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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】吊り具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/66 20060101AFI20220817BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B66C1/66 K
E04G21/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019115756
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001053
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】桑島 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】潮見 真生
(72)【発明者】
【氏名】土屋 明子
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-025580(JP,A)
【文献】実開昭63-076783(JP,U)
【文献】特開2001-146382(JP,A)
【文献】特開2019-089642(JP,A)
【文献】実開平03-044185(JP,U)
【文献】特開2009-126599(JP,A)
【文献】実開昭49-132563(JP,U)
【文献】特開平06-316395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/66
B66C 1/14
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材を吊り上げる際に用いられる吊り具であって、
軸部の一端側に設けられ、前記軸部と交差する方向に突出する環状の吊り部と、
前記軸部の他端側に設けられ、前記軸部と交差する方向であってかつ前記吊り部の突出方向と交差する方向に突出する係止部と、を有する一対の吊り具本体を備え、
前記各吊り具本体において、各々の前記軸部は同じ方向に延びるよう並設され、各々の前記吊り部は前記各軸部に対して同じ一方側に配置され、各々の前記係止部は前記各軸部に対して同じ他方側に配置され、
その配置状態で、前記各吊り具本体は、各々の前記軸部を中心として回動可能に連結され、その回動により、各々の前記吊り部が互いに反対側に突出する開状態とされると各々の前記係止部が同じ側に突出する閉状態とされ、各々の前記吊り部が同じ側に突出する閉状態とされると各々の前記係止部が互いに反対側に突出する開状態とされ、
前記各吊り部の閉状態では、前記各吊り部の内側にまとめてフックを挿通可能となっており、その挿通状態において前記吊り部内での前記フックの変位を規制する規制部を備え
前記規制部は、前記吊り部よりも小さい環状をなす環状部からなり、
前記環状部は、前記吊り部の内側に位置するようにして当該吊り部に固定されており、
前記各吊り部内に前記フックが挿通される際には、前記環状部の内側にも前記フックが挿通されるようになっていることを特徴とする吊り具。
【請求項2】
前記環状部は前記各吊り部にそれぞれ設けられ、
前記各環状部は、前記各吊り部の閉状態において、互いに対向した状態で配置されることを特徴とする請求項に記載の吊り具。
【請求項3】
前記環状部は、前記吊り部において当該吊り部の突出方向の先端側に配置されていることで、前記フックが前記吊り部内において当該吊り部の突出方向の先端側から変位するのを規制することを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル等の建材を吊り上げる際に用いられる吊り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築現場において建物を構築する際には、外壁パネルや屋根パネル等の建材をクレーンにより吊り上げて建物躯体における所定の取付位置に移動させる作業が行われることがある。このような移動作業において、建材を吊り上げる際には、専用の吊り具が用いられることが多い。吊り具は建材に対して取り付けられ、その吊り具にはクレーンのフックが取り付けられる。そして、そのような吊り具の取付状態で、クレーンにより建材が吊り具を介して吊り上げられるようになっている。
【0003】
特許文献1には、かかる吊り具が開示されている。以下では、この吊り具の構成について図4に基づき説明する。図4に示すように、特許文献1の吊り具40は、一対の吊り具本体41を備え、それら各吊り具本体41は、軸部42と、その軸部42の一端側に設けられた吊り部43と、軸部42の他端側に設けられた係止部44とをそれぞれ有している。吊り部43は、軸部42と交差する方向に突出しており、環状をなしている。また、係止部44は、軸部42と交差する方向に突出しており、その突出方向が吊り部43の突出方向と交差する方向となっている。
