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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/725 20060101AFI20220817BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220817BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220817BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220817BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220817BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220817BHJP
   G16B 30/00 20190101ALI20220817BHJP
【FI】
C07K14/725 ZNA
A61K35/17 Z
A61K38/17
A61P37/02
A61P43/00 105
C12N5/10
C12N15/12
C12P21/02 C
G16B30/00
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2017554583
(86)(22)【出願日】2016-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 GB2016051084
(87)【国際公開番号】W WO2016170320
(87)【国際公開日】2016-10-27
【審査請求日】2019-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】1506642.6
(32)【優先日】2015-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507299817
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュタウス, ハンス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, シャリン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルコックス, ベン
(72)【発明者】
【氏名】モハメド, フィヤズ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】宮岡 真衣
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/206304(WO,A1)
【文献】特表2012-531904(JP,A)
【文献】特表2013-535199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0341809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
C12P
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせ
のうちの少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基を含む操作されたT細胞受容体(TCR)であって、
該少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在せず、該操作されたTCRは、細胞において発現された場合に、生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRと比較して、より高いレベルの細胞表面発現を有し、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる、操作されたT細胞受容体(TCR)。
【請求項2】
α鎖のL96を含む、請求項1に記載の操作されたTCR。
【請求項3】
β鎖のR9およびY10の組み合わせを含む、請求項1または請求項2に記載の操作されたTCR。
【請求項4】
α鎖のT24を含む、請求項1に記載の操作されたTCR。
【請求項5】
請求項1に記載の複数のアミノ酸残基を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の操作されたTCR。
【請求項6】
α鎖のV19;β鎖のV19;α鎖のS7またはα鎖のM11をさらに含む、請求項5に記載の操作されたTCR。
【請求項7】
α鎖のL96;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含む、請求項5に記載の操作されたTCR。
【請求項8】
α鎖のV19;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含む、請求項5に記載の操作されたTCR。
【請求項9】
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;およびβ鎖のR43の各々を含む、請求項1から8のいずれかに記載の操作されたTCR。
【請求項10】
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;およびα鎖のS86の各々を含む、請求項1から9のいずれかに記載の操作されたTCR。
【請求項11】
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
の各々を含む、請求項1から10のいずれかに記載の操作されたTCR。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のTCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする核酸配列。
【請求項13】
内部自己切断性配列または内部リボソーム進入部位によって連結された、α鎖をコードする核酸配列およびβ鎖をコードする核酸配列を含む、請求項12に記載の核酸配列。
【請求項14】
請求項12または13に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項15】
レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはトランスポゾンである、請求項14に記載のベクター。
【請求項16】
請求項12もしくは13に記載の核酸配列または請求項14もしくは15に記載のベクターを含む細胞。
【請求項17】
T細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞である、請求項16に記載の細胞。
【請求項18】
被験体から単離されたT細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞に由来する、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
請求項14もしくは15に記載のベクターまたは請求項1から11のいずれかに記載のTCRを発現する細胞を含む医薬組成物。
【請求項20】
疾患を処置および/または予防する際の使用のための、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
疾患を処置および/または予防するための医薬の製造における使用のための、請求項14もしくは15に記載のベクターまたは請求項16から18のいずれかに記載の細胞を含む組成物。
【請求項22】
疾患を処置するための組成物であって、請求項16から18のいずれかに記載の細胞を含み、該組成物が、被験体に投与されることを特徴とする、組成物。
【請求項23】
細胞を、請求項14または15に記載のベクターでin vitroまたはex vivoで形質導入するステップを含む、請求項16から18のいずれかに記載の細胞を産生するための方法。
【請求項24】
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;
(ii)α鎖の96位;α鎖の24位;α鎖の19位;α鎖の20位;α鎖の5位;α鎖の8位;α鎖の86位;およびβ鎖の9位とβ鎖の10位の各々から選択される1または複数の位置において、該TCRのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸残基を決定するステップ;ならびに
(iii)ステップ(ii)に列挙した位置のうちの1または複数におけるアミノ酸残基を、α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせから選択されるアミノ酸残基に変更するステップ
を含む、TCRの細胞表面発現をin vitroで増加させるための方法であって、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の複数のアミノ酸残基を含むようにTCRアミノ酸配列を変更するステップを含む、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
【請求項26】
前記TCRアミノ酸が、請求項1から11のいずれかに記載の1または複数のアミノ酸残基を含むように変更される、請求項24または25に記載のTCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
【請求項27】
前記TCRアミノ酸配列が、前記TCRをコードする核酸配列の変異誘発によって変更される、請求項24から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;ならびに
(ii)α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせから選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む、高発現TCRを選択するための方法であって、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる、方法。
【請求項29】
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;および
(ii)請求項28に記載の複数のアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む、高発現TCRを選択するための方法。
【請求項30】
ステップ(ii)において選択された前記TCRアミノ酸配列が、請求項1から11のいずれかに記載の1または複数のアミノ酸残基を含む、請求項28または29に記載の高発現TCRを選択するための方法。
【請求項31】
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;ならびに
(ii)該TCR配列が、α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせから選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むかどうかを決定するステップ
を含み;
列挙されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを含む配列が、高発現TCRであると決定され、列挙されたアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含まない配列が、低発現TCRであると決定される、TCRの強度を決定するための方法であって、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる、方法。
【請求項32】
コンピュータープログラムが非一時的様式で記憶され、該プログラムが処理デバイス上で実行された場合に、請求項28から31のいずれかに記載の方法を該処理デバイスに実施させる、コンピュータープログラム。
【請求項33】
以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせ
のうちの少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基を含む操作されたTCRであって、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされ、該少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在しない、操作されたTCR;請求項1から11のいずれかに記載の操作されたTCR、該操作されたTCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする核酸配列;あるいは該操作されたTCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする該核酸配列を含むベクターの、該TCRの細胞表面発現を増加させるための使用。
【請求項34】
ヒト被験体から単離された細胞であって、以下の残基:
