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特許7125249タンパク質及びペプチドの免疫原性を減少させる方法
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  • 特許-タンパク質及びペプチドの免疫原性を減少させる方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】タンパク質及びペプチドの免疫原性を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20220817BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
C07K14/47
C07K14/605
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016570961
(86)(22)【出願日】2015-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2015005651
(87)【国際公開番号】W WO2015186988
(87)【国際公開日】2015-12-10
【審査請求日】2018-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-26
(31)【優先権主張番号】10-2014-0068660
(32)【優先日】2014-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】パク スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン ス
(72)【発明者】
【氏名】リム ヒョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ イン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン セ チャン
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】吉森 晃
【審判官】福井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537525(JP,A)
【文献】特表2012-520873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0330108(US,A1)
【文献】HE X-H et al,REDUCING THE IMMUNOGENICITY AND IMPROVING THE IN VIVO ACTIVITY OF TRICHOSANTHIN BY SITE-DIRECTED PEGYLATION,LIFE SCIENCES,1999年,65(4),355-368
【文献】Jahoon Kang et al.,HM11260C, a New Generation Long Acting Super GLP-1R Agonist with a unique Pharmacokinetic Profile Improves Glucose Control and GI tolerability; a Phase IIa Clinical Trial in T2DM,the 49th Annual Meeting of the EASD poster presentation material,2013年
【文献】Peptide Therapeutic Symposium,2008年,15-17
【文献】In Young Choi et al.,A long-acting extendin-4 analog conjugate to the human Fc fragment reveals low immunogenic potential,Diabetes,2014年 6月 1日,Vol. 63, No. Suppl. 1,A259-A260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus(JDreamIII)、JMEDPlus(JDreamIII)、JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に免疫グロブリンFc領域を結合させる工程を含み、
前記生理活性タンパク質またはペプチド及び免疫グロブリンFc領域は、その間に介在する非ペプチド性リンカーを通じて結合され、
生理活性タンパク質またはペプチドと非ペプチド性リンカーとがpH7.5-9.0の条件下で結合され
前記生理活性タンパク質またはペプチドがエキセンディン-4またはエキセンディン-4の誘導体である、
免疫グロブリンFc領域が生理活性タンパク質またはペプチドの末端残基に結合された生理活性タンパク質またはペプチドに比べて生理活性タンパク質またはペプチドの抗体産生反応を抑制する、方法。
【請求項2】
前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生理活性タンパク質またはペプチドが、免疫グロブリンFc領域と、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非ペプチド性リンカーを通じて連結される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記エキセンディン-4の誘導体は、エキセンディン-4のN-末端アミン基が除去された、エキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がカルボキシル基で置換された、エキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がジメチル基で修飾された、エキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端ヒスチジン残基のアルファ炭素が除去された、エキセンディン-4誘導体からなる群から選択される、エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4誘導体である、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記内部残基は、エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4誘導体の12番目または27番目のリジン残基である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記内部残基は、エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4誘導体の27番目のリジン残基である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4誘導体は、エキセンディン-4のN-末端ヒスチジン残基のアルファ炭素が除去された、エキセンディン-4誘導体である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質またはペプチドにキャリアを位置特異的に結合させることにより、タンパク質またはペプチドの血中半減期を増加させ、その免疫原性を減少させる方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的治療剤に対する免疫反応は、非ヒト及びヒト由来のタンパク質のすべてに対して広く誘発することができる。このような反応は、臨床効果を弱め、有効性を制限し、時には病理学的疾患を引き起こしたり、患者の死を引き起こすことさえある。特に、組換え自己タンパク質を標的とする中和抗体の生成は、患者の体内に内在しているタンパク質と交差反応を誘発することができるため、深刻な結果をもたらすことができる(非特許文献1)。モノクローナル抗体のようなバイオ医薬品の問題点は、分子生物学の発展とともに大きく減少した。しかし、多くの組換えタンパク質医薬品は、体内で発現されるタンパク質配列と同一であるため、依然として中和免疫反応を引き起こす可能性が残っている(非特許文献2)。免疫原性を誘導することが可能であるメカニズムは完全には明らかではないが、自己タンパク質に対する耐性は、患者に投与された産物及び患者の様々な因子によって壊れることが知られている(非特許文献3、非特許文献4)。免疫原性の要因は、用量、投与の頻度と経路、タンパク質医薬品の免疫調節能力、それらの製剤などを含む。免疫反応を誘発する最も重要な要因は、CD4+T細胞反応を効果的に刺激することができる抗原認識部位(epitope)があるかどうかである。(非特許文献5)
【0003】
一方、エキセンディン-4(exendin-4)は、ギラモンスターのトカゲ(Gila monster lizard)の唾液腺から発見された天然ペプチドであり、ヒトGLP-1(グルカン様ペプチド1)と52%の配列類似性を有する。エキセンディン-4及びGLP-1は類似したインスリン分泌能を有している。しかし、GLP-1は、ジペプチジルペプチダーゼ-IV(dipeptidyl peptidase-IV、 DPP-IV)により迅速に非活性化され、非常に短い半減期を有する一方、エキセンディン-4は、2番目のアミノ酸配列であるアラニンの代わりに存在するグリシンによりDPP-IVに対する耐性を有し、2型糖尿病の治療剤としてより効果的であり得る。また、インスリンまたはそのアナログ、及びGLP-1/グルカゴン二重アゴニストも糖尿病及び肥満治療剤として使用される。しかし、このような非ヒトアミノ酸配列の存在は、T細胞の抗原認識部位として作用することができる。合成エキセンディン-4などの2型糖尿病治療薬として承認されたエクセナチド(Byetta)は、臨床試験で1年間エクセナチド投与を受けた患者の中、約30%以上がエクセナチドに対する抗体が生成された。最近承認されたリキシセナチドは、 患者の約60~71%が抗体を生成した(非特許文献6乃至非特許文献9)。即ち、エクセナチドは、処理される生体内異物として認識され、抗体が生成された。この理由から、治療効果を確実に期待することが困難な問題が広く発生している。
【0004】
従って、長期間の治療又は予防を目的として体内に投与された生理活性タンパク質又はペプチドの場合、免疫原性を調節することが重要である。特に、インスリン又はインスリン分泌ペプチド及び抗肥満タンパク質などの成人病関連の生理活性タンパク質またはペプチドは、投与後に体内で長く持続する持続型製剤として開発する場合が多い。また、持続型製剤でなくても長期間に複数回投与しなければならない場合が多く、免疫反応を誘導しないことが重要な問題となっている。
【0005】