【0004】
各吊り具本体41において、各々の軸部42は同じ方向に延びる向きで並設されている。また、各々の吊り部43は各軸部42に対して一方側に配置され、各々の係止部44は各軸部42に対して他方側に配置されている。そして、各吊り具本体41は、かかる配置状態で連結具47により互いに連結されている。この連結状態において、各吊り具本体41は各々の軸部42を中心として互いに回動可能とされている。各吊り具本体41の回動により、各吊り部43は互いに反対側に突出する開状態(図4(a)の状態)と、互いに同じ側に突出する閉状態(図4(b)の状態)とに開閉可能となっている。そして、各吊り部43が開状態とされると各係止部44が同じ側に突出する閉状態(図4(a)の状態)となり、各吊り部43が閉状態とされると各係止部44が互いに反対側に突出する開状態(図4(b)の状態)となるようになっている。
【0005】
続いて、上記の吊り具40を用いてクレーンにより建材としての外壁パネルを吊り上げる際の作業手順について説明する。図5(a)に示すように、外壁パネル50は、外壁面材51と、その裏面側に設けられた外壁フレーム52とを備えて構成されている。外壁パネル50は、パレットの上等にあらかじめ寝かせた状態で置かれている。
【0006】
外壁パネル50の吊り上げ作業に際してはまず吊り具40を外壁パネル50の外壁フレーム52に取り付ける作業を行う。この作業では、吊り具40の各係止部44を閉状態とし(図4(a)参照)、その状態で各係止部44を外壁フレーム52の上端部に形成された挿通孔55に挿通する。挿通後、各吊り部43を閉状態として各係止部44を開状態とする(図4(b)参照)。これにより、各係止部44が外壁フレーム52に係止される状態となり、その結果、吊り具40が外壁パネル50に対して横向きの状態(寝かせた状態)で取り付けられる。また、図5の例では、吊り具40が各吊り部43を下方に向けた状態で外壁パネル50に取り付けられている。
【0007】
その後、閉状態にある各吊り部43の内側にクレーンのフックFをまとめて挿通する。これにより、クレーンにより外壁パネル50を吊り具40を介して吊り上げ可能な状態となる。また、フックFが各吊り部43内に挿通されることで、フックFにより各吊り部43が開くことが規制されるため、各係止部44が開状態に維持されることになる。以上により、吊り上げ前の準備作業が完了する。
【0008】
準備作業を終えた後は、クレーンにより外壁パネル50を吊り上げる作業を行う。吊り上げに際しては、まずクレーンにより吊り具40が引き上げられる。この引き上げにより、吊り具40は、図5(b)に示すように、横向きの状態から斜めの状態へと移行する。そして、吊り具40がある状態まで立ち上がると、外壁パネル50がパレット上から引き上げられ、その後さらに引き上げられると、外壁パネル50が縦向きの状態で吊り上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-316395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1の吊り具40は、各吊り部43がフックFを引っ掛けるためだけでなく、各吊り部43を開閉操作する際の操作部としても用いられる。このため、各吊り部43は、開閉操作をし易くするため、ある程度の大きさを有して形成される必要がある。
【0011】
その一方で、各吊り部43の大きさが大きいと、各吊り部43の内側にフックFを通して外壁パネル50を吊り上げる際、その吊り上げる過程でフックFが吊り部43内において大きく変位(移動)することが想定される。その場合、図5(b)に示すように、吊り部43内でのフックFの変位に伴い、意図せず各吊り部43が開く方向の力が生じて、各吊り部43が開いてしまうことが想定される。その場合、各係止部44が閉状態となって外壁フレーム52の挿通孔55から抜け落ち、それにより吊り具40が外壁パネル50から外れてしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建材を吊り上げる吊り上げ過程において、建材から外れてしまうのを防止することができる吊り具を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、第1の発明の吊り具は、建材を吊り上げる際に用いられる吊り具であって、軸部の一端側に設けられ、前記軸部と交差する方向に突出する環状の吊り部と、前記軸部の他端側に設けられ、前記軸部と交差する方向であってかつ前記吊り部の突出方向と交差する方向に突出する係止部と、を有する一対の吊り具本体を備え、前記各吊り具本体において、各々の前記軸部は同じ方向に延びるよう並設され、各々の前記吊り部は前記各軸部に対して同じ一方側に配置され、各々の前記係止部は前記各軸部に対して同じ他方側に配置され、その配置状態で、前記各吊り具本体は、各々の前記軸部を中心として回動可能に連結され、その回動