α鎖のL96;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;およびβ鎖のR9とβ鎖のY10の組み合わせ
のうちの少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基を含む操作されたTCRをコードする核酸配列またはベクターで形質導入されており、該少なくとも1つの変更されたアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在せず、該操作されたTCRは、細胞において発現された場合に、生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRと比較して、より高いレベルの細胞表面発現を有し、該アミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる、細胞。
【請求項35】
疾患の処置および/または予防の際の使用のための組成物であって、請求項34に記載の細胞を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞受容体(TCR)に関する。特に、本発明は、対応する生殖系列TCR配列と比較して、外因性TCRとして発現された場合に高レベルの細胞表面発現を有する操作されたTCRに関する。本発明は、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞受容体(TCR)遺伝子治療は、レシピエントT細胞中への抗原特異的TCR鎖の移入であり、こうすることでTリンパ球の特異性を目的の標的抗原へと再指向化させる。
【0003】
導入されたTCRは、細胞表面上で発現されるそれらの能力が大きく異なる。導入された強く発現されるTCRは、内因性TCRと共発現される、または細胞表面発現について内因性TCRを打ち負かしさえし得る。導入された弱く発現されるTCRは、内因性の強いTCRと共発現される場合、細胞表面には存在しない(図1)。
【0004】
T細胞表面上の抗原特異的TCRの高レベルの発現は、治療的TCR治療の効力にとって有益な、T細胞のより高いアビディティを生じる。
【0005】
したがって、弱く発現されるTCRの細胞表面発現を増加させる方法およびアプローチが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要の局面
本発明者らは、TCR細胞表面発現を増強するTCRフレームワーク領域内のいくつかの重要なアミノ酸位置および残基を決定した。
【0007】
したがって、第1の態様では、本発明は、以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
のうちの少なくとも1つを含む操作されたTCRであって、
該少なくとも1つのアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在しない、操作されたTCRを提供する。
【0008】
前記少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;および
β鎖のR43
のリストから選択され得る。
【0009】
操作されたTCRは、α鎖のL96を含み得る。
【0010】
操作されたTCRは、β鎖のR9を含み得る。
【0011】
操作されたTCRは、β鎖のY10を含み得る。
【0012】
操作されたTCRは、α鎖のT24を含み得る。
【0013】
操作されたTCRは、本発明の第1の態様に規定される複数のアミノ酸残基を含み得る。
【0014】
操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含み得る。
【0015】
操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101の各々を含み得る。
【0016】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様によって規定されるTCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする核酸配列を提供する。
【0017】
核酸配列は、内部自己切断性配列または内部リボソーム進入部位によって連結された、α鎖をコードする核酸配列およびβ鎖をコードする核酸配列を含み得る。
【0018】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による核酸配列を含むベクターを提供する。
【0019】
ベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはトランスポゾンであり得る。
【0020】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様による核酸配列または本発明の第3の態様によるベクターを含む細胞を提供する。
【0021】
細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞であり得る。
【0022】
細胞は、被験体から単離されたT細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞に由来し得る。
【0023】
第5の態様では、本発明は、以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
のうちの少なくとも1つを含むTCRを発現する細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0024】
細胞は、本発明の第1の態様で規定される複数のアミノ酸残基を含むTCRを発現し得る。
【0025】
細胞は、本発明の第1の態様によって規定される操作されたTCRを発現し得る。
【0026】
第6の態様では、本発明は、疾患を処置および/または予防する際の使用のための、本発明の第5の態様に従う医薬組成物に関する。
【0027】
第7の態様では、本発明は、疾患を処置および/または予防するための医薬の製造における使用のための、本発明の第3の態様に従うベクターまたは本発明の第4の態様に従う細胞を提供する。
【0028】
第8の態様では、本発明は、本発明の第4の態様に従う細胞を被験体に投与するステップを含む、疾患を処置するための方法に関する。
【0029】
第9の態様では、本発明は、細胞を、本発明の第3の態様に従うベクターでin vitroまたはex vivoで形質導入するステップを含む、本発明の第4の態様に従う細胞を産生するための方法に関する。
【0030】
第10の態様では、本発明は、
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;
(ii)α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される1または複数の位置において、TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列のアミノ酸残基を決定するステップ;ならびに
(iii)ステップ(ii)に列挙した1または複数の位置におけるアミノ酸残基を、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択されるアミノ酸残基に変更するステップ
を含む、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法を提供する。
【0031】
この方法は、本発明の第1の態様で規定される複数のアミノ酸残基を含むようにTCRアミノ酸配列を変更するステップを含み得る。
【0032】
TCRアミノ酸配列は、前記TCRをコードする核酸配列の変異誘発によって変更され得る。
【0033】
第11の態様では、本発明は、
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;ならびに
(ii)α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む、高発現TCRを選択するための方法に関する。
【0034】
この方法は、本発明の第11の態様で規定される複数のアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップを含み得る。
【0035】
第12の態様では、本発明は、
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;ならびに
(ii)該TCR配列が、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むかどうかを決定するステップ
を含み;
列挙されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを含む配列が、高発現TCRであると決定され、列挙されたアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含まない配列が、低発現TCRであると決定される、TCRの強度を決定するための方法を提供する。
【0036】
第13の態様では、本発明は、コンピュータープログラムが非一時的様式で記憶され、該プログラムが処理デバイス上で実行された場合に、本発明の第12の態様の方法を該処理デバイスに実施させる、コンピュータープログラム製品を提供する。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、TCRの細胞表面発現を増加させるための、本発明の操作されたTCR;核酸配列またはベクターの使用を提供する。
【0038】
弱く発現されるTCRにおける、重要なアミノ酸残基による置換は、大きく改善された発現を生じることが実証された。「弱い」残基を本発明によって規定される「強い」アミノ酸残基で置き換えるための、個々の重要な残基の単一のアミノ酸置換、ならびにある範囲のアミノ酸置換組合せは、TCR発現を増加させたこともまた実証された。
【0039】
アミノ酸の変化は、変異誘発、例えばPCR変異誘発によって、経済的に、迅速にかつ効率的に達成され得る。TCR細胞表面発現を増加させるこの方法は、TCRによるペプチド/MHC認識を妨害せず、TCRの折り畳みにも構造にも影響を与えない。したがって、TCR発現は、TCR構造に対する最小限の影響を伴って増加される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
のうちの少なくとも1つを含む操作されたT細胞受容体(TCR)であって、
該少なくとも1つのアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在しない、操作されたT細胞受容体(TCR)。
(項目2)
前記少なくとも1つのアミノ酸残基が、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;または
β鎖のR43
から選択される、項目1に記載の操作されたTCR。
(項目3)
α鎖のL96を含む、項目1に記載の操作されたTCR。
(項目4)
β鎖のR9を含む、項目1に記載の操作されたTCR。
(項目5)
β鎖のY10を含む、項目1に記載の操作されたTCR。
(項目6)
α鎖のT24を含む、項目に記載の操作されたTCR。
(項目7)
項目1または項目2に記載の複数のアミノ酸残基を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の操作されたTCR。
(項目8)
α鎖のL96;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含む、項目7に記載の操作されたTCR。
(項目9)
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α
鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
の各々を含む、先行する項目のいずれかに記載の操作されたTCR。
(項目10)
先行する項目のいずれかに記載のTCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする核酸配列。
(項目11)
内部自己切断性配列または内部リボソーム進入部位によって連結された、α鎖をコードする核酸配列およびβ鎖をコードする核酸配列を含む、項目10に記載の核酸配列。
(項目12)
項目10または11に記載の核酸配列を含むベクター。
(項目13)
項目12に記載のレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはトランスポゾン。
(項目14)
項目10もしくは11に記載の核酸配列または項目12もしくは13に記載のベクターを含む細胞。
(項目15)
T細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞である、項目14に記載の細胞。
(項目16)
被験体から単離されたT細胞、ナチュラルキラー細胞または幹細胞に由来する、項目15に記載の細胞。
(項目17)
以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
