IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナチュラン・インターナショナル有限会社の特許一覧

<>
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図1
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図2
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図3
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図4
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図5
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図6
  • 特許-洗浄方法および洗浄装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】洗浄方法および洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220817BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20220817BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20220817BHJP
【FI】
H01L21/304 642F
B08B3/04 Z
B08B3/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018093737
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019201069
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500333198
【氏名又は名称】ナチュラン・インターナショナル有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】松本 重樹
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147617(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017700(WO,A1)
【文献】特開平01-288383(JP,A)
【文献】特開2015-077577(JP,A)
【文献】特開2018-015747(JP,A)
【文献】特開2007-258512(JP,A)
【文献】特開2013-099705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/04
B08B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽内に洗浄対象物を配設する第1ステップと、
前記洗浄槽内に配設された前記洗浄対象物を、該洗浄槽内に貯溜されているマイクロバブルを含む洗浄液に浸漬した状態で洗浄する第2ステップと、
前記洗浄対象物の洗浄後に、該洗浄対象物を前記洗浄槽から取り出す第3ステップと、
備え、
前記第2ステップにおいて、複数の噴射ノズルを前記洗浄槽内の底部に配置して、該各噴射ノズルに、洗浄用ガスが加圧溶解された洗浄液を供給し続けることにより、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を該各噴射ノズルから該洗浄槽内に噴射させ続け、
その際、前記複数の各噴射ノズルからの噴射流により、前記洗浄槽内に渦巻き状の流れと上昇流の流れとを生じさせる、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2ステップにおいて、前記各噴射ノズルから、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を前記洗浄槽内に噴射させ続けることにより、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を前記洗浄槽からオーバフローさせつつ前記洗浄対象物の洗浄を行い、
前記洗浄槽からオーバフローされる洗浄液の清浄度が所定値となった時点で前記洗浄対象物の洗浄を終了する、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記洗浄用ガスがオゾンとされ、
前記洗浄液が純水とされている、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