により、各々の前記吊り部が互いに反対側に突出する開状態とされると各々の前記係止部が同じ側に突出する閉状態とされ、各々の前記吊り部が同じ側に突出する閉状態とされると各々の前記係止部が互いに反対側に突出する開状態とされ、前記各吊り部の閉状態では、前記各吊り部の内側にまとめてフックを挿通可能となっており、その挿通状態において前記吊り部内での前記フックの変位を規制する規制部を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の吊り具によれば、各吊り部の閉状態において、それら各吊り部の内側にまとめてフック(クレーン等のフック)を挿通可能となっており、そして、その挿通状態において吊り部内におけるフックの変位を規制する規制部が設けられている。この場合、建材を吊り上げる吊り上げ過程において、フックが吊り部内で大きく変位するのを規制することができるため、フックの変位に伴い意図せず各吊り部が開く方向の力が発生するのを防止することができる。そのため、建材の吊り上げ過程で、各吊り部が開いて各係止部が閉状態となるのを防止することができ、その結果、吊り具が建材から外れてしまうのを防止することができる。
【0015】
第2の発明の吊り具は、第1の発明において、前記規制部は、前記吊り部よりも小さい環状をなす環状部からなり、前記環状部は、前記吊り部の内側に位置するようにして当該吊り部に固定されており、前記各吊り部内に前記フックが挿通される際には、前記環状部の内側にも前記フックが挿通されるようになっていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、吊り部よりも小さい環状部が吊り部の内側に位置するように当該吊り部に固定されている。そして、各吊り部にフックが挿通される際には、環状部の内側にもフックが挿通されるようになっている。この場合、その環状部によって、フックの変位を規制することができる。また、規制部が環状部となっていることで、フックを挿通させる位置がわかり易く、フックの挿通作業を好適に行うことができる。
【0017】
第3の発明の吊り具は、第2の発明において、前記環状部は前記各吊り部にそれぞれ設けられ、前記各環状部は、前記各吊り部の閉状態において、互いに対向した状態で配置されることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、各吊り部にそれぞれ環状部が設けられ、それら各環状部が各吊り部の閉状態において互いに対向配置されるようになっている。この場合、各吊り部にフックが挿通される際には各環状部にもそれぞれフックが挿通される。このため、各吊り部内でのフックの変位を好適に規制することができる。また、この場合、フックを各吊り部のいずれの側から吊り部に挿通する際にもフックを挿通させる位置がわかり易いため、フックの挿通作業を好適に行うことができる。
【0019】
第4の発明の吊り具は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記規制部は、前記フックが前記吊り部内において当該吊り部の突出方向の先端側から変位するのを規制するものであることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、フックが吊り部内において吊り部の突出方向の先端側から変位することが規制される。この場合、各吊り部が回動して開く際の回動先端側で各吊り部がフックにより連結された状態となるため、各吊り部が開いてしまうのを好適に防止することができる。そのため、吊り具が建材から外れてしまうのを好適に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】吊り具を示す斜視図であり、(a)が吊り部の開状態を示し、(b)が吊り部の閉状態を示している。
図2】吊り具を示す正面図であり、(a)が吊り部の開状態を示し、(b)が吊り部の閉状態を示している。
図3】吊り具を用いて外壁パネルを吊り上げる際の様子を示す図。
図4】特許文献1の吊り具を示す斜視図であり、(a)が吊り部の開状態を示し、(b)が吊り部の閉状態を示している。
図5】特許文献1の吊り具を用いて外壁パネルを吊り上げる際の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は吊り具を示す斜視図であり、図2は吊り具を示す正面図である。図1及び図2ではいずれも、(a)が吊り部の開状態を示し、(b)が吊り部の閉状態を示している。
【0023】
図1及び図2に示すように、吊り具10は、左右一対の吊り具本体11A,11Bを備える。各吊り具本体11A,11Bは、いずれも金属製の棒材15A,15B(詳しくは丸棒材)が曲げられることにより形成されている。各吊り具本体11A,11Bは、基本的に同様の構成を有しており、詳しくは互いに左右対称となる構成を有している。以下の説明では、吊り具本体11Aを構成する各部の符号にAを付し、吊り具本体11Bを構成する各部の符号にBを付す。
【0024】