のうちの少なくとも1つを含むTCRを発現する細胞を含む医薬組成物。
(項目18)
項目1から9のいずれかに記載のTCRを発現する細胞を含む医薬組成物。
(項目19)
疾患を処置および/または予防する際の使用のための、項目17または18に記載の医薬組成物。
(項目20)
疾患を処置および/または予防するための医薬の製造における使用のための、項目12もしくは13に記載のベクターまたは項目14から16のいずれかに記載の細胞。
(項目21)
項目14から16のいずれかに記載の細胞を被験体に投与するステップを含む、疾患を処置するための方法。
(項目22)
細胞を、項目12または13に記載のベクターでin vitroまたはex vivoで形質導入するステップを含む、項目14から16のいずれかに記載の細胞を産生するための方法。
(項目23)
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;
(ii)α鎖の96位;β鎖の9位;β鎖の10位;α鎖の24位;α鎖の19位;α鎖の20位;α鎖の50位;α鎖の5位;α鎖の8位;α鎖の86位;α鎖の39位;α鎖の55位;β鎖の43位;α鎖の66位;β鎖の19位;β鎖の21位;β鎖の103位;α鎖の3位;α鎖の7位;α鎖の9位;α鎖の11位;α鎖の16位;α鎖の18位;α鎖の21位;α鎖の22位;α鎖の26位;α鎖の40位;α鎖の47位;α鎖の48位;α鎖の49位;α鎖の51位;α鎖の52位;α鎖の53位;α鎖の67位;α鎖の68位;α鎖の74位;α鎖の76位;α鎖の79位;α鎖の81位;α鎖の83位;α鎖の90位;α鎖の92位;α鎖の93位;およびα鎖の101位から選択される1または複数の位置において、該TCRのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸残基を決定するステップ;ならびに
(iii)ステップ(ii)に列挙した位置のうちの1または複数におけるアミノ酸残基を、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択されるアミノ酸残基に変更するステップ
を含む、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
(項目24)
項目23に記載の複数のアミノ酸残基を含むようにTCRアミノ酸配列を変更するステップを含む、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
(項目25)
前記TCRアミノ酸が、項目1から9のいずれかに記載の1または複数のアミノ酸残基を含むように変更される、項目23または24に記載のTCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
(項目26)
前記TCRアミノ酸配列が、前記TCRをコードする核酸配列の変異誘発によって変更される、項目23から25のいずれかに記載の方法。
(項目27)
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;ならびに
(ii)α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む、高発現TCRを選択するための方法。
(項目28)
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;および
(ii)項目27に記載の複数のアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む、高発現TCRを選択するための方法。
(項目29)
ステップ(ii)において選択された前記TCRアミノ酸配列が、項目1から9のいずれかに記載の1または複数のアミノ酸残基を含む、項目27または28に記載のTCRの細胞表面発現を増加させるための方法。
(項目30)
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;ならびに
(ii)該TCR配列が、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むかどうかを決定するステップ
を含み;
列挙されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを含む配列が、高発現TCRであると決定され、列挙されたアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含まない配列が、低発現TCRであると決定される、TCRの強度を決定するための方法。
(項目31)
コンピュータープログラムが非一時的様式で記憶され、該プログラムが処理デバイス上で実行された場合に、項目27から30のいずれかに記載の方法を該処理デバイスに実施させる、コンピュータープログラム製品。
(項目32)
項目1から9のいずれかに記載の操作されたTCRの細胞表面発現を増加させるための、該TCR;項目10もしくは11に記載の核酸配列または項目12もしくは13に記載のベクターの使用。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】A)内因性TCRもまた発現する細胞における弱い外因性TCRおよび強い外因性TCRの描写。B)TCRα鎖およびTCRβ鎖の模式図 - SP:シグナルペプチド;FR:フレームワーク領域;CDR:相補性決定領域;IG:C領域の免疫グロブリン様ドメイン;CP:接続ペプチド;TM:膜貫通ドメイン;IC:細胞内ドメイン。
【0041】
図2】TCR優位を示す改変されたWT1 TCRで形質導入された初代T細胞。
【0042】
図3】強い内因性TCRおよび弱い内因性TCRのTCRクロノタイピング。 表中には、(i)配列決定した強いおよび弱いアルファおよびベータ可変セグメントの総数、ならびに(ii)各集団内の可変セグメントの各々の総数と共に、強い内因性TCR集団または弱い内因性TCR集団のいずれかにおいて優位を示すアルファ可変セグメントおよびベータ可変セグメントが示される。アルファセグメントおよびベータセグメントは、IMGT命名法を使用して分類されている。
【0043】
図4】一般的な強発現TCRおよび弱発現TCRの特徴を評価するために使用した構築物の図。
【0044】
図5】非競合的環境(TCRなしのJurkat細胞)における強いTCRおよび弱いTCRの発現。
【0045】
図6】競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)における強いTCRおよび弱いTCRの発現。
【0046】
図7-1】低、中間および高発現の改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞における強いTCRおよび弱いTCRの発現。
図7-2】低、中間および高発現の改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞における強いTCRおよび弱いTCRの発現。
【0047】
図8】強発現TCRおよび弱発現TCRのバイオインフォマティクス分析。A)クロノタイピングからの配列決定情報を使用して、配列決定した全ての強いTCRおよび弱いTCRについて、各位置における全ての残基を比較した。TCRアラインメント後、弱いTCRと比較して、強いTCR中の特定の位置における高い出現率を有した残基が、一例としてTRAV38-1を使用して図中に示される()。B)強いTCR可変セグメントおよび弱いTCR可変セグメントの予測された3D構造の分析。
【0048】
図9】非競合的環境(TCRを発現しないJurkat細胞)および競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)の両方において強発現TCRおよび弱発現TCRを逆転させる、全ての同定された重要な残基の変異。
【0049】
図10-1】個々の重要な残基の変更は、非競合的環境(TCRを発現しないJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図10-2】個々の重要な残基の変更は、非競合的環境(TCRを発現しないJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図10-3】個々の重要な残基の変更は、非競合的環境(TCRを発現しないJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図10-4】個々の重要な残基の変更は、非競合的環境(TCRを発現しないJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
【0050】
図11-1】個々の重要な残基の変更は、競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図11-2】個々の重要な残基の変更は、競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図11-3】個々の重要な残基の変更は、競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
図11-4】個々の重要な残基の変更は、競合的環境(WT1ハイブリッドTCRを発現するJurkat細胞)における外因性TCRの発現レベルに影響を与える。
【0051】
図12】一部の実施形態を提供またはサポートするために使用される汎用計算デバイス。
【0052】
図13-1】TCRなしのJurkat細胞(A)および改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞(B)を、示されたTCRをコードするpMP71レトロウイルスで形質導入した。形質導入の72時間後、細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体、抗Mycタグ抗体および抗マウス定常ベータTCR抗体で染色した。細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現を決定した。V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現のMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した。(C)TCRなしのJurkat細胞についてのV5タグおよびMycタグのMFI。(D)改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞についてのV5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRのMFI。
図13-2】TCRなしのJurkat細胞(A)および改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞(B)を、示されたTCRをコードするpMP71レトロウイルスで形質導入した。形質導入の72時間後、細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体、抗Mycタグ抗体および抗マウス定常ベータTCR抗体で染色した。細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現を決定した。V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現のMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した。(C)TCRなしのJurkat細胞についてのV5タグおよびMycタグのMFI。(D)改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞についてのV5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRのMFI。
【0053】
図14】L96α、R9βおよびY10βへの可変ドメイン残基の変化は、Jurkat細胞におけるCMVおよびWT1 TCR発現を改善する。
【0054】
図15】L96α、R9βおよびY10βへの可変ドメイン残基の変化は、抗原特異的サイトカイン産生を改善する。
【0055】
図16】L96α、R9βおよびY10βへの可変ドメイン残基の変化は、抗原特異的サイトカイン産生を改善する。
【0056】
図17-1】良好に発現されるTCRおよび不十分に発現されるTCRで形質導入された細胞は、類似の量のTCR mRNAを含有する。
図17-2】良好に発現されるTCRおよび不十分に発現されるTCRで形質導入された細胞は、類似の量のTCR mRNAを含有する。
図17-3】良好に発現されるTCRおよび不十分に発現されるTCRで形質導入された細胞は、類似の量のTCR mRNAを含有する。
【0057】
図18】TCR発現へのTCRアルファ対TCRベータの寄与。
【発明を実施するための形態】
【0058】
T細胞受容体
抗原プロセシングの間に、抗原は、細胞の内側で分解され、次いで、主要組織適合複合体(major histocompatability complex)(MHC)分子によって細胞表面に運搬される。T細胞は、抗原提示細胞の表面におけるこのペプチド:MHC複合体を認識することができる。異なる細胞区画から細胞表面にペプチドを送達する、2つの異なるクラスのMHC分子、MHC IおよびMHC IIが存在する。