前記洗浄対象物が、半導体ウエハとされている、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項5】
請求項において、
多数枚の前記半導体ウエハの底部同士が互いに小間隔をあけてカセットに保持された状態で、前記第1ステップでの処理と前記第2ステップでの処理と前記第3ステップでの処理とが行われる、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記洗浄対象物が、長尺とされて、ロール・ツー・ロール方式で搬送される過程で前記洗浄槽内を通過することにより、前記第1ステップでの処理と前記第2ステップでの処理と前記第3ステップでの処理とが順次行われる、
ことを特徴とする洗浄方法。
【請求項7】
上方が開口された洗浄槽と、
洗浄用ガスが加圧溶解された洗浄液を貯溜した溶解タンクと、
前記洗浄槽内の底部に配設され、前記溶解タンク内の洗浄液が送り込まれる複数の噴射ノズルと、を備え、
前記複数の各噴射ノズルは、洗浄用ガスが溶解された洗浄液が通過される過程で前記洗浄用ガスのマイクロバブルを生成して、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を噴射するものとされ、
前記複数の噴射ノズルのうちの一部の噴射ノズルが、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を略水平方向に噴射するように配設されることにより、該洗浄槽内に渦巻き状の流れが生成されるように設定され、
前記複数の噴射ノズルのうちの残りの噴射ノズルが、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を上方に向けて噴射するように配設されることにより、該洗浄槽内に上昇流の流れが生成されるように設定されている、
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記洗浄槽を取り囲むようにして、該洗浄槽からオーバフローされたマイクロバブルを含む洗浄液を受け入れる回収ボックスが設けられ、
前記回収ボックスに、該回収ボックス内のマイクロバブルを含む洗浄液を外部に排出するための排出管が接続されている、
ことを特徴とする洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄方法および洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウエハ等の洗浄対象物にあっては、付着したパーティクルや有機物等を除去するための洗浄が行われる。特許文献1には、洗浄液としてオゾン水を用いるものが開示されている。また、特許文献2には、例えば半導体ウエハの洗浄のために、オゾンが溶解された洗浄液が通過された際にマイクロバルブを生成して、マイクロバルブを含む洗浄液を噴射する噴射ノズルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-177535号公報
【文献】特開2017-191855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、洗浄液が貯溜された洗浄槽内で洗浄対象物を洗浄する場合、洗浄をいかに効率的に行うかが重要となる。特に、例えば半導体ウエハ等の半導体関連品のように高度な洗浄が望まれる場合は、洗浄槽を複数用意して、洗浄対象物を複数の洗浄槽で順次洗浄することが行われているが、洗浄完了までに多大の時間を要することとなって、洗浄効率が
極めて悪いものとなる。また、洗浄槽を相当数必要になることから、洗浄設備の大型化やこれに伴って洗浄スペースも相当に大きなものを必要とすることになる。
【0005】
一方、洗浄対象物が例えば半導体ウエハのように薄葉状のときは、薄葉状の多数の洗浄対象物を例えば保持用カセットによって互いに小間隔をあけて配置した状態で同時に洗浄を行うこともある。この場合、洗浄対象物を洗浄槽から取り出す際に、隣り合う洗浄対象物同士が洗浄液の表面張力によって互いに付着してしまうことが応々にして生じて、その後の後工程での処理が面倒になる、という問題もある。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、第1の目的は、洗浄対象物を効率よく洗浄でき、しかも洗浄対象物同士の付着をも防止できるようにした洗浄方法を提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、上記洗浄方法を実施するために用いて好適な洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記第1の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
