(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】車両用撮影装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/02 20060101AFI20220817BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220817BHJP
H05B 3/84 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
B60S1/02 400A
B60R11/02 Z
H05B3/84
(21)【出願番号】P 2017238037
(22)【出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大路 健一
(72)【発明者】
【氏名】島田 斉嗣
(72)【発明者】
【氏名】芝田 和也
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 政孝
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206098(JP,A)
【文献】特開2017-061317(JP,A)
【文献】特開2007-121955(JP,A)
【文献】特開昭61-078465(JP,A)
【文献】特開2002-045781(JP,A)
【文献】特開2002-110322(JP,A)
【文献】特表2013-533754(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/02
B60S 1/60
B60R 1/00
B60R 11/02
H05B 3/84
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ガラスの車室内側に取り付けられ、車外を撮影するカメラと、
前記カメラのカメラレンズの前方に位置する前記車両ガラスに対し、間隔をおいて対向するように配置され、前記車両ガラスに向けて熱を放射するヒータと、
を含み、
前記ヒータは、
基板と、
面状に広がる電熱線を含む発熱体と、
熱伝導性が高い材料である金属で構成され、前記発熱体の前記車両ガラス側に配置され、前記発熱体からの熱によって加熱され、前記車両ガラス側に熱を放射する放熱体と、
を含み、
前記ヒータの前記放熱体の車両ガラス側にフードが配置され、
前記放熱体から放射される熱によって、前記車両ガラスを加熱
し、
前記発熱体は、前記基板の第1面上に配置され、前記放熱体は、前記基板の第2面上に配置される、
車両用撮影装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用撮影装置であって、
前記フードの車両ガラス側にフェルトが配置される、
車両用撮影装置。
【請求項3】
車両ガラスの車室内側に取り付けられ、車外を撮影するカメラと、
前記カメラのカメラレンズの前方に位置する前記車両ガラスに対し、間隔をおいて対向するように配置され、前記車両ガラスに向けて熱を放射するヒータと、
を含み、
前記ヒータは、
面状に広がる電熱線を含む発熱体と、
熱伝導性が高い材料である金属で構成され、前記発熱体の前記車両ガラス側に配置され、前記発熱体からの熱によって加熱され、前記車両ガラス側に熱を放射する放熱体と、
を含み、
前記ヒータの前記放熱体の車両ガラス側にフードが配置され、
前記放熱体から放射される熱によって、前記車両ガラスを加熱し、
前記電熱線を外部配線と接続する端子部を有し、前記端子部は、前記発熱体の側方であって、面状に広がる前記電熱線の外形より外に配置される、
車両用撮影装置。
【請求項4】
車両ガラスの車室内側に取り付けられ、車外を撮影するカメラと、
前記カメラのカメラレンズの前方に位置する前記車両ガラスに対し、間隔をおいて対向するように配置され、前記車両ガラスに向けて熱を放射するヒータと、
を含み、
前記ヒータは、
面状に広がる電熱線を含む発熱体と、
熱伝導性が高い材料である金属で構成され、前記発熱体の前記車両ガラス側に配置され、前記発熱体からの熱によって加熱され、前記車両ガラス側に熱を放射する放熱体と、
を含み、
前記ヒータの前記放熱体の車両ガラス側にフードが配置され、
前記放熱体から放射される熱によって、前記車両ガラスを加熱し、
前記放熱体と、前記フードは両面テープで固定される、
車両用撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、車両前方などの画像を車両ガラス越しに撮影する車両用撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前方画像などを撮影する撮影装置が車両に搭載される場合が増加している。撮影装置で得られた画像は、走行のガイド、走行状況の記録、衝突防止、自動走行などのために利用される。
【0003】
ここで、撮影装置は、例えばフロントガラスなどの車両ガラスの車室側に取り付けられる。車室内に配置することによって、雨風などの影響を受けることがなくなる。しかし、車両ガラスは結露によって曇り、撮影装置の前方視界が妨げられ撮影機能が低下してしまう場合がある。
【0004】