【0059】
T細胞受容体またはTCRは、MHC分子に結合した抗原の認識を担う、T細胞の表面上に見出される分子である。TCRヘテロダイマーは、T細胞の95%ではα鎖およびβ鎖からなり、T細胞の5%は、γ鎖およびδ鎖からなるTCRを有する。
【0060】
TCRが抗原およびMHCと結合すると、関連する酵素、共受容体および固有アクセサリー分子によって媒介される一連の生化学的事象を介して、そのTリンパ球の活性化を生じる。
【0061】
TCRの各鎖は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、1つのN末端免疫グロブリン(Ig)可変(V)ドメイン、1つのIg定常(C)ドメイン、1つの膜貫通/細胞膜貫通領域、およびC末端における1つの短い細胞質テイルを有する(図1B)。
【0062】
TCRのα鎖およびβ鎖の両方の可変ドメインは、3つの超可変領域または相補性決定領域(CDR)を有する。CDR3は、処理された抗原の認識を担う主要なCDRであるが、アルファ鎖のCDR1もまた、抗原性ペプチドのN末端部分と相互作用することが示されており、ベータ鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用する。CDR2は、MHC分子を認識すると考えられている。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に位置する。これらの領域は、TCR可変領域の構造を提供する。
【0063】
TCR可変領域のレパートリーは、可変(V)遺伝子、連結(joining)(J)遺伝子および多様性(D)遺伝子のコンビナトリアル連結によって;ならびにN領域多様化(酵素デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによって挿入されたヌクレオチド)によって生成される。
【0064】
α鎖およびγ鎖は、VセグメントとJセグメントとの間の組換え事象から形成される。β鎖およびδ鎖は、V、DおよびJセグメントが関与する組換え事象から形成される。
【0065】
TCRδ遺伝子座もまた含むヒトTCRα遺伝子座は、第14染色体上に位置する(14q11.2)。TCRβ遺伝子座は、第7染色体上に位置する(7q34)。TCRα鎖の可変領域は、46の異なるVα(可変)セグメントのうちの1つと58のJα(連結)セグメントのうちの1つとの間での組換えによって形成される(Koopら;1994年;Genomics;19巻:478~493頁)。TCRβ鎖の可変領域は、54のVβセグメントと、14のJβセグメントと、2つのDβ(多様性)セグメントとの間での組換えから形成される(Rowenら;1996年;Science;272巻:1755~1762頁)。
【0066】
各TCR鎖遺伝子座についてのVおよびJ(および適宜D)遺伝子セグメントが同定されており、各遺伝子の生殖系列配列が公知であり、アノテーションされている(例えば、ScavinerおよびLefranc;2000年;Exp Clin Immunogenet;17巻:83~96頁ならびにFolchおよびLefranc;2000年;Exp Clin Immunogenet;17巻:42~54頁を参照のこと)。
【0067】
α鎖のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3およびCDR3は、Vα遺伝子によってコードされる。FR4は、Jα遺伝子によってコードされる(図1B)。
【0068】
β鎖のFR1、CRD1、FR2、CDR2およびFR3は、Vβ遺伝子によってコードされる。CDR3はDβ遺伝子によってコードされ、FR4はJβ遺伝子によってコードされる(図1B)。
【0069】
各可変遺伝子の生殖系列配列は当該分野で公知である(ScavinerおよびLefranc;上記ならびにFolchおよびLefranc;上記を参照のこと)ので、特定のTCRのVαおよび/またはVβが配列決定され得、TCRにおいて利用される生殖系列Vセグメントが同定され得る(例えば、Hodgesら;2003年;J Clin Pathol;56巻:1~11頁、Zhouら;2006年;Laboratory Investigation;86巻;314~321頁を参照のこと)。
【0070】
TCRドメインの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成して2つの鎖間の連結(link)を形成する、短い連結配列(connecting sequence)からなる。本発明のTCRは、TCRが定常ドメイン中に2つのジスルフィド結合を含むように、α鎖およびβ鎖の各々中に追加のシステイン残基を有し得る(以下を参照のこと)。
【0071】
この構造により、TCRが、哺乳動物における3つの別個の鎖(γ、δおよびε)を有するCD3、およびζ鎖などの他の分子と会合することが可能になる。これらのアクセサリー分子は、負に荷電した膜貫通領域を有し、TCRからのシグナルを細胞中に伝播するために重要である。CD3鎖およびζ鎖は、TCRと一緒になって、T細胞受容体複合体として公知の構造を形成する。
【0072】
T細胞複合体からのシグナルは、特異的共受容体によるMHC分子の同時結合によって増強される。ヘルパーT細胞上では、この共受容体はCD4(クラスII MHCに対して特異的)であり;細胞傷害性T細胞上では、この共受容体はCD8(クラスI MHCに対して特異的)である。共受容体は、抗原に対するTCRの特異性を保証するだけでなく、抗原提示細胞とT細胞との間の長期にわたる結合を可能にし、活性化されたTリンパ球のシグナル伝達に関与する細胞の内側の重要な分子(例えば、LCK)を動員する。
【0073】
したがって、用語「T細胞受容体」は、従来の意味において、MHC分子によって提示された場合にペプチドを認識することが可能な分子を意味するために使用される。この分子は、2つの鎖αおよびβ(または任意選択でγおよびδ)のヘテロダイマーであり得、または単鎖TCR構築物であり得る。
【0074】
本発明は、かかるT細胞受容体由来のα鎖またはβ鎖もまた提供する。
【0075】
本発明のTCRは、1つよりも多い種に由来する配列を含むハイブリッドTCRであり得る。例えば、マウスTCRは、ヒトTCRよりも、ヒトT細胞において効率的に発現されることが見出されたことが、驚くべきことに見出された。したがって、TCRは、ヒト可変領域およびマウス定常領域を含み得る。このアプローチの短所は、マウス定常配列が免疫応答を引き起こして、移入されたT細胞の拒絶をもたらし得ることである。しかし、養子T細胞治療のために患者を準備するために使用されるコンディショニングレジメンは、マウス配列を発現するT細胞の生着を可能にするのに十分な免疫抑制を生じ得る。
【0076】
本発明の第1の態様に従う操作されたTCRは、生殖系列Vα遺伝子またはVβ遺伝子によってはコードされない、本明細書で規定される少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。言い換えると、本発明の操作されたTCRは、本明細書に記載される位置のうちの1または複数において変更されたアミノ酸残基を含むα鎖および/またはβ鎖を含み、変更されたアミノ酸残基アミノ酸は、変更されていない生殖系列Vα遺伝子またはVβ遺伝子によってコードされる対応するα鎖および/またはβ鎖と比較して、本明細書で規定される残基である。
【0077】
本明細書で同定されたアミノ酸残基は、International ImMunoGeneTics information system(IMGT)に従って番号付けされる。この系は、当該分野で周知であり(Lefranceら;2003年;Dev Comp Immunol;27巻:55~77頁)、可変領域の構造の高い保存に基づいている。この番号付けは、FRおよびCDRの定義、X線回折研究からの構造データならびに超可変ループの特徴付けを考慮に入れ、これらを組み合わせる。
【0078】
FR領域およびCDR領域の限界は、IGMT番号付け系内で定義される。FR1領域は、23位における第1のCYSを伴って、1~26位(V-GENE群または下位群に依存して25~26アミノ酸)を含む。FR2領域は、41位における保存されたTRPを伴って、39~55位(16~17アミノ酸)を含む。FR3領域は、89位における保存された疎水性アミノ酸および104位における第2のCYSを伴って、66~104位(VGENE群または下位群に依存して36~39アミノ酸)を含む。IGMT番号付け系の残基1は、FR1中の最初の残基である。IGMT番号付け系の残基104は、FR3中の最後の残基である。
【0079】
このように、本明細書で使用される番号付け系は、適宜、α鎖全体またはβ鎖全体内のアミノ酸の位置を指す。
【0080】
したがって、IGMT番号付けは、TCR可変領域内のアミノ酸位置の標準化された記載、および生殖系列コードされた配列との比較の実施を可能にする。
【0081】
本発明の第1の態様に従う操作されたTCRを生成するために適切な方法は、当該分野で公知である。
【0082】
例えば、変異誘発が、TCRをコードする核酸配列中の特定のヌクレオチドを変更するために実施され得る。かかる変異誘発は、TCRが本発明に従うアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを含むように、TCRのアミノ酸配列を変更する。
【0083】
変異誘発法の一例は、Quikchange法である(Papworthら;1996年;Strategies;9巻(3号);3~4頁)。この方法は、高忠実度非鎖置換(high-fidelity non-strand-displacing)DNAポリメラーゼ、例えばpfuポリメラーゼを使用するサーモサイクリング反応において鋳型核酸配列を増幅するための相補的変異原性プライマー対の使用を伴う。
【0084】
本発明者らは、TCRフレームワーク領域の特定の位置における特定のアミノ酸残基の存在が、TCRの細胞表面発現を変更することを決定している。
【0085】
本明細書で使用する場合、細胞表面発現は、発現の強度と同義である。このように、「強い」または「高い」発現は、TCRの高レベルの細胞表面発現と等価である。「弱い」または「低い」発現は、TCRの低レベルの細胞表面発現と等価である。
【0086】
TCRの細胞表面発現を増加させるとは、本発明に従う少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRが、生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRと比較して、より高いレベルの細胞表面発現を有することを意味する。生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRとは、本発明に従うアミノ酸残基を含むように改変されていないTCRを指す、即ち、変更されていないTCRは、特定の位置において野生型アミノ酸残基を有する。
【0087】
一実施形態では、本発明の操作されたTCRは、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRよりも、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍大きい細胞表面発現を有し得る。
【0088】
TCRの細胞表面発現は、当該分野で公知の方法によって決定され得る。例えば、TCRの細胞表面発現は、当該分野で公知の従来のフローサイトメトリー法を使用して決定され得る(例えば、Shapiro;Practical Flow Cytometry;John 2005年;Scienceを参照のこと)。
【0089】
例えば、TCRの細胞表面発現は、細胞の集団におけるTCR発現の平均蛍光強度(MFI)として表され得る(Shapiro;上記を参照のこと)。一実施形態では、本発明の操作されたTCRを発現する細胞の集団のMFIは、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRを発現する細胞の対応する集団のMFIよりも、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍または10倍大きくてよい。
【0090】
TCRの細胞表面発現は、細胞表面においてTCRを発現する集団内の細胞の百分率として表され得る。かかる百分率は、当該分野で周知のように、従来のフローサイトメトリー法を使用して決定され得る(例えば、Shapiro;上記およびHenelら;2007年;Lab Medicine;38巻;7号;428~436頁を参照のこと)。
【0091】
一実施形態では、本発明の操作されたTCRは、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRと比較して、集団中の少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%より多い細胞によって発現され得る。
【0092】