各吊り具本体11A,11Bは、直線状に延びる軸部12A,12Bと、軸部12A,12Bの一端側に設けられた吊り部13A,13Bと、軸部12A,12Bの他端側に設けられた係止部14A,14Bとを備える。吊り部13A,13Bはクレーンのフックが引っ掛けられる部分であり、係止部14A,14Bは吊り上げる建材に対して係止される部分である。
【0025】
吊り部13A,13Bは、軸部12A,12Bからその軸部12A,12Bと交差する方向(詳しくは直交する方向)に突出しており、環状をなしている。吊り部13A,13Bは、軸部12A,12Bからその軸部12A,12Bと交差する方向における一方側にのみ突出しており、全体としてD字状をなしている。また、吊り部13A,13Bは、その突出方向の長さが突出方向と直交する方向(換言すると軸部12A,12Bの軸線方向)の長さよりも大きくなっている。また、吊り部13A,13Bは、棒材15A,15Bの一端側が環状に曲げられることにより形成されている。
【0026】
係止部14A,14Bは、軸部12A,12Bからその軸部12A,12Bと交差する方向(詳しくは直交する方向)に直線状に突出している。係止部14A,14Bは、軸部12A,12Bからその軸部12A,12Bと交差する方向における一方側にのみ突出しており、その突出方向が吊り部13A,13Bの突出方向と交差する方向(詳しくは直交する方向)とされている。また、係止部14A,14Bは、棒材15A,15Bの他端側がL字状に曲げられることで形成されている。
【0027】
各吊り具本体11A,11Bにおいて、各々の軸部12A,12Bは同じ方向に延びる向きで並設されている。つまり、各軸部12A,12Bは互いに平行な状態で隣接配置されている。また、各吊り具本体11A,11Bにおいて、各々の吊り部13A,13Bは各軸部12A,12Bに対して(同じ)一方側に配置され、各々の係止部14A,14Bは各軸部12A,12Bに対して(同じ)他方側に配置されている。
【0028】
各吊り具本体11A,11Bは、各々の軸部12A,12Bが連結具17により互いに連結されている。連結具17は、ゴム材料により筒状に形成され、各軸部12A,12Bをまとめて囲んだ状態で設けられている。
【0029】
各吊り具本体11A,11Bは、各々の軸部12A,12Bを回動中心として互いに回動可能とされている。各吊り具本体11A,11Bの回動により、各吊り部13A,13Bは、互いに反対側に突出する開状態(図1(a)及び図2(a)の状態)と、互いに同じ側に突出する閉状態(図1(b)及び図2(b)の状態)とに開閉可能となっている。各吊り部13A,13Bは、閉状態では互いに向き合うように配置され、各々の開口部(孔部)が互いに連通された状態となる。そのため、各吊り部13A,13Bの閉状態においては、各吊り部13A,13BにクレーンのフックFをまとめて挿通することが可能となっている。
【0030】
各吊り具本体11A,11Bでは、各吊り部13A,13Bが開状態とされると各係止部14A,14Bが同じ側に突出する閉状態(図1(a)及び図2(a)の状態)とされ、各吊り部13A,13Bが閉状態とされると各係止部14A,14Bが互いに反対側に突出する開状態(図1(b)及び図2(b)の状態)とされる。したがって、本吊り具10では、各吊り部13A,13Bが開閉操作されることで、各係止部14A,14Bが開閉動作されるようになっている。この場合、各吊り部13A,13Bは、フックFが引っ掛けられる引掛部としての役割に加え、開閉操作に際し把持される操作部としての役割も有している。
【0031】
ここで、本実施形態の吊り具10には、各吊り部13A,13B内にクレーンのフックFが挿通された状態で、そのフックFについて吊り部13A,13B内での変位を規制する規制部が設けられている。以下、この規制部に関する構成について説明する。
【0032】
各吊り具本体11A,11Bの吊り部13A,13Bにはそれぞれ規制部としての環状部19A,19Bが設けられている。環状部19A,19Bは金属製のリング部材であり、円環状をなしている。環状部19A,19Bは、その大きさが吊り部13A,13Bよりも小さくなっており、詳しくは、その外径が吊り部13A,13Bの突出方向における吊り部13A,13Bの長さよりも小さく、かつ、その突出方向と直交する方向(換言すると軸部12A,12Bの軸線方向)における吊り部13A,13Bの長さよりも小さくなっている。本実施形態では、環状部19A,19Bの外径が吊り部13A,13Bの突出方向の長さの半分以下となっている。
【0033】
環状部19A,19Bは、その開口部(孔部)を吊り部13A,13Bの開口部(孔部)と同じ方向(以下、開口方向という)に向けた状態で吊り部13A,13Bに固定されている。環状部19A,19Bは、上記開口方向において吊り部13A,13Bと重なり合っており、その状態で吊り部13A,13Bに溶接により固定されている。詳しくは、環状部19A,19Bは、吊り部13A,13Bの閉状態において、吊り部13A,13Bの外側に位置するよう配置されている。
