(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220817BHJP
【FI】
G03G15/20 525
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2017247636
(22)【出願日】2017-12-25
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】596086262
【氏名又は名称】株式会社立花商店
(73)【特許権者】
【識別番号】507226019
【氏名又は名称】MC山三ポリマーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 晃史
(72)【発明者】
【氏名】中田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 耕治
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071272(JP,A)
【文献】特開2011-180352(JP,A)
【文献】特開2013-231893(JP,A)
【文献】特開平06-186878(JP,A)
【文献】特開2017-213856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
15/20
21/00
21/04
21/10-21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着画像が転写された記録媒体を、加熱された定着部材と加圧部材間に設けた定着ニップ部に搬送して熱定着させる定着装置であり、
前記未定着画像は、ワックスを含有するトナーを用いて形成され、
前記定着部材の表面のワックスの汚れをクリーニング部材により清掃するクリーニング装置を備え、
前記定着部材は、表面にフッ素樹脂が被覆され、
前記クリーニング部材
は、親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレンであ
り、
前記定着部材の表面のワックスの汚れを、前記クリーニング部材により拭き取り清掃することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、未定着画像が転写された記録媒体を熱定着させる定着装置及びこの定着装置を備える電子写真方式や静電記録方式などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、例えば定着ローラと加圧ローラによって定着ニップ部を形成し、その定着ニップ部でトナー像を担持した記録媒体の定着を行っている。
【0003】
そのトナー像には、定着部材である、例えばテフロン(登録商標)表面にトナーが付着してしまうオフセットが発生したり、定着ローラへのトナーを担持した紙の巻付きが起こる問題があった。
【0004】
そこで、従来のように定着ローラにシリコーンオイルなどの離型材の使用を抑え、替わりにワックスを添加したトナーを用いることで、加熱時にトナー中から溶融したワックスが定着ローラに供給され、オフセットの発生や紙の巻付きを抑えるという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、定着部材にワックスが付着してくるとそのワックスによるワックス潜像が形成され、次の画像に光沢ムラとなって現れる。
【0006】
これを回避するために、定着部材に清掃回転体を接触させ、更に接触回転体をワックス融点より高温にし、接触回転体に清掃ウェブを接触させる手段をとった技術(例えば、特許文献2参照)、更に定着部材に、定着部材の表面の汚れを清掃するクリーニングユニットを設け、その下流側にワックス均一化部材を設けた技術もあるが、このような処置を施しても、ワックスによる光沢ムラは解決しなかった。
【0007】
次に、本発明者らは、このワックスを効果的にとる方法として、多孔質ポリテトラフルオロエチレンをクリーニング部材として、使用する技術を開示した(特許文献3参照)。しかしこの微細な繊維でも効果は、十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3―185459号公報
【文献】特開2005-43532号公報
【文献】特開2013-231893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようにワックスを添加したトナーを用いて熱定着させると、トナーの中から溶融したワックスが定着部材の例えばパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)の表面にワックスが付着する。このワックスはトナー画像として残り、次のプリント画像に転写される。これが所謂光沢ムラ(以下光沢メモリとも言う)となる。特に目立つ画像は、画像面積の大きなベタ画像の時が顕著である。
【0010】
この発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、プリント画像の光沢メモリの発生を防止すると共に、ワックスのクリーニング部材の長寿命化と高い画像品質を得ることが可能な定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するために、この発明は、以下のように構成した。
【0012】
請求項1に記載の発明は、
未定着画像が転写された記録媒体を、加熱された定着部材と加圧部材間に設けた定着ニップ部に搬送して熱定着させる定着装置であり、
前記未定着画像は、ワックスを含有するトナーを用いて形成され、
前記定着部材の表面のワックスの汚れをクリーニング部材により清掃するクリーニング装置を備え、
前記定着部材は、表面にフッ素樹脂が被覆され、
前記クリーニング部材は、親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレンであり、
前記定着部材の表面のワックスの汚れを、前記クリーニング部材により拭き取り清掃することを特徴とする定着装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】ウエブクリーニング方式の形態の定着装置を示す図である。