一実施形態では、操作されたTCRの細胞表面発現は、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRと比較して増加されるが、操作されたTCRまたは改変されていない生殖系列TCRをコードするmRNAの相対的レベルは、本質的に同じである。本明細書で使用する場合、「本質的に同じ」は、mRNAレベルが、例えば1.5倍未満異なることを意味し得る。相対的mRNAレベルは、当該分野で公知の方法;例えば、RT-qPCR、ノザンブロッティングおよびフローサイトメトリーRNAアッセイ(例えば、図17中に示される)を使用して決定され得る。
【0093】
したがって、第1の態様では、本発明は、以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
のうちの少なくとも1つを含む操作されたTCRであって、
該少なくとも1つのアミノ酸残基が、対応する生殖系列TCRアミノ酸配列中には存在しない、操作されたTCRを提供する。
【0094】
前記少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;および
β鎖のR43
のリストから選択され得る。
【0095】
一実施形態では、前記少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;および
α鎖のS86
のリストから選択され得る。
【0096】
操作されたTCRは、α鎖のL96を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のL96と、β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0097】
操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含み得る。
【0098】
操作されたTCRは、α鎖のV19;β鎖のR9およびβ鎖のY10を含み得る。
【0099】
操作されたTCRは、β鎖のR9を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、β鎖のR9と、α鎖のL96;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0100】
操作されたTCRは、β鎖のY10を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、β鎖のY10と、α鎖のL96;β鎖のR9;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0101】
操作されたTCRは、α鎖のT24を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のT24と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0102】
操作されたTCRは、α鎖のV19を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のV19と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0103】
操作されたTCRは、α鎖のT20を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のT20と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0104】
操作されたTCRは、α鎖のM50を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のM50と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0105】
操作されたTCRは、α鎖のT5を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のT5と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0106】
操作されたTCRは、α鎖のQ8を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のQ8と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0107】
操作されたTCRは、α鎖のS86を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のS86と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0108】
操作されたTCRは、α鎖のF39を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のF39と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0109】
操作されたTCRは、α鎖のD55を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のD55と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0110】
操作されたTCRは、β鎖のR43を含み得る。一実施形態では、操作されたTCRは、β鎖のR43と、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101のうちの少なくとも1つとを含み得る。
【0111】
用語「少なくとも1つ」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載される、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ超のアミノ酸残基を含み得る。
【0112】
操作されたTCRは、上に列挙された複数のアミノ酸残基を含み得る。言い換えると、TCRは、上に列挙されたアミノ酸残基のうち、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20を含み得る。
【0113】
操作されたTCRは、β鎖中のR9およびY10を含み得る。
【0114】
一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101の各々を含み得る;
一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;およびβ鎖のR43の各々を含み得る。
【0115】
一実施形態では、操作されたTCRは、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;およびα鎖のS86の各々を含み得る。
【0116】
保存的置換
本発明はまた、以下のアミノ酸残基:
α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101
から選択されるアミノ酸残基の保存的置換を含む操作されたTCRを包含する。
【0117】
少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;または
β鎖のR43
から選択され得る。
【0118】
少なくとも1つのアミノ酸残基は、本明細書に記載される任意のアミノ酸残基または複数のアミノ酸残基であり得る。
【0119】
高発現のTCRが保持される限り、残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性性質における類似性に基づいて保存的アミノ酸置換を行うことができる。例えば、負に荷電したアミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正に荷電したアミノ酸には、リシンおよびアルギニンが含まれ;類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが含まれる。
【0120】
保存的置換を、例えば、以下の表に従って行うことができる。2番目の列の同じブロック中のアミノ酸、および好ましくは3番目の列の同じ並びのアミノ酸は、互いに置換され得る:
【表1】
【0121】
本発明は、相同置換(置換および置き換えは共に、代替的残基による既存のアミノ酸残基の交換を意味するために本明細書で使用される)、即ち、同じ条件の下での置換(like-for-like substitution)、例えば、塩基性を塩基性に、酸性を酸性に、極性を極性に置換することなどもまた包含する。
【0122】
核酸配列
本発明は、本発明の第1の態様に従う操作されたTCR受容体またはその一部、例えば、α鎖またはβ鎖の可変配列;α鎖および/またはβ鎖をコードするヌクレオチド配列をさらに提供する。
【0123】
本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」および「核酸」は、互いに同義であることとする。
【0124】
遺伝コードの縮重の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が同じポリペプチドをコードし得ることが、当業者によって理解される。さらに、当業者が、慣用的な技術を使用して、ポリペプチドが発現される任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度(codon usage)を反映するように、本明細書に記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行い得ることを、理解すべきである。
【0125】
本発明に従う核酸は、DNAまたはRNAを含み得る。これらは、一本鎖または二本鎖であり得る。これらはまた、その中に合成ヌクレオチドまたは改変されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる型の改変が、当該分野で公知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’末端および/または5’末端におけるアクリジン鎖またはポリリシン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載される使用を目的として、ポリヌクレオチドが当該分野で利用可能な任意の方法によって改変され得ることを理解すべきである。かかる改変は、目的のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増強するために実施され得る。
【0126】
ヌクレオチド配列は、二本鎖または一本鎖であり得、RNAまたはDNAであり得る。
【0127】
ヌクレオチド配列は、コドン最適化され得る。異なる細胞は、特定のコドンの使用頻度が異なる。このコドンバイアスは、細胞型における特定のtRNAの相対的存在量におけるバイアスに対応する。対応するtRNAの相対的存在量と一致するようにそれらが調整されるように、配列中のコドンを変更させることによって、発現を増加させることが可能である。
【0128】
HIVおよび他のレンチウイルスを含む多くのウイルスは、多数の稀なコドンを使用し、一般に使用される哺乳動物コドンに対応するようにこれらを変化させることによって、哺乳動物産生細胞におけるパッケージング成分の発現の増加が達成され得る。コドン使用頻度表は、哺乳動物細胞について、ならびに種々の他の生物について、当該分野で公知である。
【0129】
コドン最適化は、mRNA不安定性モチーフおよび潜在性スプライス部位の除去も伴い得る。
【0130】
核酸配列は、α鎖をコードする核酸配列およびβ鎖をコードする核酸配列(a nucleic acid sequence a β chain)の両方が同じmRNA転写物から発現されるのを可能にする核酸配列を含み得る。
【0131】
例えば、核酸配列は、α鎖をコードする核酸配列とβ鎖をコードする核酸配列との間に内部リボソーム進入部位(IRES)を含み得る。IRESは、mRNA配列の中央部における翻訳開始を可能にするヌクレオチド配列である。
【0132】
核酸配列は、内部自己切断性配列によって連結されたα鎖をコードする核酸配列およびβ鎖をコードする核酸配列を含み得る。
【0133】
内部自己切断性配列は、α鎖を含むポリペプチドとβ鎖を含むポリペプチドとが分離されるのを可能にする任意の配列であり得る。
【0134】
切断部位は、ポリペプチドが産生されたときに、任意の外部切断活性を必要とせずに個々のペプチドへと即座に切断されるように、自己切断性であり得る。
【0135】
用語「切断」は、便宜のために本明細書で使用されるが、切断部位は、古典的切断以外の機構によってペプチドを個々の実体へと分離させ得る。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断性ペプチド(以下を参照のこと)について、種々のモデルが「切断」活性を説明するために提唱されてきた:宿主細胞プロテイナーゼによるタンパク質分解、自己タンパク分解または翻訳効果(translational effect)(Donnellyら(2001年)J. Gen. Virol. 82巻:1027~1041頁)。切断部位が、タンパク質をコードする核酸配列間に位置する場合にそれらのタンパク質を別々の実体として発現させる限り、かかる「切断」の正確な機構は、本発明の目的のためには重要ではない。