このような背景の下、本発明者らは、免疫反応を誘発しないタンパク質またはペプチドの医薬製剤を開発するために鋭意努力した結果、キャリアをタンパク質またはペプチドに位置特異的に結合させる場合、キャリアが結合されていないタンパク質又はペプチドに比べて、免疫原性を減少させることを確認し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国登録特許第10-1058290号(あるいは国際公開特許WO2008-082274)
【文献】韓国公開特許第2014-0106452号(あるいは国際公開特許WO2014-133324)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0135123号(あるいは国際公開特許WO2012-165915)
【文献】国際公開特許WO2014/107035
【文献】韓国公開特許第10-2012-0137271号(あるいは国際公開特許WO2012-169798)
【文献】第10-2012-0139579号(あるいは国際公開特許WO2012-173422)
【文献】国際公開特許第WO97/34631号
【文献】国際公開特許第WO96/32478号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Lim LC, Hematology 2005 10(3):255-9
【文献】Namaka M et al., Curr Med Res Opin 2006 22(2):223-39
【文献】Chester K et al., Expert Rev Clin Immunol 2005 1(4): 549-559
【文献】Baker MP and Jones TD, Curr. Opin. Drug Disc Dev 2007 10(2):219-227
【文献】reviewed Baker MP and Jones TD, Curr. Opin. Drug Disc Dev 2007 10(2):219-227
【文献】Zinman B et al., Annals of Internal Medicines. 2007 146(7): 477-486
【文献】Schnabel CA et al., Peptides 2006 27:1902-1910
【文献】DeFronzo R.A. et al., Diabetes Care 2005 28:1092-1100
【文献】Buse J.B. et al., Diabetes Care 2004 27:2628-2635
【文献】H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一つの目的は、生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性を減少させる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に 非ペプチジルリンカーを介してキャリアが結合した生理活性タンパク質またはペプチド結合体を含む組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、キャリアが生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に結合した生理活性タンパク質またはペプチド結合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様は、生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基にキャリアを結合させる工程を含む、キャリアが結合されていない生理活性タンパク質またはペプチドに比べて生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性を減少させる方法を提供する。
【0010】
本発明の具体的な実施形態において、前記キャリアは、ポリエチレングリコール、脂肪酸、コレステロール、アルブミンまたはその断片、アルブミン結合物質、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位を有するポリマー、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内の結合組織またはその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン、エラスチン類似ポリペプチド(elastin-like polypeptide、ELP)、XTENポリペプチド、カルボキシ末端ペプチド(carboxyl terminal peptide、CTP)、SIP(structure inducing probe)、糖類及び高分子ポリマーからなる群から選択されることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記FcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記生理活性タンパク質またはペプチド、及びキャリアは、それらの間に介在するリンカーを介して結合されることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記リンカーは、非ペプチド性リンカーであることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記生理活性タンパク質またはペプチドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非ペプチド性リンカーを介して免疫グロブリンFc領域に結合したことを特徴とする。
【0016】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記生理活性タンパク質またはペプチドが、抗肥満ペプチド、インスリン分泌ペプチドまたはそのアナログ、レプチン、インスリン、インスリンアナログ、グルカゴン、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、コロニー刺激因子、GLP-1のようなグルカゴン-様ペプチド、GLP-1/グルカゴン二重アゴニスト、胃抑制ポリペプチド (Gastric inhibitory polypeptide、GIP )、Gタンパク質共役受容体(G-protein-coupled receptor、GPCR )、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リムポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液因子VII、VIIa、VIII、IX及びXIII、プラスミノゲン活性因子、フィブリン-結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、レラキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記生理活性タンパク質またはペプチドは、エキセンディン-4、エキセンディン-4誘導体、GLP-1アゴニスト、インスリン、及びGLP-1/グルカゴン二重アゴニストからなる群から選択されることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記エキセンディン-4誘導体は、エキセンディン-4のN-末端のアミン基が除去された、エキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がヒドロキシル基で置換されたエキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がカルボキシル基で置換されたエキセンディン-4誘導体;エキセンディン-4のN-末端アミン基がジメチル基で修飾されたエキセンディン-4誘導体;及びエキセンディン-4のN-末端ヒスチジン残基のα-炭素が除去されたエキセンディン-4誘導体からなる群から選択されるエキセンディン-4のN-末端電荷が修飾(変形)された誘導体であることを特徴とする。
【0019】
本発明の他の具体的な実施形態において、前術した内部残基は、エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4の12番目または27番目がリジン残基であることを特徴とする。
【0020】
本発明の他の具体的な実施形態において、前述した内部残基は、エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4の27番目がリジン残基であることを特徴とする。
【0021】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記エキセンディン-4のN-末端電荷が修飾されたエキセンディン-4誘導体は、エキセンディン-4のN-末端ヒスチジン残基のα-炭素が除去された、エキセンディン-4誘導体であることを特徴とする。
【0022】
本発明を実施するための他の態様は、生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に非ペプチジルリンカーを介してキャリアが結合した生理活性タンパク質またはペプチド結合体を含む組成物を提供し、前記結合体はキャリアが結合していない生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性より減少された免疫原性を示す。
【0023】
本発明の他の具体的な実施形態において、前術した結合体は、持続性製剤の副作用である減少された免疫原性を特徴とする。
【0024】
本発明の他の具体的な実施形態において、前記非ペプチジルリンカーは、ポリエチレングリコールであることを特徴とする。
【0025】
本発明を実施するためのもう一つの態様は、生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基にキャリアが結合された、生理活性タンパク質またはペプチド結合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の生理活性タンパク質またはペプチド結合体は、人体内の免疫原性が著しく低下して、タンパク質またはペプチドに対する抗体生成率が減少する。そのため、前記結合体は、生理活性タンパク質またはペプチドの臨床効果の減少が低く、免疫反応に対する高い安全性を有する持続型製剤の開発に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】エクス・ビボ(ex vivo)T細胞活性試験に使用されたドナー、世界人口、及びヨーロッパと北アメリカ人口のHLA-DR遺伝子型頻度の比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基にキャリアを結合させる工程を含む、キャリアが結合されていない生理活性タンパク質またはペプチドに比べて生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性を減少させる方法に関する。