【
図5】クリーニング部材の2層構造を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の定着装置及び画像形成装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
[定着装置]
【0016】
(従来の実施の形態)
図1は一般的な定着装置を示す図、
図2は光沢メモリが発生する概略図である。一般的な定着装置では、定着ローラ1はアルミニウム芯金に150μmのシリコーン(Si)ゴム、その上にフッ素樹脂(PFA)チューブが被覆され、内蔵するヒーター2で加熱され、図示しない温度センサーで一定の温度に制御されている。加圧ローラ3は5mmのシリコーン(Si)ゴム、その上にフッ素樹脂(PFA)チューブが被覆され、図示しない加圧バネで加圧され、定着ローラ1と加圧ローラ3とで定着ニップ部Nが形成されている。記録媒体Pに形成されたトナー像Tは図示する回転方向に送られ熱と圧力で定着される。分離板4は記録媒体Pが定着ローラ1にまきつくことを防止している。
【0017】
次に、光沢メモリ発生の概略図では、
図2(a)はトナー像Tを担持した記録媒体Pが定着ローラ1に移動している状態を示し、
図2(b)はトナー像Tが定着ニップ部Nを通過して定着されたトナー像(定着像)と定着ローラ1にトナー中のワックスが付着した状態を示し、
図2(c)はベタ画像に
図2(b)のワックス潜像が付着し、光沢ムラとなって表れた状態を示す。
【0018】
(実施の形態)
実施の形態の定着装置を、
図3に示す。この実施の形態の定着装置は、定着部材を構成する定着ローラ1と、加圧部材を構成する加圧ローラ3が対向して配置され、この定着ローラ1と加圧ローラ3との間に定着ニップ部Nが設けられる。定着ローラ1の内部にヒーター2が配置され、ヒーター2の温度は、図示しない温度制御部で制御される。未定着画像Tが転写された記録媒体Pを、定着ローラ1と加圧ローラ3間に設けた定着ニップ部Nに搬送して熱定着させ、未定着画像Tはワックスを含有するトナーを用いて形成されている。ワックスには、例えばパラフィン系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩、アミドワックス、エステル系ワックス等従来公知のワックスである。ワックスの含有率は7~23質量%が好ましいと言われ、ワックスの融点は75~110℃が一般的である。
【0019】
定着ローラ1の表面の汚れをクリーニング部材5により清掃するクリーニング装置Kを備え、クリーニング部材5が親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。クリーニング部材5は、弾性発泡体5a上に被覆されてロール形状である。
【0020】
一般的な定着装置では、トナーのワックス成分が、
図2に示すように、定着ローラ1に残り、次の画像に光沢メモリとしてでるが、この実施の形態では、クリーニング部材5を当接することでワックスがクリーニングされ光沢メモリが発生しない。クリーニング部材5は弾性発泡体5a上に被覆され、ロール形状になっているため表面積も増え、クリーニング部材5の寿命が向上し同時に駆動負荷も低減される。
【0021】
この親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、
図4に示すクリーニング装置Aの様に、クリーニングウェブ形状でも良いし、
図5のように、引張強度が弱い多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を伸び難い材料で裏打ちしても良い。その裏打ちの詳細な材料は筆者が出願した特開2013-231893号公報に詳しく記載されている。裏打ち方法として、加熱加圧接着方法の他に例えば熱硬化型RTVシリコーンゴムで接着する方法もある。接着剤はこれに限定されるものではない。
【0022】
図4に示すクリーニング装置Aは、クリーニングウェブ6aを元巻側6bと巻取り側6cの間に張力を持って張り巡らせ、押圧ローラ7によりクリーニングウェブ6aを定着ローラ1の外周表面に接触させ、定着ローラ1の表面の汚れをクリーニングウェブ6aにより清掃する構成である。
【0023】
〔実施形態1〕
定着ローラ1は外径60mmで、鉄芯金の上にゴム硬度18度(JIS A)のシリコーンゴムが0.5mmの厚さで、その上に50μmのフッ素樹脂(PFA)チューブが被覆されている。加圧ローラ3は直径60mmでゴム硬度25度(JIS A)のシリコーンゴムが10mmの厚さで、その上に50μmのフッ素樹脂(PFA)チューブが被覆されている。定着ローラ1には内部にヒーター2があり、図示しない温度制御部で180℃に制御されている。分離板4は鉄にパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)を焼付けたもので、記録媒体Pが定着ローラ1に巻付くのを防止している。クリーニングローラ5は、外径30mmで、外径10mmの鉄芯金の上にゴム硬度30度(アスカーC)のシリコーン発泡体を10mm付けた。その上に信越化学製KE-44-Tの接着材を使用して、住友ファインポリマー社製のHPW-045-30
(孔径0.45μm・厚み30μm)の親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が設けてある。親水処理方法に関しては、例えば特願2009-32987で公知であるPVA水溶液を使用して多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に含侵する方法とか、プラズマ処理、コロナ放電による親水処理が一般的であり、どれを使用しても良い。
【0024】
〔比較例-1〕
比較例として、実施形態1と同じ定着装置を使い、クリーニングローラ5の多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、同一製造メーカの親水処理していないHP-045-30(孔径0.45μm・厚み30μm)を使用した。
【0025】
〔評価方法〕
次に、定着ローラ1に残ったワックスの評価方法を述べる気。