【0136】
自己切断性ペプチドは、アフトウイルスまたはカルジオウイルス由来の2A自己切断性ペプチドであり得る。
【0137】
ベクター
本発明は、本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含むベクターもまた提供する。
【0138】
用語「ベクター」には、発現ベクター、即ち、in vivoまたはin vitro/ex vivo発現が可能な構築物が含まれる。
【0139】
ウイルス送達系には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0140】
レトロウイルスは、溶解性ウイルス(lytic virus)のものとは異なる生活環を有するRNAウイルスである。これに関して、レトロウイルスは、DNA中間体を介して複製する感染性実体である。レトロウイルスが細胞に感染すると、そのゲノムは、逆転写酵素によってDNA形態に変換される。このDNAコピーは、感染性ウイルス粒子のアセンブリに必要な、新たなRNAゲノムおよびウイルスによりコードされたタンパク質の産生のための鋳型として機能する。
【0141】
多くのレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(equine infectious anaemia virus)(EIAV)、マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤波肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo-MLV)、FBRマウス骨肉腫ウイルス(FBR murine osteosarcoma virus)(FBR MSV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(Mo-MSV)、エーベルソンマウス白血病ウイルス(A-MLV)、トリ骨髄球腫症ウイルス(Avian myelocytomatosis virus)-29(MC29)およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)、ならびにレンチウイルスを含む全ての他のレトロウイルス科(retroviridiae)が存在する。。
【0142】
レトロウイルスの詳細なリストは、Coffinら(「Retroviruses」1997年Cold Spring Harbour Laboratory Press編:JM Coffin、SM Hughes、HE Varmus 758~763頁)中に見出され得る。
【0143】
レンチウイルスもまたレトロウイルス科に属するが、これらは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染できる(Lewisら(1992年)EMBO J. 3053~3058頁)。
【0144】
ベクターは、本発明の第2の態様に従うヌクレオチドを、T細胞などの細胞に移入させることが可能であり得る。ベクターは、理想的には、導入されたTCRが、CD3分子の限定されたプールをめぐって内因性TCRと首尾よく競合し得るように、T細胞において持続的な高レベル発現が可能であるべきである。
【0145】
ベクターは、レトロウイルスベクターであり得る。ベクターは、MP71ベクター骨格に基づき得、またはMP71ベクター骨格から誘導可能であり得る。ベクターは、全長または短縮型バージョンのウッドチャック肝炎応答エレメント(Woodchuck Hepatitis Response Element)(WPRE)を欠き得る。
【0146】
ヒト細胞の効率的感染のために、ウイルス粒子は、両種指向性エンベロープまたはテナガザル白血病ウイルスエンベロープを用いてパッケージングされ得る。
【0147】
CD3分子の供給を増加させることは、遺伝子改変された細胞においてTCR発現を増加させ得る。したがって、ベクターは、CD3-ガンマ、CD3-デルタ、CD3-イプシロンおよび/またはCD3-ゼータの遺伝子もまた含み得る。ベクターは、CD3-ゼータの遺伝子だけを含み得る。これらの遺伝子は、自己切断性配列、例えば、2A自己切断性配列によって連結され得る。あるいは、CD3遺伝子をコードする、1または複数の別々のベクターが、TCRコードベクター(複数可)との共移入のために提供され得る。
【0148】
細胞
本発明はさらに、本発明に従うヌクレオチド配列を含む細胞に関する。細胞は、本発明の第1の態様のT細胞受容体を発現し得る。
【0149】
細胞は、T細胞であり得る。T細胞は、例えば、αβ T細胞、γδ T細胞または調節性T細胞を含む任意のT細胞サブセットであり得る。
【0150】
細胞は、ナチュラルキラー細胞であり得る。
【0151】
細胞は、被験体から単離された細胞に由来し得る。細胞は、被験体から単離された混合細胞集団、例えば、末梢血リンパ球(PBL)の集団の一部であり得る。
【0152】
PBL集団内のT細胞は、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体を使用して、当該分野で公知の方法によって活性化され得る。
【0153】
T細胞は、CD4+ ヘルパーT細胞またはCD8+ 細胞傷害性T細胞であり得る。細胞は、CD4+ ヘルパーT細胞/CD8+細胞傷害性T細胞の混合集団中にあり得る。例えば、任意選択で抗CD28抗体と組み合わせて抗CD3抗体を使用するポリクローナル活性化は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の増殖を誘発するが、CD4+25+ 調節性T細胞の増殖もまた誘発し得る。
【0154】
一実施形態では、T細胞は、CD8+ 細胞傷害性T細胞である。
【0155】
一実施形態では、本発明に従う操作されたTCRを発現する細胞は、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRを発現する細胞と比較して、増加した機能的活性を有し得る。
【0156】
増加した機能的活性は、例えば、TCRへの抗原の結合後の細胞による増加したサイトカイン産生を指し得る。サイトカインは、IFNγ、IL-2、GM-CSF、TNFアルファ、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10およびIL-13から選択され得る。
【0157】
サイトカインは、IFNγおよび/またはIL-2であり得る。
【0158】
本明細書で使用する場合、「増加したサイトカイン産生」とは、TCRへの抗原の結合の際に、本発明に従う操作されたTCRを発現する細胞によって産生されるサイトカインの量が、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRを発現する等価な細胞によって産生される量よりも大きい(in greater than the amount produced by an equivalent cell)ことを意味する。
【0159】
本発明に従う操作されたTCRを発現する細胞によって産生されるサイトカインの量は、改変されていない生殖系列TCR配列を含む対応するTCRを発現する等価な細胞によって産生される量よりも、少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍または50倍大きい場合がある。
【0160】
細胞によって産生されるサイトカインの量は、当該分野で公知の方法、例えば、フローサイトメトリーまたはELISAを使用して決定され得る。
【0161】
本発明は、in vitroまたはex vivoで、細胞に本発明に従うベクターをトランスフェクトし、または細胞を本発明に従うベクターで形質導入するステップを含む、本発明に従う細胞を産生する方法もまた提供する。
【0162】
細胞は、遺伝子改変された細胞が養子移入される被験体から単離され得る。この点において、細胞は、T細胞を被験体から単離すること、そのT細胞を任意選択で活性化すること、ex vivoでTCR遺伝子移入することによって作製され得、該TCR形質導入された細胞の養子移入による被験体の引き続く免疫療法がなされる。
【0163】
あるいは、細胞は、同種異系であるように、異なる被験体から単離され得る。細胞は、ドナー被験体から単離され得る。例えば、被験体が同種異系造血幹細胞移植(Allo-HSCT)を受けている場合、この細胞は、HSCが由来するドナーに由来し得る。被験体が固形臓器移植を受けている場合またはそれを受けた場合、この細胞は、固形臓器が由来した被験体に由来し得る。
【0164】
あるいは、細胞は、造血幹細胞(HSC)などの幹細胞であり得、またはそれに由来し得る。幹細胞はCD3分子を発現しないので、HSC中への遺伝子移入は、細胞表面におけるTCR発現をもたらさない。しかし、幹細胞が、胸腺へと遊走するリンパ系前駆体へと分化する場合、CD3発現の開始は、胸腺細胞における導入されたTCRの表面発現をもたらす。
【0165】
このアプローチの利点は、導入されたTCR鎖の発現が、機能的なTCRアルファおよびベータ遺伝子を形成するための内因性TCR遺伝子セグメントの再構成を抑制するので、成熟T細胞が、一旦産生されると、導入されたTCRのみを発現し、内因性TCR鎖はほとんどまたは全く発現しないことである。
【0166】
さらなる利点は、遺伝子改変された幹細胞が、所望の抗原特異性を有する成熟T細胞の継続的な供給源であることである。したがって、細胞は、分化の際に、本発明の第1の態様のTCRを発現するT細胞を産生する遺伝子改変された幹細胞であり得る。本発明は、本発明に従うヌクレオチド配列を含む幹細胞の分化を誘導することによって、本発明の第1の態様のTCRを発現するT細胞を産生する方法もまた提供する。
【0167】
幹細胞アプローチの短所は、所望の特異性を有するTCRが、胸腺におけるT細胞発生の間に欠失され得、または末梢T細胞において発現される場合に寛容を誘導し得ることである。別のあり得る問題は、幹細胞における挿入変異誘発のリスクである。
【0168】
医薬組成物
本発明は、本発明に従うベクターまたは細胞を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0169】
医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリア、希釈剤または賦形剤を追加的で含み得る。医薬組成物は、1または複数のさらなる薬学的に活性なポリペプチドおよび/または化合物を任意選択で含み得る。かかる製剤は、例えば、静脈内注入に適切な形態であり得る。
【0170】
使用
本発明はさらに、疾患を処置および/または予防する際の使用のための、本発明に従う細胞を含む医薬組成物に関する。
【0171】
「処置する」は、本発明の細胞の治療的使用に関する。本明細書では、細胞を、既存の疾患または状態を有する被験体に投与して、疾患と関連する少なくとも1つの症状を低下、低減もしくは改善し、かつ/または疾患の進行を減速、低減もしくは遮断し得る。
【0172】
「予防する」は、本発明の細胞の予防的使用に関する。本明細書では、かかる細胞は、疾患の原因を予防もしくは減じるため、または疾患と関連する少なくとも1つの症状の発症を低減もしくは予防するために、疾患にいまだ罹患していない被験体および/または疾患のいずれの症状も示していない被験体に投与され得る。被験体は、疾患の素因を有し得、または疾患を発症するリスクにあると考えられ得る。
【0173】
本発明は、本発明に従う操作されたTCRの細胞表面発現を増加させるための、本発明に従う操作されたTCR;核酸配列またはベクターの使用も提供する。
【0174】
本発明は、細胞の機能的活性を増加させるための、本発明に従う操作されたTCR;核酸配列またはベクターの使用もまた提供する。機能的活性は、本明細書に記載される任意の機能的活性であり得る。
【0175】
処置の方法
本発明は、本発明の細胞(例えば、上記医薬組成物中の)を被験体に投与するステップを含む、疾患を処置および/または予防するための方法を提供する。
【0176】
この方法は、
(i)細胞含有試料を単離する(isolated)ステップ;
(ii)かかる細胞を、本発明によって提供される核酸配列もしくはベクターで形質導入する、またはかかる細胞に、本発明によって提供される核酸配列もしくはベクターをトランスフェクトするステップ;
(iii)(ii)由来の細胞を被験体に投与するステップ
を伴い得る。
【0177】
本発明は、疾患を処置および/または予防する際の使用のための、本発明の細胞もまた提供する。
【0178】
本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法のいずれかの被験体は、哺乳動物、好ましくは、ネコ、イヌ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、マウス、ラット、ウサギまたはモルモットであるが、最も好ましくは、被験体はヒトである。
【0179】