洗浄槽内に洗浄対象物を配設する第1ステップと、
前記洗浄槽内に配設された前記洗浄対象物を、該洗浄槽内に貯溜されているマイクロバブルを含む洗浄液に浸漬した状態で洗浄する第2ステップと、
前記洗浄対象物の洗浄後に、該洗浄対象物を前記洗浄槽から取り出す第3ステップと、
備え、
前記第2ステップにおいて、複数の噴射ノズルを前記洗浄槽内の底部に配置して、該各噴射ノズルに、洗浄用ガスが加圧溶解された洗浄液を供給し続けることにより、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を該各噴射ノズルから該洗浄槽内に噴射させ続け、
その際、前記複数の各噴射ノズルからの噴射流により、前記洗浄槽内に渦巻き状の流れと上昇流の流れとを生じさせる、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、マイクロバブルを含む洗浄液による洗浄を行うことにより、マイクロバブルを含まない洗浄液で洗浄を行う場合に比して、はるかに効果的に(効率的に)洗浄することができる。このことは、洗浄時間の短縮化はもとより、洗浄槽の数やその設置スペースを削減する上でも好ましいものとなる。また、多数(複数)の洗浄対象物を小間隔をあけた状態で同時に洗浄する場合でも、マイクロバブルはマイナスに電荷していることから、隣り合う洗浄対象物同士は互いに離れる方向の作用を受けることとなって、洗浄対象物同士が付着してしまうことが防止される。
また、前記洗浄槽内の底部に配設された噴射ノズルから、マイクロバブルを含む洗浄液が該洗浄槽内に供給されることから、マイクロバブルが洗浄槽の上端に達するまでの時間を極力長く確保して、洗浄効果を高める上で好ましいものとなる。また、マイクロバブルを含む洗浄液を噴射ノズルから噴射することにより、洗浄槽内で洗浄液の流れが形成されて、その分洗浄効果をより高めることができる。
さらに、前記洗浄槽内の底部に配置された複数の噴射ノズルから、マイクロバブルを含む洗浄液が該洗浄槽内に供給されることから、より多くのマイクロバブルを供給できるようにして、洗浄効果をより高めることができる。
さらにまた、前記噴射ノズルは、洗浄用ガスが溶解された洗浄液が通過される過程でマイクロバブルを生成して、マイクロバブルを含む洗浄液を噴射することから、噴射ノズルで生成された直後のマイクロバブルを洗浄槽内に供給するようにして、マイクロバブルによる洗浄効果を十分に高める上で好ましいものとなる。
加えて、複数の各噴射ノズルからの噴射流により、前記洗浄槽内に渦巻き状の流れと上昇流の流れとを生じさせることから、マイクロバブルが洗浄槽の上端に達するまでの時間が長く確保されて(洗浄槽内でのマイクロバブルの滞留時間の長期化)、より一層洗浄効果を高める上で好ましいものとなると共に、マイクロバブルを含む洗浄液の下から上に向かう流れによって、洗浄対象物が効果的に洗浄される。また、洗浄対象物から剥離(除去)された異物(汚物)が、上昇流となる洗浄液によって洗浄槽の上端に向けてすみやかに移動して、洗浄槽からすみやかに排出させる上で好ましいものとなる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、次のとおりである。すなわち、
前記第2ステップにおいて、前記各噴射ノズルから、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を前記洗浄槽内に噴射させ続けることにより、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を前記洗浄槽からオーバフローさせつつ前記洗浄対象物の洗浄を行い、
前記洗浄槽からオーバフローされる洗浄液の清浄度が所定値となった時点で前記洗浄対象物の洗浄を終了する、ようにしてある(請求項2対応)。この場合、洗浄対象物から除去された細かい異物(汚物)は、マイクロバブルに取り込まれて洗浄槽内を上昇して、オーバフローされる洗浄液と共に洗浄槽の外部へと排出されることになる。これにより、洗浄槽内の洗浄液を極力清浄に維持する上で好ましいものとなる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
前記洗浄用ガスがオゾンとされ、
前記洗浄液が純水とされている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、オゾンをマイクロバブル化して、強力な洗浄効果を得ることができる。
【0015】
【0016】
【0017】