特許文献1には、車両ガラスを加熱するヒータを設け、撮影装置の前方の車両ガラスを加熱して、結露を防止することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、撮影装置の前方の車両ガラスをなるべく均一に加熱することが好適である。これによって、消費エネルギーを比較的小さくでき、また結露を解消するための時間を短くでき、さらにヒータを小型化できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用撮影装置は、車両ガラスの車室内側に取り付けられ、車外を撮影するカメラと、前記カメラのカメラレンズの前方に位置する前記車両ガラスに対し、間隔をおいて対向するように配置され、前記車両ガラスに向けて熱を放射するヒータと、を含み、前記ヒータは、基板と、面状に広がる電熱線を含む発熱体と、熱伝導性が高い材料である金属で構成され、前記発熱体の前記車両ガラス側に配置され、前記発熱体からの熱によって加熱され、前記車両ガラス側に熱を放射する放熱体と、を含み、前記ヒータの前記放熱体の車両ガラス側にフードが配置され、前記放熱体から放射される熱によって、前記車両ガラスを加熱し、前記発熱体は、前記基板の第1面上に配置され、前記放熱体は、前記基板の第2面上に配置される。
【0009】
また、前記フードの車両ガラス側にフェルトが配置されるとよい。また、本発明の一態様では、前記電熱線を外部配線と接続する端子部を有し、前記端子部は、前記発熱体の側方であって、面上に広がる前記電熱線の外形より外に配置される。また、本発明の一態様では、前記放熱体と、前記フードは両面テープで固定される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両ガラスを均一に加熱することができ、車両ガラス曇りを解消する性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る撮影装置の分解斜視図である。
【
図6】ヒータの他の実施形態の構成を示す図である。
【
図7】ヒータのさらに他の実施形態の構成を示す図である。
【
図8】ヒータのさらに他の実施形態の構成を示す図である。
【
図9】ヒータのさらに他の実施形態の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0013】
「全体構成」
図1は、実施形態に係る車両用撮影装置の全体構成を示す分解斜視図である。車両ガラス10は、例えば車両のフロントガラスである。車両ガラス10の車室側の表面上には、ブラケット12が取り付けられる。ブラケット12をフロントガラスに取り付ける場合、ドライバーの視界の妨げにならない位置、例えば、フロントガラスの上端近辺に取り付けることが好適である。
【0014】
ブラケット12は、車両ガラス10に貼り付けられるガラス側部分と、カメラを保持するために、ガラス側部分の両側から車室側に延びる一対の側部とを有する。ガラス側部分は、カメラの視野に該当する部分に開口部を有する。
【0015】
ブラケット12には、カメラ20が保持されるとともに、カメラ20の車室側を覆うように、固定具22が取り付けられる。すなわち、ブラケット12と固定具22によってカメラ20が保持される。
【0016】
また、カメラ20の撮影用のカメラレンズ前方の側方部分(車両ガラス10に対向する部分)には、面状に広がるヒータ18と、ヒータ18を覆うフード16と、フード16の表面に配置されるフェルト14が配置されている。
【0017】
「カメラ20の構成」
図2には、カメラ20の構成が示してある。
図1では、カメラ20を車室側から見たが、
図2では、車両ガラス10側から見ている。カメラ20は、略直方体形状のケース30を有する。ケースの表面側には、カメラレンズ32が露出している。このカメラレンズ32は、カメラ20が取り付けられた場合に車両の前方を向いており、カメラ20は車両ガラス10を介し、車両前方を撮影する。
【0018】
ケース30の前下方側には、前方に向けて広がる台形柱状に凹んだ凹部36が設けられている。従って、カメラ20のケース30の上面34は、前下方が開口する略U字状になっており、この上面34がガスケットに固定される。
【0019】
そして、凹部36の底面にヒータ18が配置され、その上にフード16、フェルト14が配置される。すなわち、ヒータ18は、車両ガラス10に対し間隔をおいて配置されている。フード16は、
図1に示すように、断面U字状で、底部がヒータ18に対応した台形状であり、一対の側壁が凹部36の側壁に対応する。フェルト14は、フード16の底部の上面(車両ガラス10側)に貼り付けられる。フェルト14は、車外から入射する光を乱反射したり、吸収したりして、散乱光がカメラレンズ32に入射することを防止する。
【0020】
「ヒータ18の構成」
図3には、ヒータ18の断面図、
図4には、ヒータ18の分解斜視図が示してある。このように、ヒータ18は複数材料を積層した構造を有する。基板としてのフィルム40は、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリイミドや、エポキシ樹脂などの耐熱性のプラスチックで形成される。このフィルム40の上には、発熱体42が配置される。発熱体42は、電熱線(例えばニクロム線)の配線パターンであり、電流を流すことで発熱する。この例では、ニクロム線を蛇行させてパターンが形成され、パターンの全体形状が台形状になっている。
【0021】
発熱体42の上には、保護基板としてのフィルム44が配置される。これによって、フィルム40,44で、発熱体42がサンドイッチされることになる。なお、フィルム44は、フィルム40と同じ材質でよい。
【0022】
発熱体42は、印刷またはエッチング等によりフィルム40上に形成するとよい。また、フィルム44によって、発熱体42の酸化/汚れ付着/傷付き等を防止している。
【0023】
そして、フィルム44の上には、熱伝導性のよい放熱体として、金属プレート46が配置される。金属は何でも構わないが、銅、アルミニウムなどが好適である。そして、金属プレート46の上に両面テープ48を介しフード16が配置される。これによって、金属プレート46がフード16に接着される。なお、熱伝導性がよいものであれば、エポキシ樹脂などの層を金属プレート46に代えてもよい。さらに、金属プレート46は、発熱体42の全体を覆ってもよいし、部分的に覆うものでもよい。
