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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-16
(45)【発行日】2022-08-24
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20220817BHJP
   F01N 11/00 20060101ALI20220817BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20220817BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220817BHJP
   B60W 20/16 20160101ALI20220817BHJP
   B60K 6/24 20071001ALI20220817BHJP
【FI】
F01N3/20 C ZHV
F01N11/00
F01N3/00 F
F01N3/20 R
F01N3/20 K
B60W10/06 900
B60W20/16
B60K6/24
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018116927
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019218904
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠司
(72)【発明者】
【氏名】河本 祐輔
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0144502(US,A1)
【文献】特開2000-199425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 11/00
F01N 3/00
B60W 10/06
B60W 20/16
B60K 6/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動モータを駆動源とするハイブリッド車両の排気浄化システムであって、
前記内燃機関の排気通路に設けられている排気浄化触媒と、
前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に設けられており、窒素酸化物の濃度を測定可能な排気センサと、
前記内燃機関が始動してからの所定期間において、前記排気センサで測定された前記窒素酸化物の検出結果に基づいて異常信号を生成するように構成されている異常信号生成部と、を備え、
前記排気センサは、空燃比も測定可能に構成されており、
前記異常信号生成部は、前記内燃機関が始動してからの前記所定期間において、前記排気センサで測定された前記空燃比及び前記窒素酸化物の検出結果に基づいて前記異常信号を生成するように構成されており、
前記異常信号生成部は、前記排気センサで測定された前記空燃比から換算した炭化水素量と、前記排気センサで測定された前記窒素酸化物の濃度から換算した窒素酸化物量と、の合計値が規定値を超えたときに、前記異常信号を生成するように構成されている、排気浄化システム。
【請求項2】
前記排気センサは、前記ハイブリッド車両の走行中において常時加熱されるように構成されている、請求項に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、内燃機関と電動モータを駆動源とするハイブリッド車両の排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内燃機関から排出される排気ガスを浄化するために、内燃機関の排気通路に排気浄化触媒が設けられている。特許文献1及び特許文献2は、このような排気浄化触媒の状態を監視する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-199425号公報
【文献】特開2012-241652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関と電動モータを駆動源とするハイブリッド車両の開発が進められている。このようなハイブリッド車両では、電動モータのみによって走行するモードが存在する。特に、プラグインハイブリッド車両(PHV)では、電動モータのみによる走行期間が長くなる傾向にある。このため、このようなハイブリッド車両では、電動モータのみによる走行期間中に排気浄化触媒が冷えてしまうことが予想される。排気浄化触媒が冷えてしまうと、内燃機関が始動した直後において、排気浄化触媒が正常に作動しない事態が生じ得る。
【0005】
排気浄化触媒の状態を監視する現在の技術では、このような事態を考慮していない。本願明細書は、内燃機関が始動した直後において、暖気不良等による排気浄化触媒の異常を監視する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する排気浄化システムは、内燃機関と電動モータを駆動源とするハイブリッド車両に用いられる。前記ハイブリッド車両には、プラグインハイブリッド車両も含まれる。この排気浄化システムは、前記内燃機関の排気通路に設けられている排気浄化触媒と、前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に設けられており、窒素酸化物の濃度を測定可能な排気センサと、前記内燃機関が始動してからの所定期間において、前記排気センサで測定された前記窒素酸化物の検出結果に基づいて異常信号を生成するように構成されている異常信号生成部と、を備えることができる。前記内燃機関が始動してからの前記所定期間において、前記排気浄化触媒が暖気不良等により正常に作動していないと、前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に窒素酸化物が排出される。上記排気浄化システムは、前記窒素酸化物の濃度を測定可能な前記排気センサを前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に設けることにより、この窒素酸化物の排出を検出することができる。これにより、上記排気浄化システムは、前記内燃機関が始動した直後において、暖気不良等による前記排気浄化触媒の異常を監視することができる。