【0029】
本発明において本発明者らは、生理活性タンパク質またはペプチドの末端より内部残基に非ペプチジルリンカーとFc断片を結合して 、目的タンパク質またはペプチドが抗原として作用しメカニズムを阻害することにより、生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性を低下させる方法を開発した。本発明者らは、このような方法を使用する場合、ペプチドのN末端などの他の位置に修飾して結合体を製造することに比べて、 T細胞の活性化及び動物における抗体の生成反応を顕著に抑制することを確認した。その結果、本発明者らは、既存のタンパク質医薬製剤として使用された生理活性タンパク質またはペプチド結合体を生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性減少用組成物、または方法として新たな用途で使用することができることを発見した。
【0030】
体内の免疫原性の減少如何は、公知の方法により制限なく測定することができる。例えば、免疫原性の差異は、N末端またはC末端を含むN末端以外の部位にそれぞれキャリアの結合してT細胞のエクス・ビボ(ex vivo)活性測定法によって確認することができる。アルデヒド反応基は、低いpHでN-末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件ではリジン残基とも共有結合を形成することができる。反応pHを変化させながらペグ化(pegylation)反応を進めた後、イオン交換カラムを使用して反応混合物から位置異性体を分離することができる。
【0031】
生体内のタンパク質またはペプチドの活性に重要な部位であるN-末端以外の位置でカップリングが行われた場合、アミン基は修飾されるアミノ酸残基位置に導入され、前記タンパク質またはぺプチドと非ペプチジルポリマーのアルデヒド基との間に共有結合を形成する。
【0032】
N-末端の保護方法は、ジメチル化以外にメチル化、脱アミノ化またはアセチル化の方法を含み、これらに限定されない。
【0033】
本発明における、「生理活性タンパク質またはペプチド」とは、遺伝的発現または生理機能を調節することができるタンパク質またはペプチドを意味する。前記生理活性タンパク質またはペプチドは、キャリアが本発明における生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に結合し、そのため、キャリアが結合されていないタンパク質またはペプチドに比べて減少された免疫原性を有する限り、制限なく本発明の範囲に含まれることができる。後述するように、前記キャリアは、リンカー、具体的には、非ペプチジルリンカーを介して生理活性タンパク質またはペプチドに結合することができる。
【0034】
また、前記生理活性タンパク質またはペプチドは、天然型生理活性タンパク質またはペプチド以外に誘導体、変異体、またはその断片を含む。
【0035】
前記生理活性タンパク質またはペプチドの例として、抗肥満ペプチド、インスリン分泌ペプチドまたはそのアナログ、レプチン、インスリン、インスリンアナログ、グルカゴン、ヒト成長ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、コロニー刺激因子、グルカゴン-様ペプチド(GLP-1など)、GLP-1/グルカゴン二重アゴニスト、胃抑制ポリペプチド(Gastric inhibitory polypeptide、 GIP)、Gタンパク質共役受容体(G-protein-coupled receptor、GPRC)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リムポ毒素、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、α-1アンチトリプシン、アルブミン、α-ラクトアルブミン、アポリポタンパク質-E、赤血球生成因子、高糖鎖化赤血球生成因子、アンジオポエチン、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液因子VII、VII a 、VIII、IX及びXIII、プラスミノゲン活性因子、フィブリン-結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C-反応性タンパク質、レニン阻害剤、コラゲナーゼ阻害剤、スーパーオキシドディスムターゼ、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路阻害剤、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子類、副甲状腺ホルモン、レラキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、グルカゴン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、受容体類、受容体拮抗物質、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体と抗体断片を含むが、これに限定されない。
【0036】
より具体的には、前記生理活性タンパク質またはペプチドは、インスリン、インスリン分泌ペプチド、またはGLP-1/グルカゴン二重アゴニストを含んでもよいが、これに限定されない。
【0037】
本発明における用語、「インスリン」とは、インスリン受容体に対して刺激効果を有するすべてのペプチドまたは変形ペプチドを含む。前記インスリンは、例えば、天然型インスリン、速効インスリン、基底インスリン、天然型インスリンにおいて一部のアミノ酸が置換、付加、欠失及び修飾のいずれか一つの方法またはこれらの方法の組み合わせを通じて変形が起こった物質であるインスリンアナログ、またはこれらの断片であり得る。また、本発明において使用される前記インスリンは、短い半減期を克服するために持続型の技術を適用した持続型インスリンであってもよい。具体的には、前記インスリンは、週1回投与することができる持続型インスリンまたは持続型インスリンアナログであってもよいが、これに限定されない。
【0038】
本発明における前記インスリンの具体的な例を一部挙げれば、韓国登録特許第10-1058290号(あるいは国際公開特許WO2008-082274)、または韓国公開特許第2014-0106452号(あるいは国際公開特許WO2014-133324)に記載されたインスリンまたはインスリンアナログとその持続型を含むが、その範囲は制限されない。また、前記明細書全体は、本発明の参考資料として含まれる。
【0039】
本発明に使用される用語、「インスリンアナログ」とは、天然型インスリンとして生体内の血糖値を調節する同一な機能を有する物質を意味する。具体的には、前記インスリンアナログは、天然型インスリン配列において1つ以上のアミノ酸が変形されたものを含む。前記インスリンアナログは、天然型インスリンのA鎖またはB鎖のアミノ酸が変異されたインスリンアナログであってもよい。前記天然型インスリンのアミノ酸配列は、下記の通りである。
【0040】
A鎖:Gly-Ile-Val-Glu-Gln-Cys-Cys-Thr-Ser-Ile-Cys-Ser-Leu-Tyr-Gln-Leu-Glu-Asn-Tyr-Cys-Asn(配列番号:1)
【0041】
B鎖:Phe-Val-Asn-Gln-His-Leu-Cys-Gly-Ser-His-Leu-Val-Glu-Ala-Leu-Tyr-Leu-Val-Cys-Gly-Glu-Arg-Gly-Phe -Phe-Tyr-Thr-Pro-Lys-Thr(配列番号:2)
【0042】
具体的には、天然型インスリンにおいて少なくとも1つ以上のアミノ酸が置換 、付加、欠失、修飾、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される変形が起こったものであってもよいが、これに限定されない。
【0043】
前記アミノ酸の置換または付加において、ヒトのタンパク質から通常観察される20個のアミノ酸だけでなく、非定型または非自然のアミノ酸を使用することができる。前記非定型アミノ酸の市販供給源は、Sigma-Aldrich、ChemPep及びGenzyme pharmaceuticalsが含まれることができる。このようなアミノ酸が含まれたペプチド及び典型的なペプチド配列は商業的ペプチド合成会社、例えば、米国のAmerican peptide company及びBachem、または韓国のAnygenを通じて合成及び購入することができる。
【0044】
具体的には、前術したインスリンアナログは、逆向きインスリン、インスリン変異体、インスリン断片、インスリンアゴニスト、インスリン誘導体などを含み、その製造法としては、遺伝子組換えだけでなく、固相方法でも製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記用語、「インスリン誘導体」とは、体内で血糖値を調節する機能を有しながら、天然型インスリンのA鎖及びB鎖とアミノ酸配列相同性を示し、また、アミノ酸残基の一部のグループが化学的に置換(例えば、α-メチル化、α-ヒドロキシル化)、除去(例えば、脱アミノ化)または修飾(例えば、N-メチル化)され得るペプチド形態を含む。また、前記インスリン誘導体には、天然型インスリンとアミノ酸配列に相同性がなくても、インスリン受容体と結合して体内で血糖値を調節するペプチド模倣体及び低分子あるいは高分子化合物も含む。
【0046】
本発明で使用される前記用語、「インスリン断片」とは、インスリン中に1つ以上のアミノ酸が付加または除去された断片を意味する。前記付加されたアミノ酸は、天然の状態で存在しないアミノ酸(例えば、D型アミノ酸)であってもよい。このようなインスリン断片は、体内で血糖値を調節する機能を保持する
【0047】
本発明で使用される前記用語、「インスリン変異体」とは、インスリンと一つ以上の異なるアミノ酸配列を有するペプチドであり、体内で血糖値を調節する機能を保持する。
【0048】
本発明のインスリンアゴニスト、誘導体、断片及び変異体をそれぞれ調製する方法は、単独、及びその組み合わせで使用することができる。本発明のインスリンアゴニスト、誘導体、断片、及び変異体をそれぞれ製造する方法は、単独で、及び組み合わせで使用することができる。例えば、本発明には天然型インスリンとは異なるアミノ酸配列を有し、末端アミノ酸残基が脱アミノ化され、体内で血糖値を調節する機能を保持したペプチドが含まれることができる。
【0049】
前記アゴニスト、誘導体、断片、変異体の説明は、他の種類のタンパク質またはペプチドに対しても適用することができる。