【0034】
各環状部19A,19Bは、上記開口方向から見て吊り部13A,13Bの内側に位置するように配置されている。この場合、各環状部19A,19Bは、その外周側が吊り部13A,13Bからはみ出ないように配置されている。また、各環状部19A,19Bは、吊り部13A,13Bにおいて、吊り部13A,13Bの突出方向における先端側に配置されている。詳しくは、各環状部19A,19Bは、その全体が吊り部13A,13Bの突出方向における中央部よりも先端側に位置するよう配置されている。また、各環状部19A,19Bは、吊り部13A,13Bにおいて、上記突出方向と直交する方向(軸部12A,12Bの軸線方向)における係止部14A,14B側とは反対側に配置されている。
【0035】
各環状部19A,19Bは、各吊り部13A,13Bの閉状態において各吊り部13A,13Bを挟んで対向配置される。つまり、各環状部19A,19Bは、各吊り部13A,13Bの閉状態においては、上記開口方向から見て同じ位置に配置される。この場合、各環状部19A,19Bの開口部と各吊り部13A,13Bの開口部とは上記開口方向に連通し、その連通部を通じてフックFを挿通することが可能となっている。
【0036】
次に、上述した吊り具10の使用方法について説明する。ここでは、建材としての外壁パネル30をクレーンにより吊り上げる際に、吊り具10を用いて吊り上げることを想定している。図3は、吊り具10を用いて外壁パネル30を吊り上げる際の様子を示す図であり、以下では、この図3を参照しながら説明を行う。
【0037】
図3に示すように、外壁パネル30はパレットPの上に寝かせた状態で置かれている。外壁パネル30は、外壁面材31と、外壁面材31の裏面側に設けられた外壁フレーム32とを有している。外壁面材31は、窯業系サイディングボードにより形成されている。外壁フレーム32は、複数のフレーム材33が矩形枠状に組まれることにより形成されている。各フレーム材33は断面コ字状の軽量溝形鋼からなり、その溝部をフレーム内側に向けて配設されている。各フレーム材33のうち、外壁フレーム32の上端部に配置された上端フレーム材33aは横方向に延びており、その上端フレーム材33a(詳しくはそのウェブ)には吊り具10の係止部14A,14Bを挿通可能な挿通孔36が形成されている。挿通孔36は、上端フレーム材33aの長手方向に複数(例えば2つ)形成されている。
【0038】
外壁パネル30を吊り具10を用いて吊り上げる際には、まず吊り具10を外壁パネル30の上端フレーム材33aに取り付ける作業を行う。この場合、吊り具10を横向きに寝かせた状態で上端フレーム材33aに取り付ける。具体的には、吊り具10を、各吊り部13A,13Bが下方を向く状態で上端フレーム材33aに取り付ける。
【0039】
吊り具10を上端フレーム材33aに取り付ける際には、各係止部14A,14Bを閉状態とし、その状態で各係止部14A,14Bを上端フレーム材33aの挿通孔36に挿通する。挿通後、各吊り部13A,13Bを閉状態として各係止部14A,14Bを開状態とする。これにより、各係止部14A,14Bが上端フレーム材33aに係止される状態となり、その結果、吊り具10が外壁パネル30に対して横向きの状態で取り付けられる。なお、吊り具10は、各挿通孔36ごとに複数取り付けられる。
【0040】
続いて、閉状態の各吊り部13A,13Bの内側にクレーンのフックFを挿通する作業を行う。この作業では、各吊り部13A,13Bの内側と各環状部19A,19Bの内側とにそれぞれフックFをまとめて挿通する。これにより、各吊り部13A,13B(及び各環状部19A,19B)にフックFを引っ掛け可能な状態とされる。以上により、外壁パネル30の吊り上げ前の準備作業が終了する。なお、フックFは、例えばカラビナからなる。但し、フックFは必ずしもカラビナである必要はなく、シャックル等、他のフックであってもよい。
【0041】
続いて、クレーンにより外壁パネル30を吊り具10を介して吊り上げる作業を行う。この吊り上げ作業ではまず、吊り具10がクレーンにより上方へ引き上げられる。すると、それに伴い、吊り具10が横向きの状態から斜めの状態へと移行する。吊り具10がある状態まで立ち上がると外壁パネル30がパレットP上から引き上げられる。そして、さらなる引き上げが行われることで、外壁パネル30が縦向きの状態で吊り上げられる。
【0042】
ここで、本吊り具10では、フックFが各環状部19A,19Bに挿通されているため、それら環状部19A,19BによりフックFが吊り部13A,13B内において変位することが規制されている。この場合、外壁パネル30を吊り上げる吊り上げ過程において、フックFが吊り部13A,13B内で大きく変位するのを規制することができるため、フックFの変位に伴い意図せず各吊り部13A,13Bが開く方向の力が発生するのを防止することができる。そのため、外壁パネル30の吊り上げ過程で、各吊り部13A,13Bが開いて各係止部14A,14Bが閉状態となるのを防止することができ、その結果、吊り具10が外壁パネル30から外れてしまうのを防止することができる。