【0007】
上記排気浄化システムでは、前記排気センサが空燃比も測定可能に構成されていてもよい。この場合、前記異常信号生成部は、前記内燃機関が始動してからの前記所定期間において、前記排気センサで測定された前記空燃比及び前記窒素酸化物の検出結果に基づいて前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。前記内燃機関が始動してからの前記所定期間において、前記排気浄化触媒が暖気不良等により正常に作動していないと、まず炭化水素が前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に排出され(即ち、空燃比がリッチとなる)、その後、前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路に窒素酸化物が排出される。この排気浄化システムは、前記排気センサを利用することにより、前記排気浄化触媒よりも下流側の前記排気通路の前記空燃比と前記窒素酸化物の双方を検出することができる。この排気浄化システムによれば、前記空燃比と前記窒素酸化物の双方の検出結果に基づいて、暖気不良等による排気浄化触媒の異常をより確実に監視することができる。
【0008】
上記排気浄化システムでは、前記異常信号生成部が、前記排気センサで測定された前記空燃比から換算した炭化水素量と、前記排気センサで測定された前記窒素酸化物の濃度から換算した窒素酸化物量と、の合計値が規定値を超えたときに、前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。
【0009】
上記排気浄化システムでは、前記排気センサが、前記ハイブリッド車両の走行中において常時加熱されるように構成されていてもよい。前記排気センサを常時加熱しておくことで、前記排気センサが常時安定して動作することができ、前記内燃機関が始動した直後の排気ガスを正確に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】排気浄化システムの概略構成を示す図である。
図2】下流側排気センサの概略構成を示す断面図である。
図3】下流側排気センサの概略構成を示す断面図であり、図2のIII-III線に対応した断面図である。
図4】上流側排気浄化触媒が十分に暖められている状態において、通常走行モードから加速走行モードに移行した直後の上流側排気センサで測定される空燃比、及び、下流側排気センサで測定される空燃比とNOx濃度の挙動を示す。
図5】上流側排気浄化触媒が十分に暖められていない状態において、通常走行モードから加速走行モードに移行した直後の上流側排気センサで測定される空燃比、及び、下流側排気センサで測定される空燃比とNOx濃度の挙動を示す。
図6】上流側排気浄化触媒の異常を監視する制御フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、内燃機関10と電動モータ50を駆動源とするハイブリッド車両に搭載されている排気浄化システム1の概略構成を示す。排気浄化システム1は、内燃機関10から排出される排気ガスを浄化するためのものであり、内燃機関10の排気通路20に設けられた2つの排気浄化触媒22,24、内燃機関10の排気通路20に設けられた2つの排気センサ26,28、及び、エレクトロニックコントロールユニット(ECU:Electronic Control Unit)30を備えている。符号22の排気浄化触媒を上流側排気浄化触媒22といい、符号24の排気浄化触媒を下流側排気浄化触媒24という。また、符号26の排気センサを上流側排気センサ26といい、符号28の排気センサを下流側排気センサ28という。
【0012】
排気浄化触媒22,24はいずれも、三元触媒である。三元触媒は、酸素を貯蔵(吸蔵)するO2ストレージ機能(酸素貯蔵機能)を有している。三元触媒は、この酸素貯蔵機能により、空燃比が理論空燃比(ストイキ)からある程度まで外れたとしても、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を浄化することができる。例えば、内燃機関10の空燃比がリーンのときは、三元触媒に流入する排気ガス中の酸素及びNOxが増加する。このとき、三元触媒は、NOxに含まれる酸素を吸蔵することによってNOxを還元し、排気ガスを浄化することができる。一方、内燃機関10の空燃比がリッチのときは、三元触媒に流入する排気ガス中のHC及びCOが増加する。このとき、三元触媒は、吸蔵していた酸素分子を利用してHC及びCOを酸化し、排気ガスを浄化することができる。
【0013】
上流側排気センサ26は、上流側排気浄化触媒22よりも上流側の排気通路20に設けられており、空燃比センサ(A/Fセンサ)として構成されている。上流側排気センサ26は、例えば限界電流式の空燃比センサである。上流側排気センサ26は、内燃機関10から排出された排気ガス(上流側排気浄化触媒22よりも上流側における排気ガス)の空燃比に対応した出力電圧を生成し、その出力電圧信号をECU30に出力する。