【0050】
具体的には、前記インスリンアナログは、インスリンB鎖の1番目のアミノ酸、2番目のアミノ酸、3番目のアミノ酸、5番目のアミノ酸、8番目のアミノ酸、10番目のアミノ酸、12番目のアミノ酸、16番目のアミノ酸、23番目のアミノ酸、24番目のアミノ酸、25番目のアミノ酸、26番目のアミノ酸、27番目のアミノ酸、28番目のアミノ酸、29番目のアミノ酸、30番目のアミノ酸;A鎖の1番目のアミノ酸、2番目のアミノ酸、5番目のアミノ酸、8番目のアミノ酸、10番目のアミノ酸、12番目のアミノ酸、14番目のアミノ酸、16番目のアミノ酸、17番目のアミノ酸、18番目のアミノ酸、19番目のアミノ酸及び21番目のアミノ酸からなる群から選択された一つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されてもよく、より具体的には、B鎖の8番目のアミノ酸、23番目のアミノ酸、24番目のアミノ酸、25番目のアミノ酸;A鎖の1番目のアミノ酸、2番目のアミノ酸、14番目のアミノ酸及び19番目のアミノ酸からなる群から選択された一つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されてもよい。具体的には、前述のアミノ酸において1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、または27以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものであり得るが、これに限定されない。
【0051】
前述した位置のアミノ酸残基は、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン、イソロイシン、バリン、グルタミン、グリシン、リジン、ヒスチジン、システイン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、または/及びアスパラギン酸で置換することができる。
【0052】
本発明における「インスリン分泌ペプチド」とは、インスリンを分泌する機能を保持するペプチドを意味する。前記インスリン分泌ペプチドは、膵臓のベータ細胞のインスリンの合成または発現を刺激し得る。上記インスリン分泌性ペプチドは、具体的には、GLP-1(glucagon like peptide-1)、エキセンディン-3(exendin-3)またはエキセンディン-4(exendin-4)であるが、これに限定されない。前記インスリン分泌ペプチドは、天然型インスリン分泌ペプチドだけでなく、その前駆体、アゴニスト、誘導体、断片及び変異体などを含む。また、先に述べたようにこれらの組み合わせも含むことができる。
【0053】
GLP-1は、小腸から分泌されるホルモンであり、一般的にインスリン生合成及び分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制して、細胞によるグルコースの吸収を促進する。小腸において、グルカゴン前駆体は、3つのペプチド、即ち、グルカゴン、GLP-1及びGLP-2に分解される。ここで、GLP-1は、インスリン分泌機能を有していない形態のGLP-1(1~37)を意味するが、その後にプロセシングされて活性化されたGLP-1(7~37)形態に転換される。
【0054】
エキセンディン-4は、GLP-1と53%のアミノ酸配列相同性を示す39個のアミノ酸を有するポリペプチドである。前記エキセンディン-4は、下記配列を有することができるが、これに限定されない。
【0055】
エキセンディン-4:His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser(配列番号:3)
【0056】
一方、エキセンディン-3は、エキセンディン-4と2番目及び3番目のアミノ酸が異なるポリペプチドである。エキセンディン-3は、エキセンディン-4の2番目及び3番目の位置のアミノ酸がそれぞれセリン及びアスパラギン酸で置換されたものであり、Ser2Asp3-エキセンディン-4(1-39)で表示することができる。具体的には、前記エキセンディン-3は、下記配列を有することができるが、これに限定されない。
【0057】
エキセンディン-3:His Ser Asp Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser(配列番号:4)
【0058】
前術したインスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌ペプチドのN-末端が変形されたものであることができる。より具体的には、前記インスリン分泌性ペプチド誘導体のN-末端の電荷を修飾(変化)させることにより受容体との迅速な解離を引き起こすことができ、前記N-末端の正電荷が、中性または有効負電荷に修飾されることができる。
【0059】
本発明の前記インスリン分泌ペプチド誘導体は、インスリン分泌ペプチドのN-末端アミノ(またはアミン)基が除去されたデスアミノ-ヒスチジル誘導体(Desamino-histidyl誘導体);前記アミノ基がヒドロキシル基で置換したβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニル誘導体(beta-hydroxy imidazopropionyl-誘導体);前記アミノ基が2つのメチル基で修飾されたジメチル-ヒスチジル誘導体(Dimethyl-histidyl-誘導体);N-末端のアミノ基がカルボキシル基で置換したβ-カルボキシイミダゾプロピオニル誘導体(beta-carboxyimidazopropionyl-誘導体)または N-末端のヒスチジン残基のアルファカーボンが除去され、イミダゾールアセチル基のみを保持してアミノ基の正電荷が除去されたイミダゾアセチル誘導体(Imidazoacetyl-誘導体)などが含まれることができ、また、他のN末端アミノ基が修飾された誘導体は本発明の範囲に属する。
【0060】
その例として、前記インスリン分泌ペプチド誘導体は、エキセンディン-4のN-末端アミノ(またはアミン)基、またはアミノ酸残基が化学的に修飾された誘導体であることができる。具体的には、エキセンディン-4のN-末端ヒスチジン残基(最初のアミノ酸)のα炭素に存在するαアミノ基を置換または除去することによりエキセンディン-4誘導体が製造される。より具体的には、N-末端アミノ基を除去したデスアミノ-ヒスチジル-エキセンディン-4(Desamino‐histidyl‐exendin-4、DA-エキセンディン-4);N-末端アミノ基をヒドロキシル基で置換したβ-ヒドロキシイミダゾプロピオニル-エキセンディン-4(beta-hydroxy imidazopropionyl-exendin-4、HY-エキセンディン-4);N-末端アミノ基をカルボキシル基で置換したβ-カルボキシイミダゾプロピオニル-エキセンディン-4(beta-carboxyimidazopropionyl-exendin-4、CX-エキセンディン-4);N-末端アミノ基を2つのメチル残基で修飾したジメチル-ヒスチジル-エキセンディン-4(Dimethyl-histidyl-exendin-4、DM-エキセンディン-4);またはN-末端ヒスチジン残基のα-炭素を除去したイミダゾアセチル-エキセンディン-4(Imidazoacetyl-exendin-4、CA-エキセンディン-4)などを含むことができる。インスリン分泌ペプチドに関する韓国公開特許第10-2012-0135123号(あるいは国際公開特許WO2012-165915)または国際公開特許WO2014/107035に開示された内容も、本発明の範囲に含まれることは自明である。前記特許明細書の全内容は、本発明に対して参考文献として含まれる。
【0061】
本発明における、「GLP-1/グルカゴン二重アゴニスト」とは、天然型GLP-1/グルカゴン二重アゴニストであるオキシントモジュリンのようにGLP-1/グルカゴン二重作用活性を有するペプチドまたはその断片、前駆体、変異体、または誘導体を含む。本発明において前記GLP-1/グルカゴン二重アゴニストは、短い半減期を克服するための持続型の技術を適用したGLP-1/グルカゴン二重アゴニストであることができ、好ましくは、週1回投与し得る持続型GLP-1/グルカゴン二重アゴニストであるが、これに制限されない。
【0062】
前記GLP-1/グルカゴン二重アゴニストは、オキシントモジュリンを含む。
【0063】
前記「オキシントモジュリン」とは、グルカゴンの前駆体であるプレ-グルカゴン(pre-glucagon)から生産されたペプチドを意味する。本発明において、オキシントモジュリンは天然型オキシントモジュリン、その前駆体、誘導体、断片及び変異体などを含む。
【0064】
前記オキシントモジュリンは、具体的にはHSQGTFTSDYSKYLDSRRAQDFVQWLMNTKRNRNNIAのアミノ酸配列(配列番号:5)を有することができるが、これに制限されない。
【0065】
前記オキシントモジュリン誘導体は、オキシントモジュリン配列の任意のアミノ酸を付加、欠失または置換により製造されたペプチド、ペプチド誘導体またはペプチド模倣体を含み、GLP-1受容体とグルカゴン受容体の両方を活性化させることができ、特に、天然型オキシントモジュリンにより活性化されたレベルより高レベルで各の受容体を活性化させることができる。
【0066】
本発明におけるGLP-1/グルカゴン二重アゴニストの具体的な実施例を一部挙げれば、韓国公開特許第10-2012-0137271号(あるいは国際公開特許WO2012-169798)、第10-2012-0139579号(あるいは国際公開特許WO2012-173422)に記載されたGLP-1/グルカゴン二重アゴニスト及びその誘導体とその持続型を含む。前記特許明細書全体は、本発明の参考資料として含まれる。
【0067】
本発明において、前記生理活性タンパク質またはペプチドに結合されるキャリアは、生理活性タンパク質またはペプチドの生体内半減期を延長させることができる物質であり得る。
【0068】
前記生理活性タンパク質またはペプチドの例として、生理活性タンパク質またはペプチドの腎クリアランス(renal clearance)を減少させることができる様々な物質、例えば、ポリエチレングリコール、脂肪酸、コレステロール、アルブミンまたはその断片、アルブミン結合物質、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位を有するポリマー、抗体、抗体断片、FcRn結合物質、生体内の結合組織またはその誘導体、ヌクレオチド、フィブロネクチン、トランスフェリン(Transferrin)、エラスチン類似ポリペプチド(elastin-like polypeptide、ELP)、XTENポリペプチド、カルボキシ末端ペプチド(carboxyl terminal peptide、CTP)、 構造誘導プローブ(structure inducing probe、SIP)、糖類、高分子ポリマー、特定のアミノ酸配列、特定のアミノ酸配列の繰り返し単位を有するポリマーなどを含む。また、前記生理活性タンパク質またはペプチドとキャリアとの連結は、遺伝子組換え、及びイン・ビトロ連結を含むが、これらに限定されない。