前記洗浄対象物が、半導体ウエハとされている、ようにしてある(請求項対応)。この場合、高度な洗浄が要求される半導体ウエハの洗浄を、効果的に(効率的に)行うことができる。
【0018】
多数枚の前記半導体ウエハの底部同士が互いに小間隔をあけてカセットに保持された状態で、前記第1ステップでの処理と前記第2ステップでの処理と前記第3ステップでの処理とが行われる、ようにしてある(請求項対応)。この場合、保持用カセットを利用して、多数枚の半導体ウエハの洗浄を効率よく行うことができる。また、洗浄後に、保持用カセットを洗浄槽から取り出す際に、隣り合う半導体ウエハ同士が付着してしまう事態が防止される。
【0019】
前記洗浄対象物が、長尺とされて、ロール・ツー・ロール方式で搬送される過程で前記洗浄槽内を通過することにより、前記第1ステップでの処理と前記第2ステップでの処理と前記第3ステップでの処理とが順次行われる、ようにしてある(請求項対応)。この場合、ロール・ツー・ロール方式で搬送される洗浄対象物の洗浄を、効果的に(効率的に)行うことができる。
【0020】
前記第2の目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、請求項に記載のように、
上方が開口された洗浄槽と、
洗浄用ガス加圧溶解された洗浄液を貯溜した溶解タンクと、
前記洗浄槽内の底部に配設され、前記溶解タンク内の洗浄液が送り込まれる複数の噴射ノズルと、を備え、
前記複数の各噴射ノズルは、洗浄用ガスが溶解された洗浄液が通過される過程で前記洗浄用ガスのマイクロバブルを生成して、該洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を噴射するものとされ、
前記複数の噴射ノズルのうちの一部の噴射ノズルが、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を略水平方向に噴射するように配設されることにより、該洗浄槽内に渦巻き状の流れが生成されるように設定され、
前記複数の噴射ノズルのうちの残りの噴射ノズルが、前記洗浄用ガスのマイクロバブルを含む洗浄液を上方に向けて噴射するように配設されることにより、該洗浄槽内に上昇流の流れが生成されるように設定されている
ようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に対応した洗浄方法を行うことできる洗浄装置提供できる。
【0021】
【0022】
【0023】
前記洗浄槽を取り囲むようにして、該洗浄槽からオーバフローされたマイクロバブルを含む洗浄液を受け入れる回収ボックスが設けられ、
前記回収ボックスに、該回収ボックス内のマイクロバブルを含む洗浄液を外部に排出するための排出管が接続されている、
ようにしてある(請求項対応)。この場合、特に請求項2に対応した洗浄方法を行うことのできる洗浄装置が提供される。また、洗浄槽からオーバフローされた洗浄液を、回収ボックスを介して無駄なく回収する上でも好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、洗浄対象物を効率よく洗浄することができる。また、洗浄対象物を多数同時に洗浄する場合に、洗浄液の表面張力に起因して洗浄対象物同士が付着してしまう事態を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】洗浄用ガスが溶解された洗浄液を噴射ノズルに供給するためのシステム例を示す図。
図2】噴射ノズルの一例を示す断面図。
図3】洗浄槽内で洗浄対象物を洗浄している状況を示す簡略側面図。
図4図3に示す洗浄槽内での噴射ノズルの配設状態を示す平面図。
図5】本発明の第2の実施形態を示すもので、図3に対応した簡略側面図。
図6図5に示す洗浄槽内での噴射ノズルの配設状態を示す平面図。
図7】本発明の第3の実施形態を示すもので、図3に対応した簡略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、図1を参照しつつ、洗浄用ガスが溶解された洗浄液を噴射ノズルに供給するためのシステムについて説明する。
【0027】
図1中、20は、密閉された混合タンクである。この混合タンク20には、配管39を介して、洗浄用ガスとしてのオゾンを生成するためのるオゾン生成装置22が、接続されている。配管39には、調整弁40(実施形態ではエア作動弁で、オン、オフ式に開閉される)が接続されている。調整弁40によって、混合タンク20へ供給されるオゾン量が調整される。配管39は、混合タンク20内に配設されると共に下方に向けて開口されたカップ部材41内に開口されている。
【0028】