【0024】
このように、フード16の裏面(車室側)に金属プレート46を介しヒータ18を貼付けている。そして、カメラ20の前方視界範囲は、フード16の面積とほぼ一致している。従って、金属プレート46からの輻射熱により車両ガラス10の曇りが除去される。
【0025】
ここで、発熱体42は、抵抗値を所定のものとするため、細く長い引き回しが必要となり疎密の箇所ができてしまう。そのため、温度分布にムラができ、フード16表面の温度分布にも影響を及ぼしてしまう。本実施形態では、温度分布にムラがある発熱体42を直接フード16に貼り付けるのではなく、フード16と発熱体42との間に金属プレート46を配置している。従って、発熱体42からの熱をそのまま放射するのではなく、金属プレート46の加熱に用いている。従って、フード16は、疎密なパターンを有している発熱体42から熱を得るのではなく、熱分布/放射強度が均一化された金属プレート46から得る。金属プレート46は、熱伝導性がよく、従って全体として均一な温度になる。すなわち、金属プレート46は、1枚物のプレートであり、互いに異なった面区域または長さ区域を持たず、熱伝導性もよいため、単位面積当たりの熱分布/放射強度を同一にする役割を果たしており、均一に発熱する。
【0026】
そして、金属プレート46からの輻射熱が車両ガラス10に放射される。従って、金属プレート46からの均一な輻射熱による車両ガラス10の加熱が可能となる。言い替えれば、疎密パターンによる発熱体42は、金属プレート46を温めるための補助的な役割を果たすに過ぎず、従って発熱体42のパターンに疎密があっても、車両ガラス10のカメラ20の視野領域について均一な輻射熱を照射できる。
【0027】
「温度分布」
図5には、本実施形態に係るヒータ18と、金属プレート46を取り除いた比較例における温度分布の測定例(サーモグラフィー画像)を示す。このように、本実施形態では、金属プレート46の全範囲において均一な温度となっている。一方、比較例では、中心部と周辺部でかなりの温度差が生じている。
【0028】
「変形例」
図6は、実施形態に係る撮影装置についてのヒータ18であって、部品点数を減らした変形例の構成図である。
【0029】
この例では、ヒータ18の基板であるフィルム40の第1面に金属プレート46を形成し、第2面に発熱体42を形成している。これらは、導電性膜をスパッタや蒸着などで形成した後、両面エッチングで形成される。すなわち、第1面にはパターニングした発熱体42を形成し、第2面には温度分布均一化のための金属プレート46をパターニングしない全面パターンとして形成している。なお、発熱体42、金属プレート46ともにフィルム40に比べ若干小さめとして、周辺部分に金属のないスペースを形成するとよい。
【0030】
このような構造とすれば、金属プレート46、発熱体42をフィルム40に確実に固定することができる。特に、金属プレート46、発熱体42ともに、エッチング薄膜の厚さでよく、薄型化が可能になり、それにより熱伝導性も向上し、熱の均一化を図ることができる。また、フィルム40に金属プレート46、発熱体42を接着する必要がなく、例えば両面テープなどの接着部材が不要であり、部品点数の削減という効果も得られる。
【0031】
図7には、さらに他の実施形態が示してある。この例では、金属プレート46が省略されているが、フード16が金属(熱伝導性のよい材料)で形成されている。従って、フード16が金属プレート46と同様に熱の均一化を図る放熱体として機能する。
【0032】
図8には、さらに他の実施形態が示してある。この例では、金属プレート46が省略されているが、両面テープ48が熱伝導性のよい材料で形成されている。金属フィルムの両面に粘着材が配置されたものでもよいし、熱伝導性のよいプラスチックの両面に粘着材が配置されたものでもよい。従って、両面テープ48が金属プレート46と同様に熱の均一化を図る放熱体として機能する。
【0033】
図9には、さらに他の実施形態が示してある。この例では、発熱体42が一方の面上に形成されたフィルム40の他面上にヒューズ50が配置される。ヒューズ50は、発熱体42の温度が所定以上になった場合に、溶融破断するものであり、その溶融破断部分およびその配線が発熱体42からの熱を受ける、発熱体42に比較的近い場所に配置されている。また、電源に接続される外部配線52に対し、ヒューズ50と発熱体42が直列接続され、電源からの電流がヒューズ50と発熱体42に流れる。図示の例では、外部配線52の一方が、発熱体42の側方にある端子部54において、発熱体42の一端に接続される。また、発熱体42の他端が端子部54において、ヒューズ50の一端に接続され、ヒューズ50の他端が、端子部54において外部配線52の他方に接続されている。なお、端子部54における導体同士の接続はカシメにより行われるとよい。
【0034】
このような構成では、ヒューズ50およびそのための配線に発熱体42の熱が吸収されるため、該当部分が周りに比べて温度が低くなる傾向にある。従って、均一な加熱の障害となる。しかし、本実施形態では、金属プレート46が発熱体42と車両ガラス10との間に存在する。従って、金属プレート46が均一な温度となり、車両ガラス10を均一に加熱することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 車両ガラス、12 ブラケット、14 フェルト、16 フード、18 ヒータ、20 カメラ、22 固定具、30 ケース、32 カメラレンズ、34 上面、36 凹部、40,44 フィルム、42 発熱体、46 金属プレート、48 両面テープ、50 ヒューズ、52 外部配線、54 端子部。