【0069】
前記キャリアは、生理活性タンパク質またはペプチドに共有結合的または非共有結合的に連結することができる。前術したFcRn結合物質は、免疫グロブリンFc領域、例えば、IgG Fcであり得る。
【0070】
ポリエチレングリコールをキャリアとして使用する場合、位置特異的にポリエチレングリコールに結合させることができるAmbrx社のRecode技術を使用することができる。また、グリコシル化された部分に位置特異的に結合させることができるNeose社の糖ペグ化(glycopegylation)技術を使用することができる。また、生体内においてポリエチレングリコールがゆっくりと除去される放出可能なPEG技術を使用することができるが、これらに限定されない。また、本発明で使用することができる技術には、PEGを用いて生体内利用率を増加させる技術が含まれる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸のような非ペプチド性ポリマーも、前記技術を用いて生理活性タンパク質またはペプチドに結合することができる。
【0071】
アルブミンをキャリアとして使用する場合、本発明で用いることができる技術には、アルブミンあるいはアルブミンの断片を生理活性タンパク質またはペプチドに直接共有結合して生体内の安定性を向上させる技術が含まれることができる。アルブミンが直接結合していなくても、アルブミン結合物質、例えば、アルブミン特異的結合抗体あるいは抗体断片を生理活性タンパク質またはペプチドに結合させてアルブミンと結合させる技術を用いることができ、アルブミンに結合親和性を有する特定のペプチド/タンパク質を生理活性タンパク質またはペプチドに結合する技術を用いることができる。また、アルブミンに結合親和性を有する脂肪酸を生理活性タンパク質またはペプチドに結合させる技術を用いることができるが、これに限定されない。アルブミンを用いて生体内安定性を向上させる任意の技術または結合方法などがこれに含まれることができる。
【0072】
生体内半減期を増加させるために、抗体または抗体断片をキャリアとして使用して生理活性タンパク質またはペプチドに結合させる技術も本発明に含まれることができる。FcRn結合部位を有する抗体または抗体断片を用いることができ、FabのようなFcRn結合部位を含まない任意の抗体断片を使用し得る。触媒抗体を利用するCovX社のCovX-body技術がこれに含まれることができ、免疫グロブリンFc領域を利用して生体内半減期を増加させる技術も本発明に含まれることができる。
【0073】
免疫グロブリンFc領域を利用する場合、Fc領域及び生理活性タンパク質またはペプチドと結合するリンカー及びその結合方法は、ペプチド結合あるいはポリエチレングリコールなどが含まれるが、これらに限定されず、如何なる化学的結合方法が用いられることができる。また、Fc領域とインスリンアナログの結合比は1:1または1:2であってもよいが、これに限定されない。
【0074】
Fc領域を含む免疫グロブリン不変領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるため、薬物のキャリアとして安全に使用することができる。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が少ないため、複合体の生産、精製、及び生産収率の面において有利である。また、別の抗体由来のアミノ酸配列の相違による高い不均一性を示すFabを欠いているので、前記免疫グロブリンFc領域単独で著しく向上した均一性を有する複合体を提供し、血液抗原性を誘導する可能性も減少する。
【0075】
また、前述したPEGは、目的ペプチドの特定の部位または様々な部位に非特異的に結合してペプチドの分子量を増加させる。そのため、前記PEGは腎クリアランスを抑制し、加水分解を防止するのに効率的であり、特別な副作用も引き起こさない。また、外来ペプチドにPEGが結合すると、免疫細胞により外来ペプチドに存在する抗原部位の認識を阻害することができる。具体的には、前記PEGは、ペプチドが抗原提示細胞により貪食され、タンパク質分解されるのを阻害することができ、ペプチドが抗原として作用する可能性を低下させることができる。特に、外来タンパク質が抗原としてCD4+T細胞の活性化を刺激するためには、MHC class IIに結合する形態の約14~24個の短いペプチドを抗原提示細胞の表面に提示されなければならない。これはPEGの結合部位に応じて適切な大きさに分解される過程で抑制することができる。
【0076】
本発明の一実施形態では、前記キャリアと前記生理活性タンパク質またはペプチドが、リンカー、具体的には、非ペプチド性リンカーを介して連結される。
【0077】
本発明において、前記非ペプチド性リンカーは、2つ以上の繰り返し単位を含んでいる生体適合性ポリマーを意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく、任意の共有結合によって互いに結合している。前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性ポリマーと混合して使用することができる。
【0078】
本発明で使用可能な非ペプチジルリンカーは、生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン類、ヒアルロン酸、及びそれらの組み合わせから構成される群から選択されてもよい。本発明で使用される前記生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)またはPLGA(ポリラクチク-グリコール酸、polylactic-glycolic acid)であり得る。本発明の一つの具体的な実施形態において、前記非ペプチジルポリマーは、ポリエチレングリコールである。また、当該技術分野において公知の誘導体や、当該分野で公知の方法により容易に調製される誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0079】
既存のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法により得られた融合タンパク質で使用されたペプチドリンカーは、生体内でタンパク質分解酵素により容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血清半減期が延長される効果を期待だけ得ることができないという欠点がある。しかし、本発明の非ペプチド性ポリマーは、ペプチド結合を有していない物質であるため、基本的に、タンパク質分解酵素に対する耐性を有し、ペプチドの血清半減期を長くすることができる。本発明で使用することができる非ペプチド性ポリマーの分子量の範囲は具体的には、1~100kDa、より具体的には、1~20kDaである。本発明の前記免疫グロブリンFc領域に結合される非ペプチド性ポリマーは、一種類のポリマーまたは、異なる種類のポリマーの組み合わせであり得るが使用されることもできる。
【0080】
本発明において、前記キャリアは生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に結合されることを特徴とする。この場合、上述したように、前記キャリアは、リンカーを介して生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基に結合することができる。
【0081】
生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基は、生理活性タンパク質またはペプチドにキャリアが結合した場合、キャリアが結合していないタンパク質またはペプチド、またはタンパク質またはペプチドの末端にキャリアが結合したタンパク質またはペプチドに比べて、その免疫原性が減少する残基であれば、制限なく含む。
【0082】
前記生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部アミノ酸は、リジン、システインなどがあり得る。
【0083】
より具体的には、前記生理活性タンパク質またはペプチドが、インスリン分泌ペプチド、特にエキセンディン-4またはエキセンディン-4の誘導体である場合、その内部残基は、12番目または27番目のリジン残基であってもよいが、これに限定されない。
【0084】
また、非ペプチジルポリマーとしてアルデヒドリンカーを使用する場合、N-末端はリジン残基のアミン基と反応し、インスリン分泌ペプチドの修飾型を使用して反応収率を改善することができる。例えば、N-末端をブロッキングする方法、リジン残基を置換する方法、アミン基を導入する方法を用いて目的の位置に反応性アミン基を維持することができ、さらにペグ化及びカップリング収率を向上させることができる。
【0085】
本発明の好ましい実施態様では、本発明のインスリン分泌ペプチドの非末端内部残基にキャリアが結合されたインスリン分泌ペプチド結合体は、免疫グロブリンFc領域がインスリン分泌ペプチドのN-末端以外のアミン基に特異的に結合したインスリン分泌ペプチド結合体を意味する。
【0086】
具体的な一実施形態として、本発明者は、インスリン分泌ペプチドのリジン残基にPEGを選択的に結合される方法において、天然型エキセンディン-4にPEGを結合させる場合、pH9.0で反応させてリジン残基へのペグ化反応を誘導する反面、他の方法においては、N-末端の除去または保護された形態のエキセンディン-4誘導体にPEGを結合させる場合、pH7.5で反応させてリジン残基へのペグ化反応を誘導する。結果として、N-末端結合とは反対に、リジン残基に結合すると、エクス・ビボT細胞活性が顕著に抑制されることを確認することができた(表2~4)。
【0087】
また、本発明で使用される用語、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖可変領域を除いた、重鎖不変領域2(CH2)及び重鎖不変領域3(CH3)、重鎖不変領域1(CH1)及び軽鎖不変領域(CL1)を意味し、重鎖不変領域にヒンジ(hinge)部分をさらに含んでもよい。