混合タンク20には、配管24を介して、洗浄液供給装置25が接続されている。洗浄液は、実施形態では純水とされている。配管24には、調整弁26(実施形態ではエア作動弁で、オン、オフ式に開閉される)が接続されている。調整弁26によって、混合タン
クは供給される洗浄液の量が調整される。
【0029】
混合タンク20には、その外部に位置されてその上部と下部とを連通する連通管27a
が接続されている。この連通管27aに液面センサ27bが付設されている。液面センサ27bは、連通管27a内での液面高さ位置を検出するものである。液面センサ27bで検出される液面高さ位置が、所定高さ範囲となるように、調整弁26が制御される。なお、液面センサ27bとしては、混合タンク20内に配設されるもの等、適宜のものを用いることができる。
【0030】
図中、30は、密閉構造とされた溶解タンクである。この溶解タンク30は、配管31を介して、混合タンク20に対して接続されている。配管31は、混合タンク20内においては、カップ部材41内に開口されている。配管31には、圧送用ポンプ32が接続されている。圧送用ポンプ32によって、混合タンク20内の洗浄ガスを含む洗浄液が、溶解タンク30に圧送される。圧送用ポンプ32は、実施形態では容積式ポンプを用いてあるが、非容積式ポンプを用いる等、適宜の形式のポンプを用いることができる。なお、容積式ポンプとしては、例えばダイヤフラムポンプ、ギアポンプ、ピストンポンプ、プランジャポンプ等を用いることができる。
【0031】
溶解タンク30内には、上下方向に延ばして、噴射パイプ33が配設されている。上記配管31は、噴射パイプ33の下端に接続されている。また、噴射パイプ33の上端は、閉塞されている。そして、噴射パイプ33の上部には、周方向に間隔をあけて複数の噴射孔33aが開口されている。複数の噴射孔33aの少なくとも一部は、溶解タンク30の内壁の近くに位置される。噴射パイプ33内に圧送された洗浄液は、噴射孔33aから溶解タンク30内に噴射されて、洗浄用ガス(オゾン)が、洗浄液(純水)に対して十分に溶解される。
【0032】
溶解タンク30には、その外部に位置されてその上部と下部とを連通する連通管34a
が接続されている。この連通管34aに液面センサ34bが付設されている。液面センサ34bは、連通管34a内での液面高さ位置を検出するものである。なお、液面センサ34bとしては、溶解タンク30内に配設されるもの等、適宜のものを用いることができる。
【0033】
溶解タンク30内の上部には、常時空間35を有するようにされる。この空間35によって、溶解タンク30内における洗浄液の脈動が低減される。溶解タンク30には、空間35に連通させて、外部に延びる配管36が接続されている。この配管36には、2つの調整弁37、調整弁38が直列に接続されている。調整弁37はエア作動弁とされて、オン、オフ式に開閉される。調整弁38は、例えば電磁式とされて、その開度が微調整可能とされている。
【0034】
上記液面センサ34bで検出される液面高さ位置が、所定高さ範囲となるように(少なくとも空間35が所定高さ範囲となるように)、調整弁37、38が制御される。また、空間35内の圧力が0.2~0.6MPa程度に維持されるように制御される。
【0035】
溶解タンク30の底部に対して配管42の一端部が接続されている。この配管42は、互いに並列な分岐配管42aと42bとを有している。各分岐配管42a、42bにはそれぞれ、噴射ノズル11が接続されている。これにより、溶解タンク30内で高圧とされたオゾンを含む洗浄液が、噴射ノズル11に供給される。
【0036】
配管42には、分岐配管42bよりも溶解タンク30側において、ヒータ45(例えば電気式ヒータ)が接続されている。これにより、噴射ノズル11、12に供給される洗浄
液が適切な温度(例えば40℃~60℃)に管理される。
【0037】
配管42には、分岐配管42bとヒータ45との間において、調整弁46(実施形態ではエア作動弁で、オン、オフ式に開閉される)が接続されている。調整弁46を制御することによって、洗浄液の噴射ノズル11への供給と供給遮断とが切換えられる。
【0038】
噴射ノズル11に圧送されたオゾンを含む洗浄液は、噴射ノズル11内を通過する過程でマイクロバブルを生成して、マイクロバブルを含む洗浄液が噴射ノズル11から噴射されることになる。なお、噴射ノズル11でのマイクロバブルの生成に関する事項については、後述する。
【0039】
次に、図2を参照しつつ、噴射ノズル11の一例について説明する。噴射ノズル11における洗浄液の流路71内には、オリフィス74、フィルタ75a~75c、分離スペーサ76a~76c、および固定スペーサ77が配置されている。その配設順は、洗浄液の流入側から順次、オリフィス74、分離スペーサ76a、フィルタ75a、分離スペーサ76b、フィルタ75b、分離スペーサ76c、フィルタ75c、固定スペーサ77の順とされている。これの部品は、流路71から取外して交換することも可能である。