【0014】
下流側排気センサ28は、上流側排気浄化触媒22よりも下流側の排気通路20に設けられており、空燃比センサ(A/Fセンサ)とNOxセンサが一体化したセンサとして構成されている。下流側排気センサ28の具体的な構成については後述する。下流側排気センサ28は、上流側排気浄化触媒22よりも下流側における排気ガスの酸素濃度に対応した出力電圧及びNOx濃度に対応した出力電圧を生成し、それら出力電圧信号をECU30に出力する。
【0015】
ECU30の入力側には、クランク角センサ、アクセル開度センサ、スロットル開度センサ、エアフローメータ、上流側排気センサ26及び下流側排気センサ28が接続されている。ECU30の出力側には、点火プラグ、インジェクタ、スロットルモータ、触媒加熱ヒータ及びパワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)40が接続されている。ECU30は、上記した各種センサの検出信号に基づいて、内燃機関10及びPCU40の各種制御を実行することができる。例えば、ECU30は、上流側排気センサ26の出力電圧信号に基づいて、内燃機関10に供給される混合気の目標空燃比を制御し、上流側排気浄化触媒22よりも上流側の排気空燃比を燃料リッチ側と燃料リーン側の間で交互に切換える制御(「アクティブ制御」ともいう)を実行することができる。また、後述するように、ECU30は、下流側排気センサ28の出力に基づいて、暖気不良等による上流側排気浄化触媒22の異常の監視を実行することができる。
【0016】
図2及び図3に、空燃比センサ(A/Fセンサ)とNOxセンサが一体化した下流側排気センサ28の概略構成を示す。図3は、図2のIII-III線に対応した断面図である。下流側排気センサ28は、被測定ガスG1(即ち、内燃機関10から排出される排気ガス)が導入される被測定ガス室102と、大気等の基準ガスG2が導入される基準ガス室104と、を備えている。被測定ガス室102と基準ガス室104は、固体電解質体106によって隔てられている。固体電解質体106は、酸素イオン電導性を有する材料で構成されており、例えばジルコニアで構成されている。被測定ガス室102の導入口には、被測定ガスG1に対して所定の拡散係数を有する多孔質体108が設けられている。被測定ガスG1は、この多孔質体108を介して被測定ガス室102に導入される。多孔質体108は、固体電解質体106へのガス拡散を律速して飽和電流特性を発現させるために設けられている。
【0017】
被測定ガス室102内の固体電解質体106の表面には、ポンプ電極112とセンサ電極114とモニタ電極116が配設されている。ポンプ電極112は、被測定ガス室102の導入口側に配置されている。ポンプ電極112は、NOxの分解に対して非活性な金属であり、例えばプラチナ(Pt)と金(Au)の合金である。センサ電極114とモニタ電極116は、被測定ガス室102の導入口とは反対側に並んで配置されている。センサ電極114は、NOxの分解に対して活性な金属であり、例えばプラチナ(Pt)とロジウム(Rh)の合金である。モニタ電極116は、NOxの分解に対して非活性な金属であり、例えばプラチナ(Pt)と金(Au)の合金である。基準ガス室104内の固体電解質体106の表面には、ポンプ電極112とセンサ電極114とモニタ電極116に対向するように基準電極118が配設されている。また、下流側排気センサ28はさらに、被測定ガス室102と基準ガス室104に近接する基板124内に埋設されたヒータ122を備えている。このヒータ122は、ECU30に接続されており、ハイブリッド車両が走行しているときに常時加熱されるように、ECU30によって制御されている。これにより、下流側排気センサ28は、ハイブリッド車両が走行しているときに常時安定して動作することができ、内燃機関10が始動した直後であっても、排気ガスを正確に検知することができる。
【0018】
固体電解質体106とポンプ電極112と基準電極118が、空燃比センサ(A/Fセンサ)を構成している。ポンプ電極112と基準電極118の間に所定電圧を印加すると、酸素ポンプ作用によってポンプ電極112と基準電極118の間に電流が流れる。上記したように、被測定ガス室102の導入口に設けられた多孔質体108によって被測定ガス室102への排気ガス輸送量が制限されていることから、固体電解質体106の電流-電圧特性に飽和電流特性が現れる。このような飽和電流は、限界電流と呼ばれ、空燃比と1対1に対応した大きさを有することができる。したがって、ECU30は、この臨界電流値に基づいて被測定ガスG1の空燃比を測定することができる。
【0019】
固体電解質体106とセンサ電極114とモニタ電極116と基準電極118が、NOxセンサを構成している。上記したように、センサ電極114は、NOxの分解に対して活性な金属で構成されている。このため、NOxガスの分解によって生じた酸素イオンが、センサ電極114から固体電解質体106に注入される。このため、センサ電極114と基準電極118の間に所定電圧を印加すると、酸素ポンプ作用によってポンプ電極112と基準電極118の間に電流が流れる。ここで、センサ電極114から固体電解質体106に注入される酸素イオンは、NOxの分解によって生じた酸素イオンの他に、ポンプ電極112で消費されずに被測定ガス室102内に残存する酸素に由来した酸素イオンも含んでいる。このため、この残存する酸素に由来した酸素イオンの影響を取り除くために、ECU30は、センサ電極114と基準電極118の間を流れる臨界電流値からモニタ電極116と基準電極118の間を流れる臨界電流値を差し引くことで、NOx濃度を測定することができる。