【0043】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
規制部として、吊り部13A,13Bよりも小さい環状をなす環状部19A,19Bを設け、その環状部19A,19Bを吊り部13A,13Bの内側に位置するようにして当該吊り部13A,13Bに固定した。この場合、各吊り部13A,13BにフックFを挿通させる際に、各環状部19A,19BにもフックFを挿通させることが可能となる。このため、各吊り部13A,13B内でのフックFの変位を環状部19A,19Bにより規制することができる。また、この場合、規制部が環状部19A,19Bとなっていることで、フックFを挿通させる位置がわかり易く、フックFの挿通作業を好適に行うことが可能となる。
【0045】
具体的には、各吊り部13A,13Bにそれぞれ環状部19A,19Bを設け、それら各環状部19A,19Bが各吊り部13A,13Bの閉状態において互いに対向配置されるようにした。この場合、各吊り部13A,13BにフックFが挿通される際には各環状部19A,19BにもそれぞれフックFが挿通される。このため、各吊り部13A,13B内でのフックFの変位を好適に規制することができる。また、この場合、フックFを各吊り部13A,13Bのいずれの側から吊り部13A,13Bに挿通する際にもフックFを挿通させる位置がわかり易いため、フックFの挿通作業をより一層好適に行うことができる。
【0046】
環状部19A,19Bを、吊り部13A,13Bにおいて吊り部13A,13Bの突出方向の先端側に配置したため、フックFが吊り部13A,13B内において上記先端側から基端側へ変位することを規制することができる。この場合、各吊り部13A,13Bが回動して開く際の回動先端側で各吊り部13A,13BがフックFにより連結された状態となるため、各吊り部13A,13Bが開いてしまうのを好適に防止することができる。そのため、吊り具10が外壁パネル30から外れてしまうのを好適に防止することができる。
【0047】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、各吊り部13A,13Bにそれぞれ環状部19A,19Bを設けたが、各吊り部13A,13Bのうちいずれか一方の吊り部13A(又は13B)にのみ環状部19A(又は19B)を設けるようにしてもよい。この場合にも、その環状部19A(又は19B)にフックFを挿通することで、吊り部13A,13B内でのフックFの変位を規制することができる。
【0049】
・上記実施形態では、環状部19A,19B(規制部に相当)により、各吊り部13A,13B内でのフックFの変位を規制するようにしたが、フックFの変位を規制する規制部は必ずしも環状部19A,19Bにより形成する必要はない。例えば、吊り部13A,13Bに、規制部として、吊り部13A,13Bの開口部を区画する棒材からなる区画部を設けることが考えられる。この場合、吊り部13A,13Bの開口部において区画部により区画された複数の領域のうちいずれか一方の領域をフックFの挿通領域とし、その挿通領域にフックFを挿通することでフックFの変位を規制することが考えられる。
【0050】
・上記実施形態では、寝かせた状態(横向き状態)の外壁パネル30を吊り具10を用いて吊り上げる場合について説明したが、外壁パネル30が架台等に入れられて縦向きの状態で保管されている際には、その縦向きの外壁パネル30を吊り具10を用いて吊り上げるようにしてもよい。かかる場合には、外壁パネル30の上端フレーム材33aに縦向きに吊り具10を取り付け、その取付状態で外壁パネル30を吊り上げることになる。
【0051】
このような場合にも、クレーンの位置によっては、吊り上げ過程において、各吊り部13A,13Bが吊り部13A,13Bの突出する側とは反対側に引っ張られることが想定される。そのため、吊り上げ過程においてフックFが吊り部13A,13B内で大きく変位すると、各吊り部13A,13Bが開く方向の力が生じて、各吊り部13A,13Bが開いてしまうおそれがある。この点、本吊り具10では、環状部19A,19Bにより吊り部13A,13B内でのフックFの変位が規制されているため、かかる場合にも、各吊り部13A,13Bが開いてしまうのを防止することができる。
【0052】
・上記実施形態では、吊り具10を用いて外壁パネル30を吊り上げる場合について説明したが、天井パネルや床パネル等、外壁パネル以外のパネルを吊り上げる場合に吊り具10を用いてもよい。また、梁や柱といった構造材等、パネル以外の建材を吊り上げる場合に吊り具10を用いてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…吊り具、11A,11B…吊り具本体、12A,12B…軸部、13A,13B…吊り部、14A,14B…係止部、19A,19B…規制部としての環状部、30…建材としての外壁パネル、F…フック。
図1
図2
図3
図4
図5