【0040】
オリフィス74は、所定の厚みを有する円板であり、その中心には円形の孔が開けられている。オリフィス74の厚みは、例えば3mmである。オリフィス74の中心に開けられた孔の直径は、例えば0.5mmである。
【0041】
フィルタ75a~75cは、複数の小孔が開けられた円板である。複数の小孔の直径は、例えば0.5mmである。複数の小孔のピッチは、例えば1.5mmである。フィルタ75a~75cの厚みは、例えば3mmである。
【0042】
分離スペーサ76a~76cは、所定の厚みを有する円板であり、その中心には円形の孔が開けられている。分離スペーサ76a~76cの厚みは、例えば0.4mmである。分離スペーサ76a~76cの中心に開けられた孔の直径は、例えば8.0mmである。
【0043】
固定スペーサ77は、所定の厚みを有する円板であり、その中心には円形の孔が開けられている。固定スペーサ77の厚みは、例えば3.2mmである。固定スペーサ77の中心に開けられた孔の直径は、例えば8.0mmである。
【0044】
洗浄用ガスが溶解された洗浄液が噴射ノズル11を通過することにより、マイクロバブルを含む洗浄液が生成されて、噴射ノズル11からマイクロバブルを含む洗浄液が噴射される。より具体的には、洗浄用ガスが溶解された洗浄液は、オリフィス74、フィルタ75a~75c、分離スペーサ76a~76cおよび固定スペーサ77を通過することにより気泡が生成される。この気泡のうち、30~90%がマイクロバブル(実施形態では粒径が例えば1~50μm)とされる。なお、マイクロバブルの粒径は、小さいほど好ましく(粒径の下限値はなし)、100μm以下とするのが好ましい。
【0045】
噴射ノズル11からの吐出圧力は、例えば約0.1MPaとすることができる(大気圧よりもやや高い圧力)。噴射ノズル11を用いることによって、オゾンを含む洗浄液中により多くのマイクロバブルを発生させることが可能であり、洗浄液の洗浄力をより高めることが可能である。
【0046】
次に、図3図4を参照しつつ、噴射ノズル11が配設された洗浄槽について説明する。図3図4中、1は、上方が開口された洗浄槽である。この洗浄槽1内の底部には、多孔板からなる支持板2が固定設置されている。この支持板2と洗浄槽1の底壁との間には
、前述した噴射ノズル11(実施形態では2個の噴射ノズル11)が配設されている。
【0047】
図3では、洗浄対象物Wが、薄葉状の半導体ウエハとされている。多数枚の半導体ウエハ(洗浄対象物W)が、保持用カセット3に保持されている。多数の洗浄対象物Wは、その下端部のみが保持用カセット3に保持されている。なお、保持用カセット3は、既知のものを用いることができる。
【0048】
洗浄槽1は、皿状の回収ボックス4内に配設されている。洗浄槽1からオーバフローされる洗浄液は、全て回収ボックス4に回収される。回収ボックス4に回収された洗浄液は、排水管5を介して、外部に排出される。
【0049】
洗浄槽1内に配設された2つの噴射ノズル11は、横向きとされて、略水平方向にマイクロバブルを含む洗浄液を噴射するように配設されている。より具体的には、図4に示すように、2つの噴射ノズル11は平面視において略方形とされた洗浄槽1の対角線上に隔置されている。そして、図4において、一方の噴射ノズル11から右向きに、また他方の噴射ノズル11からは左向きにマイクロバブルを含む洗浄液が噴射されて、全体として、マイクロバブルを含む洗浄液が図4中時計回りの渦巻き状の流れを形成するように設定されている。
【0050】
次に、洗浄槽1を用いて、半導体ウエハからなる多数の洗浄対象物Wを洗浄する手順について説明する。
【0051】
まず、洗浄槽1内には、あらかじめ、マイクロバブルを含む洗浄液がほぼ満杯状態で貯溜された状態とされる。この後、多数の洗浄対象物W(半導体ウエハ)が、保持用カセット3に保持された状態で、洗浄槽1内に配設される(マイクロバブルを含む洗浄液中に浸漬される)。なお、洗浄槽1内へのマイクロバブルを含む洗浄液の供給は、洗浄対象物Wを洗浄槽1内に配設した後に開始することもできる。
【0052】
洗浄対象物Wは、マイクロバブルを含む洗浄液中に浸漬されることにより、洗浄が行われる。洗浄中、噴射ノズル11からは新たにマイクロバブルを含む洗浄液が供給され続ける。これにより、洗浄槽1からは、マイクロバブルを含む洗浄液がオーバフローされる。洗浄対象物Wを、例えば所定時間マイクロバブルを含む洗浄液中に浸漬させることにより、洗浄が終了とされる(所望の洗浄レベルまで洗浄される)。なお、洗浄完了時点を、洗浄槽1からオーバフローされる洗浄液の清浄度(例えば比抵抗値)が所定値となった時点とすることもできる。
