成した表記から肉眼的スコアを算出する(E.S.Kimball,N.H.Wallace,C.R.Schneider,M.R.D’AndreaおよびP.J.Hornby;2004;Neurogastroenterol Motil;16,811-818.Vanilloid receptor 1 antagonists attenuate disease severity in dextran sulfate sodium-induced colitis in mice)。炎症性の強い結腸ほど肉眼的スコアの値が高く、健康な結腸ほど肉眼的スコアの値が低い。
【0124】
バッチ1~5からのマウスの肉眼的スコアの平均値および標準偏差を、以下の表5に示す。
【表7】
表5
【0125】
肉眼的スコアの低下が観察され、これは本発明の組成物での処理によって誘発され、すなわち、本発明の組成物によって誘発される結腸の炎症状態の改善である。
【0126】
4.マウスにおける炎症促進性マーカーの発現の抑制
D12に、マウスを安楽死させ、炎症促進性サイトカインの結腸における発現のレベルを、ELISA技法によりアッセイする:
【0127】
- IL-1β:IL-1βのレベルを、ELISA技法により分析し、結腸1ミリグラム(mg)当たりのIL-1βのピコグラム(pg)で表す。結果を
図5に示し、最初の列(白色の列)は対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。IL-1βの発現における統計学的に有意な(p<0.05)減少が、0.1g/kg/日、1g/kg/日および4g/kg/日の用量について本発明のペプチド組成物で処理したマウスの結腸において、炎症がDSSによって誘発されたマウスの結腸と比較して、および炎症がDSSによって誘発され、加水分解したカゼインで処理したマウスと比較して、観察される。この効果は、特に0.1g/kg/日および1g/kg/日の用量についての定量的RT-PCRによるIL-1βメッセンジャーRNAの分析によって確認された(p<0.01)。
【0128】
- IL6:IL6のレベルを、ELISA技法により分析し、結腸1ミリグラム(mg)当たりのIL6のピコグラム(pg)で表す。結果を
図6に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。IL6の発現における統計学的に有意な減少が、0.1g/kg/日(p<0.01)、1g/kg/日(p<0.01)および4g/kg/日(p<0.05)の用量について本発明のペプチド組成物で処理したマウスの結腸において、炎症がDSSによって誘発されたマウスの結腸と比較して、および炎症がDSSによって誘発され、加水分解したカゼインで処理したマウスと比較して、観察される。この効果は、定量的RT-PCRによるIL6メッセンジャーRNAの解析によって確認された;
【0129】
- TNF-α:TNF-αのレベルを、ELISA技法により分析し、結腸1ミリグラム(mg)当たりのTNF-αのピコグラム(pg)で表す。結果を
図7に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。TNF-αの発現における統計学的に有意な減少が、0.1g/kg/日(p<0.05)、1g/kg/日(p<0.05)および4g/kg/日(p<0.05)の用量について本発明のペプチド組成物で処理したマウスの結腸において、炎症がDSSによって誘発されたマウスの結腸と比較して、および炎症がDSSによって誘発され、加水分解したカゼインで処理したマウスと比較して観察される。
【0130】
MCP1のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)による分析によって、特に、本発明に従うペプチド組成物の0.1g/kg/日(p<0.01)および1g/kg/日(p<0.05)の用量について、DSSによって誘発されるこれらのmRNAの統計学的に有意な減少が示される。
【0131】
誘導性NOシンターゼ(iNOS)のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)による分析を、
図17に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。DSSによって誘発されたiNOS mRNAの統計学的に有意な減少は、本発明のペプチド組成物の0.1g/kg/日(p<0.05)および1g/kg/日(p<0.05)の用量について観察される。
【0132】
5.
マウスにおける抗炎症マーカーの発現の刺激
D
12に、マウスを安楽死させ、結腸における抗炎症マーカーの発現のレベルをアッセイする:
- TGF-β:TGF-βのレベルを、ELISA技法により分析し、結腸1ミリグラム(mg)あたりのTGF-βのピコグラム(pg)で表す。結果を
図8に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。TGF-βの発現の刺激は、炎症がDSSによって誘発されるマウスの結腸と比較して、0.1g/kg/日の用量について本発明のペプチド組成物で処理したマウスの結腸において観察される。この効果は、定量的RT-PCRによるTGF-βメッセンジャーRNAの分析により、特に0.1g/kg/日および1g/kg/日の用量の本発明のペプチド組成物について確認された(
図16)。
【0133】
- Fizz1:Fizz1は、抗炎症性M2マクロファージのマーカーである。Fizz1のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)による解析を、
図18に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。DSSによって減少したFizz1メッセンジャーRNAの統計学的に有意な増加は、本発明のペプチド組成物の0.1g/kg/日(p<0.05)、1g/kg/日(p<0.01)および4g/kg/日(p<0.05)の用量で観察される。
【0134】
- DSSにより減少したYm1メッセンジャーRNAの統計学的に有意な増加がまた、0.1g/kg/日の用量(p<0.05)の本発明のペプチド組成物について観察された。
【0135】
6.結腸細菌叢-結腸微生物叢に対する本発明のペプチド組成物の効果
D12に、マウスを安楽死させ、これらのマウスの結腸菌叢を、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)によって定量する。値を、細菌または真菌の総量に対して、およびβ-アクチンに対して標準化した。β-アクチンは、分析した結腸組織の量に対する標準化を可能にする参照遺伝子を構成する。特に、以下を定量する:
【0136】