【0020】
このように、下流側排気センサ28は、空燃比センサ(A/Fセンサ)とNOxセンサが一体化したセンサとして構成されており、空燃比とNOx濃度を同時に測定することができる。なお、この例に代えて、下流側排気センサ28は、空燃比を測定可能な空燃比センサ(A/Fセンサ)とNOx濃度を測定可能なNOxセンサの別々のセンサで構成されていてもよい。
【0021】
次に、ECU30が上流側排気浄化触媒22の異常を監視する技術について説明する。図4及び図5に、電動モータ50のみで走行するモード(軽負荷の通常走行モード)から電動モータ50と内燃機関10を併用して走行するモード(高負荷の加速走行モード)に移行した直後の上流側排気センサ26で測定される空燃比(「上流側A/F出力」として示す)、及び、下流側排気センサ28で測定される空燃比(「下流側A/F出力」として示す)とNOx濃度(「下流側NOx出力」として示す)の挙動を示す。図4は、上流側排気浄化触媒22が十分に暖められている状態での挙動を示す。図5は、上流側排気浄化触媒22が十分に暖められていない状態(暖気不良)での挙動を示す。
【0022】
図4に示されるように、内燃機関10が始動して加速走行モードに移行すると、上流側A/F出力がリーンからリッチに変化する。空燃比がリッチであることは、炭化水素(HC)が存在することを示す。このことから、内燃機関10が始動した直後においては、内燃機関10からHCが排気されることが分かる。一方、下流側A/F出力の空燃比は、上流側A/F出力の空燃比に追随することなく、概ねストイキに維持されている。上流側排気浄化触媒22が十分に暖められている状態では、上流側排気浄化触媒22が正常に作動しており、内燃機関10から排気されたHCが上流側排気浄化触媒22で浄化されたからである。また、下流側NOx出力の変動もなく、NOxが検出されていない。
【0023】
図5に示されるように、上流側排気浄化触媒22が十分に暖められていない状態(暖気不良)では、内燃機関10から排気されたHCが上流側排気浄化触媒22で浄化されない。このため、下流側A/F出力の空燃比がリッチとなる。さらに、下流側A/F出力の空燃比がリッチとなる期間が数秒継続した後に、下流側A/F出力の空燃比がリッチからリーンに変化すると、下流側NOx出力が増加する。下流側NOx出力は、一旦増加した後に、やがて略ゼロとなる。このように、上流側排気浄化触媒22が十分に暖められていない状態(暖気不良)では、内燃機関10が始動した直後において、まずは下流側A/F出力の空燃比がリッチとなる期間が継続した後に、下流側NOx出力の増減が現れるという特徴的な挙動を示す。このような特徴的な挙動を示す期間は、内燃機関10が始動してから数秒から数十秒(例えば、約20秒)である。したがって、この期間の下流側A/F出力及び下流側NOx出力を測定することで、上流側排気浄化触媒22の暖気不良等の異常を監視することができる。
【0024】
図6に、上流側排気浄化触媒22の暖気不良等の異常を監視する制御フローを示す。この異常監視制御は、ECU30が実行するように構成されている。なお、ECU30は、異常信号生成部の一例である。内燃機関10が始動すると、ECU30は、所定の計測時間(例えば、20秒)内において測定された下流側A/F出力からHC量を換算し、さらに、所定の計測時間内において測定された下流側NOx出力からNOx量を換算する(S1工程)。
【0025】
次に、ECU30は、換算されたHC量とNOx量の合計値が規定値よりも大きいか否かを判定する。合計値が規定値よりも大きい場合、ECU30は、異常信号を生成し、その異常信号に基づいて上流側排気浄化触媒22に異常が生じたことを運転者に報知する。運転者に報知する手段としては、例えばインストルメントパネル上に警告灯として表示してもよい。これにより、運転者は、上流側排気浄化触媒22の異常(例えば、触媒加熱ヒータの故障等)を知ることができる。
【0026】
上記の排気浄化システムでは、内燃機関10が始動してからの所定の計測時間内に測定されたHC量とNOx量の合計値に基づいて、上流側排気浄化触媒22の異常の診断を実行している。これは一例であり、下流側排気センサ28で測定された下流側A/F出力と下流側NOx出力の少なくとも一方の検出結果(量、濃度、濃度変化速度等)に基づいて、上流側排気浄化触媒22の異常の診断を実行してもよい。例えば、内燃機関10が始動してからの所定の計測時間内に測定されたNOx量のみに基づいて、上流側排気浄化触媒22の異常の診断を実行してもよい。あるいは、内燃機関10が始動してからの所定の計測時間内に測定された最大のNOx濃度が規定値を超えたときに、上流側排気浄化触媒22に異常が生じていると判定してもよい。
【0027】
また、上記の排気浄化システムでは、内燃機関10の始動毎に上流側排気浄化触媒22の異常の診断を実行している。この例に代えて、内燃機関10の始動毎の検出結果の複数回分の合計値に基づいて、上流側排気浄化触媒22の異常の診断を実行してもよい。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
1:排気浄化システム
10:内燃機関
20:排気通路
22:上流側排気浄化触媒
24:下流側排気浄化触媒
26:上流側排気センサ
28:下流側排気センサ
30:ECU
40:PCU
50:電動モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6