本明細書に記載される細胞の投与のために、当該分野で一般的または標準的な任意の様式の細胞集団の投与、例えば、適切な経路による注射または注入が使用され得る。一態様では、1kg当たり最大で5×10細胞が、ヒトにおいて投与される。したがって、例えば、100kgの体重を有するヒトは、処置当たり最大で5×1010細胞の用量を受け得る。この用量は、必要に応じて、後の時点で反復され得る。
【0180】
本発明は、疾患を処置および/または予防するための医薬の製造における、本発明に従うベクターまたは細胞の使用にも関する。
【0181】
疾患
本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、T細胞媒介性免疫応答を誘導する任意の疾患であり得る。
【0182】
例えば、本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、がん性疾患、例えば、膀胱がん、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(腎細胞)、白血病、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵がん、前立腺がんおよび甲状腺がんであり得る。
【0183】
本発明の方法および使用によって処置および/または予防される疾患は、感染、例えば、細菌感染またはウイルス感染であり得る。
【0184】
方法
本発明は、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法であって、
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;
(ii)α鎖の96位;β鎖の9位;β鎖の10位;α鎖の24位;α鎖の19位;α鎖の20位;α鎖の50位;α鎖の5位;α鎖の8位;α鎖の86位;α鎖の39位;α鎖の55位;β鎖の43位;α鎖の66位;β鎖の19位;β鎖の21位;β鎖の103位;α鎖の3位;α鎖の7位;α鎖の9位;α鎖の11位;α鎖の16位;α鎖の18位;α鎖の21位;α鎖の22位;α鎖の26位;α鎖の40位;α鎖の47位;α鎖の48位;α鎖の49位;α鎖の51位;α鎖の52位;α鎖の53位;α鎖の67位;α鎖の68位;α鎖の74位;α鎖の76位;α鎖の79位;α鎖の81位;α鎖の83位;α鎖の90位;α鎖の92位;α鎖の93位;およびα鎖の101位から選択される1または複数の位置において、該TCRのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸残基を決定するステップ;ならびに
(iii)ステップ(ii)に列挙した位置のうちの1または複数におけるアミノ酸残基を、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択されるアミノ酸残基に変更するステップ
を含む、方法をさらに提供する。
【0185】
本明細書に記載されるように、各可変遺伝子の生殖系列配列は、当該分野で公知であり(ScavinerおよびLefranc;上記ならびにFolchおよびLefranc;上記を参照のこと)、したがって、TCRにおいて利用されるVαおよび/またはVβ生殖系列Vセグメントは、配列決定し、公知の生殖系列配列と比較することによって決定され得る(例えば、Hodgesら;上記、Zhouら;2006年;上記を参照のこと)。したがって、1または複数の位置においてTCRのα鎖および/またはβ鎖のアミノ酸残基を決定する本発明のステップは、具体的には、本明細書に記載される特定の位置のうちの1または複数に存在するアミノ酸残基を決定することに関する。
【0186】
この方法は、本明細書に記載される任意の位置または複数の位置に存在するアミノ酸残基を決定するステップを含み得る(may comprise may comprise)。
【0187】
TCRのアミノ酸配列は、本明細書に記載される任意のアミノ酸残基または任意の複数のアミノ酸残基を含むように変更され得る。
【0188】
一実施形態では、本発明は、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つの残基を含むようにTCRアミノ酸配列を変更するステップを含む、TCRの細胞表面発現を増加させるための方法を提供する。
【0189】
少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;または
β鎖のR43
から選択され得る。
【0190】
TCRのアミノ酸配列は、上で規定される複数のアミノ酸残基を含むように変更され得る。
【0191】
TCRのアミノ酸配列は、当該分野で周知の方法を使用して変更され得る。例えば、TCRのアミノ酸配列は、TCRをコードする核酸配列の変異誘発によって変更され得る(may be altered mutagenesis of)。
【0192】
TCRの細胞表面発現を増加させるとは、本発明に従う少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRが、生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRと比較して、より高いレベルの細胞表面発現を有することを意味する。生殖系列配列によってコードされるアミノ酸配列を含む等価なTCRとは、本発明に従うアミノ酸残基を含むように変更されていないTCRを指す、即ち、変更されていないTCRは、特定の位置において野生型アミノ酸残基を有する。
【0193】
TCRの細胞表面発現は、本明細書に記載される方法のいずれかを使用して決定され得る。
【0194】
本発明はさらに、高発現TCRを選択するための方法であって、
(i)一群のTCRアミノ酸配列を提供するステップ;ならびに
(ii)α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むTCRアミノ酸配列を選択するステップ
を含む方法に関する。
【0195】
少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;または
β鎖のR43
から選択され得る。
【0196】
この方法は、上で規定される任意のアミノ酸残基または任意の複数のアミノ酸残基を含むTCRを選択するステップを含み得る。
【0197】
さらなる態様では、本発明は、TCRの強度を決定するための方法であって、
(i)TCRのα鎖および/またはβ鎖の配列を提供するステップ;ならびに
(ii)該TCR配列が、α鎖のL96;β鎖のR9;β鎖のY10;α鎖のT24;α鎖のV19;α鎖のT20;α鎖のM50;α鎖のT5;α鎖のQ8;α鎖のS86;α鎖のF39;α鎖のD55;β鎖のR43;α鎖のA66;β鎖のV19;β鎖のL21;β鎖のL103;α鎖のT3;α鎖のS7;α鎖のP9;α鎖のM11;α鎖のA16;α鎖のT18;α鎖のL21;α鎖のS22;α鎖のD26;α鎖のF40;α鎖のS47;α鎖のR48;α鎖のQ49;α鎖のI51;α鎖のL52;α鎖のV53;α鎖のT67;α鎖のE68;α鎖のN74;α鎖のF76;α鎖のN79;α鎖のQ81;α鎖のA83;α鎖のK90;α鎖のS92;α鎖のD93;およびα鎖のM101から選択される少なくとも1つのアミノ酸残基を含むかどうかを決定するステップ
を含み;
列挙されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つを含む配列が、高発現TCRであると決定され、列挙されたアミノ酸配列のうちの少なくとも1つを含まない配列が、低発現TCRであると決定される方法を提供する。
【0198】
少なくとも1つのアミノ酸残基は、
α鎖のL96;
β鎖のR9;
β鎖のY10;
α鎖のT24;
α鎖のV19;
α鎖のT20;
α鎖のM50;
α鎖のT5;
α鎖のQ8;
α鎖のS86;
α鎖のF39;
α鎖のD55;または
β鎖のR43
から選択され得る。
【0199】
α鎖および/またはβ鎖の配列は、アミノ酸配列、またはα鎖および/もしくはβ鎖をコードする核酸配列であり得る。
【0200】
この方法は、本明細書に記載される任意の位置または複数の位置に存在するアミノ酸残基を決定するステップを含み得る(may comprise may comprise)。
【0201】
かかる方法は、細胞、例えばT細胞において外因性TCRとして発現される場合に、TCR、例えば治療的TCRの表面発現のレベルを予測するために有用である。
【0202】
コンピュータープログラム製品
図12は、上記技術を実装するために使用され得る型の汎用計算デバイス100を模式的に示す。本発明の文脈では、これは、例えば、より大きいシステムの一部を形成する組み込み型プロセッサであり得る。汎用計算デバイス100は、バス122を介して一緒に接続された中央処理装置102、ランダムアクセスメモリ104およびリードオンリーメモリ106を含む。汎用計算デバイス100は、全て共通のバス122を介して接続されたネットワークインターフェースカード108、ハードディスクドライブ110、ディスプレイドライバー112およびモニタ114ならびにキーボード118およびマウス120を備えたユーザー入力/出力回路116もまたさらに含む。動作中に、例えば、より大きいシステムの一部を形成する場合、中央処理装置102は、例えば、ランダムアクセスメモリ104および/またはリードオンリーメモリ106中に保存され得るコンピュータープログラム命令を実行する。プログラム命令は、ハードディスクドライブ110から追加で検索され得、またはネットワークインターフェースカード108を介して動的にダウンロードされ得る。実施された処理の結果は、接続されたディスプレイドライバー112およびモニタ114を介して、ユーザーまたはエンジニアにディスプレイされ得る。汎用計算デバイス100の動作を制御するためのユーザー入力は、キーボード118またはマウス120から、接続されたユーザー入力出力回路116を介して受け取られ得る。コンピュータープログラムは、種々の異なるコンピューター言語で書かれ得ることが理解される。コンピュータープログラムは、記録媒体上にローカルに保存され得、または汎用計算デバイス100に動的にダウンロードされ得る。適切なコンピュータープログラムの制御下で動作する場合、汎用計算デバイス100は、上記技術を実施でき、上記技術のいずれかを実施するための装置を形成すると考えることができる。汎用計算デバイス100の構造は、かなり異なってもよく、図13は一例にすぎない。汎用計算デバイス100はまた、命令実行環境(即ち、バーチャルマシン)を提供するのを可能にする構成を有し得る。
【0203】
本発明は、本発明を実施するにあたり当業者を補助するように機能することを意味し、本発明の範囲を決して限定しない意図である実施例によって、ここでさらに記載される。
【実施例
【0204】
(実施例1)
強いTCR発現または弱いTCR発現と相関するTCR可変セグメントの決定
TCRによるT細胞の形質導入後に、導入されたTCRは、内因性TCRと比較して、細胞表面上に発現されるそれらの能力が大きく異なる。強く発現される外因性TCRは、内因性TCRと共発現される、または細胞表面発現について内因性TCRを打ち負かしさえし得る。弱く発現される外因性TCRは、強いTCRと共発現(co-express)される場合、細胞表面には存在しないまたは不十分に発現される(図1A)。
【0205】
活性化された初代T細胞を、マウス化定常ドメイン、および定常ドメイン中に追加のシステインを含有するWT1(ウィルムス腫瘍1)TCRをコードするpMP71ベクターで形質導入した(TCR全体をコドン最適化した)。
【0206】
この改変されたWT1 TCRは、TCR優位を示す(図2)。形質導入の72時間後、T細胞を、抗CD3抗体および抗CD8抗体ならびに抗ヒトTCR定常ドメイン抗体および抗マウスTCR定常ドメイン抗体で染色した。T細胞を、CD3+かつCD8+ T細胞集団に対してゲーティングを行った。強い内因性TCRを発現するCD8+T細胞は、抗マウスTCR定常ドメイン抗体および抗ヒトTCR定常ドメイン抗体で共染色される。弱い内因性TCRを発現するCD8+ T細胞は、抗マウスTCR定常ドメイン抗体でのみ染色される。
【0207】
強い内因性TCRおよび弱い内因性TCRを発現するCD8+ T細胞集団を、FACs選別し、クロノタイピングして、それらの可変アルファ鎖および可変ベータ鎖の使用頻度を決定した。図3に示される表中には、(i)配列決定した強いおよび弱いアルファおよびベータ可変セグメントの総数、ならびに(ii)各集団内の可変セグメントの各々の総数と共に、強い内因性TCR集団または弱い内因性TCR集団のいずれかにおいて優位を示すアルファ可変セグメントおよびベータ可変セグメントが示される。アルファセグメントおよびベータセグメントは、IMGT命名法を使用して分類されている。
【0208】
(実施例2)
非競合的環境および競合的環境における一般的な強いTCRおよび弱いTCRの発現
クロノタイピングデータを使用して、強いTCR集団および弱いTCR集団において最も広く使用されるアルファ可変セグメントおよびベータ可変セグメントを決定した。一般的な強いTCRおよび弱いTCRを、この情報を使用して操作した。
【0209】
強いTCRは、可変アルファ38.2および可変ベータ7.8である。弱いTCRは、可変アルファ13.2および可変ベータ7.3である。上記アルファ可変セグメントおよびベータ可変セグメントに対する市販のモノクローナル抗体は存在しないので、形質導入されたT細胞におけるTCR発現の決定のために、V5タグが、アルファ鎖の開始部に存在し、Mycタグが、ベータ鎖の開始部に存在する。さらに、形質導入効率を正常化(normalize)できるようにするために、短縮型マウスCD19が、構築物の末端部に存在する(図4)。