【0088】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型タンパク質と実質的に同等または向上した効果を有する限り、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域を除いて、重鎖不変領域1(CH1)及び/または軽鎖不変領域1(CL1)を含むFc領域の一部または全体を含むことができる。また、免疫グロブリンFc領域は、CH2及び/またはCH3のアミノ酸配列の比較的に長い部分が除去されている断片であり得る。即ち、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、及び6)重鎖不変領域及び軽鎖不変領域の各ドメインの二量体から構成されることができる。
【0089】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(変異体)を含む。アミノ酸配列誘導体は、天然アミノ酸配列の一つ以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換またはこれらの組み合わせにより異なる配列を有する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であると知られている214~238、297~299、318~322または327~331番位置のアミノ酸残基は修飾に適切な標的として用いてもよい。また、ジスルフィド結合を形成することができる領域が除去されるか、または天然型Fc形態のN-末端であるアミノ酸残基が除去されるが、またはそこに メチオニン残基が付加されるものが含まれたなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能をなくすために補体結合部位、例えば、C1q結合部位が除去されることもでき、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されることもできる。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は、国際公開特許第WO 97/34631号、国際公開特許第WO 96/32478号などに開示されている。
【0090】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野において公知となっている(H.Neurath、R.L.Hill、The Proteins、Academic Press、New York、1979)。最も一般的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0091】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、及びアミド化(amidation)などで修飾されることができる。
【0092】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同一な生物学的活性を示すが、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0093】
また、このようなFc領域は、ヒト及び牛、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットピックなどの動物の生体内から分離した天然型から得られることができ、または形質転換された動物細胞または微生物から得られた組換え型またはその誘導体であることができる。ここで、天然型から得る方法は、全体の免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得ることができる。パパインを処理する場合には、Fab及びFcに切断され、ペプシンを処理する場合には、pF’c及びF(ab)2に切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを利用してFcまたはpF’cを分離することができる。
【0094】
具体的には、ヒト由来のFc領域を微生物から収得した組換え型の免疫グロブリンFc領域である。
【0095】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖または糖鎖が除去された形態であることができる。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には、化学的方法、酵素学的方法と微生物を利用した遺伝子工学的方法のような一般的な方法を用いることができる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体-依存性細胞毒性または補体-依存性細胞毒性が減少または除去されるため、生体内で不要な免疫反応を誘発してない。このような点で、薬物のキャリアとしての本来の目的により符合する形態は、糖鎖が除去されたり非糖鎖化された免疫グロブリンFc領域であると言える。
【0096】
本発明において糖鎖の除去(Deglycosylation)は、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非糖鎖化(Aglycosylation)は原核動物、具体的には、大腸菌で生産して糖鎖化されていないFc領域を意味する。
【0097】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒトまたは牛、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットピックなどの動物起源であることができ、具体的には、ヒト起源である。
【0098】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc領域であることができる。具体的には、ヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、より具体的には、リガンド結合タンパク質の半減期を向上させることが公知となっているIgG由来であるが、これに制限されない。
【0099】
一方、本発明に使用される用語、「組み合わせ(combination)」とは、同じ起源の一本鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の一本鎖ポリペプチドに結合して二量体または多量体を形成することを意味する。すなわち、二量体または多量体は、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fc断片からなる群から選択される2つ以上の断片から形成され得る。
【0100】
本発明において前記用語、「ハイブリッド(hybrid)」とは、一本鎖免疫グロブリンFc領域に少なくとも2つ以上の異なる起源の免疫グロブリンFc断片に相応する配列が存在することを意味する。本発明において、様々な形態のハイブリッドが可能である。即ち、前記ハイブリッドはIgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3、及びCH4からなる群から選択された1~4つのドメインに構成され、ヒンジを含むことができる。一方、IgGはIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明では、これらの組み合わせまたは混成化も可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存毒性(Complementdependent cytotoxicity、 CDC)のようなエフェクター機能(effector function)をほとんど有していないIgG4のFc領域である。
【0101】
したがって、本発明の薬物のキャリア用免疫グロブリンFc領域は、例えば、ヒトIgG4由来の非グリコシル化Fc領域であることができるが、これに限定されない。ヒト由来のFc領域は、例えば、体内の抗原として作用して新しい抗体を産生することができ、望ましくない免疫反応を引き起こすことができる非ヒト由来のFc領域に比較して好ましい。
【0102】
本発明の具体的な実施形態に使用される非ペプチジルポリマーは、免疫グロブリンFc領域及び生理活性タンパク質またはペプチドに結合することができる反応基を有する。さらに具体的な実施形態において、この反応基は、両末端に位置する。前記非ペプチジルポリマーの両末端反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド(maleimide)及びスクシンイミド(succinimide)誘導体からなる群から選択されることが望ましい。前記において、スクシンイミド誘導体は、スクシンイミジルプロピオネート(succinimidyl propionate)、ヒドロキシスクシンイミジル(hydroxy succinimidyl)、スクシンイミジルカルボキシ(succinimidyl carboxymethyl)またはスクシンイミジルカーボネート(succinimidyl carbonate)であり得る。。特に、前記非ペプチジルポリマーが両末端に反応性アルデヒド基の反応基を有する場合、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンとの両末端を最小限の非特異的反応で連結することは有効である。アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものよりもはるかに安定である。アルデヒド反応基は、低いpHでN-末端で選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件では、リジン残基と共有結合を形成する。
【0103】
前記非ペプチジルポリマーの両末端反応基は、互いに同一または異ってもよい。
【0104】
例えば、前記非ペプチジルポリマーは一方の末端にはマレイミド基、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、またはブチルアルデヒド基を有することができる。両方の末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチジルポリマーとして利用する場合には、前記ヒドロキシ基は公知の化学反応により多様な反応基で活性化したり、または市販の変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の生理活性タンパク質またはペプチド結合体、具体的にはインスリン分泌ペプチド結合体を製造することができる。
【0105】
本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリンの合成及び分泌促進、食欲抑制、体重減少、ベータ細胞血中グルコース敏感度の増加、ベータ細胞増殖(beta cell proliferation)の促進、胃排出遅延(gastric emptying delay)、グルカゴン抑制のような従来のインスリン分泌ペプチドの生体内の活性が維持されるだけでなく、インスリン分泌ペプチドの血中半減期及びこれによる前記ペプチドの生体内効力持続効果が画期的に増加することになる。そのため、このようなインスリン分泌ペプチドは糖尿病、肥満、急性冠症候群(Acute coronary syndrome)または多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome)の治療に有用である。