【0053】
洗浄終了後は、洗浄対象物Wは保持用カセット3と共に洗浄槽1から取り出される。洗浄対象物Wの洗浄槽1内への配設と取出しとは、例えば搬送用ロボットを利用して行うことができる。
【0054】
以後は、上述したのと同様の作業が、新たな洗浄対象物Wについて行われる。
【0055】
マイクロバブルを含む洗浄液による洗浄は、溶解作用とOHラジカルによる剥離作用とにより、マイクロバブルを含まない洗浄液のみによる洗浄の場合に比して、はるかに効果的(効率的)に行われる。以上に加えて、マイクロバブルがはじける(消失する)際の物理的な力によっても、洗浄効果が高められることになる。
【0056】
また、洗浄槽1内において、マイクロバブルを含む洗浄液を、略水平方向での(上下方向軸周りでの)渦巻き状の流れとすることにより、洗浄対象物Wに対してマイクロバブルを含む洗浄液が万遍なく(均一)に流れて、洗浄効果がより高いものとされる。
【0057】
さらに、マイクロバブルを含む洗浄液は、略水平方向に噴射されることから、マイクロバブルが洗浄槽1の上端に達するまでの時間が長く確保されて(洗浄槽1内でのマイクロバブルの滞留時間の長期化)、より一層洗浄効果を高める上で好ましいものとなる。
【0058】
さらに又、洗浄対象物Wから除去された細かい異物(汚物)は、マイクロバブルに取り込まれて洗浄槽1内を上昇して、オーバフローされる洗浄液と共に洗浄槽1の外部へ排出される。このことは、洗浄槽1内の洗浄液を極力清浄に維持するという点で好ましいものとなる。つまり、洗浄対象物Wを洗浄槽1から取り出す際に、洗浄液中に浮遊している異物(汚物)を洗浄対象物Wの表面に付着させないようにする、という点で好ましいものとなる。
【0059】
マイクロバブルがマイナスの電荷を有することから、各洗浄対象物Wの表面は、マイナスの電荷を有することになる。これにより、洗浄対象物Wを洗浄槽1から取り出す際に、隣り合う洗浄対象物W同士は、互いにに離れる方向の作用を受けることになり、隣り合う洗浄対象物W同士が付着してしまうことが防止される(洗浄液の表面張力に起因する付着防止)。これにより、後工程において、付着した洗浄対象物W同士を引き離すための作業が不要となり、工程全体での効率化という点でも好ましいものとなる。なお、洗浄対象物Wが、保持用カセット3に付着してしまう事態も防止されるものである。
【0060】
さらに付言すると、1つの洗浄槽1内での洗浄効果が高いことから、所望洗浄レベルまで洗浄を行うのに際して、洗浄槽1の数を従来よりもはるかに低減することができる。特に、オーバフローさせつつ洗浄を行うことにより、1つの洗浄槽1のみで、所望洗浄レベルまで洗浄を行うことも可能である。このことは、洗浄槽1の数やその設置面積を大幅に削減する上で極めて好ましいものである。
【0061】
ここで、マイクロバブルを含む洗浄液とマイクロバブルを含まない洗浄液との間での洗浄効果の相違を調べるために、次のような実験を行った。まず、マイクロバブルを含む洗浄液としては、酸素が溶解された純水(超純水)を噴射ノズル11から噴射させることによって得られたものを用いた。また、比較例としてのマイクロバブルを含まない洗浄液としては、純水(超純水)を用いた。
【0062】
実験用洗浄対象物としては、酸化膜付きシリコンウエハを、洗浄槽内のHf溶液中に浸漬して酸化膜を除去した後、洗浄槽から取り出したものを用いた。また、洗浄効果を示す指標として、洗浄槽(洗浄槽1に対応した構造のもの)からオーバフローされる純水の比抵抗値を用いた。なお、純水(超純水)の比抵抗値は18MΩcmである。また、洗浄中に、洗浄槽からオーバフローさせる(新たに供給される)純水の量(L/秒)は互いに同一としてある。
(1)マイクロバブル含まない純水のみの場合(比較例)
Hf液処理したシリコンウエハを、洗浄槽内の純水に浸漬した当初は、洗浄槽からオーバフローされる純水の比抵抗値は14MΩcmである。洗浄槽内に新たに純水を供給し続けて、洗浄槽からオーバフローされる純水の比抵抗値が18MΩcmまで変化するまでに要した時間は、約80秒であった。
(2)マイクロバブルを含む純水の場合(本発明対応)
一方、マイクロバブルを含む純水によって洗浄を行った場合は、洗浄槽からオーバフローされる純水の比抵抗値が18MΩcmまで変化するまでに要した時間は、約50秒であった(比較例に比して洗浄効果が高い)。
【0063】
図5図6は、本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してその説明は省略する(このことは、後述する第3の実施形態において