図4の定着装置を使い、図示しない画像を各10枚・30枚の連続コピー後、A3のOHP用紙を通紙し、OHP用紙に前の画像が残っているかで評価した。このOHP用紙にワックス像が出やすいことは、特開2005-43532号公報にも記載されており、評価しやすい方法である。
上記評価方法で、実施形態と比較例の評価を表―1に示す。
【0026】
レベル1・2は不可 レベル3・4・5は許容レベル
【表1】
【0027】
表1のように親水処理した多孔質体ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と、親水処理しない多孔質体ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ではクリーニング性能に大きな差があることが分かる。理由は明確ではないがトナーのワックスとの濡れが親水処理することで、大幅に上がったためと予測する。
【0028】
定着装置は1対の熱ローラ方式で説明したが、この方式に限らずベルトを使用するベルト定着方式でも良く、定着方式は当然限定されるものではない。さらに、定着ローラ、定着ベルトに直接ワックス除去部材を当接せずに、例えば外部加熱ローラにワックス除去部材を当て、外部加熱ローラに付着したワックスを除去する方法でも良く、当接する相手の部材を限定させるものではない。また、オフセットトナーを除去するクリーニング部材が必要でない定着装置も有り、オフセットトナーを除去するクリーニング部材の有無も限定されるものではない。クリーニング部材の形状として、ローラ状・ウェブ状で説明したが、例えば、金属・プラスティックの板に巻きつけた簡単な形状でも良いことは当然である。
【0029】
[画像形成装置]
図1は定着装置が搭載された画像形成装置の全体構成を示す概略図であり、この実施の形態では画像形成装置として電子写真複写機(以下、単に「複写機」という。)に搭載した例を示している。
【0030】
図6において、複写機100は、外部から伝達された画像データに応じて、転写材として所定の用紙(記録用紙)に対して多色または単色の画像を形成するものである。ただし、この実施の形態では単色の画像を形成する複写機を例示している。
【0031】
この複写機100は、原稿処理部10、給紙部20、画像形成部30及び排紙部15を備えている。原稿処理部10は、装置本体101に、原稿載置台11、原稿搬送部12及び原稿読取部13を備えている。
【0032】
原稿載置台11は、透明ガラスからなり、原稿が載置可能な構成となっている。原稿搬送部12は、原稿トレイ12aに積載された原稿を1枚ずつ搬送する。原稿搬送部12は、紙面奥方向に回動自在に構成され、原稿載置台11の上を開放することにより原稿載置台11に原稿を置くことができるようになっている。原稿読取部13は、原稿搬送部12で搬送中の原稿または原稿載置台11に載置された原稿を読み取るものであり、ミラー群13a、集光レンズ13b及び撮像素子(CCD)13cを備えている。
【0033】
給紙部20は、給紙カセット21及びピックアップローラ22を備えている。ピックアップローラ22は、給紙カセット21の端部近傍に設けられ、給紙カセット21から用紙(記録用紙)Pを1枚ずつピックアップして用紙搬送路25に供給する。
【0034】
画像形成部30は、感光体ドラム31、帯電器32、現像器33、クリーナ部34、露光ユニット35、転写ローラ36を備える。画像形成部30では、感光体ドラム31上にトナー像を形成し、このトナー像を転写ローラ36により用紙(記録用紙)Pに転写し、この感光体ドラム31と転写ローラ36とにより転写部Bが構成される。
【0035】
画像形成部30は、電子写真方式によるものであり、帯電機器32へのバイアス印加によって表面を一様に帯電した感光ドラム31に、読み取りデータに基づいて露光ユニット35からレーザ光を照射して静電潜像を形成する。この静電潜像を現像器33によりトナー現像して可視像化する。また、トナー像の形成と同期するように、装置本体101の下部に装着された給紙カセット21に装填されている用紙Pをピックアップローラ22によってピックアップし、搬送ローラ37によって感光ドラム31と転写ローラ36との間のニップ部へ搬送する。そして、転写ローラ36へのバイアス印加によって感光ドラム31上のトナー像を用紙Pに転写して画像形成する。トナー像が転写された用紙Pは定着装置38に送られ、加熱、加圧されることによってトナー像が定着された後、排出ローラ39によって排紙部15に排出される。
【0036】
装置本体101の背面101a側には、主に画像形成部30で発生する熱を吸引して外部に排出するための吸引ファン16が設けられており、この吸引ファン16には、装置本体101内の各部から熱を効率的に吸引するための吸引ダクトが設けられている。
[定着装置]
【0037】
この定着装置38は、未定着画像が転写された記録媒体を、加熱された定着部材と加圧部材間に設けた定着ニップ部に搬送して熱定着させる定着装置であり、未定着画像は、ワックスを含有するトナーを用いて形成され、定着部材の表面のワックス汚れをクリーニング部材により清掃するクリーニング装置を備え、クリーニング部材が親水処理した多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、前記実施の形態のものが用いられる。
【0038】
この定着装置38を備える画像形成装置は、この実施の形態に限定されず、他の電子写真方式や静電記録方式などの画像形成装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、未定着画像が転写された記録媒体を熱定着させる定着装置、及びこの定着装置を備える電子写真方式や静電記録方式などの画像形成装置に適用でき、プリント画像の光沢メモリの発生を防止すると共に、ワックスのクリーニング部材の長寿命化と高い画像品質を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0040】
T トナー
P 記録媒体
N 定着ニップ部
A クリーニング装置(本発明ワックス拭取り機能)
K クリーニング装置(本発明ワックス拭取り機能)
1 定着ローラ
2 ヒーター
3 加圧ローラ
4 分離板
5 クリーニング部材(本発明部品ワックス拭取り機能)