【0106】
もう一つの態様として、本発明は生理活性タンパク質またはペプチドの非末端内部残基にキャリアが非ペプチジルリンカーを介して結合された、生理活性タンパク質またはペプチド結合体を含む組成物を提供し、前記結合体はキャリアが結合されていない生理活性タンパク質またはペプチドに比べて減少された免疫原性を示す。
【0107】
具体的には、前術した結合体は、持続性製剤の副作用である、免疫原性を減少させることを特徴とする。
【0108】
また、前記非ペプチジルリンカーは、ポリエチレングリコールであることができる。
【0109】
前記生理活性タンパク質またはペプチド、リンカー、結合体は前記で説明した通りである。
【0110】
本発明のまた他の態様として、本発明は、生理活性タンパク質またはペプチド結合体の製造方法を提供する。
【0111】
具体的には、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド、マレイミド、またはスクシンイミド反応基を有する非ペプチジルポリマーを生理活性タンパク質またはペプチドのアミンまたはチオール基に共有結合させる工程;
(2)生理活性タンパク質またはペプチドのN-末端以外の位置を介して非ペプチジルポリマーに共有結合した生理活性タンパク質またはペプチドペプチドを前記(1)の反応混合物から分離する工程;及び
(3)生理活性タンパク質またはペプチドに共有結合した非ペプチジルポリマーの他の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合させて、非ペプチジルポリマーの両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域および生理活性タンパク質またはペプチドと結合した工程を含む、生理活性タンパク質またはペプチド結合体を製造する方法を提供する。
【0112】
好ましい一態様として、本発明は、
(1)両末端にアルデヒド反応基を有する非ペプチジルポリマーを生理活性タンパク質またはペプチドのリジン残基に共有結合させる工程;
(2)生理活性タンパク質またはペプチドのりジン残基を介して非ペプチジルポリマーに共有結合した生理活性タンパク質またはペプチドペプチドを前記(1)の反応混合物から分離する工程;及び(3) 生理活性タンパク質またはペプチドに共有結合した非ペプチジルポリマーの他の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合させて、非ペプチジルポリマーの両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域および生理活性タンパク質またはペプチドと結合した工程を含む、生理活性タンパク質またはペプチド結合体を製造する方法を提供する。より具体的には、(1)工程の非ペプチジルポリマー及び生理活性タンパク質またはペプチドであるインスリン分泌ペプチドのリジン残基は、pH 7.5以上で結合することができる。
【0113】
以下、下記実施例により本発明をより詳しく説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0114】
<実施例1>:エキセンディン-4のペグ化(Pegylation)及びペグ化されたエキセンディン-4の位置異性体分離
3.4K PropionALD(2)PEG(プロピオンアルデヒド基を2個有している分子量3.4kDaのPEG、IDB Inc.、韓国)を天然型エキセンディン-4(米国のAmerican Peptides)のN-末端にペグ化させるため、3mg/ml濃度のペプチドとPEGとのモル比を1:15にして4℃で90分間反応させた。この時の反応は、100mM濃度のNaOAc緩衝液(pH4.0)内で行われ、還元剤である20mM SCB(NaCNBH3)を添加して反応された。
【0115】
また、3.4K PropionALD(2)PEGをエキセンディン-4のリジン(Lys)残基にペグ化させるため、3mg/ml濃度のペプチドとPEGとのモル比を1:30にして4℃で3時間反応させた。この時の反応は、100mM濃度のNa-Phosphate緩衝液(pH9.0)内で行われ、還元剤である20mM SCBを添加して反応させた。前記反応液は、SOURCE Q(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)を通じて一次的にモノ-ペグ化された(Mono-pegylated)ペプチドを精製し、SOURCES(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)を通じて異性体を分離した。N-末端がペグ化されたピーク(N-term pegylatedピーク)が最も前方に出てきて、その後に順に2個のリジンがペグ化されたピーク(Lys Pegylatedピーク)が出ることが分かった。溶出されたピークは、ペプチドマッピング(mapping)方法でペグ化された位置を確認することができた。
【0116】
Lys12ペグ化された結合体が先に溶出され、Lys27ペグ化された結合体は最も後ろで溶出された。N-末端の位置異性体とLys12位置異性体との間に完全なピーク分離が可能であった。
【0117】
カラム:SOURCE Q(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)58-27
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→40%80分B(A:20mMトリスpH8.5、B:A + 0.5M NaCl)
【0118】
カラム:SOURCE S(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→100%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A + 0.5M KCl)
【0119】
<実施例2>:CAエキセンディン-4リジン残基のペグ化(Pegylation)と位置異性体分離
3.4K PropionALD(2)PEGをCAエキセンディン-4(米国のAmerican Peptides)のリジン(Lys)残基にペグ化させるため、3mg/ml濃度のCAエキセンディン-4とPEGとのモル比を1:30にして、4℃で3時間反応させた。CAエキセンディン-4は、天然型エキセンディンのN-末端ヒスチジン残基でアルファ炭素が削除され、側鎖のβ-炭素が直接カルボキシル炭素に結合したN-末端変形エキセンディン-4である。この時の反応は、100mM濃度のNa-Phosphate緩衝液(pH9.0)内で行われ、還元剤である20mM SCBを添加して反応させた。前記反応液は、SOURCE Q(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)を通じて一次的にモノ-ペグ化された(Mono-pegylated)ペプチドを精製し、SOURCES(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)を通じて異性体を分離した。
【0120】
2個のリジンがペグ化されたピーク(Lys Pegylatedピーク)が出ることが分かった。溶出されたピークは、ペプチドマッピング(mapping)方法でペグ化された位置を確認することができた。
【0121】
Lys12ペグ化された結合体が先に溶出され、Lys27ペグ化された結合体は、最も後ろで溶出され、N-末端の位置異性体とLys12位置異性体との間に完全なピーク分離が可能であった。
【0122】
カラム:SOURCE Q(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→40%80分B(A:20mMトリスpH8.5、B:A + 0.5M NaCl)
【0123】
カラム:SOURCE S(XK 16ml、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0ml/分
勾配:A 0→100%50分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A + 0.5M KCl)
【0124】
<実施例3>:イミダゾ-アセチル(Imidazo-acetyl)エキセンディン-4(Lys27)-免疫グロブリンFc結合体の製造
イミダゾ-アセチルエキセンディン-4(CAエキセンディン-4、AP、米国)を用いて実施例2と同様の方法で3.4K PropionALD(2)PEGをCAエキセンディン-4のLysと反応させた。その後、二つのLys異性体ピークのうち、主な反応性が示され、かつ、N-末端異性体と明確に区分されている最も後方の異性体ピーク(Lys27位置異性体)を用いてカップリング反応を行った。前記ペプチドと前記免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質濃度を60mg/mlとし、4℃で20時間反応させた。反応は100mM K-P(pH6.0)及び還元剤である20mM SCBを添加した溶液で行った。前記カップリング反応の後、SOURCE Q 16ml及びSOURCE ISO 16mlを用いた2工程の精製は実施例2と同様で行った。HPLC逆相分析の結果、純度95.8%を示した。
【0125】
<実施例4>:エクス・ビボ(ex vivo)試験のためのヒト末梢血単核細胞(PBMC)の分離及びドナーの選別
ヒト末梢血単核細胞(peripheral blood mononuclear cells、PBMC)は、健康なドナーから採取した血液から24時間以内に分離した。供与血液はUK National Blood Transfusion Service(Addenbrooke◎Hospital、Cambridge、UK)から提供された。末梢血単核細胞は、 LymphoprepTM(Axis-shield、Dundee、Scotland)を用いた密度勾配遠心分離法により得られた白血球層(buffy coat)から分離した。このうち、CD8+T細胞は、CD8+RosetteSepTM(StemCell Technologies Inc、London、UK)を用いて除去された。各ドナーの末梢血単核細胞は、使用前まで液体窒素中に保管した。ドナーの細胞は、HLA SSP-PCR based tissue-typing kit(Biotest、Solihull、UK)を用いてHLA-DR半数体遺伝子型(haplotype)を鑑別した。T細胞の反応性は、インフルエンザA及びエプスタイン・バール・ウイルス(Epstein Barr virus)由来の抗原ペプチドであるKLH(Keyhole Limpet Haemocyanin、Pierce(Perbio)、Northumberland、UK)を用いて試験した。世界人口のHLA-DRタイプの頻度を代表する50人のドナーを選別して1つのコホート(cohort)で構成した。コホートを構成する各ドナーのMHC class II半数体遺伝子型とT細胞の反応性を表1に示し、ドナーの遺伝子型の頻度を世界の人口の頻度との比較結果を図1に示した。下記表1は、ドナー別のHLA-DR遺伝子型及び抗原ペプチドKLHに対するT細胞の反応性を示したものである。