も同じ)。本実施形態では、各分岐配管42a、42bに対してそれぞれ、複数個の噴射ノズル11を並列に接続してある。複数の噴射ノズル11はそれぞれ、上向きにマイクロバブルを含む洗浄液を噴射するように配設されている。各噴射ノズル11は、洗浄槽1内に広く分散配置されている。なお、図5図6では、洗浄対象物Wは省略してある。
【0064】
本実施形態では、噴射ノズル11からのマイクロバブルを含む洗浄液は、上向きに噴射されることから、洗浄液は上昇流の流れとなる。洗浄対象物Wに対して、マイクロバブルを含む洗浄液が下から上に向けて勢いよく流れることから、この流れによって洗浄対象物Wが効果的に洗浄される。また、洗浄対象物Wから剥離(除去)された異物(汚物)が、上昇流となる洗浄液によって洗浄槽1の上端に向けてすみやかに移動して、洗浄槽1からすみやかに排出される。
【0065】
図7は、本発明の第3の実施形態を示すものである。本実施形態では、洗浄対象物WBが、例えばフレキシブル半導体等の長尺の薄膜とされている。洗浄対象物WBは、複数のローラ15によって、図中左方側から右方側へと搬送される(ロール・ツー・ロール方式での搬送)。そして、搬送途中の過程において、洗浄槽1内(のマイクロバブルを含む洗浄液)中に浸漬されるようになっている。なお、洗浄対象物WBの搬送は、連続送り(搬送の休止時間なし)とすることもできるが、間欠送り(搬送の休止時間あり)とすることもできる。間欠送りの場合は、洗浄対象物WBの同一長さ部位を、マイクロバブルを含む洗浄液中に長時間継続して浸漬させる上で好ましいものとなる(洗浄槽1の搬送方方向長さの短縮化ともなる)。
【0066】
図7では、噴射ノズル11は、図3図4と同様な配設態様とされているが、図5図6のような配設態様とすることもできる。
【0067】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。
(1)洗浄用ガスを含む洗浄液が通過(接触する)経路内は、例えばフッ素樹脂によって構成するか、フッ素樹脂によるコーティングを行っておくのが好ましい。特に、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)によって形成またはコーティングすることが好ましい。
(2)洗浄用ガスとしては、オゾンの他に、酸素、アルゴン、窒素、水素等適宜のものを使用することができる。
(3)洗浄液としては、純水以外に、有機溶媒、硫酸水溶液、アンモニア水溶液、スラリー等、適宜の洗浄用の液体を用いることができる。
(4)本発明による洗浄対象物は、高度の洗浄が要求される半導体ウェハ、液晶基板、太陽電池基板、ガラス基板、マスクブランクなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明は、例えば、電子産業分野における各種部品の洗浄や、医療分野(内臓洗浄等)にも適用でき、この他、各種の金属製品(例えば機械部品)や合成樹脂製品等にも適用できる。
(5)マイクロバブルを含む洗浄液は、噴射ノズル11で生成する場合に限らず、例えば溶解タンク30内であらかじめ生成することもできる。この場合、例えば、溶解タンク30内で洗浄液が循環される循環経路を構成して、この循環経路の吐出側端部に噴射ノズル11に対応した噴射ノズルを接続することにより、溶解タンク30内でマイクロバブルを含む洗浄液を生成することができる。
(6)洗浄槽1内に配設された複数の噴射ノズル1の噴射方向は適宜選択できる。例えば、複数の噴射ノズル11の噴射方向を互いに異なる方向に設定して、洗浄槽1内での洗浄液の流れが乱流となるようにすることもできる。特に、渦巻き状の流れと上昇流の流れとを共に生じさせるような設定とすることもできる。
(7)洗浄液を、洗浄槽1からオーバフローさせない洗浄とすることもできる。この場合
は、複数の洗浄槽を用いて、順次洗浄を繰り返して、最終的に所望レベルまでの洗浄を行うようにすればよい。複数の洗浄槽を用いる場合でも、1つの洗浄槽での洗浄効果が高いために、使用する洗浄槽の数としては、マイクロバブルを含まない洗浄液で洗浄する場合に比して、洗浄槽の数(およびこれに伴う洗浄槽の設置面積)を低減することができる。
(8)本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば半導体ウエハの洗浄を効率よく行う上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0069】
W:洗浄対象物(半導体ウエハ)
WB:洗浄対象物(図7
1:洗浄槽
2:支持板
3:保持用カセット
4:受けボックス
5:排水管
11:噴射ノズル
15:ローラ(図7
20:混合タンク
22:オゾン生成装置
25:洗浄液供給装置
30:溶解タンク
32:圧送用ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7