- ITS1-2真菌リボソームDNAの定量的増幅による総真菌叢。ITS1-2真菌リボソームDNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図9に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物は、特に4g/kg/日の用量で真菌叢を回復する。
【0137】
- 26SリボソームDNAの定量的増幅による酵母サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)。26SリボソームDNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図10に示す。第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物は、0.1g/kg/日(p<0.05)、1g/kg/日(p<0.05)および4g/kg/日(p<0.05)の用量でサッカロミセス セレビシエ菌叢を統計学的に有意に回復する。この場合、サッカロミセス セレビシエは、抗炎症可能性を有する;
【0138】
- 16SリボソームDNAの定量的増幅による腸内細菌科叢。16SリボソームDNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図11に示す。第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物によって、0.1g/kg/日の濃度で、DSSによって誘発される腸内細菌科叢の減少が可能になる。腸内細菌科は、炎症誘発可能性と関連する;
【0139】
-門における多様性の解析を可能にする遺伝子の断片上の16SリボソームDNAの定量的増幅によるファーミキューテス菌叢。かかる16SリボソームDNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図12に示す。第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物によって、0.1g/kg/日(p<0.05)、1g/kg/日(p<0.05)および4g/kg/日(p<0.05)の濃度で、DSSによって誘発されるファーミキューテス菌叢の統計学的に有意な減少が誘発されるが、これらの同じ濃度で誘発されていないファーミキューテス菌叢の減少もまた誘発される。ファーミキューテス菌叢の増加は一般に、消化器炎症(IBD、炎症性腸疾患)中に既知の方法で観察されることに注意すべきである;
【0140】
- 門における多様性の解析を可能にする遺伝子の断片上の16SリボソームDNAの定量的増幅によるバクテロイデス門菌叢。かかる16SリボソームDNAの量対βアクチンDNAの量の比Rを、
図13に示す。第1の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物によって、0.1g/kg/日(p<0.05)、1g/kg/日(p<0.05)および4g/kg/日(p<0.05)の濃度で、DSSによって誘発されるバクテロイデス門菌叢の統計学的に有意な減少が誘発される。バクテロイデス門の増加は一般に、消化器炎症(IBD)中に既知の様式で観察される;
【0141】
- 特異的DNAの定量的増幅によるフィーカリバクテリウム プラウスニッツィ菌叢。かかる特異的DNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図14に示す。第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物によって、0.1g/kg/日(p<0.01)、1g/kg/日(p<0.01)および4g/kg/日(p<0.01)の濃度で、DSSによって破壊されたフィーカリバクテリウム プラウスニッツィ菌叢の統計学的に有意な増加が誘発される。フィーカリバクテリウム プラウスニッツィの増加は一般に、消化器炎症(IBD)中に既知の様式で観察される。フィーカリバクテリウム プラウスニッツィはまた、抗炎症特性を有するとされている;
【0142】
- 特異的DNAの定量的増幅によるラクトバチルス ムリナス(Lactobacillus murinus)菌叢。かかる特異的DNAの量対β-アクチンDNAの量の比Rを、
図15に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施したアッセイに相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施したアッセイに相当する。本発明のペプチド組成物によって、0.1g/kg/日、1g/kg/日および4g/kg/日の濃度でラクトバチルス ムリナス菌叢の増加が誘発される(p<0.05)。ラクトバチルス ムリナスはまた、抗炎症特性を有するとされている。
【0143】
7.
アラキドン酸の脂質代謝の酵素に対する本発明のペプチド組成物の効果:
- 5-LOX:酵素5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)による分析を、
図19に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。5-LOXの発現の統計学的に有意な減少が、DSSにより誘発されない対照と相対して、0.1g/kg/日(p<0.01)および1g/kg/日(p<0.01)の本発明のペプチド組成物の用量について観察された。本発明のペプチド組成物は、5-LOXの発現に対して阻害効果を有し、炎症促進性脂質メディエーターの産生を促進する;
【0144】
- 12/15-LOX:酵素12/15-リポキシゲナーゼ(12/15-LOX)のメッセンジャーRNAの定量的RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)による分析を、
図20に示し、第1の列(白色の列)は、対照マウスに関して実施した解析に相当する。第2の列(斜線ハッチングを付した列)は、バッチ1からのマウスに関して実施した解析に相当する。第3の列(垂直のハッチングを付した列)は、バッチ4からのマウスに関して実施した解析に相当する。第4の列(水平のハッチングを付した列)は、バッチ3からのマウスに関して実施した解析に相当する。第5の列(灰色の列)は、バッチ2からのマウスに関して実施した解析に相当する。第6の列(黒色の列)は、バッチ5からのマウスに関して実施した解析に相当する。12/15-LOXの発現の統計学的に有意な増加が、DSSにより誘発されない対照と相対して、0.1g/kg/日(p<0.01)および1g/kg/日(p<0.01)の本発明のペプチド組成物の用量について観察された。
【0145】
本発明は、多数の変形実施形態および適用に従うことができることは、言うまでもない。特に、医薬としての種々の使用は、本発明の保護の範囲から逸脱することなく変化し得る。