【0126】
【表1】

【0127】
上記表1のボールドで表示された欄(ドナー17、18、27、30、及び50)は、供与細胞の解凍前後のKLHに対する反応性が有意に差を示したものである。
【0128】
<実施例5>:EpiScreenTM エクス・ビボ(ex vivo) T細胞増殖試験
代表的な生理活性タンパク質またはペプチドであるインスリン分泌ペプチドのペグ化位置に応じた免疫原性抑制メカニズムを確認するために、非結合天然型エキセンディン-4、非結合CAエキセンディン-4、CAエキセンディン-4のリジン残基にペグ化された連結体ペプチド(CAエキセンディン-4-PEG(inter))及び天然型エキセンディン-4のN-末端にペグ化された連結体ペプチド(エキセンディン-4-PEG(N-term))のT細胞増殖能を比較した。この時、CAエキセンディン-4はペグ化することができるN-末端残基を有していないため、CAエキセンディン-4に対してはN-末端ペグ化連結体を製造していなかった。
【0129】
T細胞の増殖試験のために、前記ドナーの末梢血単核細胞(PBMC)を解凍して細胞数と生存率を測定した。細胞は、AIM-V培地で4-6x106細胞/mlになるように希釈した。各ドナー細胞を24ウェル培養プレートに分注した後、試験試料を最終濃度50μg/mlになるように添加した(n=3)。各ドナー細胞に対する再現性の確認のために抗原ペプチドKLH処理群を準備して置いた。すべての試験群と対照群は、37℃、5%CO2の条件の培養器で8日間培養した。5、6、7、8日目にそれぞれ細胞の一部を取って、96ウェルの培養プレートに移して細胞増殖率を測定した。細胞増殖率の測定のためにウェル当り0.75μi[3H]-Thymidine(Perkin Elmer Buckinghamshire、UK)を添加して18時間培養した後、TomTec Mach III細胞回収器を利用して96ウェルのフィルタープレートに細胞を回収した。各ウェルの放射線活性度(cpm、count per minute)は1450 Microbeta Wallac Trilux Liquid Scintillation Counter(Perkin Elmer Buckinghamshire、UK)を用いて測定した。その結果、刺激指標(SI、stimulation index)の実験的閾値に基づいて2以上(SI≧2、p <0.05)の場合を陽性(P)と判定した。SI≧1.9に該当する境界値を含む場合には、別途表示(P*)した。その結果、CAエキセンディン-4及びエキセンディン-4に対してそれぞれ12%及び10%のドナーから陽性反応を確認した。しかし、前記ペプチドの内部残基にペグ化されたCAエキセンディン-4は、すべてのドナーから陰性と確認された。一方、N-末端にペグ化されたエキセンディン-4は、6%のドナーで陽性を示した。従って、N-末端よりペプチドの内部リジン残基にペグ化された場合、前記ペプチドの免疫原性は顕著に阻害される(表2)。表2は、T細胞の増殖及びインターロイキン-2(IL-2)分泌を示す。
【0130】
【表2】

【0131】
表3は、T細胞の増殖反応強度及び頻度(SI≧1.9境界値を含む)を示す。
【0132】
【表3】
【0133】
上記のような結果は、生理活性タンパク質またはペプチドの末端ではなく、内部残基に非ペプチド性ポリマー、特にPEGを連結した連結体の免疫原性が阻害されることを示唆するものである。
【0134】
<実施例6>: EpiScreenTM エクス・ビボ(ex vivo) インターロイキン-2(IL-2)分泌試験
代表的な生理活性タンパク質またはペプチドであるインスリン分泌ペプチドのペグ化位置に応じた免疫原性抑制メカニズムを確認するために、EpiScreenTM T細胞の増殖アッセイでの同じ試料及びドナー細胞を用いて、実施例5のペグ化されたエキセンディン-4及び非結合エキセンディン-4に対してインターロイキン-2分泌能を比較測定した。抗インターロイキン-2抗体(R&D Systems、Abingdon、UK)はELISpotプレート(Millipore、Herts、UK)に結合させた。前記プレートをPBS(phosphate-buffered saline)で3回洗浄した後、1%の牛血清アルブミンが補充されたPBSを添加して反応させた。AIM-V培養培地で洗浄した後、AIM-V培養培地で希釈(4-6x106細胞/ml)したドナー細胞を100μl/ウェルずつ分注した。最終濃度が50μg/mlになるように試験試料を50μlずつ添加した(n=6)。8日間培養した後、ELISpotプレートにビオチン標識されたインターロイキン-2検出抗体とストレプトアビジン-AP(R&D Systems、Abingdon、UK)を順次的に結合させた後、スポットを表現するためにBCIP/NBT((R&D Systems、Abingdon、UK)をプレートに添加した。蒸留水で洗浄して前記反応を終了させた後、プレートを乾燥させた。Immunoscan Analyserを使用し、ウェル当り生成されたスポット(spw、spots per well)をスキャンして分析した。前記エクス・ビボ(ex vivo)T細胞活性度の測定試験の結果は、刺激指標(SI、stimulation index)の実験的閾値に基づいて、2以上(SI≧2、p<0.05)の場合を陽性(E)と判定した。SI≧1.9に該当する境界値を含む場合には、別途表示(E*)した。その結果、CAエキセンディン-4及びエキセンディン-4に対してそれぞれ12%及び16%のドナーからの陽性反応が確認された。しかし、ペプチド内部残基にペグ化されたCAエキセンディン-4は、ドナーから2%のみであった。一方、N-末端にペグ化されたエキセンディン-4は、6%のドナーで陽性を示した。即ち、N-末端よりペプチドの内部リジン残基にペグ化された場合、前記ペプチドの免疫原性は顕著に阻害された(表2~4)。表4は、T細胞のインターロイキン-2の分泌反応の強度及び頻度(SI≧1.9境界値を含む)を示す。
【0135】
【表4】
【0136】
上記のような結果は、生理活性タンパク質またはペプチドの末端ではなく、内部残基に非ペプチド性ポリマー、特にPEGを連結した連結体の免疫原性が阻害されることを示唆するものである。
【0137】
<実施例7>:正常ラットにおける持続性インスリン分泌ペプチドに対する抗体生成試験
実施例3で製造したCAエキセンディン-4をPEGを介して免疫グロブリンFc断片に連結させた結合体を、正常のSprague Dawleyラットに週1回、26週間皮下投与し、その後、4週間を回復期間にした(n=40~60/群)。投与前と、投与中の13、19、26週目、回復期間終了時点でそれぞれ採血して血清を分離し、そこからインスリン分泌ペプチドに対する抗体の生成有無を測定した。
【0138】
その結果、薬物が投与された160の個体中、ただ二匹のみから13週目、回復期間後に、それぞれ抗体が検出された。しかし、この抗体は、薬物に対する中和抗体ではないことが確認された(表5)。表5は、ラット(SD Rat)における26週間投与による抗体の生成を示す。
【0139】
【表5】
【0140】
<実施例8>:カニクイザル(Cynomolgus monkey)における持続性インスリン分泌ペプチドに対する抗体生成試験
実施例3で製造したPEGを介してCAエキセンディン-4を免疫グロブリンFc断片に結合させた結合体を、カニクイザル(Cynomolgus monkey)に週1回、26週間皮下投与し、その後4週間回復期間にした(n=8~12/群)。投与前と、投与中の12、19、26週目及び回復期間終了時点でそれぞれ採血して血清を分離し、そこからインスリン分泌ペプチドに対する抗体の生成有無を測定した。その結果、すべての個体で抗体の生成は観察されなかった(表6)。表6は、カニクイザル(Cynomolgus monkey)における26週間投与による抗体の生成を示す。
【0141】
【表6】
【0142】
<実施例9>:血中抗薬物抗体の検出及び中和能の評価試験
実施例3の結合体がラットまたはカニクイザルの体内で抗薬物抗体(anti-drug antibody、ADA)を生成したかを検出するために、bridging ELISA法で調査した。ストレプトアビジン(streptavidin)が底部に結合された96ウェルマイクロプレートにビオチン化した実施例3の結合体を結合させた後、水で洗浄した。ジゴキシゲニン(digoxigenin、dig)-標識された実施例3の結合体(以下、HM11260C)をラットまたはサルの血清試料と共に添加して反応させた後、水で洗浄した。その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合された抗dig抗体(anti-DIG-POD antibody)を添加してTMB基質(3,3'、5,5'-Tetramethylbenzidine substrate)により発色した。ラット血清における測定感度は、3.1ng/ml、サル血清における測定感度は12.5ng/mlであった。検出された抗HM11260C抗体のHM11260Cに対する中和能を評価するために、ヒトGLP-1受容体を過発現させた細胞株(GLP-1R/CHO)に血清試料とHM11260Cを共に添加し、cAMP誘導能に対する抑制率を測定した。抗体は160匹のうちただ二匹で生成され、中和能がないことが確認した。
【0143】
前記のような結果は、生理活性タンパク質またはペプチドの免疫原性は生理活性タンパク質またはペプチドの末端以外の内部残基に非ペプチジルリンカー及びFc断片を結合させることにより低下し、そのため、目的のペプチドが抗原として作用するメカニズムを阻害する。前記結果は、前術した製造方法を使用する場合、動物におけるT細胞の活性化及び抗体産生反応が顕著に抑制されることを裏付けている。
【0144】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることがあることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
図1
【配列表】
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