【0210】
これら2つの構築物は、同じアルファ定常ドメインおよびベータ定常ドメインを含有し、構築物全体はコドン最適化しなかった。さらに、独自の制限部位が、アルファセグメントおよびベータセグメントの容易な交換が可能となるように、アルファセグメントおよびベータセグメントに隣接する。TCRを、形質導入実験のためにpMP71レトロウイルス中にクローニングする。
【0211】
非競合的環境における強いTCRおよび弱いTCRの発現
内因性TCRアルファ鎖またはベータ鎖を含有しないJurkat細胞を、一般的な強いTCRまたは弱いTCRをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、Jurkat細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した(図5)。Jurkat細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、これらのCD19+高発現細胞上のV5タグおよびMycタグの発現を決定した。さらに、V5タグおよびMycタグのMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した。
【0212】
競合的環境における強いTCRおよび弱いTCRの発現
改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞を、一般的な強いTCRまたは弱いTCRをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、Jurkat細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した(図6)。Jurkat細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグおよびMycタグの発現を決定した。V5タグおよびMycタグのMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した。
【0213】
低、中間および高発現の改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞における強いTCRおよび弱いTCRの発現
改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞を、一般的な強いTCRまたは弱いTCRをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、Jurkat細胞を、抗CD19抗体、抗マウスTCR定常ドメイン抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した(図7)。Jurkat細胞を、最初に高CD19発現に対してゲーティングを行い、次いで、マウスTCR定常ドメインの高、中間および低発現に対してゲーティングを行った。別々のWT1 TCR集団の3つ全て、およびWT1発現細胞についてはまとめて、V5タグおよびMycタグの発現を決定した。V5タグおよびMycタグのMFIもまた決定した。
【0214】
(実施例3)
TCR発現の強度と相関する重要な特色を同定するためのバイオインフォマティクス分析
クロノタイピングからの配列決定情報を使用して、配列決定した全ての強いTCRおよび弱いTCRについて、各位置における全ての残基を比較した。TCRアラインメント後、弱いTCRと比較して、強いTCR中の特定の位置における高い出現率を有した残基が、一例としてTRAV38-1を使用して図中に示される()(図8A)。
【0215】
強いTCRにおいて広がりを示した残基をさらに分析し、TCR鎖の構造およびペアリングを安定化することにおいて意味を有するフレームワーク領域中の残基だけを含むまで精緻化した。これらの残基は、骨格としてTRAV38-2およびTRBV7-8を使用して強調される()(図8B)。上の並びは、強いTCR中の残基である。下の並びは、弱いTCR中の等価な残基である。
【0216】
(実施例4)
強発現TCRおよび弱発現TCRの操作
弱い残基を有する強発現TCRを、操作により得るために、強いTCRを骨格として使用し、TCR強度において重要であると予測された全ての強い残基を、関連する位置において弱いTCR残基で置き換えた。
【0217】
強い残基を有する弱いTCRを、操作により得るために、弱いTCRを骨格として使用し、TCR強度において重要であると予測された全ての強い残基で、関連する位置において弱いTCR残基を置き換えた(replaced with weak TCR residues in the relevant position)。
【0218】
TCRなしのJurkat細胞(上の行)、およびWT1マウス化TCRを発現するJurkat細胞(下の行)を、示したTCRで形質導入し、72時間後、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した。Jurkat細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグおよびMycタグの発現を決定した。V5タグおよびMycタグのMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した(図9)。
【0219】
(実施例5)
TCR発現に対する個々の残基の変異の影響
TCR発現に対する強い残基の個々の影響
【0220】
一般的な弱いTCRを骨格として使用し、quick change PCR変異誘発技術を使用して、弱いTCR骨格の残部を保持しつつ、関連する位置において弱いTCR残基を置き換える予測された強い残基のうちの1つだけを有した一連のTCRを作製した。
【0221】
変異したTCRは、文字がアミノ酸を示し、数がTCRフレームワーク中の位置であり、αまたはβが、残基がアルファ鎖中にあるかベータ鎖中にあるかを示すように表示される。最後のプロット、下の行、右側は、3残基の変化、アルファ鎖上のV19およびベータ鎖上のR9、Y10を有する(図10および11)。
【0222】
TCRなしのJurkat細胞(図10)および改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞(図11)を、示されたTCRをコードするpMP71レトロウイルスで形質導入した(where transduced with the pMP71 retrovirus)。形質導入の72時間後、形質導入された細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した。細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグおよびMycタグの発現を決定した。
【0223】
図13は、TCRなしのJurkat細胞(A)および改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞(B)を、示されたTCRをコードするpMP71レトロウイルスで形質導入した(where transduced with the pMP71 retrovirus)実験の結果を示す。形質導入の72時間後、細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体、抗Mycタグ抗体および抗マウス定常ベータTCR抗体で染色した。細胞を、高CD19発現に対してゲーティングを行い、V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現を決定した。V5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRの発現のMFIもまた、CD19+高発現細胞について決定した。(C)TCRなしのJurkat細胞についてのV5タグおよびMycタグのMFI。(D)改変されたWT1 TCRを発現するJurkat細胞についてのV5タグ、Mycタグおよびマウス定常ベータTCRのMFI。
【0224】
これらの結果は、α鎖のF39、α鎖のD55およびβ鎖のR43が、TCRの表面発現を増加させることを示している。さらに、上記3つの残基の変異は、Jurkat細胞競合実験において、細胞表面上に発現されたWT1 TCRの量を減少させることもまた示された。
【0225】
(実施例6)
抗原特異的TCRにおいてL96α、R9βおよびY10βへと可変ドメイン残基を変異させることの影響
Jurkat細胞における細胞表面発現
Jurkat細胞(内因性TCRのアルファ鎖またはベータ鎖を含有しない)を、改変されていない野生型CMVもしくはWT1 TCR、またはL96α、R9βおよびY10βを含有するように変異させた同じTCRのいずれかをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、Jurkat細胞を、抗CD19 Ab、およびCMVテトラマー AbまたはVβ2.1 Ab(WT1可変ベータ発現を決定するため)のいずれかで染色した。
【0226】
細胞を、最初に高CD19発現に対してゲーティングを行い、次いで、CMVテトラマーおよびまたはVβ2.1の発現を決定した(図14)。
【0227】
初代T細胞における細胞表面発現
活性化された初代T細胞を、改変されていない野生型CMV TCRもしくは野生型WT1 TCR、またはL96α、R9βおよびY10βを含有するように変異させた同じTCRのいずれかをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、T細胞を、抗CD3 Ab、抗CD8 Abおよび抗CD19 AbならびにCMVテトラマー AbまたはVβ2.1 Abのいずれかで染色した。細胞を、CD3+およびCD19高T細胞に対してゲーティングを行い、次いで、TCR発現を、テトラマーまたは抗vβ2.1抗体を使用して決定して、それぞれ、CMV-TCRおよびWT1-TCRを検出した(図15)。
【0228】
活性化された初代T細胞を、改変されていない野生型CMV、またはL96α、R9βおよびY10βを含有するように変異させた同じTCRのいずれかをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の5日後、T細胞を、pCMVペプチドまたは無関係のペプチドpWT235を発現するAPC(APCs expression the pCMV peptide or the irrelevant peptide pWT235)と共に共培養した。18時間の共培養後、上清を収集し、IL-2およびIFN-γの産生をELISAによって決定した(図16)。
【0229】
良好に発現されるTCRおよび不十分に発現されるTCRで形質導入された細胞は、類似の量のTCR mRNAを含有する
内因性TCRなしのJurkat細胞を、一般的な強いTCR、または一般的な弱いTCR、または予測された弱い残基を含有する一般的な強いTCR、または予測された強い残基を含有する一般的な弱いTCRのいずれかをコードするpMP71ベクターで形質導入した。affymetrix primeflow RNAアッセイを使用して、定常アルファmRNAおよび定常ベータmRNAを発現するCD19+高細胞の百分率を決定した。定常アルファmRNAおよび定常ベータmRNAのMFIを、4つの集団について決定した。さらに、V5タグを発現するCD19+高Jurkat細胞の百分率もまた決定した(図17)。
【0230】
(実施例7)
TCR細胞表面発現へのTCRα対TCRβの寄与
内因性TCRなしのJurkat細胞を、強いTCR、または弱いTCR、または強いアルファ可変鎖および弱いベータ可変鎖を含有するように操作されたTCR、または弱いアルファ可変鎖および強いベータ可変鎖を含有するように操作されたTCRのいずれかをコードするpMP71ベクターで形質導入した。形質導入の72時間後、Jurkat細胞を、抗CD19抗体、抗V5タグ抗体および抗Mycタグ抗体で染色した。Jurkat細胞を、高CD19に対してゲーティングを行い、V5タグおよびMycタグの発現を決定した。V5タグおよびMycタグのMFIもまた、CD19+高細胞において決定した(図18)。
【0231】
上記明細書中で言及される全ての刊行物が、本明細書で参照によって組み込まれる。本発明の記載された方法およびシステムの種々の改変およびバリエーションが、本発明の範囲および精神から逸脱することなしに、当業者に明らかである。本発明を、具体的な好ましい実施形態との関連で記載してきたが、特許請求された本発明は、かかる具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないと理解すべきである。実際、分子生物学、細胞免疫学または関連する分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18
【配列表】
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